説明

消臭剤組成物

【課題】衣類の汗・皮脂臭を低減させることができ、かつスプレー使用した場合でも対象物への付着率が高い、水系の消臭剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)総炭素数6〜18の炭化水素基を有するグリセリルエーテル0.001質量%以上、(b)重量平均分子量1万〜500万の水溶性セルロース誘導体を0.001質量%〜0.5質量%を含有する消臭剤組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生活の中で生じる臭いには様々なものがあるが、その発生源は排水口、トイレ、風呂、下駄箱、生ごみ、料理、たばこ、汗、皮脂など多岐にわたり、また一旦発生した臭いは壁や家具、衣類などを介して吸収、放散を繰り返すため、混ざり合った臭いが時に空間に漂い、不快感をもたらすことになる。臭いの発生源をもとから断つのが最も有効であり、個々の発生源に対応した消臭剤が発売されている。中でも衣類・布製品に吸着し、発生する臭いを消すことを目的とした消臭剤は広く知られており、使用頻度は高まる傾向にある。しかし、強い臭いに対して消臭効果を得るためには、単位面積あたりの消臭基剤量を増やす必要がある。
【0003】
特許文献1には、アルキルグリセリルエーテルと香料とをプレミックスすることにより得られる、香り立ち、残香性などの芳香特性及び保留効果に優れた香料組成物と、この香料組成物を配合した香粧品、トイレタリー製品、芳香剤などが開示されている。特許文献2および3には物品表面を殺菌する方法として、アルキルグリセリルエーテルを含有する組成物の使用が開示されており、殺菌することで減少する菌に由来する臭いについては消臭効果があると考えられる。特許文献4には、アニオン性界面活性剤、抗菌剤、アルキルグリセリルエーテルを含有する抗菌、防臭効果を有する洗浄剤組成物が開示されている。特許文献5には、亜鉛及びアルキルグリセリルエーテルを含有する抗菌剤が開示されており、亜鉛は消臭効果も有することからこの抗菌剤は消臭性能も有していることが考えられる。また特許文献6には、アルキルグリセリルエーテルと他の消臭成分とを組み合わせることで微生物による不快臭を消臭する組成物が開示されている。特許文献7には殺菌成分、制汗成分及び消臭成分などと、アルキルグリセリルエーテルなどの界面活性剤を含む防臭化粧料組成物が開示されており、足踏み式のスプレーで組成物を吐出するなどの内容が開示されている。
【特許文献1】特開2003−238985号公報
【特許文献2】特開2004−313792号公報
【特許文献3】特開2004−315537号公報
【特許文献4】特開2001−131592号公報
【特許文献5】特開2005−170878号公報
【特許文献6】米国特許5516510号
【特許文献7】特開2001−97838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1ないし3は、消臭剤をスプレーなどで噴霧した時の消臭効率を高める点について、特段の認識はされていない。特許文献4は、毛髪、身体を対象とした洗浄剤の技術であり、衣類等を対象とした消臭剤に関わるものではない。特許文献5は、亜鉛とアルキルグリセリルエーテルの併用による抗菌効果の相乗作用を主旨とするものであり、噴霧使用そのものが想定されていない。特許文献6は、皮膚上の菌により発生する臭いに対処する技術であり、衣類に対する消臭効率を高めることは予見されていない。また、特許文献7は、水含有量が20%以下と少なく、水溶性の臭いに対する消臭効果が低いという課題がある。
【0005】
一方、スプレータイプの容器に水系の消臭剤を入れ、臭い発生源に直接噴霧する方法は、簡便な処理方法であるが、スプレーなどを使用し噴霧した時の付着率は消臭剤の組成によって変化するため、消臭効率が変化してしまう。こうした課題について、特許文献1〜7では特段の認識がされていない。
【0006】
このように、特に水系の消臭剤組成物を対象物に噴霧した時の課題の解決方法はもちろん、課題そのものにも触れた例もあまり知られておらず、これらの課題を解決した消臭剤の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、衣類の汗・皮脂臭を低減させることができ、かつスプレー使用した場合でも対象物への付着率が高いため消臭効率の高い、水系の消臭剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のアルキルグリセリルエーテルと特定の水溶性セルロース誘導体とを特定範囲で含有する水系組成物が、衣類の汗・皮脂臭の低減に有効で、対象物への付着率が高いため消臭効率に優れることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、(a)総炭素数6〜18の炭化水素基を有するグリセリルエーテル〔以下、(a)成分という〕を0.001質量%以上、(b)重量平均分子量1万〜500万の水溶性セルロース誘導体〔以下、(b)成分という〕を0.001質量%〜0.5質量%含有する消臭剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の消臭剤組成物は、スプレータイプの容器に充填し、臭い発生源や衣類に直接噴霧することで、衣類の汗・皮脂臭を低減させることができ、かつ対象物への付着率が高いため、消臭効率が優れている。本発明の消臭剤組成物は、スプレー回数が少なくても消臭効果の高い消臭剤組成物として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の消臭剤組成物は、(a)成分として、総炭素数6〜18の炭化水素基を有するグリセリルエーテルを含有する。
【0012】
(a)成分における総炭素数6〜18の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状いずれでもよく、また飽和、不飽和いずれでもよい。炭化水素基の具体例としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2−メチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−メチルオクチル基、2−メチルノニル基、2−メチルデシル基、2−メチルウンデシル基、2−メチルドデシル基、2−メチルトリデシル基、2−メチルテトラデシル基、イソステアリル基、2−エチルブチル基、2−エチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルヘプチル基、2−エチルオクチル基、2−エチルノニル基、2−エチルデシル基、2−エチルウンデシル基、2−エチルドデシル基、2−ブチルヘキシル基、2−ブチルヘプチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、へプタデセニル基、オクタデセニル基などが挙げられる。(a)成分は、保存安定性の点からは0〜50℃(使用温度範囲)の条件下で液状であるもの好ましい。また、2種以上のグリセリルエーテルを混合して用いてもよい。(a)成分は、炭化水素基がひとつ結合したモノエーテル及び/又は炭化水素基がふたつ結合したジエーテルが好ましく、特にモノエーテルが好ましい。
【0013】
本発明の消臭剤組成物は、(a)成分を0.001質量%以上、好ましくは0.002〜5質量%、より好ましくは0.005〜3質量%、特に好ましくは0.01〜2質量%含有する。
【0014】
本発明に用いられる(b)成分の水溶性セルロース誘導体は、重量平均分子量が1万〜500万であり、対象物への付着性の観点から重量平均分子量は1万以上であり、5万以上が好ましく、10万以上が特に好ましい。又、スプレーの機械的耐久性の観点から重量平均分子量は500万以下であり、300万以下が好ましく、200万以下が特に好ましい。
【0015】
水溶性セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カチオン化セルロースなどが挙げられる。重量平均分子量は、好ましくは2万〜300万、特に5万〜200万が好ましい。これら水溶性セルロース誘導体の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定されたものである。本発明における水溶性セルロース誘導体とは、平均粒径100μm以下に粉末化した後、1質量%に相当する量を20℃以下の冷水に加え、スターラーや羽根攪拌などにより冷水中にその粉末を分散させた後、攪拌操作を続けながらこの混合液を約80℃まで徐々に加温し、温度を保ちながら、更に2時間程度攪拌を続けた混合液が澄明で、濁らないものをいう。
【0016】
本発明の消臭剤組成物は、(b)成分を0.001質量%〜0.5質量%、好ましくは0.002〜0.4質量%、より好ましくは0.003〜0.3質量%、更に好ましくは0.005〜0.2質量%含有する。
【0017】
本発明では、(a)成分と(b)成分とを併用することで、対象物への付着率が向上し優れた消臭性能を発揮する。好ましくは(a)成分/(b)成分の質量比が25/75〜80/20であり、この範囲では対象物への付着率が良好となる。
【0018】
本発明の消臭剤組成物中の(a)成分と(b)成分の合計含有量は、消臭性能とスプレーのしやすさの点から、0.002質量%以上であり、好ましくは0.002〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜0.5質量%、特に好ましくは0.05〜0.3質量%である。
【0019】
本発明の消臭剤組成物は、水溶性塩(c)を含むことで更に付着率が向上する。本発明における水溶性塩とは、水に対する溶解度が1%以上の化合物である。好ましくは水中でミセルを形成せずにイオン解離する化合物であり、より好ましくは水に溶解させた時に水素イオンまたは水酸化物イオンを形成しない分子量500以下の水溶性塩である。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明の消臭剤組成物における(c)成分の含有量は、組成物中、0.1〜5質量%、更に0.2〜2質量%が好ましい。
【0020】
本発明の消臭剤組成物のpHは6〜9.5であることが好ましい。pHがこの範囲であれば、汗・皮脂臭に対する効果が優れ、またアミン類等に対する効果が優れる。汗・皮脂臭及び調理臭、たばこ臭に対する効果、及び皮膚刺激低減の観点から、pHは6.5〜9が好ましく、6.8〜8.5が更に好ましい。
【0021】
本発明の消臭剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。
【0022】
本発明の消臭剤組成物には、更に、多価アルコール、他の消臭剤、及び一般に添加される各種の界面活性剤、溶剤、可溶化剤、油剤、ゲル化剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、色素、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0023】
本発明の消臭剤組成物の形態は、水を含有する液状の水系組成物が好ましく、特にスプレーとして衣類等の繊維製品や空間、人体(身体、毛髪)、ペット等の消臭に用いることができる。本発明の消臭剤組成物をスプレータイプの容器(すなわち、噴霧手段を具備する容器)に充填してなる、スプレー式消臭剤を得ることができる。本発明の消臭剤組成物は、特に水系消臭剤としてミストタイプのスプレー容器に充填し、噴霧時の体積平均粒径を1μm〜500μm、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。
【0024】
本発明の消臭剤組成物は、衣類・布製品上の汗などの臭いを消臭でき、かつ衣類・布製品などへの付着率が高いので、消臭効率に優れている。このため、本発明の消臭剤組成物は、スプレー回数が少なくても消臭効果の高い消臭剤組成物として使用することができる。
【実施例】
【0025】
実施例1〜5及び比較例1〜4
<消臭剤組成物の調製>
表2に示す配合処方の消臭剤組成物を調製した。なお、香料としては表1の香料組成物を使用し、消臭剤組成物は、pH調整剤(1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液)でpH(25℃)7.8に調整した。表2中の記号の成分は下記のとおりである。
【0026】
(a)成分
・a−1:n−オクチルグリセリルエーテル
・a−2:2−エチルヘキシルグリセリルエーテル
・a−3:イソデシルグリセリルエーテル
【0027】
(b)成分
・b−1:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCダイセル1350、重量平均分子量14万)
・b−2:カチオン化セルロース(ポリマーJR−30M、重量平均分子量70万)
・b−3:ヒドロキシエチルセルロース(HECダイセルSE−850、重量平均分子量150万)
【0028】
(c)成分
・c−1:リン酸二カリウムナトリウム
・c−2:クエン酸三カリウム
・c−3:炭酸ナトリウム
【0029】
・b’−1:メチルセルロース(重量平均分子量5000)
・非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エマルゲン105、花王(株)製)
・APAO:ラウラミドプロピルジメチルアミンオキサイド
【0030】
<消臭効果の評価>
(1)消臭対象物の調製
〔モデル汗臭試験布〕
木綿メリヤス布(6cm×6cm)に、臭気成分として、イソ吉草酸の10ppm水溶液をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて4回スプレーし(約0.16g)、30分間乾燥させた後、試験片とした。
【0031】
(2)消臭方法
上記方法にて得た試験片に、表2に示す配合処方の消臭剤組成物をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて6回スプレーし(計約0.24g)、1時間乾燥させた後、20℃、65%RHの環境下で臭い評価を行った。
【0032】
(3)消臭性能評価
30歳代の男性5人及び女性5人の計10人の熟練パネラーに、試験片の臭いを嗅いでもらい、下記の6段階の臭気強度表示法で評価し、その平均値を求めた。
0:無臭
1:何の臭いか分からないが、ややかすかに何かを感じる強さ(検知閾値のレベル)
2:何の臭いか分かる、容易に感じる弱い臭い(認知閾値のレベル)
3:明らかに感じる臭い
4:強い臭い
5:耐えられないほど強い臭い
平均値0以上1未満を◎、平均値1以上2未満を○、平均値2以上3未満を△、平均値3以上5以下を×として評価した。評価は◎又は○が好ましい。
【0033】
<付着率評価>
綿メリヤス布(染色試材株式会社谷頭商店)を50cm×50cmの布片に切り分け、ハンガーなどを用い広げた状態で垂直に吊るした。表2の組成物を容器に入れ、吉野M3トリガーを使用して、布の中心に向かって布の表面から15cm離れた位置にトリガーの先端を合わせ水平方向に1回スプレーし、直後に布の質量と吐出量を測定して下記式により付着率(%)を計算した。この操作を、布を取り替えて5回繰り返し、スプレー1回当りの付着率(%)(平均値)を求め、表2に示した。
【0034】
付着率(%)=〔(F1−F0)/(W0−W1)〕×100
0:スプレー前の布の質量(g)
1:スプレー後の布の質量(g)
0:スプレー前の容器と消臭剤組成物の合計質量(g)
1:スプレー後の容器と消臭剤組成物の合計質量(g)
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表2から、比較例の消臭剤組成物は汗臭に対しての消臭性能、布への付着率が低いのに対し、実施例の消臭剤組成物は汗臭に対する消臭性能、布への付着率が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)総炭素数6〜18の炭化水素基を有するグリセリルエーテルを0.001質量%以上、(b)重量平均分子量1万〜500万の水溶性セルロース誘導体を0.001質量%〜0.5質量%含有する消臭剤組成物。
【請求項2】
(c)水溶性塩を更に含有する、請求項1に記載の消臭剤組成物。

【公開番号】特開2007−282799(P2007−282799A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112414(P2006−112414)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】