説明

消臭性組成物

【課題】ポリペプチドを含有する消臭性組成物において、臭気特にアセトアルデヒド吸着性の改善された消臭性組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリペプチド、(B)ポリヒドロキシアミン化合物を含有することを特徴とする消臭性組成物は、優れたアセトアルデヒド吸着性を発揮する。この組成物は吸着されたものが再放散されることなく、有効に吸着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドとポリヒドロキシアミン化合物を含有する消臭性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キトサン、カテキン(緑茶ポリフェノール)などの有機系天然物を含有するフィルター(不織布)に関する研究が行われている。これらの有機系天然物を、不織布を構成する繊維に混ぜ込んだり、繊維表面に付着させたりすることによって、消臭性・VOC吸着性、抗菌・抗黴性、抗ウィルス性などの機能を付与することが出来、空気清浄機用フィルター、エアコン用フィルター、自動車エアコン用フィルター等として、採用されつつある。当該用途においては、煙草や自動車の排気ガスを主な発生源とする悪臭であるアセトアルデヒドの吸着性が求められている。キトサン、カテキンの場合、ホルムアルデヒドと容易に反応(化学吸着)して、高い除去性能を発揮するが、アセトアルデヒドの除去性能はやや劣る傾向があり改善の余地があった。
【0003】
また、皮革粉(コラーゲン)を含有するコーティングシートや、合成樹脂エマルジョンおよび親水性有機系天然物微粉末(コラーゲン)からなる繊維処理剤で処理された繊維が検討されているが、これらでも、アセトアルデヒド吸着性に関して、改善の余地があった(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−69503号公報
【特許文献2】特開平6−10268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、ポリペプチドを含有する消臭性組成物において、アセトアルデヒド吸着性の改善された消臭性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
1). (A)ポリペプチド、(B)ポリヒドロキシアミン化合物を含有することを特徴とする消臭性組成物。
【0008】
2). (A)ポリペプチドが、架橋コラーゲン、コラーゲン、シルク、卵殻膜から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1)に記載の消臭性組成物。
【0009】
3). (B)ポリヒドロキシアミン化合物が、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1)または2)に記載の消臭性組成物。
【0010】
4). (A)ポリペプチドが、架橋コラーゲンであって、単官能エポキシ化合物および/または金属塩を含有する処理液で架橋された再生コラーゲンであることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の消臭性組成物。
【0011】
5).金属塩がアルミニウム塩であることを特徴とする4)に記載の消臭性組成物。
【0012】
6). 1)〜5)のいずれかに記載の消臭性組成物を含有する消臭繊維。
【0013】
7). 1)〜5)のいずれかに記載の消臭性組成物を含有する不織布。
【0014】
8). 7)に記載の不織布を用いた消臭フィルター。
【発明の効果】
【0015】
本発明の消臭性組成物は、アセトアルデヒド吸着性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の消臭性組成物は(A)ポリペプチド、(B)ポリヒドロキシアミン化合物を含有することを特徴とする消臭性組成物である。
【0018】
本発明の(A)ポリペプチドとしては、架橋コラーゲン、コラーゲン、シルク、卵殻膜を用いることが好ましい。中でも、熱安定性が高く、耐水性が良好であることから、架橋コラーゲンであって、単官能エポキシ化合物および/または金属塩を含有する処理液で架橋された再生コラーゲンが好ましい。
【0019】
再生コラーゲンについて以下に説明する。
【0020】
以下の説明では、再生コラーゲン繊維、および再生コラーゲン繊維の粉末化による再生コラーゲン粉末の製造方法を記載しているが、製造方法は、これに限定されるものではない。
本発明の再生コラーゲンは、動物の皮膚、骨、腱などから可溶化コラーゲン溶液を製造し、架橋処理することにより製造される。特に、コラーゲンの徹底的な精製と、緻密な架橋が可能であるという特長を有する。
【0021】
上記コラーゲンの製造方法としては、例えば特開2002−249982号公報に開示されているように、原料は床皮の部分を用いることが好ましい。床皮としては、たとえば牛、豚、馬、鹿、兎、鳥、魚等の動物から得られるフレッシュな床皮や塩漬けした生皮が例示される。これら床皮は、大部分が不溶性コラーゲン繊維からなるが、グリセライド、リン脂質、遊離脂肪酸等の脂質、糖タンパク質、アルブミン等のコラーゲン以外のタンパク質等、不純物が存在するため、予めこれらの不純物を除去しておくことが好ましい。たとえば酸・アルカリ処理、酵素処理、溶剤処理等のような一般に行われている皮革処理を施せばよい。
【0022】
前記のような処理の施された不溶性コラーゲンは、架橋しているペプチド部を切断するために、可溶化処理が施される。可溶化処理の方法としては、一般に採用されている公知のアルカリ可溶化法や酵素可溶化法等を適用することができる。従来から知られているアルカリ可溶化法の改善された方法として、特公昭46−15033号公報に記載された方法を用いても良い。酵素可溶化法としては、たとえば特公昭43−25829号公報や特公昭43−27513号公報等に記載された方法を採用することができる。さらに、アルカリ可溶化法及び酵素可溶化法を併用しても良い。
【0023】
可溶化処理されたコラーゲンに、pHの調整、塩析、水洗や溶剤処理等の操作をさらに施した場合、品質等の優れたコラーゲンを得ることが可能なため、これらの処理を施すことが好ましい。得られた可溶化コラーゲンは、たとえば1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%程度の所定濃度の原液になるように塩酸、酢酸、乳酸等の酸でpH2〜4.5に調整した酸性溶液を用いて溶解される。
【0024】
なお、得られたコラーゲン水溶液には必要に応じて減圧攪拌下での脱泡や、水不溶性分の除去のための濾過を行ってもよい。さらに必要に応じて機械的強度の向上、耐水・耐熱性の向上、光沢性の改良、紡糸性の改良、着色の防止、防腐等を目的とした安定剤、水溶性高分子化合物等の添加剤が適量配合されてもよい。
【0025】
可溶化コラーゲン水溶液を、たとえば紡糸ノズルやスリットを通して無機塩水溶液に吐出することにより再生コラーゲン繊維が形成される。無機塩水溶液としては、たとえば硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム等の水溶性無機塩の水溶液が用いられ、通常これらの無機塩の濃度は10〜40重量%に調整される。無機塩水溶液のpHは、たとえばホウ酸ナトリウムや酢酸ナトリウム等の金属塩や塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウム等を配合することにより、通常pH2〜13、好ましくはpH4〜12となるように調整することが好ましい。
【0026】
pHが高すぎても低すぎても、コラーゲンのペプチド結合が加水分解を受けやすくなり、目的とする再生コラーゲンが得られにくくなる傾向がある。また、無機塩水溶液の温度は特に限定されないが、通常35℃以下であることが望ましい。温度が35℃より高い場合、可溶性コラーゲンが変性を起こすため、強度が低下し、安定した製造が困難となる。なお、温度の下限は特に限定されないが、通常、無機塩の溶解度に応じて適宜調整することができる。
【0027】
前記コラーゲンの遊離アミノ基を、単官能エポキシ化合物と反応させて、架橋することが好ましい。単官能エポキシ化合物を用いた場合、着色が少なく、耐水性が良好となる。
【0028】
単官能エポキシ化合物としては、たとえば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、酸化イソブチレン、酸化スチレン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレンオキシドグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、蟻酸グリシジル、酢酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、安息香酸グリシジル等のグリシジルエステル類、グリシジルアミド類等が挙げられる。反応性、反応後の処理の容易さから、エピクロロヒドリンを用いて処理することが好ましい。
【0029】
遊離アミノ基の修飾率は、アミノ酸分析により測定することが可能であり、架橋反応前のコラーゲン繊維のアミノ酸分析値、または原料として用いたコラーゲンを構成する遊離アミノ酸の既知組成を基準に算出することができる。再生コラーゲンの遊離アミノ基の修飾率は50%以上であることが好ましく、より好ましくは、65%以上、更に好ましくは80%以上である。修飾率が低い場合、耐熱性で良好な特性が得られ難い。
【0030】
再生コラーゲンは、金属塩の水溶液に浸漬することで架橋することが好ましい。架橋に用いる金属塩としては、アルミニウム塩、クロム塩、ジルコニウム塩、チタン塩を用いることができる。中でも着色が無く、耐水性が良好であることから、アルミニウム塩、またはジルコニウム塩であることが好ましい。特にはアルミニウム塩が好ましい。このアルミニウム塩水溶液のアルミニウム塩としては、次の式、Al(OH)nCl3-n、又はAl2(OH)2n(SO43-n(式中、nは0.5〜2.5である)で表される塩基性塩化アルミニウム又は塩基性硫酸アルミニウムが好ましい。具体的には、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ミョウバン等が用いられる。これらのアルミニウムは単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0031】
金属塩水溶液の金属塩濃度としては、当該金属の酸化物に換算して0.3〜5重量%であることが好ましい。この金属塩の濃度が低いと再生コラーゲン中の金属塩含有量が少なく、耐水性が不十分であり、また高い場合には処理後硬くなって風合いを損ねてしまう。
【0032】
この金属塩水溶液のpHは、例えば塩酸、硫酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いて通常2.5〜5に調整することが好ましい。このpHは、低すぎるとコラーゲンの構造を壊して変性させる傾向があり、また高すぎると金属塩の沈殿を生じるようになり、浸透し難くなる。
【0033】
金属塩水溶液の液温は特に限定されないが、50℃以下が好ましい。この液温が50℃を超える場合には、コラーゲンが変性する傾向がある。
【0034】
この金属塩水溶液にコラーゲンを浸漬する時間は、3時間以上、さらには4〜25時間が好ましい。この浸漬時間は、短いと金属塩の反応が進み難く、コラーゲンの耐水性が不充分となる。また、浸漬時間の上限には特に制限はないが、あまり長いと処理時間がかかり経済的に不利となる。通常は25時間以内で金属塩の反応は充分に進行し、耐水性も良好となる。なお、金属塩がコラーゲン中に急激に吸収されて濃度むらを生じないようにするため、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩を適宜前記金属塩の水溶液に添加しても良い。
【0035】
このように金属塩で処理され架橋された再生コラーゲンは、次いで水洗、オイリング、乾燥を行う。また必要に応じて、顔料、染料、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤等を添加することもできる。
【0036】
上記の方法により得られた再生コラーゲン繊維を、粉砕することで再生コラーゲン粉末とすることができる。
【0037】
再生コラーゲン繊維を、粉砕に適した繊維長に細断(粗粉砕)し、この細断したものをさらに粉砕するか、もしくは、繊維を直接粉砕することができる。細断(粗粉砕)には、たとえば、回転刃カッター、ベルトカッター、シャーリングマシン、カッターミル等を用いることができ、0.1mm〜数mm程度に細断することができる。
【0038】
さらに、この細断された再生コラーゲン繊維を、ボールミル(乾式、湿式)、ジェットミル、振動ミル、セントリフューガル(CF)ミル、ローラーミル、ロッドミル、ピンミル、遊星型ボールミル、グラインダーミル等の粉砕機を用いて微粉砕することでさらに細かい粉末を得ることができる。ボールミルを使用する場合、ボールの素材は、硬度の面でアルミナ、ジルコニアを用いることが好ましい。
【0039】
上記の粉砕機の種類や粉砕時間により、得られる再生コラーゲン粉末の粒子径を適宜調節することも可能であり、例えば振動ミルを使用した場合、1時間〜数十時間で、平均粒径5〜80μm程度のものが得ることができる。また、0.01〜10μmの平均粒径のものを得る場合には粉砕した再生コラーゲン粉末をさらに分級してもよい。
【0040】
再生コラーゲン粉末の平均粒径は、0.01〜80μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。大きすぎると、消臭速度が低下し、好ましくない。小さすぎると、水や有機溶剤への分散性が低下し、好ましくない。平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱法の1つであるマイクロトラック法により求めることができる。
【0041】
(B)ポリヒドロキシアミン化合物としては、たとえば、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0042】
これらの中でも、消臭性能の観点から、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオールなどを用いることが好ましい。
【0043】
ポリヒドロキシアミン化合物の無機酸または有機酸で中和した酸塩も使用可能であるが、消臭性能が低下することがあり、無機酸または有機酸を含まないポリヒドロキシアミン化合物を用いることが好ましい。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、炭素数1〜12の脂肪酸、炭素数1〜3のアルキル硫酸が挙げられる。
【0044】
上記のポリヒドロキシアミン化合物は、単独または2種以上を混合して用いることができる。ポリヒドロキシアミン化合物は、常法により製造することができる。ポリヒドロキシアミン化合物には、ポリペプチド粉末の溶媒特に水への分散性を高める効果を有する。例えば、再生コラーゲン粉末は、水単独には分散しにくいが、ポリヒドロキシアミン化合物を含有する水溶液に良好に微分散する。
【0045】
ポリペプチドは溶液あるいは分散液として用いることができる。これら溶液あるいは分散液とポリヒドロキシアミン化合物を混合して本願発明の組成物と成すことができる。溶媒としては水または無機塩を含有した水溶液が好ましい。また、水溶性の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトン等を併用しても構わない。
【0046】
本発明の消臭性組成物の形状は、溶液、分散液、粉末、繊維、不織布、塗膜、フィルム等が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0047】
本発明の消臭性組成物を含有する繊維の製造方法としては、たとえば、
(A)ポリペプチドからなる繊維を(B)ポリヒドロキシアミン化合物を含有する水溶液で処理する方法がある。また、
(A)ポリペプチドを含有する溶液あるいは分散液と(B)ポリヒドロキシアミン化合物を混合し、繊維化あるいは繊維に処理を施す方法がある。処理方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、繊維を浸漬した後、繊維を取り出し、脱液、乾燥する方法がある。
【0048】
浸漬時間は、30分以上、より好ましくは1時間以上である。30分以上であれば、表面への付着、繊維内部への浸透が充分となる。また、マングルなどを用いて脱液してもよい。また、乾燥温度は100℃以下であることが好ましい。100℃を越えると、ポリペプチドが熱劣化しやすく好ましくない。また、浸漬に代えてスプレー法を採用することもできる。
【0049】
本発明の消臭性組成物を含有する不織布の製造方法としては、例えば、ポリエステルなどの不織布を(A)ポリペプチドと(B)ポリヒドロキシアミン化合物を含有する組成物で処理する方法がある。また、不織布をポリペプチドで処理した後、金属塩を含む架橋液に浸漬して架橋し、さらに、ポリヒドロキシアミン化合物で処理する方法がある。
【0050】
本発明の消臭性組成物を含有する粉末の製造方法としては、例えば、(A)ポリペプチドからなる繊維を(B)ポリヒドロキシアミン化合物で処理した後、粉砕して粉末化する方法がある。
【0051】
あるいは、(A)ポリペプチドを含有する粉末を(B)ポリヒドロキシアミン化合物で処理して粉末として得ることもできる。
【0052】
本発明の消臭性組成物は、アセトアルデヒド吸着性に優れている。また、一度吸着したアセトアルデヒドを再び放出する、所謂、再放散性が低いという特徴を有する。更には、ホルムアルデヒド、アンモニア、トリメチルアミン、酢酸、イソ吉草酸などに対しても高い吸着性を有する。
【0053】
本発明の消臭性組成物および消臭性組成物を含有する繊維、不織布の使用形態および使用場所としては、空気清浄機用の消臭フィルター、室内エアコン用の消臭フィルター、自動車エアコン用の消臭フィルター、エアエレメント、オイルフィルター、自動車のシート、自動車内装材、ソファー、カーテン、絨毯、壁紙、衣料、防護服、消臭繊維、マスク、紙おむつ、生理用品などが挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0055】
(製造例1)再生コラーゲン繊維−Aの製造方法
牛の床皮を原料とし、アルカリで可溶化した皮片1200kg(コラーゲン分180kg)に30重量%に希釈した過酸化水素水溶液30gを投入後、乳酸水溶液で溶解し、pH3.5、固形分7.5重量%に調整した原液を作製した。原液を減圧下で撹拌脱泡機(株式会社ダルトン製、8DMV型)により撹拌脱泡処理し、ピストン式紡糸原液タンクに移送し、さらに減圧下で静置し、脱泡を行った。
【0056】
かかる原液をピストンで押し出した後、ギアポンプで定量送液し、孔径10μmの焼結フィルターで濾過後、孔径0.275mm、孔長0.5mm、孔数300の紡糸ノズルを通し、硫酸ナトリウム20重量%を含有してなる25℃の凝固浴(ホウ酸及び水酸化ナトリウムでpH11に調整)へ紡出速度5m/分で吐出した。
【0057】
次に、得られた再生コラーゲン繊維(300本、20m)を、エピクロロヒドリン1.7重量%、水酸化ナトリウム0.0246重量%、及び硫酸ナトリウム17重量%を含有した水溶液1.32kgに25℃で4時間浸漬した後、さらに反応液温度を43℃に昇温して2時間含浸した。
【0058】
反応終了後に反応液を除去後、流動型装置にて1.32kgの25℃の水を用いて3回バッチ水洗を行った。この後、硫酸アルミニウム5重量%、クエン酸三ナトリウム塩0.9重量%、水酸化ナトリウム1.2重量%を含有した水溶液1.32kgに30℃で含浸し、反応開始から2時間後、3時間後及び4時間後にそれぞれ5重量%水酸化ナトリウム水溶液13.2gを反応液に添加し、合計6時間反応させた。反応終了後に反応液を除去後、流動型装置にて1.32kgの25℃の水を用いて3回バッチ水洗を行った。
【0059】
ついで、作製した繊維の一部をプルロニック型ポリエーテル系静電防止剤からなる油剤を満たした浴槽に浸漬して油剤を付着させた。50℃に設定した熱風対流式乾燥機内部で繊維束の一方の端を固定し、他方の端に繊維1本に対して2.8gの重りを吊り下げ、緊張下で2時間乾燥させ、60dtexの再生コラーゲン繊維を得た。
【0060】
(製造例2)再生コラーゲン粉末−Aの製造方法
再生コラーゲン粉末−Aは製造例1に示した再生コラーゲン繊維−Aを物理的に粉砕することにより調製した。すなわち、まず、再生コラーゲン繊維30kgをカッターミルSF−8(株式会社三力製作所製)で1mm前後の長さに細断し、サイクロンCYC−600型(株式会社三力製作所製)を用いて回収した。
【0061】
次に、振動ミルFV−100(中央化工機株式会社製)を用いて粉砕を行った。283Lの容量のアルミナ製容器に同じアルミナ製のボール(径20mm)を充填容量80%、細断したコラーゲン繊維を充填容量50kgとなるように入れ、粉砕処理を24時間実施した。その結果、平均粒径(50%径)11.0μmの粉末を得た。この粉末を乾式分級機ミクロンセパレータMS−1H(ホソカワミクロン株式会社製)とパルスジェット式集塵機CP−16−6(ホソカワミクロン株式会社製)を用い、風量12m3/min(2次風量3m3/min)、回転数5000rpmで分級し、平均粒径5.0μmの粉末(以下、再生コラーゲン粉末−Aとする。)を得た。粉末の粒径は、湿式レーザー回折・散乱法により測定した。マイクロトラックMT3300(日機装株式会社製)を用い、メタノールを分散媒とした。
【0062】
(実施例1)
表1の配合(重量部)により2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール水溶液を作製し、再生コラーゲン繊維−Aを1時間浸漬させた。水溶液から繊維を取り出し、水分をよく絞り出した後、80℃のオーブンで1時間乾燥させ、消臭性組成物を含有する繊維を得た。水溶液処理前後での重量変化率(=処理後の繊維の重量/処理前の繊維の重量)は1.08であった。
【0063】
(実施例2)
表1の配合割合(重量部)により実施例1と同様にして、消臭性組成物を含有する繊維を得た。水溶液処理前後での重量変化率は1.02であった。
【0064】
(実施例3)
表1の配合(重量部)によりポリヒドロキシアミン化合物を2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールに変えた以外は実施例1と同様にして、消臭性組成物を含有する繊維を得た。水溶液処理前後での重量変化率は1.07であった。
【0065】
(比較例1〜2)
再生コラーゲン繊維−A、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(粒状)をそれぞれサンプルとした。
【0066】
(1)繊維およびポリヒドロキシアミンのアセトアルデヒド吸着性
バッグ法により測定した。容量3Lのテドラーバッグ(近江オドエアーサービス株式会社製)の中に繊維またはポリヒドロキシアミン(粒状)0.5gを入れ、ヒートシールした後、窒素1.5Lを注入した。アセトアルデヒドのメタノール溶液をアセトアルデヒド濃度が10ppmとなるように加えた。72時間後のアセトアルデヒド濃度をガス検知管No.92L(株式会社ガステック製)を使用して測定した。
【0067】
(2)再放散性(アセトアルデヒド)
上記の方法により、アセトアルデヒド吸着性を評価し終えた再生コラーゲン繊維をテドラーバッグから取り出し、別のテドラーバッグに入れ、ヒートシールした後、窒素1.5Lを注入した。60℃に設定したオーブンに入れ、1時間加熱した後、繊維から再び放出されるアセトアルデヒドの濃度をガス検知管No.92L(株式会社ガステック製)を使用して測定した。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例1〜3は、再生コラーゲン、ポリヒドロキシアミンを含有する繊維である。アセトアルデヒド吸着性に優れている。また、再放散性も無く、良好であった。比較例1は、ポリヒドロキシアミン水溶液で処理していない再生コラーゲン繊維である。アセトアルデヒド吸着性が不十分である。比較例2は、ポリヒドロキシアミン(粒状)である。アセトアルデヒド吸着性が不十分である。
【0070】
(実施例4)
表2の配合(重量部)により再生コラーゲン粉末、ポリヒドロキシアミンを含有する処理液を作製した。この処理液30gに、PET/ポリオレフィン系不織布AL040TCJ(金星製紙株式会社製、目付40g/m2)1.0g(250cm2)を浸漬させた後、水分をよく絞り出した後、80℃のオーブンで1時間乾燥し、消臭性組成物を含有する不織布を得た。水溶液処理前後での重量変化率(=処理後の不織布の重量/処理前の不織布の重量)は1.31であった。
【0071】
(実施例5)
表2の配合(重量部)によりベース不織布をレーヨン繊維不織布3020(金星製紙株式会社製、目付20g/m2)1.0g(500cm2)に変えた以外は実施例4と同様にして、消臭性組成物を含有する不織布を得た。水溶液処理前後での重量変化率は1.29であった。
【0072】
(実施例6)
表2の配合割合(重量部)により実施例4と同様にして、消臭性組成物を含有する不織布を得た。水溶液処理前後での重量変化率は1.30であった。
【0073】
(実施例7)
表2の配合(重量部)によりポリヒドロキシアミン化合物を2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールに変えた以外は実施例4と同様にして、消臭性組成物を含有する不織布を得た。水溶液処理前後での重量変化率は1.27であった。
【0074】
(実施例8)
表2の配合(重量部)によりバインダー樹脂としてバインテックスS−200L(大和化学工業株式会社製、シリコーン系樹脂)を加えた以外は実施例4と同様にして、消臭性組成物を含有する不織布を得た。水溶液処理前後での重量変化率は1.28であった。
【0075】
(実施例9)
表2の配合(重量部)によりポリペプチドとしてシルク粉末(平均粒径6.2μm)を用いた以外は実施例4と同様にして不織布を得た。水溶液処理前後での重量変化率は1.23であった。
【0076】
(比較例3〜4)
表2の配合(重量部)により実施例4と同様にして不織布を得た。水溶液処理前後での重量変化率は、それぞれ1.23、1.29であった。
【0077】
(比較例5)
PET/ポリオレフィン系不織布AL040TCJ(金星製紙株式会社製、目付40g/m2)をサンプルとした。
【0078】
(3)不織布のアセトアルデヒド吸着性
バッグ法により測定した。容量3Lのテドラーバッグの中に不織布250cm2を入れ、ヒートシールした後、窒素1.5Lを注入した。アセトアルデヒドのメタノール溶液をアセトアルデヒド濃度が10ppmとなるように加えた。24時間後のアセトアルデヒド濃度をガス検知管No.92L(株式会社ガステック製)を使用して測定した。
【0079】
(4)ポリペプチド粉末の分散性
処理液の概観を目視で判定した。○:凝集粒子がほとんど観られない。△:凝集粒子が少量確認される。×:凝集粒子が多数確認される。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例4〜9は、ポリペプチド粉末、ポリヒドロキシアミンを含有する処理液で処理された不織布である。アセトアルデヒド吸着性に優れている。また、水溶液へのポリペプチド粉末の分散性も良好であった。
【0082】
比較例3は、ポリペプチド粉末で処理した不織布である。アセトアルデヒド吸着性が低く、ポリペプチド粉末の分散性も低い。比較例4は、ポリヒドロキシアミン化合物で処理した不織布である。アセトアルデヒド吸着性が低い。比較例5は、ベース不織布(PET/ポリオレフィン系)である。アセトアルデヒド吸着性が低い。
【0083】
(5)繊維のホルムアルデヒド吸着性
バッグ法により測定した。容量3Lのテドラーバッグの中に繊維0.5gを入れ、ヒートシールした後、窒素1.5Lを注入した。ホルムアルデヒドのメタノール溶液をホルムアルデヒド濃度が20ppmとなるように加えた。24時間後のホルムアルデヒド濃度をガス検知管No.91(株式会社ガステック製)を使用して測定した。
【0084】
(6)再放散性(ホルムアルデヒド)
上記の方法により、ホルムアルデヒド吸着性を評価し終えた再生コラーゲン繊維をテドラーバッグから取り出し、別のテドラーバッグに入れ、ヒートシールした後、窒素1.5Lを注入した。60℃に設定したオーブンに入れ、1時間加熱した後、繊維から再び放出されるホルムアルデヒドの濃度をガス検知管No.91(株式会社ガステック製)を使用して測定した。
【0085】
【表3】

【0086】
実施例1は、本発明の消臭性組成物を含有する再生コラーゲン繊維である。ホルムアルデヒド吸着性に優れている。また、再放散性が観られず、良好であった。比較例1は、再生コラーゲン繊維である。ホルムアルデヒド吸着性が不十分であり、再放散性が観られた。
【0087】
(製造例3)不織布処理用のコラーゲン水溶液の製造方法
牛の床皮を原料とし、アルカリで可溶化した皮片1200kg(コラーゲン分180kg)に30重量%に希釈した過酸化水素水溶液30gを投入後、乳酸水溶液で溶解し、pH3.5、固形分7.5重量%に調整した原液を作製した。原液を減圧下で撹拌脱泡機(株式会社ダルトン製、8DMV型)により撹拌脱泡処理し、ピストン式紡糸原液タンクに移送し、さらに減圧下で静置し、脱泡を行った。水で希釈し、固形分濃度0.18wt%に調整したものを不織布処理用のコラーゲン水溶液とした。
【0088】
(製造例4)アルミニウム架橋液の製造方法
水942mlに、クエン酸ナトリウム10g、25%水酸化ナトリウム水溶液33.2ml、硫酸アルミニウム90.5g、芒硝159.75gを加え、よく攪拌し、アルミニウム架橋液とした。
【0089】
(実施例10)
下記の方法により、ベース不織布をアルミニウム架橋されたコラーゲン不溶物で被服した後、ポリヒドロキシアミンで処理し、消臭性組成物を含有する不織布を作製した。すなわち、PET/ポリオレフィン系不織布AL040TCJ(金星製紙株式会社製、目付40g/m2)を製造例3のコラーゲン水溶液に浸漬し、室温で1時間振とうさせた後に、製造例4のアルミニウム架橋液に浸漬した。一晩室温で静置した後に十分量の水で水洗し、その後、不織布を風乾した。重量変化率は1.06であった。さらに、5wt%の2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール水溶液に浸漬し、水分をよく絞り出した後、80℃のオーブンで1時間乾燥し、消臭性組成物を含有する不織布を得た。水溶液処理前後での重量変化率は1.13であった。
【0090】
不織布のアセトアルデヒド吸着性をバッグ法により測定した。容量3Lのテドラーバッグの中に不織布250cm2を入れ、ヒートシールした後、窒素1.5Lを注入した。アセトアルデヒドのメタノール溶液をアセトアルデヒド濃度が10ppmとなるように加えた。24時間後のアセトアルデヒド濃度をガス検知管No.92L(株式会社ガステック製)を使用して測定した結果、アセトアルデヒド濃度は0.2ppm未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリペプチド、(B)ポリヒドロキシアミン化合物を含有することを特徴とする消臭性組成物。
【請求項2】
(A)ポリペプチドが、架橋コラーゲン、コラーゲン、シルク、卵殻膜から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の消臭性組成物。
【請求項3】
(B)ポリヒドロキシアミン化合物が、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の消臭性組成物。
【請求項4】
(A)ポリペプチドが、架橋コラーゲンであって、単官能エポキシ化合物および/または金属塩を含有する処理液で架橋された再生コラーゲンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消臭性組成物。
【請求項5】
金属塩がアルミニウム塩であることを特徴とする請求項4に記載の消臭性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の消臭性組成物を含有する消臭繊維。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の消臭性組成物を含有する不織布。
【請求項8】
請求項7に記載の不織布を用いた消臭フィルター。

【公開番号】特開2010−254909(P2010−254909A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109477(P2009−109477)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】