説明

消臭組成物およびその製造方法

【課題】本発明は、消臭成分が水に安定した状態で分散され、在庫中に沈殿することがなく、また、布帛に加工した後に白化することのない、消臭組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】平均粒径が10nm〜100μmの消臭成分を水に分散させた状態で、湿式粉砕機に投入して、平均粒径を300nm以下に微粉砕することにより、消臭成分が容器の底に沈殿することのない液安定性の良好な消臭組成物が得られることを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内における空気中のホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸等の悪臭を効率よく吸着除去することができる消臭組成物であって、加工液中に消臭成分が沈殿したり、繊維等に担持したときに白化することなく、優れた消臭効果とソフトな風合いを保つことのできる消臭組成物とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から繊維製布帛に、難燃性、消臭性、防汚性、防虫性、抗菌性等の機能性を付与するために、繊維製布帛の繊維に難燃剤、消臭剤、防汚剤、防虫剤、抗菌剤等の各種機能性薬剤を付与する技術が提供されている。
【0003】
出願人は、特許文献1において、ポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物と、金属酸化物から選択された少なくとも1種の化合物と、多孔質無機物質とからなる消臭組成物をバインダー樹脂を介して繊維に固着した消臭布帛を開示している。
【特許文献1】特願2007−096543号
【0004】
しかしながら、特許文献1の消臭組成物を布帛に加工しようとすると、消臭成分が凝集し、容器の底に沈殿したり、布帛に塗布して乾燥すると、布帛の色が白く濁ったようになり、特に黒色等の濃い色目の布帛では、白く見える(白化)現象を発現し、対策が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、消臭成分が水に安定した状態で分散され、在庫中に沈殿することがなく、また、布帛に加工した後に白化することのない、消臭組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、平均粒径が10nm〜100μmの消臭成分を水に分散させた状態で、湿式粉砕機に投入して、平均粒径を300nm以下に微粉砕することにより、消臭成分が容器の底に沈殿することのない液安定性の良好な消臭組成物が得られることを見出し本発明に到達した。前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0007】
[1]平均粒径が10nm〜100μmの、多孔質無機物質と、金属酸化物と、ポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物とを含む消臭組成物の製造方法であって、前記3者の消臭成分と分散剤と水を混合し、該混合物を湿式粉砕機に投入し、微粉砕して、前記3者の消臭成分の平均粒径を300nm以下にしたことを特徴とする消臭組成物の製造方法。
【0008】
[2]前記消臭組成物100重量部に対し、アニオン系分散剤を0.1〜5重量部含むことに特徴のある前項1に記載の消臭組成物の製造方法
【0009】
[3]前項1または2に記載の製造方法で作成した消臭組成物。
【発明の効果】
【0010】
[1]の発明によれば、平均粒径が10nm〜100μmの、多孔質無機物質と、金属酸化物と、ポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物の消臭成分と分散剤と水を混合し、該混合物を湿式粉砕機に投入し、さらに微粉砕して、前記3者の消臭成分の平均粒径を300nm以下にするので、一度混合時に凝集の始まった消臭成分がさらに微粉砕されることになり、消臭成分の平均粒径が300nm以下になるまで微粉砕されるので、再凝集しにくい消臭組成物の製造方法とすることができる。
【0011】
[2]の発明によれば、前記消臭組成物100重量部に対し、アニオン系分散剤を0.1〜5重量部含むので、pH値、温度等の変化があっても再凝集が防止され、分散性の優れた消臭組成物の製造方法とすることができる。
【0012】
[3]の発明によれば、前項1または2に記載の製造方法で作成しているので、加工中に消臭成分が容器の底に沈殿することが防止され、液安定性の良好な消臭組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の消臭組成物には、平均粒径が10nm〜100μmの、多孔質無機物質と、金属酸化物と、ポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物が含まれる。これらの消臭性分を例えば布帛に塗布してやれば、室内における空気中のアンモニア、トリメチルアミン等の塩基性ガスや、硫化水素、メルカプタン類等の硫黄系ガス、酢酸等の酸性ガスの悪臭を効率よく吸着除去することができるとともに、アセトアルデヒド等の中性ガスの悪臭を効率よく効果的に消臭する布帛とすることができる。しかしながら、混合後に時間を経過すると消臭成分の凝集が発現し、平均粒径が大きくなり、加工液中に沈殿したり、散布ノズルを詰まらせたりして、消臭成分の凝集の問題は解決しなければならない課題となっていた。
【0014】
本発明は、一度水等に該消臭成分を分散させたあと、さらに湿式粉砕機に投入して平均粒径が300nm以下になるまで微粉砕することにより、再凝集しにくい消臭組成物とすることができ、特定の分散剤を使用することによって、さらに安定した、分散性に優れた消臭組成物とするものである。
【0015】
本発明の消臭組成物を構成する平均粒径が10nm〜100μmの多孔質無機物質は、多孔質故に表面積が大きく、悪臭の吸着能力の優れたものとなる。このような多孔質無機物質としては、例えば活性炭、ゼオライト、麦飯石、シリカゲル等が挙げられる。中でも、酢酸やアンモニアガス等に対して優れた吸着能を有するゼオライトを用いるのが好ましく、また、ゼオライトは、布帛等に加工したとき白色系であり、活性炭のように黒く汚れたようになることはないので好適である。ゼオライトは、ケイ素とアルミニウムが酸素を介して三次元的に結合した骨格構造をしていて、この骨格中に分子レベルの穴(細孔)が開き、水や有機分子など様々な分子を骨格中に取り込むことから、吸着剤として非常に有用なものである。ゼオライトには、種々のものが存在し、中でも人工ゼオライトのMFI型ゼオライトは、結晶構造に由来する2種類の細孔が三次元的につながっていることから、吸着剤として非常に効果のあるものとして認められている。MFI型ゼオライトを、吸着剤として使用すれば、アルデヒド類や1−ノネン等の微量な中性ガスの吸着にも優れた効果を発揮することができる。
【0016】
また、本発明の消臭組成物を構成する平均粒径が10nm〜100μmの金属酸化物としては、例えば酸化銅、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物を挙げられるが、これら例示のものに特に限定されるものではない。金属酸化物は、酸性ガスに有効で、酢酸、硫化水素等のガスに優れた消臭効果を発揮することができる。
【0017】
また、平均粒径が10nm〜100μmのポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物としては、例えば多孔質二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム等にポリアミン化合物を担持したものが挙げられる。ポリアミン化合物は、分子内に第一級アミノ基を一個以上有している化合物であれば脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミンのいずれも使用でき、例えばジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。ポリアミン化合物を担持する方法としては、例えばポリアミン化合物の水溶液を作成し、この水溶液中に多孔質二酸化ケイ素を浸漬し、これを加熱焼成することによってポリアミン化合物を担持した二酸化ケイ素化合物を得ることが出来る。ポリアミン化合物は、アルデヒトガスの消臭に有効で、多孔質物質や金属酸化物を併用することにより、様々な悪臭を効果的に消臭することができる。
【0018】
多孔質無機物質と金属酸化物とポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物の配合比率は特に限定しないが、酸化チタン等金属酸化物の配合量が増えると、例えば担持した繊維布帛等を劣化させる原因となる。また、ゼオライト等の多孔質物質の配合量が増えると、例えば担持した繊維布帛等を白化させる原因となり好ましくない。多孔質物質と金属酸化物とポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物の配合比率としては、5:0.5:4.5〜6.5:1.5:2が好適である。
【0019】
本発明では、多孔質無機物質と金属酸化物とポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物とを一定比率に配合し、分散剤とともに水に分散させて、消臭成分の水分散液を得る。このまま放置するとある条件(pH値、温度等)によっては凝集が発現し、消臭成分の平均粒径が大きくなり、加工液中に沈殿したり、散布ノズルを詰まらせたりして問題となっていたが、本発明は、消臭成分の水分散液を湿式粉砕機に投入し、微粉砕して、前記3者の消臭成分の平均粒径を300nm以下にすることにより、再凝集と白化の問題の解決を図るものである。水100重量部に対し、消臭成分を5〜20重量部加え攪拌して消臭成分の水分散液を得るのが好ましい。
【0020】
湿式粉砕機としては、公知のものを使用でき、例えばビーズミル、ボールミル等が挙げられ、本発明の消臭成分の水分散液を湿式粉砕機に投入し、一定時間粉砕して目的の粒径の消臭成分の水分散液を得る。また、消臭成分の平均粒径を300nm以下にすることにより、光の反射が押さえられ透明感のある粉砕物となって、繊維布帛等に担持したときに白化するのを防ぐことができる。
【0021】
また、消臭成分の水分散液の液安定性をはかるために、消臭組成物100重量部に対し、アニオン系分散剤を0.1〜5重量部含むのが好ましい。アニオン系分散剤以外の分散剤では、条件(pH値、温度等)によっては凝集が発現することがあり好ましくない。また、アニオン系分散剤が0.1重量部を下回る添加量では、その効果は少なく、5重量部を超えて添加しても添加量に見合った効果は得られなかった。
【0022】
こうして得られた消臭組成物をバインダー樹脂溶液と調合し加工液を作成してから、繊維布帛等に塗布して、乾燥することにより、白化することのない、消臭布帛を得ることができる。この時、これらの消臭成分、バインダ−樹脂を可能な限り分散させることが好ましく、バインダ−樹脂については、水との間でエマルジョン状態を形成することがより好ましい。また、調合の際予め先に消臭組成物を水に分散させておいてから、バインダ−樹脂を分散するのが、消臭成分とバインダ−樹脂をより均一に分散させるのに好ましい。
【0023】
前記バインダ−樹脂は、どのような樹脂でも使用することができる。例えば、自己架橋型アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、グリオキザ−ル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ブタジエン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル−シリコン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合体樹脂、エチレン−スチレン−アクリレート−メタアクリレ−ト共重合体樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂を2種類以上混合してバインダ−樹脂としてもよい。
【0024】
また、繊維布帛等に担持するときに、バインダー樹脂の配合量が増えると、多孔質物質や金属酸化物の表面をバインダー樹脂が表面を覆ってしまうようになり、消臭性能が低下することから、多孔質物質と金属酸化物とポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物とバインダー樹脂の四者の配合バランスが大切である。
【実施例】
【0025】
なお、この発明における凝集性試験の評価方法、白化試験の評価方法は次の通りである。
【0026】
<凝集性試験>
【0027】
加工液を作成してから、30分間放置し、容器の底に沈殿物がある場合を「×」、沈殿物のない場合を「○」、24時間放置し沈殿物のない場合を「◎」と評価した。
【0028】
<白化試験>
布帛に加工を施していないものと目視で比較し、明らかに白く変色しているものを「×」、やや白く変色しているものを「△」、やや変色しているものを「○」、全く変色していないものを「◎」と評価した。
【0029】
<実施例1>
次に、この発明の一例として、リン酸グアニジンによって難燃処理を施したポリエステル製の黒色のカーテン生地(目付435g/mPH5)を、リン酸ナトリウム水溶液で中和処理し乾燥した難燃性カーテン生地(PH7)を用意した。次ぎに、平均粒径10nmの酸化亜鉛0.5重量部と、平均粒径5μmのMFI型ゼオライト3.0重量部と、ジエチレントリアミンを担持した平均粒径10μmの二酸化ケイ素2.0重量部を84重量部の水に加え、アニオン系分散剤(東亜合成株式会社製 アロン T−50)を0.5重量部加えた後、攪拌機により攪拌を行ない、分散液を得た。次にこの分散液を、ビーズミル機に投入し、20分間かけて、微粉砕し、平均粒径が250nmになるのを確認した。この消臭組成物の凝集性試験では、「◎」の評価を得た。さらにこの消臭組成物100重量部に対し10重量部のアクリルシリコン系バインダー樹脂(固形分25%)を加え、良く攪拌して均一な加工液を得た。次に、この処理液中に、前記難燃性カーテン生地(PH7)を浸漬し、マングルで絞った後、130℃、15分間乾燥させ、難燃性カーテン生地を得た。酸化亜鉛のカーテン生地への付着量は、0.5g/m、MFI型ゼオライトのカーテン生地への付着量は3.0g/m、ジエチレントリアミンを担持した二酸化ケイ素のカーテン生地への付着量は2.0g/mであった。こうして得られた難燃性消臭カーテン生地について、白化の評価を行ったところ「○」の評価であった。
【0030】
<実施例2>
実施例1において、アニオン系分散剤を3重量部加えビーズミル機に投入し、1時間かけて、微粉砕し平均粒径が120nmになるのを確認した以外は実施例1と同様にして消臭組成物を得た。この消臭組成物の凝集性試験では、「◎」の評価を得た。また白化の評価では、「◎」の評価であった。
【0031】
<比較例1>
実施例1において、アニオン系分散剤にかえて、ノニオン系分散剤(ライオン株式会社製 SC−50)2重量部とした以外は実施例1と同様にして消臭組成物を得、凝集性試験をおこなったところ、30分間の放置で、沈殿物がみられ、評価としては「×」と判定された。また、白化試験でも「×」の評価であった。
【0032】
<比較例2>
実施例1において、ビーズミル機に投入しなかった以外は実施例1と同様にして消臭組成物を得、凝集性試験をおこなったところ、30分間の放置では、沈殿物はなかったが、24時間放置では沈殿物がみられ、評価としては「○」と判定された。また、白化試験では、「△」の評価であった。
【0033】
<比較例3>
実施例1において、アニオン系分散剤を投入しないで、20分間微粉砕した以外は実施例1と同様にして消臭組成物を得、凝集性試験をおこなったところ、30分間の放置で沈殿物がみられ、評価としては「×」と判定された。また、白化試験では「×」の評価であった。
【0034】
<比較例4>
実施例1において、アニオン系分散剤(東亜合成株式会社製 アロン T−50)を0.05重量部加えた後、攪拌機により攪拌を行なった以外は実施例1と同様にして消臭組成物を得、凝集性試験をおこなったところ、30分間の放置で沈殿物がみられ、評価としては「×」と判定された。また、白化試験では「△」の評価であった。
【0035】
<比較例5>
実施例1において、10分間かけて微粉砕し、平均粒径が0.5μmになるのを確認した以外は実施例1と同様にして消臭組成物を得、凝集性試験をおこなったところ、30分間の放置で沈殿物はなかったが、24時間放置では沈殿物がみられ、評価としては「○」と判定された。また、白化試験では、「△」の評価であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が10nm〜100μmの、多孔質無機物質と、金属酸化物と、ポリアミン化合物を担持した無機ケイ素化合物とを含む消臭組成物の製造方法であって、前記3者の消臭成分と分散剤と水を混合し、該混合物を湿式粉砕機に投入し、微粉砕して、前記3者の消臭成分の平均粒径を300nm以下にしたことを特徴とする消臭組成物の製造方法。
【請求項2】
前記消臭組成物100重量部に対し、アニオン系分散剤を0.1〜5重量部含むことに特徴のある請求項1に記載の消臭組成物の製造方法
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の製造方法で作成した消臭組成物。

【公開番号】特開2010−94406(P2010−94406A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269632(P2008−269632)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】