説明

消色型電子写真トナーの製造方法及び消色型電子写真トナー

【課題】 消色後の視認性を向上させ、消色前の印字情報を消色後に識別、復元し難くすることの可能な消色型電子写真トナーの製造方法及び消色型電子写真トナーを提供すること。
【解決手段】 結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤を混合し、前記混合により得た混合物を溶融混練し、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、蛍光増白剤をトナー質量の0.2質量%を超え、10質量%未満の量を添加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消色型電子写真トナーの製造方法及び消色型電子写真トナーに係り、特に、消色後の視認性の向上が可能な消色型電子写真トナーの製造方法及び消色型電子写真トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
消色可能なロイコ色素を用いた消色トナーや近赤外線に反応する消色可能な光感応性トナーを用いて複写機やプリンタにより画像形成された印字物を、熱や光によって消去し、用紙を再生する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。それらの画像形成装置は、装置内部あるいは外部にトナーの消色部を備えている。光感応性トナーを用いて印字をした印字済み用紙の内容が不要となった場合、まずその用紙をその消色部にて消色し、印字可能な状態に戻し、再度その用紙を利用可能とするものである。
【0003】
用紙に印字した文字等を消去するには、文字を形成するトナーの色を消色すればよく、なんらかの方法にて用紙に消色工程を施すものである。昨今のニーズとしては、省エネルギーかつ高速オンデマンドにて完全に消色することが要求されている。これらの要求の達成には、トナーが高い消色性と消色後の高い視認性を有すること、即ち消色後の画像を下地の用紙の色といかに近接させるかが必要となる。
【0004】
しかし、従来の光感応性トナーでは、消色が十分でなく、色味が残ってしまったり、消色した後に黄変してしまったりする場合があり、消色前の印字情報が認識できるという不具合があった。その場合には、用紙の再使用に差し障りがある場合や、消色した元の情報が容易に復元できてしまい、情報の漏洩に繋がる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−61247号公報
【特許文献2】特開2000−19770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、消色後の視認性を向上させ、消色前の印字情報を消色後に識別、復元し難くすることの可能な消色型電子写真トナーの製造方法及び消色型電子写真トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤を混合し、前記混合により得た混合物を溶融混練し、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、蛍光増白剤をトナー質量の0.2質量%を超え、10質量%未満の量を添加することを特徴とする消色型電子写真トナーの製造方法を提供する。
【0008】
以上の本発明の第1の態様において、前記蛍光増白剤として、スチルベン系化合物、ベンゾオキサゾリルスチルベン系化合物、クマリン系化合物、ピラゾール系化合物及びオキサゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0009】
また、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤の混合の際、更に帯電制御剤を混合することができる。
【0010】
また、前記溶融混練により得た混練物を粉砕することができる。
【0011】
更に、前記トナー質量は、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記蛍光増白剤、ワックスの合計の質量とすることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、以上の消色型電子写真トナーの製造方法によって作製されたことを特徴とする消色型電子写真トナーを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、消色後の視認性を向上させることの可能な消色型電子写真トナーの製造方法及び消色型電子写真トナーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る消色型電子写真トナーを用いて印字された被転写媒体を消色して再生し、再度印字するための色消機能付プリンターを示す図である。
【図2】実施例及び比較例に係るトナーを用いて印字した画像サンプルを示す図である。
【図3】図2に示す画像サンプルを図1に示す色消機能付プリンターにより、色消して得た画像サンプルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の種々の実施形態について説明する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る消色型電子写真トナーは、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤および帯電制御剤を混合、溶融混練、及び粉砕してなるものである。これら結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤及び帯電制御剤の混合する際、及び/又は溶融混練する際に、蛍光増白剤がトナー質量の0.2質量%を超え、10質量%未満の量添加されている。
【0017】
蛍光増白剤は、一般に、布や紙等に添加して、白さを増大させる化学物質を言い、染料の1種である。蛍光増白剤は、波長300〜400nmの紫外線を吸収し、波長400〜450nmの青色の可視光線に変換し、放出するように作用する。その結果、青の補色である黄色の黄ばみを目立たなくするという効果を発揮する。
【0018】
通常、消色後のトナー中のバインダ樹脂は、従来の樹脂色になり、消色後の画像または印字はやや黄ばんでしまう。同様に、トナー中の色素も消色後は僅かに黄ばんでしまう。これに対し、蛍光増白剤は紫外域を吸収し、青紫〜青緑光を反射するという機能を有するので、消色型トナーに添加された蛍光増白剤は、消色後の印字部が黄ばむのを目立たなくする効果を発揮するものと推察され、実際に、消色後の印字部の黄変を抑制することができた。その結果、消色後の視認性の向上に有効であった。
【0019】
なお、一般に増白効果を有する薬剤として酸化チタンや酸化亜鉛が知られているが、消色後の印字部の黄変を抑制する効果はない。
【0020】
本実施形態に係る消色型電子写真トナーに好ましく用いられる蛍光増白剤として、スチルベン系化合物、ベンゾオキサゾリルスチルベン系化合物、クマリン系化合物、ピラゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、ピレン系化合物、オキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾロン系化合物等を挙げることができる。これらの蛍光増白剤の中では、スチルベン系化合物が特に好ましい。スチルベン系化合物の具体例として、HAKKOL RF (Biz(2-benzoxazolyl)stilbene) (商品名:昭和化学(株)製) を挙げることができる。
【0021】
以上のように構成される消色型電子写真トナーを用いて、電子写真プロセスにより印字又は画像を形成すると、印字又は画像は、可視光下では高い画像濃度であるが、近赤外線を照射すると、印字又は画像が消色する。これは、次のような現象に基づく。
【0022】
すなわち、印字又は画像に近赤外線を照射すると、トナー中の近赤外線吸収色素が励起状態になり、消色剤と反応し、消色現象が生ずる。その結果、印字又は画像が消色し、用紙、OHP用紙等の被転写媒体を再利用することが可能となる。
【0023】
本実施形態に係る消色型電子写真トナーは、原料の混合及び/又は溶融混練の際に、蛍光増白剤がトナー質量の0.2質量%を超え、10質量%未満の量添加されている。そのため、消色後の視認性を向上させ、消色前の印字情報を消色後に識別、復元し難くすることが可能である。
【0024】
蛍光増白剤の添加量は、好ましくはトナー質量の0.3〜2.0質量%であり、最も好ましくは1質量%程度である。トナー質量とは、いわゆる内添剤と呼ばれる、近赤外線吸収色素、消色剤(又は顕色剤)、ワックス、帯電制御剤、結着樹脂、蛍光増白剤の合計の質量であり、蛍光増白剤の添加量(質量%)は、このトナー中に含まれる質量%である。トナー質量には、外添剤であるシリカは含まない。
【0025】
これに対し、蛍光増白剤の添加量がトナー質量の0.2質量%以下、または10質量%以上の場合には、蛍光増白剤の添加による効果が発揮されず、消色後のトナー中のバインダ樹脂が、従来の樹脂色になり、消色後の画像または印字はやや黄ばんでしまう。その結果、消色前の印字情報が消色後に識別、復元されてしまう。
【0026】
なお、消色反応は、近赤外線吸収色素の色素カチオンが消色剤のアルキル基と結合することにより生ずる。なお、消色トナーにおける近赤外線吸収色素と消色剤の比率は、消色反応後に未反応の近赤外線吸収色素が残留しないように、適宜選択される。
【0027】
本実施形態に係る消色トナーに含まれる近赤外線吸収色素としては、従来公知のものを用いることが出来る。そのような近赤外線吸収色素として、例えば、特開平4−362935号公報及び特開平5−119520号公報に記載されているものがある。具体的な近赤外線吸収色素の例として、例えば、下記式に示すようなIRT(商品名、昭和電工(株)製)を挙げることが出来る。
【化1】

【0028】
式中、X及びYは、いずれもN(Cを表し、Zは下記式に示す対イオンである。
【化2】

【0029】
消色剤としては、従来公知の4級アンモニウムホウ素錯体を用いることが出来る。そのような4級アンモニウムホウ素錯体として、例えば、特開平4−362935号公報及び特開平5−119520号公報に記載されているものがある。具体的な4級アンモニウムホウ素錯体の例として、下記式に示すP3B(商品名、昭和電工(株)製)を挙げることが出来る。
【化3】

【0030】
結着樹脂としては、公知のものを含む広い範囲から選択することができる。具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、およびスチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂をはじめ、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、キシレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示でき、これらの樹脂を二種類以上組み合わせて用いてもよい。なお、これらの樹脂のうち、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0031】
帯電制御剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能である。
【0032】
本発明の一実施形態に係る消色トナーは、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤、帯電制御剤、添加樹脂以外に、離型材を含むことができる。離型剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能である。
【0033】
以下、図面を参照して、以上説明した消色型電子写真トナーを用いて印字された被転写媒体を消色して再生し、再度印字するための色消機能付プリンターについて説明する。
【0034】
図1に示すプリンターは、市販されているプリンター(N3500:カシオ計算機(株)製)を改造したものである。このプリンターでは、印字ベルト1の周囲に、光感応性トナー現像器2、消色用ヒータ3、消色用LEDヘッド4、転写部5、定着部6が配置されている。このプリンターの底部には光感応性トナーを用いて印字された被転写媒体Pを収納するカセット7が配置され、上部には、光感応性トナーを用いて再印字された被転写媒体を排出する排紙部8が配置されている。なお、光感応性トナー現像器2には、光感応性トナーを収納する光感応性トナーカートリッジ9が取り付けられている。
【0035】
図1に示すプリンターは、次のようにして動作する。
【0036】
最初に、カセット7から光感応性トナーを用いて印字された被転写媒体Pが取り出され、被転写媒体経路10に沿って各部を通る。被転写媒体Pは、紙等の用紙、OHP用紙を含む。即ち、被転写媒体Pは、消色用ヒータ3及び消色用LEDヘッド4により熱が加えられるとともに近赤外線が照射され、印字が消色される。次いで、印字が消色された被転写媒体は転写部5において、現像された光感応性トナーの画像が転写される。現像された光感応性トナーの画像は、光感応性トナーカートリッジ9から供給された光感応性トナーを用いて、光感応性トナー現像器2により現像された画像であり、印字ベルト1により転写部5に送られたものである。
【0037】
転写部5において転写された光感応性トナーの画像は、被転写媒体経路10に沿って更に定着部に送られ、そこで定着処理が行われ、その後、排紙部8に排紙され、操作が完了する。
【0038】
以上のプリンターの動作では、ハロゲンランプヘッド3の出力は50mW/cm、消色用ヒータ2の温度設定は100℃とした。被転写媒体経路4は、任意の設定速度に変更可能である。
【0039】
以下に本発明の実施例と比較例を示し、本発明の効果について具体的に説明する。
【0040】
実施例1
使用する光感応性トナーを以下のようにして製造した。
【0041】
波長817nmに感度を持つ赤外線感光色素「IRT」(昭和電工(株)製)1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工(株)製)7.5質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王(株)製)86.7質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.5質量部、カルナバWAX1号粉末(加藤洋行(株)輸入品)2.5質量部、及び蛍光増白剤「Shigenox 101」(ハッコールケミカル(株)製)0.3質量部からなる原料をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入し、混合した。
【0042】
続いて、この混合物を二軸混錬機で溶融混錬した。次いで、得られた混錬物をロートプレックス(ホソカワミクロン(株)製)で粗砕して、粗砕物を得た。得られた粗砕物を衝突式粉砕機にて、平均粒径が9μmになるように粉砕した。得られた粉砕物100質量部に外添剤としてシリカ「R972」(日本アエロジル(株)製)を1質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、光感応性トナーを得た。
【0043】
実施例2
トナー用ポリエステル結着樹脂を86.0質量部、蛍光増白剤「Shigenox 101」を1.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0044】
実施例3
トナー用ポリエステル結着樹脂を85.0質量部、蛍光増白剤「Shigenox 101」を2.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0045】
実施例4
蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Shigenox107」(ハッコールケミカル)0.3質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0046】
実施例5
トナー用ポリエステル結着樹脂を86.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Shigenox107」(ハッコールケミカル)1.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0047】
実施例6
トナー用ポリエステル結着樹脂を85.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Shigenox107」(ハッコールケミカル)2.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0048】
実施例7
蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「TINOPAL OB CO」(BASF(株)製)0.3質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0049】
実施例8
トナー用ポリエステル結着樹脂を86.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「TINOPAL OB CO」(BASF(株)製)1.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0050】
実施例9
トナー用ポリエステル結着樹脂を85.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「TINOPAL OB CO」(BASF(株)製)2.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0051】
実施例10
蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Uvitex-WG」(BASF(株)製)0.3質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0052】
実施例11
トナー用ポリエステル結着樹脂を86.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Uvitex-WG」(BASF(株)製)1.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0053】
実施例12
トナー用ポリエステル結着樹脂を85.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Uvitex-WG」(BASF(株)製)2.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0054】
実施例13
蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Uvitex-AT」(BASF(株)製)0.3質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0055】
実施例14
トナー用ポリエステル結着樹脂を86.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Uvitex-AT」(BASF(株)製)1.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0056】
実施例15
トナー用ポリエステル結着樹脂を85.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Uvitex-AT」(BASF(株)製)2.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0057】
実施例16
蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)0.3質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0058】
実施例17
トナー用ポリエステル結着樹脂を86.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)1.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0059】
実施例18
トナー用ポリエステル結着樹脂を85.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)2.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0060】
実施例19
トナー用ポリエステル結着樹脂を82.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0061】
実施例20
トナー用ポリエステル結着樹脂を82.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)9.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0062】
実施例21
蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Whitex」 (住友化学(株)製)0.3質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0063】
実施例22
トナー用ポリエステル結着樹脂を86.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Whitex」 (住友化学(株)製)1.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0064】
実施例23
トナー用ポリエステル結着樹脂を85.0質量部、蛍光増白剤として「Shigenox 101」に替えて「Whitex」 (住友化学(株)製)2.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0065】
実施例24
ロイコ色素「CVL」3.5質量部、「S−205」(山田化学(株)製)0.5質量部、顕色剤「24DHBP」(三協化成(株)製)1.5質量部、「244THBP」(三協化成(株)製)1.5質量部、結着樹脂として「PTR7734」(エリオケム(株)製)72質量部、タッキファイア「FTR−2140」(三井化学(株)製)15質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、ビスコール660P(三陽化成(株)製)4.0質量部、及び蛍光漂白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)1.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0066】
実施例25
「24DHBP」を2.0質量部、「244THBP」を1.0質量部にしたことを除いて、実施例24と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0067】
実施例26
「24DHBP」を6.0質量部、「244THBP」を1.0質量部、「PTR7734」を70質量部にしたことを除いて、実施例24と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0068】
実施例27
ロイコ色素「CVL」2.0質量部、顕色剤「没食子酸プロピル」2.0質量部、結着樹脂として「SB−130」(三洋化成(株)製)94質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、及び蛍光漂白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)1.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0069】
実施例28
ロイコ色素「3−(4−ジメチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル-2-メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド」 2.0質量部、顕色剤「没食子酸プロピル」2.0質量部、結着樹脂として「スチレン・ブチルアクリレート共重合体(アクリレート含有率6質量部)」94質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、及び蛍光漂白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)1.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0070】
実施例29
ロイコ色素「Blue203」4.2質量部、顕色剤「24DHEP」(三協化成(株)製)6.6質量部、結着樹脂として「スチレン・ブチルアクリレート共重合体(アクリレート含有率6質量部)」82.2質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、「ポリプロピレンwax」5.0質量部、及び蛍光漂白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)1.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0071】
実施例30
ロイコ色素「CVL」2.0質量部、顕色剤「没食子プロピル」2.0質量部、消色剤「コール酸」16.0質量部、結着樹脂として「SB−130」(三洋化成(株)製)77.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、「ポリプロピレンwax」1.0質量部、及び蛍光漂白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)1.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0072】
実施例31
ロイコ色素「CVL」2.0質量部、顕色剤「没食子プロピル」2.0質量部、消色剤「コール酸」16.0質量部、結着樹脂として「SB−130」(三洋化成(株)製)93.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、「ポリプロピレンwax」1.0質量部、及び蛍光漂白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)1.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0073】
実施例32
ロイコ色素「3−(4−ジメチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド」 2.0質量部、顕色剤「没食子酸プロピル」2.0質量部、結着樹脂として「スチレン・ブチルアクリレート共重合体(アクリレート含有率6質量部)」70.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、「ポリプロピレンwax」1.0質量部、及び蛍光漂白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)1.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0074】
比較例1
トナー用ポリエステル結着樹脂(花王製)を87.0質量部とし、蛍光増白剤「Shigenox 101」(ハッコールケミカル(株)製)を0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0075】
比較例2
トナー用ポリエステル結着樹脂(花王製)を86.8質量部、蛍光増白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)を0.2質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0076】
比較例3
トナー用ポリエステル結着樹脂(花王製)を77.0質量部、蛍光増白剤として「HAKKOL RF」(昭和化学(株)製)を10.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0077】
比較例4
ロイコ色素「CVL」3.5質量部、「S−205」(山田化学(株)製)0.5質量部、顕色剤「24DHBP」(三協化成(株)製)1.5質量部、「244THBP」(三協化成(株)製)1.5質量部、結着樹脂として「PTR7734」(エリオケム(株)製)73.0質量部、タッキファイア「FTR−2140」(三井化学(株)製)15.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、及びビスコール660P(三陽化成(株)製)4.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0078】
下記表1に、上記実施例及び比較例で用いた蛍光増白剤を挙げる。
【0079】
また、下記表2及び3に、上記実施例及び比較例で用いたトナー組成を示す。
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
上記実施例及び比較例において得られた光感応性トナーをカートリッジに詰め、このカートリッジを図1に示すプリンターに設置した。プリンターは、印字要求に対して、現像器2において光感応性トナーにより現像された像を転写部5にて被転写媒体に転写し、定着部6にて定着する、通常の印字を行った。その結果、図2に示すような印字物が得られた。被転写媒体としては、P紙(富士ゼロックス(株)製)を用いた。
【0083】
次に、実施例1〜23、比較例1〜3のサンプルを消色した。まず、図1に示すプリンターのカセット7へ印字済み被転写媒体Pをセットした。プリンターの消色用LEDヘッド4と消色用ヒータ3を点灯し、印字済み被転写媒体Pを経路10を通過させて消色した。その後、被転写媒体を機外へ排出した。得られた消色済み画像サンプルを図3に示す。
【0084】
得られた画像サンプルをX−rite938(X−rite(株)製)により測定した。測定項目は、図3に示す印字部11と非印字部12のL*、a*、b*である。
【0085】
次に、実施例24〜32、比較例4のサンプルを消色する。恒温槽の温度を130℃とし、120分間加熱消去した。得られた消去済み画像サンプルは図3のようになる。これら画像サンプルについても、印字部11と非印字部12のL*、a*、b*を同様に測定した。
【0086】
以上の測定項目を用いて、各例の視認性を以下の2点で評価した。
【0087】
<視認性評価1>
図3に示す印字部11と非印字部12の消色値ΔEを、下記の計算式により求める。
【0088】
ΔE={(印字部11のL*−非印字部12のL*)+(印字部11のa*−非印字部12のa*)+(印字部11のb*−非印字部12のb*)}1/2
視認性評価1は、ΔEの数値が低いほど下地の被転写媒体に近接していることを表しており、評価基準は下記の通りである。
【0089】
5.5未満 :◎非常に良好
5.5以上6.0未満 :○良好
6.0以上6.5未満 :△実用上問題ないレベル
6.5以上 :×使用に耐えないレベル
<視認性評価2>
b*値により表される。
【0090】
視認性評価2は、b*値が低いほど印字部11の黄変要素が低下したと考えられ、評価基準は下記の通りである。
【0091】
5.5未満 :◎非常に良好
5.5以上6.0未満 :○良好
6.0以上6.5未満 :△実用上問題ないレベル
6.5以上 :×使用に耐えないレベル
以上の評価方法にて得られた結果を下記表4に示す。
【表4】

【0092】
上記表4から、トナー質量の0.2質量%を超え、10質量%未満の蛍光増白剤が添加された実施例1ないし32に係る光感応性トナーは、いずれも少なくとも実用上問題ないレベルの視認性評価1及び2を示していることがわかる。即ち、視認性評価1が実用上問題ないレベル〜非常に優れていて、消色後の印字部と下地の被転写媒体の視認性が近接しており、
また、視認性評価2が実用上問題ないレベル〜非常に優れていて、消色後の印字部の黄変が改善されており、これらにより消去された情報の識別及び復元を確実に防止することが可能である。その結果、印字を消去された被転写媒体を違和感なく再使用することが可能であった。
【0093】
なお、蛍光増白剤の量を調整することにより、各種被転写媒体に対応する光感応性トナーの設計が可能となる。
【0094】
これに対し、蛍光増白剤が添加されていない比較例1及び4に係るトナーは、視認性評価1及び2がいずれも使用に耐えないレベルであり、消色後の印字部と下地の被転写媒体の視認性が離れており、消色後の印字部の黄変が認められた。また、蛍光増白剤の添加量が少なすぎる比較例2に係るトナー、及び蛍光増白剤の添加量が多すぎるトナーもまた、視認性評価1及び2がいずれも使用に耐えないレベルであり、消色後の印字部と下地の被転写媒体の視認性が離れており、消色後の印字部の黄変が認められた。即ち、比較例1〜4に係るトナーでは、消去された情報の識別及び復元がされてしまった。
【0095】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらはいずれも特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0096】
以下に、特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0097】
1.結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤、及び帯電制御剤を混合、溶融、混練、及び粉砕してなる消色型電子写真トナーであって、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、及び前記帯電制御剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、蛍光増白剤をトナー質量の0.2質量%を超え、10質量%未満の量を添加してなることを特徴とする消色型電子写真トナー。
【0098】
2.前記蛍光増白剤は、スチルベン系化合物、ベンゾオキサゾリルスチルベン系化合物、クマリン系化合物、ピラゾール系化合物及びオキサゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする1に記載の消色型電子写真トナー。
【0099】
3.結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤、及び帯電制御剤を混合する工程と、前記混合により得た混合物を溶融混練する工程と、前記溶融混練により得た混練物を粉砕する工程とを具備し、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、及び前記帯電制御剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、蛍光増白剤をトナー質量の0.2質量%を超え、10質量%未満の量添加することを特徴とする消色型電子写真トナーの製造方法。
【0100】
4.前記蛍光増白剤は、スチルベン系化合物、ベンゾオキサゾリルスチルベン系化合物、クマリン系化合物、ピラゾール系化合物及びオキサゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする3に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【符号の説明】
【0101】
1…印字ベルト、2…光感応性トナー現像器、3…消色用ヒータ、4…消色用LEDヘッド、5…転写部、6…定着部、7…カセット、8…排紙部、9…光感応性トナーカートリッジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤を混合し、
前記混合により得た混合物を溶融混練し、
前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、蛍光増白剤をトナー質量の0.2質量%を超え、10質量%未満の量を添加することを特徴とする消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項2】
前記蛍光増白剤は、スチルベン系化合物、ベンゾオキサゾリルスチルベン系化合物、クマリン系化合物、ピラゾール系化合物及びオキサゾール系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項3】
前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤の混合の際、更に帯電制御剤を混合することを特徴とする請求項1または2に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項4】
前記溶融混練により得た混練物を粉砕することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項5】
前記トナー質量は、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記蛍光増白剤、ワックスの合計の質量であることを特徴とする請求項3又は4に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の消色型電子写真トナーの製造方法によって作製されたことを特徴とする消色型電子写真トナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−73054(P2013−73054A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212379(P2011−212379)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】