説明

消色型電子写真トナー及びその製造方法

【課題】消色後の視認性を向上させ、消色前の印字情報を消色後に識別、復元し難くすることの可能な消色型電子写真トナー及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤、及び帯電制御剤を混合、溶融、混練、及び粉砕してなる消色型電子写真トナーであって、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、及び前記帯電制御剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、トナー質量の5乃至20質量%の有機白色顔料を添加してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消色型電子写真トナー及びその製造方法に係り、特に、消色後の視認性の向上が可能な消色型電子写真トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消色可能なロイコ色素を用いた消色トナーや近赤外線に反応する消色可能な光感応性トナーを用いて複写機やプリンタにより画像形成された印字物を、熱や光によって消去し、用紙を再生する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。それらの画像形成装置は、装置内部あるいは外部にトナーの消色部を備えている。光感応性トナーを用いて印字をした印字済み用紙の内容が不要となった場合、まずその用紙をその消色部にて消色し、印字可能な状態に戻し、再度その用紙を利用可能とするものである。
【0003】
用紙に印字した文字等を消去するには、文字を形成するトナーの色を消色すればよく、なんらかの方法にて用紙に消色工程を施すものである。昨今のニーズとしては、省エネルギーかつ高速オンデマンドにて完全に消色することが要求されている。これらの要求の達成には、トナーが高い消色性と消色後の高い視認性を有すること、即ち消色後の画像を下地の用紙の色といかに近接させるかが必要となる。
【0004】
しかし、従来の光感応性トナーでは、消色が十分でなく、色味が残ってしまったり、消色した後に黄変してしまったりする場合があり、消色前の印字情報が認識できるという不具合があった。その場合には、用紙の再使用に差し障りがある場合や、消色した元の情報が容易に復元できてしまい、情報の漏洩に繋がる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−61247号公報
【特許文献2】特開2000−19770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、消色後の視認性を向上させ、消色前の印字情報を消色後に識別、復元し難くすることの可能な消色型電子写真トナー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、結着樹脂、近赤外線吸収色素、及び消色剤を混合、溶融、混練してなる消色型電子写真トナーであって、有機白色顔料を含むことを特徴とする消色型電子写真トナーを提供する。
【0008】
本発明の第2の態様は、結着樹脂、近赤外線吸収色素、及び消色剤を混合し、前記混合により得た混合物を溶融混練し、有機白色顔料を添加することを特徴とする消色型電子写真トナーの製造方法を提供する。
上記本発明の第2の態様に係る消色型電子写真トナーの製造方法において、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、及び前記消色剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、前記有機白色顔料を添加することができる。
【0009】
以上の本発明の第1及び第2の態様に係る消色型電子写真トナー及びその製造方法において、前記有機白色顔料を、トナー質量の5乃至20質量%添加することができる。
前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、及び前記消色剤を混合する際、更に帯電制御剤を混合し、前記トナー質量を、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記有機白色顔料、及びワックスの合計の質量とすることができる。
前記有機白色顔料は、ジフェニルエチレン系化合物、エチレンジアミン系化合物、及びビススチリル系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、消色後の視認性を向上させ、消色前の印字情報を消色後に識別、復元し難くすることの可能な消色型電子写真トナー及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る消色型電子写真トナーを用いて印字された被転写媒体を消色して再生し、再度印字するための色消機能付プリンターを示す図である。
【図2】実施例及び比較例に係るトナーを用いて印字した画像サンプルを示す図である。
【図3】図2に示す画像サンプルを図1に示す色消機能付プリンターにより、色消して得た画像サンプルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の種々の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る消色型電子写真トナーは、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤および帯電制御剤を混合、溶融混練、及び粉砕してなるものである。これら結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤及び帯電制御剤を混合する際、及び/又は溶融混練する際に、トナー質量の5乃至20質量%の有機白色顔料が添加されている。
【0013】
通常、消色後のトナー中のバインダ樹脂は、従来の樹脂色になり、消色後の画像または印字はやや黄ばんでしまう。同様に、トナー中の色素も消色後は僅かに黄ばんでしまう。これに対し、有機白色顔料は、消色後の画像または印字を程よく隠蔽し、消色後の印字部が黄ばむのを目立たなくする効果を発揮するものと推察され、実際に、消色後の印字部の黄変を抑制することができた。その結果、消色後の視認性の向上に有効であった。また、有機白色顔料は金属原子を含まないため、帯電のバランスを崩すこともない。
【0014】
なお、酸化チタンや酸化亜鉛等の無機白色顔料は、隠ぺい力が強すぎて、消色光の入射を妨げてしまい、消色が困難となるため、使用することは出来ない。
本実施形態に係る消色型電子写真トナーに好ましく用いられる有機白色顔料として、ジフェニルエチレン系化合物、エチレンジアミン系化合物、ビススチリル系化合物等を挙げることができる。また、特開平6−122674号明細書や特開2004−269576号明細書に記載されているようなアルキレンビスメラミン誘導体やエチレンビスメラミン誘導体等を用いることも可能である。
【0015】
これらの有機白色顔料の中では、ジフェニルエチレン系化合物が特に好ましい。ジフェニルエチレン系化合物の具体例として、「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)を挙げることができる。
【0016】
以上のように構成される消色型電子写真トナーを用いて、電子写真プロセスにより印字又は画像を形成すると、印字又は画像は、可視光下では高い画像濃度であるが、近赤外線を照射すると、印字又は画像が消色する。これは、次のような現象に基づく。
すなわち、印字又は画像に近赤外線を照射すると、トナー中の近赤外線吸収色素が励起状態になり、消色剤と反応し、消色現象が生ずる。その結果、印字又は画像が消色し、被転写媒体を再利用することが可能となる。
【0017】
本実施形態に係る消色型電子写真トナーは、原料の混合及び/又は溶融混練の際に、トナー質量の5乃至20質量%の有機白色顔料が添加されている。そのため、消色後の視認性を向上させ、消色前の印字情報を消色後に識別、復元し難くすることが可能である。
有機白色顔料の添加量は、好ましくはトナー質量の5〜20質量%であり、最も好ましくは10質量%程度である。
【0018】
これに対し、有機白色顔料の添加量がトナー質量の5質量%未満、または20質量%を超える場合には、有機白色顔料の添加による効果が発揮されず、消色後のトナー中のバインダ樹脂が、従来の樹脂色になり、消色後の画像または印字はやや黄ばんでしまう。その結果、消色前の印字情報が消色後に識別、復元されてしまう。
なお、消色反応は、近赤外線吸収色素の色素カチオンが消色剤のアルキル基と結合することにより生ずる。消色トナーにおける近赤外線吸収色素と消色剤の比率は、消色反応後に未反応の近赤外線吸収色素が残留しないように、適宜選択される。
【0019】
本実施形態に係る消色トナーに含まれる近赤外線吸収色素としては、従来公知のものを用いることが出来る。そのような近赤外線吸収色素として、例えば、特開平4−362935号公報及び特開平5−119520号公報に記載されているものがある。具体的な近赤外線吸収色素の例として、例えば、下記式に示すようなIRT(商品名、昭和電工(株)製)を挙げることが出来る。
【0020】
【化1】

式中、X及びYは、いずれもN(Cを表し、Zは下記式に示す対イオンである。
【0021】
【化2】

【0022】
消色剤としては、従来公知の4級アンモニウムホウ素錯体を用いることが出来る。そのような4級アンモニウムホウ素錯体として、例えば、特開平4−362935号公報及び特開平5−119520号公報に記載されているものがある。具体的な4級アンモニウムホウ素錯体の例として、下記式に示すP3B(商品名、昭和電工(株)製)を挙げることが出来る。
【0023】
【化3】

【0024】
結着樹脂としては、公知のものを含む広い範囲から選択することができる。具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、およびスチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂をはじめ、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、キシレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示でき、これらの樹脂を二種類以上組み合わせて用いてもよい。なお、これらの樹脂のうち、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0025】
帯電制御剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能である。
本発明の一実施形態に係る消色トナーは、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤、帯電制御剤、有機白色顔料以外に、離型材を含むことができる。離型剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能である。
【0026】
以下、図面を参照して、以上説明した消色型電子写真トナーを用いて印字された被転写媒体を消色して再生し、再度印字するための色消機能付プリンターについて説明する。
図1に示すプリンターは、市販されているプリンター(N3500:カシオ計算機(株)製)を改造したものである。このプリンターでは、印字ベルト1の周囲に、光感応性トナー現像器2、消色用ヒータ3、消色用LEDヘッド4、転写部5、定着部6が配置されている。このプリンターの底部には光感応性トナーを用いて印字された被転写媒体Pを収納するカセット7が配置され、上部には、光感応性トナーを用いて再印字された被転写媒体を排出する排紙部8が配置されている。なお、光感応性トナー現像器2には、光感応性トナーを収納する光感応性トナーカートリッジ9が取り付けられている。
【0027】
図1に示すプリンターは、次のようにして動作する。
最初に、カセット7から光感応性トナーを用いて印字された被転写媒体Pが取り出され、被転写媒体経路10に沿って各部を通る。即ち、被転写媒体Pは、消色用ヒータ3及び消色用LEDヘッド4により熱が加えられるとともに近赤外線が照射され、印字が消色される。次いで、印字が消色された被転写媒体は転写部5において、現像された光感応性トナーの画像が転写される。現像された光感応性トナーの画像は、光感応性トナーカートリッジ9から供給された光感応性トナーを用いて、光感応性トナー現像器2により現像された画像であり、印字ベルト1により転写部5に送られたものである。
【0028】
転写部5において転写された光感応性トナーの画像は、被転写媒体経路10に沿って更に定着部に送られ、そこで定着処理が行われ、その後、排紙部8に排紙され、操作が完了する。
以上のプリンターの動作では、ハロゲンランプヘッド3の出力は50mW/cm、消色用ヒータ2の温度設定は100℃とした。被転写媒体経路4は、任意の設定速度に変更可能である。
以下に本発明の実施例と比較例を示し、本発明の効果について具体的に説明する。
【0029】
実施例1
使用する光感応性トナーを以下のようにして製造した。
波長817nmに感度を持つ赤外線感光色素「IRT」(昭和電工(株)製)1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工(株)製)7.5質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王(株)製)82.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.5質量部、カルナバWAX1号粉末(加藤洋行(株)輸入品)2.5質量部、及び有機白色顔料「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)5.0質量部からなる原料をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入し、混合した。
【0030】
続いて、この混合物を二軸混練機で溶融混練した。次いで、得られた混練物をロートプレックス(ホソカワミクロン(株)製)で粗砕して、粗砕物を得た。得られた粗砕物を衝突式粉砕機にて、平均粒径が9μmになるように粉砕した。得られた粉砕物100質量部に外添剤としてシリカ「R972」(日本アエロジル(株)製)を1質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、光感応性トナーを得た。
【0031】
実施例2
トナー用ポリエステル結着樹脂を77.0質量部、有機白色顔料「Shigenox F」を10.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
実施例3
トナー用ポリエステル結着樹脂を72.0質量部、有機白色顔料「Shigenox F」を15.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0032】
実施例4
トナー用ポリエステル結着樹脂を67.0質量部、有機白色顔料「Shigenox F」を20.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
実施例5
有機白色顔料として「Shigenox F」に替えて「Shigenox OWP」(ハッコールケミカル(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0033】
実施例6
トナー用ポリエステル結着樹脂を77.0質量部、有機白色顔料として「Shigenox F」に替えて「Shigenox OWP」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
実施例7
トナー用ポリエステル結着樹脂を72.0質量部、有機白色顔料として「Shigenox F」に替えて「Shigenox OWP」(ハッコールケミカル(株)製)15.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0034】
実施例8
トナー用ポリエステル結着樹脂を67.0質量部、有機白色顔料として「Shigenox F」に替えて「Shigenox OWP」(ハッコールケミカル(株)製)20.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
実施例9
トナー用ポリエステル結着樹脂を82.0質量部、有機白色顔料として「Shigenox F」に替えて「Shigenox U」(ハッコールケミカル(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0035】
実施例10
トナー用ポリエステル結着樹脂を77.0質量部、有機白色顔料として「Shigenox F」に替えて「Shigenox U」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
実施例11
トナー用ポリエステル結着樹脂を72.0質量部、有機白色顔料として「Shigenox F」に替えて「Shigenox U」(ハッコールケミカル(株)製)15.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0036】
実施例12
トナー用ポリエステル結着樹脂を67.0質量部、有機白色顔料として「Shigenox F」に替えて「Shigenox U」(ハッコールケミカル(株)製)20.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0037】
実施例13
ロイコ色素「CVL」3.5質量部、「S−205」(山田化学(株)製)0.5質量部、顕色剤「24DHBP」(三協化成(株)製)1.5質量部、「244THBP」(三協化成(株)製)1.5質量部、結着樹脂として「PTR7734」(エリオケム(株)製)65.0質量部、タッキファイア「FTR−2140」(三井化学(株)製)13.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、ビスコール660P(三陽化成(株)製)4.0質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0038】
実施例14
「24DHBP」を2.0質量部、「244THBP」を1.0質量部にしたことを除いて、実施例13と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
実施例15
「24DHBP」を4.0質量部、「244THBP」を1.0質量部、「PTR7734」を63.0質量部にしたことを除いて、実施例13と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0039】
実施例16
ロイコ色素「CVL」2.0質量部、顕色剤「没食子酸プロピル」2.0質量部、結着樹脂として「SB−130」(三洋化成(株)製)85.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0040】
実施例17
ロイコ色素「3−(4−ジメチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド」 2.0質量部、顕色剤「没食子酸プロピル」2.0質量部、結着樹脂として「スチレン・ブチルアクリレート共重合体(アクリレート含有率6.0質量部)」85.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0041】
実施例18
ロイコ色素「Blue203」4.2質量部、顕色剤「24DHEP」(三協化成(株)製)6.6質量部、結着樹脂として「スチレン・ブチルアクリレート共重合体(アクリレート含有率6質量部)」73.2質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、「ポリプロピレンwax」5.0質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0042】
実施例19
ロイコ色素「CVL」2.0質量部、顕色剤「没食子プロピル」2.0質量部、消色剤「コール酸」16.0質量部、結着樹脂として「SB−130」(三洋化成(株)製)68.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、「ポリプロピレンwax」1.0質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0043】
実施例20
ロイコ色素「CVL」2.0質量部、顕色剤「没食子プロピル」2.0質量部、結着樹脂として「SB−130」(三洋化成(株)製)84.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、「ポリプロピレンwax」1.0質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0044】
実施例21
ロイコ色素「3−(4−ジメチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド」 2.0質量部、顕色剤「没食子プロピル」2.0質量部、結着樹脂として「スチレン・ブチルアクリレート共重合体(アクリレート含有率6.0質量部)」84.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、「ポリプロピレンwax」1.0質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)10.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0045】
比較例1
赤外線感光色素「IRT」(昭和電工(株)製)1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工(株)製)7.5質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王(株)製)87.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.5質量部、及びカルナバWAX1号粉末(加藤洋行(株)輸入品)2.5質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0046】
比較例2
赤外線感光色素「IRT」(昭和電工(株)製)1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工(株)製)7.5質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王(株)製)82.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.5質量部、カルナバWAX1号粉末(加藤洋行(株)輸入品)2.5質量部、及び酸化チタン「TAF−520」(富士チタン(株)製)5.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0047】
比較例3
トナー用ポリエステル結着樹脂(花王製)を86.0質量部、酸化チタン「TAF−520」(富士チタン(株)製)を1.0質量部としたことを除いて、比較例2と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0048】
比較例4
赤外線感光色素「IRT」(昭和電工(株)製)1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工(株)製)7.5質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王(株)製)83.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.5質量部、カルナバWAX1号粉末(加藤洋行(株)輸入品)2.5質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)4.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0049】
比較例5
赤外線感光色素「IRT」(昭和電工(株)製)1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工(株)製)7.5質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王(株)製)66.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.5質量部、カルナバWAX1号粉末(加藤洋行(株)輸入品)2.5質量部、及び有機白色顔料として「Shigenox F」(ハッコールケミカル(株)製)21.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0050】
比較例6
ロイコ色素「CVL」3.5質量部、「S−205」(山田化学(株)製)0.5質量部、顕色剤「24DHBP」(三協化成(株)製)1.5質量部、「244THBP」(三協化成(株)製)1.5質量部、結着樹脂として「PTR7734」(エリオケム(株)製)73.0質量部、タッキファイア「FTR−2140」(三井化学(株)製)15.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.0質量部、及びビスコール660P(三陽化成(株)製)4.0質量部からなる原料を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
下記表1に、上記実施例及び比較例で用いた有機白色顔料及び酸化チタンを挙げる。
また、下記表2及び3に、上記実施例及び比較例で用いたトナー組成を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
以上、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、有機白色顔料を添加する内添としたが、溶融混錬後に添加する外添としても良い。
上記実施例及び比較例において得られた光感応性トナーをカートリッジに詰め、このカートリッジを図1に示すプリンターに設置した。プリンターは、印字要求に対して、現像器2において光感応性トナーにより現像された像を転写部5にて被転写媒体に転写し、定着部6にて定着する、通常の印字を行った。その結果、図2に示すような印字物が得られた。被転写媒体としては、P紙(富士ゼロックス(株)製)を用いた。
【0055】
次に、実施例1〜12、比較例1〜5において得られた光感応性トナーにより印字されたサンプルを消色した。まず、図1に示すプリンターのカセット7へ印字済み被転写媒体Pをセットした。プリンターの消色用LEDヘッド4と消色用ヒータ3を点灯し、印字済み被転写媒体Pを経路10を通過させて消色した。その後、被転写媒体を機外へ排出した。得られた消色済み画像サンプルを図3に示す。
【0056】
得られた画像サンプルをX−rite938(X−rite(株)製)により測定した。測定項目は、図3に示す印字部11と非印字部12のL*、a*、b*である。
次に、実施例13〜21、比較例において得られた光感応性トナーにより印字されたサンプルを消色した。恒温槽の温度を130℃とし、120分間加熱消去した。得られた消去済み画像サンプルは図3のようになる。これら画像サンプルについても、印字部11と非印字部12のL*、a*、b*を同様に測定した。
【0057】
以上の測定項目を用いて、各例の視認性を以下の2点で評価した。
<視認性評価>
図3に示す印字部11と非印字部12の消色値ΔEを、下記の計算式により求める。
ΔE={(印字部11のL*−非印字部12のL*)+(印字部11のa*−非印字部12のa*)+(印字部11のb*−非印字部12のb*)}1/2
【0058】
視認性評価は、ΔEの数値が低いほど下地の被転写媒体に近接していることを表しており、評価基準は下記の通りである。
3.0未満 :◎非常に良好
3.0以上5.0未満 :○良好
5.0以上7.0未満 :△実用上問題ないレベル
7.0以上 :×使用に耐えないレベル
以上の評価方法にて得られた結果を下記表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
上記表4から、トナー質量の5乃至20質量%の有機白色顔料が添加された実施例1ないし21に係る光感応性トナーは、いずれも良好な視認性評価を示していることがわかる。即ち、視認性評価が良好〜非常に優れていて、消色後の印字部と下地の被転写媒体の視認性が近接しており、これにより消去された情報の識別及び復元を確実に防止することが可能である。その結果、印字を消去された被転写媒体を違和感なく再使用することが可能であった。
なお、有機白色顔料の量を調整することにより、各種被転写媒体に対応する光感応性トナーの設計が可能となる。
【0061】
これに対し、有機白色顔料が添加されていない比較例1及び6のうち、比較例1に係るトナーにより得たサンプルは、視認性は良好ではないが、実用上問題ないレベルであり、標準品である。比較例6に係るトナーにより得たサンプルは、視認性は使用に耐えないレベルであり、消色後の印字部と下地の被転写媒体の視認性が離れており、消色後の印字部の黄変が認められた。また、有機白色顔料の添加量が少なすぎる比較例4に係るトナー及び有機白色顔料の添加量が多すぎる比較例5に係るトナーにより得たサンプルもまた、視認性評価がいずれも使用に耐えないレベルであり、消色後の印字部と下地の被転写媒体の視認性が離れており、消色後の印字部の黄変が認められた。
【0062】
更に、有機白色顔料の代わりに無機白色顔料である酸化チタンを5質量%添加した比較例2に係るトナーでは、帯電が異常となり、印字を行うことが出来なかった。また、酸化チタンを1質量%添加した比較例2に係るトナーは、視認性評価が使用に耐えないレベルであり、消色後の印字部と下地の被転写媒体の視認性が離れており、消色後の印字部の黄変が認められた。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらはいずれも特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0063】
1.結着樹脂、近赤外線吸収色素、及び消色剤を混合、溶融、混練してなる消色型電子写真トナーであって、有機白色顔料を含むことを特徴とする消色型電子写真トナー。
2.前記有機白色顔料は、トナー質量の5乃至20質量%を添加してなることを特徴とする1に記載の消色型電子写真トナー。
3.前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、及び前記消色剤を混合する際、更に帯電制御剤を混合し、
前記トナー質量は、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記有機白色顔料、及びワックスの合計の質量であることを特徴とする2に記載の消色型電子写真トナー。
【0064】
4.前記有機白色顔料は、ジフェニルエチレン系化合物、エチレンジアミン系化合物、及びビススチリル系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする1乃至3の何れかに記載の消色性型電子写真トナー。
5.結着樹脂、近赤外線吸収色素、及び消色剤を混合し、
前記混合により得た混合物を溶融混練し、
有機白色顔料を添加することを特徴とする消色型電子写真トナーの製造方法。
6.前記有機白色顔料は、トナー質量の5乃至20質量%を添加することを特徴とする5に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【0065】
7.前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、及び前記消色剤を混合する際、更に帯電制御剤を混合し、
前記トナー質量は、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記有機白色顔料、及びワックスの合計の質量であることを特徴とする6に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
8.前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、及び前記消色剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、前記有機白色顔料を添加することを特徴とする5乃至7の何れかに記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
9.前記有機白色顔料は、ジフェニルエチレン系化合物、エチレンジアミン系化合物、及びビススチリル系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする5乃至8の何れかに記載の消色性型電子写真トナーの製造方法。
【符号の説明】
【0066】
1…印字ベルト、2…光感応性トナー現像器、3…消色用ヒータ、4…消色用LEDヘッド、5…転写部、6…定着部、7…カセット、8…排紙部、9…光感応性トナーカートリッジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、近赤外線吸収色素、及び消色剤を混合、溶融、混練してなる消色型電子写真トナーであって、有機白色顔料を含むことを特徴とする消色型電子写真トナー。
【請求項2】
前記有機白色顔料は、トナー質量の5乃至20質量%を添加してなることを特徴とする請求項1に記載の消色型電子写真トナー。
【請求項3】
前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、及び前記消色剤を混合する際、更に帯電制御剤を混合し、
前記トナー質量は、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記有機白色顔料、及びワックスの合計の質量であることを特徴とする請求項2に記載の消色型電子写真トナー。
【請求項4】
前記有機白色顔料は、ジフェニルエチレン系化合物、エチレンジアミン系化合物、及びビススチリル系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の消色性型電子写真トナー。
【請求項5】
結着樹脂、近赤外線吸収色素、及び消色剤を混合し、
前記混合により得た混合物を溶融混練し、
有機白色顔料を添加することを特徴とする消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項6】
前記有機白色顔料は、トナー質量の5乃至20質量%を添加することを特徴とする請求項5に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項7】
前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、及び前記消色剤を混合する際、更に帯電制御剤を混合し、
前記トナー質量は、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記有機白色顔料、及びワックスの合計の質量であることを特徴とする請求項6に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項8】
前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、及び前記消色剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、前記有機白色顔料を添加することを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【請求項9】
前記有機白色顔料は、ジフェニルエチレン系化合物、エチレンジアミン系化合物、及びビススチリル系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5乃至8の何れか一項に記載の消色性型電子写真トナーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−104962(P2013−104962A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247597(P2011−247597)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】