説明

消色装置

【課題】面状ヒータによりシートを均一な温度で加熱処理し、消色ムラのない消色処理を可能とする消色装置の提供。
【解決手段】消色温度で消色する色材で画像が形成されたシートを搬送する搬送部と、搬送されるシートのシート搬送方向と直交するシート幅方向に沿って、発熱温度分布をシート幅方向の中央部を両側部よりも低くなるように発熱パターン部が形成された面状の第1熱源を有し、搬送されるシートの第1面と接触して、シートに形成された画像を前記消色温度以上に加熱する第1加熱部と、前記第1加熱部とともにシートが通過するニップ部を形成し、シートの第2面へ接触する第1加圧部と、を有する消色部と、前記第1加熱部を前記消色温度以上に加熱させる制御部と、前記消色温度以上に加熱され、消色処理されたシートを積載する積載部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、熱処理により消色する消色性色材でシート上に印字した画像を消色する消色処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シート上に印字された消色性色材の画像の色を消す消色装置がある。消色装置は、画像が印字されたシートに加熱処理を施して、シート上の画像(色材)の色を消色する消色部を有する。
【0003】
消色装置の消色部の構成として、加圧部材と、前記加圧部材と加圧接触してニップ部を形成する加熱部材を有し、前記加熱部材の熱源として、面状熱源(ヒータ)を用いることが提案される。
【0004】
そして、消色装置の消色部の熱源に面状ヒータを用いても消色残りのない消色処理を行うことが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、面状熱源によりシートを消色温度以上の温度で加熱処理し、消色ムラのない消色処理を可能とする消色装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る消色装置は、消色温度で消色する色材で画像が形成されたシートを搬送する搬送部と、搬送されるシートのシート搬送方向と直交するシート幅方向に沿って、発熱温度分布をシート幅方向の中央部を両側部よりも低くなるように発熱パターン部が形成された面状の第1熱源を有し、搬送されるシートの第1面と接触して、シートに形成された画像を前記消色温度以上に加熱する第1加熱部と、前記第1加熱部とともにシートが通過するニップ部を形成し、シートの第2面へ接触する第1加圧部と、を有する消色部と、前記第1加熱部を前記消色温度以上に加熱させる制御部と、前記消色温度以上に加熱され、消色処理されたシートを積載する積載部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る消色装置の全体構成を示す概略側断面図。
【図2】図1に示す消色装置の動作全体を制御する制御装置の実施形態を示す制御ブロック図。
【図3】図2の制御装置による消色処理の流れを示すフローチャート。
【図4】図1に示す消色部の一組の加熱部を示す斜視図。
【図5】図1に示す消色部の正面図。
【図6】図4の加熱部における面状ヒータの抵抗パターンを示す平面図。
【図7】図1に示す消色部のニップ部の拡大図で、図6のA−A線に沿った断面図。
【図8】第2の実施形態を示す面状ヒータの抵抗パターンを示す図。
【図9】第2の実施形態における制御回路のブロック図。
【図10】図9に示す制御回路による発熱パターンへの通電制御の流れを示すフローチャート。
【図11】第3の実施形態を示す面状ヒータの主発熱部と補助発熱部との平面図。
【図12】図11に示す面状ヒータを備える消色部のニップ部の拡大図で、図11のB−B線に沿った断面図。
【図13】第4の実施形態を示す面状ヒータの主発熱部と補助発熱部との平面図。
【図14】図13の面状ヒータを備える消色部のニップ部の拡大図で、図13のC−C線に沿った断面図。
【図15】第5の実施形態を示す面状ヒータの補助発熱部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の画像形成装置を図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は消色装置の全体構成を示す概略側断面図、図2は図1に示す消色装置の動作全体を制御する制御装置の実施形態を示す制御ブロック図、図3は図2の制御装置による消色処理の流れを示すフローチャートである。
【0010】
図1において、消色装置1は、消色処理を行う複数枚のシートSを給紙する給紙部2と、消色部3と、表示部4Aと、操作部4Bと、第1搬送路6と、第2搬送路7と、第1搬送路6と第2搬送路7へのシート搬送を切り替える第1フラッパ8Aと、スイッチバック用の第2フラッパ8Bと、搬送ローラ9Aと、シート検知センサ9Bと、画像読取部10と、制御部11と、第3搬送路12と、消色処理されたシートが積載される積載部をなす第1排紙トレイ14Aおよび第2排紙トレイ14Bと、記憶部50を備えている。
【0011】
給紙部2は、消色処理を行う複数枚のシートSを積載するスタッカトレイ2A、ピックアップローラ5A、および給紙ローラ5Bを有する。シートSは、熱を加えることにより消色温度で色が消える消色性の色材によりシート上に画像が形成されたシート以外に、非消色性の色材で画像が描かれたシートも混在されることもある。また、給紙部2には、例えばA4、A5、Letterサイズ等の種々のサイズのシートを積載できる。消色可能な色材による画像は、例えば電子写真方式あるいはインクジェット方式の画像形成装置により、シート上に形成される。
【0012】
本実施形態において、シートの両面に形成した画像を消色部3で消色処理するが、片面のみの消色処理を行うこともできる。
【0013】
スタッカトレイ2Aに積載するシートSは、ピックアップローラ5Aにより一枚ずつ取り出され、給紙ローラ5Bにより第1搬送路6に供給される。第1搬送路6の搬送終端は、第1排紙トレイ14Aの搬送ローラ15まで達している。第1搬送路6の途中には、搬送上流側から下流側に向かって、合流部6A、検査エリア6B、分岐部6Cを設け、合流部6Aに第2搬送路7の搬送終端を接続し、分岐部6Cに第2搬送路7の搬送始端を接続している。分岐部6Cには、第1フラッパ8Aを配置し、第1搬送路6を搬送されるシートの搬送方向を第1排紙トレイ14Aと第2搬送路7のいずれかに切り替える。第1搬送路6の検査エリア6Bには画像読取部10を配置している。また、第2搬送路7の上下方向に延びる搬送路に消色部3を配置している。
【0014】
スタッカトレイ2Aから第1搬送路6に給紙されたシートSの搬送経路は、消色装置1が実行する処理モードに基づいて適宜変更される。消色装置1は、複数の処理モードを有する。消色装置1は、例えば、(1)画像読取を行わず、消色処理のみを行う第1消色モード、(2)画像の読み取り後、消色処理を行う第2消色モード、(3)消色前の読取処理を行わず、消色処理後、シートSの再利用可否の分別(分別処理)を実施する第3消色モード、(4)画像の読み取り後、消色処理を実施し、さらに分別処理を実施する第4消色モード、(5)画像消色を行わず、画像の読取処理を実施する読取モードを有する。上述の各モードは、消色装置1の操作部4Bで選択できる。また、各処理モードの選択は、消色装置1の操作部4Bに限らず、外部の端末から設定しても良い。第1乃至第4の消色モードでは、シートは必ず消色部3へ搬送される。一方、読取モードでは、消色装置1は、第1フラッパ8Aを制御して、シートSを消色部3へ搬送することなく、画像読取部10を経由して排出する。
【0015】
画像読取部10は、シートSの搬送路の両側に第1スキャナー部10Aと第2スキャナー部10Bを配置し、搬送されるシートSの表裏両面を読み取り、読取った画像読取情報を制御部11、および記憶部50に送信する。ここで、第2搬送路7を搬送されるシートSにおいて、内側に向いた面を第1面、外側に向いた面を第2面とし、第1スキャナー部10AはシートSの第1面を読み取り、第2スキャナー部10BはシートSの第2面を読み取る。消色処理前に画像読取部10で読み取った画像情報は、記憶部50に保存されているので、消色部3で消色されても消色前の画像データを呼び出し可能とする。
【0016】
第1フラッパ8Aは、分岐部6Cにおいて、画像読取部10から搬送されてきたシートの搬送方向を第2搬送路7(消色部3の方向)あるいは、第1排紙トレイ14Aへのいずれかに切り替える。第2搬送路7を搬送されるシートSは、消色部3へ搬送される。消色部3は、シートを加熱し、消色処理する。消色部3を通過した消色処理済みのシートSは、合流部6Aで第2搬送路7から第1搬送路6に給紙され、再び画像読取部10で両面が読み取られる。
【0017】
消色部3の構成については後述する。
【0018】
消色部3を通過したシートSは、画像読取部10において、消色処理が施された表裏両面の全面を画像読取部10の第1スキャナー10Aと第2スキャナー部10Bで読み取られる。
【0019】
第1スキャナー部10Aおよび第2スキャナー部10Bで読み取ったシートSの第1面および第2面の読取情報に基づいて、制御部11で消色適否が判定される。消色適との判定は、消色部3での消色処理が十分に行われて画像の残りが全く存在しないか、存在していても再利用可能な程度に殆ど目立たない場合を例示でき、消色否との判定は、消色処理が不十分で、消色残り消色可能画像が目立つ程度に存在する場合が例示でき、また非消色性のインキ等での手書きによる画像が存在する場合、あるいは非消色性の色材により画像が形成されている場合を含む。
【0020】
図2に示すように、消色装置1の制御部(コントローラ)11は、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)からなるプロセッサ11A、メモリ11Bを有する。制御部11は、画像読取部10、消色部3、表示部4A、操作部4Bを制御する。メモリ11Bは、例えば、半導体メモリであり、各種制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)11Cと、プロセッサ11Aに一時的な作業領域を提供するRAM(Random Access Memory)11Dと、を有する。例えば、ROM11Cは、再利用可否の閾値とする用紙の印字率、画像が消色されたか否かを判断するための濃度閾値等を格納する。RAM11Dは、画像読取部10で読み取った画像を一時的に保存しても良い。消色装置1の各コンポーネントは、バス52を介して接続される。
【0021】
記憶部50は、アプリケーションプログラムおよびOSを記憶する。アプリケーションプログラムは、画像読取部10による読取機能、消色部の消色機能といった消色装置が有する機能を実行するプログラムを含む。アプリケーションプログラムは、更には、Webクライアント用のアプリケーション(Webブラウザ)やその他のアプリケーションを有する。記憶部50は、消色装置1で処理したシートの処理枚数を記憶する。記憶部50としては、例えば、ハードディスクドライブやその他の磁気記憶装置、光学式記憶装置、フラッシュ・メモリ等の半導体記憶装置またはこれらの任意の組合せであってよい。
【0022】
図2に示すブロック図において、給紙・排紙駆動部51は上記したシートSの給紙・排紙を行うピックアップローラ5A、給紙ローラ5B、搬送ローラ9A、第1フラッパ―8A、第2フラッパ8B、複数の搬送ローラ9Aをそれぞれ駆動する駆動モータ、シートを検知する複数のシート検知センサ9Bなどを含み、制御部11により駆動される。
【0023】
図3は図2に示す制御ブロックによるシートSの搬送処理動作を示すフローチャートである。
【0024】
消色処理動作を開始すると、給紙部2はシートSを給紙し(ACT1)、シートSは第1搬送路6に搬送される(ACT2)。
【0025】
第1搬送路6においてシートSの両面を画像読取部10で読み取り(ACT3)、シートSを第2搬送路7へ分岐して搬送(ACT4)し、ACT5に進む。なお、読取情報は制御部11及び記憶部50に送信される。
【0026】
ACT5において、シートSを第2搬送路7のシート搬送路部21に搬送し、消色部3において消色処理を行う。そして、消色処理済みのシートSを第1搬送路6の画像検査搬送路部7Bに搬送し(ACT6)、消色処理済みのシートSの両面を画像読取部10で読み取り(ACT7)、読取情報を制御部11に送信する。
【0027】
制御部11は、消色処理済みのシートSの読取情報に基づいて、消色可能画像の消色状態を判定する(ACT8)。その際、消色処理前に読み取ったシートSの画像情報とも比較し、消色しきれずに残った画像の割合や濃淡等を求め、再利用が可能か否か(消色適否)の判定を行う。
【0028】
ACT8において、画像読取部10を通過した再利用可否判定済みのシートSは、第1搬送路6の分岐部6Cに向けて搬送される。この際、第1フラッパ8Aは第1搬送路6から退避しており、再利用可否の判定が済んだシートSは、第1排紙トレイ14Aに向けて搬送される。
【0029】
消色装置1の装置本体1Aの下部には、第1排紙トレイ14Aと第2排紙トレイ14Bが上下二段に配置されている。また、第1排紙トレイ14Aと第2排紙トレイ14Bとは、スイッチバック用の第2フラッパ8Bを備えた第3搬送路12で接続されている。そして、第1排紙トレイ14Aに向けて搬送された消色処理済みのシートSは、第1搬送路6の搬送端で一旦待機し、再利用可否(消色適否)の判定結果を待つ。
【0030】
制御部11で消色適と判定された再利用可能なシートSは、そのまま搬送されて第1排紙トレイ14Aに排紙され、積載される(ACT9)。
【0031】
一方、制御部11で再利用不可(消色否)と判定されると、第2フラッパ8Bが第3搬送路12を開方向に切り換え、第1搬送路6の終端で待機していた消色否と判定された再利用不可能なシートSを第3搬送路12に向けて搬送し、第2排紙トレイ14Bに排紙され、積載され(ACT10)、本フローが終了する。
【0032】
したがって、第1排紙トレイ14Aに排紙されたシートSに再び消色性色材により画像を形成することができ、同一のシートに消色性色材により繰り返して画像を形成することができる。
【0033】
消色部3は、図4に示すように、面状のヒータを備えた第1加熱部13Aと加圧ローラ40を備えた第1加圧部13Bを一組の加熱部とする。本実施形態では、図5に示すように、これを搬送路に沿って2組配置しており、搬送方向上流側の第1加熱部13Aと第1加圧部13Bと、搬送方向下流側の第2加熱部13Cと第2加圧部13Dは、搬送路を挟んで逆側に配置している。
【0034】
本実施形態の消色部3は、下方から上方に向けてシートSを搬送するシート搬送路部21の両側に配置した第1加熱部13AによりシートSの第2面を所定の加熱温度で加熱し、第2加熱部13BによりシートSの第1面を所定の加熱温度で加熱する。2組の加熱部における加熱温度は、色材の色が消える消色温度以上に設定される。
【0035】
本実施形態において、第1加熱部13Aと第2加熱部13Cは面状ヒータを備えた同構造とし、第1加圧部13Bと第2加圧部13Dを同構造としている。そして、シートSの第2面は第1加熱部13Aの面状ヒータにより加熱され、シートSの第1面は第2加熱部13Cの面状ヒータにより加熱される。
【0036】
消色部3は、第1加熱部13Aの熱源である面状ヒータの第1熱源24Aと第2加熱部13Cの熱源である面状ヒータの第2熱源24Bを有し、第1加熱部13Aと第2加熱部13Cの表面温度を検知するサーミスタを用いた第1温度検知部25Aと第2温度検知部25Bを有し、制御部11により所定温度に温度制御される。また、制御部11は、ローラ構造の第1加圧部13Bおよび第2加圧部13Dを駆動するローラ駆動部53A、53Bを駆動制御する。
【0037】
図6および図7に示すように、消色部3の第1加熱部13Aと第2加熱部13Cの面状ヒータである面状の第1熱源24Aと第2熱源24Bは、電気絶縁材料のポリイミド(PI)で構成される基板30にステンレス(SUS304)等の金属箔の抵抗パターン31を形成し、抵抗パターン31の表面にセラミックス等の絶縁体を設けて熱が逃げないようにした構成とし、抵抗パターン31を表面側として、伝熱性を有する保持部材32の表面に形成した凹部33に基板30を嵌合している。そして、シート幅方向に延びるアルミニュウム製の加熱体34を抵抗パターン31の前面を覆うようにして保持部材32に被着している。
【0038】
面状ヒータは、薄く柔軟性に富んだ基板30に薄肉材料からなる極めて熱容量の小さな抵抗パターン31で構成しているため、加熱における立ち上がり速度が極めて速い特性を有する。
【0039】
また、図4および図5に示すように、保持部材32は、支持フレーム部35に複数の支持ピン36介して支持されていて、ばね部材37を介して第1加圧部13B(第2加圧部13D)の加圧ローラ40に向けて付勢され、加熱体34を加圧ローラ40に加圧接触させている。
【0040】
面状ヒータである第1熱源24Aと第2熱源24Bを構成する抵抗パターン31は、図6に示すように、基板30の片端側に2つの端子部31A,31Bが形成され、両端子部31A,31Bを結ぶ発熱パターン部31Cが他端側で折り返すようにして形成されている。発熱パターン部31Cは、基板30の長手方向における中央線L1を中心にして短手方向に対称に形成されている。
【0041】
シートSの加熱処理の際に、面状ヒータの単位長さ当たりの発熱量をシート幅方向の全長にわたり均一とした場合、第1加熱部13Aと第2加熱部13Cは、シート幅方向の中央部分の温度が両端部分の温度よりも高温となる。そこで、本実施形態において、抵抗パターン31の単位長さ当たりの発熱量を長手方向の両端部31Dを大きく、長手方向の中央部分31Eを小さくしている。このため、第1加熱部13Aと第2加熱部13Cは、シート幅方向の全長にわたって略均一の加熱温度を得ることができる。
【0042】
本実施形態における発熱パターン部31Cは、抵抗パターンの線幅および密度を一定とし、矩形波形状に折り曲げて形成している。したがって、長手方向における単位長さ当たりの折り曲げ数を大きくする、すなわち単位長さ当たりの抵抗パターンの総延長を長くすれば、その分発熱量が増えることになる。逆に長手方向における単位長さ当たりの折り曲げ数を小さくする、すなわち単位長さ当たりの抵抗パターンの総延長を短くすれば、その分発熱量が減少することになる。
【0043】
本実施形態では、抵抗パターン31の単位長さ当たりの発熱量を長手方向の両端部31Dを大きく、長手方向の中央部分31Eを小さくするために、両端部31Dおける単位長さ当たりの矩形波形状の折り曲げ数を大きく(密)、中央部分31Eにおける単位長さ当たりの矩形は形状の折り曲げ数を小さく(疎)形成している。
【0044】
本実施形態では、抵抗パターン31の発熱パターン部31Cは、シート幅方向の中央から両端に向かうに従って発熱量を徐々に大きくしているが、シート幅方向の中央から両端に向かうに従って発熱量を段階的に大きくしてもよい。また、発熱パターン部31Cを矩形波形状に形成しているが、直線状のパターンで形成し、パターンの線幅を調整し、あるいはパターンを構成する金属の密度を調整して単位長さ当たりの発熱量をシート幅方向の中央部を小さく、両端部を大きくするようにしてもよい。
【0045】
一方、第1加圧部13Bと第2加圧部13Dは、硬質のローラ部材で構成される加圧ローラ40を有し、加圧ローラ40をローラ駆動部53A、53Bにより回転駆動する。第1加圧部13Bと第2加圧部13Dは、各加圧ローラ40の軸心と、第1加熱部13Aと第2加熱部13Cにおける面状ヒータの中央線L1とを一致させて配置されている。
【0046】
第1加熱部13Aと第2加熱部13Cの温度は、サーミスタ38により測定する。
【0047】
(第2の実施形態)
図8は第2の実施形態における面状ヒータの抵抗パターンを示し、図9は主発熱パターン部61と補助発熱パターン部62への通電を制御する制御回路のブロック図、図10は図9に示す制御回路の動作を示すフローチャート。
【0048】
図8は、図4に示す消色部3の第1加熱部13A(第2加熱部13C)の面状ヒータである第1熱源24A(第2熱源24B)の抵抗パターン60を示す。抵抗パターン60は、電気絶縁材料のポリイミド(PI)で構成される基板30上にステンレス(SUS304)等の金属箔の主発熱パターン部61と補助発熱パターン部62を形成し、基板30の片端部に主発熱パターン部61の両端子部61A、61Bと補助発熱パターン部62の両端子部62A、62Bを形成している。
【0049】
両端子部61A,61Bを結ぶ主発熱パターン部61は他端側で折り返すようにして形成され、基板30の長手方向における中央線L1を中心にして短手方向に対称に形成されている。主発熱パターン部61は、抵抗パターンの線幅および密度を一定とし、矩形波形状に折り曲げて形成し、シート幅方向の全長にわたって矩形波形状の折り曲げ部61Cを等ピッチに形成している。
【0050】
また、主発熱パターン部61の内側には、補助発熱パターン部62を配置している。両端子部62A、62Bを結ぶ補助発熱パターン部62は、抵抗パターンの線幅および密度を一定として直線状に形成し、基板30の長手方向における中央線L1を中心にして短手方向に対称に形成されている。
【0051】
主発熱パターン部61および補助発熱パターン部62は、シート幅方向において単位長さ当たりの発熱量は全長にわたり均一としている。したがって、主発熱パターン部61と補助発熱パターン部62に同電圧を印加すると、主発熱パターン部61の発熱量が補助発熱パターン部62の発熱量よりも大きい。
【0052】
主発熱パターン部61と補助発熱パターン部62は、制御部11により通電制御される。図9に示すように、消色装置1の操作部4Bで設定したシートSが厚紙か否か(所定厚さ以下か否か)のシート情報がシート情報取得部63に取得され、操作部4Bで設定したシートSの搬送速度が高速か否か(所定速度以上か否か)のシート搬送速度情報がシート搬送速度情報取得部64に取得される。
【0053】
制御部11は、消色装置1の消色部3の予熱が終了したか否か、シート情報取得部63の情報およびシート搬送速度情報取得部64の情報に基づいて、主発熱パターン部61と補助発熱パターン部62の双方への通電、いずれか一方への通電の制御を行う。
【0054】
図10に基づいて、制御部11による主発熱パターン部61と補助発熱パターン部62の通電制御を説明する。
【0055】
消色装置1の消色部3が予熱を開始すると(ACT21)、ACT22で主発熱パターン部61を通電遮断(OFF)、ACT23補助発熱パターン部62に通電(ON)し、ACT24に進む。
【0056】
ACT24では、消色部3の予熱が終了したか否かを判断する。予熱の終了は、例えば消色開始のスタートスイッチのONにより判断し、ACT25において主発熱パターン部61をONし、次いで、ACT26で補助発熱パターン部62をOFFし、ACT27に進む。
【0057】
ACT27では、シート情報を取得し、ACT28で取得したシート情報が所定の厚さ以下か否かを判断する。ACT28において、シートの厚さが所定厚さ以下であれば、ACT29においてシート搬送速度を取得し、ACT30に進む。ACT30では、ACT29で取得したシート搬送速度が所定速度以上に設定されていると、ACT31に進み、第1加熱部13A(第2加熱部13C)の両端部の温度計測を行い、ACT32に進む。
【0058】
ACT32において、第1加熱部13A(第2加熱部13C)の両端部の計測温度が所定温度、例えば消色温度以下と判断すると、ACT33に進んで補助発熱パターン部62をONして終了する。また、ACT32において、消色温度以上と判断すると終了する。
【0059】
一方、ACT28でシート厚さが所定以上と判断された場合、ACT30でシート搬送速度が所定速度以下と判断された場合には、ACT34に進んで補助発熱パターン部62をONして終了する。
【0060】
すなわち、予熱時には、発熱量の小さい補助発熱パターン部62のみで加熱することにより、無駄なエネルギー消費を抑えエネルギー効率を高めている。また、消色処理では、主発熱パターン部61のみでの加熱を主加熱とし、シートSの厚みが厚い場合、シートの搬送速度が低い場合のように、シートSの加熱に要するエネルギーが大きい場合、主発熱パターン部61の発熱による加熱のみではシート幅方向における第1加熱部13A(第2加熱部13C)両端部の温度が低下するため、補助発熱パターン部62を発熱させることにより、シート幅方向両端部における第1加熱部13A(第2加熱部13C)の加熱温度の低下を抑え、シート幅方向の全長にわたって消色温度以上での加熱を可能とする。
【0061】
また、シートSが薄い場合、シートSの搬送速度が速い場合には、主発熱パターン部61の発熱量のみで、シートSには消色処理に十分な熱量が伝わり、第1加熱部13A(第2加熱部13C)の両端部の温度が消色温度以下に低下して、消色不良招くことはない。仮に、消色温度以下になっても、瞬時に補助発熱パターン部62への通電で、加熱温度を上昇させるので、消色不良を抑えることができる。ここで、ACT32に設定する所定温度は、消色温度よりも高い温度に設定すれば、第1加熱部13A(第2加熱部13C)の両端部の温度が消色温度以下となるのを未然に防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、予熱時、シート厚さ、シート搬送速度等のシート条件に応じて、主発熱パターン部61と補助発熱パターン部62の2系統の発熱パターン部への通電制御を行っているが、3系統あるいはそれ以上の系統の発熱パターン部への通電制御を行うようにしてもよい。
【0063】
(第3の実施形態)
図11及び図12は第3の実施形態を示す。
【0064】
本実施形態は、第1加熱部13A(第2加熱部13C)に使用する面状ヒータである第1熱源24A(第2熱源24B)を主発熱部71と補助発熱部72とを別々に設けた構成としている。主発熱部71と補助発熱部72は図6に示す構成と同様に形成される。主発熱部71と補助発熱部72は、中心線L1を加圧ローラ40の中心に合わせて保持部材32に積層され、主発熱部71をシートSに近い側に配置し、補助発熱部72を主発熱部71の背面側に配置している。
【0065】
主発熱部71の主発熱パターン部73および補助発熱部72の補助発熱パターン部74は、図8に示す主発熱パターン部61と同様に、パターンの線幅および密度を等しく形成され、中心線L1を中心に線対称に形成されている。また、主発熱パターン部73の矩形波状の折り曲げ部73Aをシート幅方向に沿って等ピッチに形成している。補助発熱パターン部74の矩形波状の折り曲げ部74Aは、主発熱部72の折り曲げ部73Aよりも広いピッチで形成され、短手方向の長さも折り曲げ部73Aよりも短く形成している。
【0066】
したがって、主発熱パターン部73と補助発熱パターン部74に同電圧を印加すると、主発熱パターン部73の発熱量が補助発熱パターン部74の発熱量よりも大きい。
【0067】
本実施形態では、第2の実施形態と同様に、主発熱パターン部73と補助発熱パターン部74を図9に示す制御回路により、同様に通電制御している。
【0068】
ところで、消色部3は、消色処理のために、第1熱源24A(第2熱源24B)の発熱が、加圧ローラ40と加熱体34とが加圧接触するニップ部に対して集中することが重要である。本実施形態では、主発熱部71と補助発熱部72を別々の部材とし、これらを積層することにより、主発熱部71と補助発熱部72の抵抗パターンの配置の自由度を高めることができる。このため、ニップ部にできるだけ近い位置に高密度に抵抗パターン部を配置することができ、ニップ部を高温に維持することができ、さらにニップ部におけるシート幅方向の両端部の温度低下を抑えることができる。
【0069】
(第4の実施形態)
図13および図14は第4の実施形態を示す。
【0070】
本実施形態は、第3の実施形態の変形例を示し、補助発熱部72の補助発熱パターン部75を出来るだけ中心線L1に接近して配置している。このため、図14に示すように、本実施形態の補助発熱パターン部75をニップ部に近い位置に配置することができる。
【0071】
(第5の実施形態)
図15は第5の実施形態を示す。
【0072】
本実施形態は、第3の実施形態の変形例を示し、補助発熱部72の補助発熱パターン部75の折り曲げ部75Aを、シート幅方向の両側部75Bでは中心線L1にできるだけ近い位置に配置し、シート幅方向の中央部75Cでは両側部よりもシート搬送方向に沿った外側に配置している。このため、補助発熱部72の通電により、ニップ部において、温度が高くなり易いシート幅方向の中央部分での温度と、温度が低下し易いシート幅方向の両端部での温度差を小さくすることができ、消色温度以上の略均一な温度で消色処理することができる。
【0073】
なお、補助発熱部72の補助発熱パターンとしては、図6に示すように、シート幅方向の中央部分から両側部に向かうに従って単位長さ当たりの発熱量が増加する構成のものであってもよい。
【0074】
上記した各実施形態において、消色部3は、第1加熱部13Aと第1加圧部13Bとを一組の加熱部とし、これを二組配置することにより、シートSの両面を加熱処理する構成としているが、一組でもよく、この場合には加圧ローラ内にハロゲンランプ等の熱源を配置してもよい。また、下方から上方に向かうシート搬送路に消色部を配置しているが、水平方向に延びるシート搬送路に消色装置を配置してもよい。
【0075】
また、面状ヒータの抵抗パターンは、基板30の片端側に両端子を配置した構成としているが、抵抗パターンの両端子を基板の両端側に設けた構成としてもよい。この場合には、基板の他端側での折り返しが不要となり、中心線L1上に発熱パターン部を配置したり、複数本の発熱パターン部を選択的に発熱させることができる。
【0076】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0077】
S シート
L1 中央線
1 消色装置 2 給紙部
3 消色部
6 第1搬送路
6A 合流部 6C 分岐部
7 第2搬送路
8A 第1フラッパ 8B 第2フラッパ
10 画像読取部 11 制御部
12 第3搬送路
13A 第1加熱部 13B 第1加圧部
13C 第2加熱部 13D 第2加圧部
14A 第1排紙トレイ 14B 第2排紙トレイ
21 シート搬送路部
10A 第1スキャナー部 10B 第2スキャナー部
24A 第1熱源 24B 第2熱源
40 加圧ローラ
60 抵抗パターン
61 主発熱パターン部
62 補助発熱パターン部
71 主発熱部
72 補助発熱部
75 発熱パターン部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
消色温度で消色する色材で画像が形成されたシートを搬送する搬送部と、
搬送されるシートのシート搬送方向と直交するシート幅方向に沿って、発熱温度分布をシート幅方向の中央部を両側部よりも低くなるように発熱パターン部が形成された面状の第1熱源を有し、搬送されるシートの第1面と接触して、シートに形成された画像を前記消色温度以上に加熱する第1加熱部と、前記第1加熱部とともにシートが通過するニップ部を形成し、シートの第2面へ接触する第1加圧部と、を有する消色部と、
前記第1加熱部を前記消色温度以上に加熱させる制御部と、
前記消色温度以上に加熱され、消色処理されたシートを積載する積載部と、
を備える消色装置。
【請求項2】
消色温度で消色する色材で画像が形成されたシートを搬送する搬送部と、
搬送されるシートのシート搬送方向と直交するシート幅方向に沿って、選択的に発熱可能な第1の発熱パターン部および第2の発熱パターン部が形成された面状の第1熱源を有し、搬送されるシートの第1面と接触して、シートに形成された画像を前記消色温度以上に加熱する第1加熱部と、前記第1加熱部とともにシートが通過するニップ部を形成し、シートの第2面へ接触する第1加圧部と、を有する消色部と、
前記第1および第2の発熱パターン部を、同時あるいは選択的に前記消色温度以上に発熱させる制御部と、
前記消色温度以上に加熱され、消色されたシートを積載する積載部と、
を備える消色装置。
【請求項3】
前記第1熱源は、前記第1の発熱パターン部および前記第2の発熱パターン部を積層して形成されることを特徴とする請求項2に記載の消色装置。
【請求項4】
前記第1および第2の発熱パターン部は、シート幅方向における発熱温度分布が均一であって、互いの発熱量が異なることを特徴とする請求項2または3に記載の消色装置。
【請求項5】
前記第1の発熱パターン部は、前記第2の発熱パターン部よりも発熱量が大きく、且つ、最前面としてシート搬送面側に配置されることを特徴とする請求項3に記載の消色装置。
【請求項6】
前記第1の発熱パターン部の背面側に配置される前記第2発熱パターン部は、前記ニップ部の中心部に発熱が集中するパターン形状に形成したことを特徴とする請求項5に記載の消色装置。
【請求項7】
前記消色部は、前記第1加熱部および第1加圧部のシート搬送方向の下流側に配置され、シートの第2面に接触してシートに形成された画像を前記消色温度以上に加熱する第2加熱部と、
前記第2加熱部とともにシートが通過するニップ部を形成し、シートの第1面へ接触する第2加圧部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の消色装置。
【請求項8】
シートを給紙する給紙部と、
シートの画像を読み取る読取部と、をさらに備え、
前記搬送部は、前記読取部が配置され、且つ、前記給紙部から給紙されたシートを前記積載部へ向けて搬送する第1搬送路と、前記消色部が配置され、且つ、前記読取部のシート搬送方向下流側における分岐点において前記第1搬送路から分岐し、前記読取部のシート搬送方向上流における合流点において、前記第1搬送路へ合流する第2搬送路と、を有し、
前記制御部は、前記読取部からの読取情報に基づいて消色処理の適否を判定し、前記第1搬送路を搬送する消色処理済みのシートを判定結果に応じて前記積載部に排紙させることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の消色装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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