説明

消防用ホースとその巻取り及び繰出し方法

【課題】長尺で口径が大きなった場合でも損傷を生じることなく取り扱いが容易になり、大規模な火災現場での迅速な対応に支障をきたすことのない消防用ホースとその巻取り及び繰出し方法を提供する。
【解決手段】消火流体の圧力によって筒状になり、その圧力の解除によって扁平状になるように変形する消火流体送り用のホース本体11を備える消防用ホースを、扁平状である時にリールにより巻取り及び繰出す。ホース本体11の一方の扁平面11aを下面として地面Gに載置した時に、その一方の扁平面11aと地面との接触を阻止する保護部材30を、予めホース本体11の外面にホース本体11の他方の扁平面11bよりも上方に突出しないように取り付ける。しかる後に、リールによる巻取り及び繰出しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模火災に適した消防用ホースと、その消防用ホースのリールによる巻取り及び繰出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消火流体の圧力によって筒状になり、その圧力の解除によって扁平状になるように変形する消火流体送り用のホース本体を備える消防用ホースにおいては、そのホース本体が扁平状である時にリールにより巻取り及び繰出しが行われる。そのホース本体の両端に取り付けられる継手を介し、消火栓やポンプ車等の流体供給源と放水銃等の流体放出部材とが消防用ホースに接続される。
【0003】
従来、そのようなホース本体がリールによる巻取りや繰出し時に地面と擦れることで損傷するのを防止するため、ホース本体の全体を樹脂被膜によりコーティングしたり、合成ゴムによりホース本体の全体を被覆することが行われている。また、ホース本体の全体を円筒形の合成樹脂製コイルバネにより覆うことが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−54985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば石油コンビナート基地の火災のような大規模火災においては、毎分10000L以上、場合によっては20000L〜25000Lにも及ぶ大流量の消火流体を、数百〜数千m離れた流体供給源から流体放出部材まで消防用ホースを介して搬送する必要がある。このような場合、消防用ホースは長尺で口径が大きくなり非常に重くなることから、樹脂被膜をコーティングする程度ではホース本体の損傷を十分に防止できない。特に石油コンビナート基地等においては防油用の砂利や防風林の枝等によりホース本体が損傷し易くなる。また、ホース本体の全体を合成ゴムやコイルバネで覆う場合も、その合成ゴムを厚くしたり、コイルバネの線径を太くする必要がある。しかし、ホース本体の全体を覆う合成ゴムの厚さやコイルバネの線径が大きなると、ホース本体はリールにより巻取られた時の径と重量が大きくなる。そのため、消防用ホースの取り扱いに労力を要し、大規模な火災現場での迅速な対応に支障をきたすことになる。本発明は、そのような問題を解決することのできる消防用ホースとその巻取り及び繰出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の消防用ホースは、消火流体の圧力によって筒状になり、その圧力の解除によって扁平状になるように変形する消火流体送り用のホース本体を備え、前記ホース本体はリールにより巻取り及び繰出し可能であり、扁平状の前記ホース本体が一方の扁平面を下面として地面に載置された時に、その一方の扁平面と地面との接触を阻止する保護部材が、前記ホース本体の他方の扁平面よりも上方に突出しないように前記ホース本体の外面に取り付けられ、前記保護部材は、前記ホース本体と共に前記リールによる巻取り及び繰出しができるように変形可能とされていることを特徴とする。
本発明方法は、消火流体の圧力によって筒状になり、その圧力の解除によって扁平状になるように変形する消火流体送り用のホース本体を備える消防用ホースを、扁平状である時にリールにより巻取り及び繰出す方法であって、前記ホース本体の一方の扁平面を下面として地面に載置した時に、その一方の扁平面と地面との接触を阻止する保護部材を、予め前記ホース本体の外面に前記ホース本体の他方の扁平面よりも上方に突出しないように取り付け、しかる後に、前記リールによる巻取り及び繰出しを行うことを特徴とする。
本発明によれば、扁平状のホース本体が一方の扁平面を下面として地面に載置された時に、その一方の扁平面と地面との接触を保護部材により阻止できるので、ホース本体のリールによる巻取りや繰出し時における損傷を防止できる。しかも、その保護部材はホース本体の他方の扁平面よりも上方に突出しないので、ホース本体がリールにより巻取られた時の径と重量が大きくなるのを抑制できる。
【0006】
扁平状の前記ホース本体の幅方向において前記ホース本体の両端間に前記保護部材の両端が配置されるのが好ましい。これにより、保護部材がホース本体の他方の扁平面よりも上方に突出するのを確実に防止できる。
あるいは、前記保護部材は扁平な板状とされ、扁平状の前記ホース本体の幅方向において前記保護部材の両端間に前記ホース本体の両端が配置されてもよい。これにより、ホース本体の両端が地面と擦れるのをより確実に防止できる。
【0007】
前記保護部材は、前記ホース本体の外面に着脱自在とされているのが好ましい。これにより損傷した保護部材の交換が可能になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消防用ホースとその巻取り及び繰出し方法によれば、長尺で口径が大きなった場合でも損傷を生じることなく取り扱いが容易になり、大規模な火災現場での迅速な対応に支障をきたすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜図3に示す本発明の実施形態に係る消防用ホース1は、毎分10000L以上、場合によっては20000L〜25000L以上にも及ぶ大流量の消火流体を、数百〜数千m離れた流体供給源から流体放出部材に搬送するために用いられるもので、ホース展長車2に設けられたリール3により巻取り及び繰出しが可能とされている。
【0010】
ホース1は、消火流体送り用のホース本体11を備え、ホース本体11の各端それぞれに継手金具12が取り付けられ、一方の継手金具12を介して消火流体を吐出したり中継するポンプや消火栓等に接続され、他方の継手金具12を介して消火流体を放出するための放水銃やノズル等に接続される。また、複数本のホース1を継手金具12を介して直列状に接続することで、一本のホースとして使用することもできる。ホース本体11は、消火流体の圧力によって図5に示すように筒状になり、その圧力の解除によって図4に示すように扁平状になるように変形する。このようなホース本体11自体や継手金具12自体の構成は特に限定されず公知のものを用いることができる。
【0011】
展長車2は、車輪21aを介して地面上を走行可能な台車21を有する。台車21上の支柱22に取り付けられた横軸心のシャフト23に、リール3が回転自在に嵌め合わされている。台車21上に、リール3を挟むように2つのホースガイド24が取り付けられている。リール3は、筒部材3aの一端に円板3bを固定することで構成され、筒部材3aと円板3bがシャフト23に同軸心に嵌め合わされる。筒部材3aの外周がホース1の巻き取り面とされ、巻き取られたホース1の軸方向一方への抜けが円板3bにより防止される。巻き取られたホース1の軸方向他方への抜けを防止するため、ホースガイド24にバー26が取り付けられている。なお、リール3をシャフト23に抜き差し可能とし、ホースガイド24にバー26をピン等の適宜手段を介して着脱可能に取り付け、バー26をホースガイド24から取り外すことで、リール3に巻き取った状態のホース1をシャフト23から抜いて保管できるようにしてもよい。リール3へのホース1の巻き取りは、ホース本体11の一端の継手金具12が内周端となると共に他端が外周端となる所謂一重巻きでもよいし、ホース本体11の中間部が内周端となると共に両端の継手金具12が外周端となる所謂二重巻きでもよい。一重巻きを行う場合、筒部材3aに切り欠き3a′をホース本体11を差し込むことができるように形成し、一方の継手金具12を筒部材3a内に配置可能とするのが好ましい。二重巻きを行うため、ホースガイド24が2つとされ、ホース本体11の中間部から一端の間は一方のホースガイド24により、ホース本体11の中間部から他端の間は他方のホースガイド24により案内可能とされている。リール3は、シャフト23に油圧や電動のモータを連結することで動力により回転させてもよし、ハンドルを設けて手動により回転させてもよい。なお、リール3の構造は特に限定されず公知のものを用いることができ、例えばリール3として回転軸方向に並列する複数の巻き取り面を有し、複数本のホース1を巻取り可能なものを用いてもよい。また、展長車2は必ずしも必要ではなく、リールは据え置き型でもよい。
【0012】
図4に示すように、扁平状のホース本体11が一方の扁平面11aを下面として地面Gに載置された時に、その一方の扁平面11aと地面Gとの接触を阻止する保護部材30が、ホース本体11の他方の扁平面11bよりも上方に突出しないようにホース本体11の外面に取り付けられている。保護部材30は、ホース本体11の外面に取り付けられることで、ホース本体11の扁平状から筒状への変形に応じて図5に示すようにホース本体11の一方の扁平面11aに沿うように変形する。
【0013】
保護部材30は、ホース本体11と共にリール3による巻取り及び繰出しができるように変形可能でホース本体11の他方の扁平面11bよりも上方に突出しなければ、その形状や材質やホース本体11の外面への取り付け方法は特に限定されない。本実施形態においては、保護部材30は扁平な板状とされ、扁平状のホース本体11の幅方向(図4において左右方向)においてホース本体11の両端11′、11″間に保護部材30の両端30′、30″が配置される。保護部材30の材質は、例えば可撓性を有する合成樹脂、ゴム、繊維等を用いることができる。保護部材30のホース本体11の外面への取り付けは、例えば、接着剤を介する接着、熱間溶融圧着、両面テープ、縫い付け、ベルト等による保護部材30とホース本体11の巻き付け等により行うことができる。また、保護部材30の上面とホース本体11の一方の扁平面11aとに面ファスナー等の連結具を取り付け、その連結具を介して保護部材30をホース本体11の外面に着脱自在に取り付けてもよい。
【0014】
上記実施形態のホース1の巻取り及び繰出しに際しては、ホース本体11の一方の扁平面11aを下面として地面Gに載置した時に、その一方の扁平面11aと地面Gとの接触を阻止する保護部材30を、予めホース本体11の外面にホース本体11の他方の扁平面11bよりも上方に突出しないように取り付けることが行われ、しかる後にホース本体11が扁平状である時にリール3により巻取り及び繰出が行われる。これにより、扁平状のホース本体11が一方の扁平面11aを下面として地面Gに載置された時に、その一方の扁平面11aと地面Gとの接触を保護部材30により阻止できるので、ホース本体11のリール3による巻取りや繰出し時における損傷を防止できる。しかも、保護部材30はホース本体11の他方の扁平面11bよりも上方に突出しないので、ホース本体11がリール3により巻取られた時の径と重量が大きくなるのを抑制できる。保護部材30をホース本体11の外面に着脱自在とすることで、損傷した保護部材30の交換が可能になる。また、扁平状のホース本体11の幅方向においてホース本体11の両端11′、11″間に保護部材3の両端30′、30″が配置されることで、保護部材3がホース本体11の他方の扁平面11bよりも上方に突出するのを確実に防止できる。
【0015】
図6は変形例を示し、扁平状のホース本体11の幅方向において保護部材30の両端30′、30″間にホース本体11の両端11′、11″が配置されている。これにより、ホース本体11の両端11′、11″が地面Gと擦れるのをより確実に防止できる。他は上記実施形態と同様で同様部分は同一符号で示す。
【0016】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、保護部材は扁平な板状に限定されず、多数の開口を有する網状であってもよい、ホース本体の長手方向に沿う複数本のテープ状の保護部材を、ホース本体の幅方向の間隔をおいてホース本体の外面に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の消防用ホースとリールを示す側面図
【図2】本発明の実施形態の消防用ホースとリールの部分断面図
【図3】本発明の実施形態の消防用ホースの扁平状である時の平面図
【図4】本発明の実施形態のホース本体の扁平状である時の断面図
【図5】本発明の実施形態のホース本体の筒状である時の断面図
【図6】本発明の変形例のホース本体の扁平状である時の断面図
【符号の説明】
【0018】
1 消防用ホース
3 リール
11 ホース本体
11′、11″ 両端
11a 一方の扁平面
11b 他方の扁平面
30 保護部材
30′、30″ 両端
G 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火流体の圧力によって筒状になり、その圧力の解除によって扁平状になるように変形する消火流体送り用のホース本体を備え、前記ホース本体はリールにより巻取り及び繰出し可能な消防用ホースにおいて、
扁平状の前記ホース本体が一方の扁平面を下面として地面に載置された時に、その一方の扁平面と地面との接触を阻止する保護部材が、前記ホース本体の他方の扁平面よりも上方に突出しないように前記ホース本体の外面に取り付けられ、
前記保護部材は、前記ホース本体と共に前記リールによる巻取り及び繰出しができるように変形可能とされていることを特徴とする消防用ホース。
【請求項2】
扁平状の前記ホース本体の幅方向において前記ホース本体の両端間に前記保護部材の両端が配置される請求項1に記載の消防用ホース。
【請求項3】
前記保護部材は扁平な板状とされ、扁平状の前記ホース本体の幅方向において前記保護部材の両端間に前記ホース本体の両端が配置される請求項1に記載の消防用ホース。
【請求項4】
前記保護部材は、前記ホース本体の外面に着脱自在とされている請求項1〜3の中の何れかに記載の消防用ホース。
【請求項5】
消火流体の圧力によって筒状になり、その圧力の解除によって扁平状になるように変形する消火流体送り用のホース本体を備える消防用ホースを、扁平状である時にリールにより巻取り及び繰出す方法であって、
前記ホース本体の一方の扁平面を下面として地面に載置した時に、その一方の扁平面と地面との接触を阻止する保護部材を、予め前記ホース本体の外面に前記ホース本体の他方の扁平面よりも上方に突出しないように取り付け、しかる後に、前記リールによる巻取り及び繰出しを行うことを特徴とする消防用ホースの巻取り及び繰出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−111102(P2007−111102A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302829(P2005−302829)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【Fターム(参考)】