説明

消防車

【課題】消防車において電気駆動で車輌走行及び消防用機器の作動を実現することが可能となる。
【解決手段】一形態にかかる消防車は、電池装置12と、前記電池装置12により駆動される電動モータ13と、前記電動モータ13に接続され前記電動モータ13の駆動により作動する車輌走行部14と、前記電動モータ13に接続され前記電動モータ13の駆動により作動する消防用機器15と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な消防車として、車輌走行用と消防機器駆動用とでエンジンの動力を切り替えるものが知られている。この種の消防車において、例えばエンジン動力で駆動する消防ポンプで外部の貯水槽や消火栓等の水源から大量の水を吸い込んで消火ホースに送水し、消防ホースの先端の消火ノズルから大量放水して消火活動を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−87408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、乗用車においては電気駆動で走行する自動車が提供されているが、電気駆動の自動車はエネルギーが比較的小さいため、貨物自動車や消防車などには適用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態にかかる消防車は、電池装置と、前記電池装置により駆動される電動モータと、前記電動モータに接続され前記電動モータの駆動により作動する車輌走行部と、前記電動モータに接続され前記電動モータの駆動により作動する消防用機器と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、消防車において電気駆動で車輌走行及び消防用機器の作動を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる消防車の外観を示す側面図。
【図2】同消防車の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態かかる消防車について、図1及び図2を参照して説明する。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。図1は本実施形態にかかる消防車の側面図、図2は消防車の内部構成を示す説明図である。
【0009】
図1及び図2に示す消防車10は、例えば4輪駆動のプラグイン電気自動車であって、車体11と、車体下部に搭載された電池装置12と、車体に内蔵され電池装置12により駆動される電動モータ13と、電動モータ13の駆動により回転する車輪を含む車輌走行部14と、電動モータ13の駆動により送水動作を行なう消防ポンプ15と、各部を制御する制御部16と、を備えている。
【0010】
車体11の前部には運転席11a及びキャビン11bが設けられており、運転席11a及びキャビン11b内に7名程度の消防士が搭乗できるようになっている。車体11の後部には機関部11cが設けられており、機関部11c内には消防ポンプ15やその他の消防設備を含む消防用機器が収容されている。
【0011】
ポンプ15に繋がる水路44は、図2に示すように、モータ13、インバータ33、電池装置12、及び制御部16に接触あるいは近接して通るように設置されている。ポンプ15の駆動による送水の際に放水用の水の一部を水路44に流すことでこれらの部品を冷却し、排出口44aから排出するように構成されている。
【0012】
また、この機関部11cの側面には、送水口21や操作盤22などが設けられている。操作盤22には回転計、圧力計、真空計に加え、電池装置12に関する情報を表示する表示部として電流値を示す電流計23aや残電圧を示す残電圧計23bなどの各種の計器類23や、ユーザが切り替え操作を行う操作レバー24aやクリック操作で出力を設定する入力ボタン24bを含む操作部24が設けられている。消火活動をする際にユーザは各種計器類23を確認しながら操作部24を操作できるようになっている。
【0013】
例えば入力ボタン24bはデジタル式のクリック操作とし、電子制御により放水の出力が最適となる回転数に設定可能になっている。なお、クリック操作の他、一回転当りの操作量が可変としたノブで回転操作するようにしてもよい。
【0014】
機関部11cの側面であって操作盤22の上方には充電装置25が設けられている。操作盤22の上に設けられた収容ボックス25aにセットされた充電装置25を用いて、電池装置12の充電が可能になっている。例えば電池装置12が鉛バッテリの場合、200V−100Aの外部の給電設備から充電装置25で400V−50A昇圧させて充電し、約6〜8時間で充電完了となる。
【0015】
機関部11cの側面後方にはホースリール26が配置されている。ホースリール26には消防ポンプ15に接続されるとともに先端にノズルを有する消火ホース27が巻きつけられて支持されている。
【0016】
図2に示すように、電池装置12は、複数の電池セル31を直列に連結したメイン電源としての電池12A,12Bが並列して設けられている。例えば鉛バッテリの場合、一時間定格放出電流が43A/個で12Vの電池セル31を28個直列に繋いで構成されている。この場合には、定格電圧範囲が336Vとなり、定格出力50kWの時に1時間連続して使用できる。ここでは2列並列で、合計56個の電池セル31が配置されている。電池装置12は例えば車体下部の前輪14Aと後輪14Bのホイルベース間に配置されている。
【0017】
さらに、モータ制御用電源として、12ボルト電池で構成される補助電源としての電池17が設けられ、メイン電池12AからDC−DCコンバータ32を介して充電可能になっている。補助電池17は車輌操縦、灯火類等の電源となる。
【0018】
電池装置12はインバータ33を介して電動モータ13に接続されている。インバータ33は、制御部16によって制御されメイン電池12A,12Bから供給される直流電流を、車輌の動作状態に合わせて適切な交流電流に変換して電動モータ13に供給する。
【0019】
電池装置12には切換スイッチ34が接続されている。切換スイッチ34は、例えば使用者のレバー操作に応じて作動するカットアウトスイッチである。例えば、車輌運転時や低負荷でのポンプ駆動時にはメイン電池12A,12Bのうちいずれか一方で駆動を行い、高負荷でのポンプ駆動時には両方のメイン電池12A,12Bを並列使用して駆動する。なお、制御部16の自動制御により電流値、電圧値、残電圧に基づいて切換動作を行なうようにしてもよい。
【0020】
電動モータ13は、電池装置12ら供給された電力により駆動され、車輌走行部14を駆動して車輪を回転させる走行駆動機能と、消防ポンプ15を作動させるポンプ駆動機能と、を兼ね備えている。電動モータ13の出力軸は、第1の伝達機構14Cを介して前輪14Aに、第2の伝達機構14Dを介して後輪14Bに、接続されている。なお、消防車10では回生ブレーキを用いており、減速時には電動モータ13が発電機として働き、制動エネルギーを回収して電池装置12のチャージに用いるようになっている。
【0021】
電動モータ13の出力軸はPTO(Power Take Off Device)36を介して消防ポンプ15にも接続されている。PTO36は増速ギア37aを有する自動変速装置37を備えて構成されている。電動モータ13の出力は自動変速装置37を介してポンプ駆動用のトルクに調整されて消防ポンプ15に伝達される。消防ポンプ15は水を貯留する貯水タンクに貯められている水や接続された外部の水源の水を給水して所定の圧力及び所定の流量で消火ホース27に吐出して放水を行なう。
【0022】
電動モータ13は空調装置41、パワーステアリング装置42、ブレーキパワーアシスト装置43は、補助電源17に接続されており、例えばブレーキパワーアシスト装置43はブレーキブースト用の電動ポンプで負圧を発生させ作動するようになっている。
【0023】
制御部16は、CPU、ROM,RAMなどを備え、ユーザによる操作部24の操作や自動制御により各部の動作を制御する。制御部16は、たとえば操作レバー24aや運転席11aからの操作信号に応じて、車輌走行モード、低負荷放水モード、高負荷放水モード、の複数のモードで動作する。
【0024】
制御部16は、例えば運転席11aでアクセルが踏まれるなどして走行入力指示を検知した場合には車輌走行モードで動作する。このとき、例えば一方のメイン電池12Aのみが接続され、他方のメイン電池12Bは接続されないように切換スイッチ34を設定し、一方のメイン電池12Aの電力で電動モータ13を駆動して走行部14を作動させるように制御を行なう。これにより電動モータ13から第1及び第2の動力伝達機構を介して前輪14A及び後輪14Bが回転し、車輌が走行する。
【0025】
一方、例えばユーザが操作レバー24aを操作して放水開始指示が入力された場合には、例えば入力指示に応じて低負荷放水モードか高負荷放水モードかが判定される。例えば1線放水では低負荷放水モードとし、複数線放水では高負荷モードとする。
【0026】
制御部16は、ユーザの操作部24での入力指示により低負荷での放水開始指示を検知した場合には、低負荷放水モードとして各部を動作させる。この場合一方のメイン電池12Aのみが接続され、他方のメイン電池12Bは接続されないように切換スイッチ34を設定し、一方のメイン電池12Aの電力で電動モータ13により消防ポンプ15を作動させ、消防ポンプ15に接続されたホース27の先端から放水を行なうよう制御する。このとき、放水用の水の一部を電池装置12、モータ13、制御部16、インバータ33の近傍に設けた水路44を通すことで放熱(水冷)される。
【0027】
制御部16は、ユーザの操作部24での入力指示により高負荷での放水開始指示を検知した場合には、高負荷放水モードとして各部を動作させる。この場合、メイン電池12A,12Bの両方が接続されるように切換スイッチ34を設定し、複数のメイン電池12A,12Bの電力によって電動モータ13を駆動して消防ポンプ15を作動させ、消防ポンプ15に接続されたホース27の先端から放水を行なうよう制御する。このとき、放水用の水が電池装置12の近傍の水路44に流れることにより電池装置12が水冷される。
【0028】
なお、低負荷及び高負荷での消防ポンプ15の駆動の際には制御部16の制御により最も出力の得られる所定の回転数に合わせるようにモータ回転数を調節して電動モータ13が駆動される。
【0029】
本実施形態にかかる消防車10によれば、電気駆動で車輌走行及び消防用機器の作動を実現することが可能となる。すなわち、共通の電池装置12を用いて車輌走行部14と消防ポンプ15の動力源とすることができる。消防車は通常片道10〜20km程度の限られた担当区域内で走行することを想定しており、走行距離が限られているので、電気駆動としても必要なエネルギーを十分に確保できる。
【0030】
また電気駆動で実現可能とした消防車10はエンジン仕様の自動車に比べてCOXやNOXの排出を防止できるとともに、エンジン音による騒音が防止できるので、夜間活動時や無線を含んだ隊員同士のコミュニケーション面で有利となる。さらに、トンネル内など酸素欠乏状態での消火活動にも対応できるので災害対応能力が向上する。
【0031】
また、消防車10ではPTO36に増速ギア37aを有する自動変速装置37を設けたことによりトルク特性を生かし、消防ポンプ15等を動作させる際に必要な送水量を得られる。また増速ギア37aを用いたことにより、PTOを介してのポンプ駆動においてもパワー不足を解消することが出来る。
【0032】
また、一般に電気駆動式の自動車では電池装置の冷却が課題となるが、本実施形態では電池装置12の近傍に水路44を有する消防車10としたため、消火活動時に消防ポンプ15によって送水を行なうことで同時に電池装置12の水冷を行なうことが可能となり、冷却用の別設備が不要となる。
【0033】
一般にポンプ操作を行う際には送水で最も出力の得られる所定の回転数が存在し、操作者は所定の回転数にあわせる技術が求められるが、本実施形態ではポンプ操作時にモータ回転数の調整を電子制御化させることにより操作性を向上させることが出来る。
【0034】
一般にPTO36で消防ポンプ15を作動させる場合、複数線で送水量を大きく設定すると電池に負荷をかけすぎるため、電池の消耗が早くなるだけでなく放電レート特性の関係で寿命が短くなってしまうが、本実施形態では負荷に応じてメイン電池12A,12Bを並列使用可能としたため電池装置の長寿命化が可能となる。
【0035】
操作盤22に電流計23aを備えることでメイン電池12A,12Bの1列使用と2列使用の切換タイミングが明確になる。また、操作盤22に残電圧計23bを設けて操作者に残使用時間や残走行距離がわかるようにしたことにより、操作性が向上する。
【0036】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。また、各部の具体的構成や材質等は上記実施形態に例示したものに限られるものではなく適宜変更可能である。
【0037】
一例として消火用の水を送る送水ポンプとした例を示したが、この他消火剤を送る消化剤ポンプを含む他種の消防用機器にも適用可能である。
【0038】
また、上記実施形態では電池として鉛バッテリを用いた例を示したが、これに限られるものではなく、リチウムイオン電池などの他の電池であっても本発明を適用可能である。リチウムイオン電池の場合、例えば200V−260Aで60分(標準)、200V−1000Aで15分(急速)と、比較的充電時間を短くすることができる。さらに電池装置12の個数などは電動モータやその他の設備との関係で適宜変更可能となる。
【0039】
さらに、上記実施形態の構成要件のうち一部を省略しても本発明を実現可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…消防車、11…車体、11a…運転席、11b…キャビン、11c…機関部、12…電池装置、12A.12B…メイン電池、17…補助電池、13…電動モータ、14…車輌走行部、14A…前輪、14B…後輪、14C…第1の伝達機構、14D…第2の伝達機構、15…消防ポンプ、16…制御部、21…送水口、22…操作盤、23…計器類、24a…操作レバー、24b…入力ボタン、24…操作部、25…充電装置、25a…収容ボックス、26…ホースリール、27…消火ホース、31…電池セル、33…インバータ、34…切換スイッチ、36…PTO、37a…増速ギア、37…自動変速装置、44…水路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池装置と、
前記電池装置により駆動される電動モータと、
前記電動モータに接続され前記電動モータの駆動により作動する車輌走行部と、
前記電動モータに接続され前記電動モータの駆動により作動する消防用機器と、
を備えたことを特徴とする電気駆動式の消防車。
【請求項2】
前記消防用機器は、前記電動モータに増速ギアを介して接続され前記電動モータの駆動により送液を行なう消防ポンプであることを特徴とする請求項1記載の電気駆動式の消防車。
【請求項3】
前記電池装置は複数の電池を並列して備え、
前記複数の電池の接続状態を切り替え可能とする切換手段を備えることを特徴とする請求項1記載の電気駆動式の消防車。
【請求項4】
前部に運転席を有するとともに前記運転席の後方に前記消防ポンプを内蔵する機関部を有する車体を備え、
前記機関部の側部には、前記消防ポンプに接続されるホースが設置されるとともに、前記電池装置に関する情報が表示される表示部と、送液動作を操作する操作部と、が設けられることを特徴とする請求項2記載の電気駆動式の消防車。
【請求項5】
高負荷で前記消防ポンプにより放水を行なう高負荷放水モードと、低負荷で前記消防ポンプにより放水を行なう低負荷放水モード及び車輌走行モードとで、前記切換手段を切換える制御部を備えることを特徴とする請求項3記載の電気駆動式の消防車。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−5932(P2013−5932A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140732(P2011−140732)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(391001169)櫻護謨株式会社 (40)
【Fターム(参考)】