消音ルーバ
【課題】構造が単純で容積が小さく、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることのできる、新規の消音ルーバを提供する。
【解決手段】消音ルーバを複数の共鳴管2を並べて構成した。共鳴管2は、いずれか一方の端部において開口部3を有する。共鳴管2の長手方向は、消音ルーバの奥行き方向に対して傾斜していてもよい。或いは、共鳴管2は、折り返し構造を有していてもよい。構造が単純で容積が小さい上に消音効果が高く、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることができる。
【解決手段】消音ルーバを複数の共鳴管2を並べて構成した。共鳴管2は、いずれか一方の端部において開口部3を有する。共鳴管2の長手方向は、消音ルーバの奥行き方向に対して傾斜していてもよい。或いは、共鳴管2は、折り返し構造を有していてもよい。構造が単純で容積が小さい上に消音効果が高く、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機などの温風吹き出し口における消音ルーバに関する。
【背景技術】
【0002】
ルーバは、機械や構造物の開口部に設けられ、光・視界の調節や、羽根角度の調節により気流の方向も調節できるため、様々な機器等に使用されている。一方で、開口率や通風性を重視したルーバは、音響透過損失がほとんど期待できないため、開口部からの音響の放射が問題となっていた。
【0003】
このため、従来、消音作用を有するルーバが提案されており、例えば、特許文献1には、壁面等に形成した通気口に羽根体を傾斜させて取り付けたルーバにおいて、羽根体の内部に消音室を設けると共にこの消音室を隔壁によって複数に分割し、壁面の通気口と対向する位置に消音室開口を形成した、消音ルーバが開示されている。この消音ルーバは、消音室にグラスウール等の繊維質材やウレタン等の多孔質材を収容しており、騒音音波を消音室内に導入し、消音室内で繰り返し反射させることで、騒音音波の音圧を低減しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−121212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の消音ルーバは、構造が複雑で容積が大きいという欠点があった。また、上記の消音ルーバは、消音室開口が大きく気流の抵抗が考慮されていないため、石油ファンヒータの温風吹き出し口などの導風ルーバとしては用いることができなかった。
【0006】
一方、石油ファンヒータの温風吹き出し口からは、ファン音や燃焼音が放射されるが、小型化とコストダウンのため内部構造に消音器を取り入れることは容易ではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、構造が単純で容積が小さく、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることのできる、新規の消音ルーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載の消音ルーバは、複数の共鳴管を並べて構成され、前記共鳴管は、いずれか一方の端部において開口部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2記載の消音ルーバは、請求項1において、前記共鳴管の長手方向は、前記消音ルーバの奥行き方向に対して傾斜していることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3記載の消音ルーバは、請求項1において、前記共鳴管は、折り返し構造を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載の消音ルーバによれば、複数の共鳴管を並べて構成され、前記共鳴管は、いずれか一方の端部において開口部を有するので、構造が単純で容積が小さい上に消音効果が高く、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることができる。
【0012】
本発明の請求項2記載の消音ルーバによれば、前記共鳴管の長手方向は、前記消音ルーバの奥行き方向に対して傾斜しているので、より低い周波数において消音が可能となる。
【0013】
本発明の請求項3記載の消音ルーバによれば、前記共鳴管は、折り返し構造を有しているので、より低い周波数において消音が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の消音ルーバの斜視図である。
【図2】実施例1の消音ルーバの断面図である。
【図3】実施例2の消音ルーバの斜視図である。
【図4】実施例2の消音ルーバの幅方向の断面図である。
【図5】実施例3の消音ルーバの斜視図である。
【図6】実施例3の消音ルーバの断面図である。
【図7】実施例3の消音ルーバの別の方向における断面図である。
【図8】実施例4において試作した試験体を示す正面図と側断面図である。
【図9】実施例4において試作したルーバの三面図である。
【図10】実施例4において音響透過損失の測定に用いた機器の構成を示す説明図である。
【図11】実施例4において試作したルーバの共鳴管の端面の条件を示す模式図である。
【図12】実施例4におけるタイプ01(D=60mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図13】実施例4におけるタイプ01(D=120mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図14】実施例4におけるタイプ02のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図15】実施例4におけるタイプ03のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図16】実施例4におけるタイプ04(D=30mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図17】実施例4におけるタイプ04(D=60mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図18】実施例4におけるタイプ04(D=135mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の消音ルーバについて、以下、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
本実施例の消音ルーバを示す図1、2において、1は板状に形成された消音ルーバであって、複数の共鳴管2を一列に並べて構成されている。共鳴管2は空洞になっており、一方の端部にのみ開口部3を有している。また、消音ルーバ1が使用される際に、開口部3は、消音ルーバ1の近傍を通過する気流の上流側又は下流側に配置されるようになっている。
【0017】
本実施例の消音ルーバによれば、共鳴管2の長さに応じて決まる共鳴周波数において、消音効果が得られる。ここで、一方の端部にのみ開口部3を有する共鳴管2における基準音の共鳴周波数fは音速cと波長λにより、f=c/λのように表される。共鳴管2の長さをlとすると、基準音における波長との関係はl=λ/4で表される。なお、具体的な実験結果は、以下の実施例4において詳述する。
【0018】
以上のように、本実施例の消音ルーバ1は、複数の共鳴管2を並べて構成され、前記共鳴管2は、いずれか一方の端部において開口部3を有するので、構造が単純で容積が小さい上に消音効果が高く、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることができる。
【0019】
なお、本実施例の消音ルーバは、複数の共鳴管2を二列や三列に並べて構成されてもよい。また、本実施例の消音ルーバは、石油ファンヒータの温風吹き出し口のほか、エアコンディショナーの吹き出し口などにも適用できる。
【0020】
また、消音ルーバ1を製造する場合は、管を並べる、格子状断面の板を利用する、ハニカムの製法のように波板同士を重ねる、段ボールの製法のように波板に対して片面又は両面に平板を取り付ける、或いはこれらを多層に重ねる、などの方法を採用することができる。したがって、消音ルーバ1の構造は本実施例に限らず、適宜変形可能である。
【実施例2】
【0021】
本実施例の消音ルーバにおいては、図3、4に示すように、共鳴管2の長手方向は、消音ルーバ1の奥行き方向に対して傾斜している。共鳴管2の長さを消音ルーバ1の奥行きよりも長くできるで、実施例1と比較して、より低い周波数において消音が可能となる。或いは、実施例1と同じ周波数において消音を行う場合には、消音ルーバ1の奥行きを短くすることができる。
【実施例3】
【0022】
本実施例の消音ルーバにおいては、図5〜7に示すように、共鳴管2は、折り返し構造を有している。すなわち、共鳴管2は、折り返し部4において折り返され、消音ルーバ1の奥行きの2倍の長さを有している。これにより、実施例1の半分の周波数において消音が可能になる。或いは、実施例1と同じ周波数において消音を行う場合には、消音ルーバ1の奥行きを半分にすることができる。
【実施例4】
【0023】
種々の消音ルーバを試作し、消音効果を調べるために音響透過損失を測定した。
【0024】
図8に製作した試験体を示す。外形100mm、厚さ0.5mmの円筒内面にルーバを5枚取り付けた。
【0025】
図9に、取り付けたルーバの構造を示す。タイプ01は、ルーバの奥行きD=60mm,120mmであり、共鳴管の開口部は4mm角の穴となっている。タイプ02は、D=60mmであり、共鳴管を30度傾けたものである。タイプ03は、D=60mmのタイプ01を2枚重ねたものであり、タイプ1よりも開口率(ルーバで遮られない部分の割合)が小さくなっている。タイプ04は、D=30mm、60mm又は135mmのタイプ01を2枚重ねた上に、重なり合った共鳴管の端部近傍を4mm角の切り欠きにより連通させて折り返し構造とし、共鳴管の長さを2倍にしたものである。なお、開口率は、タイプ01、02が78%、タイプ03、04が57%となっている。
【0026】
試作したルーバの音響透過損失の測定に用いた機器の構成を図10に示す。インピーダンス管内に試験体としてルーバを設置し、インピーダンス管の上流側から音波を発生させた。そして、ルーバの上流側と下流側からそれぞれ2本のマイクロフォンで音波を検出して、その検出結果に基づいてルーバの透過損失を算出した。
【0027】
共鳴管の端面の条件を図11に示す。タイプ01、03のルーバにおいては、共鳴管の両端を開口状態にした場合(A)、インピーダンス管の下流側のみをアルミテープで塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)、両端とも塞いだ場合(D)の4通りで測定した。タイプ02のルーバにおいては、両端開口、上流側閉口、下流側閉口の3通りで測定した。タイプ04(D=30mm、60mm)のルーバにおいては、折り返し構造の両端を開口状態として開口を上流側に向けた場合(E)、両端を開口状態として開口を下流側に向けた場合(F)、折り返し構造の両端のうちの片方を塞いだ状態で開口を上流側に向けた場合(G)、片方を塞いだ状態で開口を下流側に向けた場合(H)の4通りで測定した。タイプ04(D=135m)のルーバにおいては、折り返し構造の両端のうちの片方を塞いだ状態で開口を上流側に向けた場合(G)、下流側に向けた場合(H)の2通りで測定した。
【0028】
図12にタイプ01(D=60mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。計算上、一方の端部にのみ開口部を有する共鳴管の共鳴周波数は約1400Hzであるが、下流側のみを塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)において、1400Hz付近で音響透過損失のピークが表れている。なお、共鳴管の両端を開口状態にした場合(A)、両端とも塞いだ場合(D)においては、ほとんど音響透過損失は見られなかった。
【0029】
また、図13にタイプ01(D=120mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。計算上、一方の端部にのみ開口部を有する共鳴管の共鳴周波数は約700Hzであるが、下流側のみを塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)において、700Hz付近で音響透過損失のピークが表れている。
【0030】
図14にタイプ02のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。タイプ02のルーバにおいては、共鳴管の長さが最長で約70mmであり、共鳴周波数の高い短い管が混在する。計算上、一方の端部にのみ開口部を有する共鳴管の共鳴周波数は約1200Hz付近から高周波側に幅広く得られると予想されたが、下流側のみを塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)において、ほぼ予想通りの測定結果が得られた。
【0031】
図15にタイプ03のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。タイプ01(D=60mm)のルーバと同様に、1400Hz付近で音響透過損失が見られた。タイプ03のルーバは、タイプ01を2枚重ねて共鳴管の数をタイプ01の2倍としたものであり、下流側のみを塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)において、音響透過損失の値はタイプ01よりも大きくなった。また、ルーバが厚くなって開口率が小さくなったためと考えられるが、両端とも塞いだ場合(D)においても全体的に若干の音響透過損失が見られた。
【0032】
図16にタイプ04(D=30mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。タイプ04のルーバは、折り返し構造として共鳴管の長さを2倍にしたものであり、タイプ01(D=60mm)のルーバと同様の働きをすることが期待されたが、折り返し構造の両端のうちの片方を塞いだ状態で開口を上流側に向けた場合(G)、片方を塞いだ状態で開口を下流側に向けた場合(H)において、1400Hz付近における音響透過損失はタイプ01(D=60mm)のルーバと比べて小さいが、高周波側に幅広い音響透過損失が見られた。
【0033】
図17にタイプ04(D=60mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。折り返し構造の両端のうちの片方を塞いだ状態で開口を上流側に向けた場合(G)、片方を塞いだ状態で開口を下流側に向けた場合(H)において、700Hz付近における音響透過損失はタイプ01(D=120mm)のルーバと比べて小さいが、高周波側に幅広い音響透過損失が見られた。また、折り返し構造の両端を開口状態として開口を上流側に向けた場合(E)、両端を開口状態として開口を下流側に向けた場合(F)において、タイプ03のルーバに近い音響透過損失が見られた。これは両端の開口から音波が入射して折り返し部分で反射が起こったためと考えられる。
【0034】
図18にタイプ04(D=135mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。300Hz付近、900Hz付近、1500Hz付近にピークが現れている。これは、折り返した全長270mmに対する基準音、3倍音、5倍音の周波数に相当する。
【0035】
通常、高い開口率を持つルーバはほとんど有意な消音効果が期待できない。しかし、以上の実験結果より、実施例1に対応するタイプ01の(B)、(C)、タイプ03の(B)、(C)、タイプ04の(E)、(F)、実施例2に対応するタイプ02の(B)、(C)、実施例3に対応するタイプ04の(G)、(H)のルーバにおいて、開口率が大きいにもかかわらず、対象となる周波数において有意な音響透過損失が得られた。したがって、本発明の消音ルーバが騒音低減に有用であることが明らかになった。
【符号の説明】
【0036】
1 消音ルーバ
2 共鳴管
3 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機などの温風吹き出し口における消音ルーバに関する。
【背景技術】
【0002】
ルーバは、機械や構造物の開口部に設けられ、光・視界の調節や、羽根角度の調節により気流の方向も調節できるため、様々な機器等に使用されている。一方で、開口率や通風性を重視したルーバは、音響透過損失がほとんど期待できないため、開口部からの音響の放射が問題となっていた。
【0003】
このため、従来、消音作用を有するルーバが提案されており、例えば、特許文献1には、壁面等に形成した通気口に羽根体を傾斜させて取り付けたルーバにおいて、羽根体の内部に消音室を設けると共にこの消音室を隔壁によって複数に分割し、壁面の通気口と対向する位置に消音室開口を形成した、消音ルーバが開示されている。この消音ルーバは、消音室にグラスウール等の繊維質材やウレタン等の多孔質材を収容しており、騒音音波を消音室内に導入し、消音室内で繰り返し反射させることで、騒音音波の音圧を低減しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−121212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の消音ルーバは、構造が複雑で容積が大きいという欠点があった。また、上記の消音ルーバは、消音室開口が大きく気流の抵抗が考慮されていないため、石油ファンヒータの温風吹き出し口などの導風ルーバとしては用いることができなかった。
【0006】
一方、石油ファンヒータの温風吹き出し口からは、ファン音や燃焼音が放射されるが、小型化とコストダウンのため内部構造に消音器を取り入れることは容易ではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、構造が単純で容積が小さく、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることのできる、新規の消音ルーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載の消音ルーバは、複数の共鳴管を並べて構成され、前記共鳴管は、いずれか一方の端部において開口部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2記載の消音ルーバは、請求項1において、前記共鳴管の長手方向は、前記消音ルーバの奥行き方向に対して傾斜していることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3記載の消音ルーバは、請求項1において、前記共鳴管は、折り返し構造を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載の消音ルーバによれば、複数の共鳴管を並べて構成され、前記共鳴管は、いずれか一方の端部において開口部を有するので、構造が単純で容積が小さい上に消音効果が高く、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることができる。
【0012】
本発明の請求項2記載の消音ルーバによれば、前記共鳴管の長手方向は、前記消音ルーバの奥行き方向に対して傾斜しているので、より低い周波数において消音が可能となる。
【0013】
本発明の請求項3記載の消音ルーバによれば、前記共鳴管は、折り返し構造を有しているので、より低い周波数において消音が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の消音ルーバの斜視図である。
【図2】実施例1の消音ルーバの断面図である。
【図3】実施例2の消音ルーバの斜視図である。
【図4】実施例2の消音ルーバの幅方向の断面図である。
【図5】実施例3の消音ルーバの斜視図である。
【図6】実施例3の消音ルーバの断面図である。
【図7】実施例3の消音ルーバの別の方向における断面図である。
【図8】実施例4において試作した試験体を示す正面図と側断面図である。
【図9】実施例4において試作したルーバの三面図である。
【図10】実施例4において音響透過損失の測定に用いた機器の構成を示す説明図である。
【図11】実施例4において試作したルーバの共鳴管の端面の条件を示す模式図である。
【図12】実施例4におけるタイプ01(D=60mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図13】実施例4におけるタイプ01(D=120mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図14】実施例4におけるタイプ02のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図15】実施例4におけるタイプ03のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図16】実施例4におけるタイプ04(D=30mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図17】実施例4におけるタイプ04(D=60mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図18】実施例4におけるタイプ04(D=135mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の消音ルーバについて、以下、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
本実施例の消音ルーバを示す図1、2において、1は板状に形成された消音ルーバであって、複数の共鳴管2を一列に並べて構成されている。共鳴管2は空洞になっており、一方の端部にのみ開口部3を有している。また、消音ルーバ1が使用される際に、開口部3は、消音ルーバ1の近傍を通過する気流の上流側又は下流側に配置されるようになっている。
【0017】
本実施例の消音ルーバによれば、共鳴管2の長さに応じて決まる共鳴周波数において、消音効果が得られる。ここで、一方の端部にのみ開口部3を有する共鳴管2における基準音の共鳴周波数fは音速cと波長λにより、f=c/λのように表される。共鳴管2の長さをlとすると、基準音における波長との関係はl=λ/4で表される。なお、具体的な実験結果は、以下の実施例4において詳述する。
【0018】
以上のように、本実施例の消音ルーバ1は、複数の共鳴管2を並べて構成され、前記共鳴管2は、いずれか一方の端部において開口部3を有するので、構造が単純で容積が小さい上に消音効果が高く、石油ファンヒータの温風吹き出し口に導風ルーバとして設けることができる。
【0019】
なお、本実施例の消音ルーバは、複数の共鳴管2を二列や三列に並べて構成されてもよい。また、本実施例の消音ルーバは、石油ファンヒータの温風吹き出し口のほか、エアコンディショナーの吹き出し口などにも適用できる。
【0020】
また、消音ルーバ1を製造する場合は、管を並べる、格子状断面の板を利用する、ハニカムの製法のように波板同士を重ねる、段ボールの製法のように波板に対して片面又は両面に平板を取り付ける、或いはこれらを多層に重ねる、などの方法を採用することができる。したがって、消音ルーバ1の構造は本実施例に限らず、適宜変形可能である。
【実施例2】
【0021】
本実施例の消音ルーバにおいては、図3、4に示すように、共鳴管2の長手方向は、消音ルーバ1の奥行き方向に対して傾斜している。共鳴管2の長さを消音ルーバ1の奥行きよりも長くできるで、実施例1と比較して、より低い周波数において消音が可能となる。或いは、実施例1と同じ周波数において消音を行う場合には、消音ルーバ1の奥行きを短くすることができる。
【実施例3】
【0022】
本実施例の消音ルーバにおいては、図5〜7に示すように、共鳴管2は、折り返し構造を有している。すなわち、共鳴管2は、折り返し部4において折り返され、消音ルーバ1の奥行きの2倍の長さを有している。これにより、実施例1の半分の周波数において消音が可能になる。或いは、実施例1と同じ周波数において消音を行う場合には、消音ルーバ1の奥行きを半分にすることができる。
【実施例4】
【0023】
種々の消音ルーバを試作し、消音効果を調べるために音響透過損失を測定した。
【0024】
図8に製作した試験体を示す。外形100mm、厚さ0.5mmの円筒内面にルーバを5枚取り付けた。
【0025】
図9に、取り付けたルーバの構造を示す。タイプ01は、ルーバの奥行きD=60mm,120mmであり、共鳴管の開口部は4mm角の穴となっている。タイプ02は、D=60mmであり、共鳴管を30度傾けたものである。タイプ03は、D=60mmのタイプ01を2枚重ねたものであり、タイプ1よりも開口率(ルーバで遮られない部分の割合)が小さくなっている。タイプ04は、D=30mm、60mm又は135mmのタイプ01を2枚重ねた上に、重なり合った共鳴管の端部近傍を4mm角の切り欠きにより連通させて折り返し構造とし、共鳴管の長さを2倍にしたものである。なお、開口率は、タイプ01、02が78%、タイプ03、04が57%となっている。
【0026】
試作したルーバの音響透過損失の測定に用いた機器の構成を図10に示す。インピーダンス管内に試験体としてルーバを設置し、インピーダンス管の上流側から音波を発生させた。そして、ルーバの上流側と下流側からそれぞれ2本のマイクロフォンで音波を検出して、その検出結果に基づいてルーバの透過損失を算出した。
【0027】
共鳴管の端面の条件を図11に示す。タイプ01、03のルーバにおいては、共鳴管の両端を開口状態にした場合(A)、インピーダンス管の下流側のみをアルミテープで塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)、両端とも塞いだ場合(D)の4通りで測定した。タイプ02のルーバにおいては、両端開口、上流側閉口、下流側閉口の3通りで測定した。タイプ04(D=30mm、60mm)のルーバにおいては、折り返し構造の両端を開口状態として開口を上流側に向けた場合(E)、両端を開口状態として開口を下流側に向けた場合(F)、折り返し構造の両端のうちの片方を塞いだ状態で開口を上流側に向けた場合(G)、片方を塞いだ状態で開口を下流側に向けた場合(H)の4通りで測定した。タイプ04(D=135m)のルーバにおいては、折り返し構造の両端のうちの片方を塞いだ状態で開口を上流側に向けた場合(G)、下流側に向けた場合(H)の2通りで測定した。
【0028】
図12にタイプ01(D=60mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。計算上、一方の端部にのみ開口部を有する共鳴管の共鳴周波数は約1400Hzであるが、下流側のみを塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)において、1400Hz付近で音響透過損失のピークが表れている。なお、共鳴管の両端を開口状態にした場合(A)、両端とも塞いだ場合(D)においては、ほとんど音響透過損失は見られなかった。
【0029】
また、図13にタイプ01(D=120mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。計算上、一方の端部にのみ開口部を有する共鳴管の共鳴周波数は約700Hzであるが、下流側のみを塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)において、700Hz付近で音響透過損失のピークが表れている。
【0030】
図14にタイプ02のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。タイプ02のルーバにおいては、共鳴管の長さが最長で約70mmであり、共鳴周波数の高い短い管が混在する。計算上、一方の端部にのみ開口部を有する共鳴管の共鳴周波数は約1200Hz付近から高周波側に幅広く得られると予想されたが、下流側のみを塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)において、ほぼ予想通りの測定結果が得られた。
【0031】
図15にタイプ03のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。タイプ01(D=60mm)のルーバと同様に、1400Hz付近で音響透過損失が見られた。タイプ03のルーバは、タイプ01を2枚重ねて共鳴管の数をタイプ01の2倍としたものであり、下流側のみを塞いだ場合(B)、上流側のみを塞いだ場合(C)において、音響透過損失の値はタイプ01よりも大きくなった。また、ルーバが厚くなって開口率が小さくなったためと考えられるが、両端とも塞いだ場合(D)においても全体的に若干の音響透過損失が見られた。
【0032】
図16にタイプ04(D=30mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。タイプ04のルーバは、折り返し構造として共鳴管の長さを2倍にしたものであり、タイプ01(D=60mm)のルーバと同様の働きをすることが期待されたが、折り返し構造の両端のうちの片方を塞いだ状態で開口を上流側に向けた場合(G)、片方を塞いだ状態で開口を下流側に向けた場合(H)において、1400Hz付近における音響透過損失はタイプ01(D=60mm)のルーバと比べて小さいが、高周波側に幅広い音響透過損失が見られた。
【0033】
図17にタイプ04(D=60mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。折り返し構造の両端のうちの片方を塞いだ状態で開口を上流側に向けた場合(G)、片方を塞いだ状態で開口を下流側に向けた場合(H)において、700Hz付近における音響透過損失はタイプ01(D=120mm)のルーバと比べて小さいが、高周波側に幅広い音響透過損失が見られた。また、折り返し構造の両端を開口状態として開口を上流側に向けた場合(E)、両端を開口状態として開口を下流側に向けた場合(F)において、タイプ03のルーバに近い音響透過損失が見られた。これは両端の開口から音波が入射して折り返し部分で反射が起こったためと考えられる。
【0034】
図18にタイプ04(D=135mm)のルーバにおける音響透過損失の測定結果を示す。300Hz付近、900Hz付近、1500Hz付近にピークが現れている。これは、折り返した全長270mmに対する基準音、3倍音、5倍音の周波数に相当する。
【0035】
通常、高い開口率を持つルーバはほとんど有意な消音効果が期待できない。しかし、以上の実験結果より、実施例1に対応するタイプ01の(B)、(C)、タイプ03の(B)、(C)、タイプ04の(E)、(F)、実施例2に対応するタイプ02の(B)、(C)、実施例3に対応するタイプ04の(G)、(H)のルーバにおいて、開口率が大きいにもかかわらず、対象となる周波数において有意な音響透過損失が得られた。したがって、本発明の消音ルーバが騒音低減に有用であることが明らかになった。
【符号の説明】
【0036】
1 消音ルーバ
2 共鳴管
3 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の共鳴管を並べて構成され、前記共鳴管は、いずれか一方の端部において開口部を有することを特徴とする消音ルーバ。
【請求項2】
前記共鳴管の長手方向は、前記消音ルーバの奥行き方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1記載の消音ルーバ。
【請求項3】
前記共鳴管は、折り返し構造を有していることを特徴とする請求項1記載の消音ルーバ。
【請求項1】
複数の共鳴管を並べて構成され、前記共鳴管は、いずれか一方の端部において開口部を有することを特徴とする消音ルーバ。
【請求項2】
前記共鳴管の長手方向は、前記消音ルーバの奥行き方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1記載の消音ルーバ。
【請求項3】
前記共鳴管は、折り返し構造を有していることを特徴とする請求項1記載の消音ルーバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−36669(P2013−36669A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172686(P2011−172686)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月10日 新潟大学長 下條文武 新潟大学機械システム工学科主催の「平成22年度 新潟大学工学部機械システム工学科 卒業研究発表会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月1日 日本機械学会 北陸信越学生会発行の「北陸信越学生会 第40回 学生員卒業研究発表会 講演論文集(CD−ROM)」に発表
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月10日 新潟大学長 下條文武 新潟大学機械システム工学科主催の「平成22年度 新潟大学工学部機械システム工学科 卒業研究発表会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月1日 日本機械学会 北陸信越学生会発行の「北陸信越学生会 第40回 学生員卒業研究発表会 講演論文集(CD−ROM)」に発表
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】
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