説明

消音装置

【目的】 仕切り壁の室体内への組付精度を高め、所期の消音性能を安定して得るとともに、部品点数も減じて生産性の向上を図る。
【構成】 仕切り壁207,202,203,211 は、上部ハウジング(連通管12も含む)18と共に一体に射出成形される。一方、他の仕切り壁201,204,205,206,208,209,210,212 は、下部ハウジング20と共に一体に射出成形される。仕切り壁には、この巾方向に、間隙S1が形成されるとともに、長手方向の突出先端で、間隙S2が形成される。両ハウジング18,20 の接合の際、間隙S1に起因して、ハウジング18,20 間に、間隙S2の方向、ないし両ハウジング18,20 の対向方向と直交する方向に沿ってずれが生じ、間隙S1が、一部位で狭くなってもこの狭くなった分、ハウジング18,20 のずれの方向の別部位で間隙S1が広くなり、間隙S1のトータル開口面積としては、両ハウジング18,20 の接合精度に関わらず、室体16内全体としては変わらない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、内燃機関の吸・排気通路の途中に設置されて吸・排気音を低減する消音装置に関する。
【0002】
【従来の技術】消音装置としては、図5に示すようなサイドブランチ型の消音装置が知られている。このサイドブランチ型の消音装置では、気体通路管60の途中に、通路形成体62が接続され、通路形成体62内には、基端が気体通路管60と連通されるとともに先端が閉塞された分岐通路64が屈曲形成されている(特開昭62−126215号公報を参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、より高い消音性能を得るには、単にサイドブランチ型の消音装置だけでなく、レゾネータ型の消音装置も付加するのが好ましい。しかし、限られたスペースで、サイドブランチ型の消音装置と、レゾネータ型の消音装置との両者を搭載するのは難しく、かつ部品点数の増加も招来される。
【0004】そこで、本出願人は、両者を複合させた構造の消音装置を提案した(特願平3−245970号)。
【0005】すなわち、図6に示すように、通気路65と連通するサイドブランチ用分岐路70を屈曲形成するために室体66の内部に設けた仕切り壁68に、この仕切り壁68を介して隣接する分岐路70を連通する欠損部72が形成され、室体66の内部がレゾネータ用共鳴室としても使用されて、サイドブランチ型の消音機能とレゾネータ型の消音機能とを共に発揮することが可能となっている。
【0006】この消音装置では、欠損部72の大きさに応じて、サイドブランチ型の消音機能とレゾネータ型の消音機能とのそれぞれ発揮される配分が決定され、この配分に応じて、減衰される音波の周波数が決定されることになる。
【0007】この消音装置で所期の消音性能を安定して得るには、欠損部72の大きさを左右する仕切り壁の室体内への組付精度を高める必要がある。
【0008】また、部品点数の更なる低減化を図って生産性の向上を達成することも期待される。
【0009】本発明は、上記事情に鑑み、仕切り壁の室体内への組付精度を高め、所期の消音性能を安定して得るとともに、部品点数も減じて生産性の向上を図る消音装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に係る発明では、基端が通気路の途中に接続されるとともに先端が閉塞され基端部を除く残部が室体内に設けた仕切り壁によって屈曲形成されるサイドブランチ用分岐路と、前記仕切り壁の一部に形成され仕切り壁を介して隣接する分岐路を連通する欠損部とを備える消音装置において、前記室体は、2個の分割室体が接合されて構成され、前記仕切り壁は、一方の分割室体内に一体的に成形した仕切り壁と他方の分割室体内に一体的に成形した仕切り壁とより構成され、前記仕切り壁には、両分割室体の接合によって前記欠損部が形成されることを特徴とする消音装置を提供する。
【0011】
【作用】仕切り壁に欠損部を形成する構成により、通気路の音波は、室体内を、分岐路に沿ってその閉塞先端へ向けて伝播される一方、欠損部の部位において、分岐路の方向と直交する方向に逃げ、ないし短絡を生じて、室体内全体に広がり、その分、分岐路は不完全となる。
【0012】これにより、サイドブランチ型の消音機能が発揮されるだけでなく、分岐路の基端部がレゾネータ用導通部とされ、室体内が、全体として、レゾネータ用共鳴室とされて、レゾネータ型の消音機能も発揮される。
【0013】ここで、消音装置の製造にあっては、2個の分割室体を接合して室体をなすだけで、仕切り壁が室体内に組付けられ、同時に、仕切壁には、欠損部が形成される。
【0014】これによって、仕切り壁を室体内に溶着せずとも、仕切り壁を室体内へ組付けでき、欠損部の大きさを左右する仕切り壁の室体内への組付精度が高められ、欠損部の大きさで決定されるサイドブランチ型の消音機能とレゾネータ型の消音機能とのそれぞれ発揮される配分が精度よく得られ、従って、所期の消音性能が安定して得られるとともに、各室体が仕切り壁と一体部品となって部品点数も減じて生産性の向上が果たされる。
【0015】
【実施例】本発明に係る消音装置の第1実施例を図1乃至図3に基づき詳細に説明する。
【0016】図1及び図2に示すように、内燃機関の吸・排気用の通気路10途中に、先端が閉塞されたサイドブランチ用分岐路12の基端が接続されている。分岐路12の基端部は、円管状の連通管14内に形成され、基端部を除く分岐路12の残部は、連通管14を上面中央に突出させた立方体形状の室体16内に、この室体16内に設けた仕切り壁201〜212によって、3次元的(立体的)に屈曲形成されている。
【0017】室体16は、下方が開放された上部ハウジング18と、上方が開放された下部ハウジング20とより2個の分割室体で構成され、上部ハウジング18及び下部ハウジング20はそれぞれ合成樹脂製の射出成形により得られる。上部ハウジング18及び下部ハウジング20の開放端にはフランジ22が対向形成されてフランジ22間が溶着され、これにより上部ハウジング18と下部ハウジング20とが接合される。
【0018】仕切り壁201〜212は、上下方向、ないし上部ハウジング18と下部ハウジング20との対向方向を長手方向として延び、図2に示すように、室体16の上下方向から見て、室体16内には、仕切り壁201〜212を介して、9本の上下方向分岐路(第1〜第9上下方向分岐路121〜129)が、マトリックス状に区画形成される(各上下方向分岐路121〜129は、室体16の上方から見ると、中央に位置して上記連通管14内と連通する上下方向分岐路を第1上下方向分岐路121として反時計回りに順次形成される)。
【0019】図1乃至図3に示すように、各上下方向分岐路121〜129を形成する仕切り壁201〜212のうち、第1上下方向分岐路121と第2上下方向分岐路122との間の仕切り壁207の下端部、第2上下方向分岐路122と第3上下方向分岐路123との間の仕切り壁205の上端部、第3上下方向分岐路123と第4上下方向分岐路124との間の仕切り壁202の下端部、第4上下方向分岐路124と第5上下方向分岐路125との間の仕切り壁201の上端部、第5上下方向分岐路125と第6上下方向分岐路126との間の仕切り壁203の下端部、第6上下方向分岐路126と第7上下方向分岐路127との間の仕切り壁208の上端部、第7上下方向分岐路127と第8上下方向分岐路128との間の仕切り壁211の下端部、第8上下方向分岐路128と第9上下方向分岐路129との間の仕切り壁212の上端部は、それぞれ開口され、それら開口26を介し、各上下方向分岐路121〜129は、一本の分岐路12として屈曲形成される。これにより、連通管12から第1上下方向分岐路121に入った音波は、各上下方向分岐路121〜129を上下に方向を変えながら伝播され、第9上下方向分岐路129の下端、すなわち分岐路12の閉塞先端に達する。
【0020】また、仕切り壁201〜212のうち、第1上下方向分岐路121と第2上下方向分岐路122との間の仕切り壁207、この仕切り壁207と連接されてなり第3上下方向分岐路123と第4上下方向分岐路124との間の仕切り壁202、また、第5上下方向分岐路125と第6上下方向分岐路126との間の仕切り壁203、更に、第7上下方向分岐路127と第8上下方向分岐路128との間の仕切り壁211は、上部ハウジング(連通管12も含む)18と共に一体に射出成形される。一方、他の仕切り壁201、204、205、206、208、209、210、212は、下部ハウジング20と共に一体に射出成形される。なお、下部ハウジング20側の仕切り壁201、204、205、206、208、209、210、212は、連接されるとともに、第2上下方向分岐路122と第3上下方向分岐路123との間の仕切り壁205と、第3上下方向分岐路123と第4上下方向分岐路124との間の仕切り壁204とは、スリット溝24を介して連接され、両ハウジング18、20の接合によって、スリット溝24内に、上部ハウジング18側の仕切り壁202、207が入り込む。
【0021】各ハウジング18、20のそれぞれの仕切り壁にあっては、一方のハウジング側の仕切り壁は、両ハウジング18、20の接合によって他方のハウジング20内に入り込むように一方のハウジング側の開放端から突出され、上記開口26を形成する仕切り壁207、205、202、201、203、208、211、212では、仕切り壁の長手方向寸法が上記開口26を形成できる長さに短縮されている。また、一方のハウジング側の仕切り壁の他方のハウジング内に入り込む突出部の巾方向寸法は、その入り込む突出部位のために他方のハウジング側に用意された寸法より小さく形成され、一方のハウジング側の仕切り壁の他方のハウジング内に入り込む突出部の巾方向の側縁と、この側縁と対向する他方のハウジング側におけるハウジングの内周壁又は他方のハウジング側の仕切り壁との間には、欠損部を構成する間隙S1が形成される。
【0022】また、開口26を形成しない仕切り壁204、206、209、210では、一方のハウジング側の仕切り壁の他方のハウジング内に入り込む突出部の上下方向ないし長手方向寸法は、その入り込む突出部のために他方のハウジング側に用意された寸法より小さく形成され、一方のハウジング側の開口20を形成しない仕切り壁の他方のハウジング内に入り込む突出部の長手方向の突出先端と、この突出先端と対向する他方のハウジング側の底壁との間には、欠損部を構成する間隙S2が形成される。
【0023】なお、スリット溝24においても、一方のハウジング側の仕切り壁と他方の仕切り壁との間には、同様に、間隙S1、S2が形成される。
【0024】次に、本実施例の作用を説明する。まず、室体16内に入る音波は、分岐路12の方向に沿って閉塞先端に向けて伝播される。その一方で、各間隙S1、S2の部位で、音波は、上下方向分岐路121〜129の方向と直交する方向に、他の上下方向分岐路121〜129へ逃げ、ないし短絡を生じて、室体16内の全体に広がり、その分、分岐路12が不完全となる。これにより、連通管14がレゾネータ用導通部とされ、室体16内が、分岐路12の存在に関わらず、全体として、レゾネータ用共鳴室とされる。従って、サイドブランチ型の消音機能だけでなく、レゾネータ型の消音機能も発揮される。
【0025】ここで、間隙S1、S2の大きさが十分小さい場合には、サイドブランチ型の消音機能が発揮され、次に示すような共鳴周波数を有する。
【0026】fn =〔(2n−1)/4〕×c/L1 (n=1、2、3、・・・)
但し、c:音速、 L1 :補正後のサイドブランチ長さである。
【0027】一方、S1、S2の間隙が十分大きく、すなわち、室体16内に仕切り壁の効果がないような場合には、レゾネータ型の消音機能が発揮され、次に示すような共鳴周波数を有する。
【0028】
n =(c/2π)×〔√(S/L2 V)〕
但し、S:連通管断面積、L2 :補正後の連通管長さ、V:容積、c:音速、従って、減衰させようとする音波の周波数に応じて、レゾネータ型の消音機能とサイドブランチ型の消音機能とのそれそれの発揮する配分が適正なものとなるように、間隙S1、S2の大きさ(開口面積)や、間隙S1、S2の形成個数が設定される。
【0029】このように、サイドブランチ用分岐路が占める容積だけで、サイドブランチ型の消音機能に加えて、異なる共鳴周波数を持つレゾネータ型の消音機能が兼ね備えられ、広い周波数領域に亘って騒音が減衰され、取り付けスペースも狭くて足る。
【0030】ここで、消音装置の製造にあっては、上部ハウジング18と下部ハウジング20との2個の分割室体を接合して室体16をなすだけで、仕切り壁201〜212が室体16内に組付けられ、同時に、仕切り壁には、間隙S1、S2が形成される。
【0031】これによって、仕切り壁を室体内に溶着せずとも、仕切り壁201〜212を室体16内へ組付けでき、間隙S1、S2の大きさを左右する仕切り壁の室体16内への組付精度が高められ、間隙S1、S2の大きさで決定されるサイドブランチ型の消音機能とレゾネータ型の消音機能とのそれぞれ発揮される配分が精度よく得られ、従って、所期の消音性能が安定して得られるとともに、各ハウジング18、20は仕切り壁と一体部品となって、部品点数も減じて生産性の向上が果たされる。
【0032】なお、仕切り壁201〜212に形成される間隙S1、S2の大きさの精度は、各ハウジング18、20においてそれぞれ得られる両ハウジング18、20接合前の仕切り壁の寸法精度と、両ハウジング18、20の接合精度とにより決定される。両ハウジング18、20接合前の仕切り壁の寸法精度については、仕切り壁は各ハウジング18、20と一体的に成形されるので、極めて高い寸法精度が得られる。
【0033】一方、両ハウジング18、20の接合の際、間隙S1に起因して、ハウジング18、20間には、水平方向、ないし、両ハウジング18、20の対向方向と直交する方向に沿って、ずれが生ずる場合がある。この場合に、間隙S1が、一部位で狭くなってもこの狭くなった分、ハウジング18、20のずれの方向の別部位で間隙S1が広くなり、間隙S1のトータルの大きさは、両ハウジング18、20の接合精度に関わらず、全体として変わらず、所期の消音性能が安定して得られる。なお、両ハウジング18、20の接合は、フランジ22が当接して行われるので、両ハウジング18、20の対向方向に、両ハウジング18、20間にずれが生ずるようなことはなく、間隙S2の大きさは、高精度で得られる。
【0034】また、分岐路12は、室体16内において、立体的に形成されているので、一平面での面積を小さくすることができ、透過音が小さくなる。
【0035】なお、仕切り壁を室体内に溶着して組付ける場合には、その組付け精度を高めるために溶着用の治具が使用されるが、そのためには、その溶着治具を入れ込むスペースが室体内に必要となり、そのスペースは室体内でデッドスペースになることが予想される。これに対して、本実施例では、仕切り壁を室体16内に溶着する構造ではないので、溶着治具のためのスペースがいらない。
【0036】次に、第2実施例を図4に基づき説明する。本実施例では、室体320内に、仕切り壁301〜312が第1実施例と同様に組付けられ、仕切り壁301〜312には、欠損部として間隙S1、S2に加え、スリット322が形成されている。上部ハウジング324及び下部ハウジング326の仕切り壁にあって、スリット322は、一方のハウジング側の仕切り壁の他方のハウジング内に入り込んだ突出部の突出先端に開放され、上下方向を長手方向として形成されている。
【0037】この構成によれば、上記第1実施例と同様な作用効果が得られるとともに、スリット322の面積が増すことにより、レゾネータ型の消音機能がよりよく発揮され、サイドブランチ型の消音機能は弱められる。逆に、スリット322の面積が減ることにより、サイドブランチ型の消音機能がよりよく発揮され、レゾネータ型の消音機能は弱められる。
【0038】以上、各実施例について本発明を説明したが、本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、種々変更可能である。例えば、上記各実施例では、分岐路が立体的に屈曲形成されているが、平面的に屈曲形成される分岐路でもよく、欠損部の形状も、上記各実施例の形状に限定されるものではない。また、通気路は、内燃機関の給・排気用の通気路に限定されるものでない。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る消音装置では、仕切り壁の室体内への組付精度が高められ、所期の消音性能が安定して得られ、部品点数も減じて生産性の向上が果たされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2の1−1線断面図であり、通気路も含めて示した図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る消音装置の平面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る消音装置を示し、通気路を除き図1に相当する図である。
【図5】従来の消音装置を示す縦断面図である。
【図6】提案に係る消音装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 通気路
14 サイドブランチ用分岐路
16 室体
18 上部ハウジング(分割室体)
20 下部ハウジング(分割室体)
121〜129 上下方向分岐路
201〜212 仕切り壁
S1、S2 間隙(欠損部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基端が通気路の途中に接続されるとともに先端が閉塞され基端部を除く残部が室体内に設けた仕切り壁によって屈曲形成されるサイドブランチ用分岐路と、前記仕切り壁の一部に形成され仕切り壁を介して隣接する分岐路を連通する欠損部とを備える消音装置において、前記室体は、2個の分割室体が接合されて構成され、前記仕切り壁は、一方の分割室体内に一体的に成形した仕切り壁と他方の分割室体内に一体的に成形した仕切り壁とより構成され、前記仕切り壁には、両分割室体の接合によって前記欠損部が形成されることを特徴とする消音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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