説明

液体の蒸発を促進する方法、蒸発促進装置およびそれを備えた電気機器

【課題】ヒータおよび送風機を用いずに液体の蒸発を促進する蒸発促進装置および方法を提供する。
【解決手段】蒸発促進装置100は、液体130を貯える貯液部120と、放電により空気中にイオンを発生させ、このイオンを液体130に向けて拡散させるイオン発生装置180とを備える。液体の蒸発を促進する方法は、放電により空気中にイオンを発生させるイオン発生工程と、発生させたイオンを上記液体の表面に向けて拡散させるイオン拡散工程とを備え、イオン拡散工程において、イオン発生工程での放電によって斥力を受けることにより拡散させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の蒸発を促進する方法、蒸発促進装置およびそれを備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータを用いて水蒸気を発生させる装置の構成を開示した先行文献として特開2005−349132号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたスチーム式美容器においては、貯水タンクと、給水蓋と、スチーム吐出口とを備え、中間経路にヒータを配設した沸騰室を設置している。
【0003】
送風機を用いて水蒸気を発生させる装置の構成を開示した先行文献として特開2005−24176号公報(特許文献2)がある。特許文献2に記載された気化式加湿器においては、気化式加湿ユニットと、送風機と、送風機の駆動源であるモータの回転を制御する制御器と、室内の湿度を測定する湿度センサとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−349132号公報
【特許文献2】特開2005−24176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の蒸気発生装置における蒸気発生方法では、ヒータおよび送風機を用いずに液体の蒸発を促進させることができなかった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、ヒータおよび送風機を用いずに液体の蒸発を促進できる、液体の蒸発を促進する方法、蒸発促進装置およびそれを備えた電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく液体の蒸発を促進する方法は、放電により空気中にイオンを発生させるイオン発生工程と、発生させたイオンを上記液体の表面に向けて拡散させるイオン拡散工程とを備える。
【0008】
本発明の一形態においては、イオン拡散工程において、イオンがイオン発生工程での放電によって斥力を受けることにより拡散させられる。
【0009】
本発明に基づく蒸発促進装置は、液体を貯える貯液部と、放電により空気中にイオンを発生させ、このイオンを上記液体に向けて拡散させるイオン発生装置とを備える。
【0010】
本発明の一形態においては、イオン発生装置は、イオンを放電によって与える斥力により拡散させる。
【0011】
本発明の一形態においては、上記液体が水である。
本発明の一形態においては、イオン発生装置は、発生させるイオンの空気中における濃度を調節するための放電調節部を含む。
【0012】
本発明の一形態においては、貯液部は、開閉自在な蓋部を含む。
本発明に基づく電気機器は、上記のいずれかの蒸発促進装置と、蒸発促進装置から発生した蒸気をこの蒸発促進装置の外部に送出する送風装置とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒータおよび送風機を用いずに液体の蒸発を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る蒸発促進装置の構成を示す断面図である。
【図2】同実施形態に係るイオン発生装置の外観を示す斜視図である。
【図3】イオン発生装置の放電調節部の構成を示す回路図である。
【図4】空気中に生成したH+(H2O)mを質量分析した結果を示すグラフである。
【図5】空気中に生成したO2-(H2O)nを質量分析した結果を示すグラフである。
【図6】イオンによる蒸発促進効果を確認するための実験に用いた実験装置の構成を示す断面図である。
【図7】同実験におけるチャンバ内の湿度の経時変化を示すグラフである。
【図8】同実験におけるチャンバ内の温度の経時変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態2に係る美顔器の構成を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る冷蔵ショーケースの構成を示す断面図である。
【図11】図10のXI−XI線矢印方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態1に係る液体の蒸発を促進する方法および蒸発促進装置について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る蒸発促進装置の構成を示す断面図である。図2は、本実施形態に係るイオン発生装置の外観を示す斜視図である。図3は、イオン発生装置の放電調節部の構成を示す回路図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る蒸発促進装置100においては、密閉されたチャンバ110と、チャンバ110内に配置された貯液部120と、チャンバ110内において貯液部120の上方に配置されたイオン発生装置180とを含む。
【0018】
貯液部120内には液体130が貯えられている。本実施形態においては、液体130として水が貯えられている。ただし、液体130は水に限られない。
【0019】
また、貯液部120は、開閉自在な蓋部140を含む。本実施形態においては、蓋部140は2枚の板状部材からなる。蓋部140は、蓋部140を開閉させる開閉調節部150と接続されている。
【0020】
開閉調節部150によって、蓋部140を構成する2枚の板状部材の各々が貯液部120の上端上で矢印141で示す向きに相互に移動させられることにより、貯液部120の開閉が行なわれる。
【0021】
貯液部120が閉まっている状態において、液体130は貯液部120内に閉じ込められる。貯液部120が開いている状態において、液体130の液面がイオン発生装置180のイオン発生部と対向している。本実施形態においては、蓋部140を設けたが、必ずしも蓋部140を設けなくてもよい。
【0022】
チャンバ110内に湿度センサ160が配置されている。湿度センサ160は、貯液部120とイオン発生装置180との間の位置において、チャンバ110の内壁に取り付けられている。上記の開閉調節部150は、湿度センサ160に接続されている。
【0023】
イオン発生装置180は、イオン発生部から矢印181で示す向きにイオンを発生する。イオン発生装置180は、発生するイオンの空気中における濃度を調節するための放電調節部170に接続されている。放電調節部170は、湿度センサ160に接続されている。
【0024】
図2に示すように、イオン発生装置180は、1つの側面に位置するイオン発生部に、2本の針状電極182,183と2つの対向電極184,185とを有する。具体的には、針状電極182と針状電極183とが所定の間隔を置いて位置している。
【0025】
針状電極182の先端と対向するように対向電極184が設けられている。対向電極184は、円形に形成され、対向電極184の中心を針状電極182の延在方向が貫くように、針状電極182と対向電極184とが配置されている。
【0026】
針状電極183の先端と対向するように対向電極185が設けられている。対向電極185は、円形に形成され、対向電極185の中心を針状電極183の延在方向が貫くように、針状電極183と対向電極185とが配置されている。
【0027】
針状電極182と対向電極184との間に高電圧が印加されることにより、気中放電が発生して針状電極182の先端近傍から高濃度の正イオンが発生する。針状電極183と対向電極185との間に高電圧が印加されることにより、気中放電が発生して針状電極183の先端近傍から高濃度の負イオンが発生する。
【0028】
針状電極182の先端近傍で発生した正イオンは、正電極である針状電極182から斥力を受けるため、イオン発生装置180から離れる方向に移動させられつつ拡散される。針状電極183の先端近傍で発生した負イオンは、負電極である針状電極183から斥力を受けるため、イオン発生装置180から離れる方向に移動させられつつ拡散される。
【0029】
図3に示すように、イオン発生装置180は、放電調節部170に含まれるマイクロコンピュータ171に接続されている。イオン発生装置180は、電源端子P1、接続端子P2、ダイオード80,186,187、抵抗素子81、昇圧トランス188、コンデンサ82、および、2端子サイリスタ189を備える。
【0030】
電源端子P1には、商用電源173が接続されている。ダイオード80は、商用電源173から印加される交流電圧を直流電圧に整流する。コンデンサ82は、直流電圧を平滑化する。抵抗素子81は、昇圧動作を制限するための素子である。2端子サイリスタ189は、端子間電圧がブレークオーバー電圧に到達すると導通状態になり、電流が最小保持電流以下になると非導通状態になる素子である。
【0031】
昇圧トランス188は、1次巻線188aと2次巻線188bとを含む。2端子サイリスタ189は、ダイオード80のカソードと1次巻線188aの一方端子との間に接続されている。1次巻線188aの他方端子は、接続端子P2に接続されている。2次巻線188bの一方端子は、対向電極184,185に接続されている。2次巻線188bの他方端子は、ダイオード186のアノードおよびダイオード187のカソードに接続されている。ダイオード186のカソードは針状電極182に接続され、ダイオード187のアノードは針状電極183に接続されている。
【0032】
商用電源173にはフォトトライアックT1が接続されている。フォトトライアックT1に光結合した発光ダイオードD1が設けられている。フォトトライアックT1と発光ダイオードD1とは、ソリッドステートリレー172を構成している。ソリッドステートリレー172の商用電源173に接続されていない側は、接続端子P2に接続されている。
【0033】
発光ダイオードD1のアノードは、抵抗素子174、npn型スイッチングトランジスタQ1のコレクタおよび抵抗素子175を介して、マイクロコンピュータ171に接続されている。発光ダイオードD1のカソードは、直流電源178、抵抗素子176またはスイッチングトランジスタQ1のエミッタ、および抵抗素子175を介して、マイクロコンピュータ171に接続されている。
【0034】
マイクロコンピュータ171は、ソリッドステートリレー172のON/OFF状態を制御する。ソリッドステートリレー172をON状態にすることでイオン発生装置180を稼動させることができる。ソリッドステートリレー172をOFF状態にすることでイオン発生装置180の稼動を停止させることができる。
【0035】
放電調節部170のマイクロコンピュータ171によりイオン発生装置180が稼動すると、コンデンサ82の端子間電圧が上昇して2端子サイリスタ189のブレークオーバー電圧に到達する。この時、2端子サイリスタ189は、ツェナダイオードのように動作してさらに電流を流す。2端子サイリスタ189に流れる電流がブレークオーバー電流に到達すると、2端子サイリスタ189は、略短絡状態となる。この時、コンデンサ82に充電された電荷が2端子サイリスタ189および昇圧トランス188の1次巻線188aを介して放電され、1次巻線188aにインパルス電圧が発生する。
【0036】
1次巻線188aにインパルス電圧が発生すると、2次巻線188bに正および負の高電圧パルスが交互に減衰しながら発生する。正の高電圧パルスはダイオード186を介して針状電極182に印加され、負の高電圧パルスはダイオード187を介して針状電極183に印加される。これにより、針状電極182,183の先端でコロナ放電が発生し、それぞれから正イオンおよび負イオンが発生する。
【0037】
空気中での放電によって生成されるイオンは、放電電極に印加される電圧が同じであれば放電回数が多いほどイオンの数が多くなり、放電回数が同じであれば放電電極に印加される電圧が高いほどイオンの数が多くなる。
【0038】
放電調節部170によりイオン発生装置180のON/OFFを制御することにより、イオン発生装置180における放電回数を調節することができるため、イオン発生装置180から発生するイオンの数すなわちイオンの濃度を調節することができる。
【0039】
図1に示すように、イオン発生装置180から発生したイオンを矢印181で示すように貯液部120内の液体130の表面に向けて拡散させることにより、液体130の蒸発131を促進できることを本発明者は発見した。
【0040】
本発明の液体の蒸発を促進する方法のメカニズムは、イオン発生装置180から発生したイオンが空気中の蒸気と結合すると、蒸気と結合したイオンが安定化するという現象に基づくものと考えられる。
【0041】
たとえば、空気中の水素イオンH+および酸素イオンO2-のそれぞれには、1から数十個の水分子が結合することが知られている。すなわち、空気中にH+(H2O)m(mは任意の自然数)およびO2-(H2O)n(nは任意の自然数)が生成する。
【0042】
図4は、空気中に生成したH+(H2O)mを質量分析した結果を示すグラフである。図5は、空気中に生成したO2-(H2O)nを質量分析した結果を示すグラフである。図4,5には、縦軸にイオンの検出強度、横軸に質量(m/z)を示している。
【0043】
図4,5に示すように、空気中の水素イオンH+および酸素イオンO2-のそれぞれには、1から数十個の水分子が結合していることが確認された。この現象は水素イオンH+および酸素イオンO2-に限られず、空気中に存在する他のイオンでも同様に水分子と結合する。
【0044】
密閉空間内において気液平衡状態にある液体130の液面においては、液体から気体になる蒸発反応と、気体から液体になる凝縮反応との速度が等しい。上記のように、空気中のイオンと水分子とが結合すると、蒸発して気体になった水分子が減少する。すると、気液のバランスが崩れるため、気体の水分子を補う方向で反応が進み、液体130の液面からの蒸発が促進されると考えられる。従って、液体130の液面上の空気中にイオンを拡散させることにより、液体130の蒸発を促進できる。
【0045】
そこで、本実施形態に係る蒸発促進装置100においては、貯液部120の上方にイオン発生装置180を配置している。イオン発生装置180から発生したイオンは、貯液部120内の液体130に向けて拡散する。液体130の液面の上方に到達したイオンは、液体130の蒸気と結合して、安定した状態で空気中を浮遊する。
【0046】
その結果、貯液部120内の液体130の蒸発が促進されて、チャンバ110内に液体130の蒸気が充満することになる。液体130が水である場合、チャンバ110内が加湿される。
【0047】
本実施形態においては、貯液部120内の液体130の液面から蒸発させたが、蒸発形態はこれに限られない。たとえば、貯液部120内で液体130を微細液滴状に貯えてもよい。この場合、液体130の表面が球面となるため、蒸発が起きる液体130の表面積が大きくなり、蒸発をさらに促進させることができる。
【0048】
上述の通り、本実施形態に係る蒸発促進装置100においては、貯液部120に開閉自在な蓋部140が設けられている。また、チャンバ110内に湿度センサ160が設けられ、湿度センサ160は、開閉調節部150および放電調節部170に接続されている。
【0049】
湿度センサ160による測定結果は、開閉調節部150および放電調節部170に送られる。その測定結果が所望の湿度より低い場合には、開閉調節部150は蓋部140の開度を上げ、放電調節部170はイオン発生装置180の放電回数を多くする。逆に、測定結果が所望の湿度より高い場合には、開閉調節部150は蓋部140の開度を下げ、放電調節部170はイオン発生装置180の放電回数を少なくする。
【0050】
蓋部140が閉じた状態においては、液体130の液面の近傍にイオンが拡散できないため液体130の蒸発を促進することができない。蓋部140の開度を大きくするに従って、液体130の液面の近傍に拡散するイオンの数を多くすることができ、液体130の蒸発を促進させることができる。
【0051】
上記のように、蓋部140の開度とイオン発生装置180の放電回数を制御することにより、液体130の蒸発量を調節してチャンバ110内を所望の湿度にすることができる。蓋部140の開度とチャンバ110内の湿度との関係は、イオン発生装置180から発生するイオンの濃度の影響を受けるため、予め実験により求める必要がある。
【0052】
条件を単純化するために、発生させるイオンの濃度または液体130の液面の面積を固定して、液体130の蒸発量を把握してもよい。貯液部120内の液体130の温度およびチャンバ110内の気温をベースにして液体130の蒸発量をデータベース化して、開閉調節部150および放電調節部170の制御部に記録しておくことにより、蓋部140の開度およびイオン発生装置180の放電回数の制御による湿度管理を高精度に行なうことが可能になる。
【0053】
なお、本実施形態においては、針状電極152,153を有するイオン発生装置180を用いたが、イオン発生装置180の構成はこれに限られず、たとえば、誘電体基板の表面に格子状の放電電極、および、誘電体基板を挟み放電電極と対向する面状の対向電極を備えるイオン発生装置を用いてもよい。
【0054】
(実験例1)
図6は、イオンによる蒸発促進効果を確認するための実験に用いた実験装置の構成を示す断面図である。図7は、本実験におけるチャンバ内の湿度の経時変化を示すグラフである。図8は、本実験におけるチャンバ内の温度の経時変化を示すグラフである。図7においては、縦軸に湿度(%)、横軸に処理時間(min)を示している。図8においては、縦軸に温度(℃)、横軸に処理時間(min)を示している。
【0055】
図6に示すように、約4.7Lの容積を有するチャンバ110内に、液体130として20mLの水を貯えた貯液部120であるシャーレを4つ配置した。それぞれの貯液部120の上方にイオン発生装置180を対向配置した。
【0056】
イオン発生装置180を稼動することにより、針状電極182の先端近傍から液体130の液面に向けて正イオン190を拡散させた。また、針状電極183の先端近傍から液体130の液面に向けて負イオン191を拡散させた。正イオン190および負イオン191の濃度は、約300万個/cm3にした。
【0057】
実験は、イオンを発生させない場合、正イオン190のみ発生させた場合、負イオン191のみ発生させた場合、正イオン190および負イオン191の両方を発生させた場合の4つの条件で2時間行なった。
【0058】
図7に示すように、正イオン190および負イオン191の両方を発生させた場合は、イオンを発生させない場合に比較して、2時間経過後に湿度が約10%高くなった。正イオン190のみ発生させた場合、および、負イオン191のみ発生させた場合のいずれにおいても、イオンを発生させない場合より湿度が高くなった。
【0059】
図8に示すように、イオン発生装置180を稼動させてもチャンバ110内の温度は、2時間で約1℃しか上昇していない。
【0060】
実験結果を詳細に分析すると、正イオン190および負イオン191の両方を発生させた場合、実験開始時の温度が26.4℃、相対湿度が28%であった。実験終了時の温度が27.4℃、相対湿度が88%であった。
【0061】
湿り空気線図から読み取られる、この間の空気中の水分量の増加は、0.0204−0.0060=0.0144kg/kg(Dry Air)であった。実験開始時には、チャンバ110内に0.856m3/kg(Dry Air)の比重を有する空気が入っていたことになる。この空気の重さは、0.0047/0.856=0.0055kgである。従って、0.0144×0.0055=0.000079kgの水分が蒸発したことになる。
【0062】
イオンを発生させない場合、実験開始時の温度が24.6℃、相対湿度が25%であった。実験終了時の温度が26.8℃、相対湿度が77%であった。
【0063】
湿り空気線図から読み取られる、この間の空気中の水分量の増加は、0.0171−0.0048=0.0123kg/kg(Dry Air)であった。実験開始時には、チャンバ110内に0.849m3/kg(Dry Air)の比重を有する空気が入っていたことになる。この空気の重さは、0.0047/0.849=0.00554kgである。従って、0.0123×0.00554=0.000068kgの水分が蒸発したことになる。
【0064】
上記の結果から、正イオン190および負イオン191の両方を発生させることにより、0.000011kgの蒸発が促進されたことになる。このように、本実施形態に係る蒸発促進装置においては、ヒータおよび送風機を用いずに液体の蒸発を促進できる。
【0065】
以下、本発明の実施形態2に係る蒸発促進装置を備えた電気機器について説明する。本実施形態においては、蒸発促進装置を備えた電気機器として美顔器について説明する。蒸発促進装置の基本構成は実施形態1と同様であるため説明を繰り返さない。
【0066】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係る美顔器の構成を示す断面図である。図9に示すように、本発明の実施形態2に係る美顔器200は、筐体210と、筐体210内に配置された貯液部220と、貯液部220の上部に配置されたイオン発生装置280と、貯液部220内に貯えられた液体230の蒸気231を通過させるダクト221と、ダクト221の上端に設けられた美顔マスク222とを備える。使用者20は、美顔マスク222に顔を埋めるようにあてがうことで、肌に液体230の蒸気231を付着させることができる。
【0067】
貯液部220は、貯液部220内の液体230が補給可能なように構成されている。美顔器200には、図示しない操作部に、運転スイッチおよびタイマースイッチなどが設けられている。
【0068】
運転スイッチをONにすると、イオン発生装置280が稼動して、液体230の液面に向けて大量のイオンが拡散される。液体230の蒸発がイオンにより促進されることにより、貯液部220の上部が蒸気231で満たされる。蒸気231は、ダクト231内を上昇して美顔マスク222内に到達する。液体230が水である場合、水蒸気の比重は空気より軽いため、水蒸気が自然にダクト231内を上昇する。
【0069】
このように発生させた蒸気231は分子レベルの大きさであるため、使用者20の肌の角質層を通過し易く、高い保湿効果を得ることができる。液体230は、純水に限られず、たとえば、化粧水でもよい。
【0070】
また、ダクト221に図示しない送風装置を取り付けてもよい。送風装置を取り付けることにより、多くの蒸気231を蒸発装置の外部に送出することができる。なお、送風装置は、貯液部220に取り付けてもよい。
【0071】
送風装置で送風することにより、蒸気231が美顔マスク222内に到達するまでの時間を短縮することができる。また、使用者20が肌で蒸気231の風を感じることができるため、使用感を向上することができる。
【0072】
さらに、貯液部220内の液体230を加熱する加熱装置、または、ダクト231内を通過する蒸気231を加熱する加熱装置を備えてもよい。この場合、使用者20の使用感および美顔効果を向上することができる。
【0073】
なお、美顔器200は蒸発促進装置を備えた電気機器の一例であって、たとえば、液体230として薬剤を用いた吸入器に本発明を適用してもよい。
【0074】
以下、本発明の実施形態3に係る蒸発促進装置を備えた電気機器について説明する。本実施形態においては、蒸発促進装置を備えた電気機器として冷蔵ショーケースについて説明する。蒸発促進装置の基本構成は実施形態1と同様であるため説明を繰り返さない。
【0075】
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3に係る冷蔵ショーケースの構成を示す断面図である。図11は、図10のXI−XI線矢印方向から見た断面図である。
【0076】
図10,11に示すように、本発明の実施形態3に係る冷蔵ショーケース300は、ガラスケース310と、商品である生鮮食品390が陳列される載置台320と、引き戸式の扉340とを含む。ガラスケース310と引き戸式の扉340とにより囲まれた冷蔵空間311内で、生鮮食品390が冷蔵される。
【0077】
引き戸式の扉340は、ガラスケース310の長手方向において複数に分割されている。複数に分割された引き戸式の扉340の各々を長手方向にスライドさせて開くことにより、ガラスケース310内に生鮮食品390を出し入れすることが可能となる。
【0078】
冷蔵空間311内に、生鮮食品390を冷却するための氷330が配置されている。氷330が融解する際に周囲から融解熱を奪うため、冷蔵空間311内の温度が、たとえば、10℃以上15℃以下の温度に冷却される。冷蔵空間311内の湿度は、90%程度になっている。
【0079】
本実施形態に係る冷蔵ショーケース300は、氷330の上方にイオン発生装置380を備えている。イオン発生装置380から発生したイオンは、氷330の上面に向けて拡散する。氷330の表面は融解した水で覆われており、氷330の表面全体から水が蒸発している。
【0080】
イオン発生装置380から発生したイオンが氷330の表面の近傍に到達することにより、氷330の表面からの水の蒸発が促進される。その結果、冷蔵空間311内の湿度が90%以上に高くなるため、生鮮食品390を効果的に保湿して冷蔵することができる。
【0081】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
20 使用者、80,186,187 ダイオード、81,174,175,176 抵抗素子、82 コンデンサ、100 蒸発促進装置、110 チャンバ、120,220 貯液部、130,230 液体、140 蓋部、150 開閉調節部、160 湿度センサ、170 放電調節部、171 マイクロコンピュータ、172 ソリッドステートリレー、173 商用電源、178 直流電源、180,280,380 イオン発生装置、182,183 針状電極、184,185 対向電極、188 昇圧トランス、188a 1次巻線、188b 2次巻線、189 2端子サイリスタ、190 正イオン、191 負イオン、200 美顔器、210 筐体、221 ダクト、222 美顔マスク、300 冷蔵ショーケース、310 ガラスケース、320 載置台、330 氷、340 引き戸式扉、390 生鮮食品、D1 発光ダイオード、P1 電源端子、P2 接続端子、Q1 スイッチングトランジスタ、T1 フォトトライアック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電により空気中にイオンを発生させるイオン発生工程と、
発生させた前記イオンを液体の表面に向けて拡散させるイオン拡散工程と
を備える、液体の蒸発を促進する方法。
【請求項2】
前記イオン拡散工程において、前記イオンが前記イオン発生工程での前記放電によって斥力を受けることにより拡散させられる、請求項1に記載の液体の蒸発を促進する方法。
【請求項3】
前記液体が水である、請求項1または2に記載の液体の蒸発を促進する方法。
【請求項4】
液体を貯える貯液部と、
放電により空気中にイオンを発生させ、該イオンを前記液体に向けて拡散させるイオン発生装置と
を備えた、蒸発促進装置。
【請求項5】
前記イオン発生装置は、前記イオンを前記放電によって与える斥力により拡散させる、請求項4に記載の蒸発促進装置。
【請求項6】
前記液体が水である、請求項4または5に記載の蒸発促進装置。
【請求項7】
前記イオン発生装置は、発生させる前記イオンの空気中における濃度を調節するための放電調節部を含む、請求項4から6のいずれかに記載の蒸発促進装置。
【請求項8】
前記貯液部は、開閉自在な蓋部を含む、請求項4から7のいずれかに記載の蒸発促進装置。
【請求項9】
請求項4から8のいずれかに記載の蒸発促進装置と、
前記蒸発促進装置から発生した蒸気を該蒸発促進装置の外部に送出する送風装置と
を備えた、電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−34693(P2013−34693A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173721(P2011−173721)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】