説明

液体クロマトグラフィー用充填剤及びヘモグロビン類の測定方法

【課題】膨潤収縮が少なく、耐圧性に優れるとともに、高精度の測定を短時間に行うことが可能な液体クロマトグラフィー用充填剤及びヘモグロビン類の測定方法を提供する。
【解決手段】合成有機高分子からなる疎水性架橋重合体粒子の表面に形成された親水性重合体層を有する液体クロマトグラフィー用充填剤であって、前記親水性重合体層は、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントと、下記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨潤収縮が少なく、耐圧性に優れるとともに、高精度の測定を短時間に行うことが可能な液体クロマトグラフィー用充填剤及びヘモグロビン類の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換クロマトグラフィーは、イオン性を有する物質の分離に汎用されており、ヘモグロビン類を始め、各種生体関連物質の分析等に極めて有効な方法である。
従来、ヘモグロビン類等を迅速に分析し得るクロマトグラフィー用充填剤としては、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ビニルアセテート、ポリエチレングリコールジメタクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体等の架橋性重合体粒子からなる合成高分子系充填剤が用いられていた。特に、架橋性単量体とイオン交換基を有する単量体を重合してなる共重合体粒子が、イオン交換クロマトグラフィー用充填剤として広く用いられている。
【0003】
通常、水系で用いられる合成高分子系充填剤は、特許文献1に開示された方法、即ち、架橋性単量体又は親水性単量体に重合開始剤を加えて懸濁重合することによって調製されている。しかしながら、耐圧性を向上させることを目的として架橋度を上げると、架橋性部分が疎水性であるために重合体粒子の疎水性が大きくなり、蛋白質等の非特異的吸着が生じていた。これにより、架橋度を上げることができず、架橋性単量体の添加量が制限され、充分な耐圧性を有する充填剤を得ることが困難であった。更に、このような方法で得られた充填剤は、重合体粒子内の全体に親水性単量体に由来するイオン交換基等の親水性基が分散して存在するため、水性溶媒中では膨潤収縮しやすく、耐圧性が不充分となっていた。また、複数の溶離液を用いたグラディエント溶出法に用いる場合、平衡化に時間を要していた。
【0004】
このような問題に対して、特許文献2には、合成有機高分子からなる疎水性架橋重合体を骨格とし、合成有機高分子からなる親水性重合体で該疎水性架橋重合体の表面部分が被覆された2層構造の重合体粒子とする方法が開示されている。このような重合体粒子は、骨格部分に架橋度の高い合成有機高分子からなる重合体を用いているので、機械的強度が極めて大きく、膨潤収縮の度合いが極めて低い。また、特許文献3には、分離能を向上させることを目的として、親水性重合体層に、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のカチオン交換基を有する単量体を導入する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの技術を用いた場合であっても、ヘモグロビン類のような特定の親水性物質の測定に用いる際には、より短時間で多数の分画を分離する必要があるため、充填剤の試料に対する特異性が不充分となり、更なる改良が必要とされていた。
【特許文献1】特公昭58−45658号公報
【特許文献2】特公平8−7197号公報
【特許文献3】特開2000−81423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、膨潤収縮が少なく、耐圧性に優れるとともに、高精度の測定を短時間に行うことが可能な液体クロマトグラフィー用充填剤及びヘモグロビン類の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、合成有機高分子からなる疎水性架橋重合体粒子の表面に形成された親水性重合体層を有する液体クロマトグラフィー用充填剤であって、前記親水性重合体層は、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントと、下記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤である。
【化1】

以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、疎水性架橋重合体粒子の表面に、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントと、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる親水性重合体層を形成することにより、膨潤収縮が少なく、耐圧性に優れるとともに、ヘモグロビン類の測定等に用いる場合であっても、高精度の測定を短時間に行うことが可能な液体クロマトグラフィー用充填剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、合成有機高分子からなる疎水性架橋重合体粒子を有する。このような疎水性架橋重合体粒子を有することで、耐圧性の高い液体クロマトグラフィー用充填剤を実現することができ、膨潤収縮が起きることを防止することができる。
【0010】
上記疎水性架橋重合体粒子としては、疎水性架橋性単量体又は疎水性架橋性単量体を主成分とする単量体混合物を重合することにより得られる重合体粒子を用いることができる。
なお、本明細書において疎水性架橋性単量体とは、1分子中にビニル基を2個以上有し、後述するイオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体や、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体よりも疎水性であるものをいう。
【0011】
上記疎水性架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルナフタレン等のスチレン誘導体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルの誘導体、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサンジエン等の脂肪族ジエン化合物、上記単量体の誘導体等が挙げられる。これらのなかでは、(メタ)アクリル酸エステル誘導体が好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記疎水性架橋性単量体を主成分とする単量体混合物とは、上記疎水性架橋性単量体と疎水性非架橋性単量体との混合物のことをいい、上記疎水性非架橋性単量体とは、1分子中にビニル基を1個有し、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体や、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体よりも疎水性であるもののことをいう。
【0013】
上記疎水性非架橋性単量体としては、スチレン、メチルスチレン等のスチレン誘導体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、(メタ)アクリル酸エステル誘導体が好ましい。
【0014】
上記疎水性架橋性単量体を主成分とする単量体混合物として、上記疎水性非架橋性単量体を含有するものを用いる場合、上記疎水性非架橋性単量体の含有量の好ましい上限は、疎水性架橋性単量体100重量部に対して、30重量部である。30重量部を超えると、得られる疎水性架橋重合体粒子の耐圧性が低下することがある。より好ましい上限は20重量部である。
【0015】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、上記疎水性架橋重合体粒子の表面に、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントと、下記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる親水性重合体層を有する。
【0016】
上記イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体は、1分子中にイオン交換基及び重合性二重結合を1個以上有する単量体である。上記イオン交換基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のカチオン交換基;3級アミノ基や4級アミノ基等のアニオン交換基が挙げられる。
なお、本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤をヘモグロビン類の測定に用いる場合は、上記イオン交換基として、カルボキシル基又はスルホン酸基を用いることが好ましい。
【0017】
上記カチオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体のうち、カルボキシル基を有するものとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの誘導体等が挙げられ、スルホン酸基を有するものとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(3−スルホプロピル)−イタコン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸及びこれらの誘導体等が挙げられ、リン酸基を有するものとしては、例えば、((メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0018】
上記アニオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体のうち、3級アミノ基を有するものとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びこれらの誘導体が挙げられ、4級アミノ基を有するものとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物、トリメチルン−2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド及びこれらの誘導体が挙げられる。また、これらの単量体のナトリウム塩、カリウム塩等の塩類等を用いてもよい。なお、上記単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコール−テトラメチレングリコールメタクリレート等の(メタ)アクリレートの誘導体が挙げられる。なお、このような単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記式(1)中のxは1〜10であることが好ましい。10を超えると、単量体の疎水性が強まり、充分な親水性を有する重合体層が形成できないことがある。より好ましくは、xが2〜3である。
また、上記式(1)中のyは1〜30であることが好ましい。30を超えると、単量体の親水性が強まり、形成された親水性重合体層が膨潤して機械的強度が低下することがある。より好ましくは、yが1〜20である。
更に、上記式(1)中のRは、H、CH又はCであることが好ましい。
【0021】
上記共重合体中のイオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントと、下記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントとの比は、20:1〜2:1が好ましい。上記範囲内とすることにより、本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0022】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤の平均粒子径の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。0.1μm未満であると、カラム内が高圧になりすぎ分離不良を起こすことがあり、100μmを超えると、カラム内のデッドボリュームが大きくなりすぎて分離不良を起こすことがある。より好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は50μmである。
【0023】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記疎水性架橋性単量体又は疎水性架橋性単量体を主成分とする単量体混合物を用いて、疎水性架橋重合体粒子を作製した後、上記疎水性架橋重合体粒子の表面部分において上記イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体と、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体とを重合させ、親水性重合体層を形成することにより、製造することができる。
【0024】
上記疎水性架橋性単量体又は疎水性架橋性単量体を主成分とする単量体混合物を用いて、疎水性架橋重合体粒子を作製する方法としては、公知の重合法を用いることができ、例えば、上記疎水性架橋性単量体又は疎水性架橋性単量体を主成分とする単量体混合物を重合開始剤の存在下で、加熱やエネルギー線照射を行うことで反応させ、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、エネルギー線重合法等が用いて重合させる方法等が挙げられる。
【0025】
上記疎水性架橋重合体粒子の表面部分において上記イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体と、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体とを重合する方法としては特に限定されず、例えば、これらの単量体を表面部分において別個に重合してもよく、これらの単量体を混合した後、重合してもよい。具体的には例えば、上記疎水性架橋重合体粒子が分散された分散媒中に、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体と、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体とを別々又は同時に添加して、重合開始剤存在下で重合する方法を用いることができる。
【0026】
上記表面部分における重合方法としては、公知の重合方法を用いることができ、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法を用いてもよく、特公平8−7197号公報に記載のように、上記疎水性架橋重合体粒子に重合開始剤を含浸させ、上記イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体と、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体とを別々又は同時に重合系に添加して重合する方法を用いてもよい。
【0027】
上記イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントと、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントとを有する共重合体を重合する際の上記イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体の添加量の好ましい下限は、上記疎水性架橋性単量体又は疎水性架橋性単量体を主成分とする単量体混合物100重量部に対して5重量部、好ましい上限は100重量部である。より好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は80重量部である。
【0028】
また、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体の添加量は、単量体の種類によって異なるが、好ましい下限は、上記イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体100重量部に対して5重量部、好ましい上限は50重量部である。5重量部未満であると、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体を添加する効果が得られず、50重量部を超えると、得られる液体クロマトグラフィー用充填剤同士が吸着し、凝集物が発生することがある。
【0029】
また、本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤の表面を更に親水化させるため、ヘモグロビン、アルブミン、グロブリン等の蛋白質、糖類、ノニオン系界面活性剤等の親水基を有する化合物を吸着させてもよい。上記吸着の方法としては従来公知の方法を用いることができ、例えば、特開2001−91505号公報に記載の方法や、特開2004−295368号公報に記載のように、本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤の表面にオゾンを反応させる方法等を用いることができる。
【0030】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、糖化ヘモグロビン等のヘモグロビン類の測定に用いることができる。このようなヘモグロビン類(Hb)の測定方法もまた本発明の1つである。
具体的には例えば、本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤を、公知のカラムに充填した後、得られたカラムに、所定の条件で溶離液及び測定試料を送液することにより、ヘモグロビン類を測定することができる。
【0031】
上記溶離液としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、有機酸又は無機酸又はこれらの塩類を成分とする液を用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、合成有機高分子からなる疎水性架橋重合体粒子を有することから、機械的強度が大きく、耐圧性に優れ、膨潤収縮の発生が極めて少ない。また、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントと、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる親水性重合体層を有することで、試料に対する特異性が高くなるため、ヘモグロビン類のような特定の親水性物質の測定に用いる際に、より短時間で多数の分画を分離することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
(充填剤の調製)
攪拌機付き反応器に、3%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液、テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)300g、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)100g及び過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gの混合物を投入した後、撹拌しながら加熱し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間重合した。
次に、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体として、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亜合成化学社製)100g、上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体としてポリエチレングリコールメタアクリレート(上記式(1)中のx=2、y=4、R=H)20gを用い、これらをメタノール100g、200mLのイオン交換水に溶解した。得られた混合物を上記の反応器に添加して、撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃で2時間重合した。得られた重合組成物を、水及びアセトンで洗浄し、親水性の被覆重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤を得た。
【0035】
(実施例2)
上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体として、ポリエチレングリコールメタクリレート(上記式(1)中のx=2、y=8、R=H)を用いた以外は実施例1と同様にして、親水性の被覆重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤を得た。
【0036】
(実施例3)
上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体として、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(上記式(1)中のx=2、y=4、R=CH)を用いた以外は実施例1と同様にして、親水性の被覆重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤を得た。
【0037】
(実施例4)
上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体として、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(上記式(1)中のx=2;y=9;R=CH)であることの他は実施例1と同様にして、親水性の被覆重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤を得た。
【0038】
(実施例5)
上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体として、上記式(1)中のx=5、y=15、R=Hである官能基を有するメタアクリレートを用いた以外は実施例1と同様にして、親水性の被覆重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤を得た。
【0039】
(実施例6)
上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体として、式(1)中のx=6、y=16、R=CHである官能基を有するメタアクリレートを用いた以外は実施例1と同様にして、親水性の被覆重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤を得た。
【0040】
(比較例1)
上記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体であるポリエチレングリコールメタアクリレート20gを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、親水性の被覆重合体からなる液体クロマトグラフィー用充填剤を得た。
【0041】
(評価)
実施例1〜6及び比較例1で得られた液体クロマトグラフィー用充填剤を用いて、下記の評価を実施した。
(1)液体クロマトグラフィー用カラムの製造
得られた液体クロマトグラフィー用充填剤0.8gを採取し、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)30mlに分散し、5分間超音波処理した後、充分に撹拌した。全量をステンレス製空カラム(4.6φ×35mm)を接続したパッカー(梅谷精機社製)に注入した。その後、パッカーに送液ポンプ(GLサイエンス社製)を接続し、圧力300kg/cmで低圧充填して、液体クロマトグラフィー用カラムを製造した。
【0042】
(2)測定試料の調製
健常人血を採血し、抗血液凝固剤として、フッ化ナトリウム10mg/mlとなるように添加した。これに、以下の処理を行い、糖負荷血含有試料を調製した。
a)グルコースを500mg/dlとなるように添加し、37℃で5時間反応させ、次いで溶血試薬(0.1重量%ポリエチレングリコールモノ−4−オクチルフェニルエーテル(トリトンX−100)(東京化成社製)のリン酸緩衝液溶液(pH7.0))で溶血し、150倍に希釈して測定試料(a)とした。
【0043】
(3)同時再現性評価
得られた測定試料(a)について、下記の測定条件でヘモグロビンA1cの測定を10回連続で行い、同時再現性の比較を行った。再現性の評価は、A1c値とA1c成分の保持時間により行い、それぞれの結果を表1、表2に示した。
(測定条件)
システム:送液ポンプ:LC−9A(島津製作所社製)
オートサンプラ:ASU−420(積水化学社製)
検出器:SPD−6AV(島津製作所社製)
溶離液:第1液:170mMリン酸緩衝液(pH5.7)
第2液:300mMリン酸緩衝液(pH8.5)
溶出法:0〜45秒は第1液を、45〜50秒は第2液を、50〜60秒は第1液を流した。なお、流速1.0ml/分 検出波長:415nm試料 試料注入量:10μmとした。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、膨潤収縮が少なく、耐圧性に優れるとともに、高精度の測定を短時間に行うことが可能な液体クロマトグラフィー用充填剤及びヘモグロビン類の測定方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成有機高分子からなる疎水性架橋重合体粒子の表面に形成された親水性重合体層を有する液体クロマトグラフィー用充填剤であって、
前記親水性重合体層は、イオン交換基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントと、下記式(1)に示す官能基及び重合性二重結合を有する単量体に由来するセグメントとを有する共重合体からなる
ことを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤。
【化1】

【請求項2】
xが1〜10、yが1〜30であり、かつ、RがH、CH又はCであることを特徴とする請求項1記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液体クロマトグラフィー用充填剤を用いてなることを特徴とするヘモグロビン類の測定方法。