説明

液体クロマトグラフィー用膜性揮発性成分除去装置

【課題】液体クロマトグラフィーシステムにおいて、10 μm未満厚の透過性ポリマーの表面コーティングを持つ多孔性膜を含む揮発性成分除去装置の中に、液体サンプル流を流すことによって、揮発性成分の少なくとも一部を液体サンプルから除去すること。
【解決手段】本法を実行するのに好適な液体クロマトグラフィーシステムを利用する。さらに、分離前に、揮発性成分が、同じタイプの膜、または、パーフルオ-2,2-ジメチル-1,1-ジオキソールから成るコポリマーで製造される膜を横切ることによって除去される液体クロマトグラフィーシステムを利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィーにおける分析対象からの気体、例えばCO2の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
現在行われている抑制工程は、多くの分析対象の伝導度を最大にしながら、溶出液すなわち移動相の伝導度を最小にする。この技術はいくつかの特許に記載されている(3,897,213; 3,920,397; 3,925,019; 3,926,559; 4,474,664; 4,999,098)。
【0003】
電気化学的検出によるHPLC応用では、酸素の存在は、より高いバックグラウンド電流およびノイズをもたらす。Reimは、Anal. Chem, 55, 1983, 1188-1191において、酸素バックグラウンドは、気体透過性チューブの使用によって最小化することが可能であることを示した。酸素ガスの透過性について試験したチューブは、シリコンゴム、テフロン(登録商標)、4-メチル-1-ペンテン、Tygon(登録商標)、およびNafion(登録商標)であった。シリコンゴムチューブが選ばれたのは、それが比較的高い透過性を持つためであった。チューブの外側を脱気する方が、外側を不活性ガスで吹き払ったり、または、外側にアルカリ性亜硫酸塩洗浄液を噴射するよりも酸素除去には効果的であった。前述の研究で使用された他のチューブは、CO2に対する透過性が低い上に、CO2は、チューブの壁材料を横断しなければならないという制限があった。一方、前述の研究で使用されたシリコンゴムチューブは脆弱であった。従って、溶出液からO2を除去するのに有用と思われる、圧安定的な気体透過性膜に対しては需要がある。
【0004】
炭酸塩溶出液を含む抑制ICでは、早い時期に、何人かの研究者によって、カルボン酸抑制溶出液からCO2を除去すると、炭酸および/または重炭酸溶出液による勾配の導入が可能であることが認められていた。CO2除去は、バックグラウンドを下げるばかりでなく、他の利点、例えば、水ディップまたは空虚ピークの減少、空虚からの早期の溶出ピーク統合の改善、バックグラウンドが低くなることによるノイズの低下、およびバックグランドに依存する感度の上昇等をもたらす。しかしながら、前述の研究で使用されたチューブは脆弱で、ある場合にはチューブの壁を横切って液体の輸送を可能とする小孔を持っていた。従って、大量の液体流を阻止しながら、抑制溶出液からCO2を除去するのに有用と考えられる、圧安定的なガス透過可能な膜に対しては需要がある。
【0005】
抑制IC分析では、サンプルの溶解CO2を構成するピークは、抑制カルボン酸として検出される。あるサンプルでは、炭酸塩ピークは、比較的広い裾野を持つピークとして現われ、濃度によっては、水酸化物またはホウ酸塩溶出液による溶出の際に、全体として近傍に溶出する陰イオンの特定と定量化を妨げる。この問題は、大きなサンプル容量が注入された場合に特に重要である。CO2のサンプルへの侵入を最小化するために、超音波処理、または、N2またはヘリウムバブリングによるサンプルのガス抜きが行われる。これらの対処法は、酸性サンプル(pH<6.3、H2CO3のpKa)の場合にはきわめて有効である。なぜなら溶解CO2は大部分、非イオン形として存在し、簡単に気体として脱出する傾向を持つからである。しかしながら、アルカリ性(塩基性)サンプルでは、溶解CO2は、大部分イオン形(重炭酸塩および炭酸塩として)陰イオンとして存在するので、ガス抜き法では簡単に除去されない。従って、イオンクロマトグラフィー用のサンプルからCO2をオンラインで簡単に除去する手段に対しては需要がある。ICにおける従来の気体透過性モジュールの役割は、抑制後、炭酸塩溶出液から二酸化炭素を除去することであった。炭酸塩溶出液の場合、サンプル中の比較的高濃度の溶解二酸化炭素の存在は、通常、抑制溶出液(カルボン酸)からの高いCO2バックグラウンドによって覆い隠される。しかしながら、あるサンプルでは、高濃度の溶解CO2/炭酸塩の存在が、依然として分析において問題となることがある。
【0006】
米国特許第5,439,736号は、微細腔ポリマー中空線維上に、気体相から堆積した、完全にアルキル化されたポリシロキサンポリマーを記載する。このようにして得られたコーティングは、線維の外側に架橋された薄層である。プラズマ重合条件は、均一な、小孔の無い、極めて接着性の高い、超薄層コーティングを実現すると述べられている。米国特許第5,439,736号には、前述のチューブが、気体相分離に有用であることが述べられている。
【0007】
Sunden et al., Anal. Chem. 1984, 56, 1085-1089は、炭酸水素/炭酸溶出液を用いてバックグラウンド伝導度を下げる目的で多孔性PTFEチューブ(Goretex(登録商標))を使用したことを記載している。この気体透過性チューブに捩れたワイヤーを挿入することによって、この著者たちは90%の二酸化炭素を除去することができたと述べている。
【0008】
Siemer and Johnson, Anal. Chem. 1984, 56, 1033-1034は、炭酸/重炭酸溶出液から二酸化炭素を除去するのにシリコンゴムを用いた。0.1M KOH溶液を温め、シリコンゴムチューブの外側に用いた。外部液を約79℃に温めることによって、CO2のほぼ完全な除去が達成されたと述べられている。
【0009】
一般に、前述のチューブは脆く、本発明のチューブに見られるような圧安定性を示さない。前述のチューブのあるものでは、チューブの壁を横切る拡散長が極めて長い。
【0010】
Shintani and Dasgupta, Anal. Chem. (1987), 802-808は、炭酸/重炭酸溶出液におけるバックグラウンド伝導度を下げるための抑制後装置として、シリコンでコートした、多孔性ポリエチレンチューブの束を開示する。この著者たちは、バックグラウンド(標準ランから注入無しランを)を差し引くことによる基礎レベル補正の方が、前述の、サプレッサー後の、気体透過装置の使用よりも優れると結論した。コーティング法から、ポリエチレン線維の外側に厚いコーティング密度が示唆された。例えば、前述の刊行物は、チューブは、小孔の無いチューブを得るために、最大10回コーティングを行うべきことを推奨する。
【0011】
米国特許第6,444,475号は、抑制された炭酸/重炭酸溶出液からCO2を除去する機能を実行するために、テフロン(登録商標) AF気体透過性チューブの使用を記載している。チューブは圧耐性を持つと記載されているけれども、このチューブは極めて高価である。
【0012】
従って、前述の材料に対し、圧耐性を持ち、効率的で、安価な代替品に対しては需要がある。
【0013】
陰イオン分析において事前濃縮技術を用いる場合、サンプル流の中に過剰な量の二酸化炭素/炭酸塩があると、それは、濃縮器カラムの性能に悪影響を及ぼす。なぜなら、濃縮器カラムは、他の、目的のサンプル陰イオンと共に炭酸塩イオンも濃縮するからである。濃縮器の作用能力を下げることの外に、サンプルにおける二酸化炭素/炭酸塩の存在はまた、濃縮器カラムの捕捉効率に影響を及ぼす。なぜなら、炭酸塩イオンは、目的の他のサンプルイオンを溶出する傾向があるからである。ピークの形も悪影響を被る。なぜなら、サンプルプラグは、部分的溶出のために濃縮器の中で拡散されるからで、サンプルは、幅広いプラグとしてセパレーターに注入される。従って、特に、事前濃縮カラムを用いる場合には、サンプル流における二酸化炭素/炭酸塩の除去には需要がある。
【0014】
同様に陽イオン分析の場合、事前濃縮工程時における高濃度のアンモニアの存在は、前述のように有害作用を持つ。従って、サンプル流におけるアンモニアの干渉の除去に対しては需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,439,736号明細書
【特許文献2】米国特許第6,444,475号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Sundenら, Anal. Chem. 1984年, 56, 1085-1089頁
【非特許文献2】Siemer及びJohnson, Anal. Chem. 1984年, 56, 1033-1034頁
【非特許文献3】Shintani and Dasgupta, Anal. Chem. (1987年), 802-808頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
一つの実施態様では、本発明は、水性液体サンプル流から揮発性成分を除去することを含む液体クロマトグラフィー法であって、(a)揮発性成分を含む液体サンプル流中の分析対象をクロマトグラフィー的に分離する工程、および、(b)液体サンプル流を、揮発性成分に対して透過性を持つポリマーでコートされた表面で、コーティング厚は10 μm未満である表面を持つ、少なくとも1つの多孔質壁を含む、揮発成分除去装置内を貫流させることによって、工程(a)からの液体サンプル流から揮発性成分の少なくとも一部を除去する工程、を含む方法を含む。
【0018】
別の実施態様では、本発明は、液体クロマトグラフィーシステムであって、(a)入口および出口を有する液体クロマトグラフィーカラム、および(b)ポリマーコーティングによってコートされた表面を有する少なくとも1つの多孔質壁を含む膜を含む揮発性成分除去装置を含み、コーティングは10 μm未満の厚さを持ち、装置は、入口および出口を有する液体サンプル流通チャンネルを定め、液体サンプル流通チャンネルの入口は、クロマトグラフカラムの出口に液的に連通することを特徴とするシステムを含む。
【0019】
別の実施態様では、本発明は、水性液体サンプル流から揮発性成分を除去することを含む液体クロマトグラフィー法であって、(a)揮発性成分の少なくとも一部を、該成分を含む液体サンプル流から、該液体サンプル流を除去装置の膜の一方側にそって流通することによって除去すること、その際、膜は、気体透過性ポリマーのコーティングでコートされた表面を有する少なくとも1つの多孔質壁を含み、コーティングの厚さは10 μm未満であり、および、(b)工程(a)の後、液体サンプル流中の分析対象をクロマトグラフによって分離すること、を含む方法を含む。
【0020】
さらに別の実施態様では、本発明は、液体クロマトグラフィーシステムであって、(a)液体サンプル流通チャンネルを定める少なくとも1つの膜を含む揮発性成分除去装置、該装置は入口と出口を持ち、膜は、気体透過性ポリマーのコーティングでコートされた表面を有する少なくとも1つの壁を含み、コーティングの厚さは10μm未満であり、および、(b)液体クロマトグラフィーカラムを含み、揮発性成分除去装置の出口は、クロマトグラフカラムの出口と液的に連通することを特徴とするシステムを含む。
【0021】
別の実施態様では、前段落のシステムの揮発性成分透過性膜は、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールから成る非晶質コポリマーである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明による装置の模式図である。
【図2A】図2Aは、揮発性成分またはGRD(ガス除去装置)の模式図である。内部の図は、膜およびナイロンフィラメントの断面を示す。NT、ナイロンジャケットチューブ;U、ユニオン;N、雄ナット;F、FEPチューブ;C、フェルール;P、PEEKチューブ。
【図2B】図2Bは、内部ヒーター。P、PEEKチューブ;SS、ステンレススチールチューブ;NiCr、ニクロム線;+−、電源接続
【図3】図3は、装置が室温で動作している時(右、直線軸)と、内部ヒーターと共に動作している時(左、対数軸)における、コーティング液中のシリコンゴム含量の関数で表した残留CO2を示す。コーティング厚は、1.5%シリコンゴム液において1.4μmであると測定され、コーティングシリコン濃度に直線的に比例すると仮定した。
【図4A】図4は、走査電子顕微鏡観察である。(a)コートされていない膜の外面。スケールバーは0.5 μm。
【図4B】図4は、走査電子顕微鏡観察である。(b)コートされた膜の外面、スケールバーは0.5 μm。
【図4C】図4は、走査電子顕微鏡観察である。(c)コートされた膜の断面、スケールバーは50 μm。
【図4D】図4は、走査電子顕微鏡観察である。(d)市販のNeomecs膜、スケールバーは2 μm。
【図5】図5は、室温と32℃において、(a)チューブ長の関数で表した残留CO2のGormely-Kennedyプロット、および、(b)腔の流速(80 cm GRD)の関数で表した同様プロットである。ジャケットには空気か、100 mM NaOHが流れる。
【図6】図6(a)および6(b)は、水酸化物溶出液中に存在するCO2の除去を示す。(a)4 mm TAC LP-1 + AG-11 HCカラム、2 mM 1 mL/分で電解生成KOH、Δp=3.10MPa(450 psi)(カラム前の1.03MPa(150 psi)の低下を含む)、150 μg/L Cl-, 770 μg/L NO3-, 74 mg/L CO32- 3.1 mg/L SO42-含有の35 μLサンプルを注入;n、GRD無し、c、GRD室温、i-h、GRDの内部ヒーター、および(b)4 mm AG11 + AS 11 カラム、電解生成KOH、LC-30オーブンで30℃、大気ガスサンプル、シドニー、フロリダ州、5 L/分で収集、15分準備濃縮。ライントレース(左縦軸):15.5 mM KOH 1.5 mL/分、GRD無し;16 ppt HCl;160 ppt HONO;40 ppt HNO3;90 ppt SO2;8 ppt H2C2O4;黒の影部分(右縦軸):17.5 mM KOH, 1.4 mL/分、GRD30℃;40 ppt HCl;410 ppt HONO;85 ppt HNO3;510 ppt SO2;13 ppt H2C2O4
【図7】図7は、収集された気体および空中微粒子サンプルの、自動化、連続クロマトグラムである(文献37を参照)。2.4 mM Na2CO3および 2.3 mM NaHCO3 溶出液、4 x 150 mm AG11カラム、1.0 mL/分、GRDは30℃のオーブン中。
【図8】図8は、炭酸塩-重炭酸塩アイソクラティック溶出で、LOD近くの性能である。2 mm AG12/AS12, 0.3 mM NaHCO3, 2.7 mM Na2CO3, 0.4 mL/分、2 mm ASRS-Ultra50 mAリサイクルモード、室温操作(オーブン無し)、バックグラウンド13.6-14.4 μS/cm100 μL注入、50 mAリサイクルモード、バックグラウンド13.6-14.4 μS/cm、GRD無し(細線)。0.90-0.96 μS/cm、GRD室温(太線)。100 μL注入、それぞれ、10 μg/L F-、10 μg/L Cl-、20 μg/L NO2-、50 μg/L NO3-, Br-、50 μg/L NO3-、100 μg/L PO43-、50 μg/L SO42-から。左パネルは、水ディップの目覚しい違いを示す。右のパネルにおいて、バンド分散の計算値(括弧で括られた不確定値、n=3)を、各GRDピークの頂上に示す。このレベルのフッ化物はGRD無しでは検出されない。
【図9】図9は、1-100 ppmのもっとも一般的な濃度範囲では中間的な保持を示す分析対象イオンである、臭化物に対する、炭酸塩溶出液のCassidy直線性プロットである。図8の場合と同じ条件。バックグラウンドは、GRD有りで0.6 μS/cmであった。
【図10】図10は、炭酸塩勾配クロマトグラムを示す。(a)4 x 100 mm AS11HC, 1 mL/分、勾配プログラム、図示のように2.5 mM NaHCO3から2.5 mM Na2CO3まで。3.5 μL Cl-(1.5), NO2-(2.1), NO3-(7.7) SO42-(31)を、室温で、GRD無し(黒塗り)、およびGRD有り(実線)で測定。(b)電解生成炭酸塩勾配(文献21)、2 x 50 mm AG12A + 2 x 250 mm AS12A, 0.4 mL/分、100 μL, F-(1), Cl-(1), NO2- (2), Br-(5), NO3-(5), SO42-(10), PO43-(10)。溶出液:4 mM NaHCO3を、電気透析発生器に供給、10分で1-4 mM KOH勾配(濃度は、mg/L)。注入。
【図11】図11AおよびBは、AS18化学を用いて設置されたGRDが無い場合と有る場合に得られた水道水サンプルのクロマトグラム比較を示す。
【図12】図12 AおよびBは、Dionex Corp.専売のカラム化学を用いて設置されたGRDが無い場合と有る場合に得られた7種の陰イオン基準サンプルのクロマトグラム比較を示す。
【図13】図13AおよびBは、AS14化学による、抑制炭酸塩溶出液流からの二酸化炭素除去を示す。図は、GRDを設置しない場合と設置した場合に得られた7種の陰イオン基準サンプルのクロマトグラム比較を示す。
【図14】図14は、本発明による装置の模式図である。
【図15】図15は、本発明による装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一つの実施態様では、本発明は、気体、またはその他の揮発性成分除去装置(GRD)であって、多孔性ポリマー基質の表面に、別の物質から成る薄層コーティングを含む装置に関する。本発明によるこの組み合わせは、クロマトグラフィー応用における液体流から気体の除去を可能とする。このコートされた膜は、「非対称膜」と呼ばれる。これは、膜は、異なる物質から成る、多孔性基質の上にコーティングを持つことを意味する。コーティングは、多孔性基質表面の片側にあってもよいし、両側にあってもよい。
【0024】
一般に、コーティングの好ましい特徴は下記の通りである。コーティングは、目的の成分に対して透過的でなければならない。コーティングは、除去される成分の拡散距離を最小とし、そうすることによって前記成分の、流通する液体流からの速やかな除去を促進できるように、比較的薄くなければならない。コーティングは、均一で、実質的に完全に基質を被い、そうすることによって、特に、膜の両側に液体流がある場合には、バルクの液体流を実質的に阻止しなければならない。
【0025】
一つの実施態様では、前述のコート被覆ポリマー基質は、イオンクロマトグラフィーにおける検出前に、CO2および/または他の揮発性成分を液体溶出流から除去するのに有用である。非対称膜は、10μm(ミクロン)未満のコーティング厚を持つことが好ましく、より好ましくは、5、4、3、2、または1μm(ミクロン)未満、さらに好ましくは0.02から3μm(ミクロン)の範囲、もっとも好ましくは1から3μm(ミクロン)である。薄層コーティングの目的は、揮発性分子、例えば、CO2の液体流からの除去を支援することである。外部フィルムの薄さの程度は、クロマトグラフ応用において、液体流からの気体の効率的な除去を可能とする。
【0026】
本発明の多孔性基質または壁は、十分な多孔性を持つ限り、いずれの材料から成っていてもよい。適切な基質は、約0.01μm(ミクロン)から約100μm(ミクロン)の孔径を持つ多孔性ポリマーを含む。好ましくは、孔径は、0.02から1μm(ミクロン)範囲であり、より好ましくは0.02から0.2μm(ミクロン)範囲である。基板の厚さは約1から1000μm(ミクロン)が適当であり、10から100μm(ミクロン)がより適当である。
【0027】
好ましい基質材料は、多孔性ポリエチレン線維である。しかしながら、他の有機ポリマー材料、例えば、ポリエチレンまたはポリスチレンも、それが同様の多孔性を持つ限り、チューブの材料として使用することが可能である。米国特許第5,439,736号に開示される材料、すなわち、エチレン的に不飽和なモノマーから成るポリマー、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)、置換型ポリオレフィン、ポリスルフォン、ポリスチレン、または、縮合ポリマー(例えば、芳香族)を含む材料も使用が可能である。多孔性ポリプロピレン中空線維が好ましい。例えば、Hoechst Cealinese Corp、Celgard X20-240, X220-400中空線維のメーカー、およびMitsubishi Rayon会社、KPF 190M, 270B, 360A, 250M, および190Gの中空線維のメーカーから市販されるものである。このような線維は、全体として楕円形の孔を持つ。孔は、典型的には、約600nm(6,000Å)長であり、幅は約0.1nmから約6.5nm(約10Åから約650Å)まで変動する。Mitsubishi KPF190M膜は、基質膜として特に有効である。
【0028】
他の好適な基質材料としては、多孔性非ポリマー性支持体、例えば、銀膜、セラミック膜等がある。
【0029】
コーティングは、コーティングとなるポリマー層をもたらす、ポリマーまたはモノマー、例えば、ポリメチルシロキサン、アルキル化シロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、ポリアルキン系ポリマー等から製造されてもよい。好ましいコーティングは、目的の揮発性無機成分、例えば、CO2、H2S、SO2、NH3、HCN、HCl等、あるいは、揮発性の非電離性成分、例えば、アセトニトリル、エタノール、メタノール、フォルムアルデヒド等に対して良好な透過性を持つ。「揮発性成分」という用語は、液体サンプルによって運ばれる、室温では気体である化合物、例えば、CO2、または、室温では液体であるが、約60℃の温度、またはそれ以下で蒸発する傾向を持つ化合物、例えば、エタノール、を含む。
【0030】
好適なコーティングとしては、様々なシロキサン類、例えば、アルキル化ジシロキサン、および、米国特許第5,439,736号に開示される特定シロキサンを始め、ポリブタジエンまたはシリコンポリカーボネートコポリマーが挙げられる。特定のコーティングは、材料、例えば、ポリメチルシロキサン、アルキル化シロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、ポリアルキレン系ポリマー等の材料から成る基質の上で、ポリマーまたは重合されるモノマーから製造されてもよい。好ましいコーティングは、目的の種類に対し高い透過度を持つ。例えば、CO2の、好ましいシリコンゴムポリマーに対する透過度は、4553 barrers(1 barrer =10-10 cc-cm/(cm2.s.cm.Hg))である。ポリ(トリメチルシリル-1-プロピレン)の透過度は33,100 barrersである。前記特許に開示される気相プラズマ重合技術は、参照することにより本明細書に含める。
【0031】
膜に接触する液体流から除去される目的の揮発性成分について本明細書で用いられる「透過度」という用語は、前記成分を含む液体流が、膜装備除去装置を通過する際に達せられる、除去割合によって評価される。このような除去割合は、少なくとも50%であり、より好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%以上である。好ましい実施態様では、揮発性成分、例えば、CO2の除去率は、90%を超える、より好ましくは少なくとも92、94、96、98%、99%以上である。パーセントCO2除去または低下は、炭酸塩または重炭酸塩溶出液の場合は残留バックグラウンドから、あるいは、水酸化物またはホウ酸塩溶出液の場合はサンプルに溶解しているCO2に由来するCO2ピークの残留ピーク高から計算される。
【0032】
別法として、膜の透過度は、'736特許の方法で測定しbarrersで表した、除去される目的の気体の透過度によって、好ましくは少なくとも100 barrersで、より好ましくは少なくとも1000 barrersで、 30,000 barrersで、40,000 barrers以上で定量されてもよい。
【0033】
一つの実施態様によれば、クロマトグラフィーカラムにおいて、液体サンプル流をGRDを通じて流すことによって、該サンプル流から、揮発性成分、例えば、CO2を除去するための方法および装置が具体的に示される。GRDは、該揮発性成分に対して透過的で、かつ、選択的に透過的であることが好ましい透過性壁を含む。CO2除去のためのある好ましい実施態様では、壁は、多孔性ポリマー基質(例えば、多孔性ポリプロピレン)を含み、所定の厚さを持つポリシロキサンによってコートされた表面を持つ。GRDを通過した後、液体サンプル流の中の分析対象は検出される。
【0034】
本発明は先ずGRDにおいて、揮発性成分がCO2であり、壁が多孔性チューブ(単数または複数)または線維の形を取るGRDの構造に関連して記述される。概して、このGRDは、CO2透過性の壁であって、指定の厚さを持つポリシロキサン層によってコートされる多孔性ポリマー基質から成る壁を含む。このポリシロキサンコーティングは、米国特許第5,439,736号によって記載されるガスプラスマ重合技術によって、あるいは、Anal. Chem. (1987), 59, 802-808に載せられたShintani et al.の論文に記載される方法の変法によって実行することが可能である。本発明の膜は、Shintani等の公表した方法によって内在的に形成されるものよりも実質的に薄い。前述したように、Shintaniの膜は、繰り返し最大10回までコートされたと記述されている。この推薦されたコーティング手法は、比較的厚い、例えば、厚さ約90μm(ミクロン)を超えるポリシロキサンまたはシリコンコーティングをもたらす。
【0035】
NeoMecsからGasTran(商標)中空線維膜の名の下で供給される市販のチューブは、比較的薄いポリシロキサンコーティングを持つ(例えば、ジシロキサンが、ポリプロピレンの細腔中空線維の上にコートされる)。一方、この膜からチューブを製造する方法を記載する米国特許第5,439,736号は、ガス分離における使用しか開示していない。
【0036】
もっとも単純な形のGRDでは、コートされた気体透過性チューブが、液体溶出流と直列に結ばれる。一つの好ましい実施態様では、GRDは、クロマトグラフィーシステムにおいて、抑制装置の後ろで、検出器の前に設置される。チューブの外周は、周囲の環境に暴露されてもよいし、囲いに収められてもよい。後者の場合、気体透過膜の外側は、流体に接触したり、真空の使用を可能とする。
【0037】
GRDのある好ましい形においては、気体受容液が、非対称チューブの腔の中を流れる液体サンプル流の外側を流れる。他の応用例では、チューブの外周はケースの中に封じ込むかわりに、外気に曝されてもよい。ケースは、CO2または他の気体の除去を促進するために、外部チェンバーにおける気体または液体の流れや、チェンバーに適用される真空の使用を可能とする。別態様として、液体サンプル流は、チューブの外側を流れ、一方、気体受容流は、チューブの内部を流れることも可能である。塩基性水溶液を、GRDの非対称膜の反対側において、CO2含有液体に対し逆向き流として流してもよい。さらに、GRDの囲いの中に真空を、他端を閉鎖することなく引き込むことが可能であり、その場合、チューブの周囲に空気流を生じさせる。さらに、この腔には静止流体を用いることも可能である。非対称壁において、液体サンプルと反対側における液体流の機能は、揮発性成分、例えば、CO2またはアンモニアまたはメタノールの除去を促進することである。目的の成分を除去するために使用される好ましい流体は、水溶液、例えば、水、または気体、例えば、不活性ガス、または空気である。別態様として、非対称壁は、外部環境を、除かれる気体を含む液体サンプル液から隔てる筐体において、平坦な膜であっても、他の形状の膜であってもよい。
【0038】
本発明の非対称壁がチューブの形を取る場合、「チューブ」という用語は、単一長のチューブか、または、一束にまとめた複数のチューブである(例えば、Shintani et al.のGRDは、10本の線維から成る束で、各線維は30cm長である)。しかしながら、実施例で示すように、本発明の好ましい形では、チューブは、単一長の線維、または、一つ以上のセグメントを持つチューブであって、全液体サンプル流はそれらのセグメントを通って流れる。流速0.1-2 mL/分で作動する典型的なクロマトグラフィーシステムのために好適な長さは、約5から200 cm、より好ましくは50から150 cmである。流速がはるかに低い毛細管スケールのクロマトグラフィーシステムでは、要求される長さも低くなる。従って、本発明の非対称膜は、チューブ状でも、線維状でも、単一チューブでも、または複数のチューブ束であってもよい。さらに、膜は、平坦膜の形状を取ってもよい。さらに、膜は、平坦でも、あるいは、液体サンプル流通チャンネルの一方側を区切る別の形を取ってもよい。
【0039】
本発明のGRDは、クロマトグラフィーカラムからの分離分析対象を含む液体サンプル流がサプレッサーを通過し、そこで溶出液流の伝導度が抑制される、抑制クロマトグラフィーにとっては特に有用である。陰イオン分析の場合、分析対象は酸形態に変換される。また、アルカリ金属炭酸塩/炭酸塩溶出液は、カルボン酸に変換され、これはサプレッサーを出るサンプル流中のCO2含量の著明な増加をもたらす。しかしながら、GRDはまた、CO2または他の気体を除去すべきそのような溶出液なしでも使用が可能である。
【0040】
図1は、一つの抑制型クロマトグラフィーシステムを示すが、用いるGRDも図示されている。このシステムは、前述した、特定の薄層コートチューブだけではなく、GRDにおける、CO2透過性を持つ任意のチューブの使用に適用が可能である。
【0041】
特に図1を参照すると、GRD 50は、実施例に示すタイプのものであってよく、例えば、気体、例えば、CO2に対して極めて透過性の高い、1本の、非対称の、多孔性チューブであって、チューブの周囲に外部流通チャンネルを備えたものを含めたものであってもよい。溶出液は、ポンプ52によってカラムに汲み上げられ、液体サンプルは、注入バルブ54において注入される。溶出液は、液体サンプルと共に、クロマトグラフィーカラム56の中を流れ、そこから、米国特許第5,248,426号に記載されるように、平坦膜タイプのサプレッサーの入口に向かい、検出器から、サプレッサーの再生流チャンネルに戻される。このサプレッサーは、サンプル流通チャンネル62を、再生流通チャンネル64と隔てる一つ以上の透過選択性膜60を含む。サンプル流通チャンネルは、ライン66を流れ、揮発性成分透過チューブ68の内部に入り、そこから、検出セル、伝導度検出セル70に至る。'426特許に説明されたように、検出後、検出済みのサンプル流は、ライン72に戻されて再生流通チャンネル64に至る(詳細は図示せず)。再生流通チャンネル64の出力は、別のやり方であれば廃棄槽に通されるものであるが、ライン78を流れ、チューブ68を取り巻く外部流通チャンネル74に向かう。本明細書で記載する通り、陰イオン分析時には、水性溶液、好ましくはアルカリpHを持つ液が、チューブ68の外部を連続的に流通してCO2を運び去る。次に、チューブの外部を流通した水溶液は、76に示すように廃棄槽に通すことが可能となる。上の実施態様において、サプレッサーの廃棄物が塩基である限り、従来のいずれのサプレッサーも使用が可能である。
【0042】
一つの実施態様では、陽イオン分析では、水溶液、好ましくは酸性pHのものがチューブ68の外部を連続的に流通し、取り出された揮発性成分、例えば、アンモニアを運び去る。次に、チューブの外部を流通した水溶液は、76に示すように廃棄槽に通すことが可能となる。上の実施態様において、サプレッサーの廃棄物が酸である限り、従来のいずれのサプレッサーも使用が可能である。
【0043】
一つの実施態様では、サプレッサーからのライン76は、廃棄槽へつながっていてもよい。これらの条件下では、外部貯留槽(図示せず)からの補給液体は、外部流通チャンネル74に導かれ、次に、チューブ76から廃棄槽に導かれる。
【0044】
図1に示すように、GRD 50は、取り除くべき揮発性成分に対して透過性を持つチューブを含み、接合部(図示せず)を収容する囲いの中に設置されるので、サプレッサー後の本発明の実施態様であるICシステムに対する本ユニットの配管接続は簡単に行われる。サプレッサーからの溶出流出液は、装置の入口に導かれる。装置の出口は、伝導度セル入口に導かれる。
【0045】
図1のGRD 50の囲いは、流通接続を可能とする二つの接続部(図示せず)を持つ。囲いの一端から真空を引き込み、一方、他端を閉鎖したままにしてもよいし、あるいは、囲いの他端を閉鎖せずに一端から真空を引き込んでもよい。この場合、本発明のチューブの周囲に気流が生じることになる。本発明の図示の実施態様では、流体流は、サンプル流に対して対向方向となる。しかしながら、装置は、同方向流でも動作する。別の実施態様では、流体は、腔の中で静止する。流体流の機能は、分子の除去を支援することである。好ましい流体は、空気、不活性ガス、または、排除された気体分子と反応性を持つことが好ましい水性媒体である。流体流に代わるものとして真空を適用してもよい。前述したように、チューブ60の外側には、除去される種類が二酸化炭素である場合には、塩基性の流体流が好ましい。なぜなら、塩基は、二酸化炭素と反応して炭酸塩イオンに変換するからである。好ましい塩基性流は、陰イオン分析では、塩基性サプレッサー廃棄物の形を取ることになるから、これは、筐体に向けて、次に、図1に示すように廃棄槽に向けることが可能である。従って、前述の配管構成の下では、塩基の自己持続供給源は、サプレッサーの廃棄流から得ることが可能である。
【0046】
同様に、陽イオン分析時に、アンモニアのような気体分子を除去する場合には、好ましい酸性流は、サプレッサー酸性廃棄物の形を取り、これを、筐体に向け、次に、廃棄槽に向けることが可能である。本発明のこの局面は、独自のものであり、従来技術の気体透過性チュープ配管でも動作する(テフロン(登録商標)AFを含む)。流体流は、要すれば加熱してよい。
【0047】
図1の実施態様では、溶出流がチューブの外側にポンプされ、一方、チューブの内部には廃棄の塩基流が噴射されてもよい。本発明のコート膜は、単一の線維としてチューブ状線維であってもよいし、あるいは、チューブまたはチューブ束、あるいは、平坦膜構成を取ってもよい。このようなチューブ状線維には、機能化物質、または、中性物質をパックしてもよい。例えば、ナイロンフィラメントを、チューブの内部に挿入してもよい。パッキングの機能は、チューブの壁に対する混合または拡散を促進することである。膜の外側にもまた、機能化物質または中性物質をパックしてもよい。平坦膜構成では、装置は、従来技術の平坦膜サプレッサー装置と同様に流通経路を定めるために、ガスケットで仕切られたスクリーン物質を持つことになる。塩基流を投下する好ましい手段は、塩基を含む貯留槽からの、重力補給、または、加圧補給であろう。
【0048】
チューブの内部には、チューブの壁に対する混合または拡散を促進するために、機能化物質、または中性物質、例えば、ナイロンフィラメントをパックしてもよい。膜の外側にもまた、機能化物質または中性物質、例えば、'426特許に記載されるタイプのようなものをパックしてもよい。
【0049】
下記の方程式は、特に、炭酸塩および/または重炭酸塩溶出システムの抑制溶出液中に存在する化学的平衡を記述する。
【0050】
〔化1〕
H2CO3 <--> H2O + CO2
【0051】
CO2を除去することにより、平衡は、H2CO3(抑制カルボン酸)濃度を低減させることによって右に動かされ、従ってバックグラウンド伝導度を下げる。CO2分子は、選択的障壁を通じて選択的に拡散し、一方、外部流体は、浸透してきたCO2を廃棄槽へ除去することを助ける。
【0052】
H2CO3は、25℃におけるK1が7.47 x 10-7の弱酸である。H2CO3の溶液では、第2解離工程は重要な役割を持たない。H2CO3のイオン組成は、関連電荷および質量バランス方程式を解くことによって簡単に求められる。次に、溶液の伝導度は、既知の、イオン等価伝導度値から計算することができる。H2CO3の伝導度と濃度の関係は極めて非直線的であり、若干のH2CO3の除去は、残る濃度のさらによいイオン化をもたらすので、H2CO3の低下は、伝導度には比例的には反映されない。CO2が9 mM H2CO3溶液から除去されると(9 mM H2CO3溶液はよく使われるIC溶出液である)、残留伝導度は、残留H2CO3とlog-log関係に従う。すなわち、伝導度変化は、濃度の二乗とほぼ直線的に変化する。
【0053】
重炭酸塩および/または炭酸塩溶出液では、本発明のコートされた非対称膜は、溶出液からのCO2の除去に有用であると考えられる。水酸化物またはホウ酸塩系溶出液の場合、本発明の装置は、サンプルの溶解CO2/炭酸塩に一致するピークを除去するのに有用である。CO2ピークを除去することで得られる最終作用は、統合の向上、定量、および分離をなめらかに実施する能力である。
【0054】
前述したように、本発明の装置は、CO2以外の揮発性成分、例えば、水素または酸素のような電解ガスの除去にも有用と考えられる。他の揮発性成分、例えば、HCN、H2S、およびNH3またはエタノール、メタノール、アセトニトリル等は、本発明の装置で除去することが可能である。これらの揮発性成分は、本発明の装置を用いクロマトグラフ流から収集することが可能であり、取り出された化合物についてさらにクロマトグラフ分析を行うことによって、あるいは、受容流に適当な検出器を加えることによって、さらにその後の分析を実行することが可能である。取り出された分子の検出を可能とする試薬は、検出前に、本発明のものとして加えられてもよい。
【0055】
別の実施態様では、本発明のGRDユニットは、分析対象の分離の前に液体サンプルを前処理するために用いられる。具体的には、液体サンプル流の揮発性成分(単複)の少なくとも一部は、除去装置において膜の一方側にサンプル流を流すことによって除去される。透過性選択膜は、多孔性基質の上に10μm(ミクロン)未満厚のコーティングでコートされた表面を持つ少なくとも1つの膜または壁を含む前述のタイプであってもよい。分析対象は、あらかじめ所望の成分が相当除去され、前述のように検出器によって検出済みであるサンプル流において、クロマトグラフィー的に分離される。
【0056】
一般に、前述のGRDユニットの内の任意のものを、この前処置モードに使用することが可能である。さらに、後述するように、揮発性成分除去装置は、サンプルがこの装置に注入された場合、サンプル注入と、揮発性成分の除去の二重機能を果たすことができるように、液体サンプル注入ループを含んでもよい。
【0057】
前述したように、GRDユニットの一つの実施態様は、気体除去筐体の中に前述のタイプのコートされたポリマーチューブを含む。この装置は、チューブの周囲に、典型的には、環状開口部の形で流体流を、チューブの内側を通るサンプル流の流れに対して対向方向に含む。別態様として、前述したように、チューブ周囲の開放空間は、真空供給源に接続されてもよい。真空供給源は、開口部の一端から真空を引き、一方、他端は閉塞して気体の除去を助ける。
【0058】
図14を参照すると、前処置用GRD使用の一つの実施態様が示される。図は、クロマトグラフィーシステムの気体除去およびサンプル注入を示す。一般に、通常の液体クロマトグラフィー、特にイオンクロマトグラフィーシステムは、同じサンプル注入、クロマトグラフィー、および検出に使用が可能である。例示のシステムは、Dionex社から、ICS2500という商品名で販売されている。
【0059】
図14を参照すると、液体サンプル流は、先ず、選択的前処置サプレッサー100に向けられ、そこで液体サンプルは抑制される。サプレッサーは、GRDユニット102の上流にある。前処置サプレッサーは、所望の除去されるべき化合物を、大部分非電離の形態に変換るのを助ける。なぜなら、非電離形態は簡単にGRDから除去することが可能だからである。例えば、サンプル流が炭酸化合物を含んでいる場合、この流れは、二酸化炭素ガス放出のために、前処置サプレッサーにおいて酸性形態に変換される。炭酸塩を酸性形態に変換し、このようにして、除去される揮発性成分を形成する一つの理由は、通常、炭酸塩は、サンプルの試験成分ではないからである。従って、二酸化炭素が除去されることによって、残余のサンプルの分析対象は、妨害的な炭酸塩から実質的に自由になって分析される。
【0060】
この前処置サプレッサーの目的のために、パックベッド・サプレッサー、または化学的または電解質サプレッサーを含む任意のサプレッサーを使用することが可能である。サンプル流の前処置のための電解質サプレッサーが、Stillianの米国特許第5,597,481号に開示される。この特許に記載されるように、前処置のために、サプレッサーは、実質的にサンプル流を酸または塩基形態に変換するのを助ける。米国特許第5,5773,615または6,495,371号の「背景」部分または明細書の主要部分に開示されるサプレッサーの任意のものも同様に使用が可能である。
【0061】
GRDユニット102は、前述のタイプのものであってよい。説明したように、サプレッサーからのサンプル流は、チューブ104として示す膜を通過して流れる。液体サンプル流の所望の揮発成分は、チューブ状膜104の壁を横切って輸送される。
【0062】
GRDユニット102からの流出液は、通例の6方バルブ106に流れ、そこから図示しないクロマトグラフィーカラムに、さらに通例の検出器に向かう。このようなシステムでは、サプレッサーは、Dionex社からATLASの商品名で販売されているタイプであり、イオンクロマトグラフィーシステムは、米国特許第6,495,371号に図示されるタイプである。前処置サプレッサーまたはGRDを持たないこのタイプのシステムは、Dionex社からICS2000という商品名で販売されている。
【0063】
再び、図14を参照すると、GRDユニット114からのサンプル流出液を、サンプルループへ負荷するために好適なバルブ機構が描かれている。このバルブ機構は、6ポートバルブであり、ポートはA-Fで表示される。点線は、サンプル負荷を表し、実線は、サンプル注入を表す。サンプルループ120のサンプル負荷中、サンプル流は、ポートE, A, D, Fに向けられ、次に廃棄槽へ向けられる。同時に、溶出液は、ポンプ122によってポートBとCを通じて汲み上げられ、流れはカラム124に向けられる。サンプル注入モードでは、サンプルはサンプルループ120から外され、流れは、カラムに向けられる。溶出液は、ポンプ122によって、ポートB、A、D、Cを通じ、次にクロマトグラフィーカラム124に向けられる。同時に、GRDユニットからのサンプル流は、開放ポートEおよびFを通じて廃棄槽へと向けられる。
【0064】
サンプル中のイオン分子は、よく知られるクロマトグラフィー原理に従って、クロマトグラフィーカラム124において分離される。次に、'371特許に図示されるように、イオンクロマトグラフィーシステムでは、サンプルは、サプレッサーに向けられ、そこから検出器へ、しかも好都合なことに、これも'371特許に図示されるように、伝導度検出器へ向けられる。
【0065】
サンプル中の目的の分析対象がきわめて低濃度で、事前の濃縮工程を持たずに分析することが困難と考えられる場合には、濃縮カラムが用いられる。前処置サプレッサーと濃縮カラムの適当な組み合わせが米国特許第5,597,481号に図示される。一般に、濃縮カラムは、サンプル中のイオン分子を緊密なバンドに捕捉する。十分な量のイオン分子が収集された場合、濃縮カラムのサンプルは溶出流に溶出され、'481特許に図示されるようにクロマトグラフィーカラムに向けられる。
【0066】
図15を参照すると、システムの模式図が描かれる。システムは、図14のものと同じである。ただし、濃縮カラム126が、サンプルループ120に置き換わっていることを除く。類似の部品は同じ数字で表示される。図14で示されたものと同じバルブポートが、図15の実施態様にも適用される。濃縮カラムは、'481特許で説明されたものと同じ機能を果たす。簡単に言うと、濃縮カラムでは、濃縮器をサンプル流が通過している間、サンプル中の分析対象イオンは、イオン交換パックまたは膜を含むカラムに保持される。そのようなイオンが、所望の検出に十分な量保持されると、濃縮カラム126を通過するサンプル流の流れが止められ、溶出液が濃縮カラムからくみ出され、前述のようにクロマトグラフィーカラムに向けられる。
【0067】
一つの実施態様では、GRDは、目的の成分に対して透過性を持つ多孔質壁であって、10μm(ミクロン)未満厚のコーティングでコートされた表面を持つ少なくとも1つの壁を含む。別の実施態様では、気体透過膜は、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールから成る非晶質コポリマーから製造されてもよい。このようなポリマー材料は、DuPontによってテフロン(登録商標) AFの商品名の下に販売されており、米国特許第4,997,008号に記載されている。
【0068】
イオンクロマトグラフィーでは、サプレッサーは、クロマトグラフィーカラムと、それと液的に連通するサンプル流通入口との間に配される。前述のように、好ましいGRDでは、気体除去区画は、サンプル流通チャンネルとは、膜の壁の反対側に配される。GRDの上流に配される、一形の事前処置サプレッサーは、サプレッサー膜を含む膜サプレッサーである。この事前処置サプレッサーは、事前処置サプレッサー膜の反対側に、液流通チャンネルからの再生流通チャンネルを含む。再生流通チャンネルは、GRDの気体除去区画と液的に連通し、それによって、再生流通チャンネルの溶液が気体除去区画に流入することが可能となり、GRDの透過選択性膜を横切って輸送される、目的の揮発性成分を除去するための溶液の役目を果たすことが可能となるようにしてもよい。
【0069】
本発明の別の実施態様では、図示しないけれども、液体サンプル注入ループがGRDの形を取る。従って、例えば、図14の実施態様において、サンプルループ120はGRDとなり、別のGRD102は取り除かれる。この場合、この実施態様では、気体除去は、サンプル注入ループにおいて実現される。
【0070】
(実施例)
本発明を具体的に説明するために、下記の、本発明の実施に関する、非限定的実施例が説明される。
【0071】
下記の、非限定的実施例1では、全ての試薬は分析等級であった。試薬の調製およびICのためにはナノ純度の水が使われた。実験は全てDionex社から購入したIC装置を使って行った。装置の調節およびデータの獲得は、Peaknet(商標)ソフトウェアによって行った。高温操作は、オーブン(LC-30、30℃に維持)内で行うか、または、剥離液の加熱には小型の内部ヒーターにて行った。
【実施例1】
【0072】
CO2除去装置(GRD)の構築
【0073】
この実施例は、図2(a)および2(b)に関して記述される。微細多孔性チューブ状ポリプロピレン膜(400 μm、内径;25 μm、壁;指定孔径、0.02 μm;表面多孔性、40%;Celgard X-20, Celanese Corp., Charoltte, ノースカロライナ州)を、該膜状チューブを、ヘキサンに溶解したシリコンゴム接着剤(Macklandburg-DuncanまたはGeneral Electric、家庭用透明タイプ)の溶液に浸すことによって、シリコンゴムでコートした。別様に明言しない限り、濃度は1.5-2%(w/v)であった。ある長さの膜チューブを、溶液の中で、一方向に引っ張って反対方向に戻した。次に、この膜を垂直に吊るし、埃の無い囲いの中で≧4時間乾燥させた。所望の長さの、このコートされた膜チューブ20を切り、200 μm直径のナイロン単線維(1.81kg(4ポンド)強度、STREN、duPont)を中空線維の中に挿入し、フィラメントの両端は、線維から突き出すようにした。線維の一端は、10-32雄・雄結合または接合22(Dionex Corp., 接合開口はドリルで削り、口径を大きくした)を通過させ、テフロン(登録商標)チューブ・セグメント24(FEP テフロン(登録商標)チューブ、0.51mm(0.02 インチ)内径;1.57mm(0.062インチ)外径、Upchurch)に挿入した。チューブ末端は、圧迫フェルール26と、接合部に付着した10-32雄ナット28で密封した。接合コネクターアッセンブリを持つ線維末端を、PTFEテープにて、小口径(1.59mm(1/16インチ)外径)スチールチューブに接着した。このフィラメント充填膜チューブ20を、スチールチューブの周囲に巻きつけ、自由端を再びPTFEテープで接着した。全アッセンブリは該フィラメントを熱硬化するため沸騰水に30分間浸漬した。次に、テープおよび螺旋チューブアッセンブリを支持台から外し、図2aに示されるように、アッセンブリを、固いナイロンジャケットチューブ30(4.78mm(0.188インチ)外径、3.48mm(0.137インチ)内径、114.3から127mm(4.5から5インチ)長)の中に収めた。それぞれの端には10-32本の糸がついていた。これは、接合部22に直接接合できるようにするためである。30には、さらに、入口/出口が設けられ、それにPEEKチューブ32(0.762mm(0.03インチ)内径、1.57mm(0.062インチ)外径、Upchurch)が接続され、所定の位置にエポキシ接着された。これは、外部流体の流動を実現する。ここで、膜チューブの、自由末端は、第1末端と同様に密封された。ある場合には、外来流に対する入口/出口は、接合部22を適当に掘削することによって、直接接合部22に設けられた。
【0074】
プラズマ重合ジシロキサンから成る3-4μm(ミクロン)厚の薄層を含む、200 μm内径微細多孔性ポリプロピレン膜を、Neomecs(Eden Prairie、ミネソタ州)から得た。完成装置は、これ以上シリコンコーティングをせず、線維も挿入しないことを除いては、前述のものと同じやり方で製造された。接続に使用された末端テフロン(登録商標)チューブは、0.3mm内径であった。
【0075】
別様に注記しない限り、1.5%シリコンゴム液でただ1回コートした、80cm長Celgard膜を備えたGRDを用い、これをサプレッサーと検出器の間に置いた。別様に明言した場合を除いては、溶出液の流速は、2および4 mmカラムで、それぞれ、0.4および1.0 mL/分であった。一方、100 mM NaOH液を、ペリスタルチックに、または、空気圧で、GRDの外部流通チャンネルに〜0.5 mL/分で汲み上げた。ある実験では、サプレッサー廃棄物(水酸化物溶出液ICの場合)を、シンク液として用いた。高温操作は、オーブン(LC-30、30℃に維持)内で行うか、または、剥離液の加熱には小型の内部ヒーター(下記参照)にて行った。
【0076】
内部ヒーター
流入剥離液を直接加熱する内部ヒーターは、Dasgupta et al., Anal. Chem. 2003:75, 3924-3928によって記載されるヒーター設計と同様にして構築した。40-gaニクロム線34を、PEEKチューブ36(0.76×1.59mm×127mm(0.03 x 1/16 x 5 インチ)長)に挿入し、両端を、皮下用ステンレススチールチューブのセグメントによって、さらに漏れないように両端にエポキシ樹脂を挿入して密封した(図2b)。余分のニクロム線は切り捨てた。電圧可変DC電源を用いて電圧を、入口/出口の役目も果たす、二つの、スチールチューブ末端38に印加した。最大10Vの電圧を印加し、〜4Wの分散電力を得た。加熱された外部液(0.5 mL/分)が、内部液(1.0 mL/分)と熱的に平衡に達し、システムが断熱的になったならば、全体の温度は〜40℃に上昇する。実際には、用いた低い流速では大きな熱損失があった。ヒーターからの液体の流出温度は、〜72℃であるが、単にGRD入口に向かって10cm通過させただけで54℃に低下した。測定されたGRD腔出口温度は、腔内温度よりも僅かに10℃しか上ではなかった。その後の実験の大部分は、GRDをオーブンの中に取り込むことによって実行した。
【0077】
結果および考察
シリコンコーティング厚の作用
【0078】
図3は、室温時と、内部ヒーター(4W)時における、コーティング液中のシリコンゴムの量の関数で表した、残留CO2の割合を示す。第1近似として、我々は、コーティングの厚さは、溶液中のシリコンゴムの濃度に直接比例すると仮定する。この実験で用いた比較的短い膜チューブ長では、除去割合効率(f)は低い。この条件下では、膜への輸送は限界因子ではなく、膜横断輸送が、これは輸送層の厚みの逆数に比例するが、主要因子となるようである。従って、(1-f)、すなわち、CO2の残留割合は、ほぼ直線的に厚さの逆数に比例する。しかしながら、上昇温では、除去ははるかに効率的となり、1-fではなく、log(1-f)の方が、1/tとより優れた直線関係を示す。これは、膜へのマス輸送が限界因子であることを示唆する。
【0079】
コーティング液に用いられるシリコンの量が最低(1.5%)の時、最高の除去効率(低温および加温モードで、それぞれ、91%と99%)が得られた。我々はまた、このようにしてコートされた膜は、必ずしもピンホール漏洩から免れていないことを見出した。このような漏洩の出現の広がりと頻度は、コーティング液のシリコン含量が減ると共に増加し、処方したコーティング法では、コーティング液の1.5%シリコン含量が、実施上の最低限界であった。従って、以後、この含量を用いた。1 mL/分という低い流速では、GRDそのもの、プラス、検出セルおよび、検出器出力チューブによって誘起される戻り圧は、0.262MPa(38 psi)であった(この70%は、検出セルと付属のチューブによるものであった)。この条件下で、膜の小孔を通じて観察される最大液体漏洩は、1±0.1 μL/分であり、膜外部への流体の流れは無かった(これは、外部ジャケットを閉鎖し、水蒸気が浸透し、ジャケットで再凝縮した分を含めたとしても、10-12時間の収集を必要とした)。膜の内部と外部との間に、相当に大きなプラスの圧差が存在する限り、外部の液体の腔への漏洩は起こらず、観察された程度の漏洩は、初期の流れの0.1%に相当するが、実際的な問題とはならない。
流れを1 mL/分とし、Neomics内径200 μmを最大長の50cmとして用いると、このようなGRD(プラス検出器等)に対するヘッド圧は0.414MPa(60 psi)であった。本膜において液体の漏洩は観察されなかった。
【0080】
顕微鏡観察
膜の操作電子顕微鏡写真は、コートされていない膜における露出した小孔を示す(図4a)。一方、シリコンコーティングは、コートされた膜においては、膜表面のほとんどを被う(図4b)。壁の厚みを顕微鏡的に測定してみると、コートされた膜壁は、コートされない膜よりも〜1.4 μm厚いことが示された。内部の膜の粗大は、コートされたチューブの、比較的低倍率の断面画像でも明白であり(図4c)、かつ、この画像はまた、コーティングが両端にも存在することを示す。これは、シリコンゴムのヘキサン液は、直ぐに膜を濡らすという事実とも一致する。シリコンゴム接着剤の密度1.15と3%の揮発性成分の条件下では、液体フィルムの40-50 μm厚は(二つの通路のそれぞれについてコーティング液を通る膜の通路当たり)、1.5-2%のシリコンゴムを含むコーティング液について観察されたフィルム厚を生ずるのに十分である。
【0081】
市販のジシロキサン被覆膜のメーカーは、ジシロキサン層の厚さを表示していない。発表されている実効透過性8.36 x 10-4 cc/(cm2.s.cm Hg)、シリコンゴムの既知の透過度4550 barres(これはポリ(ジメチルシロキサン)のものであって、ジシロキサンには正確に当てはまらない可能性がある)に基づくと、障壁層の厚みは5.4 μmと推定される。膜チューブの断面画像(図4d)は、3-4 μmのコーティング厚を示唆するが、これは、この推定と一致する。
【0082】
膜線維長と温度の作用
図5は、チューブ長の、CO2の除去効率に及ぼす作用を示す。長さの関数として表した除去は、Gormley-Kennedy方程式から予測されるように、残留割合の対数とチューブ長の間の直線関係に従う(Gormley et al., Proc. Roy. Ir. Acad. Sci. Sect A 1949, 52, 163-169)。80cm長のチューブは、室温で〜97%のCO2を除去し、内部ヒーターと一緒では、事実上定量的に除去した(≧99.9%、このように高い効率では、正確な除去効率を測定することは極めて難しい)。二つの温度(22℃対32℃)の差は、ln(1-f)・対・長さプロットの勾配のほぼ倍増をもたらす。もしもStokes-Einstein関係が、液体相の拡散係数を十分に定義し、かつ、温度変化は、粘度において1.25倍の変化をもたらすと仮定するならば、この温度変化は、拡散係数に1.3xの変化をもたらすことになり(Gormley-Kennedy式の指数に現われている)、これが、マスの膜への転送を助ける。温度の上昇によって助長されるCO2除去には他の局面もある。浸透する(溶解し、次に膜を通して拡散する)のはCO2であって、H2CO3ではない。H2CO3はCO2となるためには脱水されなければならず、この過程は瞬間的ではない。文献データに基づき、かつ、Arrheniusの振る舞いを仮定すると、脱水過程の速度定数は、22℃における19.4 s-1から32℃における47.2 s-1に増大する。GRDにおける典型的滞在時間≧4.5 sを考慮すると、脱水速度は、主要因子とはなり得そうもない。除去を駆動するのは、膜の両側間の圧差である。外部pCO2は〜ゼロであるから、動力は、直接内部pCO2に比例する。手近の熱力学データ、Henryの法則に基づくと、CO2の可溶性は、22℃と32℃の間で1.3倍減少する。最後に、温度の上昇も、CO2の膜の横断を助長する。
【0083】
様々なGRDによるCO2除去効率の提示
温度上昇下の操作は明らかに有利であるので、GRDを、30℃に維持したクロマトグラフィーオーブンに配置して、さらに実験を行った。表1は、室温と30℃における様々なGRDユニットの成績を示す。コートされない膜の性能は、コートされた膜よりも、特に、上昇温では、やや劣るという点は興味がある。前述したように、通常の微細小孔膜におけるマス転送制限段階は、微細小孔における標準的液体フィルムの形成である。コートされた膜の両側では、この可能性は回避される。いずれにしろ、コートされない膜では、漏洩のために連続して操作することはできない。50cm長200 μm内径のNeomecs膜は、1 mL/分では、Gormley-Kennedy振る舞いに従わないために(後述)、CO2について定量的除去を実現しないが、このような装置でも、30℃で0.5および0.25 mL/分の流速では、それぞれ、CO2の99.5および99.97%の除去を行うことが期待される。共に同じフィラメント充填式に製造された、50 cm, 400 μmのNeomecs装置と、コートされたCelgard装置を比べてみると、両装置の室温での性能は同じであるが、上昇温では、コートされたCelgard装置の性能の方が見た目で優れていることが示された。
【0084】
【表1】

腔流、1 mL/分;シンク液:100 mM NaOH、0.5 mL/分
【0085】
CO2除去選択と、腔流速の作用
表2は、膜に対して外側に様々な選択条件を用いた場合の、溶出流からのCO2除去成績を示す。気体流は、液体シンクよりも優れる。これは恐らく、気体の場合は拡散制限がより少ないためと思われる。最善の選択条件の一つである、石灰処理空気流を用い、同時に100 mM NaOH(全ての試験のベンチマークシンクとして用いた)について、腔流の関数として見た除去効率を図5bに示す。ここでもGormley-Kennedyの振る舞いが観察された。
【0086】
【表2】

a80 cm GRD;腔流 1 mL/分;流出液 9.0 mM Na2CO3;オーブン、30℃
bこの流速範囲では除去効率に差はない。
【0087】
性能
アイソクラティック溶出
サンプル流からのCO2の除去
【0088】
この局面は、CO2除去における我々の主要関心、野外の大気測定をやり易くすること、の一つに関する。図6aは、大気測定におけるもっとも重要な対象イオン、硝酸塩および硫酸塩を測定する、簡単で、比較的低圧(3.10MPa(450 psi))下における分離スキームを工夫する際にGRDの果たす重要な役割を示す。硝酸塩と硫酸塩含量は、Boring et al., Anal. Chem. 2002:74, 1256-1268に記載されるように、15分5 L/分サンプルに収集される0.25 ppb HNO3と0.43 ppb SO2に等価である。クロマトグラフィーを、硝酸塩を、炭酸塩(その量は、実際の大気サンプルで見られるものよりもはるかに低い、図6b参照)よりもずっと前に溶出させる、きわめて低濃度の水酸化物を用いて行った。ここではGRDがあるか、無いかの違いは、硫酸塩が全く定量されないかどうかである。図6bは、二つの実際のクロマトグラムを示す。一つは、GRDの無いもので、他方は、同じ条件でGRDのあるものである。後者の場合、炭酸塩ピークの急激な低下のために、少し高い溶出液濃度、少し低い溶出液速度を使用することが可能であった。GRD無しに低レベルのHNO3を定量化することの困難(現在許される合計溶出時間制限下で、炭酸塩と硝酸塩の間の溶出時間差を最適化した後でも)、および、GRDの存在による著明な改善は明らかである。また、水の品質(特に、CO2含量に関して)は、野外調査ではほとんどコントロールできないことにも注意する必要がある。結果として、電気透析的に生成された水酸化物溶出液であっても、水ディップは目視できるが、GRDを備えると著明に減少する。
【0089】
GRDは、野外の大気測定において、比較的低圧システムであっても、感度を大きく損なうことなく炭酸塩溶出液の使用を可能とする。システム圧が低いことは、維持を緩和する。図7は、Bondville、イリノイ州の田園地域に置かれた装置であって、Genfa et al., Atmos. Environ. 2003:37, 1351-1364に記載されるものと設計が近似するものであるが、ただし炭酸塩溶出液およびGRDを用いた装置から得られた、大気サンプルのクロマトグラムである。この装置は、気体成分と粒子成分を交互に測定するものであるが、一つのGRDで1年以上も動作している。
【0090】
炭酸塩溶出液。検出限界および直線性の改善
GRDは、炭酸塩溶出液の場合、検出限界(LOD)を著明に改善する(表3)。LODは、LODの付近の濃度における基準の標準偏差の3倍に基づいて計算した。改善は、試験イオンに関して表全体に観察された。急速溶出イオン、例えば、水ディップに接近して溶出するフッ化物は、GRDが無い場合、低レベルの基準と区別されず全く検出することができない。
これらのLODを、水酸化物溶出システムによって達成可能なものと比べるのは興味あることである。しかしながら、この、全シリーズの分析対象を、十分短時間に、アイソクラティック水酸化物によってカバーするのは極めて困難である。そこで、我々は、(a)リン酸塩を含まず、その他の点では、同じサンプルサイズおよびカラムサイズの下でアイソクラティック溶出を行った基準混合物、また、(b)7種のイオン全てが4 mmカラム(カラムと装置の利用性により)と、現在の実行慣習では典型的である、比較的少量の注入用量を用いる水酸化物勾配溶出スキームを用いた。GRD付きの炭酸塩システムによって実現されるLODは素晴らしいものである。
【0091】
【表3】

a. 2 mm AG12/AS12, 0.3 mM NaHCO3, 2.7 mM Na2CO3, 0.4 mL/分、2 mm ASRS-Ultra, 50 mAリサイクルモード、室温操作(オーブン無し)、バックグラウンド13.6-14.4 μS/cm
100 μL注入
b. aの場合と同様。ただし、GRD31(80 cmシリコン被覆Celgard)、室温(オーブン無し)、バックグラウンド0.90-0.96 μS/cm
c. 4 mm AS17/AG17; CR-ATC; 1.5 mL/分、50 μL注入、1から35 mM電解生成KOH勾配、30℃のオーブン中
d. 2 mm AS18, 20 mm電解生成KOH、他の全ての条件はaと同じ。オーブン無し。
e. 定量されず。10分では溶出しない。
【0092】
GRD有りまたは無しで、表3に記載した条件下に実行した、重複アイソクラティック炭酸塩溶出クロマトグラムを、図8の右側に示す。左のインセット図は、GRDの存在時に観察される、水ディップの大幅な改善を示す。クロマトグラムが示すように、GRDによって誘発されるさらに付け加わる分散は僅かである。(W1/22 W'1/22)1/2と定義されるバンド分散において、WおよびW'1/2は、GRDが有る場合と無い場合における分析対象ピークのバンド容量の半分値であるが、その値が、各ピークについてi/Lとして不確定(n=3)と共に示される。図8に示した分析対象の大部分では、ピーク面積は、GRDの使用によって実際に増加し、リン酸塩のピーク面積は12%増加した。感度の向上は、CO2の除去とそれに関連する柔軟な基線から直接追跡することができる。
【0093】
反応の直線は、図9に示すようにCassidyプロットによってもっともよく調べられる(Cassidy et al., LC GC Mag. May 1992, 10, 692-696)。GRDを備えた場合の感度は、GRDが無い場合に比べて、より高く、定常値により速く達する。理論からは、さらに高濃度では、二者の感度は最終的には同じになると予測される。
【0094】
重炭酸塩炭酸塩勾配クロマトグラフィー
炭酸アンモニウム勾配は、バッファー物質の揮発性のために、液体クロマトグラフィー質量分析では一般的に用いられている。既に述べたように、炭酸塩勾配の基本的魅力は既に文献の中で論議されている。このものは、効率的に動作するGRDを得たならばさらに貴重なものとなる。図10Aは、2.5 mM NaHCO3 と2.5 mM Na2CO3の間に勾配を設けた場合に得られる、そのようなクロマトグラムを示す。一見すると、これは、検出器に達するH2CO3濃度に変化をもたらさないように見えるが、実際は、カラム部位は、最初重炭酸塩で充填されるが、二価の炭酸塩が重炭酸塩を置換するにつれて、1個の炭酸塩が2個の重炭酸塩を置換するので、余分の重炭酸塩はカラムを出ざるを得なくなる。GRDがある場合と無い場合との大きな差はすぐに明らかである。図10Bは、Novic et al., J. Chromatogr. A 2002, 957, 165-172に従って電気透析的に生成された勾配クロマトグラムを示す。
【0095】
他の弱酸性分析対象の損失
GRDによる他の弱酸性分析対象の損失は、好ましいことではないかもしれない。しかしながら、この損失に感じ易いことがもっとも明白な分析対象、例えば、硫化物およびシアン化物は、いずれにしろ、抑制伝導度測定では選択的に検出されない。加熱システムと非加熱システムの比較において、カルボン酸、例えば、ギ酸および酢酸の正確な損失を推定することは難しい。なぜなら、手近な熱力学的データは、これらのカルボン酸の解離定数は、温度の上昇と共に下がることを示すからである。30℃における閉鎖オーブンという現在推薦される条件下でGRD有り、および無しの下で「面積損失」実験をしたところ、これらの分析対象については、損失は認められなかった。
【0096】
GRDが、気体除去膜と同心的に配せられた外部ジャケットを持つように設計されると、外部流体も、低分散形態に操作することが可能になる。このような構成では、膜を効率的に横断する気体、例えば、H2S、HCN等は、第2流において、電気化学的検出器によって選択的に、高感度で検出することが可能である。我々は、伝導度検出器を用いて、アルカリ性ドナー流においてアンモニアを測定するために同様の配置を用いた(データ示さず)。
【0097】
本実験では、我々は、安価で手に入る膜から簡単に構築される効率的なGRDユニットが、既存のサプレッサーおよび検出システムと簡単に組み合わせて使用することが可能であり、かつ、大気分析および、種々の他の応用にも極めて有利であることを証明した。
【実施例2】
【0098】
本実験では、Dionex Corp.から購入したDX600システムを用いた。米国特許第5,439,736号に記載される気体透過チューブ(400 um内径、150 cm長)をNoemecs (Eden Prairie、ミネソタ州)から得、図1に示す装置に設置した。この装置は、GRDと表示され、二酸化炭素の除去のために使用される。次に、この装置を、図1に示すサプレッサー装置の後続機として設置した。水道水サンプルを用いて、大ループ注入(1 mLサンプルループ)を行った。GRD無しのコントロール運転を、AS18化学と1 mL/分の23 mM NaOH(図11Aに示す)によって行い、GRD有りの運転と比較した。サプレッサー廃棄物(塩基)を流体流としてGRDに向け、二酸化炭素の除去を補助させ、次に廃棄槽に向けた。結果は、本発明に一致して、炭酸塩ピークの実質的部分が除去されることを示す。
【実施例3】
【0099】
実験条件は、7種の陰イオン基準を含む基準混合物をDionex Corpの専売カラムで、1.2mL/分の38 mM NaOHと25 μL注入ループの条件下で分析したことを除いては、実施例2と同様であった。GRD無しの運転(図12A)では、炭酸塩ピークが亜硝酸塩の近くに溶出するので、亜硝酸塩ピークを定量しにくくすることが示された。一方、GRD有りの場合の運転(図12B)では、炭酸塩に一致するピークが除去されるために、亜硝酸塩の統合が改善している。
【実施例4】
【0100】
米国特許第5,439,736号に記載されるように、様々な長さの気体透過チューブ(209 um内径)をNeomecsから入手した。チューブを、図1のものと類似の装置に設置し、Dionex Corp. AS15カラムによって評価した。溶出液は、30℃で0.3 mL/分の38 mM NaOHを含む。サンプルは7種の陰イオン基準を含んでいた。注入ループは2.5 μLであった。下表は、GRDの、ピーク効率に及ぼす作用を示す。早期に溶出する塩化物ピークは、後期に溶出する硫化物ピークよりも大きな損失を被ることを示す。GRDの存在は、後期に溶出する硫酸塩ピークにほとんど影響を与えなかった。装置の最適長さは、CO2除去効率とピーク効率の間の妥協になると考えられる。
【0101】
【表4】

【実施例5】
【0102】
120 cmチューブを、実施例2で概説した手順に従ってコートした。このユニットを、抑制溶出液からCO2を除去するために、サプレッサー後装置として用いた。Dionex Corp.から購入したAS14カラムを、1.2 mL/分の流速を持つ3.5 mM NaHCO3および 1 mM Na2CO3溶出液の下に用いた。外来液としては、25 mM NaOH液を用い、重力供給によってGRDに投下した。Dionexから購入した7種陰イオン基準の10倍希釈液をサンプルとして用いた。図13B(GRD設置)は、バックグラウンドが、GRDを設置しないで行われた運転(図13A)で得られた16 μS/cmに対して、約1 μS/cmとより低くなることを示す。ピーク反応も、GRD設置して行った運転では、全てのイオンについてより高くなった。空虚ピークは、GRDの設置によって減少した。従来の装置において報告される、重炭酸塩および/または炭酸塩溶出液に対するGRDの利点は全て、本発明の装置によっても観察された。
【実施例6】
【0103】
本実験では、Dionexから購入したDX600システムを用いた。米国特許第5,439,736号に記載されるものと同じ気体透過チューブ(400 um内径×150cm長)をNeomecs(Eden Prairie、ミネソタ州)から入手し、図1の装置に設置した。次に、装置を、図2に示すような注入バルブに設置した。サプレッサー装置は無い。家庭のDI水から成るサンプル流を、加圧貯留槽を用い装置に汲み上げた。気体透過チューブの外部は、100 mM NaOH液で掃引した。注入ループサイズは1000 μLであった。標準的抑制伝導度IC装置を、AS18カラムおよびASRS Ultra IIサプレッサーと共に用いた。使用した溶出液は、EG40モジュールによち1 mL/分で生成される23 mM KOHであった。サンプル流は、負荷位置において注入ループに流れこみ、AS18カラムに注入された。気体透過チューブを迂回することによって結果を比較すると、炭酸塩に相当するピークの90%を超えるものが、本発明の装置によって除去された。本発明の装置の有る場合と、無い場合とで比較して見ると、全てのピークの効率に変化はなかった。
【実施例7】
【0104】
実施例6の装置をAS15カラムと共に用いた。用いた溶出液は、38 mM NaOH(瓶入り溶出液)であった。7種の陰イオン基準混合物の100 μL注入を行い、ASRS Ultra IIサプレッサーからのサプレッサー廃棄物を筐体に向け、透過性チューブの外側を掃引したことを除いては、他の条件は全て実施例6と同じであった。気体透過チューブを迂回することによって結果を比較すると、炭酸塩ピークに相当するピークの90%を超えるものが、本発明の装置によって除去された。本発明の装置の有る場合と、無い場合とで比較して見ると、全てのピークの効率に変化はなかった。本発明の装置によると、亜硝酸塩に一致するピークの統合は、炭酸塩の干渉が無くなるために、改善した。
【実施例8】
【0105】
1 mM NaOHサンプルに7種の陰イオン基準混合物を合わせ、かつ、100 ppmの炭酸塩をサンプルとして用いたことを除いては、実験条件は全て実施例7と同じであった。サンプルを本発明の装置に負荷する前に、サンプルは、ASRS Ultraサプレッサーによって抑制された。この実験では、ASRS Ultraサプレッサーは外来水モードで運転されていた。結果は、炭酸塩に相当するピークの90%を超えるものが除去されることを示した。亜硝酸塩に一致するピークの統合は、炭酸塩の干渉が無くなるために、改善した。
【0106】
また、本発明は以下に関する。
[1]
水性液体サンプル流から揮発性成分を除去することを含む液体クロマトグラフィー法であって、
(a)揮発性成分を含む液体サンプル流中の分析対象をクロマトグラフィー的に分離する工程;および、
(b)液体サンプル流を、揮発性成分に対して透過性を持つポリマーでコートされた表面で、コーティング厚は10 μm未満である表面を持つ、少なくとも1つの多孔質壁を含む、揮発成分除去装置内を貫流させることによって、工程(a)からの液体サンプル流から揮発性成分の少なくとも一部を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。
[2]
(c)工程(b)の後で、前記分析対象を検出すること、
をさらに含むことを特徴とする、[1]記載の方法。
[3]
揮発性成分が、二酸化炭素であることを特徴とする、[1]記載の方法。
[4]
前記除去装置における揮発性成分除去率が、少なくとも90%であることを特徴とする、[1]記載の方法。
[5]
ポリマーコーティングが、シロキサンを含むことを特徴とする、[1]記載の方法。
[6]
工程(a)と(b)の間で、液体サンプル流を抑制することをさらに含むことを特徴とする、[1]記載の方法。
[7]
ポリマーコーティングが、チューブの形をした前記多孔質壁の外側に行われ、前記液体サンプル流が、前記チューブの内側を流れることを特徴とする、[1]記載の方法。
[8]
前記チューブが、単一チューブを含むことを特徴とする、[7]記載の方法。
[9]
前記チューブが、少なくとも40 cm長であることを特徴とする、[8]記載の方法。
[10]
前記多孔質壁が、実質的に平坦であることを特徴とする、[1]記載の方法。
[11]
前記多孔質壁が、ポリオレフィンを含むことを特徴とする、[1]記載の方法。
[12]
工程(a)の液体サンプル流が、アルカリ金属炭酸塩および/または重炭酸塩溶出液の存在下にクロマトグラフィー的に分離されることを特徴とする、[1]記載の方法。
[13]
工程(a)の液体サンプル流が、アルカリ金属水酸化物溶出液の存在下にクロマトグラフィー的に分離されることを特徴とする、[1]記載の方法。
[14]
前記揮発性成分除去装置の前記ポリマー被覆壁の一側に別の水性液体を供給し、前記水性液体サンプル流が前記ポリマー壁の他側を流れ、前記の流れている液体サンプル流からの前記揮発性成分を、前記ポリマー被覆壁を横切って輸送し、前記別の水性液体に進入させることをさらに含むことを特徴とする、[1]記載の方法。
[15]
前記別の水性液体が、流れている水性液体流であることを特徴とする[14]記載の方法。
[16]
工程(a)の後で工程(b)の前に、液体サンプル流をサプレッサー中に流すことによって該液体サンプル流を抑制する工程、前記サプレッサーから出てきた抑制された液体流を検出器に流す工程、および、前記サプレッサーから出てきた第2液体流を流して、前記流れている別の水性液体流として用いる工程、をさらに含むことを特徴とする、[15]記載の方法。
[17]
前記サプレッサーが、サプレッサー膜を含む膜サプレッサーであり、前記別の水性液体流が、前記サプレッサー膜の反対側を流れる再生液を含み、かつ、前記液体サンプル流由来のものであることを特徴とする、[16]記載の方法。
[18]
前記除去された揮発性成分を検出する工程をさらに含むことを特徴とする、[1]記載の方法。
[19]
液体クロマトグラフィーシステムであって、
(a)入口および出口を有する液体クロマトグラフィーカラム、および
(b)ポリマーコーティングによってコートされた表面を有する少なくとも1つの多孔質壁を含む膜を含む揮発性成分除去装置を含み、前記コーティングは10 μm未満の厚さを持ち、前記装置は、入口および出口を有する液体サンプル流通チャンネルを定め、前記液体サンプル流通チャンネルの入口は、クロマトグラフカラムの出口に液的に連通することを特徴とするシステム。
[20]
(c)前記流通チャンネル出口と液的に連通する検出器、
をさらに含むことを特徴とする、[19]記載のシステム。
[21]
(c)前記クロマトグラフカラムの出口と、サンプル流通チャンネルの入口の間に配され、それらと液的に連通するサプレッサー、
をさらに含むことを特徴とする、[19]記載のシステム。
[22]
サンプル流通チャンネルからは、前記膜の反対側に、揮発性成分除去区画をさらに含むことを特徴とする、[21]記載のシステム。
[23]
前記サプレッサーが、サプレッサー膜を含む膜サプレッサーであり、前記サプレッサーが、液体サンプル流通チャンネルからは、前記膜の反対側に、再生フローチャンネルを含み、前記再生フローチャンネルが、前記揮発性成分除去区画と液的に連通することを特徴とする、[22]記載のシステム。
[24]
前記膜が、平坦膜であることを特徴とする、[19]記載のシステム。
[25]
前記膜が、チューブを含むことを特徴とする、[19]記載のシステム。
[26]
(c)前記チューブの外側に液的に連通する水性液体流供給源、
をさらに含むことを特徴とする、[25]記載のシステム。
[27]
前記多孔質壁は、シロキサンによってコートされた表面を持つことを特徴とする、[19]記載のシステム。
[28]
水性液体サンプル流から揮発性成分を除去することを含む液体クロマトグラフィー方法であって、
(a)揮発性成分の少なくとも一部を、該成分を含む液体サンプル流から、該液体サンプル流を除去装置の膜の一方側にそって流通することによって除去する工程であって、前記膜は、気体透過性ポリマーのコーティングでコートされた表面を有する少なくとも1つの多孔質壁を含み、前記コーティングの厚さは10 μm未満であり、および、
(b)工程(a)の後、前記液体サンプル流中の分析対象をクロマトグラフィー的に分離する工程、
を含む方法。
[29]
(c)前記液体サンプル流の中の前記分析対象を検出する工程、
をさらに含むことを特徴とする、[28]記載の方法。
[30]
前記除去された揮発性成分を検出することをさらに含むことを特徴とする、[28]記載の方法。
[31]
前記除去装置が、サンプル注入ループをさらに含み、前記方法が、工程(a)の後で工程(b)の前に、液体サンプル流を前記サンプル注入ループに負荷することをさらに含むことを特徴とする、[28]記載の方法。
[32]
揮発性成分が、二酸化炭素であることを特徴とする、[28]記載の方法。
[33]
揮発性成分の除去率が、少なくとも90%であることを特徴とする、[28]記載の方法。
[34]
前記除去装置の前記膜の一側に別の水性液体を供給し、前記水性液体サンプル流が、前記膜の他側を流れ、前記流動液体サンプル流からの前記揮発性成分を、前記膜を横切って輸送し、前記別の水性液体に進入させることをさらに含むことを特徴とする、[28]記載の方法。
[35]
前記別の水性液体が、流れている水性液体流であることを特徴とする[34]記載の方法。
[36]
工程(b)の後で工程(c)の前に、液体サンプル流をサプレッサー中に流すことによって該液体サンプル流を抑制する工程、前記サプレッサーから出てきた抑制された液体流を検出器に流す工程、および、前記サプレッサーから出てきた第2液体流を流して、前記流れている別の水性液体流として用いる工程、をさらに含むことを特徴とする、[28]記載の方法。
[37]
前記サプレッサーが、サプレッサー膜を含む膜サプレッサーであり、前記別の水性液体流が、前記サプレッサー膜の反対側を流れる再生液と、前記液体サンプル流とを含むことを特徴とする、[36]記載の方法。
[38]
前記膜が、チューブの形をしており、前記液体サンプル流が、前記チューブの内側を流れることを特徴とする、[28]記載の方法。
[39]
前記膜が、実質的に平坦な壁であることを特徴とする、[28]記載の方法。
[40]
工程(a)の前に、前記液体サンプル流が、酸または塩基形態に実質的に変換されることを特徴とする、[28]記載の方法。
[41]
(a)液体サンプル流通チャンネルを定める少なくとも1つの膜を含む揮発性成分除去装置であって、前記装置は入口と出口を持ち、前記膜は、ポリマーのコーティングでコートされた表面を有する少なくとも1つの多孔質壁を含み、前記コーティングの厚さは10 μm未満であるもの、および、
(b)液体クロマトグラフィーカラムであって、前記揮発性成分除去装置の出口が、前記クロマトグラフカラムの出口と液的に連通するもの、
を含むことを特徴とする液体クロマトグラフィーシステム。
[42]
(c)前記クロマトグラフカラムと液的に連通する検出器、
をさらに含むことを特徴とする、[41]記載の方法。
[43]
前記揮発性成分除去装置が、前記液体サンプル流通チャンネルから、前記膜の反対側において揮発成分除去流チャンネルをさらに含むことを特徴とする、[36]記載のシステム。
[44]
(c)前記クロマトグラフカラムと前記検出器の間に配置された第1サプレッサー、
をさらに含むことを特徴とする、[42]記載のシステム。
[45]
前記第1サプレッサーが、サプレッサー膜を含む膜サプレッサーであり、かつ、サンプル液体流通チャンネルを有し、前記サプレッサーが、前記サプレッサー膜の一側に再生流通チャンネルを有し、前記液体サンプル流通チャンネルが、前記揮発性成分除去流通チャンネルと液的に連通する前記サプレッサー膜の他側にあることを特徴とする、[44]記載のシステム。
[46]
前記膜が、チューブを含むことを特徴とする、[41]記載のシステム。
[47]
前記膜が、平坦壁であることを特徴とする、[41]記載のシステム。
[48]
第2サプレッサーが、前記揮発性成分除去装置の上流に配置されることを特徴とする、[41]記載のシステム。
[49]
前記揮発成分除去装置が、サンプル注入ループ、および、液体サンプルを、前記サンプル注入ループに向けるバルブ機構を含むことを特徴とする、[41]記載のシステム。
[50]
(a)液体サンプル流通チャンネルを定める、少なくとも1つの、揮発性成分透過性膜を含む揮発性成分除去装置であって、前記装置は入口と出口を持ち、前記膜は、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールの非晶質コポリマーを含むもの、および、
(b)液体クロマトグラフィーカラムであって、前記揮発性成分除去装置の出口が、前記クロマトグラフカラムと液的に連通するもの、
を含むことを特徴とする液体クロマトグラフィーシステム。
[51]
前記揮発成分除去装置が、サンプル注入ループ、および、液体サンプルを、前記サンプル注入ループに向けるバルブ機構を含むことを特徴とする、[50]記載のシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性液体サンプル流から揮発性成分を除去することを含む液体クロマトグラフィー法であって、
(a)揮発性成分を含む液体サンプル流中の分析対象をクロマトグラフィー的に分離する工程;および、
(b)液体サンプル流を、揮発性成分に対して透過性を持つポリマーでコートされた表面で、コーティング厚は10 μm未満である表面を持つ、少なくとも1つの多孔質壁を含む、揮発成分除去装置内を貫流させることによって、工程(a)からの液体サンプル流から揮発性成分の少なくとも一部を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ポリマーコーティングが、シロキサンを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
液体クロマトグラフィーシステムであって、
(a)入口および出口を有する液体クロマトグラフィーカラム、および
(b)ポリマーコーティングによってコートされた表面を有する少なくとも1つの多孔質壁を含む膜を含む揮発性成分除去装置を含み、前記コーティングは10 μm未満の厚さを持ち、前記装置は、入口および出口を有する液体サンプル流通チャンネルを定め、前記液体サンプル流通チャンネルの入口は、クロマトグラフカラムの出口に液的に連通することを特徴とするシステム。
【請求項4】
水性液体サンプル流から揮発性成分を除去することを含む液体クロマトグラフィー方法であって、
(a)揮発性成分の少なくとも一部を、該成分を含む液体サンプル流から、該液体サンプル流を除去装置の膜の一方側にそって流通することによって除去する工程であって、前記膜は、気体透過性ポリマーのコーティングでコートされた表面を有する少なくとも1つの多孔質壁を含み、前記コーティングの厚さは10 μm未満であり、および、
(b)工程(a)の後、前記液体サンプル流中の分析対象をクロマトグラフィー的に分離する工程、
を含む方法。
【請求項5】
(a)液体サンプル流通チャンネルを定める少なくとも1つの膜を含む揮発性成分除去装置であって、前記装置は入口と出口を持ち、前記膜は、ポリマーのコーティングでコートされた表面を有する少なくとも1つの多孔質壁を含み、前記コーティングの厚さは10 μm未満であるもの、および、
(b)液体クロマトグラフィーカラムであって、前記揮発性成分除去装置の出口が、前記クロマトグラフカラムの出口と液的に連通するもの、
を含むことを特徴とする液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項6】
(a)液体サンプル流通チャンネルを定める、少なくとも1つの、揮発性成分透過性膜を含む揮発性成分除去装置であって、前記装置は入口と出口を持ち、前記膜は、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールの非晶質コポリマーを含むもの、および、
(b)液体クロマトグラフィーカラムであって、前記揮発性成分除去装置の出口が、前記クロマトグラフカラムと液的に連通するもの、
を含むことを特徴とする液体クロマトグラフィーシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−180150(P2011−180150A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109549(P2011−109549)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2007−529956(P2007−529956)の分割
【原出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)