説明

液体サンプルホルダ

【課題】ガスが材料サンプルから脱着するとき、材料サンプルの液体部分又は蒸気部分が取り除かれることを防止する液体サンプルホルダを提供する。
【解決手段】液体サンプルホルダ100は、作動流体が材料サンプルから脱着されるとき、材料サンプルの液体又は蒸気部分がサンプル貯蔵部101から除去されることを防止する。この装置は、サンプル貯蔵部と液体捕集部102とを含み、双方とも筐体103内に含まれている。液体捕集部は、サンプル貯蔵部の上に位置しており、流路は、液体捕集部を通過して、サンプル貯蔵部を筐体の上部部分に位置するガスポート106に流体連通結合するように構成されている。液体捕集部は、バッフルアセンブリ、多孔性のメッシュ状の高表面積材料、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、サンプル材料からのガス収着及びガス脱離に関し、特には、ガス収着材料用の液体サンプルホルダに関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2007年6月15日に出願された米国仮特許出願(出願番号60/987,296)に基づく優先権の利益を主張する。本明細書中、この関連出願の内容を参考として援用する。
【背景技術】
【0003】
液体のガス収着特性を分析するため、又は、液体中に蓄積又は溶解したガスを利用するため、液体からガスを分離することが好ましい又は必要であることがある。例えば、水素ガス用の蓄積媒体として用いられる液体が当該技術分野において知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスがそのような液体蓄積媒体から脱着するとき、液体自身は、脱着ガスの流れに飛沫同伴し得たり、液体蓄積媒体を含む閉じ込め容器の外部へと移動し得る。このことは、非常に望ましくないことである。第1に、飛沫同伴液体は、放出されたガスを測定又は処理する分析その他の装置を汚染し得る。そのような装置のクリーニング、修理、及び/又は取り替えは、時間を浪費するものであって且つお金のかかる処理である。第2に、飛沫同伴液体が汚染された容器から取り除かれるとき、液体蓄積媒体は劣化する。それにより、液体の全体的なガス収着能力と液体上で実行されるガス収着分析の正確性とを低減させるが、これは、計り得ない量の飛沫同伴液体が取り除かれるからである。液体又は固体サンプルの成分が、ガス脱着中に揮発し、気相中、液体汚染容器の外部へ運ばれ、そして、汚染容器の外部及び/又は分析装置の内部で凝縮するとき、分析装置の汚染と液体又は固体サンプルの劣化とが発生し得る。
【0005】
したがって、ガスが材料サンプルから脱着するとき、材料サンプルの液体部分又は蒸気部分が取り除かれることを防止する液体サンプルホルダが、当該技術分野には求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、ガスが材料サンプルから脱着されるとき、材料サンプルの液体又は蒸気部分が除去されることを防止する液体サンプルホルダの設計を提案するものである。液体サンプルホルダは、サンプル貯蔵部と液体捕集部とを含み、双方とも筐体に含まれており、ガス流路は、液体捕集部を通過して、サンプル貯蔵部を筐体の上部部分に位置するガスポートに流体連通結合するように構成されている。
【0007】
開示された装置のひとつの効果は、液体材料サンプルの吸着テストが、液体材料サンプルの液体又は蒸気部分が吸着テスト装置を汚染することなく、実施され得ることである。
【0008】
本発明の上記特徴が詳細に理解され得るように、上で簡単に要旨を説明した本発明のより具体的な説明を、その一部を添付の図面に示した実施形態を参照することにより提示する。しかし、添付の図面は本発明の典型的な実施形態のみを示すものであり、したがって、発明の範囲を限定するものと考えてはならず、本発明は同様の効果を有する他の実施形態を認め得るということに留意されたい。
【0009】
明瞭化のため、複数の図面にわたって共通の同一の要素を示すために、可能な範囲で同一の参照番号を用いた。ある一実施形態の特徴をさらに説明することなく他の実施形態に組み込んでもよいものと考えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の各実施形態は、作動流体が材料サンプルから脱着されるとき、サンプル貯蔵部から材料サンプルの液体又は蒸気部分が除去されることを防止する装置を企図しているものである。該装置は、サンプル貯蔵部と液体捕集部とを含み、双方とも1つの筐体内に含まれている。液体捕集部は、サンプル貯蔵部の上部に位置しており、そして、1つの流路は、液体捕集部を通過して、サンプル貯蔵部と筐体の上部に位置するガスポートとを流体連通結合するように構成されている。一実施形態では、液体捕集部はバッフルアセンブリを含んでいる。別の実施形態では、液体捕集部は、多孔性で網目状の高表面積材料を含んでいる。また別の実施形態では、液体捕集部は、第1段階としてのバッフルアセンブリと第2段階としての網目状の高表面積材料とを含んでいる。サンプル貯蔵部に含まれる材料サンプルと脱着温度及び脱着圧力とに基づいて、液体捕集部の構成は、それにしたがって、そのサンプルの液体成分及び/又は蒸気成分が筐体から出ていくことを防止するために選択され得る。それにより、材料サンプルから脱着された作動流体と材料サンプルとを分離する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体サンプルホルダの断面図を概略的に示している。液体サンプルホルダ100は、筐体103内に含まれるサンプル貯蔵部101及び液体捕集部102を含んでいる。サンプル貯蔵部101は、大量のガスの収着及び脱着を可能とする液体材料サンプルを保持するように構成されている。ここで、ガス収着とは、材料サンプルに又は材料サンプルへ、ガスが、吸収、吸着、脱着、化学吸着、物理吸着、及び/又は溶解することであると定義する。液体捕集部102は、サンプル貯蔵部101上に位置しており、サンプル貯蔵部101中の材料サンプルから脱着された作動流体のための曲がった流路を作り、サンプル貯蔵部101において作動流体は気体又は超臨界的な液体であり得る。液体捕集部102における曲がった流路は、脱着された作動流体がガスポート106を介して筐体103から出ていくことを可能としながら、作動流体中の飛沫同伴液滴がガスポート106を介して筐体103から出ていくことを防止する。本発明の各実施形態は、飛沫同伴液体が、充分な運動量を伴って、ガスポート106を介して液体サンプルホルダ100から出ていかないような液体捕集部102の各構成を企図している。液体捕集部102の異なる各構成は、図3A、3B、4、5及び6を用いて下記に説明されている。液体捕集部102は、サンプル貯蔵部101の上に位置しているので、液体捕集部102によって捕集された飛沫同伴液体材料サンプルの一部又は全部は、下方に流れてサンプル貯蔵部101に戻る。
【0012】
ガスポート106を除いて、筐体103は、封止された容器であって、ガス収着テストに関連する上昇温度及び圧力下においてさえ、気密及び真空気密となるように構築されている。そのために、筐体103は、該筐体103の構成部分間に、特別のシール部材及びシール表面を含むことができる。そのような特別のシール部材及びシール表面は当該技術分野において知られており、例えば、研磨されて金属表面に対して押しつけられた金属面シールガスケット、つまり、VCR(登録商標)フィッテイング、ナイフ様のシールに対して押しつけられた柔らかい金属ガスケット、取り替え可能な使い捨てガスケット、オー(O)リングなどである。同様に、ガスポート106は、気密及び真空気密状態で、当該技術分野にて知られたVCR(登録商標)フィッティングなどの手段を用いて、ガス線やガス導管を介して外部の装置と流体連通結合するように構成されている。このように、サンプル貯蔵部101における材料サンプルから脱着された作動流体は、筐体103に向かって又は筐体103から外部に向かって生じる重大な漏れを全く発生させることのない状態、又はガスポート106との流体結合がなされた状態で、外部の装置へ導かれる。ガスポート106と流体結合がなされた外部の装置は、数ある中でも特に、シーベルト装置(Sieverts' device)又は他のガス収着分析装置、質量分析装置、ガスクロマトグラフを含んでいてもよい。筐体103に向かって又は筐体103から外部への少量の漏れでさえ、そういった装置によって実行される分析の正確性をかなり低下させ得るものである。
【0013】
上記に照らして、筐体103は、収着テストの範囲内においてガス放出を生じず且つその収着テストの範囲内で生じる温度変化及び圧力変化に耐え得るステンレス鋼又は他の耐久材料から構成されている。その結果、一実施形態において、ガスポート106の開口部の表面積は、筐体103が1気圧よりも大きい圧力で保持されたときに漏れを避けることができるように、最小化されている。そのような実施形態では、筐体103の内部断面は、より大きな機械的強度のために円形状にでき、筐体103の長さの筐体103の内径に対する比は、10対1か、それ以上であってもよい。
【0014】
分解及びクリーニングの容易化のために、一実施形態における筐体103は、液体捕集筐体112及び貯蔵筐体111を含む、互いにネジ止めされる2つ又は3つの部品に分解され得る。そのような形態において、液体捕集筐体112及び貯蔵筐体111は互いにネジ止めされており、その接合面109にてシールが形成されている。液体捕集筐体112及び貯蔵筐体111は、図3Aに示すように、雌雄ナット構成で互いにネジ止めされてもよい。代わりに、図1に示すように、第3の部品、つまり、セパレータ104が、液体筐体112と貯蔵筐体111との間のネジ結合に用いられてもよい。液体筐体112と貯蔵筐体111とは互いに、筐体103を構成するようにセパレータ104上にネジ止めされてもよい。
【0015】
液体捕集筐体112及び貯蔵筐体111は、終板に溶接されたステンレス鋼からそれぞれ形成されている。代わりに、液体捕集筐体112及び貯蔵筐体111はそれぞれ単一の材料から機械加工されてもよい。当業者は、ここで説明されたように、筐体103のための他の製造方法をすぐに考案することができる。接合面109に形成されたシールは、高温及び高圧適用下、例えばVCR(登録商標)フィッティングなどに適した当該技術分野で知られた、他のシール部材及びシール表面を含んでもよい。液体捕集筐体112は、液体捕集部102の構成部材を含むように構成されている。貯蔵筐体111は、液体捕集筐体112と組み合わされたときサンプル貯蔵部101を形成する。
【0016】
収着テストに先立って、材料サンプルは、通常、アルゴンパージしたグローブボックス又はその他の分離チャンバなどの制御された環境下で取り扱われることにより、雰囲気中の水分と他の汚染物質とから分離される。貯蔵筐体111は、筐体103の分離構造の要素であって、筐体103を構成するために液体捕集筐体112と共にすぐにネジ止めされ得るものである。このため、筐体103のこの単純なネジ止めデザインは、材料サンプルを貯蔵筐体111へ充填し、且つ、グローブボックス内に含まれている間に筐体103を続いて組み立てることを容易にしている。
【0017】
一実施形態では、筐体103は、図1に示すように、フローリストリクター105を用いたセパレータ104を含んでいる。セパレータ104は、液体捕集部102の構造を補助し、サンプル貯蔵部101から液体捕集部102を分離し、そして、脱着ガスに飛沫同伴された液体サンプルを分離するための第1段階として機能できる。セパレータ104はまた、貯蔵筐体11と液体捕集筐体112とがネジ止めされてアセンブリ筐体103を構成するようにネジ結合として機能できる。セパレータ104は、筐体113のための上述した材料と同じ材料から形成されてもよい。フローリストリクター105は、貯蔵部101から液体捕集部102への脱着ガスの流れを遅らせ、それにより、液体捕集部102へ浸入する飛沫同伴液体の量を低減させる。1つの実施形態では、フローリストリクター105は、当該技術分野において知られたフリットされた焼結金属フィルター又は金属フィルターガスケットのような、インラインフィルターである。そのような焼結金属フィルターの適切な材料成分及び穴サイズは、材料サンプル、作動流体、並びに脱着温度及び圧力に基づいて、当業者によってすぐに選択され得るものである。
【0018】
一実施形態では、ガスポート106はまた、フローリストリクター107を含んでいる。フローリストリクター107は、液体捕集部102から筐体103の外部への脱着ガスの流れを遅らせ、それにより、飛沫同伴液体が筐体103から強制的に出ていく可能性を低減している。フローリストリクター107は、1つ又はそれ以上の小さい径の穴又はガスフィルターを含んでいてもよく、実質的には、上述したフローリストリクター105と同様である。
【0019】
材料サンプルは、各テストの間中、液体サンプルホルダ100の内部に保持されているので、複数のテストは、液体サンプルホルダ100の分解又は取り替えを要することなく、同じ材料サンプルに対して実行されてもよい。このため、液体サンプルホルダ100は、多くの異なる条件の下で、材料サンプルの収着特性テストを効果的に且つ経済的に行うことを容易にする。
【0020】
一実施形態において、液体サンプルホルダ100は、シーベルト装置又は燃料電池などの外部の分析装置又はガス利用装置に対して、ガスポート106を介して、直接接合してもよい。そのような実施形態において、液体サンプルホルダ100は、加圧容器として機能する。代わりに、液体サンプルホルダ100は、材料サンプルが充填された後に、加圧容器に挿入されてもよい。図2は、本発明の一実施形態に係る液体サンプルホルダを含むように構成された加圧容器アセンブリの分解図である。加圧容器アセンブリ200は、圧力容器210、リデューサフィッティング(reducer fitting)220、及び分離バルブ230を含んでいる。明瞭化のために、圧力容器210及びリデューサフィッティング220の一部を断面で図2に示している。圧力容器210は、図1における液体サンプルホルダ100と実質的に同様の液体サンプルホルダを含むように構成されたネジ付きフィッティング213及び内部空間212を含んでいる。一実施形態において、ネジ付きフィッティング213は、標準的な1インチのVCR(登録商標)のフィッティングであり、内径は0.75インチである。別の実施形態では、圧力容器210の内部断面は、正方形、矩形、又は液体サンプルホルダに対応するように構成された他の形態である。圧力容器210は、液体サンプルホルダのための圧力容器として機能するように構成されており、それゆえ、高温及び高圧に耐えるように構成され且つガス放出の影響を受けないように耐久性のある材料で構成されている。その結果、一実施形態では、ネジ付きフィッティング213の開口部の表面積は、圧力容器210が大気圧よりも大きい圧力で保持されたとき漏れを回避するために最小化されている。そのような実施形態において、圧力容器210の内部断面は機械的強度のために円形状であってもよく、そして、圧力容器210の長さの圧力容器210の内径に対する比は、10対1かそれ以上であってもよい。リデューサフィッテイング220は、ねじ付きフィッティング213と咬み合うように適合されたねじ付きフィッティング221と、溶接接続223などの気密接続によってねじ付きフィッティング221に機械的に結合された直径低減フィッティング222とを備えている。分離バルブ230は、分析装置又は他の外部装置から圧力容器210の流体連通状態の結合及び分離を行う。分離バルブ230は、ダイアフラムバルブ等の手動式又は自動式の閉鎖バルブであり、高圧適用下で無漏シーリングが実現するように構成されている。
【0021】
加圧容器アセンブリ200はまた、グローブボックス又は他の分離チャンバにおいて組み立て及び分解を容易に行えるように設計されている。なぜなら、単一のネジ付き結合の分離により、液体サンプルホルダへアクセスできるからである。加圧容器アセンブリ200は、その内部に含まれる液体サンプルホルダ用の圧力容器として機能するので、そのような液体サンプルホルダの設計要件はあまり厳しいものではない。より軽い重さの液体サンプルホルダが有利であり、これは、液体サンプルホルダに含まれる材料サンプルの質量は、より軽い重さの液体サンプルホルダを用いて、より正確に測定されるからである。加えて、加圧容器200への液体サンプルホルダの挿入は、液体サンプルホルダを構成する液体捕集筐体と貯蔵筐体との間に形成される例えば図1の接合面109におけるシールのような高圧シールの必要性をなくす。代わりに、加圧容器アセンブリ200に要求される貼り直し可能な高圧シールのみが、ネジ付きフィッティング221と圧力容器210との間にある。
【0022】
図3Aは、本発明の一実施形態に係るバッフルアセンブリを持つ液体捕集部を備えた液体サンプルホルダの断面図を概略的に示している。バッフルアセンブリ301は、サンプルホルダ101に含まれる材料サンプルから脱着された作動流体のための曲がった流路を共に形成する複数のバッフル302を含んでいる。脱着プロセスは、エネルギーを要するものであって、かなりの泡立ちを生むもの、つまり、作動流体と材料サンプルとの2つ状態の混合であるので、材料サンプルの液滴は、作動流体に容易に飛沫同伴され得る。複数のバッフル302によって作られる曲がった流路は、液滴を作動流体から分離する。これは、作動流体に飛沫同伴された液滴がガスポート106を介して液体サンプルホルダ300から出ていくことを防止する一方で、作動流体を液体サンプルホルダ300から出ていかせることによって実現される。作動流体と飛沫同伴液的とが分離されるのは、図3B及び図3Cに示すように、サンプル貯蔵部101とガスポート106との間に設けられた遠回りの流路によると共に、液滴の流れ方向とは実質的に反対方向に向いた複数の表面の位置取りによるものである。
【0023】
図3Bは、本発明の一実施形態に係る単一のバッフル302の等尺性の図である。バッフル302は、上部傾斜表面310、少なくともひとつのガス流開口部320、及び下部表面330を含んでいる。図3Cは、本発明の一実施形態に係るバッフルアセンブリ301及び液体捕集筐体112の概略部分断面図である。曲がった流路350は、図示された連続するガス流開口部320を追従することにより、各バッフル302の周りを通過している。上記に見られるように、各ガス流開口部320は、隣り合う各ガス流開口部320に対して、少なくとも10°、例えば90°、135°、180°、その他の角度の角変位を持って位置取りされている。このように、隣り合う2つのガス流開口部320は互いに並ぶことはなく、且つ、サンプル貯蔵部101とガスポート106との間を真っ直ぐ通るガス流路は存在していない。代わりに、1つのバッフル302のガス流開口部320を通過する飛沫同伴液滴は、次のバッフル302の下部表面330に真っ直ぐ進んでぶつかる。上部傾斜表面310は、液滴がサンプル貯蔵部101の下方に向かって流れ戻るように方向付けられている。バッフル302の上部傾斜表面310上に集められた液滴をバッフル302のガス流開口部320に向かって方向付けるために、図示するような下向きの角度が存在する限り、上部傾斜表面310に対して特定の角度が要求されるものではない。
【0024】
動作中、液体サンプルホルダ300に充填された材料サンプルの質量は、充填の前後の液体サンプルホルダ300の重さを計ることによって決定される。その結果、材料サンプルの全ての液体小滴が貯蔵室101へ完全に流れ戻ることは、液体サンプルホルダ300の適切な動作にとって必ずしも必要のないことである。材料サンプルの元々の質量が液体サンプルホルダ300の内部のどこか、つまり、貯蔵室101及び/又は液体捕集部102内、に含まれている限り、材料サンプルの全体の質量は作動流体で占められ得るものであって且つ材料サンプルは液体サンプルホルダ300に接続された装置を汚染し得ない。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態に係る多孔性の高表面積材料401を持つ液体捕集部を備えた液体サンプルホルダ400の断面図を示している。多孔性の高表面積材料401は、例えば300℃又はそれよりも大きい収着テストの典型的な上昇温度において、作動流体と相性のよい如何なる材料であってもよい。多孔性の高表面積材料401の物理編成は、多孔性の網目状、粉末状、単一の物質の塊、又は液体捕集筐体112を実質的に充填する他の高表面積配置であってもよい。多孔性の高表面積材料は多孔性であるので、脱着された作動流体のための流路は、多孔性の高表面積材料を真っ直ぐ通過する。このようにして、作動流体における飛沫同伴液滴は、作動流体がガスポート106から出る前に捕集される。加えて、多孔性の高表面積材料401は、飛沫同伴液体の捕集を高めるために吸収材料及び/又は吸着材料を含んでもよい。作動流体のための流路は、多孔性の高表面積材料401を真っ直ぐ通過するので、小さすぎて作動流体に対して充分な運動量を持たず、このため、例えば図3A〜3Cのバッフルアセンブリ301のようなバッフルアセンブリによって除去されないかもしれない液滴を含む微少液滴は、作動流体から除去されるかもしれない。そのような液滴は、径が10ミクロン台かそれよりも小さいが、それらの液滴は完全に作動流体に飛沫同伴しているので、バッフルを通過する際バッフルアセンブリの表面にぶつからないかもしれない。
【0026】
一実施形態では、多孔性の高表面積材料401は、スチール、コットン、又は、ポリマーウール又はポリマーメッシュといった不活性材料から構成されてもよい。別の実施形態では、多孔性の高表面積材料401は、網目状の1つ又はそれ以上の繊維状の材料、1つ又はそれ以上の層としてフェルト材料が凝集粘着されたものか、バルク構成に緩く押しつけられたものであってもよい。繊維状の材料は、セラミック、ポリマー、植物、及び/又はガラス繊維を含んでもよい。一実施形態では、多孔性の高表面積材料401は、数ある中でも特に、アンモニア、アルコール、一酸化炭素、ボラン、シラン、及び揮発性の炭化水素を含む材料サンプルから放出された揮発性の汚染物質の吸着及び/又は化学反応を起こすように選択された材料を含んでいる。多孔性の高表面積材料401の一部又は全部を構成してもよい化学的反応吸収材料及び吸着材料は、活性炭素、ゼオライト、塩、ナノカーボン材料、有機金属組成などを含んでいる。
【0027】
図5は、本発明の一実施形態に係る二段階液体捕集部501を備えた液体サンプルホルダ500の断面図を概略的に示している。二段階液体捕集部501は、図示するように液体捕集筐体112に収容されており、バッフルアセンブリ504と高表面積材料505とを含んでいる。バッフルアセンブリ504は、構成において図3Aのバッフルアセンブリ301と実質的に同様である。バッフルアセンブリ504は作動流体からより大きな液滴を除去し、それゆえ、液滴除去の第1段階として機能する。高表面積材料505は、構成において図4の多孔性の高表面積材料401と実質的に同様である。高表面積材料505は、作動流体に残存しているより小さな液滴を除去し、それゆえ、液滴除去の第2段階として機能する。一実施形態において、高表面積材料505は、作動流体から揮発性の汚染物質、つまり、材料サンプルの揮発性成分を除去するために選択された吸着材料及び/又は化学的反応材料を含んでいる。
【0028】
一実施形態において、液体サンプルホルダは、脱着された作動流体からの汚染物質の除去を強化するためにリモート第2段階セパレータを含んでもよい。図6は、本発明の一実施形態に係るリモート第2段階セパレータ650を備えた液体サンプルホルダ600の断面図を概略的に示している。リモート第2段階セパレータ650は、多孔性の高表面積材料401を含むと共に輸送ライン605によって液体捕集筐体112のガスポート106に流体連通結合されている。筐体612は、構成において図1の筐体103と実質的に同様である。リモート第2段階セパレータ650は、筐体103と熱的に分離されているので、筐体612及び多孔性の高表面積材料401は、収着及び脱着テストの一部として上昇するかもしれない筐体103内の温度と異なる温度にて保持され得る。一実施形態では、リモート第2段階セパレータ650は、筐体612及び多孔性の高表面積材料401の温度をさらに低減させるための冷却コイル606を含んでいる。別の実施形態では、リモート第2段階セパレータ650は、冷却液体又は冷却ガス中に含まれるようにしてもよい。筐体612及び多孔性の高表面積材料401が筐体103内の温度よりも実質的に低い温度で保持されている状態で、多孔性の高表面積材料401は、作動液体に含まれる揮発性の汚染物質のための効果的な凝縮表面として機能してもよい。これは、多孔性の高表面積材料401が作動液体と接触する大変大きい表面積を有すると共に、作動流体が相対的に低い速度で多孔性の高表面積材料401を通過するからである。
【0029】
動作中、作動流体からのより大きな液滴の分離は、図3A〜3Cを用いて上述したように、バッフルアセンブリ301において行われる一方で、より小さな液滴及び/又は揮発性の汚染物質は、リモート第2段階セパレータ650によって作動流体から除去される。一実施形態では、多孔性の高表面積材料401はまた、作動流体から揮発性の汚染物質を除去するために選択された吸着材料及び/又は化学的反応材料を含んでいる。このため、リモート第2段階セパレータ650は、作動流体から汚染物質を熱的に、化学的に、及び機械的に除去してもよい。化学反応材料は、一旦使い果たされると、リモート第2段階セパレータ650から容易に除去され得るものであって且つ連続するテスト用に取り替えられ得る。ある実施形態では、リモート第2段階セパレータ650は、作動流体に飛沫同伴された微少液滴を捕集するための一又はそれ以上のフィルター607を含んでおり、リモート第2段階セパレータ650へ浸入する作動流体の速度を低下させ、そして、例えば多孔性の高表面積材料401によって放出される繊維のような微粒子材料が筐体612から出ていくことを防止する。
【0030】
多くのガス収着用の材料サンプルは、一定の汚染物質の微少濃度に曝されることでダメージを受け得る。例えば、金属水素化物は、ppmレベルの水分濃度又は酸素濃度によって不活性化され得、サンプルの表面に吸着バリアを作り出すと共にいかなる連続する吸着及び脱着テストを大いに不正確にする。一実施形態では、リモート第2段階セパレータ650は、作動ガスがサンプル貯蔵部101における材料サンプルへ運ばれるとき、該作動ガスを純化するために用いられてもよい。このように、汚染された作動流体によって引き起こされる材料サンプルに対するダメージは避けられ得る。このため、液体サンプルホルダ600は、固体材料サンプルの収着及び脱着テストにもまた有利に用いることもできる。
【0031】
上記説明は本発明の実施形態に向けられたものであるが、本発明の他の実施形態及びさらなる実施形態を、本発明の基本的な範囲から逸れることなく考えてもよく、本発明の範囲は特許請求の範囲により決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る液体サンプルホルダの概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る液体サンプルホルダを含むように構成された加圧容器アセンブリの分解図である。
【図3A】図3Aは、本発明の一実施形態に係るバッフルアセンブリを持つ液体捕集部を備えた液体サンプルホルダの概略断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の一実施形態に係る単一のバッフルの等尺性の図である。
【図3C】図3Cは、本発明の一実施形態に係るバッフルアセンブリ及び液体捕集筐体の概略部分断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る高表面積材料を持つ液体捕集部を備えた液体サンプルホルダの概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る二段階液体捕集部を備えた液体サンプルホルダの概略断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係るリモート第2段階セパレータを備えた液体サンプルホルダの概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体サンプルを保持するように構成されたサンプル貯蔵部と、
前記サンプル貯蔵部を囲むと共に、作動流体を前記サンプル貯蔵部に保持された前記液体サンプルに届けるように構成された開口部を含む筐体と、
前記筐体内に含まれ、前記サンプル貯蔵部の上に配置された液体捕集部と、
前記液体捕集部を通じる流路を規定すると共に、前記作動流体が前記液体サンプルに届くように、前記サンプル貯蔵部を前記液体サンプルホルダの前記開口部に流体連通結合する導管とを備えている、液体サンプルホルダ。
【請求項2】
ネジ結合により、前記液体捕集部と前記サンプル貯蔵部とを機械的に接続している、請求項1に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項3】
前記ネジ結合にて前記液体捕集部と前記サンプル貯蔵部とを機械的に接続することによって形成された真空気密高圧シールをさらに備えている、請求項2に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項4】
前記流路に配置されたフローリストリクターをさらに備えている、請求項1に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項5】
前記フローリストリクターは、前記流路における前記サンプル貯蔵部と前記液体捕集部との間に配置されている、請求項4に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項6】
前記フローリストリクターは、前記開口部に配置されている、請求項4に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項7】
前記フローリストリクターは、インラインガスフィルターを備えている、請求項4に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項8】
前記液体捕集部は、複数のバッフルを備えており、
前記複数のバッフルの各々が有するガス流開口部は、隣り合う前記バッフルの前記ガス流開口部に対して少なくとも10°傾いた位置に設けられている、請求項1に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項9】
前記液体捕集部は、多孔性の高表面積材料を備えている、請求項1に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項10】
前記多孔性の高表面積材料は、前記液体貯蔵部に含まれる前記液体サンプルから放出された揮発性の汚染物質と反応するように選択された化学反応材料を備えている、請求項9に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項11】
前記多孔性の高表面積材料は、吸収材料又は収着材料を備えている、請求項9に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項12】
多孔性の高表面積材料を含むと共に、前記開口部に流体連通結合されている2段階セパレータをさらに備えている、請求項1に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項13】
前記多孔性の高表面積材料は、前記液体貯蔵部に含まれる前記液体サンプルから放出された揮発性の汚染物質と反応するように選択された化学反応材料を備えている、請求項12に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項14】
前記2段階セパレータは、前記筐体から熱的に分離されていると共に、前記筐体内よりも低い温度にて保持されるように構成されている、請求項12に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項15】
前記筐体を封止して含むように構成されていると共に、単一のネジ結合によって外部装置と前記筐体とを流体連通結合するように構成されている圧力容器をさらに含んでいる、請求項1に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項16】
液体サンプルを含むように構成されたサンプル貯蔵部と、
前記サンプル貯蔵部の上に配置されていると共に、ネジ結合により前記サンプル貯蔵部と機械的に接合されている液体捕集部と、
前記液体捕集部を通じる流路を規定すると共に、作動流体が前記液体サンプルに届くように、前記サンプル貯蔵部を前記液体サンプルホルダの開口部に流体連通結合する導管とを備えている、液体サンプルホルダ。
【請求項17】
前記ネジ結合にて前記液体捕集部と前記サンプル貯蔵部とを機械的に接続することによって形成された真空気密高圧シールをさらに備えている、請求項16に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項18】
前記液体捕集部は、複数のバッフルを備えており、
前記複数のバッフルの各々が有するガス流開口部は、隣り合う前記バッフルの前記ガス流開口部に対して少なくとも90°傾いた位置に設けられている、請求項16に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項19】
前記液体捕集部は、多孔性の高表面積材料を備えている、請求項16に記載の液体サンプルホルダ。
【請求項20】
多孔性の高表面積材料を含むと共に、前記開口部に流体連通結合されている2段階セパレータをさらに備えている、請求項16に記載の液体サンプルホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−122097(P2009−122097A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−275269(P2008−275269)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(508108604)ハイ−エナジー エルエルシー (5)
【氏名又は名称原語表記】HY−ENERGY LLC
【住所又は居所原語表記】8440 Central Avenue,Suite 2B Newark,CA 94560 USA
【Fターム(参考)】