説明

液体中の溶存気体濃度の測定方法、測定装置及び窒素ガス溶解水の製造装置

【課題】流路を流れる液体中の溶存気体濃度を、一括して飽和度の合計として求めることができ、長期間にわたって安定して測定し得る溶存気体濃度の測定方法、測定装置、及び、所定濃度の窒素ガス溶解水を安定して製造することができる窒素ガス溶解水の製造装置を提供する。
【解決手段】気体透過膜によって分離した液相室に被検液を通液し、気相室の凝縮液を排出する操作を実施しつつ、液相と平衡状態にある気相の真空度を測定する液体中の溶存気体濃度の測定方法、密閉容器内に気体透過膜を設けて液相室と気相室に区画し、液相室に被検液を導入し、気相室に圧力計と凝縮液排出管を設け、圧力計により気相室の真空度を測定する溶存気体濃度の測定装置、及び、脱酸素された超純水と窒素ガスが供給されるガス溶解装置への水供給配管又は窒素ガス溶解水排出管に連絡して該測定装置を設け、溶存気体濃度に応じて窒素ガス供給量を調整する窒素ガス溶解水の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の溶存気体濃度の測定方法、測定装置及び窒素ガス溶解水の製造装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、流路を流れる液体中の溶存気体濃度を、単一種・複数種に関わらず一括して飽和度の合計として、簡易に求めることができ、特に水中の溶存気体濃度の測定に適している液体中の溶存気体濃度の測定方法、測定装置、及び、所定濃度の窒素ガスを溶解した窒素ガス溶解水を簡易に安定して製造することができる窒素ガス溶解水の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水処理などの液体処理技術において、溶存気体濃度の制御は重要とされていた。例えば、半導体用シリコン基板、液晶用ガラス基板などの表面から異物を除去するウェット洗浄工程で使われる超純水は、基板表面の自然酸化を抑制するために、溶存酸素ガスを極微量まで低減することが求められている。溶存酸素ガスについては、真空脱気、窒素脱気、触媒脱気などによってppbレベルまで低減することができ、既存の溶存酸素計を用いてその濃度を精密に計測することができる。近年、ウェット洗浄の革新が進み、特定の気体のみを所定量溶解した、いわゆる機能性洗浄水が適用されるようになってきた。例えば、水素ガスのみを飽和濃度付近まで溶解させた洗浄水は、基板上の微粒子除去に極めて高い効果を発揮する。窒素ガスを飽和濃度付近まで溶解させた窒素ガス溶解水も、水素ガス溶解水には及ばないものの、高い洗浄効果を発揮することが知られている。
【0003】
このような特定の気体のみを高濃度に効率よく水に溶解させるためには、予備脱気処理により、もともと溶存している気体を予め除去しておくことが望まれる。この予備脱気処理の対象は、酸素ガス、窒素ガスなど、全ての溶存気体であり、正確に処理の程度を求めるには、複数の計器を用いて、少なくとも溶存酸素ガスと溶存窒素ガスの両方の濃度を測定する必要があった。脱酸素されていない超純水を洗浄用機能水の原水とする場合は、予備脱気処理を気体の種類による選択性のない方法で行えば、測定方法が確立されている溶存酸素ガス濃度の計測によって、全ての溶存気体を対象とする脱気処理の程度をおおよそ推定することができる。しかし、近年の電子産業工場で用いられているように、脱酸素された超純水を機能性洗浄水の原水とする場合には、もともと溶存酸素ガス濃度がppbレベルと低くなっているために、予備脱気処理の程度を溶存酸素ガス濃度から推定することは不可能であり、溶存酸素計に比べて性能が劣る上に高価である溶存窒素計に頼らざるを得ない状況にあった。
【0004】
これに対し、本発明者らは、密閉容器内に気体透過膜を設けて、一方の側を液相室、他方の側を気相室に区画し、液相室に被検液を導入する導入管と排出する排出管を設け、気相室に真空度を測定する圧力計を設けた装置を用い、液相と平衡状態にある気相の真空度を測定することにより、液体中の溶存気体濃度を容易に測定し得ることを見いだし、新規な測定計器と測定方法を確立した(特許文献1)。この技術を用いると、非常に簡単な道具立てで、精度よく液体に溶存する気体の濃度を一括して求めることができる。しかるに、この装置による測定を連続的に長期間にわたって実施すると、ある時点を境に正確な測定が全く不可能になるという問題が発生した。
【特許文献1】特開2000−65710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、流路を流れる液体中の溶存気体濃度を、単一種・複数種に関わらず一括して飽和度の合計として、簡易に求めることができ、特に水中の溶存気体濃度の測定に適し、長期間にわたって安定して測定し得る液体中の溶存気体濃度の測定方法、測定装置、及び、所定濃度の窒素ガスを溶解した窒素ガス溶解水を簡易に安定して製造することができる窒素ガス溶解水の製造装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、液相と気相が共存する系で、液相と気相の気体量が平衡状態になり、気相の気体量を圧力として測定する際に、液相を流れる被検液を源とする蒸気が気相側に入り込み、一部が凝縮することにより、溶存気体濃度の測定に用いる密閉容器の気相側に、凝縮液が次第に溜まっていくことが、測定が不可能になる原因であり、気相室に経時的に溜まっていく凝縮液を排出する機能を付与することにより、先に発明した気体透過膜を内蔵した密閉容器と圧力計とを用いる溶存気体濃度の測定が、長期間にわたって安定して行い得ることを見いだし、実用的な凝縮液排出機構を具体化し、その運用方法を確立することにより本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)気体透過膜によって液相と気相を分離して液相室に被検液を通液し、気相室の凝縮液を排出する操作を実施しつつ、液相と平衡状態にある気相の真空度を測定することを特徴とする液体中の溶存気体濃度の測定方法、
(2)気相室の凝縮液を、押し出し、吸引又は自然流下のいずれかによって排出する操作を測定の合間に行う(1)記載の液体中の溶存気体濃度の測定方法、
(3)通液される被検液と接する気体透過膜の面積をA(cm2)、通液される被検液の流量をB(cm3/min)としたとき、A/B=1〜500(min/cm)である(1)又は(2)記載の液体中の溶存気体濃度の測定方法、
(4)液相と平衡状態にある気相の真空度を測定するとともに、被検液の液温を測定し、該真空度と該液温とに基づき溶存気体濃度を求める(1)、(2)又は(3)記載の液体中の溶存気体濃度の測定方法、
(5)被検液が、純水、超純水又は洗浄用水のいずれかである(1)、(2)、(3)又は(4)記載の液体中の溶存気体濃度の測定方法、
(6)密閉容器内に気体透過膜を設けて、一方の側を液相室、他方の側を気相室に区画し、液相室に被検液を導入する導入管と排出する排出管とを設け、気相室に凝縮液を排出する凝縮液排出管を設けるとともに、気相室の真空度を測定する圧力計を設けてなることを特徴とする液体中の溶存気体濃度の測定装置、
(7)気相室の容量が、液相室の容量の0.05〜10倍である(6)記載の液体中の溶存気体濃度の測定装置、
(8)被検液の液温を測定する温度計を設け、測定された被検液の液温と測定された気相室の真空度とを入力して溶存気体濃度を求める演算部を設けてなる(6)又は(7)記載の液体中の溶存気体濃度の測定装置、及び、
(9)ガス溶解装置、脱酸素された超純水をガス溶解装置に供給する水供給配管、窒素ガスをガス溶解装置に供給するとともに窒素ガス供給量を調整するガス供給量調整手段を備えた窒素ガス供給管、窒素ガスを溶解した水をガス溶解装置から排出する窒素ガス溶解水排出管を有し、該水供給配管又は該窒素ガス溶解水排出管に連絡して(6)記載の液体中の溶存気体濃度の測定装置を設け、該溶存気体濃度の測定装置で測定した溶存気体濃度に応じて窒素ガス供給量を調整することを特徴とする窒素ガス溶解水の製造装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の測定方法及び測定装置を適用することにより、近年注目されるようになった超純水中の溶存気体濃度の合計を、一括して極めて容易に測定することができるので、その管理が容易になる。本発明の測定方法及び測定装置を用いて求められる値は、個々の気体成分の絶対的な濃度ではなく、飽和度の合計であるが、後段で特定の気体を溶解する処理を行う場合の溶解効率を直接的に反映する数値であり、極めて有用な情報である。本発明の窒素ガス溶解水の製造装置を用いることにより、所定濃度の窒素ガスを溶解した洗浄水を長期間にわたって安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の液体中の溶存気体濃度の測定方法においては、気体透過膜によって液相と気相を分離して液相室に被検液を通液し、気相室の凝縮液を排出する操作を実施しつつ、液相と平衡状態にある気相の真空度を測定することにより、液体中の溶存気体濃度を求める。本発明方法において、真空度は、気相室の圧力として測定することができ、大気圧を0とするゲージ圧又は絶対真空の圧力を0とする絶対圧のいずれによっても表すことができる。本発明方法において、気相室の凝縮液を排出する頻度に特に制限はなく、例えば、定期的若しくは不定期的に排出することができ、又は、凝縮液が一定量溜まったことを検知したときに排出することができる。
【0010】
液相と気相が共存する系では、液相と気相の気体が平衡状態となり、液相の溶存気体濃度は気相の気体量、すなわち気体の分圧に比例する。水中に溶解している気体の濃度を、圧力0.1MPa、温度25℃における気体の溶解度で除した値を、気体の飽和度と定義する。圧力0.1MPa、温度25℃において、空気と接して平衡状態にある水は、酸素ガス8.1mg/L及び窒素ガス13.8mg/Lを溶解している。圧力0.1MPa、温度25℃において、水への酸素ガスの溶解度は40.4mg/Lであり、窒素ガスの溶解度は17.6mg/Lであるので、空気と接して平衡状態にある水の酸素ガスの飽和度は0.2倍となり、窒素ガスの飽和度は0.8倍となり、酸素ガスの飽和度と窒素ガスの飽和度の合計は1.0倍となる。この水を脱気して、酸素ガスの濃度を0.8mg/L、窒素ガスの濃度を1.4mg/Lとすると、酸素ガスの飽和度と窒素ガスの飽和度の合計は0.1倍となり、この水と平衡状態にある気相の圧力は0.01MPa、すなわち真空度−0.09MPaとなる。したがって、水と平衡状態にある気相の真空度を測定することにより、真空度が−0.09MPaであれば、その水の気体の飽和度は0.1倍であり、真空度が−0.07MPaであれば、その水の気体の飽和度は0.3倍であるとして、溶存気体濃度を一括して飽和度の単位で求めることができる。水蒸気圧も気相室の真空度に影響するが、水蒸気圧は25℃で0.003MPaなので、多くの場合は無視してもほとんど差し支えない。しかし、厳密な測定を必要とする場合、とりわけ、真空度が高く、気相室の絶対圧が低い場合には、水蒸気圧を考慮に入れることが好ましい。
【0011】
本発明方法においては、液相と気相を気体透過膜を介在させて分離するので、気液界面の増大などにより、気液相間の気体分子の移動が生じやすく、短時間で平衡状態に達する。本発明方法は、被検液中の気体濃度が激しく変動するような被検液に対しては、気液相間の平衡状態が安定しにくく、測定が困難になるが、例えば、脱気した超純水や特定の気体溶解水の気体濃度の測定のように、気体がほぼ一定濃度で溶解している被検液の測定には好適に適用することができる。超純水の脱気において、通常、脱気装置の運転は安定して行われるので、溶存気体濃度の変動は少ない。このような脱気水について、液相と平衡状態にある気相の真空度を常時測定すると、真空度はほぼ安定した値になっているので、計測された真空度の値から溶存気体濃度を簡易に求めることができる。
【0012】
本発明方法においては、液相室に被検液を通液し、気相室の凝縮液を排出する操作を実施しつつ、液相と平衡状態にある気相の真空度を測定する。液相室への被検液の通液を長時間継続すると、被検液の蒸気が気体透過膜を経由して液相室から気相室に透過し、透過した蒸気の一部が気相室に溜まっていく。最悪の場合には、気相室が凝縮液で満たされ、圧力の測定を行うことが不可能になる。本発明方法においては、気相室に凝縮液を排出する配管を装備し、定期的若しくは不定期的、又は、凝縮液が一定量溜まったことを検知したときに、凝縮液を排出することにより、気相室の真空度の測定を安定して継続することができる。本発明方法において、気相室の凝縮液を排出する方法に特に制限はなく、例えば、気相室を加圧して凝縮液を押し出すことができ、凝縮液排出管にポンプ、アスピレータなどをつけて凝縮液を吸引することができ、あるいは、気相室を常圧にして凝縮液を自然流下させることもできる。本発明方法は、純水、超純水又はこれらの水を脱気して特定の気体を溶解した洗浄用水を被検液とする溶存気体濃度の測定に好適に適用することができる。
【0013】
本発明方法においては、好ましくは、溶存気体濃度測定において液温を反映させる。被検液の液温を測定して、その温度における気体の飽和濃度と測定した気相の真空度に基づき溶存気体濃度を把握することにより、より正確に液体中の溶存気体濃度を求めることができる。
【0014】
本発明の液体中の溶存気体濃度の測定装置は、密閉容器内に気体透過膜を設けて、一方の側を液相室、他方の側を気相室に区画し、液相室に被検液を導入する導入管と排出する排出管とを設け、気相室に凝縮液を排出する凝縮液排出管を設けるとともに、気相室の真空度を測定する圧力計を設けてなる装置である。図1は、本発明の測定装置の一態様の説明図である。本態様の測定装置は、密閉容器1内に気体透過膜2を設けて、一方の側を液相室3、他方の側を気相室4に区画し、液相室に被検液を導入する導入管5と排出する排出管6とを設け、気相室4に凝縮液を排出する凝縮液排出管7を設けるとともに、気相室4の真空度を測定する圧力計8を設け、さらに必要に応じて気相室を大気に開放する給気配管9を設けている。圧力計8と気相室4は、連通管10により結ばれて連通状態となっている。給気配管9は、連通管10から分岐して設けられている。
【0015】
水に特定の気体を溶解して特定気体溶解水を調製するために、予め脱気処理を受けた水を、特定の気体を溶解するための気体透過膜を備えた溶解膜モジュールに通水すると、特定の気体を圧入しなくとも容易に溶解が進む。これは、脱気処理を受けた水が、ヘンリーの法則にしたがって気相と平衡化するための現象である。ここで、溶解膜モジュールに気体を注入しないと、モジュール内では気相に残っていた気体の水相への移行が進み、気相は減圧状態になる。この減圧の程度は、脱気された水の脱気度すなわち溶存気体濃度を正しく反映する。したがって、測定開始時の測定装置の気相室の気体組成は、気液平衡状態における気相室の真空度に特に影響せず、測定開始時に気相室に大気が充満した状態でも、真空状態でもよく、液相室に被検液を通液して、液相と気相が平衡状態になれば、同じ真空度に達する。本発明の測定装置を用いて液体中の溶存気体濃度を測定するためには、密閉容器1の液相室3に導入管5から被検液を連続的に導入し、排出管6から連続的に排出しながら、気相室4の気相の真空度を圧力計8で測定し、気相室の真空度がほぼ一定の値になったときの真空度を、求める真空度とする。このときの気相室の圧力と大気圧との比が、被検液に溶存している気体濃度と大気圧にさらされているときの気体の飽和溶存濃度との比に相当するので、溶存気体濃度を求めることができる。本発明の測定装置は、特定気体溶解水を調製するために脱気された水の溶存気体濃度の測定に特に好適に使用することができる。
【0016】
本発明においては、測定を継続している間に被検液の蒸気が気相室に移行し、凝縮して凝縮液が気相室に溜まっていくので、真空度の測定を中断して、あるいは、真空度測定の合間に、気相室4に溜まった凝縮液を凝縮液排出管7から密閉容器1外に排出する。凝縮液の排出により、常時溶存気体濃度の測定が可能な状態に維持することができる。
【0017】
図2は、本発明の測定装置の他の態様の説明図である。本態様の測定装置は、図1に示す態様の測定装置に、温度補正手段を付加したものであり、液相室3からの排出管6に温度計11が設置され、演算部12と表示部13が設けられている。温度計11により測定された被検液の液温及び圧力計8により測定された気相室4の真空度が演算部12に伝達され、演算部の演算結果が表示部13に伝達され、表示される。図2に示す態様においては、温度計11が排出管6に設置されているが、温度計は導入管5に設置することもでき、あるいは、液相室3に設置することもできる。
【0018】
液中の溶存気体濃度は、溶存気体の飽和濃度に、飽和度を乗じて求めることができる。飽和濃度は、その液体に溶解している気体の種類と液温で定まる既知の値である。気体の種類、温度及びその温度における飽和濃度を演算部12に入力して記憶させておく。例えば、実質的に水素ガスのみが溶解している水が被検液である場合、25℃における飽和濃度は1.56mg/L、15℃における飽和濃度は1.69mg/Lであり、データとして演算部12に保有しておく。一方、飽和度は、密閉容器1の気相室4の真空度から求めることができる。−0.10MPa(真空)なら飽和度=0%、±0MPa(大気圧)なら飽和度=100%、−0.01MPaなら飽和度=90%という具合である。
【0019】
図2に示す態様の測定装置において、被検液を密閉容器1の液相室3に供給し、排出管6から排出する。この際、排出管6に設けた温度計11により液温を測定して、測定値を演算部12に伝達し、また、気相室4の真空度を圧力計8で測定して、測定値を演算部12に伝達することにより、演算部で真空度の測定値から飽和度を求め、液温の測定値から記憶されているデータに基づき飽和濃度を求め、飽和度と飽和濃度から液中の溶存気体濃度を演算して求めることができる。求められた溶存気体濃度は、表示部13に表示される。この結果、液温を測定することにより、液温に依存する飽和濃度を知ることができ、より正確な溶存気体濃度を知ることができる。
【0020】
溶存気体の飽和濃度は、液体の温度に依存する。例えば、水素ガスを水に溶かすとき、25℃における飽和濃度は1.56mg/Lであるが、15℃における飽和濃度は1.69mg/Lである。十分に脱気された水に水素ガスのみを溶解した水素水について、水温が25℃の場合、密閉容器の気相の真空度が−0.01MPa、すなわち飽和度90%であると、1.56×0.90=1.40mg/Lの水素ガスが溶解していることになる。ところが、同じ水素水の水温が15℃まで低下した場合、1.40mg/Lの水素ガスの飽和度は1.40/1.69=0.83、すなわち飽和度83%となり、気相の真空度は−0.017MPaを示すことになる。
【0021】
この溶存気体の飽和濃度の温度依存性を認知せずに、単純に水素ガスの飽和濃度=1.56mg/Lとみなしてしまうと、83%の飽和度の−0.017MPaを1.56×0.83=1.29mg/Lと換算してしまうことになる。例えば、市水、工水などの原水の
水温が反映されて季節変動がある純水などを扱う場合には、測定したい溶存気体の飽和濃度の温度依存性を予め演算部に入力しておき、それをもとに密閉容器の気相の真空度から溶存気体濃度への換算を行うことが好ましい。特に高い純度が求められる洗浄用の特定ガス溶解水の調製においては、原水は一般的に温度も管理された超純水が用いられ、所定温度に維持されているので水温の変化はなく、真空度の温度補正を行う必要はない。
【0022】
図3は、本発明の測定方法の実施の一態様を示す工程系統図である。符号14は脱気膜モジュール、符号15は本発明の溶存気体濃度の測定装置、符号16は溶解膜モジュールであり、溶存気体濃度の測定装置15の各部の符号は図1と同じである。脱気膜モジュール14の気相室は減圧に保たれ、液相室に超純水が導入される。超純水は、溶存気体が気体透過膜を介して気相室に移行し、脱気水となる。脱気水は、導入管5を経て本発明の溶存気体濃度の測定装置15の液相室3に導入され、気体透過膜2を介して液相と気相が平衡状態に達して、圧力計8は一定の真空度を示し、その値から脱気水中の溶存気体濃度の合計を飽和度として求めることができる。測定装置15から排出管6を経て排出された脱気水は、次いで溶解膜モジュール16に導入され、溶解膜モジュール16の気相室に供給される特定気体を溶解して、特定気体溶解水となる。脱気水の飽和度の空き、すなわち飽和度100%から脱気水の飽和度を減じた値に相当する量の特定気体が、溶解膜モジュールにおいて脱気水に容易に溶解する。本態様においては、測定装置は脱気膜モジュール又は溶解膜モジュールと同一の構造を有し、脱気水は全量測定装置に導入される。
【0023】
図4は、本発明の測定方法の実施の他の態様を示す工程系統図である。この態様では、本発明の溶存気体濃度の測定装置15は、脱気膜モジュール14で得られた脱気水を溶解膜モジュール16に送給する主配管から分岐して設けられている。脱気膜モジュール14の気相室は減圧に保たれ、液相室に超純水が導入される。超純水は、溶存気体が気体透過膜を介して気相室に移行し、脱気水となる。脱気水の一部はその主配管から分岐して、本発明の溶存気体濃度の測定装置15に導入され、測定装置から排出される。排出水は、再び主配管に戻すことができ、あるいは、系外に排出することもできる。測定装置内においては、液相と気相が平衡状態に達して、圧力計8は一定の真空度を示し、その値から脱気水中の溶存気体濃度の合計を飽和度として求めることができる。脱気水は、溶解膜モジュール16に導入され、溶解膜モジュールの気相室に供給される特定気体を溶解して、特定気体溶解水となる。脱気水の飽和度の空き、すなわち飽和度100%から脱気水の飽和度を減じた値に相当する量の特定気体が、溶解膜モジュールにおいて脱気水に容易に溶解する。本態様においては、測定装置は脱気膜モジュール又は溶解膜モジュールより小型化することができる。本態様においては、脱気水は常に測定装置に通水することができ、あるいは、測定時に必要時間のみ通水して、真空度が一定になった状態で測定することもできる。液相と気相の気体濃度の平衡状態は、気相室の容量に対して、液相室の容量が大きく、気体透過膜の面積が広いほど短時間に達成されるので、そのような条件を満足する測定装置を形成しておくことが好ましい。本発明の液体中の溶存気体濃度の測定方法及び測定装置を適用することにより、近年注目されるようになった超純水中の溶存気体濃度の合計を、一括して極めて簡易に測定することができるので、その管理が容易になる。本発明の測定方法及び測定装置を用いて求められる値は、個々の気体成分の絶対的な濃度ではなく、飽和度の合計であるが、後段で特定の気体を溶解する処理を行う場合の溶解効率を直接的に反映する数値であり、極めて有用な情報である。
【0024】
図5、図6及び図7は、本発明の測定装置における凝縮液の排出機構を具体的に示す説明図である。図5において、符号7は気相室4に溜まった凝縮液を排出する凝縮液排出管であり、一端は気相室の下部に開口し、他端は排水管17に連結している。また、凝縮液排出管7には開閉弁18が設けられている。符号9は、気相室4に連通した給気配管であり、開閉弁19を有する。給気配管9は、この図の例では、気相の真空度を測定する圧力計8と気相室4とを繋ぐ連通管から分岐して設けられ、他端は大気に開放されている。符号20は、弁開閉制御器であり、開閉弁18及び19に指示することができる。通液に伴い気相室に凝縮液が溜まった密閉容器において、下部に接続した凝縮液排出管7に設けた弁18を開くことにより、凝縮液を排出する。このとき、気相室の圧力が大気圧と等しいか大気圧より高い場合は、単に弁18を開くことにより、凝縮液を排出することができる。気相室4の圧力を大気圧とするには、開閉弁19を開き、一時的に大気に開放すればよい。このとき、弁19と弁18の動作を連動させることにより、短時間に凝縮液を排出することができる。気相室の圧力が大気圧より低い場合には、弁18を開放するだけでは、凝縮液配出管の出口側からの逆流が起こり、凝縮液を排出することができない。このような場合には、凝縮液排出管を何らかの手段で吸引することにより、凝縮液を排出することができる。図6に示す態様においては、凝縮液の吸引手段として凝縮液排出管7に設けたポンプ21を用い、図7に示す態様においては、凝縮液の吸引手段としてアスピレータ22を用いて凝縮液を吸引排出している。なお、アスピレータ22は、駆動水が流れる配管に設けられ、アスピレータ22の真空部に凝縮水排出管7の末端が連結している。このとき、凝縮液の排出は自然流下させることができ、あるいは、吸引を連動させることもできる。凝縮液を排出したのち、弁は速やかに閉じられて測定状態に戻る。
【0025】
本発明方法において、凝縮液の排出は、定期的に行うことができ、あるいは、不定期的に行うこともできる。図5に示すように、弁開閉制御器20としてタイマー付き弁開閉制御器20を用いることにより、容易に定期的な排出を実現することができる。あるいは、凝縮液の溜まり状況を何らかの方法で検知して、一定量溜まったところで弁動作を行うこともできる。凝縮液の溜まり状況は、密閉容器にレベル計を付設したり、密閉容器の重量を測定したりすることにより検知することができる。これらの手段と自動弁を組み合わせることにより、凝縮液排出の自動化を実現することができる。
【0026】
本発明の測定装置において、気相室の容量が液相室の容量に対して大きすぎると、通液される液の溶存気体飽和度が気相室の真空度に反映されるまでの応答時間が長くなる。一方、気相室の容量が小さすぎると、短時間で凝縮液が溜まるために、凝縮液の排出間隔を短く設定する必要が生ずる。凝縮液の排出操作中は測定することができないので、必要以上に気相室の比率を小さくして凝縮液の排出を頻繁に行うことは、実用上望ましくない。本発明の測定装置において、気相室の容量は液相室の容量の0.05〜10倍であることが好ましく、0.1〜2倍であることがより好ましい。
【0027】
本発明方法において、気体透過膜を備えた密閉容器への通液条件に、特に制限はないが、流量が小さすぎると、通液される液の溶存気体の飽和度が気相の圧力に反映されるまでの応答時間が長くなる。流量が大きいほど応答時間は短くなるが、実用的な配管、継ぎ手を含む装置構成において限界が生じる。特に、計測専用の密閉容器を設けて通液した液を排棄する場合には、計測のために使用する液量は少ないほど好ましい。本発明方法においては、通液される被検液と接する気体透過膜の面積をA(cm2)、通液される被検液の流量をB(cm3/min)としたとき、A/B=1〜500(min/cm)であることが好ましく、A/B=5〜100(min/cm)であることがより好ましい。
【0028】
本発明の窒素ガス溶解水の製造装置は、ガス溶解装置、脱酸素された超純水をガス溶解装置に供給する水供給配管、窒素ガスをガス溶解装置に供給するとともに窒素ガス供給量を調整するガス供給量調整手段を備えた窒素ガス供給管、窒素ガスを溶解した水をガス溶解装置から排出する窒素ガス溶解水排出管を有し、該水供給配管又は該窒素ガス溶解水排出管に連絡して本発明の溶存気体濃度の測定装置を設け、該溶存気体濃度の測定装置で測定した溶存気体濃度に応じて窒素ガス供給量を調整する窒素ガス溶解水の製造装置である。
【0029】
図8は、本発明の窒素ガス溶解水の製造装置の一態様の工程系統図である。本態様の製造装置は、膜式ガス溶解装置23、脱酸素された超純水を膜式ガス溶解装置に供給する水供給配管24、窒素ガスを膜式ガス溶解装置に供給するとともに、窒素ガス供給量を調整するガス供給量調整手段25を備えた窒素ガス供給管26、窒素ガスを溶解した水を膜式ガス溶解装置から排出する窒素ガス溶解水排出管27、水供給配管に連絡する本発明の溶存気体濃度の測定装置28を有する。
【0030】
図9は、本発明の窒素ガス溶解水の製造装置の他の態様の工程系統図である。本態様の製造装置は、膜式ガス溶解装置23、脱酸素された超純水を膜式ガス溶解装置に供給する水供給配管24、窒素ガスを膜式ガス溶解装置に供給するとともに、窒素ガス供給量を調整するガス供給量調整手段25を備えた窒素ガス供給管26、窒素ガスを溶解した水を膜式ガス溶解装置から排出する窒素ガス溶解水排出管27、窒素ガス溶解水排出管に連絡する本発明の溶存気体濃度の測定装置28を有する。
【0031】
図8及び図9に示す態様の製造装置において、圧力計8からの信号から算出される超純水中の溶存窒素ガス濃度と、所望の窒素ガス溶解水の窒素ガス濃度との差から、窒素ガス供給量を求めて窒素ガス供給量調整手段25、例えば、窒素ガス流量調整弁に信号を送る制御装置29が設けられている。脱酸素された超純水は、多くの場合貯留タンクに貯留され、タンク内部の空間は窒素ガスで満たされる。超純水に溶解している窒素ガス濃度は、脱酸素手段によって異なる。真空脱気や膜脱気による脱酸素では、溶存窒素ガス濃度は非常に低くなる。窒素ガスを用いた窒素脱気による脱酸素では、溶存窒素ガス濃度はほぼ飽和濃度となる。いずれの場合とも貯留タンク内での貯留中に、タンク内部の空間を満たす窒素ガスが溶解し、実質的に窒素ガスのみを溶解した超純水となる。しかし、窒素ガスの溶解量は、貯留タンク内での滞留時間や、貯留タンク内で占めていた場所などにより変動し、貯留タンクから供給される超純水の溶存窒素ガス濃度は一定しない。
【0032】
図8に示す態様の窒素ガス溶解水の製造装置においては、膜式ガス溶解装置23の気体透過膜によって区画された一方の水室には、超純水が水供給配管24を介して供給され、他方のガス室には窒素ガスが窒素ガス供給管26を介して供給され、窒素ガスは膜を透過して超純水に溶解し、窒素ガス溶解水として窒素ガス溶解水排出管27から取り出される。この際、水供給配管24から分岐した導入管5を介して膜式ガス溶解装置に供給される超純水の一部が、本発明の溶存気体濃度の測定装置28に導入される。溶存気体濃度の測定装置28において気相室4の真空度が測定され、測定値は制御装置29に入力され、供給超純水の溶存窒素ガス濃度が求められ、そして所望の窒素ガス溶解水の窒素ガス濃度と比較され、膜式ガス溶解装置23に供給する窒素ガス供給量が演算される。演算結果は窒素ガス供給量調整手段25に伝達され、調整された窒素ガス供給量が膜式ガス溶解装置の気室に供給される。このようにして供給される超純水の溶存窒素ガス濃度を測定し、所望の窒素ガス溶解水の窒素ガス濃度との差に相当する量の窒素ガスを膜式ガス溶解装置に供給して、安定して一定濃度の窒素ガス溶解水を製造することができる。
【0033】
図9に示す態様の窒素ガス溶解水の製造装置においては、本発明の溶存気体濃度の測定装置28は、窒素ガス溶解水排出管27を流れる窒素ガス溶解水を被検液として真空度を測定し、溶存窒素ガス濃度を求める。このため、窒素ガス溶解水排出管27から分岐して、溶存気体濃度の測定装置28を設ける。窒素ガス溶解水の溶存窒素ガス濃度が求められ、そして所望の窒素ガス溶解水の窒素ガス濃度と比較され、膜式ガス溶解装置23に供給する窒素ガス供給量が演算され、必要な窒素ガス供給量を制御して膜式ガス溶解装置に供給し、所望濃度の窒素ガス溶解水を得る。
【0034】
図8及び図9の例においても、溶存気体濃度の測定装置28の気相室4の凝縮水は、凝縮液排出管7から任意の時期に排出され、安定した測定が行われる。また、上述の例では膜式ガス溶解装置を用いたが、ガス溶解装置としては、膜式のほか散気式、吸引混合式などの公知の気液接触手段を利用することができる。本発明の窒素ガス溶解水の製造装置によれば、原水となる超純水中の溶存窒素ガス濃度又は窒素ガス溶解水の溶存窒素ガス濃度を正確に把握し、それらの濃度に応じてガス溶解装置への窒素ガス供給量を制御するので、安定して一定濃度の窒素ガス溶解水を製造することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1(予備脱気水の脱気度評価)
溶存酸素ガス濃度が8.0mg/Lである脱気処理を施されていない超純水を、脱気膜モジュール[4インチモジュール、商品名:リキセル、ヘキスト・セラニーズ社製]に16.7L/minの流量で通水し、真空ポンプを用いて膜脱気を行った。この予備脱気水の一部、1.67L/minを、上記の脱気膜モジュールと同じ構成からなる2.5インチモジュールに通水し、その気相を密閉して真空度を測定した。この2.5インチモジュールの気体透過膜の面積Aは14,000cm2であり、被検液の流量Bは1,670cm3/minなので、A/Bは8.4min/cmとなる。また、この2.5インチモジュールの気相室の容量は150cm3、液相室の容量は400cm3であり、気相室の容量は液相室の容量の0.375倍である。
別に予備脱気水の溶存酸素ガス濃度を、隔膜式溶存酸素計を用いて測定した。その結果、真空度は−0.09MPaで安定し、溶存酸素ガス濃度は0.8mg/Lであった。溶存酸素ガス濃度の値は、溶存酸素ガスが脱気前に比べて1/10まで低下していることを示し、真空度の値は、溶存気体濃度の合計も、脱気前に比べて1/10まで低下していることを示し、両者はよく一致した。
ところが、溶存酸素ガス濃度0.8mg/Lの脱気水と溶存酸素ガス濃度8.0mg/Lの未脱気水を交互に密閉容器に通水しつつ、その脱気度を測定し続けたところ、3日目には気相室に凝縮水が満ちた状態になり測定不能となった。
気相室に凝縮水排出管を付設した密閉容器を用いて、1日1回凝縮水を排出する操作を行ったところ、凝縮水の滞留は気相室容量の半分以下に維持することができ、30日間連続して正常な測定を実施することができた。
【0036】
実施例2(予備脱気水の脱気度評価)
窒素脱気を施され、溶存酸素ガス濃度が5μg/Lで、溶存窒素ガスが飽和状態にある超純水を用いて、実施例1と同様な操作を行った。予備脱気水の溶存酸素ガス濃度は、厳密な測定が困難であったが、2.5インチモジュールの気相の真空度は、実施例1と同様に−0.09MPaを示していた。この結果から、溶存気体濃度の合計は、脱気前の1/10まで低下していることが分かった。溶存窒素計を用いて、脱気前後の溶存窒素ガス濃度を測定したところ、脱気前は18.6mg/Lであるのに対し、脱気後は1.9mg/Lであり、真空度で求めた溶存気体濃度の変化とよく一致した。
ところが、予備脱気水の溶存気体濃度を測定し続けたところ、2日目には気相室に凝縮水が満ちた状態になり測定不能となった。
凝縮水排出管を付設した密閉容器を用いて、毎日朝夕2回凝縮水を排出する操作を行ったところ、凝縮水の滞留は気相室容量の半分以下に維持することができ、30日間連続して正常な測定を実施することができた。
【0037】
実施例3(超純水の評価)
近年、電子産業工場で用いられる超純水は、水質低下を防止するためにタンク内で窒素パージを受ける場合が多い。超純水の溶存酸素ガス濃度は厳密に管理されても、溶存窒素ガス濃度は成り行きまかせのケースがほとんどである。生産された超純水が速やかに使用される場合は窒素ガスの溶け込みは少ないが、タンク内に保持される時間が長くなると窒素ガスの溶け込み量は増える。
電子産業工場において、膜脱気した超純水を窒素パージされているタンクに貯蔵し、超純水系に実施例1と同じ2.5インチモジュールを設けて、超純水と平衡状態にある気相の真空度を測定するとともに、溶存窒素計を用いて溶存窒素ガス濃度を測定した。最初は真空度が−0.09MPa、溶存窒素ガス濃度は1.9mg/Lであった。気相の真空度が次第に低下して−0.08MPa、−0.07MPa、−0.06MPa、−0.05MPa、−0.04MPaとなったとき、溶存窒素ガス濃度はそれぞれ3.7mg/L、5.6mg/L、7.4mg/L、9.3mg/L、11.2mg/Lであり、気相の真空度と溶存窒素ガス濃度はよい対応関係を示した。
ところが、窒素パージをタンク内で受けている超純水の溶存気体濃度を実施例1と同じ2.5インチモジュールを用いて測定し続けたところ、4日目には気相室に凝縮水が満ちた状態になり測定不能となった。
凝縮水排出管を付設した密閉容器を用いて、1日1回凝縮水を排出する操作を行ったところ、凝縮水の滞留は気相室の半分以下に維持することができ、30日間連続して正常な測定を実施することができた。
【0038】
実施例4(窒素ガス溶解水の製造)
図8に示す装置を用いて、窒素ガス溶解水を製造した。
実施例3と同じ膜脱気されたのちタンク内で窒素パージを受けている超純水を原水にして、窒素ガス溶解装置で窒素ガスを溶解することにより、溶存窒素ガス濃度を飽和濃度の約90%すなわち約17mg/Lまで高めるシステムに、本発明の製造装置を適用した。
図8に示す装置は、タンク内での保有時間に依存して溶存窒素ガス濃度が変動する超純水を、気体透過膜を内蔵した窒素ガス溶解装置23に供給する手前で一部分岐し、本発明の溶存気体濃度の測定装置28に通水するシステムである。溶存気体濃度の測定装置の圧力は、−0.09MPaから−0.04MPaの間を変動しており、これは溶存窒素ガス濃度計で計測した1.9〜11.2mg/Lと良好な対応関係を示していた。ここで目標の溶存窒素ガス濃度17mg/Lと、原水の溶存窒素ガス濃度1.9〜11.2mg/Lとの差を自動計算して、それに見合う量の窒素ガスが後段の膜式ガス溶解装置23に供給されるように窒素ガスの供給量を制御するシステムを組み上げた。
溶存気体濃度の測定装置の気相室に凝縮水排出管を設けずに連続運転した場合、気相室は4日目に凝縮水で満たされ、計測不能となったが、凝縮水排出管を設けて1日1回凝縮水の排出を行ったところ、30日間連続して正常な測定をすることができ、目標とする溶存窒素ガス濃度約17mg/Lの窒素ガス溶解水を安定して製造することができた。
【0039】
実施例5(窒素ガス溶解水の製造)
図9に示す装置を用いて、実施例4と同様にして、窒素ガス溶解水を製造した。
図9に示す装置は、気体透過膜を内蔵した窒素ガス溶解装置23から流出する窒素ガス溶解水の一部を分岐させて、本発明の溶存気体濃度の測定装置28に通水するシステムである。本実施例においては、窒素ガス溶解水の溶存窒素ガス濃度が目標とする17mg/Lに近づくように、窒素ガスの供給量を制御した。溶存気体濃度の測定装置の気相室に凝縮水排出管を設けないと、5日目に気相室が凝縮水で満たされて測定不能となり、溶存窒素ガス濃度の制御も不能となった。気相室に凝縮水排出管を設けて、1日1回凝縮水の排出を行ったところ、30日間連続して正常な測定をすることができ、目標とする溶存窒素ガス濃度約17mg/Lの窒素ガス溶解水を安定して製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の液体中の溶存気体濃度の測定方法及び測定装置を適用することにより、近年注目されるようになった超純水中の溶存気体濃度の合計を、一括して極めて容易に測定することができるので、その管理が容易になる。本発明の測定方法及び測定装置を用いて求められる値は、個々の気体成分の絶対的な濃度ではなく、飽和度の合計であるが、後段で特定の気体を溶解する処理を行う場合の溶解効率を直接的に反映する数値であり、極めて有用な情報である。とりわけ、溶存ガス濃度の計測器が高価で、測定の難度が高い窒素ガスのみを溶解させた超純水を被検液とする溶存窒素ガス濃度の測定や、アルゴン、ヘリウムなどの他の方法では測定が極めて困難な不活性気体の濃度を調べる場合に、最適な技術と考えられる。本発明の窒素ガス溶解水の製造装置を用いることにより、溶存窒素ガス濃度が変動する超純水を原水として、溶存窒素ガス濃度が目標とする一定の値である窒素ガス溶解水を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の測定装置の一態様の説明図である。
【図2】本発明の測定装置の他の態様の説明図である。
【図3】本発明の測定方法の実施の一態様を示す工程系統図である。
【図4】本発明の測定方法の実施の他の態様を示す工程系統図である。
【図5】本発明の測定装置の一態様の説明図である。
【図6】本発明の測定装置の他の態様の説明図である。
【図7】本発明の測定装置の他の態様の説明図である。
【図8】本発明の窒素ガス溶解水の製造装置の一態様の工程系統図である。
【図9】本発明の窒素ガス溶解水の製造装置の他の態様の工程系統図である。
【符号の説明】
【0042】
1 密閉容器
2 気体透過膜
3 液相室
4 気相室
5 導入管
6 排出管
7 凝縮液排出管
8 圧力計
9 給気配管
10 連通管
11 温度計
12 演算部
13 表示部
14 脱気膜モジュール
15 測定装置
16 溶解膜モジュール
17 排水管
18 弁
19 弁
20 弁開閉制御器
21 ポンプ
22 アスピレータ
23 膜式ガス溶解装置
24 水供給配管
25 ガス供給量調整手段
26 窒素ガス供給管
27 窒素ガス溶解水排出管
28 溶存気体濃度の測定装置
29 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体透過膜によって液相と気相を分離して液相室に被検液を通液し、気相室の凝縮液を排出する操作を実施しつつ、液相と平衡状態にある気相の真空度を測定することを特徴とする液体中の溶存気体濃度の測定方法。
【請求項2】
気相室の凝縮液を、押し出し、吸引又は自然流下のいずれかによって排出する操作を測定の合間に行う請求項1記載の液体中の溶存気体濃度の測定方法。
【請求項3】
通液される被検液と接する気体透過膜の面積をA(cm2)、通液される被検液の流量をB(cm3/min)としたとき、A/B=1〜500(min/cm)である請求項1又は請求項2記載の液体中の溶存気体濃度の測定方法。
【請求項4】
液相と平衡状態にある気相の真空度を測定するとともに、被検液の液温を測定し、該真空度と該液温とに基づき溶存気体濃度を求める請求項1、請求項2又は請求項3記載の液体中の溶存気体濃度の測定方法。
【請求項5】
被検液が、純水、超純水又は洗浄用水のいずれかである請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の液体中の溶存気体濃度の測定方法。
【請求項6】
密閉容器内に気体透過膜を設けて、一方の側を液相室、他方の側を気相室に区画し、液相室に被検液を導入する導入管と排出する排出管とを設け、気相室に凝縮液を排出する凝縮液排出管を設けるとともに、気相室の真空度を測定する圧力計を設けてなることを特徴とする液体中の溶存気体濃度の測定装置。
【請求項7】
気相室の容量が、液相室の容量の0.05〜10倍である請求項6記載の液体中の溶存気体濃度の測定装置。
【請求項8】
被検液の液温を測定する温度計を設け、測定された被検液の液温と測定された気相室の真空度とを入力して溶存気体濃度を求める演算部を設けてなる請求項6又は請求項7記載の液体中の溶存気体濃度の測定装置。
【請求項9】
ガス溶解装置、脱酸素された超純水をガス溶解装置に供給する水供給配管、窒素ガスをガス溶解装置に供給するとともに窒素ガス供給量を調整するガス供給量調整手段を備えた窒素ガス供給管、窒素ガスを溶解した水をガス溶解装置から排出する窒素ガス溶解水排出管を有し、該水供給配管又は該窒素ガス溶解水排出管に連絡して請求項6記載の液体中の溶存気体濃度の測定装置を設け、該溶存気体濃度の測定装置で測定した溶存気体濃度に応じて窒素ガス供給量を調整することを特徴とする窒素ガス溶解水の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−71340(P2006−71340A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252401(P2004−252401)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)