説明

液体供給装置

【課題】注入槽の大きさにあわせて簡便に配管することができ、且つ、配管後には作業状況にあわせて液体流出口の位置を適宜変更可能とする液体供給装置を提供する

【解決手段】(A)液体を貯蔵するための貯蔵タンク1と、(B)前記貯蔵タンク1とポンプ4に連結し、貯蔵タンク1内の液体を吸引するための吸引チューブ3と、(C)前記吸引チューブ3と供給チューブ7を連結し、チューブ内の液体を吸引し圧送するためのポンプ4と、(D)前記ポンプ4に連結し、ポンプ4から圧送される液体を注入槽8に供給するための供給チューブ7と、(E)供給チューブ7の注入槽8側先端開口部16を注入槽8の開口部上方の任意の位置に安定して保持するための手動保持手段9と、を備えることを特徴とする液体供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵タンク内の液体を注入槽へ供給するための液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定量の液体を注入槽に供給する設備として、液体を貯蔵するタンクから注入槽までの間に液体を移送するための移送経路を配管し、移送経路の途中に液体を吸引し圧送するためのポンプを設置するとともに、ポンプの稼働時間等を制御する制御ユニットにより所定量の液体を自動的に移送する設備が知られている。
【0003】
そして、このような設備は、工場などの量産設備の一部として設置されることが多いため、液体貯蔵タンクや注入槽の形状、大きさは一定であり、液体を移送する配管はこれらを連結するように固定して設置される。また、このような設備は、一例として、業務用洗濯機に応用されており、液体洗剤を貯蔵する貯蔵タンクと洗濯槽との間に、配管及びポンプが固定して設置され、ポンプの制御ユニットを操作して洗剤を洗濯槽へ注入する洗剤の自動注入機として使用されている。
【0004】
しかしながら、貯蔵タンクと注入槽との間に配管やポンプを固定して設置する作業は加工のための労力と時間と要するものであり、また、貯蔵タンクや注入槽の大きさを頻繁に変更する必要がある場合や、注入槽の種類によっては、配管するための加工が困難な場合もある。例えば、家庭用洗濯機に上記の洗剤自動注入機を設置する場合には、個々の洗濯機の大きさにあわせて、配管を変更する必要があり、特に、洗剤をこぼすことなく洗濯槽に注入するために、洗剤の流出口となる配管の先端部を洗濯槽の大きさにあわせて固定する必要がある。また、家庭用洗濯機の場合は、洗濯槽の上部に蓋があり、蓋の開閉や洗濯物を上部から出し入れする必要があるため、これら作業の障害にならないように洗剤注入後は洗剤の流出口を収納できるよう流出口の位置を適宜変更することができるような構造であることが望まれる。
【特許文献1】特開2004−344758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、注入槽の大きさにあわせて簡便に配管することができ、且つ、配管後は作業状況にあわせて液体流出口の位置を適宜変更可能とする液体供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、(A)液体を貯蔵するための貯蔵タンクと、(B)前記貯蔵タンクとポンプに連結し、貯蔵タンク内の液体を吸引するための吸引チューブと、(C)前記吸引チューブと供給チューブを連結し、チューブ内の液体を吸引し圧送するためのポンプと、(D)前記ポンプに連結し、ポンプから圧送される液体を注入槽に供給するための供給チューブと、(E)供給チューブの注入槽側先端開口部を注入槽の開口部上方の任意の位置に安定して保持するための手動保持手段と、を備えることを特徴とする液体供給装置である。
【0007】
第2の発明は、前記手動保持手段が少なくとも供給チューブの注入槽側の先端近傍を覆う可撓性の筒状部材であって、注入槽とは反対側の端部が固定されていることを特徴とする液体供給装置である。
【0008】
第3の発明は、前記手動保持手段の注入槽とは反対側の端部が固定スタンドに固定されていることを特徴とする液体供給装置である。
【0009】
第4の発明は、前記固定スタンドにポンプを遠隔操作するための操作ユニットを固定することを特徴とする液体供給装置である。
【0010】
第5の発明は、前記手動保持手段が供給チューブの注入槽側の先端近傍に取り付けられ、且つ吸着盤または磁石を備えることを特徴とする液体供給装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体供給装置によれば、貯蔵タンクや注入槽の大きさにあわせて簡便に配管することができ、且つ、配管後は作業状況にあわせて液体流出口となる供給チューブの注入槽側先端部の位置を適宜変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる液体供給装置の構成図
【図2】手動保持手段の第1の実施例
【図3】手動保持手段の第1の実施例(断面図)
【図4】手動保持手段の第2の実施例
【図5】操作ユニットのスイッチ配置図(図面代用写真)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液体供給装置を実施するための形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の液体供給装置の構成を示す。吸引チューブ(3)は、一端を液体(2)を貯蔵する貯蔵タンク(1)に連通し、他端をポンプ(4)に連通しておりポンプ(4)の作動によって、貯蔵タンク内の液体を吸引する。また、供給チューブ(7)は、一端をポンプ(4)に連通し、ポンプにより圧送される液体を注入槽(8)へ移送する。供給チューブの注入槽側の先端開口部(16)は、手動保持手段(9)により注入槽の開口部上方の任意の位置に保持される。
【0015】
液体(2)は、ポンプで吸引し圧送し得る粘度で、液体を移送するチューブと化学反応等の相互作用を生じないものであれば特に制限されるものではないが、本発明の液体供給装置を洗濯機への洗剤注入機として使用する場合には、液体洗剤、柔軟剤、及び柔軟剤入り液体洗剤が該当する。
【0016】
貯蔵タンク(1)は、液体の貯蔵に適した容器であれば、材質、大きさは特に限定されるものではなく、汎用性の高い容量18リットルのポリエチレン製容器を使用することもできる。吸引チューブ(3)の先端は、貯蔵タンク内の液体を残存させることなく吸引できるようにタンクの底まで浸漬する。
【0017】
吸引チューブ(3)および供給チューブ(7)は樹脂製であり、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)、ナイロン、塩化ビニル、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素ゴム、シリコーンゴム、及び天然ゴムのいずれかの材質を使用することが望ましい。これらの柔軟性に優れた素材を採用することにより、自由な配管を可能にすることができ、貯蔵タンクや注入槽の大きさや各々の配置に対して容易に対応することが可能となる。また、これら素材は液体との相互作用も少なく耐久性および安全性に優れるものである。但し、これらの材質に限定されるものではなく、これ以外の材質であっても使用することができる。
【0018】
ポンプ(4)は、液体を移送するためのものであれば、特に制限はなく、定量ポンプ、ラインポンプ、及びチューブポンプ等を使用することができる。但し、定量機能を有さないラインポンプ等を使用する場合には、液体を所定量移送するために、ポンプを一定時間稼働するためのタイマーをポンプの制御ユニットに組み込むことが好ましい。
【0019】
ポンプ(4)の稼働は、制御ユニット(5)により制御されるが、制御ユニット(5)を遠隔操作できるよう制御ユニット(5)とは別に操作ユニット(6)を用意することが好ましい。操作ユニット(6)は制御ユニット(5)とケーブル(10)で連結するが、ケーブルを使用せず無線により操作(ワイヤレス・リモコン)することも可能である。操作ユニットで遠隔操作することにより、注入槽(8)付近で作業する作業者の移動する距離を少なくでき、作業性を向上することができる。但し、操作ユニット(6)によるポンプの遠隔操作は作業状況に応じて決定すべきものであり、操作ユニット(6)による遠隔操作ではなく、制御ユニット(5)に操作ボタンを設け、制御ユニットを直接操作することも可能である。
【0020】
手動保持手段(9)は、供給チューブ(7)の注入槽側の先端開口部(16)を注入槽の開口部上方の任意の位置に保持するためのものである。手動保持手段により、供給チューブを注入槽の大きさや位置にあわせて配置することが可能となり、例えば、家庭用洗濯機の液体洗剤の注入装置として使用する場合には、個々の洗濯機の大きさや配置位置に応じて容易に配管することができる。また、手動保持手段は、作業状況に合わせて供給チューブの注入槽側の先端開口部(液体流出口)(16)の位置を変更することが出来るため、例えば、洗濯機に液体洗剤を注入する場合には、液体流出口を洗濯槽の開口部上方に保持し、洗剤の注入が完了した後は、洗濯機の蓋を閉めるなどの作業の邪魔にならないよう、他の位置に移動して保持し、収納することができる。
【0021】
手動保持手段(9)は、一つには、少なくとも供給チューブの注入槽側の先端近傍を覆う可撓性の筒状部材であって、注入槽とは反対側の端部を固定された構造とすることができる。これにより、手動保持手段が供給チューブの注入槽側の先端開口部を任意の位置に安定して保持することが可能となる。
【0022】
手動保持手段(9)の注入槽とは反対側の端部(根元部)(19)の固定は、注入槽付近の壁に設置した固定スタンド(11)の支持部(13)に固定することができる。但し、固定スタンドは、壁に設置する形式に限られず、床から自立する形式のものであってもよい。また、固定スタンドは市販のスタンドを用いることができ、例えば、乾燥機を洗濯機の近傍に固定するための乾燥機用スタンドを使用することができる。乾燥機用スタンドには、スタンドを洗濯機に取り付ける直付けタイプのものや床に置く自立タイプのものがあるが、いずれのタイプも固定スタンドとして使用することができる。これら市販のスタンドを使用する場合には、必要に応じて、加工により支持部を設置する。
【0023】
固定スタンド(11)には、ポンプ(4)を遠隔操作するための操作ユニット(6)を固定するための取り付け部(14)を設けることができる。操作ユニット(6)を固定スタンド(11)に固定することにより、注入槽(8)と手動固定手段(9)と操作ユニット(6)を一箇所にまとめることができ、作業者の移動を少なくし、作業を効率的に進めることができる。
【0024】
手動保持手段(9)に使用する可撓性の筒状部材は、厚さ0.2〜0.4mmの薄肉ステンレス溶接管を蛇腹状に加工し、手で自由に曲げられるようにしたパイプを使用することができ、例えば、株式会社三栄水栓製作所製 商品名「フレキチューブ・ベンリーカン」である。その他、モリ工業株式会社製 商品名「フレキシブル管」、三元ラセン管工業株式会社製 商品名「フレキシブルチューブ」や、柔軟性のあるチューブをステンレスで覆ったパイプ、例えば、大和電業株式会社製 商品名「ブレード被覆フレキ」を使用することができる。
【0025】
手動保持手段(9)は、その他に、供給チューブの注入槽側の先端近傍に取り付けられ、且つ吸着盤または磁石を備える構造とすることができる。吸着盤または磁石の吸着力を利用し、供給チューブの注入槽側の先端部を任意の位置に固定するものである。
【実施例1】
【0026】
以下、実施例として本発明の液体供給装置を家庭用洗濯機に液体洗剤を注入するための洗剤注入機として使用する場合を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
図2は、手動保持手段(9)が、供給チューブ(7)の注入槽側の先端開口部(液体流出口)(16)を固定する構造を示す。手動保持手段(9)の注入槽とは反対側の端部である根元部(19)は、固定スタンド(11)のジョイント部(15)に取り付けられる。固定スタンド(11)は、取り付け部(12)を注入槽(8)付近の壁(20)などに取り付け固定する。支持部(13)と手動保持手段(9)の内部は中空構造であり(図3)、支持部(13)の途中に設けた挿入孔(17)から挿入した供給チューブ(7)は、支持部(13)及び手動保持手段(9)の内部を通り、手動保持手段の先端まで連通する。また、供給チューブの先端部(16)は、手動保持手段(9)の先端より約10mm突出させることが好ましい。これは、液体を手動保持手段(9)に触れることなく、供給チューブから注入槽に注入するためのものである。すなわち、供給チューブは、液体に対する表面張力の小さい素材を使用し、チューブ内に液が残存することを防止するとともに、チューブ先端から注入槽へ注入する場合の液切れを良くするものであり、このような効果を損なうことがないように、液体が手動保持手段に触れることを防止するためのものである。但し、この機能は、本発明の付加的な機能であるため、必ずしも必要ではない。
【0028】
ポンプ(4)は、ロータの回転により弾力性のあるチューブをしごいて管内の液体を押し出す方式のチューブポンプを使用した。ロータの1回転で押し出される容量が一定であることから精密な定量供給機として使用できるものでり、液体を定量して供給する洗剤の供給や少量の分注を行うケミカルプラントへの使用に適するポンプとして、ウエルコ社製 商品名「チューブポンプ」を使用した。また、ポンプは、床面から約1.6mの高さに取り付けた。これは、ポンプを液体流出口(16)の高さより高い位置に固定することによって、洗剤を圧送するポンプの負荷を低減するためである。
【0029】
手動保持手段(9)は、薄肉ステンレス溶接管を蛇腹状に加工し、手で自由に曲げられるようにしたパイプとして、株式会社三栄水栓製作所製 商品名「フレキチューブ・ベンリーカン」を使用した。また、吸引チューブおよび供給チューブチューブはポリプロピレン製の外径6mm、内径4mmのチューブを使用した。
【0030】
操作ユニット(6)は固定スタンド(11)の操作ユニット取り付け部(14)に取り付けた。操作ユニット(6)は、ポンプの制御ユニット(5)を遠隔操作するためのものであり、電源ボタンと供給する洗剤の量を選択するための切り替えボタンを備える(図5)。切り替えボタンは、洗剤の量を「少」、「標準」、「多」の3水準で選ぶことができ、選んだ量の洗剤が供給できるようにポンプが稼働する。洗剤の供給量はポンプの稼働時間により制御され、ポンプ制御ユニット(5)に内蔵されるタイマーにより制御する。また、液体の量を任意で設定できるよう手動への切り替えボタンと手動用のスタートボタンを備えている。操作ユニット(6)とポンプ制御ユニット(5)とはケーブル(10)で連結され、操作ユニット(6)による遠隔操作を可能としている。
【0031】
操作ユニット(6)は、注入槽(8)(洗濯機の洗濯槽に相当する)の近くに設置する方が作業する上で効率が良いため、本実施例では、固定スタンド(11)に操作ユニット取り付け部(14)を設けてこれに固定したが、作業の状況に応じて適切な位置に固定したり、あるいは作業者が携帯してもよい。
【実施例2】
【0032】
図4は、第2の実施例を示す。手動保持手段(9)は供給チューブの注入槽側の先端近傍(16)に取り付けられ、吸着盤または磁石(18)を備える。このような構造にすることにより、吸着盤あるいは磁石の吸着力を利用して供給チューブの先端部を、任意の位置に固定することができる。すなわち、供給チューブ(7)から注入槽(8)(洗濯機の洗濯槽に相当する)に液体を注入する場合には、供給チューブの先端部(16)を注入槽(8)の上部に固定し、液体を降下し、液体の注入が完了した後は、供給チューブを作業の弊害にならない位置に固定し収納することができる。
【0033】
本発明の液体供給装置を家庭用洗濯機に液体洗剤を注入する洗剤注入機として使用する場合の作業手順は以下の通りである。
【0034】
<作業手順>
1.洗濯機に水と洗濯物を入れる。
2.供給チューブの先端開口部(液体流出口)を洗濯槽の開口部上方に位置するよう手動保持手段により保持する。
3.操作ユニットの切り替えスイッチにより注入する洗剤の量を設定し、電源を入れ、スタートボタンを押す。
4.ポンプが稼働し、洗剤は吸引チューブにより貯蔵タンクから吸い上げられ、供給チューブ内を圧送され、洗濯槽の開口部に注入される。
5.洗剤の注入が完了した後、供給チューブ先端開口部(液体流出口)を作業に支障が生じることがないよう任意の位置に収容する。
6.洗濯機の蓋を閉める。
7.洗濯機の電源を入れ、洗濯を開始する。
【符号の説明】
【0035】
1 貯蔵タンク
2 液体
3 吸引チューブ
4 ポンプ
5 制御ユニット
6 操作ユニット
7 供給チューブ
8 注入槽
9 手動保持手段
10 ケーブル
11 固定スタンド
12 取り付け部
13 支持部
14 操作ユニット取り付け部
15 ジョイント部
16 供給チューブ先端開口部(液体流出口)
17 挿入孔
18 吸着盤または磁石
19 根元部
20 壁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液体を貯蔵するための貯蔵タンクと、
(B)前記貯蔵タンクとポンプに連結し、貯蔵タンク内の液体を吸引するための吸引チューブと、
(C)前記吸引チューブと供給チューブに連結し、チューブ内の液体を吸引し圧送するためのポンプと、
(D)前記ポンプに連結し、ポンプから圧送される液体を注入槽に供給するための供給チューブと、
(E)供給チューブの注入槽側先端開口部を注入槽の開口部上方の任意の位置に安定して保持するための手動保持手段と、
を備えることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
手動保持手段が少なくとも供給チューブの注入槽側の先端近傍を覆う可撓性の筒状部材であって、注入槽とは反対側の端部が固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体供給装置。
【請求項3】
手動保持手段の注入槽とは反対側の端部が固定スタンドに固定されていることを特徴とする請求項3の液体供給装置。
【請求項4】
固定スタンドにポンプを遠隔操作するための操作ユニットを固定することを特徴とする請求項4記載の液体供給装置。
【請求項5】
手動保持手段が供給チューブの注入槽側の先端近傍に取り付けられ、且つ吸着盤または磁石を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の液体供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−35149(P2012−35149A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174545(P2010−174545)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(510063096)株式会社HMProducts (2)
【Fターム(参考)】