説明

液体分離装置

【目的】血液バッグ内に層分離された血液成分を分離する装置に関し、分離すべき血液成分を血液バッグ内に残存させたり、他の血液成分と混合させてしまうことのない液体分離装置を提供する。
【構成】液体分離装置1は、血液バッグ6を押圧するための向かい合った2つの加圧プレート3、4を有し、該2つの加圧プレート3、4の少なくとも一方は可動加圧プレート4であり、さらに、前記可動加圧プレート4を他方のプレート3方向に駆動するための駆動手段5を有しており、前記可動加圧プレート4は、前記駆動手段5により駆動される駆動部材16によって、前記他方のプレート3と向かい合うように、かつ該可動加圧プレート4の上部および下部が前記他方のプレート3方向に傾くように動作する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液体分離装置に関し、柔軟性を有する容器内に層分離された液体を分離する装置に関する。特に、本発明は遠心分離された血液の成分を分離するものである。
【0002】
【従来の技術】血液を血液バッグに採集することはよく知られており、一般に、血液は血液バッグ内に収納された状態で遠心分離され、異なった各成分に分離される。遠心分離後、血液バッグ内に3つの層が形成され、各々、第1層(下層)は主に赤血球で構成され、第2層(中間層)は"バフィーコート"と呼ばれ、第3層(上層)は血漿で構成されている。
【0003】また、異なった液体の層を分離するために、2つの平板等の加圧手段の間で、血液バッグを押圧することもよく知られている。これにより、異なった血液の各成分は各成分毎にチューブを介して、適宜、各分離バッグ内に排液採集される。従来の血液バッグ加圧装置は、欧州特許175,618、342,404及び米国特許4,350,585、4,354,116、4,663,032に述べられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来装置はすべて、血液バッグを押圧する時には、血液バッグの充填容積に関係無く、ある一定の軌道で血液バッグを押圧し、特定の血液成分あるいは血液バッグ形態でのみ最良に動作するという欠点があった。それが故にこれから外れた血液成分あるいは血液バッグ形態では、様々な不具合が生じていた。
【0005】血液バッグを押圧すると、血液バッグ内に波立ちが生じ、層状に分離された血液成分が混合してしまう。このような波立ちは、通常、血液バッグの上部で発生する為、改善法として、加圧手段に プラスチックあるいは同様なもので形成された流路形成部材を付けその結果、流路形成部材に沿って、血液成分が血液バッグの出口に向かって押圧されることも知られていた。
【0006】しかしながら、従来装置ではある一定の軌道で血液バッグを押圧するため、血液バッグの充填容積に大きく影響を受け、流路形成部材が互いに十分押圧されず、流路形成部材がその機能を十分発揮していなかった。
【0007】また、上述の装置のいくつかは、血液バッグが押圧されたとき、血液バッグの上部側あるいは下部側にしわが生じ、しわが生じたまま押圧されることがあった。その結果、分離すべき血液成分が血液バッグ内に残存したり、他の血液成分と混合してしまうことがあった。
【0008】
【課題を解決しようとする手段】本発明は上記不具合のない液体分離装置、特に柔軟性を有する容器内に層分離された液体を分離する装置に関する。該容器は液体を排液するための少なくとも1つの出口を持つ。該装置は主に、2つの加圧プレートと、押圧時に加圧プレートに互いに少なくとも2つの動作をさせるための手段で構成され、容器は加圧プレート間で固定され続いて押圧される。また、該動作の1つは加圧プレート同志が平行状態のままその距離を移動させるもので、もう1つは加圧プレート同志で形成される角度を変化させるものである。
【0009】実施例によると、装置は、上述手段が加圧プレートを互いに動かす駆動部材であり、加圧プレートの少なくとも1つが回転可能に固定され、回転軸によって加圧プレートが傾く。この軸は加圧プレートの接触面の上部と下部の間に適宜位置付けされ、接触面の中央部から適宜離された部分にある。
【0010】上述駆動手段はいかなる形状のものでも良いが、好ましくは例えばスプリング、シリンダー、モーター等の駆動部により回転方向に動くフレームで構成される。
【0011】
【発明の効果】本発明では、バッグ押圧時に加圧プレートが有効な相互位置になるように、加圧プレートが2つの相互動作をするため、血液バッグの形態が最適に調整される、あるいは自動的に調整される。従って、流路形成部材が互いに十分押圧され、流路形成部材がその機能を十分発揮でき、また、血液バッグの上部側あるいは下部側にしわが生じたまま加圧されることがないので、血液成分あるいは血液バッグの形態等に関係なく最良に動作する。
【0012】
【実施例】本発明の特徴をより理解し易いように説明するため、図面を用いて好ましい例について下記に述べる。
【0013】図1は本発明の装置の正面図。
【0014】図2−4は、図1の矢線F2に沿った本装置の異なった位置からの図。
【0015】図5−8は、本装置の他の実施例。
【0016】本発明装置1は第1図〜第4図に示されるように主に次ぎの構成からなる。フレーム2、2つの加圧プレート3と4、そしてこの加圧プレート3と4をお互いの関係から少なくとも2通りの動きをとらせることができる駆動手段5を有する。そして、それぞれの動きはいつでも自由に変えることができる。
【0017】第1図に示すように、血液バッグのような軟質容器6は、加圧プレート3と4の間に固定される。そして、この実施例の装置では、加圧プレート4が可動加圧プレートであり、プレート3は、固定加圧プレートとなっている。
【0018】従って、加圧プレート3と4の間に容器6を吊すことができるフック7のような固定手段がフレーム2に取り付けられている。容器6には、そのための穴が設けられている。
【0019】容器6を押圧することによって、内容液は出口9を通って押し出される。
【0020】遠心分離後に容器内の血液が、主に赤血球からなる層10、バッフィーコートと呼ばれる層11および主に血漿からなる層12を形成することは知られていることである。徐々に容器6を押圧すると、血漿は出口9から押し出され、それからバッフィーコート11が続く。
【0021】これらは、トランスファーチューブ13を経由してそれぞれリザーバー14、15に集められる。その後、このトランスファーチューブ13は、閉塞され切断される。
【0022】最も望ましい具体例は第1図〜第4図に示される。上述したように駆動手段5は、加圧プレート3と4のいずれか一方、この実施例の場合は加圧プレート4を、プレート3と4がお互い近づくように動かすための駆動部材16を有している。そして、加圧プレート3と4のいずれか一方、この実施例では加圧プレート4は、回転可能に固定されている。
【0023】この自由に動く加圧プレート4(可動加圧プレート)は、傾くことができるように、後述する中間アーム28に取り付けられている。実施例に示されるように、加圧プレート4は、加圧プレート3と4の接触面18と19と平行に位置する回転軸17を中心として傾かせることができる。言い換えれば、プレート4は、中間アーム28に、回転軸17を形成するシャフトにより、プレート4の上部および下部がプレート3方向に回転可能に軸支されている。
【0024】回転軸17は望ましくは水平であり、接触面18と19の上部側20と下部側21の間に位置する。回転軸17は接触面18、19の中央部分22と、接触面18、19の上部側または下部側の間に位置することが好ましい。
【0025】回転軸17が、容器6の出口9が位置する側の部分(上部側20または下部側21)と中央部分22との間にあるときが、最も望ましい。 図示する実施例では、出口9は、接触面の上部側にある。従って、回転軸17は、中央部分22より上方に位置している。 しかしながら、出口9が下部側21にあるときは、回転軸17は好ましくは中央部分22より下方にあることが好ましい。
【0026】第1図から第4図に示される実施例において、駆動部材16は駆動部24によって、軸25を中心として回転できるような回転フレーム23を有している。軸25は加圧プレート3、4の下方にあることが好ましい。
【0027】フレーム23はどんな形状もとることができる。図示した実施例では、フレーム23は、2つのL型アーム26と27から成っている。
【0028】可動加圧プレート4は、アーム26と27の間で、加圧プレート3方向に傾くことができるように取り付けられている。さらに、中間アーム(連結アーム)28,29を有するので、プレート4は回転軸17だけでなく、回転軸30を中心として傾くことができる。
【0029】装置1が開放状態の時(容器6を装填していない時)、プレート4が落ちることを防ぐために、所定の位置に加圧プレート4を保持するための弾性体手段が設けられている。 第2図〜第4図に示されるように、、リーフスプリング31(板バネ31)が、アーム26と28の間に、さらに中間アーム27と29との間に取り付けられている。リーフスプリング31は、加圧プレート4が容器6を押圧している時にその作用に反することが無い程度の弾性力を有する。
【0030】第1図〜第4図に示される実施例によると、駆動部24は、空圧、水圧または油圧駆動シリンダーから成り、駆動シリンダーには、図示しない空圧、水圧または油圧回路が接続されている。
【0031】第1図〜第4図に示されるように、容器6の押圧中に、内溶液面の乱れが起こらないように加圧プレート3または4の少なくともひとつに(この場合は両方であるが)、ガイド手段が設けられる。それらの手段は、発泡プラスチックまたはそれに似たものである圧縮可能材料から作られている流路形成部材32から成る。加圧プレート3と4が容器6を押圧している時に、流路形成部材32は、容器6内に出口9へ向かって集中するう流路33を形成し、結果として容器6の上端部34での液面の乱れを防ぐ。
【0032】装置1の動作は第2図〜第4図から容易に理解できる。
【0033】まず最初に容器6(この場合では、血液バッグ)を装置に装着する。容器の孔8にフック7を引っかける。
【0034】駆動部24のピストンを伸ばすことによって、フレーム23は動く。連続の動作は第2図〜第4図に示される。
【0035】第2図に示すのは、加圧プレート4が加圧プレート3に向かって動き容器6に接するところである。フレーム23はさらに動き、容器6はその上側を流路形成部材32で挟まれる。その結果、第3図に示されるように、容器6内には血液成分を導くための流路33が形成される。フレーム23はさらに動き、第4図に示されるように、加圧プレート4のR2方向の動きによって、さらに容器6の下側を押圧され、層10と11は徐々に容器6から排出される。
【0036】図面から明らかなように、加圧プレート4はいつも容器6の容積に合わせて、プレート自身を調整する。言い換えれば、向かい合う流路形成部材32は、容器6の容積に関係なく、常にお互いに押し合って、両者間に挟まれた容器6内に流路33を形成する。
【0037】加圧プレート4は2つの組合わされた動作をとる。2つの動作は、軸25を中心とする回転動作R1と軸17と30を中心とする回転動作であるR2である。第5図は別の実施例を示す。加圧プレート4は、中間アーム35によって、回転方向に動く回転アーム23のアーム26と27に固定されている。中間アーム35はアーム26と27に固定されており、加圧プレート4は回転軸36を中心としてのみ自由に回転方向に動くことが出来る。
【0038】その加圧プレート4は開放状態において(装置に容器が装填していない状態)、リーフスプリング31によってその最初の位置を維持する。
【0039】第5図に示される実施例では、上述した駆動部24はフレーム23に力を働かせるスプリングによって形成される。結果として、加圧プレート3と4とによる押圧が達成される。この装置では、開放状態はレバー37をフック38にロックすることのよって維持できる。
【0040】このように第5図の加圧プレート4は2つの動作ができる。2つの動作は、軸25を中心とする回転動作R1と軸36を中心とする回転動作R3である。この実施例の装置では、レバー37とフック38とのロックを解除すると、駆動部24を構成するバネの復元力により、フレーム23、アーム26が回転し、プレート4がプレート3方向に動き、容器6がバネの力により自動的に押圧される。
【0041】第6図はまた別の実施例を示す。駆動部材16は上述の回転動作R1に代わる平行動作T1を有する。従って、加圧プレート4は、駆動シリンダー41のピストンロッド40に結合しているフレーム39に蝶番の関係で結合している。
【0042】図1−4に類似した実施例が図6に示され、一方の端部が加圧プレート4に、他方の端部が駆動部材16に、それぞれ蝶番結合した中間アーム28,29の使用が示されている。加圧プレート4は、平行移動T1と回転方向の移動R4の2つの動作を行う。
【0043】図7には、上述中間アーム28,29 を使用しないで、加圧プレート4を直接フレーム39に固定する実施例が示されている。加圧プレート4は、ピストンロッド40が動作することにより得られる平行動作T1と回転軸36を中心とする回転動作R5の2つの動作を行う。
【0044】加圧プレート4が、必ずしも自由に傾くように取り付けられていなくても良いことを理解するため、図8には、加圧プレート3及び/または4が少なくともコントロールされた状態で2つの動作が出来るように駆動手段42を使用することが出来ることを示している。
【0045】図8の実施例において、2つの駆動シリンダー43,44の端部には、加圧プレート4の上部側と下部側に別々に接合されている。具体的には、図8に示すように、シリンダー43の端部はプレート4の上部に、シリンダー44の端部はプレート4の下部に、それぞれ回転可能に固定されている。駆動シリンダー43,44は制御手段45によって制御され、その結果、容器6が押圧される間、図8に示されるように距離A,Bがいつもセット、調節される。ここにおいて、加圧プレート4は主に2つの動作、加圧プレート3,4が互いに平行状態で近づく平行移動動作T2と、加圧プレート3,4間の角度を調節する回転動作R6を行う。例えば、制御手段45は、シリンダー43、44を作動させて、ほぼ同じ距離ピストンを突出させることにより、プレート4を、プレート3方向に平行移動させ、流路形成部材32が容器6の上部を若干押圧し、プレート4の中間部が容器6に当接あるいは、若干押圧する状態とする。続いて、制御手段45は、シリンダー43のみを作動させて、シリンダー43のピストンのみを突出させることにより、流路形成部材32間により容器6の上部が押圧された状態(図3に近似したような状態)とする。続いて、制御手段45は、シリンダー44のみを作動させて、シリンダー44のピストンのみを突出させることにより、プレート3、4(流路形成部材32より下部側)にて容器6を押圧する状態(図4に近似したような状態)とする。
【0046】液体を分離するための装置の様々な形態を述べたが、本発明は、実施例あるいは添付された図面に示されたものに制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の装置の正面図。図2−4は、図1の矢線F2に沿った本装置の異なった位置からの図。図5−8は、本装置の他の実施例。図中の主な符号は、次のとおりである。
・・・液体分離装置、 3,4・・・加圧プレート、 5・・駆動手段、 16・・・駆動部材、 17,25,30,36・・・軸、 23・・・回転フレーム、 24・・・駆動部、 26,27・・・アーム、 28,29・・・中間アーム、 31・・・リーフスプリング、 32・・・流路形成部材、 41,43,44・・・駆動シリンダー、 45・・・制御手段、 R・・・回転動作、 T・・・平行移動

【特許請求の範囲】
【請求項1】軟質容器内に複数の層に分れた状態で充填されている液体を分離するための液体分離装置であって、該液体分離装置は、前記軟質容器を押圧するための向かい合った2つの加圧プレートを有し、該2つの加圧プレートの少なくとも一方は可動加圧プレートであり、さらに、液体分離装置は、前記可動加圧プレートを他方のプレート方向に駆動するための駆動手段を有しており、前記可動加圧プレートは、前記駆動手段により駆動される駆動部材によって、前記他方のプレートと向かい合うように、かつ該可動加圧プレートの上部および下部が前記他方のプレート方向に回転可能に軸支されていることを特徴とする液体分離装置。
【請求項2】軟質容器内に複数の層に分れた状態で充填されている液体を分離するための液体分離装置であって、該液体分離装置は、前記軟質容器を押圧するための向かい合った2つの加圧プレートを有し、該2つの加圧プレートの少なくとも一方は可動加圧プレートであり、さらに、液体分離装置は、前記可動加圧プレートを他方のプレート方向に駆動するための2つの駆動手段を有しており、該2つの駆動手段の一方は、前記可動加圧プレートの上部を駆動するものであり、他方の駆動手段は、前記可動加圧プレートの下部を駆動するものであり、そして、前記可動加圧プレートは、前記2つの駆動手段により駆動されるそれぞれの駆動部材によって、前記他方のプレートと向かい合うように、かつ該可動加圧プレートの上部および下部が前記他方のプレート方向に回転可能に軸支されていることを特徴とする液体分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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