液体吐出ヘッドおよびそれを用いた記録装置
【課題】 本発明の目的は、加圧室を格子状に配置した際に、幅を小さくできる液体吐出ヘッドおよびそれを用いた記録装置を提供することにある。
【解決手段】 複数の吐出孔8、複数の加圧室およびn個(nは4以上の偶数)のマニホールド5bを有する流路部材4と、複数の加圧部30とを備えている液体吐出ヘッド2であって、流路部材4を平面視したとき、加圧室10が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、複数のマニホールド5bが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、マニホールド5bの間の隔壁として、マニホールド5bよりも幅が狭い第1の隔壁15aとマニホールド5bよりも幅が広い第2の隔壁15bとを有し、それぞれの隔壁には隣接するマニホールド5bから繋がっている吐出孔8が2つ吐出孔行9をなしており、各吐出孔8は所定の条件を満足する配置となっている。
【解決手段】 複数の吐出孔8、複数の加圧室およびn個(nは4以上の偶数)のマニホールド5bを有する流路部材4と、複数の加圧部30とを備えている液体吐出ヘッド2であって、流路部材4を平面視したとき、加圧室10が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、複数のマニホールド5bが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、マニホールド5bの間の隔壁として、マニホールド5bよりも幅が狭い第1の隔壁15aとマニホールド5bよりも幅が広い第2の隔壁15bとを有し、それぞれの隔壁には隣接するマニホールド5bから繋がっている吐出孔8が2つ吐出孔行9をなしており、各吐出孔8は所定の条件を満足する配置となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出させる液体吐出ヘッドおよびそれを用いた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタやインクジェットプロッタなどの、インクジェット記録方式を利用した印刷装置が、一般消費者向けのプリンタだけでなく、例えば電子回路の形成や液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造、有機ELディスプレイの製造といった工業用途にも広く利用されている。
【0003】
このようなインクジェット方式の印刷装置には、液体を吐出させるための液体吐出ヘッドが印刷ヘッドとして搭載されている。この種の印刷ヘッドには、インクが充填されたインク流路内に加圧手段としてのヒータを備え、ヒータによりインクを加熱、沸騰させ、インク流路内に発生する気泡によってインクを加圧し、インク吐出孔より、液滴として吐出させるサーマルヘッド方式と、インクが充填されるインク流路の一部の壁を変位素子によって屈曲変位させ、機械的にインク流路内のインクを加圧し、インク吐出孔より液滴として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
【0004】
また、このような液体吐出ヘッドには、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に液体吐出ヘッドを移動させつつ記録を行なうシリアル式、および記録媒体より主走査方向に長い液体吐出ヘッドを固定した状態で、副走査方向に搬送されてくる記録媒体に記録を行なうライン式がある。ライン式は、シリアル式のように液体吐出ヘッドを移動させる必要がないので、高速記録が可能であるという利点を有する。
【0005】
そこで一方方向の長い液体吐出ヘッドを、マニホールド(共通流路)およびマニホールドから複数の加圧室をそれぞれ介して繋がる吐出孔を有した流路部材と、前記加圧室をそれぞれ覆うように設けられた複数の変位素子を有するアクチュエータユニットとを積層して構成したものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この液体吐出ヘッドでは、複数の吐出孔にそれぞれ繋がった加圧室が千鳥状に配置され、それを覆うように設けられたアクチュエータユニットの変位素子を変位させることで、各吐出孔からインクを吐出させ、主走査方向に600dpiの解像度で印刷が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−305852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の液体吐出ヘッドと同様の構造で、さらに解像度を高めようとすると、変位素子間のクロストークの影響が大きくなり、十分な印刷精度が得られないことがあった。
【0008】
その際、変位素子(加圧室)の配置を格子状にして、クロストークを小さくすることが考えられる。しかし、その場合、加圧室と吐出孔との平面上の位置の差が大きいため、特許文献1に記載されているように吐出孔を配置すると、液体吐出ヘッドの幅が大きくなってしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的は、加圧室を格子状に配置した際に、幅を小さくできる液体吐出ヘッドおよびそれを用いた記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体吐出ヘッドは、複数の吐出孔、該複数の吐出孔とそれぞれ繋がっている複数の加圧室および該複数の加圧室に液体を供給するn個(nは4以上の偶数)のマニホールドを有する流路部材と、該流路部材に接合されており、前記複数の加圧室の体積をそれぞれ変化させる複数の加圧部とを備えている液体吐出ヘッドであって、前記流路部材を平面視したとき、前記加圧室が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、前記n個のマニホールドが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、前記マニホールドの間の隔壁として、前記マニホールドよりも幅が狭い第1の隔壁と前記マニホールドよりも幅が広い第2の隔壁とを有し、1つの前記マニホールドに繋がっている前記加圧室が、前記行方向に並んだ2つの加圧室行を構成しており、当該2つの加圧室行に属する加圧室に繋がっている前記吐出孔は、当該マニホールドの両側で、等間隔dで配置されている2つの吐出孔行を構成しており、前記列方向に並んでいる加圧室列に属する前記加圧室と繋がっている前記吐出孔のそれぞれが、前記行方向において当該加圧室列を中心とする幅dの範囲をd/2nの間隔で分割した領域のうちのいずれかの領域に配置されており、前記第1の隔壁に配置されている、2つの前記吐出孔行のうち一方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi1番目の吐出孔であり、他方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi2番目の吐出孔とすると、i1−i2の絶対値がn+1またはn−1であり、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からn番目の吐出孔とn+1番目の吐出孔とが、前記第2の隔壁、もしくは前記列方向の端の壁に配置されており、前記列方向の両端の壁に配置されている前記吐出孔を、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi3番目の吐出孔とi4番目の吐出孔とすると、i3−i4の絶対値が2〜2n−2のいずれかであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、複数の吐出孔、該複数の吐出孔とそれぞれ繋がっている複数の加圧室および該複数の加圧室に液体を供給するm個(mは3以上の奇数)のマニホールドを有する流路部材と、該流路部材に接合されており、前記複数の加圧室の体積をそれぞれ変化させる複数の加圧部とを備えている液体吐出ヘッドであって、前記流路部材を平面視したとき、前記加圧室が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、前記m個のマニホールドが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、前記マニホールドの間の隔壁として、前記マニホールドよりも幅が狭い第1の隔壁と前記マニホールドよりも幅が広い第2の隔壁とを有し、1つの前記マニホールドに繋がっている前記加圧室が、前記行方向に並んだ2つの加圧室行を構成しており、当該2つの加圧室行に属する加圧室に繋がっている前記吐出孔は、当該マニホールドの両側で、等間隔dで配置されている2つの吐出孔行を構成しており、前記列方向に並んでいる加圧室列に属する前記加圧室と繋がっている前記吐出孔のそれぞれが、前記行方向において当該加圧室列を中心とする幅dの範囲をd/2mの間隔で分割した領域のうちのいずれかの領域に配置されており、前記第1の隔壁に配置されている、2つの前記吐出孔行のうち一方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi1番目の吐出孔であり、他方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi2番目の吐出孔とすると、i1−i2の絶対値がmであり、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からm番目の吐出孔とm+1番目の吐出孔とが、前記第2の隔壁、もしくは前記列方向の端の壁に配置されており、前記列方向の両端の壁に配置されている前記吐出孔を、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi3番目の吐出孔とi4番目の吐出孔とすると、i3−i4の絶対値が2〜2m−2のいずれかであることを特徴とする。
【0012】
なお、吐出孔が第1の隔壁に配置されているとは、流路部材を透視して見たときに、吐出孔が第1の隔壁と重なる位置に配置されているという意味である。吐出孔が第2隔壁あるいは端の壁に配置されているについても、同様の意味である。
【0013】
さらに、本発明の記録装置は、前記液体吐出ヘッドと、記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して搬送する搬送部と、前記複数の加圧部を制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2つの吐出孔行が配置された第1の隔壁の幅を狭くできるの、液体吐出ヘッドの幅を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の液体吐出ヘッドを構成する流路部材および圧電アクチュエータの平面図である。
【図3】図2の一点鎖線に囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した図である。
【図4】図2の一点鎖線に囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した図である。
【図5】図3のV−V線に沿った縦断面図である。
【図6】(a)は、加圧室と吐出孔との配置を示した模式図であり、(b)は、吐出孔の配置した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。このカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、記録媒体である印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられ、プリンタ1に固定されている液体吐出ヘッド2は、図1の手前から奥へ向かう方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。
【0017】
プリンタ1には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2や給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
【0018】
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出すことができる。
【0019】
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118aおよび118b、ならびに、119aおよび119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
【0020】
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106および107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106および107に巻き
掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラに巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラの共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
【0021】
ベルトローラ106には、図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
【0022】
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。2つのニップローラは回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
【0023】
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
【0024】
液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体2aを有している。ヘッド本体2aの下面は、液体を吐出する多数の吐出孔8が設けられている吐出孔面4−1となっている。
【0025】
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた液体吐出孔8からは、同じ色の液滴(インク)が吐出されるようになっている。各液体吐出ヘッド2には図示しない外部液体タンクから液体が供給される。各液体吐出ヘッド2の液体吐出孔8は、液体吐出孔面に開口しており、一方方向(印刷用紙Pと平行で印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向)に等間隔で配置されているため、一方方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、例えば、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、液体吐出ヘッド本体13の下面と搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
【0026】
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体2aから印刷用紙Pの上面に向けて液滴が吐出される。これによって、印刷用紙Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
【0027】
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121aおよび121bならびに122aおよび122bとが配置されている。カラー画像が印刷された印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a〜122bによって、紙受
け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
【0028】
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2や搬送モータ174等を制御することができる。
【0029】
次に、本発明の液体吐出ヘッド2について説明する。図2は、ヘッド本体2aの平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した平面図である。図4は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため図3とは異なる一部の流路を省略した図である。なお、図3および図4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべきしぼり6、吐出孔8、加圧室10などを実線で描いている。図5は図3のV−V線に沿った縦断面図である。また、図4の吐出孔8は、位置を分かりやすくするため、実際の径よりも大きく描いてある。
【0030】
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a以外にリザーバや、金属製の筐体を含んでいる。また。ヘッド本体2aは、流路部材4と、変位素子(加圧部)30が作り込まれている圧電アクチュエータ基板21とを含んでいる。
【0031】
ヘッド本体2aを構成する流路部材4は、統合マニホールド5と、統合マニホールド5と繋がっている複数の加圧室10と、複数の加圧室10とそれぞれ繋がっている複数の吐出孔8とを備え、加圧室10は流路部材4の上面に開口しており、流路部材4の上面が加圧室面4−2となっている。また、流路部材4の上面には統合マニホールド5と繋がる開口5aを有し、この開口5aより液体が供給されるようになっている。
【0032】
また、流路部材4の上面には、変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21が接合されており、各変位素子30が加圧室10上に位置するように設けられている。また、圧電アクチュエータ基板21には、各変位素子30に信号を供給するためのFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部92が接続されている。図2には、2つの信号伝達部92が圧電アクチュエータ基板21に繋がる状態が分かるように、信号伝達部92の圧電アクチュエータ21に接続される付近の外形を点線で示した。圧電アクチュエータ21に電気的に接続されている、信号伝達部92に形成されている電極は、信号伝達部92の端部に、矩形状に配置されている。2つの信号伝達部92は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部にそれぞれの端がくるように接続されている。2つの信号伝達部92は、中央部から圧電アクチュエータ基板21の長辺に向かって伸びている。
【0033】
また、信号伝達部92にはドライバICが実装されている。ドライバICは金属製の筐体に押し付けられるように実装されており、ドライバICの熱は、金属製の筐体に伝わり、外部に放散される。圧電アクチュエータ基板21上の変位素子30を駆動する駆動信号は、ドライバIC内で生成される。駆動信号の生成を制御する信号は、制御部100で生成され、信号伝達部92の圧電アクチュエータ基板21と接続された側と反対側の端から入力される。制御部100と信号伝達部92との間には、必要に応じて、液体吐出ヘッド2内に設けられた、配線基板などが設けられる。
【0034】
ヘッド本体2aは、平板状の流路部材4と、流路部材4上に接続された変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21を1つ有している。圧電アクチュエータ基板21の平面
形状は長方形状であり、その長方形の長辺が流路部材4の長手方向に沿うように流路部材4の上面に配置されている。
【0035】
流路部材4の内部には2つの統合マニホールド5が形成されている。統合マニホールド5は流路部材4の長手方向の一端部側から、他端部側に延びる細長い形状を有しており、その両端部において、流路部材4の上面に開口している統合マニホールドの開口5aが形成されている。統合マニホールド5の両端部から流路部材4へ液体を供給することにより、液体の供給不足が起こり難くできる。また、統合マニホールド5の一端から供給する場合と比較して、統合マニホールド5を液体が流れる際に生じる圧力損失の差を約半分にできるため、液体吐出特性のばらつきを少なくできる。さらに、圧力損失の差を少なくするために、統合マニホールド5の中央付近で供給したり、統合マニホールド5の途中の数か所から供給することも考えられるが、そのような構造では液体吐出ヘッド2の幅が大きくなり、吐出孔8の配置の幅方向への広がりも大きくなってしまう。そうなると、液体吐出ヘッド2をプリンタ1に取り付ける角度のずれが印刷結果に与える影響が大きくなるので好ましくない。複数の液体吐出ヘッド2を用いて印刷する場合においても、複数の液体吐出ヘッド2の全体の吐出孔8が配置されている面積が広がるので、複数の液体吐出ヘッド2の相対的な位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなるので好ましくない。そのため、液体吐出ヘッド2の幅を小さくしつつ、圧力損失の差を少なくするためには、統合マニホールド5の両端から供給するのが好ましい。
【0036】
また、統合マニホールド5は、少なくとも加圧室10に繋がっている領域である、長さ方向の中央部分が、幅方向に間隔を開けて設けられた第1の隔壁15aで仕切られている。第1の隔壁15aは、加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分では、統合マニホールド5と同じ高さを有し、統合マニホールド5を複数のマニホールド5bに完全に仕切っている。第1の隔壁15aの幅は、第1の隔壁15aの両側のマニホールド5bよりも細くなっている。詳細は後述するが、吐出孔8を適切に配置することで、平面視したときにそのような細い第1の隔壁15aと重なるように、吐出孔8および吐出孔8から加圧室10に繋がっているディセンダを設けることができる。
【0037】
図2では、統合マニホールド5の両端部を除く全体が第1の隔壁15aで仕切られている。このようにする以外に、両端部のうちのどちらか一端部以外が第1の隔壁15aで仕切られているようにしてもよい。また、流路部材4の上面に開口している開口5a付近のみが仕切られておらず、開口5aから流路部材4の深さ方向に向かう間に隔壁が設けられるようにしてもよい。この場合、後述のプレート4e〜4iに設けられている統合マニホールド5となる孔は、完全に分離されている。いずれにしても、仕切られていない部分があれば、流路抵抗が小さくなり、液体の供給量を多くできるので、統合マニホールド5の両端部が第1の隔壁15aで仕切られていないのが好ましい。
【0038】
複数に分けられた部分の統合マニホールド5をマニホールド5bと呼ぶことがある。本実施例においては、統合マニホールド5は独立して2本設けられており、それぞれの両端部に開口5aが設けられている。2つの統合マニホールドの間にはマニホールド5bよりも幅の大きい第2の隔壁15bが設けられている。第2の隔壁15bを設けることで、流路部材4の剛性を高くすることができる。また、詳細は後述するが、幅の広い第2の隔壁15bに特定の吐出孔8配置することで、印刷精度を高くすることができる。また、1つの統合マニホールド5には、7つの第1の隔壁15aが設けられており、8つのマニホールド5bに分けられている。マニホールド5bの幅は、第1の隔壁15aの幅より大きくなっており、これによりマニホールド5bに多くの液体を流すことができる。また、7つの第1の隔壁15aは、幅方向の中央に近いほど、長さが長くなっており、統合マニホールド5の両端において、幅方向の中央に近い第1の隔壁15aほど、第1の隔壁15aの端が統合マニホールド5の端に近くなっている。これにより、統合マニホールド5の外側
の壁により生じる流路抵抗と、第1の隔壁15aにより生じる流路抵抗との間のバランスがとれ、各マニホールド5bのうち、加圧室10に繋がる部分である個別供給流路14が形成されている領域の端における液体の圧力差を少なくできる。この個別供給流路14での圧力差は、加圧室10内の液体に加わる圧力差につながるため、個別供給流路14での圧力差を少なくすれば、吐出ばらつきを低減できる。
【0039】
この実施例では、2つの統合マニホールドが、それぞれ8つのマニホールド5bに分岐しているが、16個のマニホールドが独立して並んで設けられていてもよい。
【0040】
流路部材4には、複数の加圧室10が、行方向および列方向に並んでいる格子状の配置で形成されている。行方向は、液体吐出ヘッド2の長手方向に沿った方向であり、統合マニホールド5の延在する方向である。流路部材4には、行方向に沿って加圧室10が複数配置された加圧室行11aが複数設けられている。列方向は、行方向に略直交する方向であり、流路部材4には、加圧室10が列方向に沿って複数配置された加圧室列11bが、複数設けられている。加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。
【0041】
加圧室10は1つのマニホールド5bと個別供給流路14を介して繋がっている。1つのマニホールド5bに沿うようにして、このマニホールド5bに繋がっている加圧室10の列である加圧室行11aが、マニホールド5bの両側に1行ずつ、合計2行設けられている。したがって、1つの統合マニホールド5に対して、16行の加圧室行11aが設けられており、ヘッド本体2a全体では32列の加圧室行11aが設けられている。各加圧室行11aにおける加圧室10の長手方向の間隔は同じであり、例えば、37.5dpiの間隔となっている。
【0042】
各加圧室行11aの端にはダミー加圧室16が設けられている。このダミー加圧室16は、統合マニホールド5とは繋がっているが、吐出孔8とは繋がっていない。また、32行の加圧室行11aの外側には、ダミー加圧室16が直線状に並んだダミー加圧室行が設けられている。このダミー加圧室16は、統合マニホールド5および吐出孔8のいずれとも繋がっていない。これらのダミー加圧室により、端から1つ内側の加圧室10の周囲の構造(剛性)が他の加圧室10の構造(剛性)と近くなることで、液体吐出特性の差を少なくできる。なお、周囲の構造の差の影響は、距離の近い、長さ方向に隣接する加圧室10の影響が大きいため、長さ方向には、両端にダミー加圧室を設けてある。幅方向については、影響が比較的小さいため、ヘッド本体21aの端に近い方のみに設けている。これにより、ヘッド本体21aの幅を小さくできる。
【0043】
1つの統合マニホールド5に繋がっている加圧室10は、矩形状の圧電アクチュエータ基板21の各外辺に沿った行および列をなす格子上に配置されている。これにより、圧電アクチュエータ基板21の外辺から、加圧室10の上に形成されている個別電極25が等距離に配置されることになるので、個別電極25を形成する際に、圧電アクチュエータ基板21に変形が生じ難くできる。圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを接合する際に、この変形が大きいと外辺に近い変位素子30に応力が加わり、変位特性にばらつきが生じるおそれがあるが、変形を少なくすることで、そのばらつきを低減できる。また、最も外辺に近い加圧室行11aの外側にダミー加圧室16のダミー加圧室行が設けられているために、変形の影響をより受け難くできる。加圧室行11aに属する加圧室10は等間隔で配置されており、加圧室行11aに対応する個別電極25も等間隔で配置されている。加圧室行11aは短手方向に等間隔で配置されており、加圧室行11aに対応する個別電極25の列も短手方向に等間隔で配置されている。これにより、特にクロストークの影響が大きくなる部位をなくすことができる。
【0044】
加圧室行11aの間の距離を離すと、液体吐出ヘッド2の幅が大きくなるので、プリンタ1に対する液体吐出ヘッド2の設置角度の精度や、複数の液体吐出ヘッド2を使用する際の、液体吐出ヘッド2の相対位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなる。そこで、第1の隔壁15aの幅をマニホールド5bよりも小さくすることで、それらの精度が印刷結果に与える影響を少なくできる。しかし、吐出孔8の配置によっては、第1の隔壁15aの幅を狭くすると、吐出孔8と加圧室10との間を繋ぐ流路が配置できなくなったり、クロストークの影響が大きくなるので、これらを考慮して吐出孔8を配置する必要がある。これについては、後述する。
【0045】
1つのマニホールド5bに繋がっている加圧室10は、2列の加圧室行11aをなしており、1つの加圧室行11aに属する加圧室10から繋がっている吐出孔8は、1つの吐出孔行9をなしている。2列の加圧室行11aに属する加圧室10に繋がっている吐出孔8はそれぞれ、マニホールド5bの異なる側に開口している。図4では第1の隔壁15aには、2列の吐出孔行9が設けられているが、それぞれの吐出孔行9に属する吐出孔8は、吐出孔8に近い側のマニホールド5bに加圧室10を介して繋がっている。隣接するマニホールド5bに加圧室行11aを介して繋がっている吐出孔8と液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路間のクロストークが抑制できるので、さらにクロストークを少なくすることができる。加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路全体が、液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、さらにクロストークを少なくすることができる。
【0046】
また、平面視において、加圧室10とマニホールド5bとが重なるように配置することにより、液体吐出ヘッド2の幅を小さくできる。加圧室10の面積に対する、重なっている面積の割合が80%以上、さらに90%以上にすることで、液体吐出ヘッド2の幅をより小さくできる。また、加圧室10とマニホールド5bとが重なっている部分の加圧室10の底面は、マニホールド5bと重なっていない場合と比較して剛性が低くなっており、その差により吐出特性がばらつくおそれがある。加圧室10全体の面積に対する、マニホールド5bと重なっている加圧室10の面積の割合を、各加圧室10で略同じにすることで、加圧室10を構成する底面の剛性が変わることによる吐出特性のばらつきを少なくすることができる。ここで略同じとは、面積の割合の差が、10%以下、特に5%以下であることをいう。
【0047】
1つの統合マニホールド5に繋がっている複数の加圧室10により加圧室群が構成されており、統合マニホールド5が2つあるため、加圧室群は2つある。各加圧室群内における吐出に関わる加圧室10の配置は同じで、短手方向に平行移動させた配置されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に、加圧室群間などの少し間隔が広くなった部分があるものの、ほぼ全面にわたって配列されている。つまり、これらの加圧室10によって形成された加圧室群は圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接合されることで閉塞されている。
【0048】
加圧室10の個別供給流路14が繋がっている角部と対向する角部からは、流路部材4の下面の吐出孔面4−1に開口している吐出孔8に繋がるディセンダが伸びている。ディセンダは、平面視において、加圧室10から離れる方向に伸びている。より具体的には、加圧室10の長い対角線に沿う方向に離れつつ、その方向に対して左右にずれながら伸びている。これにより、加圧室10は各加圧室行11a内での間隔が37.5dpiになっている格子状の配置にしつつ、吐出孔8は、全体で1200dpiの間隔で配置することができる。吐出孔8のより詳細な配置は後述する。
【0049】
これは別の言い方をすると、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、図4に示した仮想直線のRの範囲に、各統合マニホールド5に繋がっている16個の吐出孔8、全部で32個の吐出孔8が、1200dpiの等間隔となっているということである。これにより、全ての統合マニホールド5に同じ色のインクを供給することで、全体として長手方向に1200dpiの解像度で画像が形成可能となる。また、1つの統合マニホールド5に繋がっている1個の吐出孔8は、仮想直線のRの範囲で600dpiの等間隔にすれば。これにより、各統合マニホールド5に異なる色のインクを供給することで、全体として長手方向に600dpiの解像度で2色の画像が形成可能となる。この場合、2つの液体吐出ヘッド2を用いれば、600dpiの解像度で4色の画像が形成可能となり、600dpiで印刷可能な液体吐出ヘッドを用いるよりも、印刷精度が高くなり、印刷のセッティングも簡単にできる。
【0050】
さらに、液体吐出ヘッド2には、統合マニホールドの開口5aからの液体の供給を安定させるように流路部材4に、リザーバを接合してもよい。リザーバには、外部から供給された液体を分岐させて、2つの開口5aに繋がる流路が設けられることにより、2つの開口に液体を安定して供給できる。分岐してからの流路長をほぼ等しくすることで、外部から供給される液体の温度変動や圧力変動が、統合マニホールド5の両端の開口5aに、少ない時間差で伝わるため、液体吐出ヘッド2内の液滴の吐出特性のばらつきをより少なくできる。リザーバにダンパを設けることで、さらに液体の供給が安定化できる。さらに、液体中の異物などが流路部材4に向かうのを抑制するように、フィルタを設けてもよい。またさらに、流路部材4に向かう液体の温度を安定化させるようにヒータを設けてもよい。
【0051】
圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極25がそれぞれ形成されている。個別電極25は、加圧室10より一回り小さく、加圧室10とほぼ相似な形状を有している個別電極本体25aと、個別電極本体25aから引き出されている引出電極25bとを含んでおり、個別電極25は、加圧室10と同じように、個別電極列および個別電極群を構成している。また、圧電アクチュエータ基板21の上面には、共通電極24とビアホール導体を介して電気的に接続されている共通電極用表面電極28が形成されている。共通電極用表面電極28は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部に、長手方向に沿うように2列形成され、また、長手方向の端近くで短手方向に沿って1列形成されている。図示した、共通電極用表面電極28は直線上に断続的に形成されたものであるが、直線上に連続的に形成してもよい。
【0052】
圧電アクチュエータ基板21は、後述のようにビアホールを形成した圧電セラミック層21a、共通電極24、圧電セラミック層21bを積層し、焼成した後、個別電極25および共通電極用表面電極28を同一工程で形成するのが好ましい。個別電極25と加圧室10との位置ばらつきは吐出特性に大きく影響を与えこと、個別電極25を形成した後、焼成すると圧電アクチュエータ基板21に反りが生じるおそれがあり、反りが生じた圧電アクチュエータ基板21を流路部材4に接合すると、圧電アクチュエータ基板21に応力が加わった状態になり、その影響で変位がばらつくおそれがあることから、個別電極25は、焼成後に形成される。共通電極用表面電極28も同様に反りを生じされるおそれがあることと、個別電極25と同時に形成した方が、位置精度が高くなり、工程も簡略化できるので、個別電極25と共通電極用表面電極28は同一工程で形成される。
【0053】
このような圧電アクチュエータ基板21を焼成する際に生じるおそれのある、焼成収縮によるビアホールの位置ばらつきは、主に圧電アクチュエータ基板21の長手方向に生じるので、共通電極用表面電極28が偶数個ある統合マニホールド5の中央、別の言い方をすれば、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央に設けられており、共通電極用表面電極28が圧電アクチュエータ基板21の長手方向に長い形状をしていることにより、
ビアホールと共通電極用表面電極28とが位置ずれにより電気的に接続されなくなることを抑制できる。
【0054】
圧電アクチュエータ基板21には、2枚の信号伝達部92が、圧電アクチュエータ基板21の2つの長辺側から、それぞれ中央に向かうように配置され、接合される。その際、圧電アクチュエータ基板21aの引出電極25bおよび共通電極用表面電極28の上に、それぞれ、接続電極26および共通電極用接続電極を形成して接続することで、接続が容易になる。また、その際、共通電極用表面電極28および共通電極用接続電極の面積を接続電極26の面積よりも大きくすれば、信号伝達部92の端部(先端および圧電アクチュエータ基板21の長手方向の端)にける接続が、共通電極用表面電極28上の接続により強くできるので、信号伝達部92が端からはがれ難くできる。
【0055】
また、吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置された統合マニホールド5と対向する領域を避けた位置に配置されている。さらに、吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。
【0056】
ヘッド本体2aに含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート4a、ベースプレート4b、アパーチャ(しぼり)プレート4c、サプライプレート4d、マニホールドプレート4e〜j、カバープレート4k、カバーSPプレート4lおよびノズルプレート4mである。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路12および統合マニホールド5を構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体2aは、加圧室10は流路部材4の上面に、統合マニホールド5は内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路12を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、加圧室10を介して統合マニホールド5と吐出孔8とが繋がる構成を有している。
【0057】
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート4aに形成された加圧室10である。第2に、加圧室10の一端から統合マニホールド5へと繋がる個別供給流路14を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート4c(詳細には統合マニホールド5の出口)までの各プレートに形成されている。なお、この個別供給流路14には、アパーチャプレート4cに形成されている、流路の断面積が小さくなっている部位であるしぼり6が含まれている。
【0058】
第3に、加圧室10の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート4m(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。ノズルプレート4mの孔は、吐出孔8として、流路部材4の外部に開口している径が、例えば10〜40μmのもので、内部に向かって径が大きくなっていくものが開けられている。第4に、統合マニホールド5を構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート4e〜jに形成されている。マニホールドプレート4e〜jには、マニホールド5bを構成するように第1の隔壁15aが残るように孔が形成されている。各マニホールドプレート4e〜jにおける第1の隔壁15aは、統合マニホールド5となる部分全体を孔にすると、保持できない状態になるので、第1の隔壁15aは、ハーフエッチングしたタブで各マニホールドプレート4e〜jの
外周と繋がった状態にされる。
【0059】
第5に、カバーSPプレート4lに形成され、統合マニホールド5の下に形成されるダンパ室18となる孔である。ダンパ室18は、上述の第1〜4の孔とは繋がっておらず、液体は入るようにはなっていない。ダンパ室18と統合マニホールド5との間のカバープレート4kは、ダンパとなり、統合マニホールド5の体積が変わるようにすることで、統合マニホールド5の液体の供給の過不足が吐出に影響を与えにくくしたり、統合マニホールド5を通じて加圧室10間の間で圧力が伝わって吐出特性に影響を与えるクロストークを小さくしたりする。ダンパ室18が密閉された空間であっても、空気が体積変化することで、ダンパ室18と統合マニホールド5との間のプレートがダンパとして働くが、上述した孔と別な孔によって、ダンパ室18を流路部材4の外部と繋がるようにしておけば、ダンパとして、より良く働く。
【0060】
第1〜4の連通孔が相互に繋がり、統合マニホールド5からの液体の流入口(統合マニホールド5の出口)から吐出孔8に至る個別流路12を構成している。統合マニホールド5に供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、統合マニホールド5から上方向に向かって、個別供給流路14に入り、しぼり6の一端部に至る。次に、しぼり6の延在方向に沿って水平に進み、しぼり6の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8へと進む。
【0061】
圧電アクチュエータ基板21は、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21の圧電セラミック層21aの下面から圧電セラミック層21bの上面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層21a、21bは、例えば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
【0062】
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極24およびとAu系などの金属材料からなる個別電極25を有している。個別電極25は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている個別電極本体25aと、そこから引き出された引出電極25bとを含んでいる。引出電極25bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出され部分には接続電極26が形成されている。接続電極26は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極26は、信号伝達部92に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極25には、制御部100から信号伝達部92を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
【0063】
共通電極24は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極24は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内の全ての加圧室10を覆うように延在している。共通電極24の厚さは2μm程度である。共通電極24は、圧電セラミック層21b上に個別電極25からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極28に、圧電セラミック層21bに形成されたビアホール導体を介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極28は、多数の個別電極25と同様に、信号伝達部92上の別の電極と接続されている。
【0064】
なお、後述のように、個別電極25に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この個別電極25に対応する加圧室10の体積が変わり、加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路12を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各加圧室10に対向する部分は、各加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子30に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層体中には、図5に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子30が加圧室10毎に、加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極24、圧電セラミック層21b、個別電極25により作り込まれており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子30が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は1.5〜4.5pl(ピコリットル)程度である。
【0065】
多数の個別電極25は、個別に電位を制御することができるように、それぞれが信号伝達部92および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。個別電極25を共通電極24と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極25を共通電極24に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
【0066】
本実施の形態における実際の駆動手順は、あらかじめ個別電極25を共通電極24より高い電位(以下高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極25を共通電極24と一旦同じ電位(以下低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極25が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが元の形状に戻り、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、加圧室10内に負圧が与えられ、液体が統合マニホールド5側から加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極25を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが加圧室10側へ凸となるように変形し、加圧室10の容積減少により加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液滴が吐出される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極25に供給することになる。このパルス幅は、圧力波がしぼり6から吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、
加圧室10内部が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
【0067】
また、階調印刷においては、吐出孔8から連続して吐出される液滴の数、つまり液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行なわれる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔8から連続して行なう。一般に、液体吐出を連続して行なう場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合後から吐出される液滴の速度が速くなると考えられるが、その方が複数の液滴の着弾点が近くなり、好ましい。
【0068】
続いて、以上のような液体吐出ヘッド2における吐出孔8の配置について、より詳しく
説明する。以下では副マニホイール5bが、n個(nは4以上の偶数)ある場合について、一般的に説明する。具体的な例としては、ここまで説明してきたn=16の場合について、説明する。
【0069】
図6(a)は、加圧室10と吐出孔8との配置の関係を示した模式的な平面図である。図6(b)は、1つの加圧室列11bに属する加圧室10から繋がっている32個の吐出孔8の配置である。図の左右は、加圧室10に対する吐出孔8の液体吐出ヘッド2の長手方向の位置であり、図の上下は、吐出孔行9の端からの行数である。16行目と17行目の吐出孔行9は、1つの第2の隔壁15bに設けられている。この隔壁以外の隔壁は第1の隔壁であり、図では第1の隔壁15aに相当する部分は、格子状の境界が列方向に繋がって示されている。2行目と3行目のように、偶数行目とその次の行数の吐出孔行9は、16行目と17行目以外は、1つの第1の隔壁15aに設けられている。1行目と32行目の吐出孔行9は、一番端の吐出孔行9である。図6(b)の配置は模式的なものであるが、図には、吐出孔8の配置の関係が分かるように、図の左右方向の実際の長さがdであり、行方向に隣り合う吐出孔8の行方向の距離がd/2nであることを示している。図の上下方向の寸法は、実際の寸法に比例して示されてはいない。
【0070】
このような吐出孔8の配置が、長手方向(行方向)に長さd毎に繰り返されることで、液体吐出ヘッド2の幅方向に隙間なく印刷をすることができる。長さdは前述の仮想直線のRの長さである。なお、同じ配置を繰り返さずに、後述の条件に合う別の吐出孔8の配置を交互に繰り返したり、3つ以上の配置を並べるようにしてもよい。
【0071】
図6(a)の2つの加圧室10は、同じ加圧室列11bに属すものであり、仮想線L(加圧室列の中心線L)は加圧室列11bの行方向の中心を示したものである。加圧室10の形状がひし形状であるため、吐出孔8に繋がっているディセンダは、加圧室10の鋭角部、つまり加圧室列の中心線Lと加圧室10との交点付近に繋がっている。加圧室列の中心線Lは、より詳細には、1つの加圧室列11bに属する加圧室10の面積を2分割する列方向に伸びた線であり、また1つの加圧室列11bに属する加圧室10の面積重心を繋いだ線である。
【0072】
1つの加圧室列11bに属する2n個の加圧室10に繋がっている吐出孔8で、一定範囲(距離d)の印刷をする必要がある。逆にいえば、幅dの範囲をd/2nの間隔で分割した領域のすべてに吐出孔8を設けることで、1つの加圧室列11bに属する加圧室10に繋がっている、幅dの中にある2n個の吐出孔8からの吐出で、距離dの範囲が印刷できようになる。例えば1200dpiで印刷する場合、画素を1インチの中に1200個形成する必要があるので、画素の間隔は約21μm(≒25.4mm/1200)となる。n=16であれば、距離dは約677μm(≒25.4mm×16×2/1200)である。
【0073】
1つの第1の隔壁15bには2行の吐出孔列9が配置されている。1つの第1の隔壁15bにはその両側の加圧室10から、吐出孔8に繋がるディセンダが繋がっていきている。図6(a)では、2つの加圧室10から繋がる吐出孔8が形成される可能性のある吐出孔8の配置を破線の円で示している。n=16の場合、吐出孔8が形成される位置は32カ所ある。図では、下側の加圧室10は、一方の端である左から1番目(以下で左からを省略して単に1番目と表すことがある)の位置に開口している吐出孔8に繋がっており、上側の加圧室10は、左から18番目の位置に開口している吐出孔8に繋がっている(これは、図6(b)では、2行目および3行目の吐出孔行9の位置である)。これらの吐出孔8の配置が近すぎると、クロストークの影響が大きくなったり、そもそもディセンダとなる孔が互いに繋がってしまうのでディセンダが形成できなくなってしまう。
【0074】
また、変位素子30を駆動する際に、全ての変位素子30を同時に駆動するとクロストークの影響が大きくなるために、時間的に分割して駆動することが考えられる。その際、同じ加圧室行11aに対応する変位素子30には同時に駆動信号を送り(ここで駆動信号を送るとは、吐出を生じさせないような電圧を送ることも含む)、異なる加圧室行11aにはタイミングを変えて駆動信号を送ることが、制御が簡単になり好ましい。具体的なタイミングの変え方としては、例えば、駆動信号を送るタイミングを1行おき同じにし、隣接する行で駆動信号を送るタイミングを変えればよい。このようにすれば、隣接する加圧室行11aでは駆動信号が送られるタイミングが異なるので、加圧室行11aに属する加圧室10と、それに隣接する加圧室行11aに属する加圧室10との間のクロストークは少なくなる。
【0075】
しかし、このようにしてもクロストークは全くなくなるわけでない。残るクロストークの影響としては、駆動信号が先に送られた場合と、後で送られた場合との間で、吐出速度や吐出量に差が生じるものがある。例えば、後で送られた駆動信号で形成された画素が、先で送られた駆動信号で形成された画素よりも小さい(液滴量が少ない)ことがある。この場合、印刷用紙P上で液体吐出ヘッド2の長手方向に隣接する画素が2つとも小さい画素であると、印刷のむらとして目立ち易いので、隣接した2つの画素は、駆動信号のタイミングのずらし方が異なる駆動信号で形成されたものであることが好ましい。加圧室行11aに属する加圧室10に繋がっている吐出孔8を、列方向において、偶数番目と奇数番目との交互にすれば、印刷用紙P上で液体吐出ヘッド2の長手方向に隣接する画素は、異なる駆動信号のタイミングのずらし方をした駆動信号で形成されたものになり、印刷むらが目立ち難くなる。
【0076】
上述のように第1の隔壁15aに設けられる2つの吐出孔行9に属する吐出孔8は、近くに存在するディセンダから離れるように、できるだけ長手方向に離して配置するのが好ましい。これは、この観点だけからいえば、2つの吐出孔行9に属する吐出孔8を、それぞれi1番目の吐出孔8とi2番目の吐出孔8としたときに、i1−i2の絶対値をnにするのが好ましいということである。しかし、この値をnにすると、nは偶数なので、列方向において、偶数番目と奇数番目の吐出孔8を交互に配置することができなくなってしまう。したがって、交互配置を実現しつつ、長手方向に離れる配置として、i1−i2の絶対値は、n−1またはn+1であることがよい。
【0077】
またさらに、考慮すべき点として、n番目の吐出孔8およびn+1番目の吐出孔8およびそれに繋がるディセンダは、隣接する加圧室行11aに属する加圧室10に近い位置に配置されるため、特にクロストークの影響を強く受けるので、幅の狭い第1の隔壁15aに設けるのは好ましくない。これを避ける方法としては、n番目の吐出孔8およびn+1番目の吐出孔8は、列方向における端の壁に配置することが考えられる。しかし、そのような配置は好ましくない。例えばベタのパターン印刷する際、列の一端側から記録用紙Pが搬送されてくると、一行目の吐出孔8であるn番目の吐出孔8から吐出が行なわれる。この際、2行目の吐出孔8を含め他の行の吐出孔8からは吐出されないので、クロストークが非常に少ない状態であり、液体吐出ヘッド2内の液体の流動量は少ない状態である。印刷が進み、最初に一行目の吐出孔8から吐出された液滴の着弾点の隣に向けて、2n行目の吐出孔8であるn+1番目の吐出孔8から吐出が行なわれる。2n−1行目の吐出孔8を含め他の行の吐出孔8からは吐出が行なわれており、クロストークが非常に多い状態であり、液体吐出ヘッド2内の液体の流動量は多い状態である。
【0078】
このようにn番目とn+1番目の吐出孔8の吐出状態は大きく異なるので、記録用紙P上でこれらにより形成された画素が隣接していると印刷むらが目立つことになる。上述の例では、ベタのパターンを印刷をする極端な場合を例示したが、印刷される画素の量が大きく変わる境界などでも同様の現象が起こり、印刷むらが目立つことになる。したがって
、列方向の両端の吐出孔8から吐出される液滴は、隣接して着弾させないような配置にすることが好ましい。これは、換言すれば、列方向の両端に配置される吐出孔8を、i3番目の吐出孔8とi4番目の吐出孔8とすると、i3−i4の絶対値を1および2n−1にしないことが好ましいということであり、i3−i4の絶対値が2〜2n−2のいずれかであることが好ましいということである。
【0079】
以上検討した条件全てを満足させつつ、全ての隔壁をマニホールド5bより幅の狭い第1の隔壁15aにしようとしても、そのような配置は存在しない。そのため、本発明では、一部の隔壁を、マニホールド5bより幅の広い第2の隔壁15bとし、n番目とn+1番目の吐出孔8を、列方向の端の壁あるいは第2の隔壁15bに配置することで、上述の条件を満足させつつ、液体吐出ヘッド2の幅方向の大きさを小さくする。第2の隔壁15bの数は少ない方が、幅をより小さくできるので好ましく、1つの第2の隔壁15bを設ければ、上述の条件を満足できるようにできるので、第2の隔壁15bの数は1つとするのがよい。
【0080】
以上をまとめると、第1の隔壁15aに配置されている、2行の吐出孔行9のうち一方の吐出孔行9に属する吐出孔8をi1番目の吐出孔8とし、他方の吐出孔行9に属する吐出孔8をi2番目の吐出孔8とすると、i1−i2の絶対値がn+1またはn−1であり、n番目の吐出孔8とn+1番目の吐出孔8とが、第2の隔壁15b、もしくは列方向の端に配置されており、列方向の両端に配置される吐出孔8を、i3番目の吐出孔8とi4番目の吐出孔8とすると、i3−i4の絶対値が2〜2n−2のいずれかであるのがよいということである。
【0081】
図6(b)の配置がこの条件を満たしていることは、次のようにすれば確認できる。2行目の吐出孔行9に配置されているのは、1番目の吐出孔8であり、3行目の吐出孔行9に配置されているのは、18番目の吐出孔8である。これらは第1の隔壁15aに配置されているので、i1=1、i2=18であり、i1−i2の絶対値は17である。これは、n+1、すなわち16+1であるという条件を満たしている。次に、n番目の吐出孔8とn+1番目の吐出孔8、すなわち16番目の吐出孔8と17番目の吐出孔8は、17行目の吐出孔行9と32行目の吐出孔行9に配置されている。17行目の吐出孔行9は、第2の隔壁15bに配置されており、32行目の吐出孔行9は列方向の端の壁に配置されているので、条件を満たしている。次に、列方向の端の吐出孔行9は、1行目の吐出孔行9と32行目の吐出孔行9である。これらに配置されているのは、26番目の吐出孔8と17番目の吐出孔8であるので、i3=26、i4=17であり、i3−i4の絶対値は9である。これは、2〜2n−2のいずれか、すなわち2〜30のいずれかであるという条件を満たしている。
【0082】
各第1の隔壁15aにおけるi1−i2の絶対値は、それぞれn−1、n+1のどちらでもよいが、それぞれの吐出孔8の状態を同じ条件に近づけるため、どちらか一方に統一する方が好ましい。第2の隔壁15bの数を1つにした場合、全てをn−1にすることはできなくなる上、第1の隔壁15aにおいてディセンダが同じ側に伸びる配置にする場合が生じてクロストークが大きくなるおそれがあるので、i1−i2の絶対値はn+1とするのが好ましい。例えば、吐出孔8が1番目とn番目のものであれば、図6(a)において、上側の加圧室10から伸びるディセンダも、下側の加圧室10から伸びるディセンダも左側に向かうので、ディセンダ同士が一部並行することになるのでクロストークが大きくなるおそれがあるが、これを避けることができる。
【0083】
第2の隔壁15bは、できるだけ少なくすることが好ましく、1つにするのが好ましい。その配置は、幅方向(列方向)の中央にすることで、吐出孔8の配置のバランスがとれるので好ましい。具体的にはn/2番目のマニホールド5bとn/2+1番目のマニホー
ルド5bのマニホールド5bとの間に設けるのが好ましい。また、このような配置にすることで、流路部材4の剛性が、対称性を持った状態で高くなり、液体の流動や吐出の反動による変形が抑制できるので、吐出状態を安定させることができる。
【0084】
また、前述の印刷される画素の量が大きく変わる境界で生じるおそれのある印刷むらについては、列方向の端の吐出孔8だけでなく他の吐出孔8についても考慮することが好ましい。その場合、列方向の端の吐出孔8同士場合と異なり、周囲とのクロストークの状態については、大きく異ならないので、記録用紙P上で隣接する画素の大きさや位置が大きく異なることはないが、画素の大きさの数倍のすじ状の印刷むらが目立つことがある。具体的には、液体吐出ヘッド2内部の液体の流動が少ない状態と、流動が激しい状態とでは、吐出特性が異なる場合、前者の状態で吐出された画素と、後者の状態で吐出された画素とは、単独で存在する場合はその差が少なくて目立たなくても、それぞれが連続していた場合、目立つことになる。これに対して、印刷状態の大きく異なるおそれのある、液体吐出ヘッド2の幅方向の一方に端に近い半分から吐出された画素と、他の半分から吐出された画素とが交互に着弾するようにすれば、平均化されて印刷むらをより目立たなくできる。具体的には、吐出孔8を、行方向に平行な仮想直線に投影したとき、前記仮想直線上で隣り合う吐出孔8の一方が、列方向における1〜n行目のいずれかの吐出孔行9に属し、他方が列方向におけるn+1〜2n行目のいずれかの吐出孔行9に属するようにすればよい。
【0085】
以上はマニホールド5bが偶数個の場合の説明であるが、奇数個の場合も、基本的な考え方は同じである。マニホールド5bの数がm個(mは3以上の奇数)の場合、1つの第1の隔壁に設けられる2つの吐出孔行9の吐出孔8の一方をi1番目の吐出孔8、他方をi2番目の吐出孔8とすると、i1−i2の絶対値は、距離が最も離れるmにすればよい。mが奇数なので、列方向において、偶数番目と奇数番目の吐出孔8を交互に配置することができるので、マニホールド数が偶数の場合のような問題は生じない。
【0086】
他の条件は、偶数の場合と同様なので、mが奇数の場合についてまとめると、第1の隔壁15aに配置されている、2行の吐出孔行9のうち一方の吐出孔行9に属する吐出孔8をi1番目の吐出孔8とし、他方の吐出孔行9に属する吐出孔8をi2番目の吐出孔8とすると、i1−i2の絶対値がmであり、m番目の吐出孔8とm+1番目の吐出孔8とが、第2の隔壁15b、もしくは列方向の端に配置されており、列方向の両端に配置される吐出孔8を、i3番目の吐出孔8とi4番目の吐出孔8とすると、i3−i4の絶対値が2〜2m−2のいずれかであるのがよいということである。
【0087】
この場合も、マニホールド5よりも幅の大きい第2の隔壁15bは、列方向の中央の近くに1つ設けるのがよい。それには、隔壁の個数が偶数個であるため、中央にある2つの隔壁のどちらかを第2の隔壁15bとすればよく、具体的には、列方向における(m−1)/2番目のマニホールド5bと(m+1)/2番目のマニホールド5bとの間にのみ、第2の隔壁15bを設ければよい。
【0088】
マニホールド5bの本数は、偶数・奇数いずれでもよいが、1つの加圧室行11aに属する加圧室10に繋がっている吐出孔8の数が2のべき乗であると、データ処理において都合がよい場合が多いため、そのようなためには、マニホールド5bの本数は、偶数である方がよい。
【0089】
なお、本実施例では、加圧部として圧電変形を用いた変位素子30を示したが、これに限られるものでなく、加圧室10の体積を変化させることができるもの、すなわち、加圧室10中の液体を加圧できるものなら他のものでよく、例えば、加圧室10中の液体を加熱して沸騰させて圧力を生じさせるものや、MEMS(Micro Electro Mechanical Syste
ms)を用いたものでもよい。
【0090】
また、実施例では、吐出孔8が行方向に重ならない配置を示したが、図6(b)に示した吐出孔8の配置と、それを列方向に平行移動させた配置とが含まれる、吐出孔8の配置にしてもよい。そのような吐出孔8の配置にすれは、記録用紙P上の同一地点に着弾させることのできる吐出孔8が2つあることになる。このような配置では、異なる吐出孔8から吐出される液滴を、記録用紙Pの搬送方向に交互に着弾させることにより、印刷速度を約倍にできる。また、異なる吐出孔8から吐出された液滴をm記録用紙Pのほぼ同一地点に着弾させることにより、1つの画素に含まれる液体の量を約倍にでき、画素を大きくできる。このような配置をする場合、元の吐出孔8の配置とこれを平行移動させた吐出孔8の配置との間の隔壁は、マニホールド5bよりも幅の大きい第2の隔壁15bにする。
【0091】
以上のような液体吐出ヘッド2は、例えば、以下のようにして作製する。ロールコータ法、スリットコーター法などの一般的なテープ成形法により、圧電性セラミック粉末と有機組成物からなるテープの成形を行ない、焼成後に圧電セラミック層21a、21bとなる複数のグリーンシートを作製する。グリーンシートの一部には、その表面に共通電極24となる電極ペーストを印刷法等により形成する。また、必要に応じてグリーンシートの一部にビアホールを形成し、その内部にビア導体を充填する。
【0092】
ついで、各グリーンシートを積層して積層体を作製し、加圧密着を行なう。加圧密着後の積層体を高濃度酸素雰囲気下で焼成し、その後有機金ペーストを用いて焼成体表面に個別電極25を印刷して、焼成した後、Agペーストを用いて接続電極26を印刷し、焼成することにより、圧電アクチュエータ基板21を作製する。
【0093】
次に、流路部材4を、圧延法等により得られプレート4a〜kを接着層を介して積層して作製する。プレート4a〜kに、統合マニホールド5、個別供給流路14、加圧室10およびディセンダなどとなる孔を、エッチングにより所定の形状に加工する。
【0094】
これらプレート4a〜kは、Fe―Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種の金属によって形成されていることが望ましく、特に液体としてインクを使用する場合にはインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましため、Fe−Cr系がより好ましい。
【0095】
圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ基板21や流路部材4への影響をおよぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを加熱接合することができる。
【0096】
次に圧電アクチュエータ基板21と制御部100とを電気的に接続するために、接続電極26に銀ペーストを供給し、あらかじめドライバICを実装した信号伝達部92であるFPCを載置し、熱を加えて銀ペーストを硬化させて電気的に接続させる。なお、ドライバICの実装は、FPCに半田で電気的にフリップチップ接続した後、半田周囲に保護樹脂を供給して硬化させた。
【0097】
続いて、必要に応じて、開口5aから液体を供給できるようにリザーバを接着し、金属の筐体を、ねじ止めした後、接合部を封止剤で封止することで液体吐出ヘッド2を作製することができる。
【符号の説明】
【0098】
1・・・プリンタ
2・・・液体吐出ヘッド
2a・・・ヘッド本体
4・・・流路部材
4a〜m・・・(流路部材の)プレート
4−1・・・吐出孔面
4−2・・・加圧室面
5・・・統合マニホールド
5a・・・(統合マニホールドの)開口
5b・・・マニホールド
6・・・しぼり
8・・・吐出孔
9・・・吐出孔行
10・・・加圧室
11a・・・加圧室行
11b・・・加圧室列
12・・・個別流路
14・・・個別供給流路
15a・・・第1の隔壁
15b・・・第2の隔壁
16・・・ダミー加圧室
21・・・圧電アクチュエータ基板
21a・・・圧電セラミック層(振動板)
21b・・・圧電セラミック層
24・・・共通電極
25・・・個別電極
25a・・・個別電極本体
25b・・・引出電極
26・・・接続電極
28・・・共通電極用表面電極
30・・・変位素子(加圧部)
L・・・加圧室列の中心線
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出させる液体吐出ヘッドおよびそれを用いた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタやインクジェットプロッタなどの、インクジェット記録方式を利用した印刷装置が、一般消費者向けのプリンタだけでなく、例えば電子回路の形成や液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造、有機ELディスプレイの製造といった工業用途にも広く利用されている。
【0003】
このようなインクジェット方式の印刷装置には、液体を吐出させるための液体吐出ヘッドが印刷ヘッドとして搭載されている。この種の印刷ヘッドには、インクが充填されたインク流路内に加圧手段としてのヒータを備え、ヒータによりインクを加熱、沸騰させ、インク流路内に発生する気泡によってインクを加圧し、インク吐出孔より、液滴として吐出させるサーマルヘッド方式と、インクが充填されるインク流路の一部の壁を変位素子によって屈曲変位させ、機械的にインク流路内のインクを加圧し、インク吐出孔より液滴として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
【0004】
また、このような液体吐出ヘッドには、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に液体吐出ヘッドを移動させつつ記録を行なうシリアル式、および記録媒体より主走査方向に長い液体吐出ヘッドを固定した状態で、副走査方向に搬送されてくる記録媒体に記録を行なうライン式がある。ライン式は、シリアル式のように液体吐出ヘッドを移動させる必要がないので、高速記録が可能であるという利点を有する。
【0005】
そこで一方方向の長い液体吐出ヘッドを、マニホールド(共通流路)およびマニホールドから複数の加圧室をそれぞれ介して繋がる吐出孔を有した流路部材と、前記加圧室をそれぞれ覆うように設けられた複数の変位素子を有するアクチュエータユニットとを積層して構成したものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この液体吐出ヘッドでは、複数の吐出孔にそれぞれ繋がった加圧室が千鳥状に配置され、それを覆うように設けられたアクチュエータユニットの変位素子を変位させることで、各吐出孔からインクを吐出させ、主走査方向に600dpiの解像度で印刷が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−305852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の液体吐出ヘッドと同様の構造で、さらに解像度を高めようとすると、変位素子間のクロストークの影響が大きくなり、十分な印刷精度が得られないことがあった。
【0008】
その際、変位素子(加圧室)の配置を格子状にして、クロストークを小さくすることが考えられる。しかし、その場合、加圧室と吐出孔との平面上の位置の差が大きいため、特許文献1に記載されているように吐出孔を配置すると、液体吐出ヘッドの幅が大きくなってしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的は、加圧室を格子状に配置した際に、幅を小さくできる液体吐出ヘッドおよびそれを用いた記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体吐出ヘッドは、複数の吐出孔、該複数の吐出孔とそれぞれ繋がっている複数の加圧室および該複数の加圧室に液体を供給するn個(nは4以上の偶数)のマニホールドを有する流路部材と、該流路部材に接合されており、前記複数の加圧室の体積をそれぞれ変化させる複数の加圧部とを備えている液体吐出ヘッドであって、前記流路部材を平面視したとき、前記加圧室が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、前記n個のマニホールドが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、前記マニホールドの間の隔壁として、前記マニホールドよりも幅が狭い第1の隔壁と前記マニホールドよりも幅が広い第2の隔壁とを有し、1つの前記マニホールドに繋がっている前記加圧室が、前記行方向に並んだ2つの加圧室行を構成しており、当該2つの加圧室行に属する加圧室に繋がっている前記吐出孔は、当該マニホールドの両側で、等間隔dで配置されている2つの吐出孔行を構成しており、前記列方向に並んでいる加圧室列に属する前記加圧室と繋がっている前記吐出孔のそれぞれが、前記行方向において当該加圧室列を中心とする幅dの範囲をd/2nの間隔で分割した領域のうちのいずれかの領域に配置されており、前記第1の隔壁に配置されている、2つの前記吐出孔行のうち一方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi1番目の吐出孔であり、他方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi2番目の吐出孔とすると、i1−i2の絶対値がn+1またはn−1であり、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からn番目の吐出孔とn+1番目の吐出孔とが、前記第2の隔壁、もしくは前記列方向の端の壁に配置されており、前記列方向の両端の壁に配置されている前記吐出孔を、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi3番目の吐出孔とi4番目の吐出孔とすると、i3−i4の絶対値が2〜2n−2のいずれかであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、複数の吐出孔、該複数の吐出孔とそれぞれ繋がっている複数の加圧室および該複数の加圧室に液体を供給するm個(mは3以上の奇数)のマニホールドを有する流路部材と、該流路部材に接合されており、前記複数の加圧室の体積をそれぞれ変化させる複数の加圧部とを備えている液体吐出ヘッドであって、前記流路部材を平面視したとき、前記加圧室が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、前記m個のマニホールドが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、前記マニホールドの間の隔壁として、前記マニホールドよりも幅が狭い第1の隔壁と前記マニホールドよりも幅が広い第2の隔壁とを有し、1つの前記マニホールドに繋がっている前記加圧室が、前記行方向に並んだ2つの加圧室行を構成しており、当該2つの加圧室行に属する加圧室に繋がっている前記吐出孔は、当該マニホールドの両側で、等間隔dで配置されている2つの吐出孔行を構成しており、前記列方向に並んでいる加圧室列に属する前記加圧室と繋がっている前記吐出孔のそれぞれが、前記行方向において当該加圧室列を中心とする幅dの範囲をd/2mの間隔で分割した領域のうちのいずれかの領域に配置されており、前記第1の隔壁に配置されている、2つの前記吐出孔行のうち一方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi1番目の吐出孔であり、他方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi2番目の吐出孔とすると、i1−i2の絶対値がmであり、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からm番目の吐出孔とm+1番目の吐出孔とが、前記第2の隔壁、もしくは前記列方向の端の壁に配置されており、前記列方向の両端の壁に配置されている前記吐出孔を、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi3番目の吐出孔とi4番目の吐出孔とすると、i3−i4の絶対値が2〜2m−2のいずれかであることを特徴とする。
【0012】
なお、吐出孔が第1の隔壁に配置されているとは、流路部材を透視して見たときに、吐出孔が第1の隔壁と重なる位置に配置されているという意味である。吐出孔が第2隔壁あるいは端の壁に配置されているについても、同様の意味である。
【0013】
さらに、本発明の記録装置は、前記液体吐出ヘッドと、記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して搬送する搬送部と、前記複数の加圧部を制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2つの吐出孔行が配置された第1の隔壁の幅を狭くできるの、液体吐出ヘッドの幅を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の液体吐出ヘッドを構成する流路部材および圧電アクチュエータの平面図である。
【図3】図2の一点鎖線に囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した図である。
【図4】図2の一点鎖線に囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した図である。
【図5】図3のV−V線に沿った縦断面図である。
【図6】(a)は、加圧室と吐出孔との配置を示した模式図であり、(b)は、吐出孔の配置した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。このカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、4つの液体吐出ヘッド2を有している。これらの液体吐出ヘッド2は、記録媒体である印刷用紙Pの搬送方向に沿って並べられ、プリンタ1に固定されている液体吐出ヘッド2は、図1の手前から奥へ向かう方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。
【0017】
プリンタ1には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2や給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
【0018】
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出すことができる。
【0019】
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118aおよび118b、ならびに、119aおよび119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
【0020】
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106および107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106および107に巻き
掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラに巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラの共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
【0021】
ベルトローラ106には、図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
【0022】
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。2つのニップローラは回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
【0023】
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
【0024】
液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体2aを有している。ヘッド本体2aの下面は、液体を吐出する多数の吐出孔8が設けられている吐出孔面4−1となっている。
【0025】
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた液体吐出孔8からは、同じ色の液滴(インク)が吐出されるようになっている。各液体吐出ヘッド2には図示しない外部液体タンクから液体が供給される。各液体吐出ヘッド2の液体吐出孔8は、液体吐出孔面に開口しており、一方方向(印刷用紙Pと平行で印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向)に等間隔で配置されているため、一方方向に隙間なく印刷することができる。各液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、例えば、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。各液体吐出ヘッド2は、液体吐出ヘッド本体13の下面と搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
【0026】
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体2aから印刷用紙Pの上面に向けて液滴が吐出される。これによって、印刷用紙Pの上面には、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。
【0027】
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121aおよび121bならびに122aおよび122bとが配置されている。カラー画像が印刷された印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a〜122bによって、紙受
け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
【0028】
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2や搬送モータ174等を制御することができる。
【0029】
次に、本発明の液体吐出ヘッド2について説明する。図2は、ヘッド本体2aの平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した平面図である。図4は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため図3とは異なる一部の流路を省略した図である。なお、図3および図4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべきしぼり6、吐出孔8、加圧室10などを実線で描いている。図5は図3のV−V線に沿った縦断面図である。また、図4の吐出孔8は、位置を分かりやすくするため、実際の径よりも大きく描いてある。
【0030】
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2a以外にリザーバや、金属製の筐体を含んでいる。また。ヘッド本体2aは、流路部材4と、変位素子(加圧部)30が作り込まれている圧電アクチュエータ基板21とを含んでいる。
【0031】
ヘッド本体2aを構成する流路部材4は、統合マニホールド5と、統合マニホールド5と繋がっている複数の加圧室10と、複数の加圧室10とそれぞれ繋がっている複数の吐出孔8とを備え、加圧室10は流路部材4の上面に開口しており、流路部材4の上面が加圧室面4−2となっている。また、流路部材4の上面には統合マニホールド5と繋がる開口5aを有し、この開口5aより液体が供給されるようになっている。
【0032】
また、流路部材4の上面には、変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21が接合されており、各変位素子30が加圧室10上に位置するように設けられている。また、圧電アクチュエータ基板21には、各変位素子30に信号を供給するためのFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部92が接続されている。図2には、2つの信号伝達部92が圧電アクチュエータ基板21に繋がる状態が分かるように、信号伝達部92の圧電アクチュエータ21に接続される付近の外形を点線で示した。圧電アクチュエータ21に電気的に接続されている、信号伝達部92に形成されている電極は、信号伝達部92の端部に、矩形状に配置されている。2つの信号伝達部92は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部にそれぞれの端がくるように接続されている。2つの信号伝達部92は、中央部から圧電アクチュエータ基板21の長辺に向かって伸びている。
【0033】
また、信号伝達部92にはドライバICが実装されている。ドライバICは金属製の筐体に押し付けられるように実装されており、ドライバICの熱は、金属製の筐体に伝わり、外部に放散される。圧電アクチュエータ基板21上の変位素子30を駆動する駆動信号は、ドライバIC内で生成される。駆動信号の生成を制御する信号は、制御部100で生成され、信号伝達部92の圧電アクチュエータ基板21と接続された側と反対側の端から入力される。制御部100と信号伝達部92との間には、必要に応じて、液体吐出ヘッド2内に設けられた、配線基板などが設けられる。
【0034】
ヘッド本体2aは、平板状の流路部材4と、流路部材4上に接続された変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21を1つ有している。圧電アクチュエータ基板21の平面
形状は長方形状であり、その長方形の長辺が流路部材4の長手方向に沿うように流路部材4の上面に配置されている。
【0035】
流路部材4の内部には2つの統合マニホールド5が形成されている。統合マニホールド5は流路部材4の長手方向の一端部側から、他端部側に延びる細長い形状を有しており、その両端部において、流路部材4の上面に開口している統合マニホールドの開口5aが形成されている。統合マニホールド5の両端部から流路部材4へ液体を供給することにより、液体の供給不足が起こり難くできる。また、統合マニホールド5の一端から供給する場合と比較して、統合マニホールド5を液体が流れる際に生じる圧力損失の差を約半分にできるため、液体吐出特性のばらつきを少なくできる。さらに、圧力損失の差を少なくするために、統合マニホールド5の中央付近で供給したり、統合マニホールド5の途中の数か所から供給することも考えられるが、そのような構造では液体吐出ヘッド2の幅が大きくなり、吐出孔8の配置の幅方向への広がりも大きくなってしまう。そうなると、液体吐出ヘッド2をプリンタ1に取り付ける角度のずれが印刷結果に与える影響が大きくなるので好ましくない。複数の液体吐出ヘッド2を用いて印刷する場合においても、複数の液体吐出ヘッド2の全体の吐出孔8が配置されている面積が広がるので、複数の液体吐出ヘッド2の相対的な位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなるので好ましくない。そのため、液体吐出ヘッド2の幅を小さくしつつ、圧力損失の差を少なくするためには、統合マニホールド5の両端から供給するのが好ましい。
【0036】
また、統合マニホールド5は、少なくとも加圧室10に繋がっている領域である、長さ方向の中央部分が、幅方向に間隔を開けて設けられた第1の隔壁15aで仕切られている。第1の隔壁15aは、加圧室10に繋がっている領域である長さ方向の中央部分では、統合マニホールド5と同じ高さを有し、統合マニホールド5を複数のマニホールド5bに完全に仕切っている。第1の隔壁15aの幅は、第1の隔壁15aの両側のマニホールド5bよりも細くなっている。詳細は後述するが、吐出孔8を適切に配置することで、平面視したときにそのような細い第1の隔壁15aと重なるように、吐出孔8および吐出孔8から加圧室10に繋がっているディセンダを設けることができる。
【0037】
図2では、統合マニホールド5の両端部を除く全体が第1の隔壁15aで仕切られている。このようにする以外に、両端部のうちのどちらか一端部以外が第1の隔壁15aで仕切られているようにしてもよい。また、流路部材4の上面に開口している開口5a付近のみが仕切られておらず、開口5aから流路部材4の深さ方向に向かう間に隔壁が設けられるようにしてもよい。この場合、後述のプレート4e〜4iに設けられている統合マニホールド5となる孔は、完全に分離されている。いずれにしても、仕切られていない部分があれば、流路抵抗が小さくなり、液体の供給量を多くできるので、統合マニホールド5の両端部が第1の隔壁15aで仕切られていないのが好ましい。
【0038】
複数に分けられた部分の統合マニホールド5をマニホールド5bと呼ぶことがある。本実施例においては、統合マニホールド5は独立して2本設けられており、それぞれの両端部に開口5aが設けられている。2つの統合マニホールドの間にはマニホールド5bよりも幅の大きい第2の隔壁15bが設けられている。第2の隔壁15bを設けることで、流路部材4の剛性を高くすることができる。また、詳細は後述するが、幅の広い第2の隔壁15bに特定の吐出孔8配置することで、印刷精度を高くすることができる。また、1つの統合マニホールド5には、7つの第1の隔壁15aが設けられており、8つのマニホールド5bに分けられている。マニホールド5bの幅は、第1の隔壁15aの幅より大きくなっており、これによりマニホールド5bに多くの液体を流すことができる。また、7つの第1の隔壁15aは、幅方向の中央に近いほど、長さが長くなっており、統合マニホールド5の両端において、幅方向の中央に近い第1の隔壁15aほど、第1の隔壁15aの端が統合マニホールド5の端に近くなっている。これにより、統合マニホールド5の外側
の壁により生じる流路抵抗と、第1の隔壁15aにより生じる流路抵抗との間のバランスがとれ、各マニホールド5bのうち、加圧室10に繋がる部分である個別供給流路14が形成されている領域の端における液体の圧力差を少なくできる。この個別供給流路14での圧力差は、加圧室10内の液体に加わる圧力差につながるため、個別供給流路14での圧力差を少なくすれば、吐出ばらつきを低減できる。
【0039】
この実施例では、2つの統合マニホールドが、それぞれ8つのマニホールド5bに分岐しているが、16個のマニホールドが独立して並んで設けられていてもよい。
【0040】
流路部材4には、複数の加圧室10が、行方向および列方向に並んでいる格子状の配置で形成されている。行方向は、液体吐出ヘッド2の長手方向に沿った方向であり、統合マニホールド5の延在する方向である。流路部材4には、行方向に沿って加圧室10が複数配置された加圧室行11aが複数設けられている。列方向は、行方向に略直交する方向であり、流路部材4には、加圧室10が列方向に沿って複数配置された加圧室列11bが、複数設けられている。加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。
【0041】
加圧室10は1つのマニホールド5bと個別供給流路14を介して繋がっている。1つのマニホールド5bに沿うようにして、このマニホールド5bに繋がっている加圧室10の列である加圧室行11aが、マニホールド5bの両側に1行ずつ、合計2行設けられている。したがって、1つの統合マニホールド5に対して、16行の加圧室行11aが設けられており、ヘッド本体2a全体では32列の加圧室行11aが設けられている。各加圧室行11aにおける加圧室10の長手方向の間隔は同じであり、例えば、37.5dpiの間隔となっている。
【0042】
各加圧室行11aの端にはダミー加圧室16が設けられている。このダミー加圧室16は、統合マニホールド5とは繋がっているが、吐出孔8とは繋がっていない。また、32行の加圧室行11aの外側には、ダミー加圧室16が直線状に並んだダミー加圧室行が設けられている。このダミー加圧室16は、統合マニホールド5および吐出孔8のいずれとも繋がっていない。これらのダミー加圧室により、端から1つ内側の加圧室10の周囲の構造(剛性)が他の加圧室10の構造(剛性)と近くなることで、液体吐出特性の差を少なくできる。なお、周囲の構造の差の影響は、距離の近い、長さ方向に隣接する加圧室10の影響が大きいため、長さ方向には、両端にダミー加圧室を設けてある。幅方向については、影響が比較的小さいため、ヘッド本体21aの端に近い方のみに設けている。これにより、ヘッド本体21aの幅を小さくできる。
【0043】
1つの統合マニホールド5に繋がっている加圧室10は、矩形状の圧電アクチュエータ基板21の各外辺に沿った行および列をなす格子上に配置されている。これにより、圧電アクチュエータ基板21の外辺から、加圧室10の上に形成されている個別電極25が等距離に配置されることになるので、個別電極25を形成する際に、圧電アクチュエータ基板21に変形が生じ難くできる。圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを接合する際に、この変形が大きいと外辺に近い変位素子30に応力が加わり、変位特性にばらつきが生じるおそれがあるが、変形を少なくすることで、そのばらつきを低減できる。また、最も外辺に近い加圧室行11aの外側にダミー加圧室16のダミー加圧室行が設けられているために、変形の影響をより受け難くできる。加圧室行11aに属する加圧室10は等間隔で配置されており、加圧室行11aに対応する個別電極25も等間隔で配置されている。加圧室行11aは短手方向に等間隔で配置されており、加圧室行11aに対応する個別電極25の列も短手方向に等間隔で配置されている。これにより、特にクロストークの影響が大きくなる部位をなくすことができる。
【0044】
加圧室行11aの間の距離を離すと、液体吐出ヘッド2の幅が大きくなるので、プリンタ1に対する液体吐出ヘッド2の設置角度の精度や、複数の液体吐出ヘッド2を使用する際の、液体吐出ヘッド2の相対位置の精度が印刷結果に与える影響が大きくなる。そこで、第1の隔壁15aの幅をマニホールド5bよりも小さくすることで、それらの精度が印刷結果に与える影響を少なくできる。しかし、吐出孔8の配置によっては、第1の隔壁15aの幅を狭くすると、吐出孔8と加圧室10との間を繋ぐ流路が配置できなくなったり、クロストークの影響が大きくなるので、これらを考慮して吐出孔8を配置する必要がある。これについては、後述する。
【0045】
1つのマニホールド5bに繋がっている加圧室10は、2列の加圧室行11aをなしており、1つの加圧室行11aに属する加圧室10から繋がっている吐出孔8は、1つの吐出孔行9をなしている。2列の加圧室行11aに属する加圧室10に繋がっている吐出孔8はそれぞれ、マニホールド5bの異なる側に開口している。図4では第1の隔壁15aには、2列の吐出孔行9が設けられているが、それぞれの吐出孔行9に属する吐出孔8は、吐出孔8に近い側のマニホールド5bに加圧室10を介して繋がっている。隣接するマニホールド5bに加圧室行11aを介して繋がっている吐出孔8と液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路間のクロストークが抑制できるので、さらにクロストークを少なくすることができる。加圧室10と吐出孔8とを繋ぐ流路全体が、液体吐出ヘッド2の長手方向において重ならないように配置されていると、さらにクロストークを少なくすることができる。
【0046】
また、平面視において、加圧室10とマニホールド5bとが重なるように配置することにより、液体吐出ヘッド2の幅を小さくできる。加圧室10の面積に対する、重なっている面積の割合が80%以上、さらに90%以上にすることで、液体吐出ヘッド2の幅をより小さくできる。また、加圧室10とマニホールド5bとが重なっている部分の加圧室10の底面は、マニホールド5bと重なっていない場合と比較して剛性が低くなっており、その差により吐出特性がばらつくおそれがある。加圧室10全体の面積に対する、マニホールド5bと重なっている加圧室10の面積の割合を、各加圧室10で略同じにすることで、加圧室10を構成する底面の剛性が変わることによる吐出特性のばらつきを少なくすることができる。ここで略同じとは、面積の割合の差が、10%以下、特に5%以下であることをいう。
【0047】
1つの統合マニホールド5に繋がっている複数の加圧室10により加圧室群が構成されており、統合マニホールド5が2つあるため、加圧室群は2つある。各加圧室群内における吐出に関わる加圧室10の配置は同じで、短手方向に平行移動させた配置されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に、加圧室群間などの少し間隔が広くなった部分があるものの、ほぼ全面にわたって配列されている。つまり、これらの加圧室10によって形成された加圧室群は圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接合されることで閉塞されている。
【0048】
加圧室10の個別供給流路14が繋がっている角部と対向する角部からは、流路部材4の下面の吐出孔面4−1に開口している吐出孔8に繋がるディセンダが伸びている。ディセンダは、平面視において、加圧室10から離れる方向に伸びている。より具体的には、加圧室10の長い対角線に沿う方向に離れつつ、その方向に対して左右にずれながら伸びている。これにより、加圧室10は各加圧室行11a内での間隔が37.5dpiになっている格子状の配置にしつつ、吐出孔8は、全体で1200dpiの間隔で配置することができる。吐出孔8のより詳細な配置は後述する。
【0049】
これは別の言い方をすると、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、図4に示した仮想直線のRの範囲に、各統合マニホールド5に繋がっている16個の吐出孔8、全部で32個の吐出孔8が、1200dpiの等間隔となっているということである。これにより、全ての統合マニホールド5に同じ色のインクを供給することで、全体として長手方向に1200dpiの解像度で画像が形成可能となる。また、1つの統合マニホールド5に繋がっている1個の吐出孔8は、仮想直線のRの範囲で600dpiの等間隔にすれば。これにより、各統合マニホールド5に異なる色のインクを供給することで、全体として長手方向に600dpiの解像度で2色の画像が形成可能となる。この場合、2つの液体吐出ヘッド2を用いれば、600dpiの解像度で4色の画像が形成可能となり、600dpiで印刷可能な液体吐出ヘッドを用いるよりも、印刷精度が高くなり、印刷のセッティングも簡単にできる。
【0050】
さらに、液体吐出ヘッド2には、統合マニホールドの開口5aからの液体の供給を安定させるように流路部材4に、リザーバを接合してもよい。リザーバには、外部から供給された液体を分岐させて、2つの開口5aに繋がる流路が設けられることにより、2つの開口に液体を安定して供給できる。分岐してからの流路長をほぼ等しくすることで、外部から供給される液体の温度変動や圧力変動が、統合マニホールド5の両端の開口5aに、少ない時間差で伝わるため、液体吐出ヘッド2内の液滴の吐出特性のばらつきをより少なくできる。リザーバにダンパを設けることで、さらに液体の供給が安定化できる。さらに、液体中の異物などが流路部材4に向かうのを抑制するように、フィルタを設けてもよい。またさらに、流路部材4に向かう液体の温度を安定化させるようにヒータを設けてもよい。
【0051】
圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極25がそれぞれ形成されている。個別電極25は、加圧室10より一回り小さく、加圧室10とほぼ相似な形状を有している個別電極本体25aと、個別電極本体25aから引き出されている引出電極25bとを含んでおり、個別電極25は、加圧室10と同じように、個別電極列および個別電極群を構成している。また、圧電アクチュエータ基板21の上面には、共通電極24とビアホール導体を介して電気的に接続されている共通電極用表面電極28が形成されている。共通電極用表面電極28は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部に、長手方向に沿うように2列形成され、また、長手方向の端近くで短手方向に沿って1列形成されている。図示した、共通電極用表面電極28は直線上に断続的に形成されたものであるが、直線上に連続的に形成してもよい。
【0052】
圧電アクチュエータ基板21は、後述のようにビアホールを形成した圧電セラミック層21a、共通電極24、圧電セラミック層21bを積層し、焼成した後、個別電極25および共通電極用表面電極28を同一工程で形成するのが好ましい。個別電極25と加圧室10との位置ばらつきは吐出特性に大きく影響を与えこと、個別電極25を形成した後、焼成すると圧電アクチュエータ基板21に反りが生じるおそれがあり、反りが生じた圧電アクチュエータ基板21を流路部材4に接合すると、圧電アクチュエータ基板21に応力が加わった状態になり、その影響で変位がばらつくおそれがあることから、個別電極25は、焼成後に形成される。共通電極用表面電極28も同様に反りを生じされるおそれがあることと、個別電極25と同時に形成した方が、位置精度が高くなり、工程も簡略化できるので、個別電極25と共通電極用表面電極28は同一工程で形成される。
【0053】
このような圧電アクチュエータ基板21を焼成する際に生じるおそれのある、焼成収縮によるビアホールの位置ばらつきは、主に圧電アクチュエータ基板21の長手方向に生じるので、共通電極用表面電極28が偶数個ある統合マニホールド5の中央、別の言い方をすれば、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央に設けられており、共通電極用表面電極28が圧電アクチュエータ基板21の長手方向に長い形状をしていることにより、
ビアホールと共通電極用表面電極28とが位置ずれにより電気的に接続されなくなることを抑制できる。
【0054】
圧電アクチュエータ基板21には、2枚の信号伝達部92が、圧電アクチュエータ基板21の2つの長辺側から、それぞれ中央に向かうように配置され、接合される。その際、圧電アクチュエータ基板21aの引出電極25bおよび共通電極用表面電極28の上に、それぞれ、接続電極26および共通電極用接続電極を形成して接続することで、接続が容易になる。また、その際、共通電極用表面電極28および共通電極用接続電極の面積を接続電極26の面積よりも大きくすれば、信号伝達部92の端部(先端および圧電アクチュエータ基板21の長手方向の端)にける接続が、共通電極用表面電極28上の接続により強くできるので、信号伝達部92が端からはがれ難くできる。
【0055】
また、吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置された統合マニホールド5と対向する領域を避けた位置に配置されている。さらに、吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。
【0056】
ヘッド本体2aに含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート4a、ベースプレート4b、アパーチャ(しぼり)プレート4c、サプライプレート4d、マニホールドプレート4e〜j、カバープレート4k、カバーSPプレート4lおよびノズルプレート4mである。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路12および統合マニホールド5を構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体2aは、加圧室10は流路部材4の上面に、統合マニホールド5は内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路12を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、加圧室10を介して統合マニホールド5と吐出孔8とが繋がる構成を有している。
【0057】
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート4aに形成された加圧室10である。第2に、加圧室10の一端から統合マニホールド5へと繋がる個別供給流路14を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート4c(詳細には統合マニホールド5の出口)までの各プレートに形成されている。なお、この個別供給流路14には、アパーチャプレート4cに形成されている、流路の断面積が小さくなっている部位であるしぼり6が含まれている。
【0058】
第3に、加圧室10の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート4m(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。ノズルプレート4mの孔は、吐出孔8として、流路部材4の外部に開口している径が、例えば10〜40μmのもので、内部に向かって径が大きくなっていくものが開けられている。第4に、統合マニホールド5を構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート4e〜jに形成されている。マニホールドプレート4e〜jには、マニホールド5bを構成するように第1の隔壁15aが残るように孔が形成されている。各マニホールドプレート4e〜jにおける第1の隔壁15aは、統合マニホールド5となる部分全体を孔にすると、保持できない状態になるので、第1の隔壁15aは、ハーフエッチングしたタブで各マニホールドプレート4e〜jの
外周と繋がった状態にされる。
【0059】
第5に、カバーSPプレート4lに形成され、統合マニホールド5の下に形成されるダンパ室18となる孔である。ダンパ室18は、上述の第1〜4の孔とは繋がっておらず、液体は入るようにはなっていない。ダンパ室18と統合マニホールド5との間のカバープレート4kは、ダンパとなり、統合マニホールド5の体積が変わるようにすることで、統合マニホールド5の液体の供給の過不足が吐出に影響を与えにくくしたり、統合マニホールド5を通じて加圧室10間の間で圧力が伝わって吐出特性に影響を与えるクロストークを小さくしたりする。ダンパ室18が密閉された空間であっても、空気が体積変化することで、ダンパ室18と統合マニホールド5との間のプレートがダンパとして働くが、上述した孔と別な孔によって、ダンパ室18を流路部材4の外部と繋がるようにしておけば、ダンパとして、より良く働く。
【0060】
第1〜4の連通孔が相互に繋がり、統合マニホールド5からの液体の流入口(統合マニホールド5の出口)から吐出孔8に至る個別流路12を構成している。統合マニホールド5に供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、統合マニホールド5から上方向に向かって、個別供給流路14に入り、しぼり6の一端部に至る。次に、しぼり6の延在方向に沿って水平に進み、しぼり6の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8へと進む。
【0061】
圧電アクチュエータ基板21は、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21の圧電セラミック層21aの下面から圧電セラミック層21bの上面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層21a、21bは、例えば、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
【0062】
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極24およびとAu系などの金属材料からなる個別電極25を有している。個別電極25は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている個別電極本体25aと、そこから引き出された引出電極25bとを含んでいる。引出電極25bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出され部分には接続電極26が形成されている。接続電極26は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極26は、信号伝達部92に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極25には、制御部100から信号伝達部92を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。
【0063】
共通電極24は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極24は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内の全ての加圧室10を覆うように延在している。共通電極24の厚さは2μm程度である。共通電極24は、圧電セラミック層21b上に個別電極25からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極28に、圧電セラミック層21bに形成されたビアホール導体を介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極28は、多数の個別電極25と同様に、信号伝達部92上の別の電極と接続されている。
【0064】
なお、後述のように、個別電極25に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この個別電極25に対応する加圧室10の体積が変わり、加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路12を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各加圧室10に対向する部分は、各加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子30に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層体中には、図5に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子30が加圧室10毎に、加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極24、圧電セラミック層21b、個別電極25により作り込まれており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子30が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は1.5〜4.5pl(ピコリットル)程度である。
【0065】
多数の個別電極25は、個別に電位を制御することができるように、それぞれが信号伝達部92および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。個別電極25を共通電極24と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極25を共通電極24に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
【0066】
本実施の形態における実際の駆動手順は、あらかじめ個別電極25を共通電極24より高い電位(以下高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極25を共通電極24と一旦同じ電位(以下低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極25が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが元の形状に戻り、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、加圧室10内に負圧が与えられ、液体が統合マニホールド5側から加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極25を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a、21bが加圧室10側へ凸となるように変形し、加圧室10の容積減少により加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液滴が吐出される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極25に供給することになる。このパルス幅は、圧力波がしぼり6から吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、
加圧室10内部が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
【0067】
また、階調印刷においては、吐出孔8から連続して吐出される液滴の数、つまり液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行なわれる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔8から連続して行なう。一般に、液体吐出を連続して行なう場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合後から吐出される液滴の速度が速くなると考えられるが、その方が複数の液滴の着弾点が近くなり、好ましい。
【0068】
続いて、以上のような液体吐出ヘッド2における吐出孔8の配置について、より詳しく
説明する。以下では副マニホイール5bが、n個(nは4以上の偶数)ある場合について、一般的に説明する。具体的な例としては、ここまで説明してきたn=16の場合について、説明する。
【0069】
図6(a)は、加圧室10と吐出孔8との配置の関係を示した模式的な平面図である。図6(b)は、1つの加圧室列11bに属する加圧室10から繋がっている32個の吐出孔8の配置である。図の左右は、加圧室10に対する吐出孔8の液体吐出ヘッド2の長手方向の位置であり、図の上下は、吐出孔行9の端からの行数である。16行目と17行目の吐出孔行9は、1つの第2の隔壁15bに設けられている。この隔壁以外の隔壁は第1の隔壁であり、図では第1の隔壁15aに相当する部分は、格子状の境界が列方向に繋がって示されている。2行目と3行目のように、偶数行目とその次の行数の吐出孔行9は、16行目と17行目以外は、1つの第1の隔壁15aに設けられている。1行目と32行目の吐出孔行9は、一番端の吐出孔行9である。図6(b)の配置は模式的なものであるが、図には、吐出孔8の配置の関係が分かるように、図の左右方向の実際の長さがdであり、行方向に隣り合う吐出孔8の行方向の距離がd/2nであることを示している。図の上下方向の寸法は、実際の寸法に比例して示されてはいない。
【0070】
このような吐出孔8の配置が、長手方向(行方向)に長さd毎に繰り返されることで、液体吐出ヘッド2の幅方向に隙間なく印刷をすることができる。長さdは前述の仮想直線のRの長さである。なお、同じ配置を繰り返さずに、後述の条件に合う別の吐出孔8の配置を交互に繰り返したり、3つ以上の配置を並べるようにしてもよい。
【0071】
図6(a)の2つの加圧室10は、同じ加圧室列11bに属すものであり、仮想線L(加圧室列の中心線L)は加圧室列11bの行方向の中心を示したものである。加圧室10の形状がひし形状であるため、吐出孔8に繋がっているディセンダは、加圧室10の鋭角部、つまり加圧室列の中心線Lと加圧室10との交点付近に繋がっている。加圧室列の中心線Lは、より詳細には、1つの加圧室列11bに属する加圧室10の面積を2分割する列方向に伸びた線であり、また1つの加圧室列11bに属する加圧室10の面積重心を繋いだ線である。
【0072】
1つの加圧室列11bに属する2n個の加圧室10に繋がっている吐出孔8で、一定範囲(距離d)の印刷をする必要がある。逆にいえば、幅dの範囲をd/2nの間隔で分割した領域のすべてに吐出孔8を設けることで、1つの加圧室列11bに属する加圧室10に繋がっている、幅dの中にある2n個の吐出孔8からの吐出で、距離dの範囲が印刷できようになる。例えば1200dpiで印刷する場合、画素を1インチの中に1200個形成する必要があるので、画素の間隔は約21μm(≒25.4mm/1200)となる。n=16であれば、距離dは約677μm(≒25.4mm×16×2/1200)である。
【0073】
1つの第1の隔壁15bには2行の吐出孔列9が配置されている。1つの第1の隔壁15bにはその両側の加圧室10から、吐出孔8に繋がるディセンダが繋がっていきている。図6(a)では、2つの加圧室10から繋がる吐出孔8が形成される可能性のある吐出孔8の配置を破線の円で示している。n=16の場合、吐出孔8が形成される位置は32カ所ある。図では、下側の加圧室10は、一方の端である左から1番目(以下で左からを省略して単に1番目と表すことがある)の位置に開口している吐出孔8に繋がっており、上側の加圧室10は、左から18番目の位置に開口している吐出孔8に繋がっている(これは、図6(b)では、2行目および3行目の吐出孔行9の位置である)。これらの吐出孔8の配置が近すぎると、クロストークの影響が大きくなったり、そもそもディセンダとなる孔が互いに繋がってしまうのでディセンダが形成できなくなってしまう。
【0074】
また、変位素子30を駆動する際に、全ての変位素子30を同時に駆動するとクロストークの影響が大きくなるために、時間的に分割して駆動することが考えられる。その際、同じ加圧室行11aに対応する変位素子30には同時に駆動信号を送り(ここで駆動信号を送るとは、吐出を生じさせないような電圧を送ることも含む)、異なる加圧室行11aにはタイミングを変えて駆動信号を送ることが、制御が簡単になり好ましい。具体的なタイミングの変え方としては、例えば、駆動信号を送るタイミングを1行おき同じにし、隣接する行で駆動信号を送るタイミングを変えればよい。このようにすれば、隣接する加圧室行11aでは駆動信号が送られるタイミングが異なるので、加圧室行11aに属する加圧室10と、それに隣接する加圧室行11aに属する加圧室10との間のクロストークは少なくなる。
【0075】
しかし、このようにしてもクロストークは全くなくなるわけでない。残るクロストークの影響としては、駆動信号が先に送られた場合と、後で送られた場合との間で、吐出速度や吐出量に差が生じるものがある。例えば、後で送られた駆動信号で形成された画素が、先で送られた駆動信号で形成された画素よりも小さい(液滴量が少ない)ことがある。この場合、印刷用紙P上で液体吐出ヘッド2の長手方向に隣接する画素が2つとも小さい画素であると、印刷のむらとして目立ち易いので、隣接した2つの画素は、駆動信号のタイミングのずらし方が異なる駆動信号で形成されたものであることが好ましい。加圧室行11aに属する加圧室10に繋がっている吐出孔8を、列方向において、偶数番目と奇数番目との交互にすれば、印刷用紙P上で液体吐出ヘッド2の長手方向に隣接する画素は、異なる駆動信号のタイミングのずらし方をした駆動信号で形成されたものになり、印刷むらが目立ち難くなる。
【0076】
上述のように第1の隔壁15aに設けられる2つの吐出孔行9に属する吐出孔8は、近くに存在するディセンダから離れるように、できるだけ長手方向に離して配置するのが好ましい。これは、この観点だけからいえば、2つの吐出孔行9に属する吐出孔8を、それぞれi1番目の吐出孔8とi2番目の吐出孔8としたときに、i1−i2の絶対値をnにするのが好ましいということである。しかし、この値をnにすると、nは偶数なので、列方向において、偶数番目と奇数番目の吐出孔8を交互に配置することができなくなってしまう。したがって、交互配置を実現しつつ、長手方向に離れる配置として、i1−i2の絶対値は、n−1またはn+1であることがよい。
【0077】
またさらに、考慮すべき点として、n番目の吐出孔8およびn+1番目の吐出孔8およびそれに繋がるディセンダは、隣接する加圧室行11aに属する加圧室10に近い位置に配置されるため、特にクロストークの影響を強く受けるので、幅の狭い第1の隔壁15aに設けるのは好ましくない。これを避ける方法としては、n番目の吐出孔8およびn+1番目の吐出孔8は、列方向における端の壁に配置することが考えられる。しかし、そのような配置は好ましくない。例えばベタのパターン印刷する際、列の一端側から記録用紙Pが搬送されてくると、一行目の吐出孔8であるn番目の吐出孔8から吐出が行なわれる。この際、2行目の吐出孔8を含め他の行の吐出孔8からは吐出されないので、クロストークが非常に少ない状態であり、液体吐出ヘッド2内の液体の流動量は少ない状態である。印刷が進み、最初に一行目の吐出孔8から吐出された液滴の着弾点の隣に向けて、2n行目の吐出孔8であるn+1番目の吐出孔8から吐出が行なわれる。2n−1行目の吐出孔8を含め他の行の吐出孔8からは吐出が行なわれており、クロストークが非常に多い状態であり、液体吐出ヘッド2内の液体の流動量は多い状態である。
【0078】
このようにn番目とn+1番目の吐出孔8の吐出状態は大きく異なるので、記録用紙P上でこれらにより形成された画素が隣接していると印刷むらが目立つことになる。上述の例では、ベタのパターンを印刷をする極端な場合を例示したが、印刷される画素の量が大きく変わる境界などでも同様の現象が起こり、印刷むらが目立つことになる。したがって
、列方向の両端の吐出孔8から吐出される液滴は、隣接して着弾させないような配置にすることが好ましい。これは、換言すれば、列方向の両端に配置される吐出孔8を、i3番目の吐出孔8とi4番目の吐出孔8とすると、i3−i4の絶対値を1および2n−1にしないことが好ましいということであり、i3−i4の絶対値が2〜2n−2のいずれかであることが好ましいということである。
【0079】
以上検討した条件全てを満足させつつ、全ての隔壁をマニホールド5bより幅の狭い第1の隔壁15aにしようとしても、そのような配置は存在しない。そのため、本発明では、一部の隔壁を、マニホールド5bより幅の広い第2の隔壁15bとし、n番目とn+1番目の吐出孔8を、列方向の端の壁あるいは第2の隔壁15bに配置することで、上述の条件を満足させつつ、液体吐出ヘッド2の幅方向の大きさを小さくする。第2の隔壁15bの数は少ない方が、幅をより小さくできるので好ましく、1つの第2の隔壁15bを設ければ、上述の条件を満足できるようにできるので、第2の隔壁15bの数は1つとするのがよい。
【0080】
以上をまとめると、第1の隔壁15aに配置されている、2行の吐出孔行9のうち一方の吐出孔行9に属する吐出孔8をi1番目の吐出孔8とし、他方の吐出孔行9に属する吐出孔8をi2番目の吐出孔8とすると、i1−i2の絶対値がn+1またはn−1であり、n番目の吐出孔8とn+1番目の吐出孔8とが、第2の隔壁15b、もしくは列方向の端に配置されており、列方向の両端に配置される吐出孔8を、i3番目の吐出孔8とi4番目の吐出孔8とすると、i3−i4の絶対値が2〜2n−2のいずれかであるのがよいということである。
【0081】
図6(b)の配置がこの条件を満たしていることは、次のようにすれば確認できる。2行目の吐出孔行9に配置されているのは、1番目の吐出孔8であり、3行目の吐出孔行9に配置されているのは、18番目の吐出孔8である。これらは第1の隔壁15aに配置されているので、i1=1、i2=18であり、i1−i2の絶対値は17である。これは、n+1、すなわち16+1であるという条件を満たしている。次に、n番目の吐出孔8とn+1番目の吐出孔8、すなわち16番目の吐出孔8と17番目の吐出孔8は、17行目の吐出孔行9と32行目の吐出孔行9に配置されている。17行目の吐出孔行9は、第2の隔壁15bに配置されており、32行目の吐出孔行9は列方向の端の壁に配置されているので、条件を満たしている。次に、列方向の端の吐出孔行9は、1行目の吐出孔行9と32行目の吐出孔行9である。これらに配置されているのは、26番目の吐出孔8と17番目の吐出孔8であるので、i3=26、i4=17であり、i3−i4の絶対値は9である。これは、2〜2n−2のいずれか、すなわち2〜30のいずれかであるという条件を満たしている。
【0082】
各第1の隔壁15aにおけるi1−i2の絶対値は、それぞれn−1、n+1のどちらでもよいが、それぞれの吐出孔8の状態を同じ条件に近づけるため、どちらか一方に統一する方が好ましい。第2の隔壁15bの数を1つにした場合、全てをn−1にすることはできなくなる上、第1の隔壁15aにおいてディセンダが同じ側に伸びる配置にする場合が生じてクロストークが大きくなるおそれがあるので、i1−i2の絶対値はn+1とするのが好ましい。例えば、吐出孔8が1番目とn番目のものであれば、図6(a)において、上側の加圧室10から伸びるディセンダも、下側の加圧室10から伸びるディセンダも左側に向かうので、ディセンダ同士が一部並行することになるのでクロストークが大きくなるおそれがあるが、これを避けることができる。
【0083】
第2の隔壁15bは、できるだけ少なくすることが好ましく、1つにするのが好ましい。その配置は、幅方向(列方向)の中央にすることで、吐出孔8の配置のバランスがとれるので好ましい。具体的にはn/2番目のマニホールド5bとn/2+1番目のマニホー
ルド5bのマニホールド5bとの間に設けるのが好ましい。また、このような配置にすることで、流路部材4の剛性が、対称性を持った状態で高くなり、液体の流動や吐出の反動による変形が抑制できるので、吐出状態を安定させることができる。
【0084】
また、前述の印刷される画素の量が大きく変わる境界で生じるおそれのある印刷むらについては、列方向の端の吐出孔8だけでなく他の吐出孔8についても考慮することが好ましい。その場合、列方向の端の吐出孔8同士場合と異なり、周囲とのクロストークの状態については、大きく異ならないので、記録用紙P上で隣接する画素の大きさや位置が大きく異なることはないが、画素の大きさの数倍のすじ状の印刷むらが目立つことがある。具体的には、液体吐出ヘッド2内部の液体の流動が少ない状態と、流動が激しい状態とでは、吐出特性が異なる場合、前者の状態で吐出された画素と、後者の状態で吐出された画素とは、単独で存在する場合はその差が少なくて目立たなくても、それぞれが連続していた場合、目立つことになる。これに対して、印刷状態の大きく異なるおそれのある、液体吐出ヘッド2の幅方向の一方に端に近い半分から吐出された画素と、他の半分から吐出された画素とが交互に着弾するようにすれば、平均化されて印刷むらをより目立たなくできる。具体的には、吐出孔8を、行方向に平行な仮想直線に投影したとき、前記仮想直線上で隣り合う吐出孔8の一方が、列方向における1〜n行目のいずれかの吐出孔行9に属し、他方が列方向におけるn+1〜2n行目のいずれかの吐出孔行9に属するようにすればよい。
【0085】
以上はマニホールド5bが偶数個の場合の説明であるが、奇数個の場合も、基本的な考え方は同じである。マニホールド5bの数がm個(mは3以上の奇数)の場合、1つの第1の隔壁に設けられる2つの吐出孔行9の吐出孔8の一方をi1番目の吐出孔8、他方をi2番目の吐出孔8とすると、i1−i2の絶対値は、距離が最も離れるmにすればよい。mが奇数なので、列方向において、偶数番目と奇数番目の吐出孔8を交互に配置することができるので、マニホールド数が偶数の場合のような問題は生じない。
【0086】
他の条件は、偶数の場合と同様なので、mが奇数の場合についてまとめると、第1の隔壁15aに配置されている、2行の吐出孔行9のうち一方の吐出孔行9に属する吐出孔8をi1番目の吐出孔8とし、他方の吐出孔行9に属する吐出孔8をi2番目の吐出孔8とすると、i1−i2の絶対値がmであり、m番目の吐出孔8とm+1番目の吐出孔8とが、第2の隔壁15b、もしくは列方向の端に配置されており、列方向の両端に配置される吐出孔8を、i3番目の吐出孔8とi4番目の吐出孔8とすると、i3−i4の絶対値が2〜2m−2のいずれかであるのがよいということである。
【0087】
この場合も、マニホールド5よりも幅の大きい第2の隔壁15bは、列方向の中央の近くに1つ設けるのがよい。それには、隔壁の個数が偶数個であるため、中央にある2つの隔壁のどちらかを第2の隔壁15bとすればよく、具体的には、列方向における(m−1)/2番目のマニホールド5bと(m+1)/2番目のマニホールド5bとの間にのみ、第2の隔壁15bを設ければよい。
【0088】
マニホールド5bの本数は、偶数・奇数いずれでもよいが、1つの加圧室行11aに属する加圧室10に繋がっている吐出孔8の数が2のべき乗であると、データ処理において都合がよい場合が多いため、そのようなためには、マニホールド5bの本数は、偶数である方がよい。
【0089】
なお、本実施例では、加圧部として圧電変形を用いた変位素子30を示したが、これに限られるものでなく、加圧室10の体積を変化させることができるもの、すなわち、加圧室10中の液体を加圧できるものなら他のものでよく、例えば、加圧室10中の液体を加熱して沸騰させて圧力を生じさせるものや、MEMS(Micro Electro Mechanical Syste
ms)を用いたものでもよい。
【0090】
また、実施例では、吐出孔8が行方向に重ならない配置を示したが、図6(b)に示した吐出孔8の配置と、それを列方向に平行移動させた配置とが含まれる、吐出孔8の配置にしてもよい。そのような吐出孔8の配置にすれは、記録用紙P上の同一地点に着弾させることのできる吐出孔8が2つあることになる。このような配置では、異なる吐出孔8から吐出される液滴を、記録用紙Pの搬送方向に交互に着弾させることにより、印刷速度を約倍にできる。また、異なる吐出孔8から吐出された液滴をm記録用紙Pのほぼ同一地点に着弾させることにより、1つの画素に含まれる液体の量を約倍にでき、画素を大きくできる。このような配置をする場合、元の吐出孔8の配置とこれを平行移動させた吐出孔8の配置との間の隔壁は、マニホールド5bよりも幅の大きい第2の隔壁15bにする。
【0091】
以上のような液体吐出ヘッド2は、例えば、以下のようにして作製する。ロールコータ法、スリットコーター法などの一般的なテープ成形法により、圧電性セラミック粉末と有機組成物からなるテープの成形を行ない、焼成後に圧電セラミック層21a、21bとなる複数のグリーンシートを作製する。グリーンシートの一部には、その表面に共通電極24となる電極ペーストを印刷法等により形成する。また、必要に応じてグリーンシートの一部にビアホールを形成し、その内部にビア導体を充填する。
【0092】
ついで、各グリーンシートを積層して積層体を作製し、加圧密着を行なう。加圧密着後の積層体を高濃度酸素雰囲気下で焼成し、その後有機金ペーストを用いて焼成体表面に個別電極25を印刷して、焼成した後、Agペーストを用いて接続電極26を印刷し、焼成することにより、圧電アクチュエータ基板21を作製する。
【0093】
次に、流路部材4を、圧延法等により得られプレート4a〜kを接着層を介して積層して作製する。プレート4a〜kに、統合マニホールド5、個別供給流路14、加圧室10およびディセンダなどとなる孔を、エッチングにより所定の形状に加工する。
【0094】
これらプレート4a〜kは、Fe―Cr系、Fe−Ni系、WC−TiC系の群から選ばれる少なくとも1種の金属によって形成されていることが望ましく、特に液体としてインクを使用する場合にはインクに対する耐食性の優れた材質からなることが望ましため、Fe−Cr系がより好ましい。
【0095】
圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とは、例えば接着層を介して積層接着することができる。接着層としては、周知のものを使用することができるが、圧電アクチュエータ基板21や流路部材4への影響をおよぼさないために、熱硬化温度が100〜150℃のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂系の接着剤を用いるのがよい。このような接着層を用いて熱硬化温度にまで加熱することによって、圧電アクチュエータ基板21と流路部材4とを加熱接合することができる。
【0096】
次に圧電アクチュエータ基板21と制御部100とを電気的に接続するために、接続電極26に銀ペーストを供給し、あらかじめドライバICを実装した信号伝達部92であるFPCを載置し、熱を加えて銀ペーストを硬化させて電気的に接続させる。なお、ドライバICの実装は、FPCに半田で電気的にフリップチップ接続した後、半田周囲に保護樹脂を供給して硬化させた。
【0097】
続いて、必要に応じて、開口5aから液体を供給できるようにリザーバを接着し、金属の筐体を、ねじ止めした後、接合部を封止剤で封止することで液体吐出ヘッド2を作製することができる。
【符号の説明】
【0098】
1・・・プリンタ
2・・・液体吐出ヘッド
2a・・・ヘッド本体
4・・・流路部材
4a〜m・・・(流路部材の)プレート
4−1・・・吐出孔面
4−2・・・加圧室面
5・・・統合マニホールド
5a・・・(統合マニホールドの)開口
5b・・・マニホールド
6・・・しぼり
8・・・吐出孔
9・・・吐出孔行
10・・・加圧室
11a・・・加圧室行
11b・・・加圧室列
12・・・個別流路
14・・・個別供給流路
15a・・・第1の隔壁
15b・・・第2の隔壁
16・・・ダミー加圧室
21・・・圧電アクチュエータ基板
21a・・・圧電セラミック層(振動板)
21b・・・圧電セラミック層
24・・・共通電極
25・・・個別電極
25a・・・個別電極本体
25b・・・引出電極
26・・・接続電極
28・・・共通電極用表面電極
30・・・変位素子(加圧部)
L・・・加圧室列の中心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出孔、該複数の吐出孔とそれぞれ繋がっている複数の加圧室および該複数の加圧室に液体を供給するn個(nは4以上の偶数)のマニホールドを有する流路部材と、
該流路部材に接合されており、前記複数の加圧室の体積をそれぞれ変化させる複数の加圧部とを備えている液体吐出ヘッドであって、
前記流路部材を平面視したとき、
前記加圧室が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、
前記n個のマニホールドが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、前記マニホールドの間の隔壁として、前記マニホールドよりも幅が狭い第1の隔壁と前記マニホールドよりも幅が広い第2の隔壁とを有し、
1つの前記マニホールドに繋がっている前記加圧室が、前記行方向に並んだ2つの加圧室行を構成しており、当該2つの加圧室行に属する加圧室に繋がっている前記吐出孔は、当該マニホールドの両側で、等間隔dで配置されている2つの吐出孔行を構成しており、
前記列方向に並んでいる加圧室列に属する前記加圧室と繋がっている前記吐出孔のそれぞれが、前記行方向において当該加圧室列を中心とする幅dの範囲をd/2nの間隔で分割した領域のうちのいずれかの領域に配置されており、
前記第1の隔壁に配置されている、2つの前記吐出孔行のうち一方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi1番目の吐出孔であり、他方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi2番目の吐出孔とすると、i1−i2の絶対値がn+1またはn−1であり、
前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からn番目の吐出孔とn+1番目の吐出孔とが、前記第2の隔壁、もしくは前記列方向の端の壁に配置されており、
前記列方向の両端の壁に配置されている前記吐出孔を、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi3番目の吐出孔とi4番目の吐出孔とすると、i3−i4の絶対値が2〜2n−2のいずれかであることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
i1−i2の絶対値がn+1であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2の隔壁が、前記列方向におけるn/2番目の前記マニホールドとn/2+1番目の前記マニホールドとの間にのみ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の吐出孔を前記行方向に平行な仮想直線に投影したとき、前記仮想直線上で隣り合う吐出孔の一方が、前記列方向における1〜n行目のいずれかの前記吐出孔行に属し、他方が前記列方向におけるn+1〜2n行目のいずれかの前記吐出孔行に属することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
複数の吐出孔、該複数の吐出孔とそれぞれ繋がっている複数の加圧室および該複数の加圧室に液体を供給するm個(mは3以上の奇数)のマニホールドを有する流路部材と、
該流路部材に接合されており、前記複数の加圧室の体積をそれぞれ変化させる複数の加圧部とを備えている液体吐出ヘッドであって、
前記流路部材を平面視したとき、
前記加圧室が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、
前記m個のマニホールドが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、前記マニホールドの間の隔壁として、前記マニホールドよりも幅が狭い第1の隔壁と前記マニホールドよりも幅が広い第2の隔壁とを有し、
1つの前記マニホールドに繋がっている前記加圧室が、前記行方向に並んだ2つの加圧室行を構成しており、当該2つの加圧室行に属する加圧室に繋がっている前記吐出孔は、
当該マニホールドの両側で、等間隔dで配置されている2つの吐出孔行を構成しており、
前記列方向に並んでいる加圧室列に属する前記加圧室と繋がっている前記吐出孔のそれぞれが、前記行方向において当該加圧室列を中心とする幅dの範囲をd/2mの間隔で分割した領域のうちのいずれかの領域に配置されており、
前記第1の隔壁に配置されている、2つの前記吐出孔行のうち一方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi1番目の吐出孔であり、他方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi2番目の吐出孔とすると、i1−i2の絶対値がmであり、
前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からm番目の吐出孔とm+1番目の吐出孔とが、前記第2の隔壁、もしくは前記列方向の端の壁に配置されており、
前記列方向の両端の壁に配置されている前記吐出孔を、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi3番目の吐出孔とi4番目の吐出孔とすると、i3−i4の絶対値が2〜2m−2のいずれかであることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2の隔壁が、前記列方向における(m−1)/2番目の前記マニホールドと(m+1)/2番目の前記マニホールドとの間にのみ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記複数の吐出孔を前記行方向に平行な仮想直線に投影したとき、前記仮想直線上で隣り合う吐出孔の一方が、前記列方向における1〜m行目のいずれかの前記吐出孔行に属し、他方が前記列方向におけるm+1〜2m行目のいずれかの前記吐出孔行に属することを特徴とする請求項5または6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
間に前記第1の隔壁が配置されている前記マニホールドの端部同士が繋がっており、間に第2の隔壁が配置されている前記マニホールドの端部同士が繋がっていないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して搬送する搬送部と、前記複数の加圧部を制御する制御部を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項1】
複数の吐出孔、該複数の吐出孔とそれぞれ繋がっている複数の加圧室および該複数の加圧室に液体を供給するn個(nは4以上の偶数)のマニホールドを有する流路部材と、
該流路部材に接合されており、前記複数の加圧室の体積をそれぞれ変化させる複数の加圧部とを備えている液体吐出ヘッドであって、
前記流路部材を平面視したとき、
前記加圧室が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、
前記n個のマニホールドが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、前記マニホールドの間の隔壁として、前記マニホールドよりも幅が狭い第1の隔壁と前記マニホールドよりも幅が広い第2の隔壁とを有し、
1つの前記マニホールドに繋がっている前記加圧室が、前記行方向に並んだ2つの加圧室行を構成しており、当該2つの加圧室行に属する加圧室に繋がっている前記吐出孔は、当該マニホールドの両側で、等間隔dで配置されている2つの吐出孔行を構成しており、
前記列方向に並んでいる加圧室列に属する前記加圧室と繋がっている前記吐出孔のそれぞれが、前記行方向において当該加圧室列を中心とする幅dの範囲をd/2nの間隔で分割した領域のうちのいずれかの領域に配置されており、
前記第1の隔壁に配置されている、2つの前記吐出孔行のうち一方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi1番目の吐出孔であり、他方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi2番目の吐出孔とすると、i1−i2の絶対値がn+1またはn−1であり、
前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からn番目の吐出孔とn+1番目の吐出孔とが、前記第2の隔壁、もしくは前記列方向の端の壁に配置されており、
前記列方向の両端の壁に配置されている前記吐出孔を、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi3番目の吐出孔とi4番目の吐出孔とすると、i3−i4の絶対値が2〜2n−2のいずれかであることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
i1−i2の絶対値がn+1であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2の隔壁が、前記列方向におけるn/2番目の前記マニホールドとn/2+1番目の前記マニホールドとの間にのみ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記複数の吐出孔を前記行方向に平行な仮想直線に投影したとき、前記仮想直線上で隣り合う吐出孔の一方が、前記列方向における1〜n行目のいずれかの前記吐出孔行に属し、他方が前記列方向におけるn+1〜2n行目のいずれかの前記吐出孔行に属することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
複数の吐出孔、該複数の吐出孔とそれぞれ繋がっている複数の加圧室および該複数の加圧室に液体を供給するm個(mは3以上の奇数)のマニホールドを有する流路部材と、
該流路部材に接合されており、前記複数の加圧室の体積をそれぞれ変化させる複数の加圧部とを備えている液体吐出ヘッドであって、
前記流路部材を平面視したとき、
前記加圧室が、行方向および列方向に並んでいる格子状に配置されており、
前記m個のマニホールドが、前記行方向に沿って前記流路部材の一端部側から他端部側にまで延在しており、前記マニホールドの間の隔壁として、前記マニホールドよりも幅が狭い第1の隔壁と前記マニホールドよりも幅が広い第2の隔壁とを有し、
1つの前記マニホールドに繋がっている前記加圧室が、前記行方向に並んだ2つの加圧室行を構成しており、当該2つの加圧室行に属する加圧室に繋がっている前記吐出孔は、
当該マニホールドの両側で、等間隔dで配置されている2つの吐出孔行を構成しており、
前記列方向に並んでいる加圧室列に属する前記加圧室と繋がっている前記吐出孔のそれぞれが、前記行方向において当該加圧室列を中心とする幅dの範囲をd/2mの間隔で分割した領域のうちのいずれかの領域に配置されており、
前記第1の隔壁に配置されている、2つの前記吐出孔行のうち一方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi1番目の吐出孔であり、他方の吐出孔行に属する吐出孔が、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi2番目の吐出孔とすると、i1−i2の絶対値がmであり、
前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からm番目の吐出孔とm+1番目の吐出孔とが、前記第2の隔壁、もしくは前記列方向の端の壁に配置されており、
前記列方向の両端の壁に配置されている前記吐出孔を、前記幅dの範囲の前記行方向における一方の端からi3番目の吐出孔とi4番目の吐出孔とすると、i3−i4の絶対値が2〜2m−2のいずれかであることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2の隔壁が、前記列方向における(m−1)/2番目の前記マニホールドと(m+1)/2番目の前記マニホールドとの間にのみ設けられていることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記複数の吐出孔を前記行方向に平行な仮想直線に投影したとき、前記仮想直線上で隣り合う吐出孔の一方が、前記列方向における1〜m行目のいずれかの前記吐出孔行に属し、他方が前記列方向におけるm+1〜2m行目のいずれかの前記吐出孔行に属することを特徴とする請求項5または6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
間に前記第1の隔壁が配置されている前記マニホールドの端部同士が繋がっており、間に第2の隔壁が配置されている前記マニホールドの端部同士が繋がっていないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の液体吐出ヘッドと、記録媒体を前記液体吐出ヘッドに対して搬送する搬送部と、前記複数の加圧部を制御する制御部を備えていることを特徴とする記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−43433(P2013−43433A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184911(P2011−184911)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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