説明

液体噴出器

【課題】残存内容物の低減を図ることができる液体噴出器を提案する。
【解決手段】ポンプ4に、ステム4fに合わさってその相互間に該通路につながる排出経路nを形成するアダプター6を設け、このアダプター6に、該排出経路nの出側でその外縁部をノズル8の周壁内面に摺動可能に当接させる移動シール10を形成し、前記ノズル8の周壁8aに、前記通路8の直下に位置しその内縁部をステム4fの外表面に摺動可能に当接させて該移動シール10との協働にて排出経路nを液密状態に維持する固定シール11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧ヘッドの押し込み操作により内容物の噴射を可能とした液体噴出器に関するものであり、排出経路内に残存する内容物の残存量をより少なくして液だれや乾燥固着による作動不良を確実に回避しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
分散媒を加圧媒体とともに充填したエアゾールタイプの容器は内容物の噴出機構が簡単で効率的な製造が可能であることから、従来、多用される傾向にあったが、該容器は、その廃棄に際しては容器本体を穿孔して加圧媒体を排出する手間がかかるうえ、排出された加圧媒体が大気汚染を引き起こすという理由から、近年では容器に予め備え付けられたポンプ機構を押圧ヘッドを押し込むことによって駆動して容器内の内容物を噴出させる手動式の噴出器が使用されるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7-250899号公報
【0003】
ところで、従来のこの種の噴出器は内部経路内に内容物が残留しやすく液だれや残留内容物の乾燥、固着により作動不良を引き起こす不具合があり、未だ改善の余地が残されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、排出経路内に残存しがちな内容物をより少なくできる新規な噴出器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器の内側につながる貫通開口を有し、容器の口部において固定保持されるベースキャップと、このベースキャップの貫通開口を通して吊り下げ保持され、容器内の内容物を吸引、加圧、圧送を司るポンプと、このポンプのステムに連結し該ステムの押し込み動作の繰り返しにより該ポンプを駆動させる押圧ヘッドと、この押圧ヘッドをベースキャップの天壁において取り囲む周壁を有し、ポンプにより圧送された内容物を周壁に開通させた通路を通して側方へ噴出させるノズルとを備え、
前記ポンプに、ステムに合わさってその相互間に該通路につながる排出経路を形成するアダプターを設け、このアダプターに、該排出経路の出側でその外縁部をノズルの周壁内面に摺動可能に当接させる移動シールを形成し、
前記ノズルの周壁に、前記通路の直下に位置しその内縁部をステムの外表面に摺動可能に当接させて該移動シールとの協働にて排出経路を液密状態に維持する固定シールを設けたことを特徴とする液体噴出器である。
【0006】
上記の構成になる噴出器において、移動シールとしては、外縁部の上面がノズルの周壁内面に当接する下向き配置になるものが適用でき、固定シールとしては、内縁部の下面がステムの外周面に当接する上向き配置になるものが適用できる。
【0007】
また、ノズルの周壁下端を入り口として備えられ、ポンプにより内容物を吸引する際に、容器内へ空気を導入して負圧の解除を行う空気導入路を設けるのが望ましい。
【0008】
さらに、ノズルの少なくとも先端部分を覆い隠すとともに押圧ヘッドの上面に位置してその押し込みを阻止するヘッドカバーを設けることができる。
【0009】
移動シール及び固定シールは、内容物を噴出させた後の相互離隔によって排出経路内に残存する内容物をステムへ向けて引き込む吸引力を増強させるものとするのがよい。
【発明の効果】
【0010】
ステムに組み合わさるアダプターに移動シールを設け、ノズルの周壁に固定シールを設け、内容物を噴射すべく押圧ヘッドを押し込んだ際に該移動シールと固定シールとを相互に接近させて排出経路内の圧力を高めるようにしたので、経路内に存在する内容物のほとんどはノズルを通して外界へ噴出することになる。
【0011】
排出経路内の圧力が上昇することにより内容物の噴出状態(とくに霧状にして噴出ささる場合)が改善される。
【0012】
移動シール及び固定シールにより、シール性が高まるため、内容物を噴出させた後の相互離隔によって排出経路内に残存する内容物をステムへ向けて引き込む吸引力が増強され、液切れがよくなり、液垂れを起こすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう液体噴出器(蓄圧タイプの噴霧器)の実施の形態を模式的に示した図であり、図2はその平面を示した図である。
【0014】
図における符号1は容器の口部にねじ係合(アンダーカット係合でもよい)によって固定保持するベースキャップである。このベースキャップ1は周壁1aと、この周壁1aの上端に一体連結する天壁1bからなり、該天壁1bの中央部には貫通開口hが設けられている。2はベースキャップ1の天壁1bで貫通開口hを取り囲むように一体的に設けられた内筒(起立壁)、3はベースキャップ1の天壁1bで内筒2を取り囲むように設けられた外筒(起立壁)である。この外筒3と内筒2との相互間には隙間が設けられており、これらによって環状溝部mが形成される。
【0015】
また、4はポンプである。このポンプ4は貫通開口hを通して容器の口部に吊り下げ保持され、吸引管5を通して容器内の内容物を吸引、加圧、圧送するものであって、底部に吸引管5につながる吸引口を有するシリンダー4aと、シリンダー4aの吸引口に設置され、内容物の吸引時にのみ該吸引口を開放する弁体(ボール等)4bと、複数の溝(縦溝)rによってシリンダー4a内で起立するロッド4cと、溝rの上端に配置されたスプリングSを介してスライド可能に弾性支持されるバルブ(バルブにはその内外につながる通路Uを有している)4dと、このバルブ4dの先端部分に当接してポンプの出側開孔Pを閉塞する弁座を備え、内筒2の内壁面に沿って移動可能なスライダー4eと、このスライダー4eの上端において連結しその内側に出側開孔Pにつながる内側通路を有するステム4fからなる。
【0016】
また、6はステム4fの後端に合わさり、ノズルの周壁(後述する)に至るまでの間で内容物の排出経路nを形成するアダプター、7はアダプター6を介してステム4fにつながる押圧ヘッド、8はノズルである。ノズル8は押圧ヘッド7をベースキャップ1の天壁1bにおいて取り囲む周壁8aと、この周壁8aに一体的に設けられた先端部分8bからなり、周壁8aには先端部分8bの噴出孔につながる通路8cが開通している。9はノズル8の周壁下端を形成する基部である。この基部9は外筒3の内壁に極わずかな隙間tを残して配置される内筒9aと、該外筒3の外壁に極わずかな隙間tを残して配置される外筒9bからなっており、アンダーカットCの如き係合手段によって間欠的にノズル8を外筒3に抜け止め保持している(ノズル8は外筒3を介してベースキャップ1に固定される)。
【0017】
10はアダプター6のフランジ部の先端に一体的に設けられ、排出経路nの出側でその外縁部をノズル8の周壁8aの内面に摺動可能に当接させた移動シール(弾性変形可能な薄肉のディスク状部材にて構成される)である。この移動シール10は外縁部の上面がノズル8の周壁8aの内面に当接しており、内圧が高まった場合にノズル8の内壁8aの内面に強く接触するようになり確実なシールが行えるようになっている。さらに11はノズル8の周壁8aの内面に一体的に設けられた固定シールである。この固定シール11は通路8cの直下に位置しており、その内縁部をステム4fの外表面に摺動可能に当接していて該移動シール10との協働にて排出経路nを液密状態に維持している(弾性変形可能な薄肉のディスク状部材にて構成される)。固定シール11は内縁部の下面がステム4fの外表面に当接しており、これにより内圧が高まった場合にステム4fの外表面に強く接触するようになり確実なシールが行えるようになっている。
【0018】
12は空気導入経路である。この空気導入経路12はノズル8の周壁下端(基部9の下端)に入り口12aを形成しており、ポンプ4によって内容物を吸引する際、隙間t、t、スライダー4e及び内筒2の相互間、シリンダー4aの側壁に設けた開口Kを通して容器内に空気を導入して容器内が負圧になるのを防止する。そして、13はノズル8の少なくとも先端部分8bを覆い隠すとともに押圧ヘッド7の上面に位置してその押し込みを阻止するヘッドカバーである。
【0019】
ヘッドカバー13を取り外して押圧ヘッド7を押し込むと、バルブ4dはスプリングSの付勢力に抗してシリンダー4aの底部へ向けてスライドする。バルブ4dがシリンダー4aの底部に位置したところで、押し込みにかかる力を取り除くと、バルブ4dはスプリングSの付勢力でもって元の位置へ復帰し、このときシリンダー4a内は負圧となり吸引管5を通して容器内の内容物が吸引される。
【0020】
次いで、再度、押圧ヘッド7を押し込むと、バルブ4dはシリンダー4aの底部へ向けてスライドするが、この時、シリンダー4a内には吸引された内容物が存在しているため該内容物は加圧され、バルブ4dとスライダー4eの相互間に形成される液室gの圧力がスプリングSの付勢力を上回った際に出側開孔Pが開放する(出側開孔Pが開放されシリンダー4a内の圧力が低下することでスプリングSの付勢力でもって出側開孔Pは閉塞する)。出側開孔Pが開放するとシリンダー4a内の内容物は排出経路n、通路8cを経て先端部分8bより外界へ向けて噴射されることになり、該押圧ヘッド7の押し込みと復帰動作を複数回にわたって繰り返すことにより内容物の連続的な噴出が可能となる。
【0021】
図3は押圧ヘッド7を押し込んだ状態を示した図である。押圧ヘッド7の押し込みに際して移動シール10が固定シール11に向けて接近していくため、排出経路nの出側においてはとくに圧力が高められることとなり該排出経路n内に存在する内容物はそのほとんどが通路8cへと押しやられることになる。
【0022】
内容物を噴出させた後において移動シール10及び固定シール11が相互に離隔するに際しては、ノズル8からの外気の吸引力が高まるため、排出経路n内に残存する内容物はステム4fへ向けて引き込まれ、液切れがよくなる(液垂れが起こりにくい)。
【0023】
蓄圧式の噴出器(スプレー噴出器)にあっては、排出経路n内の圧力上昇により内容物を小さな粒に分散させて噴出させることも可能となり良好な噴霧状態を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
内容物の残存量が極めて少ない液体噴出器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にしたがう液体噴出器の実施の形態を示した図である。
【図2】図1に示した噴出器の平面を示した図である。
【図3】液体の噴霧状況を示した図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ベースキャップ
2 内筒
3 外筒
4 ポンプ
5 吸引管
6 アダプター
7 押圧ヘッド
8 ノズル
9 基部
10 移動シール
11 固定シール
12 空気導入経路
13 ヘッドカバー
r 溝
S スプリング
U 通路
P 出側開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内側につながる貫通開口を有し、容器の口部において固定保持されるベースキャップと、このベースキャップの貫通開口を通して吊り下げ保持され、容器内の内容物を吸引、加圧、圧送を司るポンプと、このポンプのステムに連結し該ステムの押し込み動作の繰り返しにより該ポンプを駆動する押圧ヘッドと、この押圧ヘッドをベースキャップの天壁において取り囲む周壁を有し、ポンプにより圧送された内容物を周壁に開通させた通路を通して側方へ噴出させるノズルとを備え、
前記ポンプに、ステムに合わさってその相互間に該通路につながる排出経路を形成するアダプターを設け、このアダプターに、該排出経路の出側でその外縁部をノズルの周壁内面に摺動可能に当接させる移動シールを形成し、
前記ノズルの周壁に、前記通路の直下に位置しその内縁部をステムの外表面に摺動可能に当接させて該移動シールとの協働にて排出経路を液密状態に維持する固定シールを設けたことを特徴とする液体噴出器。
【請求項2】
前記移動シールは、外縁部の上面がノズルの周壁内面に当接する下向き配置になり、固定シールは、内縁部の下面がステムの外周面に当接する上向き配置になる、請求項1記載の液体噴出器。
【請求項3】
前記ノズルの周壁下端を入り口として備えられ、ポンプにより内容物を吸引する際に、容器内へ空気を導入して負圧の解除を行う空気導入路を有する、請求項1又は2記載の液体噴出器。
【請求項4】
ノズルの少なくとも先端部分を覆い隠すとともに押圧ヘッドの上面に位置してその押し込みを阻止するヘッドカバーを備える、請求項1〜3の何れかに記載の液体噴出器。
【請求項5】
前記移動シール及び固定シールは、内容物を噴出させた後の相互離隔によって排出経路内に残存する内容物をステムへ向けて引き込む吸引力を増強させるものである、請求項1〜4の何れかに記載の液体噴出器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−131807(P2009−131807A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311238(P2007−311238)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】