説明

液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造

【課題】液体噴射ヘッドを保持する液体噴射ヘッド保持機構において、その機構の構成部材をねじ止めして固定する場合に、液体噴射ヘッドの位置ずれを抑制することができる液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造を提供する。
【解決手段】液体噴射ヘッドを保持する保持フレームに対してねじ28の締め付け力によって固定される流路形成部材30におけるねじ28の軸方向Zでの保持フレームに対する対向部位に保持フレームに向けて突設され、ねじ28の締め付け時にねじ28から受ける回転力と保持フレーム側から受ける反力とによってつぶれ変形する第1環状突起59を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置として、複数の液体噴射ヘッドがユニット化された液体噴射ヘッドユニットからインク(液体)を噴射することで用紙等に対して印刷処理を施すインクジェット式プリンターがある(例えば、特許文献1)。そして、特許文献1のプリンターにおいては、幹流路部材を通じてインクを液体噴射ヘッドユニットに供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−6049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のプリンターにおいては、各液体噴射ヘッドは互いに位置決めされた状態でプラットフォーム(保持フレーム)に保持されているとともに、このプラットフォームには幹流路部材を保持する幹流路保持部材がねじ止め固定されている。そのため、プラットフォームに幹流路保持部材をねじ止めする場合には、ねじの回転力によってプラットフォームが変位して、液体噴射ヘッドの位置ずれを招いてしまう虞がある。
【0005】
なお、こうした問題は、プラットフォームに対して幹流路保持部材をねじ止め固定する場合に限らず、例えば液体供給流路が形成された流路形成部材など、液体噴射ヘッドに液体を供給するための液体供給機構を構成する任意の構成部材を液体噴射ヘッドが保持された保持フレームに対して固定する場合にも共通して生じうる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、液体噴射ヘッドを保持する液体噴射ヘッド保持機構において、その機構の構成部材をねじ止めして固定する場合に、液体噴射ヘッドの位置ずれを抑制することができる液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造は、液体噴射ヘッドを保持する保持フレーム及び該保持フレームに対してねじの締め付け力によって固定される被固定部材のうちの一方における前記ねじの軸方向での他方に対する対向部位に前記他方に向けて突設され、前記ねじの締め付け時に当該ねじから受ける回転力と前記他方側から受ける反力とによってつぶれ変形する突起部を備える。
【0008】
この構成によれば、ねじの締め付け時に突起部がつぶれ変形することで被固定部材を介した保持フレーム側に対する回転力の伝達が抑制されるので、保持フレームの変位を抑制しつつ、被固定部材を固定することができる。したがって、液体噴射ヘッドを保持する保持フレームに対して例えば液体供給機構の構成部材などの被固定部材をねじの締め付け力によって固定する場合に、液体噴射ヘッドの位置ずれを抑制することができる。
【0009】
本発明の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造において、前記被固定部材には前記ねじを挿通するための挿通孔が設けられ、前記突起部は前記被固定部材における前記ねじの軸方向での前記保持フレームに対向する側で前記挿通孔を囲むように環状に形成される。
【0010】
この構成によれば、突起部は挿通孔を囲むように環状に形成されるので、ねじの回転方向において保持フレームに対する回転力の伝達を均等に抑制することができる。
本発明の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造において、前記被固定部材は前記液体噴射ヘッドに液体を供給するための液体供給流路が形成された平板状の基盤部を有する流路形成部材であり、前記突起部は前記基盤部の前記保持フレームと対向する一面側から少なくとも3つ突設される。
【0011】
この構成によれば、突起部は平板状の基盤部の一面側から少なくとも3つ突設されるので、基盤部の傾きを抑制しつつ、流路形成部材を保持フレームにねじの締め付け力によって固定することができる。
【0012】
本発明の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造において、前記被固定部材と前記保持フレームとの間には平板状の補強部材が配置され、前記ねじの軸方向において、前記突起部は前記補強部材よりも長い。
【0013】
この構成によれば、ねじの軸方向において突起部は補強部材よりも長いので、被固定部材と保持フレームとの間に補強部材が配置された場合にも、突起部を保持フレーム側に当接させることができる。
【0014】
本発明の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造において、前記被固定部材には前記補強部材に当接して当該補強部材の位置決めを行う当接部が前記突起部を囲むように設けられ、前記ねじの軸方向において前記当接部は前記突起部よりも短く、かつ、前記当接部は前記突起部よりも剛性が高い。
【0015】
この構成によれば、当接部は突起部よりも短く、突起部よりも剛性が高いので、ねじ止めによって突起部がつぶれ変形するときにもその形状を保持して、補強部材の位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる液体噴射装置の実施形態を示す平面図。
【図2】液体噴射ヘッドユニットを斜め上側から見た分解斜視図。
【図3】液体噴射ヘッドユニットを斜め下側から見た分解斜視図。
【図4】流路形成部材の上面図。
【図5】流路形成部材の下面図。
【図6】液体噴射ヘッドユニットにおけるねじ止め部周辺の構成を示す断面図。
【図7】流路ユニットを保持フレームにねじ止めする場合の作用を示す断面図。
【図8】液体噴射ヘッドユニットを構成する流路ユニットの斜視図。
【図9】流路ユニットを構成する補強部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる液体噴射装置をインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある)に具体化した実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、各図中に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、図面中の上方向、右方向及び前方向を示す矢印において、丸印の中に点が記載されたもの(矢の先端を前から見た図)は紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、丸印の中にバツが記載されたもの(矢の羽根を後ろから見た図)は紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のプリンター11においては、フレーム12内に配設された支持部材13上に、フレーム12の長手方向となる主走査方向Xと交差する搬送方向Yに沿って用紙Pが搬送される。
【0019】
フレーム12の長手方向における一端側(図1では右端側)に配設されたカートリッジホルダー14には、液体の一例としてのインクを収容する複数のインクカートリッジ15が着脱可能に装着される。なお、本実施形態においては、互いに異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ)のインクをそれぞれ収容する6つのインクカートリッジ15がカートリッジホルダー14に装着されるようになっている。
【0020】
カートリッジホルダー14の上方には、空気供給チューブ16を通じて各インクカートリッジ15に空気を加圧供給する加圧ポンプ17が載置されている。また、各インクカートリッジ15には、可撓性を有するインク供給チューブ18の上流端が接続されている。
【0021】
フレーム12内には主走査方向Xに延びるガイド軸19が架設されているとともに、このガイド軸19にはキャリッジ20が摺動可能に支持されている。キャリッジ20は、タイミングベルト21を介してキャリッジモーター22に接続されている。そして、キャリッジ20は、キャリッジモーター22の駆動によりガイド軸19に沿って主走査方向Xに往復移動されるようになっている。
【0022】
キャリッジ20の上部には各インクカートリッジ15と対応する複数のバルブユニット23が搭載されているとともに、キャリッジ20の下部には液体噴射ヘッドユニット24が固定されている。また、各バルブユニット23には、それぞれ対応するインク供給チューブ18の下流端が接続されている。そして、加圧ポンプ17によってインク供給チューブ18を通じてインクカートリッジ15から加圧供給されたインクはバルブユニット23を介して液体噴射ヘッドユニット24に供給されるようになっている。
【0023】
すなわち、プリンター11は、フレーム12側に設けられたインクカートリッジ15からキャリッジ20に搭載された液体噴射ヘッドユニット24にインクを供給する所謂オフキャリッジタイプのプリンターである。そして、空気供給チューブ16、加圧ポンプ17、インク供給チューブ18及びバルブユニット23は、液体噴射ヘッド26にインクを供給する液体供給機構を構成する。
【0024】
次に、液体噴射ヘッドユニット24について説明する。
図2に示すように、液体噴射ヘッドユニット24は、流路ユニット25と、複数(本実施形態では6つ)の液体噴射ヘッド26を保持する保持フレーム27とが上下に重ねられた状態で第2固定具の一例としての複数(本実施形態では4つ)のねじ28によってねじ止めされることで構成される。なお、保持フレーム27の上面側において前側寄りとなる位置には、流路ユニット25の水平方向(主走査方向X及び搬送方向Y)における位置決めを行うための位置決め孔29が主走査方向Xに並ぶように2つ設けられている。
【0025】
流路ユニット25は、流路形成部材30と補強部材31とが上下に重ねられた状態で第1固定具の一例としての複数(本実施形態では6つ)のねじ32によってねじ止めされることで構成される。そして、保持フレーム27、流路形成部材30及び補強部材31は液体噴射ヘッド26を保持する液体噴射ヘッド保持機構を構成する。
【0026】
本実施形態において、流路形成部材30及び補強部材31は、液体噴射ヘッド26にインクを供給する液体供給機構を構成する構成部材である。また、流路形成部材30は、保持フレーム27に対してねじ28の締め付け力によって固定される被固定部材である。
【0027】
流路形成部材30は、例えばプラスチックなどの樹脂材料によって構成される。また、補強部材31は、流路形成部材30よりも剛性の高い金属材料によって平板状に形成される板金部材である。さらに、保持フレーム27はアルミニウム等の金属材料によって構成される。
【0028】
補強部材31は、保持フレーム27に対する流路ユニット25の固定時に、液体噴射ヘッド26と基盤部42との間に配置される態様となる。そして、流路形成部材30が液体噴射ヘッド26に接続された状態において、補強部材31は保持フレーム27を介して接地される。
【0029】
保持フレーム27の上面側の四隅には、ねじ28をねじ止めするためのねじ穴33が形成されたねじ止め部34がそれぞれ設けられている。また、保持フレーム27の前端及び左右両端からは挿通孔35が形成されたリブ36が突設されている。そして、液体噴射ヘッドユニット24は、例えば各リブ36の挿通孔35に下方から差し込まれる図示しないねじ等の固定具によってキャリッジ20の下面側に固定されるようになっている。
【0030】
流路形成部材30の上面側には、バルブユニット23からインクの供給を受けるための複数(本実施形態では6つ)の供給孔37が搬送方向Yに沿って並ぶように設けられている。また、各液体噴射ヘッド26の上面側には、異なる色のインクを導入するための2つの接続孔38(38A,38B)がそれぞれ前側と後側とに設けられている。さらに、液体噴射ヘッド26の各接続孔38には、円環状のシール部材39が固定されている。
【0031】
図3に示すように、各液体噴射ヘッド26の下面側には、インクを噴射するためのノズル40が複数設けられている。なお、搬送方向Yに沿って並ぶ複数のノズル40は同じ色のインクを噴射するノズル列41を構成している。また、各液体噴射ヘッド26には、接続孔38(38A,38B)からそれぞれ導入された2色のインクを噴射するための2列のノズル列41(41A,41B)が主走査方向Xに沿って並ぶように配置されている。
【0032】
そして、印刷処理を行う場合には、キャリッジ20の主走査方向Xに沿う往路移動において、その移動方向の先頭側に位置するノズル列41Aから用紙Pに向けて順次インクを噴射する。続いて、用紙Pを所定量搬送した後に、キャリッジ20の主走査方向Xに沿う復路移動において、その移動方向の先頭側に位置するノズル列41Bから用紙Pに向けて順次インクを噴射する。これにより、キャリッジ20の往路移動時と復路移動時とで同じ順番で6色のインクが重ね打たれる双方向印刷が行われるようになっている。
【0033】
次に、流路形成部材30の構成について詳述する。
流路形成部材30は、平板状の基盤部42と、基盤部42の一面側(補強部材31と対向する下面側)から管状をなして延設される複数(本実施形態では12本)の接続部43とを有している。各接続部43は、主走査方向Xにおいて各液体噴射ヘッド26の配置間隔に対応した間隔をおいた位置から互いに平行をなすように各々が独立して延設されたパイプ管からなる。なお、パイプ管とは、フレキシブルチューブのように大きな可撓性を備えず、姿勢を変化させた場合にも自重によって変形することなくその直線的な形状を保持することができる程度の剛性を備える円筒形状の管のことをいう。また、ここでいう「互いに平行」とは、全ての接続部43が真に平行をなす場合だけでなく、所定角度(例えば5度程度)傾いた状態であっても、各接続部43が基盤部42の一面側からほぼ同じ方向に向けて延設されていればよいものとする。
【0034】
そして、各接続部43は、それらの先端が各接続部43と個別に対応する各液体噴射ヘッド26に各々設けられた接続孔38と互いに対応した位置関係となるように配置されている。具体的には、流路形成部材30の基盤部42の前寄りとなる位置からは、各液体噴射ヘッド26の前側に設けられた接続孔38A(図2参照)にそれぞれインクを供給するための6本の接続部43が主走査方向Xに沿って配置されている。また、流路形成部材30の基盤部42の後寄りとなる位置からは、各液体噴射ヘッド26の後側に設けられた接続孔38B(図2参照)にそれぞれインクを供給するための6本の接続部43が主走査方向Xに沿って配置されている。
【0035】
図4及び図5に示すように、流路形成部材30の基盤部42には、その中央付近となる位置に流路形成領域44が配置されている。また、基盤部42の端部には、流路形成領域44を囲むように非流路形成領域45が配置されている。そして、基盤部42の流路形成領域44と対応する位置には、各液体噴射ヘッド26にそれぞれインクを供給するための複数の液体供給流路46の上流側流路部分が形成されている。
【0036】
図5に示すように、各接続部43には、上流端が液体供給流路46の上流側流路部分に連通する液体供給流路46の下流側流路部分である第1流路47がそれぞれ形成されている。
【0037】
また、基盤部42の下面側には、上流端が供給孔37に連通するとともに下流側が2つに分岐した溝状の凹部48が6本形成されている。各凹部48の2つに分岐した下流端は、それぞれ流路形成部材30を上下に貫通する連通孔49と連通している。そして、基盤部42の下面側において流路形成領域44と対応する位置に、6本の凹部48を覆蓋するようにフィルム部材50が溶着されることで、第2流路51が囲み形成されている。
【0038】
図4に示すように、基盤部42の上面側には、上流端が連通孔49に連通するとともに下流端が接続部43に設けられた第1流路47に連通する溝状の凹部52が12本形成されている。そして、基盤部42の上面側において流路形成領域44と対応する位置に、12本の凹部52を覆蓋するようにフィルム部材53が溶着されることで、第3流路54が囲み形成されている。
【0039】
そして、流路形成部材30に対して供給孔37を通じて供給されたインクは、図4において二点鎖線の矢印で示すように第2流路51を通じて連通孔49に至り、さらに図5において二点鎖線の矢印で示すように第3流路54及び第1流路47を通じて液体噴射ヘッド26(図3参照)に供給される。すなわち、供給孔37、第2流路51、連通孔49及び第3流路54は液体供給流路46の上流側流路部分を構成する。
【0040】
基盤部42の非流路形成領域45には、ねじ28を挿通するための4つの挿通孔55と、ねじ32を挿通するための6つの挿通孔56とが形成されている。各挿通孔55は、流路形成部材30のほぼ四隅に対応する位置に配置されている。また、各挿通孔56は、間に流路形成領域44を挟むように搬送方向Yに沿って並ぶ2つが対をなすとともに、主走査方向Xに沿って3対が並ぶように、流路形成部材30の前後の側縁に沿って配置されている。
【0041】
図3に示すように、基盤部42の下面側からは、補強部材31を流路形成部材30に固定して流路ユニット25を構成する場合に補強部材31の水平方向における位置決めを行う一対の第1位置決め突起57が突設されている。なお、対をなす2つの第1位置決め突起57は、基盤部42の右寄りとなる位置に搬送方向Yに沿って並んでいる。
【0042】
同じく基盤部42の下面側からは、流路ユニット25を保持フレーム27に接続する場合に流路ユニット25の水平方向における位置決めを行う一対の第2位置決め突起58が突設されている。なお、対をなす2つの第2位置決め突起58は、基盤部42の前寄りとなる位置に主走査方向Xに沿って並んでいる。また、第2位置決め突起58は、第1位置決め突起57よりも上下方向における長さ(すなわち、基盤部42からの突設量)が大きくなっている。
【0043】
同じく基盤部42の下面側からは、ねじ28を挿通するための各挿通孔55を囲むように環状に形成された突起部の一例としての第1環状突起59が突設されている。すなわち、4つの第1環状突起59は、流路形成部材30におけるねじ28の軸方向Z(接続部43の延設方向となる上下方向)での保持フレーム27に対向する側において、保持フレーム27に対する対向部位に、保持フレーム27側に向けて突設されている。また、第1環状突起59の外周側には、第1環状突起59と同心円状に形成される当接部の一例としての第2環状突起60がそれぞれ第1環状突起59を囲むように環状に突設されている。
【0044】
また、基盤部42の下面側からは、ねじ32を挿通するための挿通孔56を囲むように環状に形成された当接部の一例としての第3環状突起56aが突設されている。また、第3環状突起56aの外周側には、第3環状突起56aと同心円状に形成される第2環状突起60が突設されている。なお、第3環状突起56aは、軸方向Zにおける長さが第2環状突起60と等しくなっている。
【0045】
第1環状突起59は、軸方向Zにおいて、第2環状突起60よりも長く、かつ、接続部43よりも短くなっている。また、ねじ28の径方向において、第2環状突起60は第1環状突起59よりも肉厚が厚く形成されることで、第1環状突起59よりも剛性が高くなっている。
【0046】
そして、補強部材31を流路形成部材30に固定して流路ユニット25を構成する場合には、基盤部42の下面側から突設された第2環状突起60及び第3環状突起56aが補強部材31に当接することで、補強部材31の軸方向Zにおける位置決めがなされるようになっている。これにより、補強部材31は、軸方向Zにおいて第2環状突起60及び第3環状突起56aの長さの分、基盤部42から離間した状態で流路形成部材30に固定される。
【0047】
ここで、第1環状突起59は、補強部材31が流路形成部材30に固定される場合に、補強部材31を貫通してさらに保持フレーム27側となる下側に突設するように、軸方向Zにおける長さが設定されている。すなわち、図6に示すように、軸方向Zにおいて、第1環状突起59は補強部材31よりも長くなるように形成されている。そして、流路ユニット25が保持フレーム27にねじ止めされる場合には、ねじ28の締め付け時にねじ28から受ける回転力と保持フレーム27のねじ止め部34から受ける反力とによって、第1環状突起59が図7に示すようにつぶれ変形するようになっている。
【0048】
次に、補強部材31の構成について詳述する。
図8に示すように、補強部材31の前後の端部には、その先端が下方に向けて屈曲された屈曲部31aが設けられている。また、補強部材31には、流路形成部材30の基盤部42に設けられた流路形成領域44に対応する中央付近に開口部61が設けられている。そして、補強部材31は、流路形成部材30の基盤部42と平行をなすとともに基盤部42の非流路形成領域45と対向するように流路形成部材30に対して固定されることで、流路ユニット25を構成する。
【0049】
補強部材31のほぼ四隅となる位置には、ねじ28を挿通するための4個の挿通孔62が形成されている。なお、挿通孔62の内径は、流路形成部材30の基盤部42から突設された第1環状突起59の外径よりも大きくなっている。また、補強部材31において各屈曲部31aと開口部61との間となる位置には、ねじ32をねじ止めするための3対のねじ孔63が主走査方向Xに沿って形成されている。
【0050】
補強部材31の右側寄りとなる位置には、流路形成部材30の第1位置決め突起57を挿通するための第1位置決め孔64が搬送方向Yに沿って2つ形成されている(図9を併せて参照)。また、補強部材31の前側寄りとなる位置には、流路形成部材30の第2位置決め突起58を挿通するための第2位置決め孔65が搬送方向Yに沿って2つ形成されている。
【0051】
さらに、補強部材31には、流路形成部材30の接続部43を挿通するための複数(本実施形態では12個)の貫通孔66が形成されている。なお、貫通孔66の内径は、接続部43の挿通時に接続部43と貫通孔66との間に隙間が生じるように、接続部43の外径よりも一回り大きく形成されている。
【0052】
次に、液体噴射ヘッド26に対する流路形成部材30の固定方法について説明する。
始めに、組み付け工程として、作業者は流路形成部材30の下方に補強部材31を配置して、補強部材31の貫通孔66に流路形成部材30の接続部43を挿通しつつ、基盤部42と平行をなすように補強部材31を流路形成部材30に組み付ける。
【0053】
このとき、作業者は、流路形成部材30の第1位置決め突起57と第2位置決め突起58とをそれぞれ補強部材31の第1位置決め孔64と第2位置決め孔65とに挿通することで、補強部材31の水平方向における位置決めを行う。また、作業者は、流路形成部材30の第1環状突起59を補強部材31の挿通孔62に挿通した後、流路形成部材30の第2環状突起60及び第3環状突起56aを補強部材31に当接させることで、補強部材31の軸方向Zにおける位置決めを行う。
【0054】
次に、第1固定工程として、作業者は流路形成部材30の上側からねじ32を各挿通孔56に挿通させるとともにその先端を補強部材31のねじ孔63に当接させた状態で、回転させる。そして、作業者は、ねじ32の締め付け力によって、流路形成部材30に対して基盤部42と平行をなすように補強部材31を固定する。これにより、ねじ32によって固定された流路形成部材30と補強部材31とによって流路ユニット25が構成される。
【0055】
続いて、接続工程として、作業者は補強部材31の対をなす屈曲部31aを両手で把持して、軸方向Zに沿って流路ユニット25を保持フレーム27に近接する方向に移動させ、流路形成部材30の対をなす接続部43をそれぞれ対応する液体噴射ヘッド26の2つの接続孔38(38A,38B)に差し込み接続する。
【0056】
このとき、作業者は、流路形成部材30の第2位置決め突起58を保持フレーム27の位置決め孔29に挿通することで、流路ユニット25の水平方向における位置決めを行う。
【0057】
その後、第2固定工程として、作業者が流路ユニット25を保持フレーム27に対してねじ28でねじ止めすることで固定する。これにより、保持フレーム27に対して流路形成部材30が固定されるとともに各液体噴射ヘッド26にそれぞれ対応する液体供給流路46が接続されて、液体噴射ヘッドユニット24の組立が完了する。なお、各接続部43の接続孔38に対する差し込み接続が完了すると、シール部材39によって接続部43と接続孔38との接続部分がシールされる。
【0058】
次に、本実施形態のプリンター11及び液体噴射ヘッドユニット24の作用について説明する。
まず、液体噴射ヘッドユニット24を小型化するためには、流路形成部材30の基盤部42を薄型化することが好ましいが、基盤部42を薄型化すると反り等の変形が生じやすくなる。特に、基盤部42を樹脂材料によって構成するとともにフィルム部材50,53を溶着して液体供給流路46を囲み形成する場合には、基盤部42の変形が生じやすい。
【0059】
その点、本実施形態の液体噴射ヘッドユニット24では、第1固定工程において、流路形成部材30により剛性の高い補強部材31を組み付けることで、基盤部42の変形が矯正される。そして、このように変形を矯正した基盤部42から延びる接続部43を液体噴射ヘッド26の接続孔38に接続することで、基盤部42が変形した流路形成部材30を接続した場合に発生することがある押圧力による液体噴射ヘッド26の位置ずれが抑制される。
【0060】
また、接続工程において、作業者は補強部材31の対をなす屈曲部31aを両手で把持して、軸方向Zに沿って流路ユニット25を保持フレーム27に近接する方向に移動させる。これにより、12本の接続部43がそれぞれ対応する接続孔38に差し込み接続され、複数組の液体供給流路46と液体噴射ヘッド26との接続が同時に行われる。
【0061】
なお、各液体噴射ヘッド26は互いの配置が調整された上で、ねじなどの固定具によって保持フレーム27に組み付けられているが、接続孔38や接続部43の製造誤差等によって、接続孔38に対する接続部43の配置にずれが生じることがある。その場合には、ずれが生じた分、接続部43がわずかに曲がった状態で接続孔38に接続されることになるが、補強部材31の貫通孔66と接続部43との間及び補強部材31と基盤部42との間には隙間が設けられているため、接続部43の曲がり変形が許容される。
【0062】
そして、接続部43は各々が独立して延設されることで、互いに接続される態様で一体的に成形されている場合よりも剛性が低くなっているので、接続部43がわずかに曲がった状態で接続孔38に接続されることで液体噴射ヘッド26に押圧力が及んだとしても、ねじ等で保持フレーム27に固定された液体噴射ヘッド26の位置ずれが抑制される。
【0063】
また、第2固定工程においては、保持フレーム27のねじ止め部34にねじ28の回転力が伝達されることで、保持フレーム27がねじ28とともに回転し、位置調整された液体噴射ヘッド26の配置をずらしてしまう虞がある。その点、本実施形態においては、流路形成部材30の基盤部42から突設された第1環状突起59がつぶれ変形することでねじ28の回転力を吸収するので、保持フレーム27の回転に伴う液体噴射ヘッド26の位置ずれが抑制される。
【0064】
さらに、組立が完了した液体噴射ヘッドユニット24をキャリッジ20に取り付け、用紙Pに対する印刷処理を実行すると、液体噴射ヘッド26はインクを噴射するための素子の駆動等によって発熱することがある。そして、こうした熱が金属材料からなる保持フレーム27及び補強部材31を介して液体供給流路46内のインクに伝わると、温度変化によってインクが変質する虞がある。
【0065】
その点、本実施形態の液体噴射ヘッドユニット24においては、平板状に形成されることで表面積が大きく確保された補強部材31によって放熱が促進される。また、液体供給流路46が形成された流路形成部材30の基盤部42は、第3環状突起56a及び第2環状突起60を介して補強部材31と接触しているので、補強部材31から流路形成部材30への熱伝導が抑制される。加えて、補強部材31の流路形成領域44と対応する位置には開口部61が設けられているので、補強部材31から液体供給流路46への熱伝導が抑制される。
【0066】
なお、液体噴射ヘッド26のメンテナンス等のために流路ユニット25を保持フレーム27から取り外す場合には、作業者は取り付け時と同様に、補強部材31の対をなす屈曲部31aを両手で把持して流路ユニット25を保持フレーム27の上方に持ち上げることができる。そして、基盤部42の補強部材31と対向する下面側からは、基盤部42の互いに対向する前後の側縁部に沿って対をなすように第2環状突起60が補強部材31側となる方向に向けて突設されている。
【0067】
そのため、流路ユニット25を持ち上げるときに補強部材31が撓み変形したとしても、対をなす第2環状突起60が補強部材31に当接することで、基盤部42の撓み変形が抑制される。したがって、シール部材39の密着によって接続部43を接続孔38から引き抜くのに抵抗が生じた場合にも、基盤部42の水平を保持しつつ流路ユニット25を軸方向Zに沿って持ち上げることができる。そして、基盤部42の水平を保持しつつ流路ユニット25を保持フレーム27から離間させることで、複数組の液体噴射ヘッド26と液体供給流路46との接続がほぼ同時に解除される。
【0068】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)流路形成部材30の基盤部42を接続部43の延設方向(軸方向Z)に移動させることにより、その基盤部42の一面側(下面側)から延設された複数の管状をなす接続部43をそれぞれ対応する液体噴射ヘッド26に設けられた接続孔38に差し込み接続することができる。これにより、複数組の液体噴射ヘッド26と液体供給流路46との接続作業を同時に完了することができる。したがって、フレキシブルチューブからなる複数の枝流路形成部材を1つの枝流路形成部材ごとに、それが対応する液体噴射ヘッド26の接続孔38に接続する場合と比較して、液体噴射ヘッドユニット24の流路接続作業を簡素化することができる。
【0069】
(2)各接続部43は互いに平行をなすように各々が独立して延設されたパイプ管からなるので、フレキシブルチューブからなる場合とは異なり、大きな撓み変形を抑制しつつ、各接続部43を対応する接続孔38に容易に差し込み接続することができる。因みに、接続部43の剛性が高すぎると、液体噴射ヘッド26や接続部43等に製造誤差があった場合に、差し込み接続時に発生する押圧力で液体噴射ヘッド26の配置をずらしてしまう虞がある。その点、各接続部43は互いに平行をなすように独立した延出状態にて設けられているので、各接続部43が互いに接続される態様で一体的に成形されている場合と比較して剛性が低い。そのため、液体噴射ヘッド26の配置間隔や接続孔38の配置に誤差がある場合にも、各接続部43がわずかに撓み変形することで、液体噴射ヘッド26の位置ずれを抑制することができる。
【0070】
(3)基盤部42の薄型化に伴う反り等の変形を補強部材31で矯正することができるので、基盤部42を薄型化して装置の小型化を図りつつ、基盤部42が変形した流路形成部材30を接続した場合に発生することがある押圧力による液体噴射ヘッド26の位置ずれを抑制することができる。また、各接続部43が貫通孔66に挿通された場合には、接続部43の径方向において貫通孔66と接続部43との間に隙間が生じるので、液体噴射ヘッド26に接続された接続部43の撓み変形が許容される。したがって、液体噴射ヘッド26や接続部43に製造誤差等がある場合にも、液体噴射ヘッド26の接続孔38への接続時に接続部43がわずかに撓み変形することが許容されるので、液体噴射ヘッド26の位置ずれを抑制することができる。
【0071】
(4)補強部材31の固定時に基盤部42の第3環状突起56a及び第2環状突起60が補強部材31に当接することで、接続部43の延設方向において基盤部42と補強部材31との間に隙間を設けることができる。これにより、液体噴射ヘッド26に接続された接続部43の撓み変形が許容される。したがって、液体噴射ヘッド26や接続部43に製造誤差等がある場合にも、液体噴射ヘッド26の接続孔38への接続時に接続部43がわずかに撓み変形することが許容されるので、液体噴射ヘッド26の位置ずれを抑制することができる。
【0072】
(5)補強部材31を流路形成部材30に対して固定することで、基盤部42の薄型化に伴う反り等の変形を矯正することができる。また、補強部材31は基盤部42よりも剛性の高い材料から形成されるので、基盤部42の厚みをその変形が抑制できる程度に厚くする場合よりも、基盤部42と平行をなすように補強部材31を固定する場合の方が装置の薄型化を図ることができる。したがって、基盤部42を薄型化して装置の小型化を図りつつ、基盤部42が変形した流路形成部材30を接続した場合に発生することがある押圧力による液体噴射ヘッド26の位置ずれを抑制することができる。
【0073】
(6)補強部材31は液体噴射ヘッド26と基盤部42との間に配置されるので、作業者は補強部材31を把持して流路形成部材30の着脱を行うことで、着脱に伴う基盤部42の変形を抑制することができる。
【0074】
(7)基盤部42はフィルム部材50,53の溶着に伴って変形する虞があるが、補強部材31を流路形成部材30に対して固定することで基盤部42の変形を矯正することができる。
【0075】
(8)補強部材31は保持フレーム27に対する固定時に保持フレーム27を介して接地されるので、補強部材31の静電気の放電経路を確保することで帯電を抑制したり、電磁波ノイズの発生を抑制したりすることができる。また、液体噴射ヘッド26が発熱した場合にも、保持フレーム27を通じて平板状の補強部材31に熱を伝えることで、液体噴射ヘッド26の放熱を促進することができる。
【0076】
(9)作業者が補強部材31を両手で把持して流路形成部材30を保持フレーム27から取り外す場合に、基盤部42に設けられた第3環状突起56a及び第2環状突起60が補強部材31に当接することで、基盤部42の撓み変形を抑制することができる。
【0077】
(10)ねじ32で流路形成部材30に補強部材31を固定することで、流路形成部材30における基盤部42の反り等の変形を補強部材31で矯正することができる。そして、このように基盤部42の変形が矯正された流路形成部材30を補強部材31と一体でねじ28によって液体噴射ヘッド26を保持する保持フレーム27に固定することで、液体噴射ヘッド26の位置ずれを抑制することができる。したがって、フレキシブルチューブに換えて平板状の基盤部42を有する流路形成部材30を採用することで装置の小型化を図りつつ、液体噴射ヘッド26の位置ずれを抑制することができる。
【0078】
(11)補強部材31を流路形成部材30に対して固定することで基盤部42の反り等の変形を矯正することができるので、基盤部42を薄型化して装置の小型化を図ることができる。また、補強部材31は液体供給流路46が形成されない非流路形成領域45と対向するように流路形成部材30に対して固定されるので、液体噴射ヘッド26等の熱が補強部材31に蓄熱された場合にも、流路形成領域44に対する熱伝導を抑制することができる。したがって、装置の小型化を図りつつ、液体供給流路46に対する熱伝導を抑制することができる。
【0079】
(12)非流路形成領域45は基盤部42の中央付近に配置される流路形成領域44を囲むように基盤部42の端部に配置されるので、この非流路形成領域45に補強部材31を固定することで、基盤部42の変形をより均等に矯正することができる。また、補強部材31は流路形成領域44に対応する位置に開口部61を有するので、流路形成領域44と補強部材31とを離間させて、液体供給流路46に対する熱伝導を抑制することができる。さらに、補強部材31の中央付近に開口部61を設けることで、補強部材31の形状を簡略化するとともに、補強部材31を軽量化することができる。
【0080】
(13)補強部材31は保持フレーム27と基盤部42との間に配置されるので、液体噴射ヘッド26が発熱した場合には、熱伝導率の高い補強部材31と保持フレーム27とによって放熱を促進することができる。
【0081】
(14)流路形成部材30に対する補強部材31の固定時には流路形成部材30の基盤部42から突設された第3環状突起56a及び第2環状突起60が補強部材31に当接して補強部材31の位置決めを行うので、補強部材31と基盤部42との接触面積を小さくして、補強部材31から流路形成部材30に対する熱伝導を抑制することができる。
【0082】
(15)ねじ28の締め付け時に第1環状突起59がつぶれ変形することで流路形成部材30を介した保持フレーム27側に対する回転力の伝達が抑制されるので、保持フレーム27の変位を抑制しつつ、流路形成部材30を固定することができる。したがって、液体噴射ヘッド26を保持する保持フレーム27に対して流路形成部材30をねじ28の締め付け力によって固定する場合に、液体噴射ヘッド26の位置ずれを抑制することができる。
【0083】
(16)第1環状突起59は挿通孔55を囲むように環状に形成されるので、ねじ28の回転方向において保持フレーム27に対する回転力の伝達を均等に抑制することができる。
【0084】
(17)第1環状突起59は平板状の基盤部42の一面側から3つ以上突設されるので、基盤部42の傾きを抑制しつつ、流路形成部材30を保持フレーム27にねじ28の締め付け力によって固定することができる。
【0085】
(18)ねじ28の軸方向Zにおいて第1環状突起59は補強部材31よりも長いので、流路形成部材30と保持フレーム27との間に補強部材31が配置された場合にも、第1環状突起59を保持フレーム27側に当接させることができる。
【0086】
(19)第2環状突起60は第1環状突起59よりも短く、第1環状突起59よりも剛性が高いので、ねじ止めによって第1環状突起59がつぶれ変形するときにもその形状を保持して、補強部材31の位置決めを行うことができる。
【0087】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・液体噴射ヘッドユニット24が補強部材31を備えない構成としてもよい。
・液体噴射ヘッド26側から延設される接続部が流路形成部材30に設けられた接続孔に差し込み接続されることで、液体供給流路46と液体噴射ヘッド26とが接続される構成であってもよい。
【0088】
・例えばクリップなど、ねじ以外の固定具によって流路形成部材30と補強部材31が固定される構成としてもよい。
・流路形成部材30及び補強部材31のうち何れか一方側から突設される係合部が他方側に設けられた被係合部に係合することで、補強部材31が流路形成部材30に固定されるようにしてもよい。
【0089】
・流路形成部材30に第2環状突起60及び第3環状突起56aを設けなくてもよい。
・流路形成部材30の複数の接続部43は、互いに長さが異なったり、一部又は全部の接続部43が途中位置で屈曲したりすることで、互いに平行をなさない箇所があってもよい。この場合にも、各接続部43の先端が各接続孔38と互いに対応した位置関係となるように平行をなしていれば、複数の接続部43をそれぞれ対応する接続孔38に対して同時に差し込み接続することができる。
【0090】
・補強部材31は、開口部61を備えない構成としてもよいし、複数の開口部61を備える構成としてもよい。
・流路形成部材30を樹脂材料以外の材料によって構成してもよいし、補強部材31及び保持フレーム27を金属材料以外の材料によって構成してもよい。
【0091】
・第1環状突起59、第2環状突起60及び第3環状突起56aの数や配置は任意に変更することができる。例えば、第2環状突起60を第1環状突起59又は第3環状突起56aの外周側ではなく、流路形成部材30における基盤部42の側縁部等に配置してもよい。また、第1環状突起59、第2環状突起60及び第3環状突起56aは環状でない任意の形状の突起に変更してもよい。
【0092】
・流路形成部材30の基盤部42が保持フレーム27と補強部材31との間に配置されてもよい。この構成によれば、保持フレーム27と補強部材31との間に樹脂材料からなる基盤部42が配置されるので、液体噴射ヘッド26の熱が金属製の保持フレーム27を介して補強部材31に伝わるのを抑制することができる。
【0093】
・ねじ28から受ける回転力によってつぶれ変形する第1環状突起59が保持フレーム27のねじ止め部34側から突設されるようにしてもよい。
・各液体噴射ヘッド26に設ける接続孔38の数や配置は任意に変更することができる。
【0094】
・プリンターは、インクカートリッジ15がキャリッジ20上に搭載されるオンキャリッジタイプであってもよい。あるいは、キャリッジ20が主走査方向Xに移動するシリアル式のプリンターに限らず、液体噴射ヘッド26を固定したままでも用紙最大幅範囲の印字が可能なラインヘッド式やラテラル式のプリンターであってもよい。さらに、インクジェット式のラベルプリンター、バーコードプリンターや発券装置などであってもよい。
【0095】
・液体噴射装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置あるいはこれら複数機能を備えた複合機などであってもよい。さらに、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
11…液体噴射装置の一例としてのプリンター、24…液体噴射ヘッドユニット、25…流路ユニット、26…液体噴射ヘッド、27…保持フレーム、28…第2固定具の一例としてのねじ、30…被固定部材の一例としての流路形成部材、31…補強部材、32…第1固定具の一例としてのねじ、38,38A,38B…接続孔、42…基盤部、43…接続部、44…流路形成領域、45…非流路形成領域、46…液体供給流路、48,52…凹部、50,53…フィルム部材、55…挿通孔、56a…当接部の一例としての環状突起、59…突起部の一例としての第1環状突起、60…当接部の一例としての第2環状突起、61…開口部、66…貫通孔、Z…延設方向となる軸方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドを保持する保持フレーム及び該保持フレームに対してねじの締め付け力によって固定される被固定部材のうちの一方における前記ねじの軸方向での他方に対する対向部位に前記他方に向けて突設され、前記ねじの締め付け時に当該ねじから受ける回転力と前記他方側から受ける反力とによってつぶれ変形する突起部を備えることを特徴とする液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造。
【請求項2】
前記被固定部材には前記ねじを挿通するための挿通孔が設けられ、前記突起部は前記被固定部材における前記ねじの軸方向での前記保持フレームに対向する側で前記挿通孔を囲むように環状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造。
【請求項3】
前記被固定部材は前記液体噴射ヘッドに液体を供給するための液体供給流路が形成された平板状の基盤部を有する流路形成部材であり、
前記突起部は前記基盤部の前記保持フレームと対向する一面側から少なくとも3つ突設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造。
【請求項4】
前記被固定部材と前記保持フレームとの間には平板状の補強部材が配置され、
前記ねじの軸方向において、前記突起部は前記補強部材よりも長いことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造。
【請求項5】
前記被固定部材には前記補強部材に当接して当該補強部材の位置決めを行う当接部が前記突起部を囲むように設けられ、
前記ねじの軸方向において前記当接部は前記突起部よりも短く、かつ、前記当接部は前記突起部よりも剛性が高いことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド保持機構におけるねじ止め固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−131154(P2012−131154A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285981(P2010−285981)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】