説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】液体噴射ヘッドの液体吐出側と反対側の領域を薄く形成し、この領域の利用効率を高める。
【解決手段】液体噴射ヘッド1は、液体を吐出するための第一及び第二ヘッドチップ2a、2bが積層される吐出部3と、吐出部3を駆動する駆動信号を供給する回路基板4と、第一ヘッドチップ2aと回路基板4とを電気的に接続する第一フレキシブル基板5aと、第二ヘッドチップ2bと回路基板4とを電気的に接続する第二フレキシブル基板5bと、を備える。ここで、回路基板4と第一及び第二フレキシブル基板5a、5bは、回路基板4の一方の表面Sにおいて電気的に接続される構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは機能性薄膜を形成する液体噴射ヘッド、及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字、図形を描画する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料(以下、総称して液体という。)を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、チャンネルに充填した液体をチャンネルに連通するノズルから吐出させる。液体の吐出の際には、液体噴射ヘッドや噴射した液体を記録する被記録媒体を移動させて、文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。
【0003】
図6は、ヘッドチップ101を2個重ね合わせたインクジェットヘッドの横断面図である(特許文献1の図12)。2つのヘッドチップ101を重ね合わせることによりノズル数を2倍に増加させて高密度記録を可能とする。各ヘッドチップ101は、下部基板111と上部基板113に挟まれるチャンネル部115と、チャンネル部115の前面に貼り付けられるノズルプレート102と、下部基板111の外面に貼り付けられる配線基板103と、配線基板103に実装される駆動IC132等から構成される。チャンネル部115は、下部基板111と、上部基板113と、下部基板111と上部基板113の間に挟まれる圧電体から成る2つの壁(図示しない)により囲まれる。
【0004】
2つのヘッドチップ101は、上部基板113どうしを対面させ、下部基板111を外側にして積層される。2つの下部基板111の外面にはそれぞれ配線基板103が貼り付けられる。つまり、2つのヘッドチップ101は2枚の配線基板103により挟まれる構造を有する。各配線基板103の内側の表面にはそれぞれ駆動IC132が実装される。従って、2つのヘッドチップ101の液体吐出側と反対側の領域は2枚の配線基板103により囲まれている。
【0005】
配線基板103に実装される駆動IC132は、制御回路等の外部回路からコネクタ133及び配線134を介して制御信号を入力し、各チャンネル部115を選択的に駆動する駆動信号を生成する。駆動IC132により生成された駆動信号は駆動配線131を介してチャンネル部115に供給される。圧電体から成る2つの壁は駆動信号に応じて変形し、チャンネル部115の容積を変化させる。これにより内部に充填される液体がノズルから吐出される。
【0006】
特許文献2には、同じ構造の多数のアクチュエータユニットが積層されるインクジェットヘッドが記載されている。一つのアクチュエータユニットは、溝状のインク室が複数形成されたベースプレートと、このベースプレートの上面に接着され、複数のインク室を覆うカバープレートから構成されている。ベースプレートの底面には隣接するアクチュエータユニットのカバープレートが接着される。複数積層されるアクチュエータユニットのインク吐出方向である前面にはノズルプレートが接着される。ノズルプレートにはベースプレートの溝に対応する位置にノズルが形成される。ベースプレートとベースプレートの間に位置するカバープレートは、ノズルプレートとは反対側の後面の方向に突出するはみ出し部を有し、このはみ出し部に駆動ICチップが実装され、このはみ出し部の端部にフレキシブル基板(FPCという。)が接続されている。従って、アクチュエータユニットのノズルプレートとは反対側の領域は複数のカバープレートのはみ出し部や各はみ出し部に接続するFPCにより占められている。
【0007】
図7は、圧電体から成る2枚のアクチュエータ基板202、203を貼り合わせた2列のノズル列を有する2列ヘッドチップ201からなる液体噴射ヘッド200の模式的な斜視図である。液体噴射ヘッド200は、2列ヘッドチップ201と、この2列ヘッドチップ201に駆動信号を供給する2枚の回路基板204、205と、2枚の回路基板204、205に制御信号を供給する中継基板212と、2枚の回路基板204、205と2列ヘッドチップ201を電気的に接続する2枚のフレキシブル基板206、207と、中継基板212と2枚の回路基板204、205をそれぞれ電気的に接続する2枚のフレキシブル基板208、209を備えている。
【0008】
中継基板212は、外部回路から制御信号を入力する外部機器接続用コネクタ213を備え、入力した制御信号を2枚のフレキシブル基板208、209を介して2枚の回路基板204、205に供給する。2枚の回路基板204、205はそれぞれドライバIC210、211を備え、各ドライバIC210、211は入力した制御信号に基づいて2列ヘッドチップ201を駆動するための駆動信号を生成する。ドライバIC210により生成された駆動信号は、フレキシブル基板206を介して上部のアクチュエータ基板202に供給され、ドライバIC211により生成された駆動信号は、フレキシブル基板207を介して下部のアクチュエータ基板203に供給される。
【0009】
従って、2列ヘッドチップ201からなる液体噴射ヘッド200は、2枚の回路基板204、205と、1枚の中継基板212と、4枚のフレキシブル基板206、207、208、209を必要とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−209796号公報
【特許文献2】特開平10−146974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載されるインクジェットヘッドでは、各ヘッドチップ101を構成する下部基板111の外側に液体吐出側と反対側に大きく突出する配線基板103が設置されている。そのため、インクジェットヘッドの重量が重くなり、このインクジェットヘッドを複数搭載するキャリッジの質量が増大してキャリッジを駆動する駆動系に大きな負荷がかかる。また、2つのヘッドチップ101の液体吐出側と反対側の領域は配線基板103によって占有され、この領域を他の機器用に活用することができない。
【0012】
また、特許文献2に記載されるインクジェットヘッドも同様に、ベースプレートの間に位置するカバープレートは、液体吐出側と反対側に突出するはみ出し部を備え、このはみ出し部に駆動用の駆動ICチップや、外部回路から駆動ICチップに信号を伝達するためのFPCが接続されている。そのため、液体吐出側と反対側の領域がはみ出し部やFPCにより占有され、この空間を他の機器用に活用することができない。
【0013】
また、図7に示す従来公知の液体噴射ヘッドにおいては、2列ヘッドチップ201の他に、4枚のフレキシブル基板206〜209と、2枚の回路基板204、205と、一個の中継基板212を必要とし、部品点数が多くこれらを組み立てる組立工程も複雑で長くなる。また、上記特許文献1又は2と同様に、液体吐出側と反対側の領域には、2枚の回路基板と4枚のフレキシブル基板と1枚の中継基板が設置される。このため、この領域の厚さを薄く形成するのに限界がある。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、液体噴射ヘッドの液体吐出側と反対側の領域の厚さを薄くし、軽量化した液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体を吐出するための第一ヘッドチップと第二ヘッドチップが積層される吐出部と、前記吐出部を駆動する駆動信号を供給する回路基板と、前記第一ヘッドチップと前記回路基板とを電気的に接続する第一フレキシブル基板と、前記第二ヘッドチップと前記回路基板とを電気的に接続する第二フレキシブル基板と、を備え、前記回路基板と前記第一及び第二フレキシブル基板は、前記回路基板の一方の表面において電気的に接続されることとした。
【0016】
また、前記第一フレキシブル基板と前記第二フレキシブル基板とを重ねた形状は平面視でV字又はY字形状を有することとした。
【0017】
また、前記第一フレキシブル基板と前記第二フレキシブル基板とは、前記回路基板の一方の表面に立てた法線に対して重ならないこととした。
【0018】
また、前記第一及び第二ヘッドチップはそれぞれ第一電極引出部及び第二電極引出部を有し、前記第一及び第二電極引出部は前記第一及び第二ヘッドチップが積層する積層方向において重なるように配置されることとした。
【0019】
また、前記回路基板は第一電極端子部及び第二電極端子部を有し、前記第一及び第二電極端子部は前記一方の表面において前記第一及び第二電極端子部のそれぞれの長手方向に沿って一列に配置されることとした。
【0020】
また、前記第一フレキシブル基板は前記第一電極引出部と前記第一電極端子部を電気的に接続し、前記第二フレキシブル基板は前記第二電極引出部と前記第二電極端子部を電気的に接続することとした。
【0021】
また、前記吐出部及び前記回路基板を固定するベース基板を更に含み、前記回路基板は前記回路基板の一方の表面に実装されるドライバICを備え、前記ドライバICが実装される領域に対応する前記回路基板の他方の表面と前記ベース基板との間に熱伝導性材料が介在することとした。
【0022】
また、前記ドライバICは、前記回路基板の一方の表面に形成される第一金属膜の上に設置され、前記第一金属膜が設置される領域に対応する前記回路基板の他方の表面には第二金属膜が形成され、前記第一金属膜と前記第二金属膜とは前記回路基板に形成した貫通孔に充填される金属材料を介して接続されることとした。
【0023】
本発明の液体噴射装置は、上記のいずれかに記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0024】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体を吐出するための第一ヘッドチップと第二ヘッドチップが積層される吐出部と、吐出部を駆動する駆動信号を供給する回路基板と、第一ヘッドチップと回路基板とを電気的に接続する第一フレキシブル基板と、第二ヘッドチップと回路基板とを電気的に接続する第二フレキシブル基板と、を備える。ここで、回路基板と第一及び第二フレキシブル基板は、回路基板の一方の表面において電気的に接続される。これにより、吐出部を駆動するための駆動信号を供給する回路基板と第一及び第二フレキシブル基板が占める領域を薄型化することができる。また、部品点数が減少するので軽量化を図ることができる。更に、組立工数が削減され、製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの説明図である。
【図2】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの斜視図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの側面模式図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドのドライバICの縦断面模式図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【図6】ヘッドチップを2個重ね合わせた従来公知のインクジェットヘッドの横断面図である。
【図7】従来公知の液体噴射ヘッドを表す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
図1は本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1の説明図である。図1(a)は、液体噴射ヘッド1の模式的な斜視図であり、図1(b)は液体噴射ヘッド1を構成する各部の平面図である。
【0027】
図1に示すように、液体噴射ヘッド1は、液体をx方向に吐出する吐出部3と、吐出部3を駆動する駆動信号を供給する回路基板4と、吐出部3と回路基板4を電気的に接続する第一フレキシブル基板5a及び第二フレキシブル基板5bとを備える。吐出部3は、第一ヘッドチップ2aと第二ヘッドチップ2bが積層した積層構造を有する。第一フレキシブル基板5aは回路基板4と第一ヘッドチップ2aとを電気的に接続し、第二フレキシブル基板5bは回路基板4と第二ヘッドチップ2bとを電気的に接続する。
【0028】
つまり、回路基板4は第一及び第二フレキシブル基板5a、5bを介して第一及び第二ヘッドチップ2a、2bのそれぞれに駆動信号を供給する。回路基板4と第一及び第二フレキシブル基板5a、5bは、第一及び第二フレキシブル基板5a、5bの垂直方向(z方向)から見る平面視で、V字又はY字形状を有する。更に、回路基板4の一方の表面Sにおいて第一及び第二フレキシブル基板5a、5bは互いに重ならないように配置される。なお、第二フレキシブル基板5bの配線は、第二フレキシブル基板5bの一方の表面(下側表面)から他方の表面(上側表面)に貫通電極を介して引き回されている。
【0029】
このように、第一フレキシブル基板5aと第二フレキシブル基板5bが回路基板4の一方の表面Sにおいて電気的に接続する構成としたので、回路基板4と第一及び第二フレキシブル基板5a、5bが占める領域の厚さ(回路基板4の表面の法線方向(z方向)の厚さ)を薄くすることができる。また、部品点数が減少するので液体噴射ヘッド1の軽量化を図ることができる。更に、組立工数が削減され、製造コストを低減させることができる。
【0030】
液体噴射ヘッド1の構成を具体的に説明する。回路基板4は、その一方の表面Sの端部(−x方向の端部)に外部回路から制御信号を入力する外部機器接続用コネクタ14と、一方の表面Sの中央部に第一ドライバIC13aと第二ドライバIC13bを備える。外部機器接続用コネクタ14と第一及び第二ドライバIC13a、13bは図示しない配線や電子部品を介して電気的に接続される。回路基板4は、更に、一方の表面Sの吐出部3側の端部(+x方向の端部)に第一電極端子部7aと第二電極端子部7bを備える。第一及び第二電極端子部7a、7bは回路基板4の一方の表面Sにおいて長手方向(y方向)に沿って一列に配置される。第一電極端子部7aと第一ドライバIC13aは図示しない配線により電気的に接続され、第二電極端子部7bと第二ドライバIC13bは図示しない配線により電気的に接続される。第一及び第二ドライバIC13a、13bはそれぞれ第一及び第二ヘッドチップ2a、2bを駆動する駆動信号を生成する。第一又は第二電極端子部7a、7bは、通常100個以上の電極端子から成る。
【0031】
吐出部3は、第一ヘッドチップ2aと第二ヘッドチップ2bが積層された構造を備える。第一及び第二ヘッドチップ2a、2bはそれぞれ、表面に多数の溝が形成される圧電体基板PPと、多数の溝の開口部を覆い、圧電体基板PPに接合して図示しない多数のチャンネルを構成するカバープレートCPを備える。第一ヘッドチップ2aと第二ヘッドチップ2bは圧電体基板PPどうしを対面して接合される。圧電体基板PPはカバープレートCPよりも液体の吐出方向(x方向)とは反対方向(−x方向)に突出し、この突出部の表面に電極引出部が形成される。即ち、第一ヘッドチップ2aの圧電体基板PPの後方上面に第一電極引出部6aが形成され、第二ヘッドチップ2bの圧電体基板PPの後方下面に第二電極引出部6bが形成される。従って、第一及び第二電極引出部6a、6bは第一及び第二ヘッドチップ2a、2bの積層方向(z方向)において重なるように配置される。
【0032】
図1(b)に示すように、第一及び第二ヘッドチップ2a、2bの第一及び第二電極引出部6a、6bが第一及び第二フレキシブル基板5a、5bの+x側の端部に重なるように矢印で示す方向に移動して電気的に接続する。更に、第一及び第二フレキシブル基板5a、5bの−x側の端部が回路基板4の第一及び第二電極端子部7a、7bに重なるように矢印で示す方向に移動して電気的に接続する。即ち、第一フレキシブル基板5aは、第一電極端子部7aと第一電極引出部6aとを電気的に接続し、第二フレキシブル基板5bは、第二電極端子部7bと第二電極引出部6bとを電気的に接続する。第一及び第二電極端子部7a、7bをこのように長手方向に沿って一列に配置したことにより、第一フレキシブル基板5aと第二フレキシブル基板5bとは回路基板4の一方の表面Sから立てた法線に対して重ならない。そのため、第一及び第二フレキシブル基板5a、5bを第一及び第二電極端子部7a、7bに同時に圧着して接続することができる。
【0033】
以上の通り、第一及び第二フレキシブル基板5a、5bは、積層方向(厚さ方向)に重なるように形成された電極を、これに直交する平面上に並び変える機能を有する。これにより、回路基板4と第一及び第二フレキシブル基板5a、5bを積層方向(z方向)に対して薄く形成することができる。
【0034】
なお、本発明の液体噴射ヘッド1において、回路基板4の一方の表面SにドライバIC13a、13b、外部機器接続用コネクタ14を設置することは必須要件ではない。外部回路において駆動信号を生成し、回路基板4上に形成した第一及び第二電極端子部7a、7bを介して第一及び第二フレキシブル基板5a、5bに供給するように構成してもよい。
【0035】
また、第一実施形態において第一及び第二電極端子部7a、7bをその長手方向に沿って一列に配置する構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第一及び第二電極端子部7a、7bを、回路基板4の一方の表面S上にその長手方向をy方向に向け、−x方向に並列に設置する。そして、第一及び第二フレキシブル基板5a、5bが一方の表面S上で重なるように第一及び第二電極端子部7a、7bに接続しても、本発明の効果を奏することができる。しかし、第一及び第二フレキシブル基板5a、5bを第一及び第二電極端子部7a、7bに同時に圧着して接続することができない。また、第一及び第二ドライバIC13a、13bと第一及び第二電極端子部7a、7bとの間の配線の引回しが複雑となる。そのため、本第一実施形態のように第一及び第二電極端子部7a、7bを一列に配置した方が設計や製造が容易となる。
【0036】
また、第一実施形態において吐出部3が2個のヘッドチップを積層する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、3つ以上のヘッドチップから構成し、3つ以上のフレキシブル基板を使用する場合も本発明に含まれる。例えば、吐出部3として3つ以上のヘッドチップを積層し、各ヘッドチップと回路基板をそれぞれフレキシブル基板により接続する。この場合に、各フレキシブル基板は回路基板の一方の表面において電気的に接続される。例えば、当該表面に3つ以上の電極端子部をそれぞれの長手方向に沿って一列に配置し、各ヘッドチップの電極引出部と回路基板の各電極端子部とをそれぞれフレキシブル基板により接続する。これにより、回路基板とフレキシブル基板の占める領域の厚さを大幅に薄くすることができる。更に、組立工数が大幅に削減され、製造コストも大幅に低減させることができる。
【0037】
(第二実施形態)
図2〜図4は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1を表し、図2が液体噴射ヘッド1を液体が吐出される吐出面19側から見た斜視図であり、図3が液体噴射ヘッド1の側面模式図であり、図4がドライバIC13の縦断面模式図である。吐出部3、第一及び第二フレキシブル基板5a、5b、及び回路基板4の構成は第一実施形態と同様である。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。
【0038】
図2及び図3に示すように、液体噴射ヘッド1は、液体を吐出するための第一及び第二ヘッドチップ2a、2bが積層される吐出部3と、吐出部3を駆動する駆動信号を供給する回路基板4と、第一及び第二ヘッドチップと回路基板4とを電気的に接続する第一及び第二フレキシブル基板5a、5bと、吐出部3及び回路基板4を固定するベース基板8から構成される。吐出部3はベース基板8の下部に固定され、回路基板4はベース基板8の衝立状の板面に固定される。なお、x方向が重力方向である。
【0039】
吐出部3を構成する第一及び第二ヘッドチップ2a、2bは、それぞれ圧電体基板PPとカバープレートCPが積層する構造を有する。各カバープレートCPの表面には多数のチャンネルに液体を導くための流路部材17が設置される。吐出部3の最下面は液体を吐出する吐出面19である。
【0040】
回路基板4は、その一方の表面Sの上端部(−x方向の端部)に外部回路と接続するための外部機器接続用コネクタ14と、一方の表面Sの略中央部に駆動信号を生成するための第一及び第二ドライバIC13a、13bと、一方の表面Sの下端部(+x方向の端部)に図示しない第一及び第二電極端子部7a、7bがそれぞれの長手方向に沿って一列に配置されている。
【0041】
第一フレキシブル基板5aは、図示しない第一電極端子部7aと第一電極引出部6aとを電気的に接続し、第二フレキシブル基板5bは図示しない第二電極端子部7bと第二電極引出部6bとを電気的に接続する。第一フレキシブル基板5aと第二フレキシブル基板5bを重ねた形状は、平面視でV字又はY字形状を有し、回路基板4の一方の表面Sの上方において重ならない。そのために、第一及び第二ヘッドチップ2a、2bの積層方向(z方向)に対して厚さを薄くすることができる。図3に示すように、例えば圧力緩衝器18を回路基板4と平行に立設することができる。また、圧力緩衝器18に代えてフィルターユニットや流路部材等を設置することができる。また、部品点数が減少したので液体噴射ヘッド1の軽量化を図ることができる。更に、組立工数が削減され、製造コストを低減させることができる。
【0042】
図4に示すように、第一ドライバIC13aは回路基板4の上に実装される。第一ドライバIC13aは、回路基板4の上に形成した第一金属膜9aと、第一金属膜9aの上に図示しない導電ペーストを介して接着したICチップ20と、ICチップ20の電極(図示しない)と回路基板4上の電極(図示しない)とを電気的に接続するワイヤー16と、汚染等から保護するためのモールド材15を備える。第二ドライバIC13bも同じ構造を備える。
【0043】
回路基板4には貫通孔10が形成され、貫通孔10には金属材料11が充填される。回路基板4の第一ドライバIC13aとは反対側の裏面側には第二金属膜9bが設置される。更に、第二金属膜9bとベース基板8の間に熱伝導性ペースト12が充填される。この構成により、第一ドライバIC13aで発生する熱は、第一金属膜9a、金属材料11、第二金属膜9b、熱伝導性ペースト12を介してベース基板8に放熱される。ベース基板8としてアルミニウム等の熱伝導性材料を使用し、放熱板として機能させることにより、ドライバIC13aの温度上昇による機能低下を防止することができる。
【0044】
このように、本第二実施形態は、回路基板4の一方の表面Sに第一ドライバIC13aと第二ドライバIC13bを搭載し、第一及び第二ドライバIC13a、13bをベース基板8の衝立状の同一板面に熱接触し、放熱する構造とした。その結果、複数の放熱板を用いる必要がなく、回路基板4とベース基板8の放熱部が占める領域の厚さ(回路基板の表面の法線方向の厚さ)を薄くすることができ、第一及び第二フレキシブル基板5a、5bの占める領域を薄く形成することと相まって、吐出部3の液体吐出側と反対側の領域の厚さを大幅に薄く形成することができる。更に、複数の放熱板を用いる必要がないので液体噴射ヘッド1の更なる軽量化を図ることができる。加えて、組立工数が削減され、製造コストを低減させることができる。
【0045】
(第三実施形態)
図5は本発明の第三実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。液体噴射装置30は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給する流路部35、35’と、流路部35、35’に液体を供給する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’を備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は複数の吐出溝を備え、各吐出溝に連通するノズルから液滴を吐出する。各液体噴射ヘッド1、1’は第一又は第二実施形態において説明したものを使用する。
【0046】
液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40を備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0047】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39を備えている。
【0048】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0049】
本発明の液体噴射装置30によれば、液体噴射ヘッド1の部品点数が減少し軽量化したので、キャリッジユニット43の質量が減少し、キャリッジユニット43を駆動する駆動系の負荷が軽減する。
【符号の説明】
【0050】
1 液体噴射ヘッド
2a 第一ヘッドチップ、2b 第二ヘッドチップ
3 吐出部
4 回路基板
5a 第一フレキシブル基板、5b 第二フレキシブル基板
6a 第一電極引出部、6b 第二電極引出部
7a 第一電極端子部、7b 第二電極端子部
8 ベース基板
9a 第一金属膜、9b 第二金属膜
10 貫通孔
11 金属材料
12 熱伝導性ペースト
13 ドライバIC、13a 第一ドライバIC、13b 第二ドライバIC
18 圧力緩衝器
30 液体噴射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための第一ヘッドチップと第二ヘッドチップが積層される吐出部と、
前記吐出部を駆動する駆動信号を供給する回路基板と、
前記第一ヘッドチップと前記回路基板とを電気的に接続する第一フレキシブル基板と、
前記第二ヘッドチップと前記回路基板とを電気的に接続する第二フレキシブル基板と、を備え、
前記回路基板と前記第一及び第二フレキシブル基板は、前記回路基板の一方の表面において電気的に接続される液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第一フレキシブル基板と前記第二フレキシブル基板とを重ねた形状は平面視でV字又はY字形状を有する請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第一フレキシブル基板と前記第二フレキシブル基板とは、前記回路基板の一方の表面に立てた法線に対して重ならない請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第一及び第二ヘッドチップはそれぞれ第一電極引出部及び第二電極引出部を有し、前記第一及び第二電極引出部は前記第一及び第二ヘッドチップが積層する積層方向において重なるように配置される請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記回路基板は第一電極端子部及び第二電極端子部を有し、前記第一及び第二電極端子部は前記回路基板の一方の表面において前記第一及び第二電極端子部のそれぞれの長手方向に沿って一列に配置される請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第一フレキシブル基板は前記第一電極引出部と前記第一電極端子部を電気的に接続し、前記第二フレキシブル基板は前記第二電極引出部と前記第二電極端子部を電気的に接続する請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記吐出部及び前記回路基板を固定するベース基板を更に含み、
前記回路基板は前記回路基板の一方の表面に実装されるドライバICを備え、
前記ドライバICが実装される領域に対応する前記回路基板の他方の表面と前記ベース基板との間に熱伝導性材料が介在する請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記ドライバICは、前記回路基板の一方の表面に形成される第一金属膜の上に設置され、
前記第一金属膜が設置される領域に対応する前記回路基板の他方の表面には第二金属膜が形成され、
前記第一金属膜と前記第二金属膜とは前記回路基板に形成した貫通孔に充填される金属材料を介して接続される請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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