説明

液体噴射装置、および医療機器

【課題】液体噴射装置のアプリケーターの内部で雑菌などが増殖することを回避する。
【解決手段】アプリケーターを、ノズルが形成された先端部と先端部が着脱可能に装着される本体部とに分割し、先端部には先端側メモリーを搭載して、その先端部が初めて使用された日時のデータ(初起動データ)を記憶する。液体噴射装置の起動時には、先端部の先端側メモリーに対して初起動データの読み書きを行い、読み出した初起動データに基づいて先端部の使用時間を管理する。こうすれば、先端部が長時間に亘って取り付けられたままになることがないので、内部で雑菌などが増殖することを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射して生物組織を切開あるいは切除する液体噴射装置に
関する。
【背景技術】
【0002】
水や生理食塩水などの液体をノズルから生物組織に向けて噴射することによって、生物
組織を切開あるいは切除する液体噴射装置が開発されている。このような液体噴射装置を
用いた手術では、神経や血管等を傷つけずに、臓器などの組織だけを選択的に切開あるい
は切除することができるので、患者の負担を小さくすることが可能である。
【0003】
また、ノズルから連続的に液体を噴射するのではなく、パルス状に液体を噴射すること
によって、少ない噴射量で生物組織を切開あるいは切除することを可能にした液体噴射装
置も提案されている(特許文献1)。この液体噴射装置では、供給ポンプを用いて液体室
に液体を供給し、液体室の容積を減少させて液体を加圧することによって、ノズルからパ
ルス状に液体を噴射する。
【0004】
これらの液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成されて操作者が手に持って操作
する噴射部(以下、アプリケーターと呼ぶ)や、アプリケーターに液体を供給するための
供給ポンプや、供給ポンプとアプリケーターとを接続する接続チューブなどを備えている
。また、液体をパルス状に噴射する液体噴射装置のアプリケーターには、ノズルに接続さ
れた液体室や、液体室を変形させて液体室の容積を減少させるアクチュエーター等が内蔵
されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−82202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような液体噴射装置には、次のような問題があった。すなわち、アプリケ
ーターはノズルの部分で内部の液体が外気と接している。このため、液体を噴射しない状
態が続くと、ノズルの部分からアプリケーターの内部に外気が入り込む可能性がある。そ
の結果、長い時間が経過する間には、アプリケーターの内部で雑菌などが繁殖することが
起こり得るという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになさ
れたものであり、アプリケーターのノズルから液体を噴射する液体噴射装置で、アプリケ
ーターの内部で雑菌などが繁殖することを防止可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体噴射装置は次の構成を
採用した。すなわち、
液体を噴射する噴射部と、該噴射部に液体を供給する液体供給手段と、前記噴射部およ
び前記液体供給手段の動作を制御する制御部とを有する液体噴射装置であって、
前記噴射部は、
前記液体を噴射するノズルが形成された先端部と、
前記先端部が着脱可能に装着される本体部と
を備え、
前記先端部には、該先端部が前記本体部に装着されて前記液体噴射装置が初めて起動さ
れた日時に関するデータである、初起動データが書き込まれる先端側メモリーが設けられ
ており、
前記制御部は、前記本体部に装着された前記先端部の前記先端側メモリーに対して前記
初起動データの読み書きを行い、読み出した該初起動データに基づいて前記先端部の使用
時間を管理する制御部であることを要旨とする。
【0009】
このような本発明の液体噴射装置においては、液体を噴射する噴射部が、先端部と本体
部とに分割されており、先端部にはノズルが形成され、本体部には先端部が着脱可能に構
成されている。また、先端部にはメモリー(先端側メモリー)が搭載されており、このメ
モリーには、先端部が本体部に装着された液体噴射装置を、液体噴射装置の操作者(ユー
ザー)が初めて起動した日時に関するデータ(初起動データ)が書き込まれる。尚、初起
動データは、先端部が本体部に装着されて液体噴射装置が初めて起動された日時を特定す
ることが可能なデータであれば十分であり、必ずしも日時そのもののデータである必要は
ない。例えば、先端部が本体部に装着されて液体噴射装置が初めて起動されてからの経過
時間が分かれば、現在の日時から遡ることによって液体噴射装置が初めて起動された日時
を特定することができるから、経過時間を初起動データとして用いることも可能である。
そして、液体噴射装置の制御部は、本体部に装着された先端部の先端側メモリーに対して
初起動データの読み書きを行い、読み出した初起動データに基づいて先端部の使用時間を
管理する。例えば、先端部が長い時間に亘って本体部に取り付けられたままになっている
場合には、液体噴射装置の操作者にその旨を知らせることができる。報知の態様としては
、先端部が本体部に装着されて初めて使用された日時を表示することによって、その先端
部の使用開始から長い時間が経過していることを操作者に知らせることができる。あるい
は、先端部の使用が開始されてからの経過時間を表示してもよい。更には、ブザー音など
の音声を出力したり、ランプを点灯あるいは点滅させるようにしてもよい。もちろん、先
端部があまりに長い時間に亘って本体部に取り付けられたままになっている場合は、その
旨を操作者に知らせるだけでなく、液体噴射装置が起動できないようにしてもよい。
【0010】
こうすれば、先端部が長時間に亘って取り付けられたままになる前に取り換えられるの
で、内部で雑菌などが増殖することがない。また、新たに取り換えられた先端部にも先端
側メモリーが搭載されている。このため液体噴射装置の制御部は、その先端部が装着され
て初めて液体噴射装置が起動される際に、先端側メモリーに対しても初起動データを書き
込むことによって、その先端部の使用時間を管理することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の液体噴射装置においては、初起動データに加えて、起動回数デ
ータ(先端部が装着されて液体噴射装置が起動された回数に関するデータ)を、先端側メ
モリーに書き込むようにしても良い。尚、起動回数データは、先端部が装着されて液体噴
射装置が起動された回数に関するデータであれば良く、必ずしも回数そのものを示すデー
タである必要はない。例えば、先端部が装着されて液体噴射装置が起動された日時(起動
日時)を追記してやれば、先端側メモリーに記憶されている起動日時の個数から、起動回
数を特定することができる。もちろん、液体噴射装置を起動する度に、先端側メモリーに
記憶されている起動回数を更新するようにしても良い。そして、液体噴射装置の制御部は
、先端側メモリーから読み出した初起動データおよび起動回数データに基づいて、先端部
の使用時間を管理するようにしてもよい。
【0012】
先端部が本体部に装着された状態で、既に何度か起動されているということは、その先
端部が再使用されたことを意味していると考えられる。そして、先端部が再使用されると
、連続して使用されている以上に、内部で雑菌などが増殖するおそれが高くなる。従って
、先端側メモリーに初起動データだけでなく起動回数データも記憶しておき、これらのデ
ータに基づいて先端部の使用時間を管理してやれば、先端部の内部で雑菌などが増殖する
事態をより確実に回避することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明の液体噴射装置においては次のようにしても良い。先ず、先端部
には、液体供給手段からの液体が供給され、且つノズルに接続された液体室を設けておく
。また、本体部には、印加される駆動信号の電圧に応じて変形して、液体室の容積を変更
する圧電素子を設けておく。そして、液体供給手段から液体室に液体を供給した状態で、
圧電素子に駆動信号を印加して液体室の容積を減少させることによって、ノズルからパル
ス状に液体を噴射する。このように構成された液体噴射装置の本体部にメモリー(本体側
メモリー)を搭載し、この本体側メモリーに、圧電素子に駆動信号が印加された駆動時間
に関するデータ(駆動時間データ)を記憶しておく。尚、駆動時間データは、たとえば液
体噴射装置が停止されて駆動時間が確定する度に、確定した駆動時間が追加して記憶され
るデータ(起動毎の駆動時間を示すデータ)であっても良いし、それら駆動時間を累積し
た値が記憶されたデータであっても良い。そして、制御部は、本体側メモリーから読み出
した駆動時間データに基づいて、本体部の使用時間を管理するようにしてもよい。
【0014】
こうすれば、本体部に搭載された圧電素子の駆動時間が所定時間よりも長くならないよ
うに、本体部の使用時間を管理することができる。このため、液体をパルス状に噴射する
ために本体部に組み込まれた可動部分で何らかのトラブルが発生する前に、液体噴射装置
の本体部を取り換える事が可能となる。もちろん、本体部を取り換える前に先端部を取り
換える事ができるので、先端部の内部で雑菌などが増殖する事態を回避することも可能で
ある。
【0015】
また、液体をパルス状に噴射する上述した本発明の液体噴射装置においては、本体側メ
モリーに、圧電素子の駆動回数(圧電素子に駆動信号が印加された回数)に関するデータ
(駆動回数データ)を記憶してもよい。尚、駆動回数データは、たとえば液体噴射装置が
停止されて駆動回数が確定する度に、確定した駆動回数が追加して記憶されるデータであ
っても良いし、それら駆動回数を累積した値が記憶されたデータであっても良い。そして
、制御部は、本体側メモリーから読み出した駆動回数データに基づいて、本体部の使用時
間を管理するようにしてもよい。
【0016】
こうすれば、本体部に搭載された圧電素子の駆動回数が所定回数よりも多くならないよ
うに、本体部の使用時間を管理することができる。このため、液体をパルス状に噴射する
ために本体部に組み込まれた可動部分で何らかのトラブルが発生する前に、液体噴射装置
の本体部を取り換える事が可能となる。もちろん、本体部を取り換える前に先端部を取り
換える事ができるので、先端部の内部で雑菌などが増殖する事態を回避することもできる

【0017】
また、駆動回数データを本体側メモリーに記憶する本発明の液体噴射装置においては、
圧電素子の駆動回数と、圧電素子に印加した駆動信号の電圧とに関する駆動回数データを
記憶しても良い。例えば、圧電素子の駆動回数のデータおよび駆動信号の電圧のデータの
2種類のデータを、駆動回数データとして記憶しておくことができる。あるいは、圧電素
子の駆動回数のデータをそのまま記憶するのではなく、駆動信号の電圧に応じて重みを付
けた駆動回数のデータとして、駆動回数データを記憶しても良い。
【0018】
こうすれば、圧電素子の駆動回数だけでなく、圧電素子の変形量(駆動信号の電圧)も
考慮して本体部の使用時間を管理することができる。このため、液体噴射装置の使用中に
本体部の可動部分で何らかのトラブルが発生することを、より確実に回避することが可能
となる。
【0019】
また、上述した本発明の液体噴射装置は、生物組織に液体を噴射することによって生物
組織を切開、あるいは切除する手術器具に利用することができる。また、生物組織に薬液
等を噴射する治療器具としても利用することができる。従って本発明の液体噴射装置は、
医療機器として好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】アプリケーターの本体部に先端部を組み付ける様子を示した説明図である。
【図3】アプリケーターの詳細な構成を示した断面図である。
【図4】圧電素子に印加する駆動信号を例示した説明図である。
【図5】制御部の構成を示したブロック図である。
【図6】制御部で行われる使用時間管理処理のフローチャートである。
【図7】使用時間管理処理の中で行われる起動時処理のフローチャートである。
【図8】本体側メモリーにデータが記憶されている様子を例示した説明図である。
【図9】駆動信号の電圧に応じて設定された重み係数を例示した説明図である。
【図10】先端側メモリーにデータが記憶されている様子を例示した説明図である。
【図11】先端側メモリーにデータが記憶されている他の態様を例示した説明図である。
【図12】使用時間管理処理の中で行われる操作中処理のフローチャートである。
【図13】先端部の使用相当時間を算出する方法を示した説明図である。
【図14】使用時間管理処理の中で行われる停止時処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.装置構成:
A−1.液体噴射装置の構成:
A−2.アプリケーターの構成:
A−3.制御部の構成:
B.使用時間管理処理:
B−1.起動時処理:
B−2.操作中処理:
B−3.停止時処理:
【0022】
A.装置構成 :
A−1.液体噴射装置の構成 :
図1は、本実施例の液体噴射装置10の大まかな構成を示した説明図である。図示した
液体噴射装置10は、水や生理食塩水などの液体を生物組織に向けて噴射することで、生
物組織を切開あるいは切除する手術方法に用いられるものである。
【0023】
図示されているように、本実施例の液体噴射装置10は、操作者が手に持って操作して
液体を噴射するアプリケーター100と、アプリケーター100に液体を供給する液体供
給手段300と、噴射する液体を収容する液体容器306と、アプリケーター100や液
体供給手段300の動作を制御する制御部200などから構成されている。尚、本実施例
では、アプリケーター100が本発明における「噴射部」に対応する。
【0024】
アプリケーター100は、大まかには本体部110と、本体部110に対して着脱可能
に取り付けられた先端部120などから構成されている。先端部120には液体噴射管1
24が立設されており、液体噴射管124の先端にはノズル122が形成されている。ま
た、先端部120の中で本体部110に組み付けられる側には、液体が充填される液体室
126が設けられている。この液体室126は、液体噴射管124を介してノズル122
と接続されており、更に、第2接続チューブ304から流体が供給される。また、本体部
110には、積層型の圧電素子によって構成された圧電素子112が設けられている。詳
細には後述するが、本体部110に対して先端部120を取り付けて圧電素子112に駆
動信号を印加すると、圧電素子112が伸縮することによって液体室126の容積が変動
し、その結果、液体室126内の液体が122からパルス状に噴射される。尚、本実施例
の液体噴射装置10は、ノズル122からパルス状に液体を噴射するものとして説明する
が、ノズル122から連続的に液体を噴射する液体噴射装置であっても構わない。アプリ
ケーター100の詳細な構成については後述する。
【0025】
液体供給手段300は、第1接続チューブ302を介して液体容器306と接続されて
おり、液体容器306から吸い上げた液体を、第2接続チューブ304を介してアプリケ
ーター100の液体室126に供給する。本実施例の液体供給手段300は、2つのピス
トンがシリンダー内で摺動する構成となっており、双方のピストンの移動速度を適切に制
御することで、アプリケーター100に向かって液体を一定の圧力で圧送することが可能
である。
【0026】
A−2.アプリケーターの構成 :
図2は、アプリケーター100の本体部110に先端部120を取り付ける様子を示し
た説明図である。図2(a)に示されるように、本体部110の外周側面には複数(図示
した例では3つ)の雌型ロック部110Lが等間隔に設けられており、先端部120の外
周側面には複数(図示した例では3つ)の雄型ロック部120Lが等間隔に設けられてい
る。本体部110に先端部120を取り付ける際には、雌型ロック部110Lに対して雄
型ロック部120Lが同じ位置にならないようにしながら、先端部120を本体部110
の合わせ面110sに当接させる。その後、図2(b)に示されるように、先端部120
を本体部110に当接させたまま先端部120を反時計方向に回転させる。すると、先端
部120に形成された雄型ロック部120Lが、本体部110の雌型ロック部110Lに
嵌合して、先端部120を本体部110に堅固に取り付けることができる。また、本体部
110から先端部120を取り外す際には、先端部120を時計回りに回転させる。する
と、雌型ロック部110Lと雄型ロック部120Lとの嵌合が解除されて、本体部110
から先端部120を取り外すことが可能となる。
【0027】
また、後述するように本実施例では先端部120にはメモリーが内蔵されている。更に
、本体部110の合わせ面110sには接続端子114が設けられている。本体部110
に先端部120を取り付けると、接続端子114を介して先端部120のメモリーのデー
タを読み出したり、あるいはデータを書き込んだりすることが可能となる。
【0028】
図3は、アプリケーター100の詳細な構成を示した断面図である。図3(a)には、
本体部110から先端部120を取り外した状態が示されており、図3(b)には、本体
部110に先端部120を取り付けた状態が示されている。図3(a)に示されるように
、本体部110には、先端部120との合わせ面110sの内側に、円形の浅い凹部11
1が形成されており(図2(a)参照)、凹部111の中央位置には金属薄板などで形成
された円形のダイアフラム110dが取り付けられている。そして、ダイアフラム110
dの裏面側には、円形の補強板116を介して圧電素子112が接着によって取り付けら
れている。また、本体部110には本体側メモリー110mも内蔵されている。本体側メ
モリー110mは、図示しない配線を介して制御部200に接続される。
【0029】
先端部120は、本体部110と合わさる側の面の中央位置が、浅い円形の凹形状に形
成されるとともに、この凹形状の開口部がシリコン樹脂などの弾性に富んだ薄膜128で
覆われることによって液体室126が形成されている。この液体室126は、入口流路1
26iを介して第2接続チューブ304に接続され、また出口流路126oを介して液体
噴射管124に接続されている。液体噴射管124の先端にはノズル122が取り付けら
れており、ノズル122には、液体を噴射するための液体噴射開口部122oが開口して
いる。
【0030】
また、先端部120の液体室126が形成されている部分は、本体部110の凹部11
1に対してインロウに形成されている。そして、図3(b)に示したように、先端部12
0を本体部110に取り付けて、雄型ロック部120Lと雌型ロック部110Lとを嵌合
させると、液体室126の薄膜128が、本体部110のダイアフラム110dに密着す
るようになっている。従って、先端部120を本体部110に取り付けた状態で圧電素子
112に駆動信号を印加すると、圧電素子112が伸張して、補強板116、ダイアフラ
ム110dを介して薄膜128を変形させる。その結果、液体室126の容積が減少して
液体室126内の液体が加圧され、出口流路126o、液体噴射管124を介してノズル
122からパルス状に液体が噴射される。
【0031】
また、先端部120には先端側メモリー120mも内蔵されている。先端部120を本
体部110に取り付けると、先端側メモリー120mが図示しない配線や、図2に示した
接続端子114を介して制御部200に接続される。
【0032】
図4は、圧電素子112に印加される駆動信号を例示した説明図である。駆動信号は、
初期の電圧(ここでは電圧0)から電圧Vだけ上昇した後、再び初期の電圧まで下降する
。圧電素子112は、印加される電圧が上昇すると伸張して液体室126の容積を減少さ
せる。ここで、圧電素子112の伸張量(従って、液体室126の容積減少量)は、印加
される電圧の上昇量にほぼ比例するから、初期の電圧からの電圧上昇量(ここでは電圧V
)に応じた体積の液体がノズル122から噴射される。尚、以下では、初期の電圧からの
電圧上昇量(ここでは電圧V)を「駆動電圧」と称する。また、本実施例では、このよう
な駆動信号を、一定の周期Tで圧電素子112に印加する。尚、以下では、周期Tの逆数
を「駆動周波数」と称する。駆動周波数は、1秒間あたりの駆動回数を表している。
【0033】
A−3.制御部の構成 :
図5は、制御部200の大まかな構成を示した説明図である。制御部200には、処理
部202や、音声出力部204や、駆動部206や、通信部208や、時刻管理部210
などが設けられている。音声出力部204は、ブザー音などの音声を出力する機能を有し
ている。駆動部206は、アプリケーター100の圧電素子112に対しては図4に示す
駆動信号を出力し、液体供給手段300に対しては液体供給手段300の動作を制御する
制御信号を出力する。また、通信部208は、本体部110の本体側メモリー110mや
先端部120の先端側メモリー120mに対して、データの読み出しあるいは書き込みを
行う。時刻管理部210は、いわゆるタイマー機能や現在時刻を検出する機能を有してい
る。更に処理部202は、音声出力部204や、駆動部206、通信部208、時刻管理
部210を統括して、液体噴射装置10を適切に動作させるための各種処理を実行する。
【0034】
以上に説明したように、本実施例の液体噴射装置10では、アプリケーター100の中
で液体が通過する部分である先端部120が、本体部110に対して着脱可能となってい
る。液体が通過する部分は、液体噴射装置10の使用後に液体が付着した状態で時間が経
過すると雑菌が増殖する可能性が生じるが、先端部120だけを付け替えることで、アプ
リケーター100を清潔な状態に保っておくことが可能である。もっとも、液体噴射装置
10の操作者が先端部120の付け替えを忘れるなど、何らかの理由で先端部120が使
い続けられると、アプリケーター100の内部に雑菌が増殖することが起こり得る。そこ
で、本実施例の液体噴射装置10は、こうしたおそれを回避するために、次のような処理
を行う。
【0035】
B.使用時間管理処理 :
図6は、制御部200の処理部202が、先端部120の使用時間を管理するために実
行する使用時間管理処理のフローチャートである。この処理は、液体噴射装置10の操作
者が液体噴射装置10を起動すると開始され、液体噴射装置10の運転が終了されるまで
実行される。使用時間管理処理が開始されると、先ず始めに起動時処理(ステップS10
0)が実行される。
【0036】
B−1.起動時処理 :
図7は、液体噴射装置10の起動時に、制御部200の処理部202によって行われる
起動時処理のフローチャートである。起動時処理では、先ず始めに、本体側メモリー11
0mに記憶されている各種データの読み出しを行う(ステップS102)。
【0037】
図8は、本体側メモリー110mに各種のデータが記憶されている様子を概念的に示し
た説明図である。本実施例の液体噴射装置10では、液体噴射装置10を起動した日時の
年月日および時刻(年/月/日/時/分)を表すデータや、その時の駆動時間、駆動回数
、駆動電圧、駆動周波数などのデータが、本体側メモリー110mに記憶されている。こ
こで、駆動時間とは、図4に示すような駆動信号を印加して圧電素子112を駆動した時
間である。より簡単には、液体噴射装置10が起動されてから停止されるまでの時間を駆
動時間とすることもできる。また、駆動回数とは、図4に示すような駆動信号を圧電素子
112に印加した回数(換言すれば、圧電素子112が伸長した後、元の長さに戻る動作
を繰り返した回数)である。駆動電圧とは、駆動信号の初期の電圧と最大電圧との電圧差
であり、駆動周波数とは、駆動信号の周期Tの逆数であり、1秒間に駆動信号を印加する
回数を表している(図4参照)。
【0038】
図8に示した例について説明すると、たとえば図中の一番上のデータは、液体噴射装置
10が「yr1」年の「mt1」月「da1」日の「hr1」時「mn1」分に初めて起
動され、この時の駆動時間は「T1」、駆動回数は「N1」、駆動電圧は「V1」、駆動
周波数は「C1」であったことを表している。また、それ以降にも2回、液体噴射装置1
0が起動されており、それぞれの起動について、機動の日時や、駆動時間、駆動回数、駆
動電圧、駆動周波数などが記憶されている。図7のステップS102では、本体側メモリ
ー110mに記憶されているこれらのデータを読み出す。
【0039】
尚、図8に例示したデータからは、液体噴射装置10が既に3回、起動されていること
が読み取れる。しかし、これらのデータは、本体部110に内蔵された本体側メモリー1
10mに記憶されていることから、正確には、液体噴射装置10が起動された回数ではな
く、その本体部110が装着されて液体噴射装置10が起動された回数を示している。
【0040】
本体側メモリー110mからデータを読み出したら、それらのデータに基づいて、本体
部110の累積駆動時間および累積駆動値を算出する(ステップS104)。ここで、累
積駆動時間とは、過去の起動時における駆動時間を合計した時間である。たとえば、図8
に例示したデータでは、初回の起動時の駆動時間がT1であり、2回目の駆動時間がT2
であり、3回目の駆動時間がT3であるから、これらの合計値である「T1+T2+T3
」が累積駆動時間となる。
【0041】
また、累積駆動値とは、過去の起動時の駆動電圧に応じた重みを付けて、駆動回数を合
計した値である。図8に例示したデータでは、初回の起動時の駆動回数はN1であり、駆
動電圧はV1である。また、2回目の起動時は駆動回数がN2であり、駆動電圧はV2で
ある。更に、3回目は駆動回数がN3であり、駆動電圧はV3である。従って、初回の駆
動回数N1に、駆動電圧V1に応じた重み係数K1を乗じた値K1・N1と、2回目の駆
動回数N2に、駆動電圧V2に応じた重み係数K2を乗じた値K2・N2と、3回目の駆
動回数N3に、駆動電圧V3に応じた重み係数K3を乗じた値K3・N3とを合計した値
「K1・N1+K2・N2+K2・N2」が累積駆動値となる。
【0042】
図9には、駆動電圧に応じて重み係数Kが設定されている様子が示されている。制御部
200の処理部202に内蔵された図示しないメモリーには、図9に示すような駆動電圧
と重み係数との対応関係が記憶されている。駆動電圧に応じて設定される重み係数Kの意
味する処については後述する。
【0043】
こうして累積駆動時間および累積駆動値を算出したら(ステップS104)、累積駆動
時間が、予め定められた許容時間を超えたか否かを判断する(ステップS106)。ここ
で、許容時間とは次のような時間である。図3を用いて前述したようにアプリケーター1
00は、圧電素子112を伸長させて液体室126の容積を減少させることによって液体
を噴射する。この時、本体部110のダイアフラム110dは、圧電素子112が伸長す
ると変形し、圧電素子112が収縮すると元の形状に戻ることを繰り返す。このため、ア
プリケーター100を長い間使用しているとダイアフラム110dに亀裂が入ったり、圧
電素子112が収縮してもダイアフラム110dが元の形状に戻りにくくなったりするお
それがある。そこで本体部110には、このような事態の生じるおそれの無い許容時間が
予め定められている。図7のステップS106では、本体部110の累積駆動時間が、こ
の許容時間を超えているか否かを判断する。
【0044】
その結果、累積駆動時間が許容時間を超えていた場合は(ステップS106:yes)
、音声出力部204から所定のブザー音などの音声を出力することによって警告を行う(
ステップS108)。このため、液体噴射装置10の操作者は、起動時にブザー音が鳴る
と、アプリケーター100の本体部110の使用時間が許容時間を過ぎており、本体部1
10を交換する必要があることを認識することができる。尚、上述したように許容時間は
、本体部110のダイアフラム110dに亀裂が発生するなどの問題が生じるおそれのな
い時間であるから、許容時間を超えたからといって直ちに本体部110に問題が生じると
は限らない。また、何らかの理由で新たな本体部110の入手が遅れているが、手術など
は行わなければならない場合も生じ得る。そこで、累積駆動時間が許容時間を超えた場合
でも(ステップS106:yes)、液体噴射装置10が使えないようにするのではなく
、単に警告をすることで、本体部110の交換を促すこととしている。
【0045】
一方、本体部110の累積駆動時間が許容時間を超えていなかった場合は(ステップS
106:no)、先に算出しておいた累積駆動値が、予め定められた許容値を超えたか否
かを判断する(ステップS110)。ここで、許容値とは次のような値である。前述した
ように、本体部110のダイアフラム110dは、圧電素子112が伸長および収縮する
度に変形を繰り返す。従って、ダイアフラム110dに亀裂が入ったり、ダイアフラム1
10dが元の形状に戻りにくくなったりするなどの問題が生じる時期は、ダイアフラム1
10dが変形した回数(すなわち、圧電素子112の駆動回数)に依存すると考えられる
。また、毎回の変形での変形量(すなわち、圧電素子112の変形量)が大きければ、亀
裂などが早く生じると考えられる。そこで、圧電素子112の駆動回数を、駆動電圧に応
じた重みを付けて累積しておき、この累積値がある値を超えるまではダイアフラム110
dに亀裂などの問題が生じることはないというような許容値を考えることができる。累積
駆動値の許容値とは、このような許容値である。また、図9に示した重み係数Kは、駆動
回数を累積する際に、駆動電圧の影響を考慮して駆動回数に付けられる重み係数である。
【0046】
図7のステップS110では、本体部110の累積駆動値が、この許容値を超えている
か否かを判断する。その結果、累積駆動値が許容値を超えていた場合は(ステップS11
0:yes)、ステップS106で累積駆動時間が許容時間を超えたと判断した場合と同
様に、音声出力部204から所定のブザー音などの音声を出力して警告を行う(ステップ
S112)。この結果、液体噴射装置10の操作者は、アプリケーター100の本体部1
10を交換する必要があることを認識することができる。尚、累積駆動時間が許容時間を
超えた場合(ステップS106:yes)のブザー音と、累積駆動値が許容値を超えた場
合(ステップS110:yes)のブザー音とは、同じブザー音とすることができる。一
方、累積駆動値が許容値を超えていなかった場合は(ステップS110:no)、警告は
行わない。
【0047】
以上のようにして、本体部110の累積駆動時間および累積駆動値を算出し、必要に応
じて警告を行ったら(ステップS104〜S112)、起動時の情報(起動時情報)を本
体側メモリー110mに書き込む(ステップS114)。ここで、起動時情報とは、液体
噴射装置10が起動された日時や、圧電素子112に印加される駆動信号の駆動電圧や駆
動周波数などの情報である。液体噴射装置10が起動された日時は、制御部200に内蔵
された時刻管理部210から取得することができる。また、駆動電圧や駆動周波数などは
、液体噴射装置10の起動時に操作者によって設定される。続いて、制御部200の処理
部202は、今度は先端部120の先端側メモリー120mに記憶されたデータを読み出
す(ステップS116)。
【0048】
図10は、先端側メモリー120mにデータが記憶されている様子を概念的に示した説
明図である。図示されているように、先端側メモリー120mには、その先端部120が
過去に起動された日時(正確には、その先端部120が本体部110に装着された状態で
液体噴射装置10が起動された日時)が記憶されている。例えば、図10に示した例では
、現在の先端部120は、「yr1」年「mt1」月「da1」日の「hr1」時「mn
1」分に初めて起動され、それ以降にも2回起動(初回を含めれば3回)されている。そ
こで制御部200の処理部202は、初めて起動された日時と、既に起動された回数とを
、処理部202の図示しない内部メモリーに記憶する(ステップS118)。そして、時
刻管理部210から取得した現在の日時を先端側メモリー120mに追記する。図10に
示した例では、4つめの起動日時として、現在の日時が書き込まれる。その後、図7の起
動時処理を終了して図6の使用時間管理処理に復帰する。
【0049】
以上の説明では、毎回の起動日時が先端側メモリー120mに記憶されるものとした。
しかし、より簡単には、初回の起動日時と、過去の起動回数とを先端側メモリー120m
に記憶しても良い。この場合、図7のステップS120では、次のような処理を行う。す
なわち、先端側メモリー120mに初回の起動日時が記憶されていない場合は、現在の日
時を初回の起動日時として書き込む。また、先端側メモリー120mに初回の起動日時が
記憶されていた場合は、先端側メモリー120mに記憶されている過去の起動回数を、「
1」だけ大きな値に更新する。例えば、2回目に起動されたのであれば、先端側メモリー
120mには初回の起動日時と、過去の起動回数(0回)とが記憶されている。そこで、
初回の起動日時はそのままで、過去の起動回数を1つ大きな値(1回)に更新する。
【0050】
尚、先端側メモリー120mに記憶される初回の起動日時のデータが、本発明における
「初起動データ」に対応する。また、図10に例示したように、毎回の起動日時が先端側
メモリー120mに追記される場合には、先端側メモリー120mに記憶された起動日時
の個数が起動回数を表している。従ってこのような場合は、初回以降に記憶される起動日
時のデータが、本発明における「起動回数データ」に対応する。これに対して、図11に
例示したように、毎回の起動日時が先端側メモリー120mに追記されるのではなく、過
去の起動回数が記憶される場合には、この過去の起動回数のデータが本発明における「起
動回数データ」に対応する。
【0051】
B−2.操作中処理 :
図12は、制御部200の処理部202によって行われる操作中処理のフローチャート
である。この処理は、図6に示されるように、前述の起動時処理(ステップS100)に
続けて実行される処理である。
【0052】
操作中処理(ステップS200)を開始すると、処理部202は、先ず始めに時刻管理
部210のタイマー機能を用いて一定時間の計時を開始する(ステップS202)。ここ
で一定時間としては、液体噴射装置10の操作者が任意の時間に設定することができるが
、代表的には30分あるいは1時間に設定される。続いて、設定した一定時間が経過した
か否かを判断し(ステップS204)、一定時間が経過していない場合は(ステップS2
04:no)、液体噴射装置10の停止か否か、すなわち、液体噴射装置10に設けられ
た図示しない停止スイッチが操作者によって操作されたか否かを判断する(ステップS2
12)。その結果、停止スイッチが操作されていない場合は(ステップS212:no)
、ステップS204に戻って、再び一定時間が経過したか否かを判断する。
【0053】
このような判断を繰り返しているうちに、一定時間が経過したと判断すると(ステップ
S204:yes)、処理部202は、先端部120の使用相当時間を算出する(ステッ
プS206)。ここで、先端部120の使用相当時間とは、先端部120が初めて起動さ
れてからの経過時間に、過去の起動回数を考慮して算出される時間である。
【0054】
図13は、先端部120の使用相当時間を算出する方法を示した説明図である。図13
(a)には、先端部120が初めて使用されてから現在までの使用状況が示されており、
図13(b)には、先端部120の使用状況から使用相当時間を算出する様子が示されて
いる。図13(a)に示した例では、初回に起動されてから一旦停止され、暫くの時間を
おいて再び起動されて、現在は2回目の起動による操作中である場合が示されている。処
理部202が使用相当時間を算出するに際しては、先ず始めに、初回の起動日時から現在
の日時までの経過時間を算出する。初回の起動日時は、前述した起動時処理で先端側メモ
リー120mから読み出されて処理部202の内部メモリーに記憶されている(図7のス
テップS118)。また、現在の日時は時刻管理部210から取得することができる。
【0055】
次に、先端部120が過去に起動された回数(過去の起動回数)を取得する。過去の起
動回数も、前述した起動時処理で読み出されて処理部202の内部メモリーに記憶されて
いる(図7のステップS118)。図13に示した例では、現在は2回目の起動による操
作中であるから、過去の起動回数は1回となる。そして、起動回数1回につき所定時間(
たとえば4時間)を、初回の起動日時から現在の日時までの経過時間に加算し、得られた
時間を使用相当時間とする(図13(b)参照)。図12のステップS206では、この
ようにして先端部120の使用相当時間を算出する。
【0056】
ここで、使用相当時間は次のような技術的な意義を有している。先ず、使用相当時間は
、初回の起動日時からの時間が経過するほど長くなり、過去の起動回数が多くなるほど長
くなる。また、先端部120の内部で雑菌などが増殖するリスクは、その先端部120が
初めて使用されてからの時間が経過するほど高くなる。更に、先端部120が再使用され
る回数が多くなるほど、先端部120の内部で雑菌などが増殖するリスクは高くなる。こ
のことから、使用相当時間が長くなるほど、先端部120の内部で雑菌などが増殖するリ
スクが高くなると考えることができる。
【0057】
そこで、算出した使用相当時間が、予め設定された先端部120の許容時間を超えたか
否かを判断する(ステップS208)。その結果、使用相当時間が許容時間を超えていた
場合は(ステップS208:yes)、音声出力部204から所定のブザー音などの音声
を出力することによって警告を行う(ステップS210)。これに対して、累積駆動値が
許容値を超えていなかった場合は(ステップS208:no)、警告は行わずに、再びス
テップS202に戻って、一定時間の計時を開始する。
【0058】
尚、以上の説明から明らかなように、使用相当時間は、先端部120の内部で雑菌など
が増殖するリスクを示す指標として用いられる。従って、初回の起動日時からの経過時間
および過去の起動回数についての重みは、使用相当時間がより適切な指標となるように適
宜変更することができる。例えば、初回の起動日時からの経過時間については半分の時間
として計算したり、過去の起動回数については1回あたりの時間をより長い時間(たとえ
ば10時間)として計算したりすることができる。
【0059】
また、先端部120の使用相当時間が許容時間を超えた場合に出力するブザー音は、本
体部110の累積駆動時間が許容時間を超えたり、累積駆動値が許容値を超えたりした場
合に出力するブザー音とは、異なるブザー音であることが望ましい。こうすれば、液体噴
射装置10の操作者は、ブザー音を聞いただけでアプリケーター100の先端部120を
交換する必要があることを認識することができる。
【0060】
このように操作中処理では、一定時間が経過する度に使用相当時間を算出して(ステッ
プS206)、得られた使用相当時間が許容時間に達していれば(ステップS208:y
es)、先端部120を交換するように操作者に対して警告する動作(ステップS210
)を、操作者によって液体噴射装置10が停止されるまで繰り返す。そして、操作者によ
って液体噴射装置10の停止スイッチが操作されると(ステップS212:yes)、操
作中処理を終了して図6の使用時間管理処理に復帰した後、以下に説明する停止時処理(
ステップS300)を開始する。
【0061】
B−3.停止時処理 :
図14は、制御部200の処理部202によって行われる停止時処理のフローチャート
である。停止時処理では、この度の起動から停止までの間に圧電素子112が駆動された
駆動時間および駆動回数を、本体側メモリー110mに書き込む(ステップS302)。
すなわち、図7を用いて前述した起動時処理のステップS114では、起動日時や、駆動
電圧、駆動周波数などの起動時情報を本体側メモリー110mに書き込んだが、起動時点
では、駆動時間や駆動回数については分からないので書き込んでいない。そこで、液体噴
射装置10の停止時に、確定した駆動時間や駆動回数を本体側メモリー110mに書き込
む処理を行う。このように、本体側メモリー110mに記憶されている図8に示したデー
タは、起動日時や、駆動電圧、駆動周波数などについては液体噴射装置10の起動時に書
き込まれ、駆動時間や駆動回数などについては液体噴射装置10の停止時に書き込まれた
データである。尚、液体噴射装置10の停止時に本体側メモリー110mに書き込まれる
駆動電圧が、本発明における「駆動時間データ」に対応し、駆動回数が本発明における「
駆動回数データ」に対応する。
【0062】
続いて、制御部200の処理部202は、既に本体側メモリー110mに記憶されてい
たデータと、新たに本体側メモリー110mに書き込んだデータとを用いて、現時点での
本体部110の累積駆動時間および累積駆動値を算出する(ステップS304)。累積駆
動時間および累積駆動値の算出方法は、前述した起動時処理のステップS104で算出し
た方法と同様である。
【0063】
そして、算出した累積駆動時間が、許容時間を超えたか否かを判断し(ステップS30
6)、許容時間を超えていた場合は(ステップS306:yes)、音声出力部204か
らブザー音などを出力することによって警告を行う(ステップS308)。また、算出し
た累積駆動値が、許容値を超えたか否かを判断して(ステップS310)、許容値を超え
ていた場合にも(ステップS310:yes)、音声出力部204からブザー音などを出
力することによって警告を行う(ステップS312)。これに対して、新たに算出した累
積駆動時間が許容時間を超えておらず(ステップS306:no)、新たに算出した累積
駆動値が許容値も超えていない場合(ステップS310:no)は、警告を行うことなく
図14の停止時処理を終了して、図6の使用時間管理処理に復帰した後、使用時間管理処
理も終了する。
【0064】
以上に詳しく説明したように、本実施例の液体噴射装置10では、アプリケーター10
0の先端部120に先端側メモリー120mが搭載されており、先端側メモリー120m
には、その先端部120が初めて使用された日時(初回の起動日時)や、過去の使用回数
(起動回数)が記憶されている。そして、液体噴射装置10が起動された後は、先端側メ
モリー120mに記憶されているデータや現在時刻などに基づいて、先端部120の使用
相当時間が算出されて、得られた時間が許容時間を超えると、先端部120を交換するよ
うに促す警告が一定時間毎に発生する。このため、液体噴射装置10の操作者が先端部1
20を取り換えることを忘れてしまい、先端部120の内部で雑菌などが増殖するおそれ
を回避することが可能となる。
【0065】
また、アプリケーター100の本体部110にも本体側メモリー110mが搭載されて
おり、本体側メモリー110mには、圧電素子112の駆動時間や、駆動電圧、駆動回数
などのデータが記憶されている。そして、液体噴射装置10の起動時や停止時には、これ
らのデータに基づいて本体部110の累積駆動時間や累積駆動値が算出されて、累積駆動
時間が許容時間を超えたり、累積駆動値が許容値を超えたりすると、本体部110を取り
換えるように促す警告が行われる。液体噴射装置10の使用中に本体部110のダイアフ
ラム110dに亀裂が入るなどの事態を未然に回避することができる。また、本体側メモ
リー110mには、圧電素子112の駆動時間や、駆動電圧、駆動回数などに加えて、液
体噴射装置10の起動日時や、圧電素子112の駆動周波数についてのデータも記憶され
ている。従って、液体噴射装置10の使用中に何らかのトラブルが生じた場合でも、本体
側メモリー110mに記憶されているこれらのデータを調べることによって、トラブルの
原因を特定することが可能となる。
【0066】
以上、本発明の液体噴射装置について、実施例を用いて説明したが、本発明は上記の実
施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施する
ことが可能である。
【0067】
例えば、使用時間管理処理の起動時処理(ステップS100)や停止時処理(ステップ
S300)では、本体部110を交換するように警告が行われることがあるが、警告が行
われた場合には、その旨を、あるいは警告が行われた日時などを、本体側メモリー110
mに記憶しておいても良い。また、操作中処理(ステップS200)についても同様に、
先端部120を交換するように警告が行われることがあるが、警告が行われた場合には、
その旨を、あるいは警告が行われた日時などを、先端側メモリー120mに記憶しておい
ても良い。
【符号の説明】
【0068】
10…液体噴射装置、 100…アプリケーター、 110…本体部、
110L…雌型ロック部、 110d…ダイアフラム、
110m…本体側メモリー、 110s…合わせ面、 111…凹部、
112…圧電素子、 114…接続端子、 116…補強板、
120…先端部、 120L…雄型ロック部、 120m…先端側メモリー、
122…ノズル、 122o…液体噴射開口部、 124…液体噴射管、
126…液体室、 126i…入口流路、 126o…出口流路、
128…薄膜、 200…制御部、 202…処理部、
204…音声出力部、 206…駆動部、 208…通信部、
210…時刻管理部、 300…液体供給手段、 302…第1接続チューブ、
304…第2接続チューブ、 306…液体容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する噴射部と、該噴射部に液体を供給する液体供給手段と、前記噴射部およ
び前記液体供給手段の動作を制御する制御部とを有する液体噴射装置であって、
前記噴射部は、
前記液体を噴射するノズルが形成された先端部と、
前記先端部が着脱可能に装着される本体部と
を備え、
前記先端部には、該先端部が前記本体部に装着されて前記液体噴射装置が初めて起動さ
れた日時に関するデータである、初起動データが書き込まれる先端側メモリーが設けられ
ており、
前記制御部は、前記本体部に装着された前記先端部の前記先端側メモリーに対して前記
初起動データの読み書きを行い、読み出した該初起動データに基づいて前記先端部の使用
時間を管理する制御部である液体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射装置であって、
前記先端側メモリーは、前記初起動データに加えて、前記先端部が装着されて前記液体
噴射装置が起動された回数に関するデータである、起動回数データが書き込まれるメモリ
ーであり、
前記制御部は、前記先端部の前記先端側メモリーに対して前記初起動データおよび前記
起動回数データの読み書きを行い、読み出した該初起動データおよび該起動回数データに
基づいて前記先端部の使用時間を管理する制御部である液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置であって、
前記先端部は、前記液体供給手段からの液体が供給され、且つ前記ノズルに接続された
液体室を備え、
前記本体部は、
印加される駆動信号の電圧に応じて変形して、前記液体室の容積を変更する圧電素子
と、
前記圧電素子に前記駆動信号が印加された駆動時間に関するデータである、駆動時間
データが書き込まれる本体側メモリーと
を備え、
前記制御部は、
前記液体室の容積を減少させる前記駆動信号を前記圧電素子に印加し、
前記本体側メモリーに対して前記駆動時間データの読み書きを行い、
前記本体側メモリーから読み出した前記駆動時間データに基づいて、前記本体部の使
用時間を管理する制御部である液体噴射装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置であって、
前記先端部は、前記液体供給手段からの液体が供給され、且つ前記ノズルに接続された
液体室を備え、
前記本体部は、
印加される駆動信号の電圧に応じて変形して、前記液体室の容積を変更する圧電素子
と、
前記圧電素子に前記駆動信号を印加した駆動回数に関するデータである、駆動回数デ
ータが書き込まれる本体側メモリーと
を備え、
前記制御部は、
前記液体室の容積を減少させる前記駆動信号を前記圧電素子に印加し、
前記本体側メモリーに対して前記駆動回数データの読み書きを行い、
前記本体側メモリーから読み出した前記駆動回数データに基づいて、前記本体部の使
用時間を管理する制御部である液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置であって、
前記駆動回数データは、前記駆動回数と前記駆動信号の電圧とに関するデータである液
体噴射装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の液体噴射装置を備える医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−85640(P2013−85640A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227662(P2011−227662)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】