説明

液体噴射装置およびその制御方法

【課題】着弾対象からの粉塵の飛散を抑制する。
【解決手段】記録ヘッド24は、有色性のインクとクリアーインクとを複数のノズルから記録紙200に噴射する。制御装置60は、記録紙200に形成すべき画像を指定する制御データDPに応じて記録ヘッド24に有色性のインクを噴射させる一方、クリアーインクが噴射される噴射領域GAとクリアーインクが噴射されない間引領域GBとを含む単位パターンUを繰返し配置した粉塵抑制パターンPが記録紙200に形成されるように記録ヘッド24にクリアーインクを噴射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子や発熱素子等の圧力発生素子を駆動して圧力室内の液体をノズルから噴射する液体噴射装置が従来から提案されている。例えば特許文献1には、顔料や染料等の着色材を含有する有色性のインクに加えて無色透明なクリアーインクを噴射する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−95218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コピー用紙等の記録紙を着弾対象として液体を噴射する場合、記録紙に付着した粉塵(例えば記録紙の繊維から分離した紙粉)が飛散する可能性がある。そして、記録紙から飛散した粉塵が各ノズルの近傍や内部に付着すると、液体の噴射特性(噴射量,噴射速度,噴射方向)が変動したりドット欠け(粉塵が詰まってノズルから液体が噴射しない状態)が発生したりするという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、着弾対象からの粉塵の飛散を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の液体噴射装置は、有色性の第1液体の液滴を着弾対象に噴射する第1ノズルと難視性の第2液体の液滴を前記着弾対象に噴射する第2ノズルとを有する液体噴射部と、前記着弾対象に形成すべき画像を指定する制御データに応じて前記液体噴射部に前記第1液体を噴射させる一方、前記第2液体が噴射される噴射領域と前記第2液体が噴射されない間引領域とを含む単位パターンを繰返し配置した第1粉塵抑制パターンが前記着弾対象に形成されるように前記液体噴射部に前記第2液体を噴射させる制御手段とを具備する。
【0006】
以上の構成では、難視性の第2液体で形成される第1粉塵抑制パターンにより着弾対象からの粉塵(紙粉)の飛散を抑制することが可能である。また、第2液体が噴射される噴射領域と第2液体が噴射されない間引領域とを含む複数の単位パターンを第1粉塵抑制パターンが含む(すなわち第2液体の噴射が間引かれる)から、着弾対象の全面に第2液体を噴射する構成と比較して、第2液体の消費量を削減することが可能である。また、例えば記録紙を着弾対象とした場合には、第2液体の過剰な浸透に起因した記録紙の皺の発生を抑制できるという利点もある。
【0007】
有色性の液体とは、観察者が視認可能な色を持つ液体を意味し、例えば染料や顔料等の着色剤を含有する液体である。他方、難視性の液体とは、観察者が視認し難い液体を意味し、例えば無色透明の液体(例えばクリアーインク)や着弾対象の表面と同色の液体(例えば白色のインク)である。
【0008】
本発明の好適な態様において、相互に隣合う2個の前記噴射領域間の中心間距離は、前記着弾対象に着弾した前記第2液体で形成されるドットの直径と前記ノズルの直径との合計値を下回る。以上の態様では、第2液体で形成されるドットの間隔がノズルの直径を下回るから、外形寸法がノズルの直径以上である粉塵の少なくとも一部を被覆するように各ドットを形成して粉塵の飛散を効率的に防止できるという利点がある。
【0009】
本発明の好適な態様において、前記液体噴射部は、重量が相違する複数種の液滴の何れかを前記ノズルから噴射し、前記制御手段は、前記複数種の液滴のうち重量が最小の液滴として前記液体噴射部に前記第2液体を噴射させる。以上の態様では、重量が最小の液滴として第2液体が噴射されるから、第2液体の消費量が削減されるという効果は格別に顕著となる。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記制御手段は、前記着弾対象の第1領域に対して前記第1粉塵抑制パターンが形成されるとともに前記第1領域とは相違する第2領域に第2粉塵抑制パターンが形成されるように前記液体噴射部に前記第2液体を噴射させ、前記第2領域の単位面積に対する前記第2液体の噴射回数(ドット密度)は、前記第1領域の単位面積に対する前記第2液体の噴射回数を上回る。以上の態様では、ドット密度が第1粉塵抑制パターンを上回る第2粉塵抑制パターンが第2領域に形成されるから、第2領域からの粉塵の飛散を効果的に防止することが可能である。また、第1領域および第2領域の双方に第2粉塵抑制パターンを形成した構成と比較して第2液体の消費量が削減されるという利点もある。なお、例えば記録紙を着弾対象とした場合、記録紙の周縁(裁断面)は特に粉塵の付着が顕著である。したがって、前記着弾対象の周縁に沿う領域を前記第2領域として第2粉塵抑制パターンを形成する構成が格別に好適である。
【0011】
本発明は、以上の各形態に係る液体噴射装置を制御する方法としても特定される。本発明に係る液体噴射装置の制御方法は、有色性の第1液体と難視性の第2液体とを複数のノズルから着弾対象に噴射する液体噴射部を具備する液体噴射装置の制御方法であって、前記着弾対象に形成すべき画像を指定する制御データに応じて前記液体噴射部に前記第1液体を噴射させる一方、前記第2液体が噴射される噴射領域と前記第2液体が噴射されない間引領域とを含む単位パターンを繰返し配置した第1粉塵抑制パターンが前記着弾対象に形成されるように前記液体噴射部に前記第2液体を噴射させる。以上の制御方法でも、本発明の液体噴射装置と同様の作用および効果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の部分的な構成図である。
【図2】記録ヘッドの吐出面の平面図である。
【図3】印刷装置の部分的なブロック図である。
【図4】粉塵抑制パターンの説明図である。
【図5】粉塵抑制パターンにおける噴射領域の位置関係を示す模式図である。
【図6】第2実施形態における粉塵抑制パターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な模式図である。印刷装置100は、記録紙200にインクの液滴を噴射する液体噴射装置であり、キャリッジ12と移動機構14と用紙搬送機構16とを具備する。記録紙200は、それを構成する繊維から分離した微細な粉塵(紙粉)が付着し得る用紙(いわゆるコピー用紙または普通紙)である。
【0014】
キャリッジ12には、インクカートリッジ22と記録ヘッド24とが搭載される。インクカートリッジ22は、記録紙200に噴射されるインクを貯留する容器である。顔料や染料等の着色材を含有する有色性の複数種(ブラック(K),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C))のインクと、着色材を含有しない無色透明なクリアーインクとがインクカートリッジ22に貯留される。記録ヘッド24は、インクカートリッジ22から供給されるインクを記録紙200に噴射する液体噴射部として機能する。なお、印刷装置100の筐体(図示略)にインクカートリッジ22を固定して記録ヘッド24にインクを供給するオフキャリッジ方式も採用され得る。
【0015】
移動機構14は、X方向(主走査方向)にキャリッジ12を往復させる。用紙搬送機構16は、キャリッジ12の往復に並行して記録紙200をY方向(副走査方向)に搬送する。キャリッジ12の往復時に記録ヘッド24が記録紙200にインクを噴射することで所望の画像が記録紙200に記録される。
【0016】
図2は、記録ヘッド24のうち記録紙200に対向する吐出面50の平面図である。図2に示すように、記録ヘッド24の吐出面50には、有色性のインクに対応する複数のノズル列26(26K,26Y,26M,26C)とクリアーインクに対応するノズル列28とが形成される。各ノズル列26およびノズル列28は、Y方向(副走査方向)に直線状に配列された複数のノズル(吐出口)52の集合である。なお、複数のノズル52を千鳥状に配列することも可能である。
【0017】
ノズル列26Kの各ノズル52からはブラックのインクの液滴が噴射される。同様に、ノズル列26Yの各ノズル52からはイエローのインクが噴射され、ノズル列26Mの各ノズル52からはマゼンタのインクが噴射され、ノズル列26Cの各ノズル52からはシアンのインクが噴射される。また、ノズル列28の各ノズル52からはクリアーインクが噴射される。なお、有色性のインクを噴射するヘッドとクリアーインクを噴射するヘッドとを別体とすることも可能である。
【0018】
図3は、印刷装置100の部分的なブロック図である。図3に示すように、印刷装置100は、制御装置60と前述の記録ヘッド24とを具備する。制御装置60は、例えば記憶回路(図示略)に記憶された制御プログラムを実行する演算処理装置であり、印刷装置100の各要素(例えば記録ヘッド24,移動機構14,用紙搬送機構16)を統括的に制御する。記録紙200に形成されるべき画像を指定する制御データ(画像データ)DPがホストコンピュータ等の外部装置(図示略)から制御装置60に供給される。
【0019】
図3に示すように、記録ヘッド24は、噴射部32と駆動部34とを具備する。噴射部32は、インクカートリッジ22から供給されるインクが充填される複数の圧力室54と、各圧力室54に対応する複数の圧電素子56とを含む。圧力室54のうち記録紙200に対向する壁面にノズル52(貫通孔)が形成される。
【0020】
駆動部34は、各圧電素子56に対応する複数の駆動回路36を含む。各駆動回路36は、制御装置60からの指示に応じた駆動信号の供給で所定の周期(以下「印字周期」という)毎に圧電素子56を駆動する。圧電素子56は、駆動回路36から供給される駆動信号に応じて振動する圧力振動子である。圧電素子56が圧力室54内のインクの圧力を変動させることで印字周期毎に圧力室54内のインクがノズル52から噴射されて記録紙200に着弾する。駆動回路36は、重量が相違する大インク滴および小インク滴の何れかを圧電素子56の駆動で選択的に各ノズル52から噴射させることが可能である。
【0021】
制御装置60は、有色性のインクが各ノズル列26(26K,26Y,26M,26C)のノズル52から制御データDPに応じて噴射されるように記録ヘッド24を制御する。具体的には、制御データDPで指定される画像が有色性のインクで記録紙200に形成されるように、制御装置60は、各ノズル52からのインクの噴射の要否や噴射量(大インク滴/小インク滴)を制御データDPに応じて決定したうえで各駆動回路36に指示する。
【0022】
また、有色性のインクによる画像の形成に並行して、制御装置60は、記録紙200からの粉塵の飛散を抑制するための所定のパターン(以下「粉塵抑制パターン」という)Pがクリアーインクにより記録紙200に形成されるように記録ヘッド24を制御する。具体的には、クリアーインクの小インク滴(すなわち、複数種の液滴のうち重量が最小の液滴)をノズル列28の各ノズル52から噴射することで粉塵抑制パターンPが形成される。粉塵抑制パターン(第1粉塵抑制パターン)Pは、以下に詳述する通り、制御データDPとは無関係に事前に選定される。
【0023】
図4は、記録紙200に形成される粉塵抑制パターンPの説明図である。図4に示すように、記録紙200の表面には、X方向およびY方向に行列状に配列する複数の画素領域G(GA,GB)が画定される。各画素領域Gは、1個の印字周期内で1個のノズルから噴射されるインクの着弾の目標となる領域である。X方向またはY方向に隣合う各画素領域Gは実際には相互に重複し得る。
【0024】
図4に示すように、粉塵抑制パターンPは、X方向およびY方向に反復して配置された複数の単位パターンUで構成される。各単位パターンUは、X方向およびY方向に行列状に配列する複数の画素領域Gを含む。1個の単位パターンUに対応する複数の画素領域Gは、記録ヘッド24から噴射されたクリアーインクが着弾する画素領域G(以下「噴射領域GA」という)と、クリアーインクが噴射されない画素領域G(以下「間引領域GB」という)とに区分される。すなわち、粉塵抑制パターンPは、クリアーインクを全部の画素領域Gに噴射するのではなく、所定の割合(例えば画素領域Gの3個おき)で間引いて噴射することで形成される。単位パターンUにおける各噴射領域GAおよび各間引領域GBの配置の態様(位置や個数)は複数の単位パターンUについて共通する。
【0025】
以上に説明した通り、第1実施形態では、記録紙200に対するクリアーインクの噴射で粉塵抑制パターンPが形成される。噴射領域GAに着弾したクリアーインクの液滴は、記録紙200の表面に付着した粉塵の一部または全部を被覆した状態で乾燥するから、記録紙200からの粉塵の飛散を防止することが可能である。したがって、各ノズル52の近傍や内部に対する粉塵の付着が防止され、粉塵の付着に起因したインクの噴射特性(噴射量,噴射速度,噴射方向)の変動やドット欠けが抑制されるという利点がある。また、粉塵の飛散が抑制されるから、粉塵をノズル42から除去するクリーニング処理の頻度を低下させる(ひいては消費電力を低減する)ことも可能である。なお、粉塵抑制パターンPは無色透明のクリアーインクで形成されるから、有色性のインクで記録紙200に形成される画像の視認性には影響しない。
【0026】
なお、記録紙200の粉塵の飛散を防止するという観点のみを考慮すると、記録紙200の全部の画素領域Gに対してクリアーインクを噴射する構成(いわゆるベタ塗り)も想定され得る。しかし、全部の画素領域Gにクリアーインクを噴射した場合、クリアーインクの消費量が増大するという問題や、クリアーインクの過剰な浸透により記録紙200に皺が発生するという問題がある。第1実施形態では、クリアーインクが着弾する噴射領域GAとクリアーインクが着弾しない間引領域GBとを配列した粉塵抑制パターンPが形成される(すなわちクリアーインクの噴射が間引かれる)。したがって、全部の画素領域Gにクリアーインクを噴射する場合と比較して、クリアーインクの消費量が削減されるとともに記録紙200の皺の発生を抑制できるという利点がある。また、第1実施形態ではクリアーインクが小インク滴として噴射されるから、クリアーインクを大インク滴として噴射して粉塵抑制パターンPを形成する場合と比較すると、クリアーインクの消費量が削減されるという効果は格別に顕著である。
【0027】
ところで、記録紙200には様々なサイズの粉塵が付着し得るが、記録ヘッド24の各ノズル52の直径(内径)φNと同等かこれを上回る直径の粉塵は、ノズル52の近傍や内部に付着した場合にインクの噴射特性の変動やドット欠けを特に発生させ易いという傾向がある。そこで、記録紙200から飛散し得る粉塵のうち特に外形寸法(直径)がノズル52の直径φN以上の粉塵が各噴射領域GAのクリアーインクで効果的に記録紙200の表面に拘束されるように、粉塵抑制パターンPにおける各噴射領域GAの態様(位置や個数)が選定される。
【0028】
図5には、粉塵抑制パターンPのうち幾つかの間引領域GBを挟んでX方向に相互に隣合う2個の噴射領域GA(GA1,GA2)と、各噴射領域GAに噴射されたクリアーインクで記録紙200に形成されるドットD(D1,D2)とが併記されている。噴射領域GA1に形成されるドットD1と噴射領域GA2に形成されるドットD2との間隔δがノズル52の直径φN(すなわち特に問題となる粉塵の最小径)を下回るように粉塵抑制パターンPの噴射領域GA1と噴射領域GA2との中心間距離Lが選定される。
【0029】
クリアーインクで形成される各ドットD(D1,D2)の直径をφDとすると、図5から理解されるように、噴射領域GA1と噴射領域GA2との中心間距離Lは、ドットDの直径φDとノズル52の直径φNとの合計値を下回る(L<φD+φN)ように選定される。なお、以上の説明では2個の噴射領域GA(GA1,GA2)に着目したが、粉塵抑制パターンPにおいてX方向に隣合う2個の噴射領域GAの任意の組合せについて以上の関係が成立する。また、粉塵抑制パターンPのうちY方向に隣合う2個の噴射領域GAの任意の組合せについても以上と同様の関係(L<φD+φN)が成立する。
【0030】
以上に説明した通り、第1実施形態では、クリアーインクで形成された各ドットDの間隔δがノズル52の直径φNを下回るように各噴射領域GAの中心間距離Lが選定されるから、各ドットDの間隙に位置する直径φN以上の粉塵は、必然的に少なくとも一部がドットDで被覆されて記録紙200の表面に拘束される。したがって、ノズル52に付着した場合にインクの噴射特性の変動やドット欠けを特に発生させ易い直径φN以上の粉塵の飛散を効果的に抑制できるという利点がある。
【0031】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0032】
図6は、記録紙200の平面図である。図6に示すように、記録紙200の表面は第1領域210と第2領域220とに区分される。第2領域220は、第1領域210を包囲するように記録紙200の周縁に沿う矩形枠状の領域である。記録紙200の周縁の領域(記録紙200の製造過程における裁断面の近傍の領域)、すなわち記録紙200の第2領域220には、粉塵が付着し易いという傾向がある。
【0033】
第1領域210には、図4の例示と同様の粉塵抑制パターンPがクリアーインクで形成される。他方、第2領域220には、図6に拡大して示す通り、粉塵抑制パターンPとは相違する粉塵抑制パターン(第2粉塵抑制パターン)Qがクリアーインクで形成される。粉塵抑制パターンQは、クリアーインクが噴射される噴射領域GAとクリアーインクが噴射されない間引領域GBとの配列である。図4および図6の対比から理解される通り、粉塵抑制パターンQにおける噴射領域GAの割合は、粉塵抑制パターンPにおける噴射領域GAの割合を上回る。すなわち、第2領域220の単位面積に対するクリアーインクの噴射回数(ドット密度)は、第1領域210の単位面積に対するクリアーインクの噴射回数を上回る。
【0034】
以上に説明した通り、第2実施形態では、粉塵抑制パターンPを上回るドット密度の粉塵抑制パターンQが第2領域220に形成されるから、第2領域220に特に付着し易い粉塵の飛散を有効に抑制できるという利点がある。なお、記録紙200の全面(第1領域210および第2領域220の双方)に高密度の粉塵抑制パターンQを形成した場合にはクリアーインクの消費量が増大するという問題がある。第2実施形態において、第1領域210には、粉塵抑制パターンQを下回るドット密度の粉塵抑制パターンPが形成されるから、記録紙200の全面に粉塵抑制パターンQを形成する場合と比較してクリアーインクの消費量を削減することが可能である。すなわち、第2実施形態によれば、記録紙200の粉塵の飛散を効率的に抑制するという効果とクリアーインクの消費量を削減するという効果とを両立することが可能である。
【0035】
<C:変形例>
以上の各形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
【0036】
(1)第1実施形態では、記録紙200の全面にわたって粉塵抑制パターンPを形成したが、記録紙200の一部の領域(以下「粉塵抑制領域」という)のみに粉塵抑制パターンPを形成することも可能である。同様に、第2実施形態では、粉塵抑制領域内の第1領域210に粉塵抑制パターンPを形成するとともに粉塵抑制領域内の第2領域220に粉塵抑制パターンQを形成することが可能である。何れの構成においても、粉塵抑制領域以外の領域にクリアーインクは噴射されない。なお、粉塵抑制領域は、例えば粉塵が付着し易い領域として事前に選定され得る。また、記録紙200の粉塵を検出する検出器(例えば撮像装置)を設置し、記録紙200のうち粉塵が検出された領域を粉塵抑制領域として制御装置60が選択したうえで粉塵抑制パターンや粉塵抑制パターンQを形成することも可能である。
【0037】
(2)記録紙200の粉塵の付着の度合に応じてクリアーインクの噴射を制御することも可能である。例えば、記録紙200の粉塵が多いほどクリアーインクの噴射量(ドットDの直径φD)を増加させる構成や、記録紙200の粉塵が多いほどクリアーインクのドット密度(単位面積あたりの噴射回数)を増加させる構成が採用され得る。粉塵を検出する方法は任意であるが、例えば記録紙200の表面を撮像装置で撮像した結果を制御装置60が解析して粉塵の付着の程度を特定することが可能である。
【0038】
(3)第2実施形態では、記録紙200のうち周縁に沿う枠状の領域を第2領域220としたが、第2領域220は任意に選定され得る。例えば、記録紙200のうちX方向またはY方向の縁辺に沿う直線状の領域を第2領域220として粉塵抑制パターンQを形成することも可能である。
【0039】
(4)有色性のインクの噴射とクリアーインクの噴射との先後は任意である。すなわち、有色性のインクによる画像の形成後にクリアーインクで粉塵抑制パターンPや粉塵抑制パターンQを形成する構成や、粉塵抑制パターンPおよび粉塵抑制パターンQの形成後に有色性のインクで画像を形成する構成が採用され得る。
【0040】
(5)粉塵抑制パターンPおよび粉塵抑制パターンQの形成に適用されるインクはクリアーインクに限定されない。例えば、白色の記録紙200に画像を形成する場合には、白色のインクで粉塵抑制パターンPや粉塵抑制パターンQを形成することも可能である。ただし、白色のインクを使用する場合には、有色性のインクによる画像の形成前に粉塵抑制パターンPや粉塵抑制パターンQを形成する必要がある。以上の例示から理解されるように、粉塵抑制パターンPおよび粉塵抑制パターンQの形成に使用されるインクは、記録紙200に対する形成後に観察者が視認し難い難視性のインクとして包括され、クリアーインクや記録紙200と同色のインクは難視性のインクの例示である。他方、制御データDPに応じた画像の形成に適用される有色性のインクは、観察者に視認され得る種類のインクとして定義され、典型的には染料や顔料等の着色材を含むインクである。
【0041】
(6)第2実施形態では、クリアーインクが噴射される噴射領域GAとクリアーインクが噴射されない間引領域GBとを配列した粉塵抑制パターンQを例示したが、第2領域220内の全部の画素領域Gにクリアーインクを噴射することで粉塵抑制パターンQを形成する構成(すなわち粉塵抑制パターンQが間引領域GBを含まない構成)も採用され得る。
【0042】
(7)以上の各形態では、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ12を移動させるシリアル型の印刷装置100を例示したが、記録紙200の幅方向の全域に対向するように複数のノズル52が配列されたライン型の印刷装置100にも本発明を適用することが可能である。ライン型の印刷装置100では記録ヘッド24が固定され、記録紙200を搬送させながら各ノズル52からインクの液滴を噴射することで記録紙200に画像が記録される。以上の説明から理解されるように、記録ヘッド24自体の可動/固定は本発明において不問である。
【0043】
(8)圧力室54内のインクの圧力を変化させる要素(圧力発生素子)の構成は以上の例示に限定されない。例えば、静電アクチュエーター等の振動体を利用することも可能である。また、本発明の圧力発生素子は、圧力室54に機械的な振動を付与する要素に限定されない。例えば、圧力室54の加熱で気泡を発生させて圧力室54内のインクの圧力を変化させる発熱素子(ヒーター)を圧力発生素子として利用することも可能である。すなわち、本発明の圧力発生素子は、圧力室54内のインクの圧力を変化させる要素として包括され、圧力を変化させる方法(ピエゾ方式/サーマル方式)や構成の如何は不問である。
【0044】
(9)以上の各形態における印刷装置100は、プロッターやファクシミリ装置,コピー機等の各種の画像形成装置にも採用され得る。
【符号の説明】
【0045】
100……印刷装置、12……キャリッジ、14……移動機構、16……用紙搬送機構、22……インクカートリッジ、24……記録ヘッド、26(26K,26Y,26M,26C),26……ノズル列、32……噴射部、34……駆動部、36……駆動回路、50……吐出面、52……ノズル、54……圧力室、56……圧電素子、60……制御装置、200……記録紙、G……画素領域、GA……噴射領域、GB……間引領域、210……第1領域、220……第2領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色性の第1液体の液滴を着弾対象に噴射する第1ノズルと難視性の第2液体の液滴を前記着弾対象に噴射する第2ノズルとを有する液体噴射部と、
前記着弾対象に形成すべき画像を指定する制御データに応じて前記液体噴射部に前記第1液体を噴射させる一方、前記第2液体が噴射される噴射領域と前記第2液体が噴射されない間引領域とを含む単位パターンを繰返し配置した第1粉塵抑制パターンが前記着弾対象に形成されるように前記液体噴射部に前記第2液体を噴射させる制御手段と
を具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
相互に隣合う2個の前記噴射領域間の中心間距離は、前記着弾対象に着弾した前記第2液体で形成されるドットの直径と前記ノズルの直径との合計値を下回る
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射部は、重量が相違する複数種の液滴の何れかを前記ノズルから噴射し、
前記制御手段は、前記複数種の液滴のうち重量が最小の液滴として前記液体噴射部に前記第2液体を噴射させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記着弾対象の第1領域に対して前記第1粉塵抑制パターンが形成されるとともに前記第1領域とは相違する第2領域に第2粉塵抑制パターンが形成されるように前記液体噴射部に前記第2液体を噴射させ、
前記第2領域の単位面積に対する前記第2液体の噴射回数は、前記第1領域の単位面積に対する前記第2液体の噴射回数を上回る
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記第2領域は、前記着弾対象の周縁に沿う領域である
ことを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
有色性の第1液体と難視性の第2液体とを複数のノズルから着弾対象に噴射する液体噴射部を具備する液体噴射装置の制御方法であって、
前記着弾対象に形成すべき画像を指定する制御データに応じて前記液体噴射部に前記第1液体を噴射させる一方、前記第2液体が噴射される噴射領域と前記第2液体が噴射されない間引領域とを含む単位パターンを繰返し配置した第1粉塵抑制パターンが前記着弾対象に形成されるように前記液体噴射部に前記第2液体を噴射させる
ことを特徴とする液体噴射装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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