説明

液体攪拌機

【課題】液体を混合する場合、特に混ざり難い性質を有する液体を混合する場合に、攪拌効率を向上させ、混合時間を短縮できる液体攪拌機を提供する。
【解決手段】液体攪拌機1は、支持部20の回転軸心Oと直交する面において、外羽根部30の長手方向端部30A及び長手方向端部30Bにおいて、回転軸心Oから最も遠い点をそれぞれ端点A、端点Bとし、回転軸心Oから最も近い点をそれぞれ点a、点bとし、端点A及び端点Bを通る直線を直線Mとし、点a及び点bを通る直線を直線mとし、回転軸心Oを通り、直線Mと直交する直線を直線Lとし、直線Mと直線Lとの交点を交点Tとすると、回転軸心Oは、直線Mと直線mとの間の領域Mmから外れた位置にあり、端点A及び端点Bの少なくとも一方は、外羽根部30の回転方向R1において、交点Tよりも後ろに位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を混合する場合に用いられる液体攪拌機に関する。特に、混合し難い液体を混合する場合に用いられる。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素を製造する方法として、炭素源としてのフェノールと、珪素源としてのエチルシリケートとを混合した液体を乾燥させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。フェノールとエチルシリケートとを混合させるため、図1(a)及び図1(b)に記載された羽根部130を有する液体攪拌機101が用いられていた。L字状の羽根部130は、回転方向に延びる支持部120の下端部側方に取り付けられている。羽根部130が取り付けられた支持部120が回転することによって、フェノールとエチルシリケートとを含む液体を混合していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2009−184897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体攪拌機101では、必ずしも効率よく混合できているわけではなかった。液体攪拌機101では、羽根部130の回転に伴って、次第に液体も一緒に回転してしまう。羽根部130と液体とが同じ速度で回転することにより、液体が羽根部130と連れ回る現象が起こる。この連れ回りによって、液体がうまく混合されず、液体を混合するのに時間がかかっていた。特に、フェノールとエチルシリケートとは、混ざり難いため、通常の液体を混合する場合に比べ時間がかかっていた。これは、フェノール及びエチルシリケートに、触媒としてのマレイン酸を加えた場合も同様であった。
【0005】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、液体を混合する場合、特に混ざり難い液体を混合する場合に、攪拌効率を向上させ、混合時間を短縮できる液体攪拌機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。本発明の第1の特徴は、板状の外羽根部(外羽根部30)と外羽根部を支持する支持部(支持部20)とを備え、支持部を回転させることにより外羽根部が液体を攪拌する液体攪拌機(液体攪拌機1)であって、支持部の回転軸心(回転軸心O)と直交する面において、外羽根部の長手方向における各端部(長手方向端部30A、長手方向端部30B)において、回転軸心から最も遠い点をそれぞれ点A(端点A)、点B(端点B)とし、回転軸心から最も近い点をそれぞれ点a(端点a)、点b(端点b)とし、点A及び点Bを通る直線を直線M(直線M)とし、点a及び点bを通る直線を直線m(直線m)とし、回転軸心を通り、直線Mと直交する直線を直線L(直線L)とし、直線Mと直線Lとの交点を交点T(交点T)とすると、回転軸心は、直線Mと直線mとの間の領域(領域Mm)から外れた位置にあり、点A及び点Bの少なくとも一方は、外羽根部の回転方向(回転方向R1)において、交点Tよりも後ろに位置することを要旨とする。
【0007】
本発明の第1の特徴によれば、回転軸心は、直線Mと直線mとの間の領域から外れた位置にあり、点A及び点Bの少なくとも一方は、外羽根部の回転方向において、交点Tよりも後ろに位置する。これによって、点B又は交点Tと点Aとを結ぶ外羽根部の面は、回転方向に対して、液体を径方向外側に押し出す傾きを有する。このため、回転に伴った液体の連れ回りを抑制でき、液体を効率よく攪拌することができる。この結果、液体の混合時間を短縮することができる。なお、径方向外側とは、回転軸心から離れる方向をいう。
【0008】
本発明の他の特徴は、支持部は、外羽根部と異なる内羽根部を支持しており、回転軸心と直交する面において、内羽根部の長手方向における各端部において、回転軸心から最も遠い点をそれぞれ点C、点Dとし、回転軸心から最も近い点をそれぞれ点c、点dとし、点C及び点Dを通る直線を直線Pとし、点c及び点dを通る直線を直線pとし、回転軸心を通り、直線pと直交する直線を直線Qとし、直線pと直線Qとの交点を交点Sとすると、回転軸心は、直線Pと直線pとの間の領域から外れた位置にあり、点c及び点dの少なくとも一方は、内羽根部の回転方向において、交点Sよりも前に位置することを要旨とする。
【0009】
本発明の他の特徴は、点A及び点Bの両方とも、外羽根部の回転方向において、交点Tよりも後ろに位置することを要旨とする。
【0010】
本発明の他の特徴は、点c及び点dの両方とも、内羽根部の回転方向において、交点Sよりも前に位置することを要旨とする。
【0011】
本発明の他の特徴は、液体は、フェノール及びエチルシリケートを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る液体攪拌機によれば、液体を混合する場合、特に混ざり難い液体を混合する場合に、攪拌効率を向上させ、混合時間を短縮できる液体攪拌機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、従来の液体攪拌機101の側面図である。図1(b)は、従来の液体攪拌機101の下面図である。
【図2】図2(a)は、本実施形態に係る液体攪拌機1の側面図である。図2(b)は、本実施形態に係る液体攪拌機1の下面図である。
【図3】図3は、図2(a)のE−E断面における回転軸心Oと外羽根部30及び内羽根部40との関係を模式的に表した図である。
【図4】図4(a)は、攪拌時の本実施形態に係る液体攪拌機1を説明するための説明図である。図4(b)は、図4(a)のH−H断面における回転軸心Oと外羽根部30及び内羽根部40との関係を模式的に表した図である。
【図5】図5は、その他の実施形態に係る液体攪拌機1Aの下面図である。
【図6】図6は、その他の実施形態に係る液体攪拌機1Bの断面における回転軸心Oと外羽根部30及び内羽根部40との関係を模式的に表した図である。
【図7】図7は、その他の実施形態に係る液体攪拌機1Cの断面における回転軸心Oと外羽根部30i及び外羽根部30iiとの関係を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る液体攪拌機1の一例について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)液体攪拌機1の構成、(2)液体攪拌機1の攪拌、(3)比較評価、(4)その他の実施形態、(5)作用・効果、について説明する。
【0015】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
(1)液体攪拌機1の構成
本実施形態に係る液体攪拌機1の構成について、図2(a)、図2(b)及び図3を参照しながら説明する。図2(a)は、本実施形態に係る液体攪拌機1の側面図である。図2(b)は、本実施形態に係る液体攪拌機1の下面図である。図2(b)において、本体部10は省略している。図3は、図2(a)のE−E断面における回転軸心Oと外羽根部30及び内羽根部40との関係を模式的に表した図である。
【0017】
図2(a)及び図2(b)に示されるように、液体攪拌機1は、本体部10と支持部20と外羽根部30と内羽根部40とを備える。
【0018】
本体部10は、支持部20と連結されている。本体部10は、支持部20を回転させるためのものであり、本体部10の内部(不図示)は、例えば、ギアといった回転機構を備えている。この回転機構を駆動させることによって、本体部10は、支持部20を回転させる。
【0019】
支持部20は、支軸部22と連結部25とからなる。支軸部22は、円柱状の構造をしている。支軸部22の上端は、本体部10と連結されている。支軸部22の下端は、連結部25と連結されている。連結部25は、支軸部22と外羽根部30と内羽根部40と連結されている。支軸部22の端部は、外羽根部30及び内羽根部40の上面と連結されている。これにより、支持部20は、外羽根部30及び内羽根部40を支持している。回転軸心Oは、支軸部22の回転軸心と一致している。
【0020】
外羽根部30及び内羽根部40は、板状の部材である。図2(b)に示されるように、外羽根部30は、回転軸心Oを中心とした径方向の外側に面している第一外側面32及び回転軸心Oを中心とした径方向の内側に面している第一内側面34を有している。内羽根部40は、回転軸心Oを中心とした径方向の外側に面している第二外側面42及び回転軸心Oを中心とした径方向の内側に面している第二内側面44を有している。外羽根部30及び内羽根部40は、混合する液体と反応しないものであれば、いずれでも良い。
【0021】
図3に示されるように、回転軸心Oと直交する面において、外羽根部30は、長手方向における端部である長手方向端部30A及び長手方向端部30Bを有している。長手方向端部30Aにおいて、回転軸心Oから最も遠い点が端点Aである。長手方向端部30Aにおいて、回転軸心Oから最も近い点が端点aである。長手方向端部30Bにおいて、回転軸心Oから最も遠い点が端点Bである。長手方向端部30Bにおいて、回転軸心Oから最も近い点が端点bである。端点A及び端点Bを通る直線が直線Mである。端点a及び端点bを通る直線が直線mである。回転軸心Oを通り、直線Mと直交する直線が直線Lである。直線Lと直線Mとの交点が交点Tである。回転軸心Oを通り、端点Aと端点Bとの間を通る直線が直線Nである。直線Nと第一外側面32との交点が交点Kである。交点Kにおける第一外側面32と接する接線と直線Nとのなす角度が角度θである。すなわち、直線Mと直線Nとがなす角度が角度θである。
【0022】
回転軸心Oは、直線Mと直線mとの間の領域である領域Mmから外れた位置にある。すなわち、回転軸心Oは、領域Mm上になく、領域Mmから外れた位置にある。このため、角度θは、0度よりも大きい角度となる。
【0023】
外羽根部30の回転方向R1において、端点A及び端点Bの両方とも交点Tよりも後ろに位置している。このため、角度θは、90度よりも小さい角度となる。外羽根部30の回転方向R1において、端点Aは、端点Bよりも後ろに位置している。
【0024】
図3に示されるように、回転軸心Oと直交する面において、外羽根部30と異なる内羽根部40は、長手方向における端部である長手方向端部40C及び長手方向端部40Dを有している。長手方向端部40Cにおいて、回転軸心Oから最も遠い点が端点Cである。長手方向端部40Cにおいて、回転軸心Oから最も近い点が端点cである。長手方向端部40Dにおいて、回転軸心Oから最も遠い点が端点Dである。長手方向端部40Dにおいて、回転軸心Oから最も近い点が端点dである。端点C及び端点Dを通る直線が直線Pである。端点c及び端点dを通る直線が直線pである。回転軸心Oを通り、直線pと直交する直線が直線lである。直線pと直線lとの交点が交点Sである。回転軸心Oを通り、端点cと端点dとの間を通る直線が直線nである。直線nと第二内側面44との交点が交点kである。交点kにおける第二内側面44と接する接線と直線nとのなす角度が角度φである。すなわち、直線pと直線nとがなす角度が角度φである。
【0025】
回転軸心Oは、直線Pと直線pとの間の領域である領域Ppから外れた位置にある。すなわち、回転軸心Oは、領域Pp上になく、領域Ppから外れた位置にある。このため、角度φは、0度よりも大きい角度となる。
【0026】
内羽根部40の回転方向R2において、端点c及び端点dの両方とも交点Sよりも後ろに位置している。このため、角度φは、90度よりも小さい角度となる。内羽根部40の回転方向R2において、端点cは、端点dよりも前に位置している。
【0027】
(2)液体攪拌機1の攪拌
本実施形態に係る液体攪拌機1の攪拌について、図4(a)及び図4(b)を参照しながら説明する。図4(a)は、攪拌時の本実施形態に係る液体攪拌機1を説明するための説明図である。図4(b)は、図4(b)は、図4(a)のH−H断面における回転軸心Oと外羽根部30及び内羽根部40との関係を模式的に表した図である。
【0028】
図4(a)に示されるように、液体攪拌機1は、液体60を入れる容器50を備えている。支軸部22は、本体部10(不図示)によって、G方向に回転している。容器50は、混合する液体60の量や使用環境によって、適宜選択される。容器50は、円筒形状をしている。容器50は、混合する液体60と反応しない材料であれば良い。容器50には、攪拌により混合される液体60が入れられる。液体60には、例えば、フェノール、エチルシリケートを含む液体が用いられる。この場合、液体60には、さらにマレイン酸を含んでいても良い。
【0029】
支軸部22がG方向に回転している時、図4(b)に示されるように、外羽根部30は、回転方向R1に向かって回転している。液体攪拌機1において、回転軸心Oは、領域Mmから外れた位置にあり、外羽根部30の回転方向R1において、端点A及び端点Bの両方とも交点Tよりも後ろに位置している。このため、角度θは、0度より大きく、90度よりも小さい角度となる。すなわち、第一外側面32と回転方向R1とは、一定の傾きを有する。このため、交点Kにおいて、液体60には、径方向外側に押し出す力F1が働く。従って、回転に伴って交点Kと衝突した液体60は、径方向外側へ押し出される。このため、液体60が連れ回るのを抑制することができ、液体を効率よく攪拌することができる。なお、径方向外側とは、回転軸心Oから離れる方向をいう。
【0030】
支軸部22がG方向に回転している時、図4(b)に示されるように、内羽根部40は、回転方向R2に向かって回転している。液体攪拌機1において、回転軸心Oは、領域Ppから外れた位置にあり、内羽根部40の回転方向R2において、端点c及び端点dの両方とも交点Sよりも後ろに位置している。このため、角度φは、0度より大きく、90度よりも小さい角度となる。すなわち、第二内側面44と回転方向R2とは、一定の傾きを有する。このため、交点kにおいて、液体60には、径方向内側に押し出す力F2が働く。従って、回転に伴って交点kと衝突した液体60は、径方向内側へ押し出される。このため、液体60が連れ回るのを抑制することができ、液体を効率よく攪拌することができる。なお、径方向内側とは、回転軸心Oに向かう方向をいう。
【0031】
液体60が連れ回るのを効果的に抑制するため、角度θが所定の範囲となるように、外羽根部30が支持部20に取り付けられているのが好ましい。角度θを一定以上大きくすることにより、液体60を径方向外側へ押し出す力F1を大きくすることができる。また、角度θを一定以下とすることにより、端点Aから回転軸心Oまでの距離と、交点Tよりも端点Aに近い端点Bから回転軸心Oまでの距離との差である距離yが大きくなる。すなわち、回転方向外側へ押し出される液体60の量が充分多くなる。このため、液体60が連れ回るのをより効果的に抑制することができる。
【0032】
液体60が連れ回るのを効果的に抑制するため、角度φが所定の範囲となるように、内羽根部40が支持部20に取り付けられているのが好ましい。角度φを一定以上大きくすることにより、液体60を径方向内側へ押し出す力F2を大きくすることができる。また、角度φを一定以下とすることにより、端点cから回転軸心Oまでの距離と、交点Sよりも端点cに近い端点dから回転軸心Oまでの距離との差である距離zが大きくなる。すなわち、回転方向内側へ押し出される液体60の量が充分多くなる。このため、液体60が連れ回るのをより効果的に抑制することができる。
【0033】
図4(b)に示されるように、容器50から端点Aまでの最短距離は、距離xである。距離xが短いほど、力F2によって押し出された液体60は、容器50の側壁へと勢いよく衝突する。この衝突により、混ざり難い性質を有する液体60が細かく打ち砕かれるため、さらに効率よく液体60を攪拌することができる。液体60は、容器50の側壁へと勢いよく衝突するため、図4(a)に示されるように、容器50の側壁にせり上がる。
【0034】
(3)比較評価
本発明の効果を確かめるため、図4に示された液体攪拌機1(実施例)、及び、図1に示された液体攪拌機101(従来例)を用いて、攪拌効率を比較する評価を行った。液体60には、フェノール、エチルシリケート、及びマレイン酸を用いた。
【0035】
液体攪拌機1では、100回/分の速度で外羽根部30が回転すれば、フェノール及びエチルシリケートが反応した固形生成物が得られたのに対し、液体攪拌機101では、200回/分の速度で羽根部130を回転させなければ、固形生成物が得られなかった。この結果から、実施例の液体攪拌機1では、攪拌効率が向上していることが確認できた。液体攪拌機1では、回転速度が小さくても反応が進むため、同一の回転速度で回転させた場合、混合時間を従来よりも短縮できることがわかる。
【0036】
(4)その他の実施形態
上述したように、本実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0037】
液体攪拌機1は、外羽根部30及び内羽根部40を備えていたが、必ずしもそうする必要はない。すなわち、液体攪拌機は、外羽根部30のみを備えていても良い。液体攪拌機は、外羽根部30を少なくとも1つ備えていれば良い。例えば、図5に示されている液体攪拌機1Aのように、外羽根部30を3つ備えていても良い。この場合、各外羽根部30が、それぞれ回転方向R11、回転方向R12、回転方向R13となるように回転させる。
【0038】
液体攪拌機1は、端点A及び端点Bの両方とも交点Tよりも後ろに位置していたが、必ずしも両方とも交点Tよりも後ろに位置している必要はない。例えば、図6に示されているように、外羽根部30の回転方向R1において、端点Bは、交点Tよりも後ろに位置しても良い。この場合、直線Nは、端点Aと交点Tとの間を通る直線となる。このため、角度θの範囲は、0度より大きく、90度より小さい角度となる。
【0039】
液体攪拌機1は、端点c及び端点dの両方とも交点Sよりも後ろに位置していたが、必ずしも両方とも交点Sよりも後ろに位置している必要はない。例えば、図6に示されている液体攪拌機1Bように、内羽根部40の回転方向R2において、端点dは、交点Sよりも後ろに位置しても良い。この場合、直線nは、端点cと交点Sとの間を通る直線となる。
【0040】
液体攪拌機1は、直線M上に第一外側面32があるが、直線M上に第一外側面32がある必要はない。すなわち、外羽根部30は、板状であれば、例えば、湾曲していても良い。図7に示されている液体攪拌機1Cにおいて、外羽根部30iにおいて、第一外側面32i及び第一内側面34iは、径方向内側に向かって湾曲している。外羽根部30iiにおいて、第一外側面32ii及び第一内側面34iiは、径方向外側に向かって湾曲している。この場合であっても、交点K1及び交点K2において、液体60には、径方向外側に押し出す力Fi及びFiiが働く。なお、内羽根部についても同様に、板状であれば、湾曲していても良い。
【0041】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0042】
(5)作用・効果
液体攪拌機1において、回転軸心Oは、領域Mmから外れた位置にあり、外羽根部30の回転方向R1において、端点A(及び端点B)は、交点Tよりも後ろに位置している。このため、角度θは、0度より大きく、90度よりも小さい角度となる。すなわち、第一外側面32は、回転方向R1に対して、液体60を径方向外側に押し出す傾きを有する。このため、交点Kにおいて、液体60には、径方向外側に押し出す力F1が働く。従って、回転に伴って交点Kと衝突した液体60は、径方向外側へ押し出される。このため、液体60が連れ回るのを抑制することができ、液体を効率よく攪拌することができる。この結果、液体60の混合時間を短縮することができる。
【0043】
液体攪拌機1において、回転軸心Oは、領域Ppから外れた位置にあり、内羽根部40の回転方向R2において、端点c(及び端点d)は、交点Sよりも後ろに位置している。このため、角度φは、0度より大きく、90度よりも小さい角度となる。すなわち、第二内側面44は、回転方向R2に対して、液体60を径方向内側に押し出す傾きを有する。このため、交点kにおいて、液体60には、径方向内側に押し出す力F2が働く。従って、回転に伴って交点kと衝突した液体60は、径方向内側へ押し出される。このため、液体60が連れ回るのを抑制することができ、液体を効率よく攪拌することができる。この結果、液体60の混合時間を短縮することができる。
【0044】
また、回転方向R1及び回転方向R2を逆方向にした場合、外羽根部30は、内羽根部40となり、内羽根部40は、外羽根部30となる。すなわち、液体攪拌機1は、回転方向によらず、液体60を効率よく攪拌することができる。
【0045】
液体攪拌機1において、端点A及び端点Bの両方とも、外羽根部30の回転方向R1において、交点Tよりも後ろに位置する。端点A及び端点Bのいずれかが交点Tよりも前に位置している場合、交点Tよりも前に位置している外羽根部30部分は、内羽根部40と同様の構成となる。従って、外羽根部30には、力F1を働かせるためにかかる負荷と、力F2を働かせるためにかかる負荷とが加わる。混合して得られる生成物が固形状となる液体60(例えば、フェノール及びエチルシリケートを含む液体60)の場合、混合が進むにつれて、外羽根部30は粘性の高い固形生成物も一緒に混合する必要がある。交点Tよりも前に位置している第一外側面32部分は、力F1を働かせるのに寄与していない。このため、交点Tよりも前に位置している第一外側面32部分をなくすことによって、外羽根部30にかかる負荷を抑制し、効率よく攪拌することができる。
【0046】
液体攪拌機1において、端点c及び端点dの両方とも、内羽根部40の回転方向R2において、交点Sよりも前に位置する。端点c及び端点dのいずれかが交点Tよりも後ろに位置している場合、交点Sよりも後ろに位置している内羽根部40部分は、外羽根部30と同様の構成となる。従って、内羽根部40には、力F1を働かせるためにかかる負荷と、力F2を働かせるためにかかる負荷とが加わる。交点Sよりも後ろに位置している第二内側面44部分は、力F2を働かせるのに寄与していない。このため、上述の外羽根部30と同様、交点Sよりも後ろに位置している第二内側面44部分をなくすことによって、内羽根部40にかかる負荷を抑制し、効率よく攪拌することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…液体攪拌機、10…本体部、20…支持部、22…支軸部、25…連結部、30…外羽根部、30A,30B…外羽根部の長手方向端部、32…第一外側面、34…第一内側面、40…内羽根部、40A,40B…内羽根部の長手方向端部、42…第二外側面、44…第二内側面、50…容器、60…液体、101…従来の液体攪拌機、110…従来の本体部、120…従来の支持部、130…従来の羽根部、O…回転軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の外羽根部と前記外羽根部を支持する支持部とを備え、前記支持部を回転させることにより前記外羽根部が液体を攪拌する液体攪拌機であって、
前記支持部の回転軸心と直交する面において、
前記外羽根部の長手方向における各端部において、前記回転軸心から最も遠い点をそれぞれ点A、点Bとし、前記回転軸心から最も近い点をそれぞれ点a、点bとし、前記点A及び前記点Bを通る直線を直線Mとし、前記点a及び前記点bを通る直線を直線mとし、前記回転軸心を通り、前記直線Mと直交する直線を直線Lとし、前記直線Mと前記直線Lとの交点を交点Tとすると、
前記回転軸心は、前記直線Mと前記直線mとの間の領域から外れた位置にあり、
前記点A及び前記点Bの少なくとも一方は、前記外羽根部の回転方向において、前記交点Tよりも後ろに位置する液体攪拌機。
【請求項2】
前記支持部は、前記外羽根部と異なる内羽根部を支持しており、
前記回転軸心と直交する面において、
前記内羽根部の長手方向における各端部において、前記回転軸心から最も遠い点をそれぞれ点C、点Dとし、前記回転軸心から最も近い点をそれぞれ点c、点dとし、前記点C及び前記点Dを通る直線を直線Pとし、前記点c及び前記点dを通る直線を直線pとし、前記回転軸心を通り、前記直線pと直交する直線を直線Qとし、前記直線pと前記直線Qとの交点を交点Sとすると、
前記回転軸心は、前記直線Pと前記直線pとの間の領域から外れた位置にあり、
前記点c及び前記点dの少なくとも一方は、前記内羽根部の回転方向において、前記交点Sよりも前に位置する請求項1に記載の液体攪拌機。
【請求項3】
前記点A及び前記点Bの両方とも、前記外羽根部の回転方向において、前記交点Tよりも後ろに位置する請求項1又は2に記載の液体攪拌機。
【請求項4】
前記点c及び前記点dの両方とも、前記内羽根部の回転方向において、前記交点Sよりも前に位置する請求項2又は3に記載の液体攪拌機。
【請求項5】
前記液体は、フェノール及びエチルシリケートを含む請求項1から4の何れか1項に記載の液体攪拌機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−110529(P2011−110529A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271697(P2009−271697)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】