説明

液体注出ポンプ

【目的】 吐出弁の弾性板による圧接シール及び外気導入用透孔の環状ピストンによるシールを行える如く構成した押し下げヘッド式のポンプであって、容器体内圧力の上昇があっても吐出弁を押し開いての液の漏出がない優れたポンプを提案する。
【構成】 作動部材4の最上昇状態に於いてステム19内面下部に周設した係止突条23が吸い込み弁体31上部外周に周設した係止突条33下面に密接係止されるとともに、環状ピストン18上端縁が、シリンダ2上端内側に嵌合させた螺筒部15とシリンダ内面との隙間開口を閉塞して、その隙間に通じる外気導入用透孔10を閉塞する如く構成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液体注出ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】液体注出ポンプとして、例えば図3に示す如き押し下げヘッド式のものが知られている。このポンプ1Aは、容器体12内に垂下するシリンダ50を、容器体口頚部13外周に螺着させた装着キャップ51により固定し、また、シリンダ内に上下摺動可能に嵌合させた環状ピストン52を下端外周より突設したステム53の上端にノズル54付きの押し下げヘッド55を固定した作動部材56を設けて、この作動部材をコイルスプリング57により常時上方へ付勢させている。コイルスプリングはシリンダ内下部に周方向複数突設した係止板部58上面と作動部材下面との間に張架させている。
【0003】また、シリンダ上端部内面に嵌合させた螺筒部59により作動部材を押し下げ状態で螺着可能に構成している。この螺筒部59により、シリンダ上部に穿設した外気導入用の透孔60を、該透孔とシリンダ内の流通が可能に隙間をあけ且つ下端縁を開口して被覆している。
【0004】また、シリンダ内下端部に設けた弁座61上を開閉可能に閉塞する吸い込み弁体62を設けて吸い込み弁63を形成している。上記吸い込み弁体62は、下部外周より上記各係止板部58間を上下動する係止突起64を突設した縦長棒状をなしている。また、ステム53内上部には弁座65を突設し、該弁座上に圧接する吐出弁体66を弾性板67を介して一体に突設し、吐出弁68を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記ポンプを装着した容器を、作動部材56の押し下げ係止状態を解除した状態の時に誤って倒した場合に、シリンダ50内の液は吐出弁68により外部への漏出を防止し、また、容器体内の液は環状ピストン52により外部への漏出を防止できる優れたものである。
【0006】しかしながら、上記ピストンによるシール及び吐出弁によるシールにより容器体内が密閉状態となっているため、外気温度の上昇等により容器体内の圧が上昇すると、液が吐出弁を押し開いて外部へ漏出するという不都合が生じる場合があった。この様を不都合を解消するために、吐出弁体を押圧させている弾性板の弾発力を極めて大きいものとしておけば解消できるが、反面、液注出の際の弁の開き具合が悪くなる。そこで、本発明は、この様な容器体内の圧力の上昇があっても吐出弁からの液の漏出を防止出来るポンプを提案するものである。
【0007】また、その様な効果を得るためには、各シール部分のシール性が良いことが望まれるが、本請求項2発明では、ステムを特殊構成とすることにより、ステムの強度を維持しつつ各部の良好なシール性を得られ、ひいては上記効果をより発揮できる優れた液体注出ポンプを提案するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本請求項1発明のポンプを上記課題を解決するため、容器体内へ垂下する下端開口部に弁座6を形成するとともに、該弁座上方の内周下端部に周方向複数の係止板部11を突設し、且つ上部に外気導入用の透孔10を穿設してなるシリンダ2と、容器体口頚部13外周に周壁14を嵌合させて装着するとともに、上記シリンダ上部を容器体に固定する装着キャップ3と、上記シリンダ上端内面に嵌合させるとともに、上記透孔とシリンダ内との連通が可能に下端縁を開口して上記透孔を被覆する螺筒部15と、上記シリンダ内面に嵌合させた環状ピストン18を下部外周より突設して上下動可能に設けたステム19上端にノズル20付き押し下げヘッド21を固定させてなる作動部材4と、上記ステム内上部に設けた弁座22上に圧接する吐出弁体25をステム内面より突設した複数の弾性板24を介して一体に突設して構成した吐出弁26と、上記作動部材下面と上記各係止板部上面との間に介在させて作動部材を常時上方へ付勢させるコイルスプリング30と、上記各係止板部間を上下動する複数の係止突起32を外周下部より突設する縦長棒状をなすとともに、上記弁座6上に下面を密接する状態から上記各係止突起上面がコイルスプリング下面に当接係止される状態までの間を上下動可能に設けた吸い込み弁体31とを備え、上記作動部材の最上昇状態に於いてステム内面下部に周設した係止突条23が吸い込み弁体上部外周に周設した係止突条33下面に密接係止されるとともに、上記環状ピストン上端縁が上記螺筒部とシリンダ内面との隙間開口を閉塞する如く構成したことを特徴とする液体注出ポンプとして構成した。
【0009】また、請求項2発明のポンプは、上記ステム19を内筒19a 及び外筒19b の二重積層構造とするとともに、内筒上端を外筒上端より下方に位置させてその上面を上記弁座22に形成し、内筒内周下部より上記係止突条23を一体に突設するとともに、外筒外周下部より上記環状ピストン18を一体に突設させてなる請求項1記載の液体注出ポンプとして構成した。
【0010】
【作用】作動部材4がコイルスプリング30により最上昇位置に押し上げられた際に、ステム19の係止突条23が吸い込み弁体31の係止突条33下面に密接係止され、また、吐出弁体25は各弾性板24により弁座22上に圧接されて、二重シール状態にあるため、外気温度の上昇等により装着した容器体内圧が上昇しても、吐出弁26を開いての液の漏出を防止する。
【0011】また、同時に環状ピストン18上端縁が螺筒部15下端縁とシリンダ内面との隙間下端開口を閉塞して内圧上昇による外気導入用透孔10から容器体内の液が漏出するのを防止する。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施例を示すもので、本発明液体注出ポンプ1は、シリンダ2と、装着キャップ3と、作動部材4とを主要部材として構成している。
【0013】シリンダ2は筒状をなし、内向きフランジ状の底壁5内周縁より下方へ傾斜下降するテーパ状をなす吸い込み弁用の弁座6を延設し、また、弁座6内周縁部下面より嵌合筒部7を垂設している。この嵌合筒部7には吸い上げパイプ8の上端を嵌着固定させている。また、周壁9上端部を拡径してその拡径部分下端部に外気導入用の透孔10を穿設するとともに、周壁9内周下端部には周方向複数の係止板部11を突設している。
【0014】装着キャップ3は、容器体12の口頚部13外周に周壁14を嵌合させて容器体に装着するとともに、シリンダ2上部を容器体に固定させるためのものであり、本実施例では、作動部材4の押し下げ状態で螺着係止させるための螺筒部15を一体に形成している。螺筒部15は、シリンダ2内面上端に嵌合させるとともに、上記透孔10とシリンダ内との連通が可能に下端縁を開口して上記透孔10を被覆している。
【0015】本実施例に於いて装着キャップ3は、周壁14上端縁より内向きフランジ状の頂壁16を延設し、頂壁16内周縁部から螺筒部15を垂設している。上記頂壁16は内側半部が隆起しており、その隆起部の垂直壁部分内面をシリンダの上記拡径部分外周に凹凸係合手段を介して係合させるとともに、螺筒部15外面を上記拡径部分内面に嵌合させてシリンダに固定させ、更に、周壁14内面を容器体口頚部13外周に凹凸係合等の手段で嵌合させている。尚、図中17は容器体口頚部内周に液密に嵌合させるシール筒部を示す。
【0016】また、螺筒部15は上半部内面に螺条が周設されており、下半部を外側が短い二重筒状に形成し、外側筒外面及び上半部外面をシリンダ2の上記拡径部分内面に液密に嵌着させるとともに、内側筒を拡径部分下方の周壁9小径部分まで垂下させ、シリンダ周壁9と隙間をあけて上記透孔10とシリンダ2内とが連通する如く構成している。従って、液の注出により容器体内上部が負圧化した場合にこの隙間から透孔10を介して外気が導入される如く構成している。
【0017】作動部材4は、シリンダ2の周壁内面に上下摺動可能に嵌合させた環状ピストン18を下端外周より突設して上下動可能に設けたステム19を有するとともに、ステム19上端に固定したノズル20付き押し下げヘッド21を装着キャップ3上方へ上下動可能に突出させている。
【0018】上記ピストン18は垂直環状基板の上下に上向きのスカート状部及び下向きのスカート状部を突設して、各スカート状部外周縁部をシリンダ内面に液密摺動可能に圧接させている。また、ステム19は、内筒19a 及び外筒19b の二重積層構造とするとともに、内筒19a 上端を外筒19b 上端より下方に位置させてその上面を弁座22に形成し、内筒19a 内周下部より係止突条23を一体に突周設するとともに、外筒19b 外周下部より上記環状ピストン18を一体に突設させている。
【0019】また、外筒19b の内筒19a 上方突出部分内面からは斜めに下降する棒状をなす弾性板24を周方向複数突設するとともに、各弾性板24下端を吐出弁体25上面に一体に連結し、この吐出弁体25下面周縁を上記弁座22上に圧接する如く構成して吐出弁26を形成している。
【0020】また、押し下げヘッド21は、ステム19外周上端部に下部内面を嵌着固定させた縦筒27を頂壁28裏面中央部より垂設させるとともに、頂壁周縁部からは周壁29を垂下させ、また、縦筒27上端部前面に基端を開口したノズル20を周壁29前部を貫通して前方へ突出させている。また、縦筒27の下部外周には螺条を周設して、作動部材4の押し下げ状態で、螺筒部15の上記螺条と螺合させて押し下げ状態での係止を可能に構成している。
【0021】上記の如き作動部材4は、その下面と各係止板部11上面との間に介在させてコイルスプリング30により常時上方へ付勢されており、最上昇位置に押し上げられた作動部材4の環状ピストン18上端縁が、上記螺筒部15とシリンダ2内面との隙間開口を液密に閉塞する如く構成している。
【0022】シリンダ内の上記弁座6上には吸い込み弁体31を設けている。この吸い込み弁体31は、上記係止板部11間を上下動する複数の係止突起32を外周下部より突設するとともに、外周上部に係止突条33を周設した縦長棒状をなし、上記弁座6と吸い込み弁34を構成する。また、下面が上記弁座6上に密接する状態から上記各係止突起32上面がコイルスプリング30下面に当接係止される状態までの間を上下動可能に設けている。また、作動部材4の最上昇位置では、ステム19内の上記係止突条23が上記係止突条33下面に密接係止される如く構成している。
【0023】本実施例に於ける吸い込み弁体31は、下半部を中空大径に、上半部を中実小径に構成し、大径部分の下部外面に周方向複数の係止突起32を突設させている。更に、上半部外周には周方向多数の縦リブ35を縦設している。
【0024】また、作動部材4を押し下げてヘッド縦筒27の螺条を螺筒部15の螺条に螺着ささせた際に、ステム19下端内面が吸い込み弁体31の上記大径部分上端外周に液密に嵌合する如く構成している。この際、上記縦筒27下端外周が、螺筒部の下部に液密に嵌合する如く構成している。従って、流通時等の非使用時に作動部材4を押し下げ係止させておく場合は、上記2か所でシールされて液の漏出を防止する如く構成している。
【0025】上記如く構成したポンプ1は、ヘッド21を押して作動部材4を押し下げることにより吸い込み弁34が閉じるとともに、吸い込み弁体31とステム19の各係止突条33,23間のシールが解除され、シリンダ内が加圧されて吐出弁26が開き、ノズル20先端より液が注出される。また、作動部材4の上昇時にはシリンダ2内が負圧化して吐出弁26が閉じ、吸い込み弁34が開いて容器体12内の液がシリンダ内へ導入される如く構成している。吸い込み弁34は、作動部材4の下降によりシリンダ内より嵌合筒部7内へ若干逆流する液の流れに沿って閉じる。尚、上記各部材は主として合成樹脂を使用して形成され、必要に応じてエラストマー,金属等を適宜選択使用して形成する。
【0026】
【発明の効果】以上説明した如く本発明ポンプは、作動部材の最上昇状態に於いて、ステム内面下部に周設した係止突条が吸い込み弁体上部外周に周設した係止突条下面に密接係止され、一方ステム内上部に設けた弁座上に複数の弾性板を介して吐出弁体を圧接しているので、外気温度の上昇等によりポンプを装着させた容器体内の圧が上昇しても吐出弁を開いて収納液が漏出するのを防止できるものである。
【0027】しかも従来通り作動部材上昇状態に於いて、誤って容器を倒すことがあっても吐出弁及び環状ピストン上端縁部分のシールにより液の漏出を防止できるものである。
【0028】また、請求項2発明のポンプでは、ステムを既述構成の二重積層構造とすることにより、ステムを構成する内外各筒の材質として比較的柔軟な材質を選定してもステムに要求される剛性を維持できるとともに、内筒に配設させた吐出弁とシール用の係止突条及び外筒に配設させた環状ピストンが、そのシール性をより良好に発揮できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示す半断面図である。
【図2】 同実施例の作動部材押し下げ係止状態の半断面図である。
【図3】 従来の容器の一例を示す半断面図である。
【符号の説明】
2…シリンダ,3…装着キャップ,4…作動部材,6…弁座,10…透孔,11…係止板部,13…口頚部,14…装着キャップ周壁,15…螺筒部,18…環状ピストン,19…ステム,19a …内筒,19b …外筒,20…ノズル,21…押し下げヘッド,22…弁座,23…係止突条,24…弾性板,25…吐出弁体,26…吐出弁,30…コイルスプリング,31…吸い込み弁体,32…係止突起,33…係止突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】 容器体内へ垂下する下端開口部に弁座6を形成するとともに、該弁座上方の内周下端部に周方向複数の係止板部11を突設し、且つ上部に外気導入用の透孔10を穿設してなるシリンダ2と、容器体口頚部13外周に周壁14を嵌合させて装着するとともに、上記シリンダ上部を容器体に固定する装着キャップ3と、上記シリンダ上端内面に嵌合させるとともに、上記透孔とシリンダ内との連通が可能に下端縁を開口して上記透孔を被覆する螺筒部15と、上記シリンダ内面に嵌合させた環状ピストン18を下部外周より突設して上下動可能に設けたステム19上端にノズル20付き押し下げヘッド21を固定させてなる作動部材4と、上記ステム内上部に設けた弁座22上に圧接する吐出弁体25をステム内面より突設した複数の弾性板24を介して一体に突設して構成した吐出弁26と、上記作動部材下面と上記各係止板部上面との間に介在させて作動部材を常時上方へ付勢させるコイルスプリング30と、上記各係止板部間を上下動する複数の係止突起32を外周下部より突設する縦長棒状をなすとともに、上記弁座6上に下面を密接する状態から上記各係止突起上面がコイルスプリング下面に当接係止される状態までの間を上下動可能に設けた吸い込み弁体31とを備え、上記作動部材の最上昇状態に於いてステム内面下部に周設した係止突条23が吸い込み弁体上部外周に周設した係止突条33下面に密接係止されるとともに、上記環状ピストン上端縁が上記螺筒部とシリンダ内面との隙間開口を閉塞する如く構成したことを特徴とする液体注出ポンプ。
【請求項2】 上記ステム19を内筒19a 及び外筒19b の二重積層構造とするとともに、内筒上端を外筒上端より下方に位置させてその上面を上記弁座22に形成し、内筒内周下部より上記係止突条23を一体に突設するとともに、外筒外周下部より上記環状ピストン18を一体に突設させてなる請求項1記載の液体注出ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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