説明

液体混合装置

【課題】 液体同士を効果的に混合できる非常にコンパクトな液体混合装置を提供すること。
【解決手段】 底部に液体流入口7を有すると共に、所定間隔をあけて配置された多段のパネル5a〜5dからなる乱流発生部材5を備えた混合槽2と、混合槽2の液体流入口7に接続された第1配管8と、第1配管8を介して混合槽2に液体Aを圧送するための第1ポンプと、混合槽2の下部又は第1配管8に接続された第2配管9と、第2配管9を介して液体Bを混合槽2の下部又は第1配管8に圧送する第2ポンプとを備えた液体混合装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体混合装置に関し、例えば、廃水にpH調整液を混合して中和処理を行う液体混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や研究所から排出される廃水の処理の一つに中和処理がある。このような廃液を中和処理する装置は、種々提案されており、例えば、pHが大きく変動する廃水を受け入れ、酸またはアルカリを自動注入してpHを3〜11程度の範囲に粗中和する受入槽と、この受入槽から粗中和された液を受け入れる連続中和処理槽と、受入槽pHに応じて注入量を調整し、連続中和処理槽のpHに応じてオン・オフしつつ連続中和処理槽へ酸またはアルカリを注入する薬品注入ポンプと、連続中和処理槽の後段に設けられた監視槽とからなる中和装置が提案されている(特許文献1参照。)。かかる装置は、まず、廃水を処理槽に投入し、該処理槽にpH調整剤を注入すると共に攪拌翼を回転することにより攪拌し、配管を介して連通された監視槽で最終的なpHを確認して、沈澱槽に導入した後、放流する構成となっており、装置が大型化している。このような装置は、比較的大量の廃水を処理し、装置の設置場所に余裕のある場合には特に問題とならないが、比較的少量の廃水を処理する場合や、装置の設置場所に余裕のない場合には大きな問題となる。
【0003】
【特許文献1】特開平5−317866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、液体同士を効果的に混合できる非常にコンパクトな液体混合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、各処理槽が並列に配設された従来の大型装置のコンパクト化を図るべく、鋭意研究した結果、所定間隔をあけて配置された多段のパネルからなる乱流発生部材を備えた混合槽の下方から2種以上の液体を圧入し、乱流発生部材により乱流を発生させて混合を行うことにより、液体同士が効果的に混合され、また、攪拌翼を有する攪拌手段等を必要としないことから装置自体も非常にコンパクトになることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、(1)底部に液体流入口を有すると共に、所定間隔をあけて配置された多段のパネルからなる乱流発生部材を備えた混合槽と、該混合槽の液体流入口に接続された第1配管と、該第1配管を介して前記混合槽に液体Aを圧送するための第1ポンプと、前記混合槽の下部又は前記第1配管に接続された第2配管と、該第2配管を介して液体Bを混合槽の下部又は前記第1配管に圧送する第2ポンプとを備えたことを特徴とする液体混合装置や、(2)混合槽の頂部の一部又は全部が開放されると共に、該混合槽の上方に、液体の混合状態の適否を判別するための判別槽を設けたことを特徴とする上記(1)に記載の液体混合装置や、(3)判別槽に貯留槽が隣接して設けられ、判別槽において混合状態が適と判別された混合液が、前記判別槽の堰を越えて前記貯留槽に流れ込むよう構成されたことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の液体混合装置や、(4)判別槽が、液体流出口を備えると共に、該液体流出口を開閉する開閉手段を備えたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の液体混合装置や、(5)判別槽の液体流出口を開閉する開閉手段が、片ヒンジ式の開閉手段であることを特徴とする上記(4)に記載の液体混合装置に関する。
【0007】
また本発明は、(6)乱流発生部材のパネルが開口を有するパネルであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の液体混合装置や、(7)混合槽の乱流発生部材が、中心部に開口を有するパネルと周辺部に開口を有するパネルとが交互に配設されて構成されたことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の液体混合装置や、(8)混合槽の内周に設けられたパネル固定部に最下段のパネルが載置されると共に、スペーサーを介して重畳的にパネルが載置されたことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の液体混合装置や、(9)パネルが取外し可能であることを特徴とする上記(8)に記載の液体混合装置や、(10)液体Aが廃水であると共に、液体BがpH調整液であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の液体混合装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体混合装置は、非常にコンパクトであると共に、液体同士を効果的に混合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の液体混合装置としては、底部に液体流入口を有すると共に、所定間隔をあけて配置された多段のパネルからなる乱流発生部材を備えた混合槽と、該混合槽の液体流入口に接続された第1配管と、該第1配管を介して前記混合槽に液体Aを圧送するための第1ポンプと、前記混合槽の下部又は前記第1配管に接続された第2配管と、該第2配管を介して液体Bを混合槽の下部又は前記第1配管に圧送する第2ポンプとを備えた液体混合装置であれば特に制限されるものではなく、液体Aに液体Bを混合するのみならず、液体Bと同様に、液体C、液体D…を配管を介してポンプを用いて混合することもでき、本発明の装置は、単純に液体Aと液体Bを混合して混合液を製造する混合装置としてのみならず、例えば、研究所、試験所、ボイラー等から排出される廃水を中和処理する中和装置等として使用することができる。
【0010】
前記混合槽としては、底部に液体流入口を有すると共に、所定間隔をあけて配置された多段のパネルからなる乱流発生部材を備えた槽であれば特に制限されるものではなく、混合槽の容量としては、例えば、10〜100L程度である。
【0011】
乱流発生部材としては、例えば、2〜15段程度のパネルを挙げることができ、3〜10段程度のパネルであることが好ましい。パネルの段数は、液体の処理量(流入量)によって適宜決定することができ、液体処理量に簡単に対応することができるよう、かかるパネルが取り外しできるような構成であることが好ましい。例えば、液体処理量が増加した場合には、パネルの段数を増加させる。具体的には、混合槽の内周に設けられたパネル固定部(凸部)にパネルを載置し、スペーサーを介して重畳的にパネルを載置する構成を挙げることができ、この場合、上方から容易にパネルの取付け取外しを行うことができる。
【0012】
また、乱流発生部材としては、液体流路が確保できる複数のパネルを多段にしたものであれば特に制限されるものではなく、例えば、位置及び大きさの異なる開口を有したパネルを多段にしたものや、液体流路が確保できる形状の開口を有しない板状部材を多段にしたものや、これらを組み合わせたものを挙げることができるが、効率よく混合される点や、周方向の位置決めが必要ないことから、中心部に開口を有するパネルと周辺部に開口を有するパネルとを交互に配設して構成されたものが好ましい。
【0013】
また、混合槽としては、その頂部の一部又は全部が開放されていることが好ましく、例えば、頂部の開放部分に直接配管を接続させた構成であってもよいが、混合槽の上方に、液体の混合状態の適否を判別するための判別槽が設けられていることが好ましい。すなわち、例えば、廃水に対してpH調整液を注入して中和処理を行う場合には、かかる判別槽は、pH検出器によりpHを検出し、所定のpH領域内にあるか否かを判別するための槽となり、冷水に対して熱水を注入して所定温度の温水とする処理の場合には、かかる判別槽は、温度計により温度を検出し、所定の温度範囲内にあるか否かを判別するための槽となる。
【0014】
また、判別槽は、液体流出口を備えると共に、該液体流出口を開閉する開閉手段を備えていることが好ましい。すなわち、判別槽の判別手段により、混合状態が不適と判断された場合、即座に開閉手段によって液体流出口を開放し、該液体流出口に接続された液体返送配管を介して混合液を液体Aの収容槽に返送することができ、また、ポンプによって混合槽の下部又は前記配管に圧送してもよい。
【0015】
かかる開閉手段としては、例えば、液体流出口を閉塞可能な閉塞部材と該閉塞部材に固定された棒状部材とを備えた手段を挙げることができ、液体流出口が設けられた壁面に対して垂直方向に移動可能なものであってもよいが、開閉手段の片側にヒンジを設けた片ヒンジ式の開閉手段であることが好ましく、ヒンジ近傍に棒状部材を固定することにより、棒状部材のストロークを小さくしても十分に液体流出口を開放することができる。
【0016】
また、前記判別槽には、貯留槽が隣接して設けられ、判別槽において混合状態が適と判別された混合液が、前記判別槽の堰を越えて前記貯留槽に流れ込むよう構成されていることが好ましい。これにより、たとえ判別槽で不適とされた処理水の一部が液体流出口から流出されない場合であっても、貯留槽でかかる不適な混合液を希釈することができ、部分的に混合状態が好ましくない混合液となることを防止することができ、特に、廃水を中和処理する中和装置においては有効である。また、このような2槽が隣接され堰を越えることにより混合液が流れ込む構成であることにより、貯留槽を備えているにもかかわらず、装置自体もコンパクトなものとなる。
【0017】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。図1は、本発明の一実施形態に係る液体混合装置の概略図であり、図2は、図1に示される装置のa矢視図であり、図3は、図1に示される装置の判別槽周辺の拡大図であり、図4は、混合槽における乱流発生部材の説明図である。
【0018】
図1〜3に示すように、本発明の一実施形態に係る液体混合装置1は、混合槽2と、混合槽2の上方に設けられた判別槽3と、判別槽3に隣接して設けられた貯留槽4とを備えており、研究所から排出された廃水(液体A)に対して、pH調整剤(液体B)を混合して中和処理を行う装置である。なお、符号18は、pH調整液収容容器を示す。
【0019】
図2及び図4に示すように、混合槽2は、直径30cm、深さ30cm程度のステンレスからなる円柱状の槽であって、頂部が直径20cm程度の開口により開放されると共に、内部には、所定間隔をあけて配置された4段のパネル5a〜5dからなる乱流発生部材5が設けられている。かかる乱流発生部材5は、スペーサー6を介して、中心部に直径が12cm程度の開口19を有するパネル5a,5cと周辺部に直径3cm程度の開口を4つ有するパネル5b,5dとが交互に配設されている。この4段のパネル5a〜5dは、混合槽2の内周沿って設けられたパネル固定部20に最下段のパネル5dが載置されると共に、スペーサー6を介して重畳的にパネル5b〜5dが載置されている。
【0020】
また、混合槽2の底部には、直径10cm程度の液体流入口7が設けられると共に、かかる液体流入口7には配管8(第1配管)が接続されている。かかる配管8を介して、第1ポンプによって、廃水(液体A)が、混合槽2内に導入される。また、配管8の混合槽2近傍には、配管9(第2配管)が接続され、かかる配管9を介して、pH調整剤(液体B)が、第2ポンプによって圧送される。廃水(液体A)及びpH調整剤(液体B)は、混合槽2の下方から勢いよく導入されると、乱流発生部材5によって、乱流となり効果的に混合される。
【0021】
また、混合槽2の上方に設けられた判別槽3は、縦40cm、横40cm、深さが10cm程度の槽であって、堰10部分は5cm程度となっており、液体の混合状態の適否を判別するための判別手段を備えている。判別手段は、pH検出器によるpH値に基づき、pH値が所定範囲内にあるか否かを判別する。
【0022】
判別槽3の底部には、直径10cm程度の液体流出口11が設けられ、液体返送配管12が接続されている。かかる液体配送配管12の他端は、廃水(液体A)の収容槽(不図示)に接続されている。また、液体流出口11には、かかる液体流出口11を開閉する開閉手段13が設けられている。開閉手段13は、片側にヒンジ14が設けられた閉塞部材15のヒンジ近傍に棒状部材16が取り付けられた片ヒンジ式の開閉する部材であり、ソレノイド17によって駆動する。すなわち、判別手段によって、pH値が所定範囲外(混合状態が不適)であると判別された場合に、棒状部材16を引き上げ、液体流出口11を開放状態とし、液体配送配管12を介して、廃水(液体A)の収容槽に混合液を返送する。
【0023】
判別槽3に隣設された貯留槽4は、縦40cm、横30cm、深さが50cm程度の槽であって、判別槽3において混合状態が適と判別された混合液が、判別槽3の堰10を越えて流れ込む。その後、配管18を介して放流される。
【0024】
以上のような本発明の一実施形態に係る液体混合装置1は、非常にコンパクトであると共に、廃水(液体A)及びpH調整剤(液体B)を効果的に混合させ、確実に中和処理された廃液を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体混合装置の概略図である。
【図2】図1に示される装置のa矢視図である。
【図3】図1に示される装置の判別槽周辺の拡大図である。
【図4】混合槽における乱流発生部材の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 液体混合装置
2 混合槽
3 判別槽
4 貯留槽
5a パネル
5b パネル
5c パネル
5d パネル
5 乱流発生部材
6 スペーサー
7 液体流入口
8 第1配管
9 第2配管
10 堰
11 液体流出口
12 液体返送配管
13 開閉手段
14 ヒンジ
15 閉塞部材
16 棒状部材
17 ソレノイド
18 pH調整液収容容器
19 開口
20 パネル固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に液体流入口を有すると共に、所定間隔をあけて配置された多段のパネルからなる乱流発生部材を備えた混合槽と、該混合槽の液体流入口に接続された第1配管と、該第1配管を介して前記混合槽に液体Aを圧送するための第1ポンプと、前記混合槽の下部又は前記第1配管に接続された第2配管と、該第2配管を介して液体Bを混合槽の下部又は前記第1配管に圧送する第2ポンプとを備えたことを特徴とする液体混合装置。
【請求項2】
混合槽の頂部の一部又は全部が開放されると共に、該混合槽の上方に、液体の混合状態の適否を判別するための判別槽を設けたことを特徴とする請求項1に記載の液体混合装置。
【請求項3】
判別槽に貯留槽が隣接して設けられ、判別槽において混合状態が適と判別された混合液が、前記判別槽の堰を越えて前記貯留槽に流れ込むよう構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体混合装置。
【請求項4】
判別槽が、液体流出口を備えると共に、該液体流出口を開閉する開閉手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体混合装置。
【請求項5】
判別槽の液体流出口を開閉する開閉手段が、片ヒンジ式の開閉手段であることを特徴とする請求項4に記載の液体混合装置。
【請求項6】
乱流発生部材のパネルが開口を有するパネルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体混合装置。
【請求項7】
混合槽の乱流発生部材が、中心部に開口を有するパネルと周辺部に開口を有するパネルとが交互に配設されて構成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体混合装置。
【請求項8】
混合槽の内周に設けられたパネル固定部に最下段のパネルが載置されると共に、スペーサーを介して重畳的にパネルが載置されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体混合装置。
【請求項9】
パネルが取外し可能であることを特徴とする請求項8に記載の液体混合装置。
【請求項10】
液体Aが廃水であると共に、液体BがpH調整液であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の液体混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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