説明

液体現像剤、液体現像剤の製造方法および画像形成装置

【課題】ポリエステル樹脂を用いて、正帯電の帯電特性に優れ、現像効率に優れた液体現像剤、および、このような液体現像剤の製造方法を提供すること、また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、主としてポリエステル樹脂で構成されたトナー粒子とを有し、トナー粒子は、構成成分として、アミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物を含むものであり、トナー粒子中に含まれるアミン化合物の含有量は、トナー粒子100重量部に対して、1〜10重量部であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、液体現像剤の製造方法および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤として、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤が知られている。
このような液体現像剤を構成するトナー粒子に用いられる結着樹脂としては、一般に、ポリエステル樹脂が広く用いられている。ポリエステル樹脂は、透明性が高く、結着樹脂として用いた場合、得られる画像の発色性が良く、また、高い定着特性が得られるという特徴を有している。
【0003】
ところで、液体現像剤としては、負帯電性の液体現像剤と正帯電性の液体現像剤とが挙げられるが、負帯電性の液体現像剤を用いた場合、画像形成する際に、画像形成装置内部でオゾンが発生し、環境問題や画像形成装置内の周辺部品への悪影響を来す等の問題があった。
そこで、近年、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくして画像形成を行い得ることから、正帯電性の液体現像剤を用いて画像を形成する方法の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ポリエステル樹脂は、通常、負帯電性が高い樹脂材料であり、正帯電性のトナー粒子(液体現像剤)に適用するのが困難であった。このようなポリエステル樹脂を、正帯電性のトナー粒子に用いた場合には、トナー粒子を十分に帯電させることができず、現像効率が低下し、十分に均一な画像濃度を有するトナー画像を安定して形成することができなかった。また、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いたトナー粒子に、帯電制御剤を添加して正帯電させることも考えられるが、十分な帯電量を得るのが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−214849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂を用いて、正帯電の帯電特性に優れ、現像効率に優れた液体現像剤、および、このような液体現像剤の製造方法を提供すること、また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、主としてポリエステル樹脂で構成されたトナー粒子とを有し、
前記トナー粒子は、構成成分として、アミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物を含むものであり、
前記トナー粒子中に含まれる前記アミン化合物の含有量は、前記トナー粒子100重量部に対して、1〜10重量部であることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記アミン化合物は、主鎖がアクリル骨格を有するものであることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記アミン化合物の酸価は、0.5mgKOH/g未満であることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記アミン化合物は、−NHRおよび/または−NR’R’’(ただし、R、R’、R’’はアルキル基)で表される官能基を有する脂肪族アミンであることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記トナー粒子は、水系分散媒中に前記ポリエステル樹脂と前記アミン化合物と有機溶剤とを含む分散質が水系分散媒に分散した乳化液中において、前記分散質を合一させることにより製造されたものであることが好ましい。
【0009】
本発明の液体現像剤の製造方法は、ポリエステル樹脂とアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物と有機溶剤とを含む分散質が、水系分散媒に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を得る合一工程と、
前記合一粒子に含まれる前記有機溶剤を除去し、樹脂微粒子を得る脱溶剤工程と、
前記樹脂微粒子を絶縁性液体に分散させる分散工程とを有し、
前記脱溶剤工程で得られる前記樹脂微粒子が、前記アミン化合物を、前記樹脂微粒子100重量部に対して、1〜10重量部含むものであることを特徴とする。
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記分散液は、前記ポリエステル樹脂と前記アミン化合物と前記有機溶剤とを含む溶液中に水系液体を加えていくことにより、O/W型の乳化液中において、前記ポリエステル樹脂と前記アミン化合物と前記有機溶剤とを含む分散質が水系分散媒に分散したものであることが好ましい。
【0010】
本発明の画像形成装置は、色の異なる複数の液体現像剤を用いて、各色に対応した前記単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を前記記録媒体に転写し、前記記録媒体上に未定着カラー画像を形成する2次転写部と、
前記未定着カラー画像を前記記録媒体上に定着する定着部とを有し、
前記液体現像剤が、絶縁性液体と、ポリエステル樹脂およびアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物を構成成分として有するトナー粒子とを含むものであることを特徴とする。
【0011】
以上の構成を満足することにより、ポリエステル樹脂を用いて、正帯電の帯電特性に優れ、現像効率に優れた液体現像剤、このような液体現像剤の製造方法を提供すること、また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
≪液体現像剤≫
まず、本発明の液体現像剤について説明する。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中に主として樹脂材料で構成されたトナー粒子が分散したものである。
【0013】
このような液体現像剤は、トナー粒子が、樹脂材料としてのポリエステル樹脂とアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物とを含むものである。これにより、正帯電の帯電特性に優れ、現像効率に優れた液体現像剤となり、得られるトナー画像は、発色性が高く、均一な画像濃度を有するものとなる。以下、液体現像剤を構成する各構成成分について詳細に述べる。
【0014】
<トナー粒子>
まず、トナー粒子について説明する。
[トナー粒子の構成材料(トナー材料)]
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子(トナー)は、少なくとも、樹脂材料(結着樹脂)としてのポリエステル樹脂、およびアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物を含むものである。
【0015】
本発明において、トナー粒子中に含まれる樹脂材料(結着樹脂)は、主としてポリエステル樹脂で構成されたものである。ポリエステル樹脂は、透明性が高く、結着樹脂として用いた場合、得られる画像の発色性が良く、また、高い定着特性が得られるという特徴を有している。しかしながら、ポリエステル樹脂は、負帯電する特性(負帯電性)を示す成分であるため、このようなポリエステル樹脂で構成されたトナー粒子は、一般に負帯電性を示すものである。そのため、このようなポリエステル樹脂を正帯電性のトナー粒子(液体現像剤)に適用するのは困難であった。これに対して、本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子は、構成成分として、ポリエステル樹脂に加え、後述するような所定のアミン価を有する正帯電性のアミン化合物を含むものである。このようなアミン化合物がトナー粒子中に含まれることにより、ポリエステル樹脂を用いることにより得られる上記のような効果を確実に発揮させつつ、正帯電の帯電特性に優れ、現像効率に優れた液体現像剤とすることができる。その結果、得られるトナー画像は、発色性が高く、均一な画像濃度を有するものとなる。さらに、このような正帯電性のアミン化合物は、トナー粒子中に含まれるものであるため、液体現像剤を長期間保存した場合であっても、トナー粒子の優れた正帯電性を維持することができる。
【0016】
また、トナー粒子中に含まれるポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、10,000〜180,000であるのが好ましく、20,000〜150,000であるのがより好ましい。これにより、後述するようなアミン価を有するアミン化合物を、トナー粒子中に均一に分散させることができ、液体現像剤の正帯電性は特に優れたものとなる。また、製造されるトナー粒子を用いた液体現像剤は、高温領域でのオフセットの発生をより効果的に防止できるものとなる。
【0017】
また、樹脂材料は、ガラス転移温度Tgが、35〜60℃であるのが好ましく、40〜55℃であるのがより好ましい。これにより、製造されるトナー粒子を含んだ液体現像剤は、保存時において、トナー粒子同士の凝集、融着がより確実に抑制され、液体現像剤の保存性はより優れたものとなる。さらに、トナー粒子を記録媒体に低温でより好適に定着させることができる。
また、樹脂材料の軟化温度Tfは、60〜180℃であるのが好ましく、80〜120℃であるのがより好ましい。これにより、製造されるトナー粒子を含んだ液体現像剤は、保存時においては、トナー粒子同士の凝集、融着がより確実に抑制され、液体現像剤の保存性はより優れたものとなる。
【0018】
なお、本明細書で、ガラス転移温度Tgとは、示差走査熱量測定機DSC−220C(SII製)における測定条件:サンプル量10mg、昇温速度10℃/min、測定温度範囲10〜150℃で測定した際に、ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点の温度をいう。
【0019】
また、軟化温度とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
また、樹脂材料中におけるポリエステル樹脂の含有量は、50wt%以上であるのが好ましく、80wt%以上であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子の正帯電性を十分に優れたものとすることができるとともに、形成されるトナー画像は、発色性に特に優れ、均一な画像濃度を有するものとなる。また、トナー粒子を記録媒体により強固に定着させることができる。
【0020】
なお、トナー粒子は、上述したようなポリエステル樹脂以外の樹脂材料を含むものであってもよい。
また、本発明において、トナー粒子は、構成成分としてアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物を、トナー粒子100重量部に対して1〜10重量部含むものである。
【0021】
上述したような特徴を有するアミン化合物は、正帯電する特性(正帯電性)を有するものである。このようなアミン化合物が、ただ単に、トナー粒子表面に付着するのではなく、トナー粒子中に適量含まれることにより、ポリエステル樹脂が有する負帯電性が好適に抑えられ、トナー粒子は正帯電性に優れたものとなり、液体現像剤の現像効率は優れたものとなる。その結果、得られるトナー画像は、上述したように、ポリエステル樹脂を用いることにより得られる効果(優れた発色性、優れた定着特性など)を確実に発揮させつつ、均一な画像濃度を有するものとすることができる。
このように、本発明の液体現像剤では、トナー粒子が、ポリエステル樹脂と所定量のアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物とを構成成分として有することにより、上記のような優れた効果を得ることができる。これに対して、液体現像剤が上記の構成を有するものでない場合には、上述したような優れた効果を得ることができない。
【0022】
すなわち、トナー粒子中に上記条件を満足するアミン化合物を含まない、あるいは、トナー粒子中に含まれるアミン化合物のアミン価が、上記範囲下限値未満である場合には、トナー粒子は、ポリエステル樹脂の負帯電性が強く現れ、正帯電性の液体現像剤用のトナー粒子として好適に用いることができなくなる。また、仮に、このようなアミン化合物を多量にトナー粒子に含ませたとしても(例えば、トナー粒子中に含まれるポリエステル樹脂と同重量のアミン化合物をトナー粒子中に含ませた場合でも)、トナー粒子に十分な正帯電性を付与することができない上、ポリエステル樹脂を用いることにより得られるトナー画像の優れた発色性を得ることができなくなってしまう。
【0023】
また、トナー粒子中に含まれるアミン化合物のアミン価が、上記範囲上限値よりも大きい場合には、トナー粒子は確実に正帯電性を有するものとなるが、トナー粒子の帯電量が大きくなり過ぎてしまう。その結果、後述するような画像形成装置において、静電潜像が形成された感光体に、現像ローラから供給されたトナー粒子は、感光体表面に強固に吸着してしまい、好適に転写ローラに転写することができなくなり、得られるトナー画像は、画像濃度にばらつきを有するものとなってしまう。
【0024】
また、トナー粒子中に含まれるアミン化合物の含有量が、上記範囲下限値未満である場合には、トナー粒子(ポリエステル樹脂)に対する、アミン化合物の含有量が不十分となり、トナー粒子の正帯電性を十分なものとすることができない。その結果、得られるトナー画像は、画像濃度にばらつきを有するものとなってしまう。
また、トナー粒子中に含まれるアミン化合物の含有量が、上記範囲上限値よりも多い場合には、トナー粒子のガラス転移温度が低くなってしまい、トナー粒子同士が接触した際に、凝集、融着などの不具合が起こりやすくなってしまう。また、このようなアミン化合物は親水性を示す成分である。そのため、上記のように、トナー粒子中に含まれるアミン化合物の含有量が多くなり過ぎると、液体現像剤を保存する際に、絶縁性液体中に含まれる微量の水分がトナー粒子中に浸透し易くなってしまう。結果として、トナー粒子間での正帯電性にばらつきが生じ、得られるトナー画像は、画像濃度が不均一なものとなってしまう。
【0025】
また、上述したような範囲のアミン化合物を、トナー粒子中に含ませることなく、例えば、絶縁性液体中に分散させて、トナー粒子表面に吸着させることも考えられる。しかし、トナー粒子表面にこのようなアミン化合物を吸着させても、各トナー粒子に、均等に吸着させることが困難であり、なおかつ、画像形成過程において、このようなアミン化合物が、トナー粒子表面から脱離してしまい、現像効率、転写効率を十分なものとすることができない。
【0026】
このようなアミン化合物のアミン価は、上述したように、1〜100mgKOH/gであるが、4〜70mgKOH/gであるのが好ましく、10〜60mgKOH/gであるのがより好ましい。これにより、液体現像剤中に含まれるトナー粒子の正帯電性は特に優れたものとなる。その結果、現像効率に優れた液体現像剤となり、得られるトナー画像は、発色性が高く、より均一な画像濃度を有するものとなる。
【0027】
また、トナー粒子中におけるこのようなアミン化合物の含有量は、トナー粒子100重量部に対して1〜10重量部であるが、2.5〜10重量部であるのが好ましく、3〜9重量部であるのがより好ましい。アミン化合物の含有量が上記範囲であると、トナー粒子の正帯電性はさらに優れたものとなり、液体現像剤の現像効率はさらに優れたものとなる。
【0028】
また、トナー粒子中におけるこのようなアミン化合物の含有量は、トナー粒子中に含まれるポリエステル樹脂100重量部に対して、1.2〜13重量部であるのが好ましく、3.4〜11.5重量部であるのがより好ましい。アミン化合物の含有量が上記範囲であると、トナー粒子の正帯電性はさらに優れたものとなり、液体現像剤の現像効率はさらに優れたものとなる。
【0029】
また、このようなアミン化合物は、主鎖がアクリル骨格を有するものであるのが好ましい。このようなアミン化合物は、化学構造の非類似性から、ポリエステル樹脂との相溶性が乏しい成分である。そのため、トナー粒子中では、ポリエステル樹脂とアミン化合物とが相分離し、ポリエステル樹脂中にこのようなアミン化合物の集合体が偏在した海島構造が形成される。このように、上述したようなアミン化合物が、トナー粒子中で、集合体として存在することにより、トナー粒子の正帯電性は特に優れたものとなる。その結果、液体現像剤の現像効率、転写効率が特に優れたものとなり、得られるトナー画像は、発色性が高く、より均一な画像濃度を有するものとなる。さらに、トナー粒子中に含まれるアミン化合物が、上記のような特徴を有するものであると、このようなアミン化合物の含有量を比較的少なくした場合でも、トナー粒子の正帯電性を十分に高いものとすることができる。その結果、液体現像剤の正帯電性を十分に優れたものとしつつ、ポリエステル樹脂を用いることにより得られる効果(高い発色性、優れた定着特性など)をより効果的に得ることができる。
【0030】
また、このようなアミン化合物の酸価は、0.5mgKOH/g未満であるのが好ましく、0.3mgKOH/g以下であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子の正帯電性はさらに優れたものとなり、現像効率、転写効率がさらに優れた液体現像剤とすることができる。その結果、得られるトナー画像は、発色性が高く、より均一な画像濃度を有するものとなる。
【0031】
また、このようなアミン化合物は、−NHR、および/または−NR’R’’(ただし、R、R’はアルキル基)で表される官能基を有する脂肪族アミンであるのが好ましい。上記のような脂肪族アミンは、含まれる官能基が全て、−NHで表されるような脂肪族アミンに比べて、水素結合性が弱い化合物である。このようなアミンは、ポリエステル樹脂への分散性に優れるとともに、トナー粒子(ポリエステル樹脂)中で、アミン同士が好適に集合体を形成する。また、このような脂肪族アミンは、帯電される際の1分子当たりの帯電量(正帯電量)が好適なものとなる。その結果、トナー粒子が正帯電される際に、トナー粒子の帯電量はより好適なものとなり、得られるトナー画像の画像濃度をより均一なものとすることができる。
【0032】
このようなアミン化合物としては、上述したようなアミン価を有するものであれば、いかなるものであってもよいが、具体例としては、商品名で、EFKA−4008,4009,4010,4046,4300,4330,4340,4400,6220,6225(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)、アジスパーPB821,PB822(味の素ファインテクノ(株)社製)、Disperbyk−112,116,2000(ビックケミー(株)社製)等が挙げられる。
【0033】
また、トナーは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、特に限定されず、例えば、公知の顔料、染料等を使用することができる。
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、公知のワックス、磁性粉末等が挙げられる。
また、トナーの構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0034】
また、上述したようなトナー粒子は、後に詳述するような製造方法を用いて得られるものであるのが好ましい。すなわち、水系分散媒中にトナー粒子の構成成分であるポリエステル樹脂および上述したようなアミン化合物と、有機溶剤とを含む分散質が水系分散媒に分散した乳化液中において、分散質を合一することにより得られるものであるのが好ましい。このようにして得られるトナー粒子は、その外表面側に、上述したようなアミン化合物を偏在させたものとなる。これは、以下のような理由によるものと考えられる。すなわち、上述したような分散質中に含まれるアミン化合物は、親水性が高い成分であり、分散質の周囲に存在する水系分散媒に引き寄せられ、分散質の外表面側に偏在する。また、このような分散質が合一する過程においても、アミン化合物は、形成過程の合一粒子の外表面側に移動し、結果として、トナー粒子の外表面側にこのようなアミン化合物が偏在するものと考えられる。これにより、トナー粒子の正帯電性は特に優れたものとなり、液体現像剤の現像効率がさらに優れたものとなる。その結果、得られるトナー画像は、発色性が高く、より均一な画像濃度を有するものとなる。また、アミン化合物が、上述したような、主鎖がアクリル骨格のものである場合には、このようなアミン化合物の集合体がトナー粒子の表面に偏在する。これにより、上述したような効果はより顕著なものとなる。また、このようにして得られるトナー粒子は、粗大粒子や微小粒子が混在しない、粒径が均一なものとなる。このようなトナー粒子は、帯電されたときの帯電量が、トナー粒子間で均一になるとともに、トナー粒子間での電気泳動速度のばらつきがより確実に抑制されたものとなる。その結果、液体現像剤の現像効率、転写効率はより優れたものとなり、得られるトナー画像の画像濃度がより均一なものとなる。また、このようなトナー粒子は、液体現像剤中での分散性が特に優れたものとなる。そのため、液体現像剤を保存する際に、トナー粒子同士の不本意な凝集が起こるのをより確実に防止することができるとともに、トナー粒子間での帯電性のばらつきが生じるのを長期間にわたって確実に防止することができる。さらに、このようにして得られるトナー粒子は、その粒径を十分に小さい(より具体的には、平均粒径が3μm以下)ものとした場合であっても、その外表面側に上述したようなアミン化合物をより確実に含ませることができる。これにより、高解像度の画像形成用の液体現像剤として、より好適に適用することができるものとなる。
【0035】
[トナー粒子の形状等]
上記のような材料で構成されたトナー粒子の50%体積粒径Dv(50)[μm]は、特に限定されないが、0.7〜3μmであるのが好ましく、0.8〜2.5μmであるのがより好ましい。トナー粒子の50%体積粒径が前記範囲内の値であると、液体現像剤により形成されるトナー画像の解像度を十分に高いものとすることができる。また、トナー粒子の絶縁性液体への分散を良好にし、液体現像剤の保存性を高いものとできる。
【0036】
また、トナー粒子についての50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたとき、Dv(50)/Dn(50)の値は、1.00〜1.12であるのが好ましく1.00〜1.10であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子同士の接触、衝突を少なくすることができ、摩擦等における帯電量の低下、トナー粒子同士の凝集を確実に防止することができる。また、各トナー粒子間での特性(正帯電性、耐候性、体衝撃性など)のばらつきを十分に小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性をより高いものとすることができる。
【0037】
また、トナー粒子についての下記式(I)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.94〜1.00であるのが好ましく、0.98〜1.00であるのがより好ましい。トナー粒子の平均円形度がこのような範囲のものであるとトナー粒子が正帯電性はさらに優れたものとなる。特に、トナー粒子間での帯電量のばらつきがより抑制される。これにより、得られるトナー画像の画像濃度をより均一なものとすることができる。また、トナー粒子の分散安定性は特に優れ、液体現像剤の保存性、長期安定性は特に優れたものとなる。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0038】
また、トナー粒子についての円形度の標準偏差は、0.04以下であるのが好ましい。
このように、円形度の標準偏差が十分に小さいと、上述した効果はより顕著なものとなる。
また、トナー粒子の粒径の標準偏差(σ(DT))をトナー粒子の平均粒径(DT)で除した数値(σ(DT)/DT)として表されるトナー粒子の粒径についての変動係数は、0.30以下であるのが好ましく、0.20以下であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子の粒度分布は特にシャープなものとなる。その結果、各トナー粒子間での特性のばらつきを小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性をより高いものとすることができる。
また、液体現像剤中におけるトナー粒子の含有率は、10〜60wt%であるのが好ましく、20〜50wt%であるのがより好ましい。
【0039】
<絶縁性液体>
次に、絶縁性液体について説明する。
本発明の液体現像剤を構成する絶縁性液体は特に限定されるものではないが、絶縁性液体として公知の液体を用いることができる。具体的には、KF96、KF4701、KF965、KS602A、KS603、KS604、KF41、KF54、FA630(信越シリコーン社製)、TSF410、TSF433、TSF434、TSF451、TSF437、(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、SH200(東レ社製)等のシリコーンオイル、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(エクソン化学社製)、コスモホワイトP−60、コスモホワイトP−70、コスモホワイトP−120(コスモ石油ルブリカンツ社製)、ダイナフレシアW−8、ダフニーオイルCP、ダフニーオイルKP、トランスフォーマオイルH、トランスフォーマオイルG、トランスフォーマオイルA、トランスフォーマオイルB、トランスフォーマオイルS(出光興産社製)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルオイル社製)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(スピリッツ社製)、低粘度・高粘度流動パラフィン(和光純薬工業製)、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン等の脂肪族炭化水素、脂肪酸モノエステル、脂肪酸トリグリセリド、および脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸モノグリセリド、グリセリン、脂肪酸等の脂肪酸トリグリセリドの分解物、Prifer6813(UNIQUEMA社製)等の合成エステル系液体、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、脂肪酸モノエステル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
この中でも、絶縁性液体が脂肪酸モノエステルを含むものである場合には、以下のような効果を得ることができる。なお、脂肪酸モノエステルとは、脂肪酸と一価のアルコールとの間のエステルであり、このような脂肪酸モノエステルはR−COO−R’の一般式で表されるものである(ただし、R、R’はアルキル基)。
脂肪酸モノエステルは、天然由来の成分であり、環境に優しい成分である。したがって画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄などによる絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0041】
また、脂肪酸モノエステルは、比較的低い粘度を有する液体であるとともに、化学構造の類似性により、前述したようなポリエステル樹脂との親和性に優れたものである。したがって、絶縁性液体が脂肪酸モノエステルを含むことにより、液体現像剤中のトナー粒子の分散性は優れたものとなる。その結果、液体現像剤中で、トナー粒子同士の不本意な凝集が起こるのが確実に防止され、液体現像剤の優れた正帯電性が長期間にわたって維持される。また、このような液体現像剤は、保存性に優れたものとなる。
【0042】
また、脂肪酸モノエステルは、ポリエステル樹脂の分子鎖間に浸入しやすい性質を有するものであり、このようにしてポリエステル樹脂中に取り込まれた脂肪酸モノエステルは、トナー粒子(ポリエステル樹脂)を可塑化する可塑効果を有するものである。そのため、脂肪酸モノエステルを取り込んだトナー粒子は、比較的低温であっても、容易に溶融して記録媒体に定着させることができる。また、このように可塑化されたトナー粒子は、記録媒体に、より密着して定着させることができ、得られるトナー画像の定着強度は特に優れたものとなる。例えば、記録媒体として、紙を用いた場合には、トナー粒子が紙繊維の隙間に入り込み易くなる。そして、定着時の熱で溶融したトナー粒子(トナー粒子を構成する樹脂材料)の一部が記録媒体の内部に浸透し、この状態でトナー粒子が放冷されて硬化することにより、アンカー効果が働き、トナー粒子を紙に強固に定着させることができる。したがって、このようなトナー粒子を含む液体現像剤は、低温定着性が向上するとともに、トナー粒子の記録媒体への定着強度は優れたものとなる。
【0043】
このような脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸成分は、R−COOHの一般式で表され(ただし、Rはアルキル基)、特に限定されないが、例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等に代表される不飽和脂肪酸、酪酸、ラウリン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等に代表される飽和脂肪酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
この中でも、脂肪酸モノエステルが、脂肪酸成分として飽和脂肪酸を含む場合、脂肪酸モノエステルは、劣化(酸化、分解など)が起こりづらい、化学的に特に安定なものとなる。このため、このような脂肪酸モノエステルを含む絶縁性液体は、粘度上昇、変色、電気抵抗値の低下などの劣化現象が長期間に渡って確実に防止される。このような絶縁性液体中ではトナー粒子の正帯電性を優れた状態で長期間にわたって維持することができる。また、定着時には、トナー粒子とともに脂肪酸モノエステルも紙に転写され、形成されるトナー画像中に飽和脂肪酸モノエステルが含まれる。上述したように飽和脂肪酸モノエステルは、劣化しづらい成分であり、トナー画像が外部環境(光、熱、酸素など)に晒されても、変色するのが確実に防止され、形成されるトナー画像は長期間に渡って鮮明なものとなる。
【0045】
また、脂肪酸モノエステルは、脂肪酸成分として飽和脂肪酸を含む場合、飽和脂肪酸として、炭素数が8〜20の脂肪酸を含むことが好ましい。このような脂肪酸モノエステルは、優れた絶縁性、高い化学的安定性を有するものとなる。これにより、トナー粒子が帯電される際に、各トナー粒子の帯電量がより均一になり、現像効率が特に優れた液体現像剤となる。また、このような脂肪酸モノエステルを含んだトナー粒子(ポリエステル樹脂)はより好適に可塑化され、液体現像剤の保存性、およびトナー粒子の記録媒体への定着特性を特に優れたものとすることができる。さらに、このような脂肪酸モノエステルの一部がトナー粒子とともに、記録媒体に残留した場合でも、光(紫外線)や熱など、外部環境の影響により劣化するのがより確実に防止され、形成されるトナー画像の色合いを、長期間にわたってより鮮明なものとすることができる。
【0046】
また、このような脂肪酸モノエステルは脂肪酸と一価のアルコールとのエステルであるが、このアルコールは、R−OHの一般式で表され(ただし、Rはアルキル基)、Rの炭素数が1〜4であるのが好ましい。このような脂肪酸モノエステルは、トナー粒子中に好適に浸透し、トナー粒子を好適に可塑化させる。その結果、液体現像剤の保存性、およびトナー粒子の記録媒体への定着特性を特に優れたものとすることができる。また、液体現像剤の化学的安定性は優れたものとなり、液体現像剤の長期安定性はさらに優れたものとなる。また、絶縁性液体の粘度を好適なものとし、記録媒体への液体現像剤の浸透をより好適なものとすることができる。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。
【0047】
また、脂肪酸モノエステルは、植物油と、上記のような1価のアルコールとのエステル交換反応により生成されるものであってもよい。すなわち、本発明で用いる絶縁性液体は、前述したような脂肪酸、およびアルコールから選択される1種または2種以上を組み合わせた脂肪酸モノエステルを含むものであってもよい。
エステル交換反応に供される植物油としては、例えば、大豆油、菜種油、脱水ひまし油、桐油、紅花油、亜麻仁油、ひまわり油、コーン油、綿実油、ごま油、トウモロコシ油、大麻油、月見草油、パーム油(特に、パーム核油)、ココナッツ油、ヤシ油等が挙げられる。
【0048】
また、絶縁性液体が、脂肪酸トリグリセリドを含むものである場合には以下のような効果を得ることができる。なお、脂肪酸トリグリセリドは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル(トリグリセリド)である。すなわち、このような脂肪酸トリグリセリドは、上述した脂肪酸モノエステルと同様に、環境に優しい成分であるため、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。また、脂肪酸トリグリセリドは、前述した脂肪酸モノエステルと同様に、化学構造の類似性から、ポリエステル樹脂との親和性が高い成分である。また、このような脂肪酸トリグリセリドは、優れた電気絶縁性を有している。したがって、絶縁性液体がこのような脂肪酸トリグリセリドを含む液体現像剤では、トナー粒子の分散性が優れたものとなり、液体現像剤の正帯電性、保存性を優れたものとすることができる。さらに、絶縁性液体がこのような脂肪酸トリグリセリドに加え、上述したような脂肪酸モノエステルを含むものである場合には、以下のような効果を得ることができる。すなわち、このような脂肪酸トリグリセリドは、脂肪酸モノエステルよりも比較的粘度の高い成分である。したがって、脂肪酸モノエステルに加え、脂肪酸トリグリセリドを含む絶縁性液体は、粘度がより好適なものとなり、トナー粒子中に浸入する脂肪酸モノエステルの量がより好適なものとなる。その結果、トナー粒子はより好適に可塑化される。また、このような絶縁性液体を有する液体現像剤は、より優れた保存性を有するものとなる。これは、以下のように考えられる。すなわち、このような液体現像剤中では、絶縁性液体の粘度がより好適なものとなる結果、トナー粒子同士が接触、衝突する回数が減少するため、トナー粒子同士の凝集がより確実に防止されることによるものと考えられる。
【0049】
脂肪酸トリグリセリドを構成する不飽和脂肪酸としては特に限定されないが、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の一価不飽和脂肪酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸等(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等の多価不飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸やこれらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
このような不飽和脂肪酸トリグリセリドは、例えば、紅花油、米油、米ぬか油、菜種油、オリーブ油、カノーラ油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等の植物由来の油脂、牛油等の各種動物由来の油脂等の天然由来の油脂から効率良く得ることができる。
また、脂肪酸トリグリセリド中に飽和脂肪酸成分が含まれていてもよい。飽和脂肪酸成分を含むことにより、液体現像剤の化学的安定性や絶縁性液体の電気絶縁性をさらに高く保つことが可能になる。
【0051】
このような飽和脂肪酸成分を構成する飽和脂肪酸としては、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような飽和脂肪酸の中でも、分子内の炭素数が、6〜22のものであるのが好ましく、8〜20のものであるのがより好ましく、10〜18のものであるのがさらに好ましい。このような飽和脂肪酸で構成された飽和脂肪酸成分を含むことにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして発揮される。
【0052】
また、絶縁性液体が、上述したような脂肪族炭化水素を含む場合には以下のような効果を得ることができる。脂肪族炭化水素は、一般に、高い電気抵抗を有し、化学的に安定である。このため、脂肪族炭化水素を用いた液体現像剤は、より優れた正帯電性を有するものとなり、現像性、転写性がさらに優れ、得られるトナー画像は、欠点等の特に少ない、鮮明なものとなる。また、脂肪族炭化水素は、吸湿の少ない液体である。このため、脂肪族炭化水素を絶縁性液体に含む場合、保存時において絶縁性液体が吸湿することを好適に防止でき、絶縁性液体が変性(劣化)することを好適に防止することができる。
【0053】
また、絶縁性液体が、上述したようなシリコーンオイルを含む場合、以下のような効果が得られる。シリコーンオイルは、シロキサン結合を骨格とした有機化合物である。シリコーンオイルは、一般に、高い電気抵抗を有する。このため、シリコーンオイルを絶縁性液体として用いた場合、液体現像剤は、より優れた正帯電性を有するものとなり、現像性、転写性がさらに優れたものとなる。また、シリコーンオイルは、種類によって多様な粘度を有することから、シリコーンオイルを選択することにより、液体現像剤の粘度を特に好適なものとすることができる。また、シリコーンオイルは、一般に、化学的に安定であり、人体への影響が少ない物質である。このため、液体現像剤は、保存時における絶縁性液体の劣化を好適に防止でき、環境安定性が優れたものとなる。また、画像形成装置外へ絶縁性液体が漏出した場合においても、安全な液体現像剤とすることができる。
【0054】
また、絶縁性液体は、酸化防止剤を含むものであってもよい。
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、帯電制御剤が含まれていてもよい。これにより、液体現像剤の正帯電性をさらに優れたものとすることができる。
帯電制御剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
室温(20℃)における、絶縁性液体の電気抵抗は、1.0×1011Ωcm以上であるのが好ましく、1.0×1012Ωcm以上であるのがより好ましく、2.0×1012Ωcm以上であるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0055】
なお、上述したような各成分で構成された液体現像剤の粘度(25℃において、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される粘度)は、20〜900mPa・sであるのが好ましく、30〜800mPa・sであるのがより好ましく、50〜500mPa・sであるのがさらに好ましい。これにより、記録媒体中への液体現像剤の浸透はより好適なものとなるため、記録媒体へのトナー粒子の定着特性はより優れたものとなる。また、記録媒体に得られる画像が、ムラのない鮮明なものとなり、かつ、高速での画像形成に適応した液体現像剤として、特に適したものとなる。
また、上述したような各成分で構成された液体現像剤の室温(20℃)での電気抵抗は、1.0×1011Ωcm以上であるのが好ましく、1.0×1012Ωcm以上であるのがより好ましい。
【0056】
≪液体現像剤の製造方法≫
次に、本発明の液体現像剤の製造方法の好適な実施形態について説明する。
本発明の液体現像剤の製造方法は、ポリエステル樹脂と、アミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物と、有機溶剤とを含む分散質が、水系分散媒に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る合一工程と、合一粒子に含まれる有機溶剤を除去し、ポリエステル樹脂とアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物とを有する樹脂微粒子(トナー粒子)を得る脱溶剤工程と、トナー粒子を絶縁性液体に分散させる分散工程とを有する。また、脱溶剤工程で得られる樹脂微粒子は、上述したようなアミン化合物を、樹脂微粒子100重量部に対して1〜10重量部含むものである。
【0057】
以下、液体現像剤の製造方法を構成する各工程について詳細に説明する。
[分散液調製工程(水系分散液調製工程)]
まず、分散液(水系分散液)を調製する。
水系分散液は、いかなる方法で調製されるものであってもよいが、例えば、ポリエステル樹脂、アミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物、着色剤等のトナー粒子の構成材料(トナー材料)を有機溶剤中に溶解、分散させて樹脂液を得(樹脂液調製処理)、水系液体で構成された水系分散媒を樹脂液に添加することにより、トナー材料を含む分散質(液状の分散質)を水系液体中に形成し、分散質が分散した分散液(水系分散液)を得る(分散質形成処理)。
【0058】
(樹脂液調製処理)
まず、ポリエステル樹脂およびアミン価が1〜100mgKOH/mgのアミン化合物を有機溶剤に溶解または分散させた樹脂液を調製する。
調製された樹脂液は、前述したようなトナー粒子の構成材料、および、次に述べるような有機溶剤を含むものである。
このような有機溶剤としては、樹脂材料の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、後述する水系液体よりも沸点が低いものを用いるのが好ましい。これにより、有機溶剤を容易に除去することができる。
【0059】
また、有機溶剤は、後述する水系分散媒(水系液体)との相溶性が低いもの(例えば、25℃における水系分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、水系乳化液中において、トナー材料を安定した状態で微分散させることができる。
また、有機溶剤の組成は、例えば、前述したような樹脂材料、着色剤の組成や、水系分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
このような有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、MEK等のケトン系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0060】
また、上述したようなアミン化合物が、その主鎖がアクリル骨格を有するものである場合にも、上述したような有機溶剤に好適に溶解する。その結果、樹脂液(後述するような分散質)中においては、このようなアミン化合物が有機溶剤に溶解しているのに対して、後述するトナー粒子中では、このようなアミン化合物がトナー粒子表面付近に好適に偏在
する。
【0061】
樹脂液は、例えば、ポリエステル樹脂およびアミン価が1〜100mgKOH/mgのアミン化合物とを含む材料を、攪拌機等により混合することにより得ることができる。樹脂液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)等の高速攪拌機が挙げられる。
【0062】
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
樹脂液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、40〜75wt%であるのが好ましく、50〜73wt%であるのがより好ましく、50〜70wt%であるのがさらに好ましい。固形分の含有率が前記範囲内の値であると、後述する分散液(乳化懸濁液)を構成する分散質を、より球形度の高いもの(真球に近い形状もの)とすることができ、最終的に得られるトナー粒子の形状を、より確実に好適なものとすることができる。
【0063】
また、樹脂液の調製においては、調製すべき樹脂液の構成成分をすべて同時に混合してもよいし、予め、調製すべき樹脂液の構成成分のうち一部を混合して混合物(マスター)を得、その後、当該混合物(マスター)を、他の成分と混合してもよい。
例えば、ポリエステル樹脂およびアミン価が1〜100mgKOH/mgのアミン化合物と着色剤とを混練し、混練物としての着色剤マスターを得た後、着色剤マスターと、追加樹脂としてのポリエステル樹脂と、有機溶剤とを、混合することにより、樹脂液を調製してもよい。これにより、各成分が均一に混ざり合った樹脂液を、より確実に得ることができる。このような混練物を用いることにより、後述する水系分散液中の分散質は、その外表面側に上記のようなアミン化合物が好適に偏在したものとなる。そのため、このような分散質を合一して得られる樹脂微粒子は、その外表面側にアミン化合物が確実に偏在したものとなり、トナー粒子の正帯電性を特に優れたものとすることができる。また、このようなトナー粒子を含む液体現像剤は、現像効率が特に優れ、得られるトナー画像の画像濃度がより優れたものとなる。
また、樹脂液の構成材料(成分)としては、上述したポリエステル樹脂の前駆体(例えば、プレポリマー、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等)を含んでいてもよい。
【0064】
(分散質形成処理)
次に、水系分散液(分散液)を調製する。
水系液体で構成された水系分散媒を樹脂液に添加することにより、トナー材料を含む分散質(液状の分散質)を水系液体中に形成し、分散質が分散した分散液(水系分散液)を得る。このようにして形成される分散質の外表面側には、アミン化合物が偏在する。これは、以下のように説明することができる。すなわち、このようなアミン化合物は、ポリエステル樹脂および上述したような有機溶剤との高い親和性を有する成分であるとともに、水系分散媒との親和性も有する成分でもある。つまり、このようなアミン化合物は、疎水性を有する成分と、親水性を有する成分とを兼ね備えたものである。そのため、分散質中に含まれるアミン化合物は、分散質の周囲に存在する水系液体に引き寄せられ、分散質の外表面側に偏在するものと考えられる。このようにして形成された分散質を合一して形成される合一粒子は、分散質と同様に、その外表面側にアミン化合物が偏在したものとなる。その結果、最終的に得られるトナー粒子の正帯電性は優れたものとなり、現像効率に優れた液体現像剤とすることができる。
【0065】
水系分散媒は、水系液体で構成されたものである。
水系液体としては、主として水で構成されたものを用いることができる。
水系液体中には、例えば、水との相溶性に優れる溶媒(例えば、25℃での100重量部の水に対する溶解度が、50重量部以上である溶媒)を含むものであってもよい。
また、水系分散媒には、必要に応じて乳化分散剤を添加してもよい。乳化分散剤を添加することにより、より容易に水系乳化液を調製することができる。
乳化分散剤としては、特に限定されず、例えば、公知の乳化分散剤を用いることができる。
【0066】
また、水系分散液の調製に際して、例えば、中和剤を用いてもよい。これにより、例えば、ポリエステル樹脂が有する官能基(カルボキシル基)を中和することができ、調製される水系分散液中における分散質の形状、大きさの均一性、分散質の分散性を特に優れたものとすることができ。このため、得られるトナー粒子は、粒度分布が特に狭いものとなる。
【0067】
中和剤は、例えば、樹脂液に添加されるものであってもよいし、水系液体に添加されるものであってもよい。
また、中和剤は、水系分散液の調製において、複数回に分けて添加されるものであってもよい。
中和剤としては、塩基性化合物を用いることができ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン等の有機塩基等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、中和剤は、上記のような化合物を含む水溶液であってもよい。
【0068】
また、塩基性化合物の使用量は、樹脂材料が有する全カルボキシル基を中和するために必要な量の1〜3倍に相当する量(1〜3当量)が好ましく、1〜2倍に相当する量(1〜2当量)がより好ましい。これにより、異形の分散質が形成されるのを効果的に防止することができ、また、後に詳述する合一工程において得られる粒子の粒度分布を、よりシャープなものとすることができる。
【0069】
樹脂液への水系液体の添加は、いかなる方法で行うものであってもよいが、樹脂液を撹拌しつつ、樹脂液に水を含む水系液体を添加することが好ましい。すなわち、攪拌機等により樹脂液に剪断を加えつつ、樹脂液中に水系液体を徐々に添加(滴下)することにより行い、W/O型の乳化液からO/W型の乳化液に転相させて、最終的に、水系液体中に、樹脂液由来の分散質が分散した水系分散液を得るのが好ましい。このような方法を経て得られる分散質は、その外表面側に確実にアミン化合物が偏在したものとなる。したがって、得られるトナー粒子の正帯電性は特に優れたものとなる。また、分散質を均一かつ微細なものとして容易かつ確実に形成することができ、製造時における粗大粒子の発生が特に少ないものとなる。このようにして得られるトナー粒子は、帯電されたときの帯電量が、トナー粒子間で均一になるとともに、トナー粒子間での電気泳動速度のばらつきがより確実に抑制されたものとなる。その結果、液体現像剤の現像効率、転写効率はより優れたものとなり、得られるトナー画像の画像濃度がより均一なものとなる。
【0070】
水系分散液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)、スラッシャ(三井鉱山社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)等の高速攪拌機、あるいは高速分散機等が挙げられる。
また、樹脂液への水系液体の添加時には、翼先端速度が10〜20m/秒となるように撹拌を行うことが好ましく、12〜18m/秒となるように撹拌を行うことがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、水系分散液を効率良く得ることができるとともに、水系分散液中における分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができ、過剰に微細な分散質、粗大粒子の発生を防止しつつ、分散質の均一分散性を特に優れたものとすることができる。
【0071】
水系分散液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系分散液中における分散質同士の不本意な凝集をより確実に防止しつつ、トナー粒子の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、本処理における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
【0072】
[合一工程]
次に、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る(合一工程)。分散質の合一は、通常、有機溶剤を含む分散質が衝突することにより、これらが一体化して進行する。このようにして形成される合一粒子は、上述した分散質と同様にして、その外表面側にアミン化合物が偏在したものとなり、最終的に得られるトナー粒子の正帯電性を優れたものとすることができる。
【0073】
複数個の分散質の合一は、分散液を撹拌しながら、分散液に電解質を添加することにより行う。これにより、容易かつ確実に合一粒子を得ることができる。また、電解質の添加量を調節することにより、容易かつ確実に、合一粒子の粒径、粒度分布を制御することができる。
電解質としては、特に限定されず、公知の有機、無機の水溶性の塩等を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
また、電解質は、1価のカチオンの塩であることが好ましい。これにより、得られる合一粒子の粒度分布を狭いものとできる。また、1価のカチオンの塩を用いることで、本工程において、粗大粒子が発生することを確実に防止することができる。
また、上述した中でも、電解質は、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム)または炭酸塩であることが好ましく、硫酸塩であることが特に好ましい。これにより、特に容易に合一粒子の粒径を制御できる。
【0075】
本工程で添加される電解質の量は、電解質が添加される分散液に含まれる固形分:100重量部に対し、0.5〜3重量部であるのが好ましく、1〜2重量部であるのがより好ましい。これにより、特に容易かつ確実に合一粒子の粒径を制御できるとともに、粗大粒子の発生を確実に防止することができる。
また、電解質は、水溶液の状態で添加されるのが好ましい。これにより、速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができるとともに、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。この結果、所望の粒径で、粒度分布の特に狭い合一粒子を得ることができる。
【0076】
また、電解質を水溶液の状態で添加する場合、水溶液中における電解質の濃度は、2〜10wt%であることが好ましく、2.5〜6wt%であることがより好ましい。これにより、特に速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができ、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。また、このような水溶液を加えることにより、電解質を加え終えた際における分散液中の水の含有量が、好適なものとなる。このため、電解質添加後における合一粒子の成長速度を、生産性が落ちない程度に、適度に遅いものとすることができる。結果として、最終的な樹脂微粒子(トナー粒子)の外表面側にアミン化合物をより確実に偏在させることができるとともに、粒径をより確実に制御できる。また、不本意な合一粒子の合一を確実に防止することができる。
【0077】
また、電解質を水溶液で添加する場合、電解質水溶液の添加の速度は、電解質水溶液が添加される分散液に含まれる固形分:100重量部に対し、0.5〜10重量部/分であるのが好ましく、1.5〜5重量部/分であるのがより好ましい。これにより、分散液中で、電解質の濃度のむらが発生することを防止することができ、粗大粒子が発生することを確実に防ぐことができる。また、合一粒子の粒度分布は特に狭いものとなる。さらに、このような速度で電解質を添加することで、合一の速度を特に容易に制御でき、合一粒子の平均粒径を制御することが特に容易になるとともに、トナーの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0078】
電解質の添加は、複数回に分けて行ってもよい。これにより、容易かつ確実に、所望の大きさの合一粒子を得ることができるとともに、得られる合一粒子の円形度を確実に、十分に大きいものとすることができる。
また、本工程は、分散液を攪拌した状態で行う。これにより、粒子間での形状、大きさのばらつきが特に小さい合一粒子を得ることができる。
【0079】
分散液の撹拌には、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等の攪拌翼を用いることができるが、中でも、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好ましい。これにより、添加した電解質をすばやく均一に分散、溶解させて、電解質の濃度むらが発生することを確実に防止することができる。また、分散質を効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子が崩壊するのをより確実に防止することができる。その結果、粒子間での形状、粒径のばらつきの小さい合一粒子を効率良く得ることができる。
【0080】
攪拌翼の翼先端速度は、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、0.2〜8m/秒であるのがより好ましく、0.2〜6m/秒であるのがさらに好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、添加した電解質を均一に分散、溶解させて、電解質の濃度むらが発生することを確実に防止することができる。また、分散質をより効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子が崩壊するのをさらに確実に防止することができる。
得られる合一粒子の平均粒径は、0.1〜7μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。
【0081】
[脱溶剤(脱溶媒)工程]
その後、分散液中に含まれる有機溶剤を除去する。これにより、分散液中に分散した樹脂微粒子(トナー粒子)が得られる。
有機溶剤の除去は、いかなる方法で行ってもよいが、例えば、減圧により行うことができる。これにより、樹脂材料等の構成材料の変性等を十分に防止しつつ、効率良く有機溶剤を除去することができる。
【0082】
また、本工程での処理温度は、合一粒子を構成する樹脂材料のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。
また、本工程は、分散液に、消泡剤を添加した状態で行ってもよい。これにより、効率良く有機溶剤を除去することができる。
消泡剤としては、例えば、鉱物油系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、シリコーン系消泡剤のほか、低級アルコール類、高級アルコール類、油脂類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、リン酸エステル類等を用いることができる。
消泡剤の使用量は、特に限定されないが、分散液中に含まれる固形分に対して、重量比で、20〜300ppmであるのが好ましく、30〜100ppmであるのがより好ましい。
【0083】
また、本工程においては、有機溶剤とともに、少なくとも一部の水系液体が除去されてもよい。
なお、本工程においては、必ずしも全ての有機溶剤(分散液中に含まれる有機溶剤の全量)が除去されなくてもよい。このような場合であっても、後述する他の工程において、残存する有機溶剤を十分に除去することができる。
【0084】
[洗浄工程]
次に、上記のようにして得られた樹脂微粒子(トナー粒子)の洗浄を行う(洗浄工程)。
本工程を行うことにより、不純物として、有機溶剤等が含まれる場合であっても、これらを効率良く除去することができる。その結果、最終的に得られる樹脂微粒子における、揮発性有機化合物(TVOC)量を特に少ないものとすることができる。
本工程は、例えば、固液分離(水系液体からの分離)により樹脂微粒子を分離し、さらにその後、固形分(樹脂微粒子)の水中への再分散および固液分離(水系液体からの樹脂微粒子の分離)をすることにより行うことができる。固形分の水中への再分散および固液分離は、複数回、繰り返し行ってもよい。
【0085】
[乾燥工程]
その後、乾燥処理を施すことにより、トナー粒子を得ることができる(乾燥工程)。
乾燥工程は、例えば、真空乾燥機(例えば、リボコーン(大川原製作所社製)、ナウター(ホソカワミクロン社製)等)、流動層乾燥機(大川原製作所社製)等を用いて行うことができる。
【0086】
[分散工程]
次に、上記のようにして得られたトナー粒子を絶縁性液体中に分散する。これにより、液体現像剤を得る。
このような絶縁性液体としては、前述したような絶縁性液体を用いることができる。
トナー粒子の絶縁性液体への分散は、いかなる方法を用いてもよく、例えば、絶縁性液体とトナー粒子とをビーズミル、ボールミル等で混合することにより行うことができる。
【0087】
また、この分散時において、絶縁性液体およびトナー粒子以外の成分を混合するものであってもよい。
また、トナー粒子の絶縁性液体への分散は、最終的に得られる液体現像剤を構成する絶縁性液体の全量を用いて行うものであってもよく、絶縁性液体の一部を用いて行うものであってもよい。
【0088】
また、絶縁性液体の一部を用いてトナー粒子を分散する場合、分散した後に、分散に用いた液体と同じ液体を絶縁性液体として添加するものであってもよいし、また、分散した後に、分散に用いた液体とは異なる液体を絶縁性液体として添加するものであってもよい。後者の場合、最終的に得られる液体現像剤の粘度等の特性を容易に調整することができる。
【0089】
≪画像形成装置≫
次に、本発明の画像形成装置の好適な実施形態について説明する。本発明の画像形成装置は、上述したような本発明の液体現像剤を用いて記録媒体上にカラー画像を形成するものである。
図1は、本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図、図2は、図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図、図3は、現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図、図4は、図1に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【0090】
画像形成装置1000は、図1、図2に示すように、4つの現像部30Y、30M、30C、30Kと、中間転写部40と、2次転写ユニット(2次転写部)60と、定着部(定着装置)F40と、4つの液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kとを有している。
現像部30Y、30M、30Cは、それぞれ、イエロー系液体現像剤(Y)、マゼンダ系液体現像剤(M)、シアン系の液体現像剤(C)で、潜像を現像し、各色に対応したカラーの単色像を形成する機能を有している。また、現像部30Kは、ブラック系液体現像剤(K)で、潜像を現像し、ブラック(黒)の単色像を形成する機能を有している。
【0091】
現像部30Y、30M、30C、30Kの構成は同様であるので、以下、現像部30Yについて説明する。
現像部30Yは、図2に示すように、像担持体の一例としての感光体10Yと、感光体10Yの回転方向に沿って、帯電ローラ11Yと、露光ユニット12Yと、現像ユニット100Yと、感光体スクイーズ装置101Yと、1次転写バックアップローラ51Yと、除電ユニット16Yと、感光体クリーニングブレード17Yと、現像剤回収部18Yとを有している。
【0092】
感光体10Yは、円筒状の基材とその外周面に形成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図1中の矢印で示すように時計回りに回転する。
感光体10Yは、後述する現像ユニット100Yにより液体現像剤が供給され、表面に液体現像剤の層が形成されるものである。
【0093】
帯電ローラ11Yは、感光体10Yを帯電するための装置であり、露光ユニット12Yは、レーザを照射することによって帯電された感光体10Y上に潜像を形成する装置である。この露光ユニット12Yは、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の不図示のホストコンピュータから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザを帯電された感光体10Y上に照射する。
【0094】
現像ユニット100Yは、感光体10Y上に形成された潜像を、本発明の液体現像剤を用いて現像するための装置である。なお、現像ユニット100Yの詳細については後述する。
感光体スクイーズ装置101Yは、現像ユニット100Yより回転方向下流側に、感光体10Yに対向して配置されており、感光体スクイーズローラ13Yと、該感光体スクイーズローラ13Yに押圧摺接して表面に付着した液体現像剤を除去するクリーニングブレード14Yと、除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部15Yとで構成される。この感光体スクイーズ装置101Yは、感光体10Yに現像された現像剤から余剰なキャリア(絶縁性液体)および本来不要なカブリトナーを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。
【0095】
1次転写バックアップローラ51Yは、感光体10Yに形成された単色像を、後述する中間転写部40に転写するための装置である。
除電ユニット16Yは、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に中間転写像が転写された後に、感光体10Y上の残留電荷を除去する装置である。
感光体クリーニングブレード17Yは、感光体10Yの表面に当接されたゴム製の部材で、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に像が転写された後に、感光体10Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
【0096】
現像剤回収部18Yは、感光体クリーニングブレード17Yにより除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
中間転写部40は、エンドレスの弾性ベルト部材であり、ベルト駆動ローラ41とテンションローラ42との間に巻き掛けて張架され、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kで感光体10Y、10M、10C、10Kと当接しながら駆動ローラ41により回転駆動される。
この中間転写部40に、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kにより、現像部30Y、30M、30C、30Kで形成された各色に対応した単色像が順次転写され、各色に対応した単色像が重ね合わされる。これにより、中間転写部40にフルカラー現像剤像(中間転写像)が形成される。
【0097】
中間転写部40には、このように複数の感光体10Y、10M、10C、10Kに形成した単色像を順次2次転写して重ね合わせて担持し、一括して紙、フィルム、布等の記録媒体F5に2次転写する。そのため、2次転写行程において記録媒体F5にトナー像を転写するに当たって、記録媒体F5表面が繊維質などによって平滑でないシート材であっても、この非平滑なシート材表面に倣って2次転写特性を向上させる手段として、弾性ベルト部材を採用している。
【0098】
ベルト駆動ローラ41と共に中間転写部40を張架するテンションローラ42側には、中間転写部クリーニングブレード46、現像剤回収部47からなるクリーニング装置が配置されている。
中間転写部クリーニングブレード46は、2次転写ローラ61によって記録媒体F5上に像が転写された後に、中間転写部40上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
【0099】
現像剤回収部47は、中間転写部クリーニングブレード46により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
また、1次転写バックアップローラ51Yより中間転写部40の移動方向下流側に、中間転写部スクイーズ装置52Yが配されている。
この中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40上に転写された液体現像剤が望ましい分散状態に至っていない場合に、転写された液体現像剤から余剰の絶縁性液体を除去する手段として設けられている。
【0100】
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部スクイーズローラ53Yと、中間転写部40を挟んで中間転写部スクイーズローラ53Yと対向配置される中間転写部スクイーズバックアップローラ54Yと、中間転写部スクイーズローラ53Yに押圧摺接して表面をクリーニングする中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yおよび現像剤回収部15Mから構成される。
【0101】
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40に1次転写された現像剤から余剰なキャリアを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げると共に、本来不要なカブリトナーを回収する機能を有する。現像剤回収部15Mは、中間転写部40の移動方向下流側に配置されたマゼンタの感光体スクイーズローラのクリーニングブレード14Mで回収されるキャリアの回収機構を中間転写部スクイーズローラ53Yの中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yにも兼用するものである。このように2色目以降の像担持体スクイーズ装置の現像剤回収部15M、15C、15K(現像剤回収部15C、15Kについては図示せず)において、その前の色の1次転写バックアップローラ51(Y、M、C)より中間転写部40の移動方向下流側に配置された中間転写部スクイーズ装置52(Y、M、C)の現像剤回収部として兼用することにより、それらの間隔を一定に規制することができ、構造を簡潔にして小型化を図ることができる。
【0102】
2次転写ユニット60は、2次転写ローラ61が中間転写部40を挟んでベルト駆動ローラ41と対向配置され、さらに2次転写ローラ61のクリーニングブレード62、現像剤回収部63からなるクリーニング装置が配置される。
2次転写ユニット60では、中間転写部40上に色重ねして形成された中間転写像が2次転写ユニット60の転写位置に到達するタイミングに合せて、記録媒体F5を搬送、供給し、その記録媒体F5に中間転写像が2次転写される。
【0103】
2次転写ユニット60により記録媒体F5上に転写されたトナー像(転写像)F5aは、後述する定着部F40に送られ、定着が行われる。
クリーニングブレード62は、2次転写ローラ61によって記録媒体F5上に像が転写された後に、2次転写ローラ61上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部63は、クリーニングブレード62により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0104】
次に、現像ユニット100Y、100M、100C、100Kについて、詳細に説明する。なお、以下の説明では、代表的に、現像ユニット100Yについて説明する。
現像ユニット100Yは、図2に示すように、液体現像剤貯留部31Yと、塗布ローラ32Yと、規制ブレード33Yと、現像剤攪拌ローラ34Yと、現像ローラ20Yと、現像ローラクリーニングブレード21Yと、現像剤圧縮ローラ(圧縮手段)22Yとを有し
ている。
【0105】
液体現像剤貯留部31Yは、感光体10Yに形成された潜像を現像するための液体現像剤を貯留する機能を備えたものである。
塗布ローラ32Yは、液体現像剤を現像ローラ20Yへ供給する機能を備えたものである。
この塗布ローラ32Yは、鉄等金属性のローラの表面に溝が均一かつ螺旋状に形成されニッケルメッキが施された、いわゆるアニロクスローラを呼称されるものであり、その直径は約25mmである。本実施形態では、塗布ローラ32Yの回転方向に対して斜めに複数の溝が、いわゆる切削加工や転造加工等によって形成されている。この塗布ローラ32Yは、時計回りに回転しながら液体現像剤に接触することによって、溝に、液体現像剤貯留部31Y内の液体現像剤を担持して、該担持した液体現像剤を現像ローラ20Yへ搬送する。
【0106】
規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Yの表面に当接して、塗布ローラ32Y上の液体現像剤の量を規制する。すなわち、当該規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Y上の余剰液体現像剤を掻き取って、現像ローラ20Yに供給する塗布ローラ32Y上の液体現像剤を計量する役割を果たす。この規制ブレード33Yは、弾性体としてのウレタンゴムからなり、鉄等金属製の規制ブレード支持部材より支持されている。また、規制ブレード33Yは、前述した鉛直面Aから見て、塗布ローラ32Yが回転して液体現像剤から進出する側(すなわち、鉛直面Aから見て図2中左側)に設けられている。なお、規制ブレード33Yのゴム硬度は、JIS−Aで約77度であり、規制ブレード33Yの、塗布ローラ32Y表面への当接部の硬度(約77度)は、後述する現像ローラ20Yの弾性体の層の塗布ローラ32Y表面への圧接部の硬度(約85度)よりも低くなっている。また、掻き取られた余剰の液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Yに回収され、再利用される。
【0107】
現像剤攪拌ローラ34Yは、液体現像剤を一様分散状態に攪拌する機能を備えたものである。これにより、複数個のトナー粒子1が凝集した場合であっても、トナー粒子1同士を好適に分散させることができる。特に、一旦利用した液体現像剤を再利用する場合でも、好適にトナー粒子1を分散させることができる。
液体現像剤貯留部31Y内において、液体現像剤の中のトナー粒子1はプラスの電荷を有し、液体現像剤は、現像剤撹拌ローラ34Yにより撹拌されて一様分散状態になり、塗布ローラ32Yが回転することによって、液体現像剤貯留部31Yから汲み上げられ、規制ブレード33Yによって液体現像剤量が規制されて現像ローラ20Yに供給される。
【0108】
現像ローラ20Yは、感光体10Yに担持された潜像を液体現像剤により現像するために、液体現像剤を担持して感光体10Yと対向する現像位置に搬送する。
現像ローラ20Yは、その表面に、前述した塗布ローラ32Yから液体現像剤を供給することにより、液体現像剤層201Yを形成するものである。
この現像ローラ20Yは、鉄等金属製の内芯の外周部に、導電性を有する弾性体の層を備えたものであり、その直径は約20mmである。また、弾性体の層は、二層構造になっており、その内層として、ゴム硬q度がJIS−A約30度で、厚み約5mmのウレタンゴムが、その表層(外層)として、ゴム硬度がJIS−A約85度で、厚み約30μmのウレタンゴムが備えられている。そして、現像ローラ20Yは、前記表層が圧接部となって、弾性変形された状態で塗布ローラ32Yおよび感光体10Yのそれぞれに圧接している。
【0109】
また、現像ローラ20Yは、その中心軸を中心として回転可能であり、当該中心軸は、感光体10Yの回転中心軸よりも下方にある。また、現像ローラ20Yは、感光体10Yの回転方向(図2において時計方向)と逆の方向(図2において反時計方向)に回転する。なお、感光体10Y上に形成された潜像を現像する際には、現像ローラ20Yと感光体10Yとの間に電界が形成される。
【0110】
現像剤圧縮ローラ22Yは、現像ローラ20Yに担持された液体現像剤のトナーを圧縮状態にする機能を備えた装置である。言い換えると、現像剤圧縮ローラ22Yは、前述した液体現像剤層201Yに対してトナー粒子1と同極性の電界を印加することにより、図3に示すように、液体現像剤層201Y中において、現像ローラ20Yの表面近傍にトナー粒子1を偏在させる機能を備えた装置である。このようにトナー粒子を偏在させることにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、品質の高い鮮明な画像を得ることができる。
この現像剤圧縮ローラ22Yには、クリーニングブレード23Yが設けられている。
このクリーニングブレード23Yは、現像剤圧縮ローラ22Yに付着した液体現像剤を除去する機能を有している。クリーニングブレード23Yにより除去された液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Y内に回収され、再利用される。
【0111】
また、現像ユニット100Yは、現像ローラ20Yの表面に当接されたゴム製の現像ローラクリーニングブレード21Yを有している。この現像ローラクリーニングブレード21Yは、前記現像位置で現像が行われた後に、現像ローラ20Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去するための装置である。現像ローラクリーニングブレード21Yにより除去された液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Y内に回収され、再利用される。
【0112】
また、図1、図2に示すように、画像形成装置1000は、液体現像剤を現像部30Yに補給する液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kを有する。液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kの構成は同様であるので、以下、液体現像剤補給部80Yについて説明する。
液体現像剤補給部80Yは、回収液体現像剤貯留部81Yと、補給液体現像剤貯留部82Yと、搬送手段83Y、84Yと、ポンプ85Yと、フィルタ86Yとを有している。
【0113】
回収液体現像剤貯留部81Yは、主として現像剤回収部18Yで回収された回収液体現像剤を貯留し、搬送手段83Yによって、現像部30Yの液体現像剤貯留部31Yに回収液体現像剤を補給する。また、補給液体現像剤貯留部82Yには、液体現像剤が貯留されており、搬送手段84Yによって液体現像剤貯留部31Yに液体現像剤を補給する。補給液体現像剤貯留部82Yに貯留された液体現像剤および回収液体現像剤貯留部81Yに貯留された回収液体現像剤の組成は、液体現像剤貯留部31Yに貯留された液体現像剤と同様であっても良いし、異なるものであっても良い。
【0114】
また、現像剤回収部18Yに回収された液体現像剤は、搬送路70Yによって、液体現像剤補給部80Yに供給される。
また、搬送路70Yには、ポンプ85Yが設けられており、このポンプ85Yにより、各現像剤回収部に回収された液体現像剤を回収液体現像剤貯留部81Yに搬送する。
また、搬送路70Yには、フィルタ86Yが設けられており、粗大粒子、異物等を回収された液体現像剤から取り除くことができる。フィルタ86Yに除去された粗大粒子、異物等の固形分は、図示せぬフィルタ状態の検知手段により検知される。そして、その検知結果に基づいてフィルタ86Yを交換する。これにより、フィルタ86Yのフィルタリング機能を安定して維持することができる。
【0115】
次に、定着部について説明する。
定着部F40は、前述した現像部、転写部等において形成された未定着のトナー画像F5aを、記録媒体F5上に定着させるものである。
定着部F40は、図4に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、スプリングF9とを有している。
【0116】
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
熱定着ローラF1の内部には、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントは、それぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0117】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5に対して圧力を加えるよう構成されている。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0118】
また、熱定着ローラF1の弾性体F1cの表層にはPFA層が設けられている。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0119】
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体F5が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0120】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体F5の進入がスムーズに行われる記録媒体F5の導入口部が形成でき、安定した記録媒体F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0121】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
【0122】
定着部F40において、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体F5上に形成された未定着のトナー画像F5aが定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0123】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
【0124】
また、定着部F40は、記録媒体F5にトナー画像F5aを定着させた後に、熱定着ローラF1の表面に付着(残存)した絶縁性液体を除去する除去ブレード(除去手段)F12を有している。なお、この除去ブレードF12は、絶縁性液体を除去するとともに、定着の際に熱定着ローラF1上に移行したトナー等も同時に除去することができる。
【0125】
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0126】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
【0127】
熱定着ローラF1により加える熱(定着温度)は、具体的には、80〜200℃であるのが好ましく、100〜180℃であるのがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。本発明の液体現像剤は、低温での定着性に優れるため、定着温度がこのような比較的低い温度であっても、トナー画像が記録媒体に強固に定着することができる。
【0128】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像剤は、前述したような液体現像装置、定着装置に適用されるものに限定されない。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような製造方法により製造されたものに限定されない。
【0129】
また、前述した実施形態では、水系分散液を得、該水系乳化液に電解質を添加することにより合一粒子を得るものとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、上述したような合一粒子は、水系液体に、着色剤とモノマーと界面活性剤と重合開始剤とを分散させ、乳化重合により、水系分散液を調製し、該水系分散液に電解質を添加して会合させる乳化重合会合法を用いて調製されたものであってもよいし、また、得られた水系分散液を噴霧乾燥することにより合一粒子を得るものであってもよい。
【実施例】
【0130】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
まず、トナー粒子の製造を行った。なお、温度が記載されていない工程については、室温(25℃)で行った。
【0131】
<分散液調整工程>
(着色剤マスター溶液の調製)
まず、ポリエステル樹脂R1(酸価:10.0KOHmg/g、重量平均分子量Mw:45,600、ガラス転移温度Tg:48℃、軟化温度Tf:108℃)と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)との混合物(質量比R1:シアン系顔料=50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0132】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
得られた混練物の粉末に固形分含有量が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加え、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で湿式分散して着色剤マスター溶液を調製した。
【0133】
(樹脂液調製処理)
上記着色剤マスター溶液:139.2重量部にメチルエチルケトン:2.0重量部、ポリエステル樹脂R1:91.8重量部、アミン化合物としてのEFKA−4300(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、アミン価:56.0mgKOH/g):7.0重量部および乳化剤としてのネオゲンSC−F(第一工業製薬社製):1.1重量部を加えて、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)で混合し、樹脂液を作製した。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。このとき、樹脂液の固形分含有量は58%であった。
【0134】
(分散質形成処理)
次いで容器内の樹脂液に1規定アンモニア水:24重量部を加えて、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)により、攪拌翼の翼先端速度を7.5m/sとして十分に攪拌し、フラスコ内の溶液の温度を25℃に調整し、その後攪拌翼の翼先端速度を14.7m/sとして攪拌を行いつつ、170重量部の脱イオン水を滴下して転相乳化を起こした。攪拌を継続しながら、上記樹脂液に対して、さらに脱イオン水:70重量部を加えた。これにより、樹脂材料を含む分散質が分散した水系分散液を得た。
【0135】
<合一工程>
次に、水系分散液をマックスブレンド翼を有した攪拌容器に移し、攪拌翼の翼先端速度を1.0m/sとして攪拌を行いながら水系分散液の温度を25℃とした。
次に、同様の温度、攪拌条件を保ちつつ、5.0%の硫酸アンモニウム水溶液:300重量部を滴下し、分散質の合一を行い、合一粒子の形成を行った。滴下後、合一粒子のトナー粒子についての50%体積粒径Dv(50)[μm]が2.5μmに成長するまで攪拌を続けた。合一粒子のDv(50)が2.5μmになったら、脱イオン水:200重量部を添加し、合一を終了した。なお、得られた粒子の50%体積粒径Dv(50)[μm]は、Mastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。
【0136】
<脱溶剤工程>
得られた合一粒子分散液に対して、減圧下で、固形分含有量が23wt%となるまで有機溶剤を留去を行い、樹脂微粒子のスラリーを得た。
<洗浄工程>
次に、スラリーに対し、固液分離を行い、さらに水中への再分散(リスラリー)、固液分離を繰り返し行うことによる洗浄処理を施した。その後、吸引ろ過法により、着色樹脂微粒子のウェットケーキ(樹脂微粒子ケーキ)を得た。なお、ウェットケーキの含水率は35wt%であった。
【0137】
<乾燥工程>
その後、真空乾燥機を用いて、得られたウェットケーキを乾燥することにより、トナー粒子を得た。また、トナー粒子についての50%体積粒径をDv(50)[μm]、50%個数粒径をDn(50)[μm]としたときの、Dv(50)は、2.3μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.09であった。なお、得られた粒子の50%体積粒径Dv(50)[μm]、50%個数粒径Dn(50)[μm]は、それぞれ、上述したMastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。また、以下に説明する各実施例、各比較例で得られた粒子についても同様にして、粒径(Dv(50))、粒度分布(Dv(50)/Dn(50))を求めた。
【0138】
<分散工程>
上記の方法で得られたトナー粒子:40重量部、大豆油とメタノールとのエステル交換反応により生成された大豆油エステル交換液(粘度5.1mPa・s、日清オイリオ社製、商品名「大豆油脂肪酸メチル」):60重量部、およびハイオレイック菜種油(日清オイリオ社製、商品名「ハイオレイック菜種油」):90重量部をセラミック製ポット(内容積600ml)に入れ、さらにジルコニアボール(ボール直径:3mm)を体積充填率30%になるようにセラミック製ポットに入れ、卓上ポットミルにて回転速度220rpmで8時間分散を行った。
【0139】
得られた液体現像剤中における、トナー粒子のDv(50)は、2.3μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.09であった。
また、シアン系顔料の代わりに、マゼンダ系顔料:ピグメントレッド122、イエロー系顔料:ピグメントイエロー180、ブラック系顔料:カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)に、それぞれ変更した以外は、上記と同様にして、マゼンダ系液体現像剤、イエロー系液体現像剤、ブラック系液体現像剤を製造した。
【0140】
(実施例2〜8)
使用する樹脂材料、アミン化合物、および絶縁性液体の種類、含有量などを表1に示すような構成にした以外は、前記実施例1と同様にして、各色に対応する液体現像剤を製造した。
(実施例9)
まず、ポリエステル樹脂R1(酸価:10.0KOHmg/g、重量平均分子量Mw:45,600、ガラス転移温度Tg:48℃、軟化温度Tf:108℃):40重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):50重量部と、アミン化合物としてのアジスパーPB822(味の素ファインテクノ(株)社製、アミン価:16.8mgKOH/g、酸価:13.6mgKOH/g):10重量部との混合物を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、着色剤マスター用の原料を得た。
【0141】
次に、この原料を、120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、混練物を得た。次に、2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とし、着色剤マスター(粉砕物)を得た。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、このようにして得られた粉砕物:50重量部と、ポリエステル樹脂R1:50重量部とを120℃に加熱した2軸混練押出機を用いて混練し、冷却後に粗粉砕して平均粒径:1.0mm以下の粉末状の着色原料を得た。
【0142】
次に、上記の方法で得られた着色原料:40重量部、大豆油とメタノールとのエステル交換反応により生成された大豆油エステル交換液(粘度5.1mPa・s、日清オイリオ社製、商品名「大豆油脂肪酸メチル」):60重量部、ハイオレイック菜種油(日清オイリオ社製、商品名「ハイオレイック菜種油」):90重量部、分散剤(ソルスパース13940、日本ルーブリゾール社製):2.0重量部、および帯電制御剤としてのステアリン酸アルミニウム(日本油脂社製):3.0重量部をセラミック製ポット(内容積600ml)に入れ、さらにジルコニアボール(ボール直径:1mm)を体積充填率30%になるようにセラミック製ポットに入れ、卓上ポットミルにて回転速度220rpmで48時間粉砕を行い、トナー粒子および液体現像剤を製造した。
得られた液体現像剤中における、トナー粒子のDv(50)は、7.8μm、Dv(50)/Dn(50)は、1.25であった。
【0143】
(比較例1〜4)
使用する樹脂材料、アミン化合物、および絶縁性液体の種類、含有量などを表1に示すような構成にした以外は、前記実施例1と同様にして、各色に対応する液体現像剤を製造した。
以上の各実施例および各比較例において、使用した樹脂の種類、アミン化合物の種類、アミン価、酸価、主鎖を構成する骨格の種類、化学構造中に含まれる−NHR、−NR’R’’で表される官能基(ただし、R、R’、R’’はアルキル基)の有無、含有量、絶縁性液体の種類、含有量等を表1に示した。なお、表1中、各アミン化合物のアミン価は、JIS K7237「エポキシ樹脂のアミン系硬化剤の全アミン価試験方法」(1995)に準じて測定された値、また、各アミン化合物の酸価は、JIS K0070に準じて測定された値をそれぞれ示す。また、各実施例で得られた液体現像剤をろ過し、得られたトナー粒子の断面を走査型プローブ顕微鏡SPM−9600(島津製作所製)を用いてKFM測定を行った。これにより、アミン化合物のトナー粒子中での分布状態を知ることができる。このようなKFM測定を行った結果、実施例1〜8の各液体現像剤を構成するトナー粒子中では、各種アミン化合物がトナー粒子の表面付近に偏在しており、トナー粒子の中心側にはアミン化合物の存在が認められなかった。これに対して、実施例9の液体現像剤を構成するトナー粒子中では、トナー粒子全体にアミン化合物が分散しているのが確認された。また、実施例1〜4、実施例7〜9の液体現像剤中に含まれるトナー粒子中では、ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂R1またはポリエステル樹脂R2)と各種アミン化合物が相分離し、海島構造が形成されているのを確認した。
【0144】
また、表1中、ポリエステル樹脂R1を「R1」、ポリエステル樹脂R2(酸価:6.0KOHmg/g、重量平均分子量Mw:49,300、ガラス転移温度Tg:52℃、軟化温度Tf:115℃)を「R2」、EFKA−4300(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、アミン価:56.0mgKOH/g)を「a」、EFKA−4402(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、アミン価:22.0mgKOH/g)を「b」、Disperbyk−2000(ビックケミー(株)社製、アミン価:4.0mgKOH/g)を「c」、Disperbyk−116(ビックケミー(株)社製、アミン価:65.0mgKOH/g)を「d」、EFKA−4046(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、アミン価:18.0mgKOH/g)を「e」、アジスパーPB822(味の素ファインテクノ(株)社製、アミン価:16.8mgKOH/g、酸価:13.6mgKOH/g)を「f」、Disperbyk−2001(ビックケミー(株)社製、アミン価:29.0mgKOH/g、酸価:19.0mgKOH/g)を「g」、Disperbyk−130(ビックケミー(株)社製、アミン価:190.0mgKOH/g)を「h」、大豆油とメタノールとのエステル交換反応により生成された大豆油エステル交換液(日清オイリオ社製、商品名「大豆油脂肪酸メチル」)を「j」、ハイオレイック菜種油(日清オイリオ社製、商品名「ハイオレイック菜種油」)を「k」、コスモホワイトP−60(粘度15mPa・s、コスモ石油ルブリカンツ社製)を「l」、ダイナフレシアW−8(粘度14mPa・s、出光興産社製)を「m」、ラウリン酸メチル(ライオン(株)製 パステルM−12)を「n」で示した。
【0145】
【表1】

【0146】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、以下のような評価を行った。
[2.1]正帯電の帯電特性
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤について、マイクロチック・ニチオン社製の「顕微鏡式レーザーゼータ電位計」ZC−2000を用いて電位差を測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
測定は、液体現像剤を希釈溶媒で希釈して、10mmの透明セルに入れ、電極間9mmで300Vの電圧をかけると同時に顕微鏡でセル内の粒子の移動速度を観察することで、移動速度を算出して、その値からゼータ電位を求めることにより行った。
【0147】
A :電位差が+100mV以上(非常に良い)。
B :電位差が+85mV以上、+100mV未満(良い)。
C :電位差が+70mV以上、+85mV未満(普通)。
D :電位差が+50mV以上、+70mV未満(やや悪い)。
E :電位差が+50mV未満(非常に悪い)。
【0148】
[2.2]現像効率
図2に示すような画像形成装置を用いて、画像形成装置の現像ローラ上に前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による単色の液体現像剤層を形成した。次に、現像ローラの電位を300Vとし、感光体の表面を500Vで均一に帯電させ、液体現像剤層が感光体と現像ローラとの間を通過した後の、現像ローラ上のトナー粒子と、感光体上のトナー粒子とをテープで採取した。採取に用いた各テープを記録紙上に貼り付け、それぞれのトナー粒子の濃度を測定した。測定後、感光体上で採取されたトナー粒子の濃度を、感光体上で採取されたトナー粒子の濃度と現像ローラ上で採取されたトナー粒子の濃度との総和で除した数値に100を掛けた値X(現像効率)を求め、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0149】
A :X≧95(特に優れている)
B :90≦X<95(優れている)
C :85≦X<90(普通)
D :80≦X<85(やや悪い)
E :X<80(非常に悪い)
【0150】
[2.3]転写効率
図2に示すような画像形成装置を用いて、画像形成装置の現像ローラ上に前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による単色の液体現像剤層を形成した。次に、現像ローラの電位を300Vとし、感光体の表面を500Vで均一に帯電させ、感光体上に、ベタのトナー像を形成した。このトナー像が感光体と中間転写部との間を通過した後の、感光体上のトナー粒子と、中間転写部上のトナー粒子とをテープで採取した。採取に用いた各テープを記録紙上に貼り付け、それぞれのトナー粒子の濃度を測定した。測定後、中間転写部上で採取されたトナー粒子の濃度を、中間転写部上で採取されたトナー粒子の濃度と感光体上で採取されたトナー粒子の濃度との総和で除した数値に100を掛けた値Y(転写効率)を求め、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0151】
A :Y≧95(特に優れている)
B :90≦Y<95(優れている)
C :85≦Y<90(普通)
D :80≦Y<85(やや悪い)
E :Y<80(悪い)
【0152】
[2.4]保存性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、温度:15〜25℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の5段階の基準に従い評価した。
A :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がまったく認められない。
B :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がほとんど認められない。
C :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がわずかに認められるが、液体現像剤として
問題の無い範囲である。
D :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がはっきりと認められる。
E :トナー粒子の浮遊および凝集沈降が顕著に認められる。
【0153】
[2.5]定着強度
図2に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成した。その後、図5に示すような定着装置を用いて、熱定着ローラの設定温度を100℃として、熱定着を行った。
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.2kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0154】
A :画像濃度残存率が95%以上(非常に良い)。
B :画像濃度残存率が90%以上95%未満(良い)。
C :画像濃度残存率が80%以上90%未満(普通)。
D :画像濃度残存率が70%以上80%未満(やや悪い)。
E :画像濃度残存率が70%未満(非常に悪い)。
【0155】
【表2】

【0156】
表2から明らかなように、本発明の液体現像剤は、正帯電の帯電特性に優れ、現像効率、転写効率に優れたものであり、得られるトナー画像は、均一な画像濃度を有するものであった。これに対し、比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図である。
【図3】現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図である。
【図4】図1に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0158】
1…トナー粒子 1000…画像形成装置 10Y、10M、10C、10K…感光体 11Y…帯電ローラ 12Y…露光ユニット 13M、13Y…感光体スクイーズローラ 14M、14Y…クリーニングブレード 15M、15Y…現像剤回収部 16Y…除電ユニット 17Y…感光体クリーニングブレード 18Y…現像剤回収部 20Y、20M、20C、20K…現像ローラ 201Y…液体現像剤層 21Y…現像ローラクリーニングブレード 22Y…現像剤圧縮ローラ 23Y…クリーニングブレード 30Y、30M、30C、30K…現像部 31Y…液体現像剤貯留部 32Y…塗布ローラ 33Y…規制ブレード 34Y…現像剤撹拌ローラ 40…中間転写部 41…ベルト駆動ローラ 42…テンションローラ 46…中間転写部クリーニングブレード 47…現像剤回収部 51Y、51M、51C、51K…1次転写バックアップローラ 52Y、52M、52C、52K…中間転写部スクイーズ装置 53Y…中間転写部スクイーズローラ 54Y…中間転写部スクイーズバックアップローラ 55Y…中間転写部スクイーズクリーニングブレード 60…2次転写ユニット 61…2次転写ローラ 62…クリーニングブレード 63…現像剤回収部 70Y…搬送路 80Y、80M、80C、80K…液体現像剤補給部 81Y…回収液体現像剤貯留部 82Y…補給液体現像剤貯留部 83Y、84Y…搬送手段 85Y…ポンプ 86Y…フィルタ 100Y…現像ユニット 101Y…感光体スクイーズ装置 F40…定着部(定着装置) F1…熱定着ローラ(加熱ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ローラ基材 F1c…弾性体 F12…除去ブレード F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ローラ基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…記録媒体 F5a…トナー画像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体と、主としてポリエステル樹脂で構成されたトナー粒子とを有し、
前記トナー粒子は、構成成分として、アミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物を含むものであり、
前記トナー粒子中に含まれる前記アミン化合物の含有量は、前記トナー粒子100重量部に対して、1〜10重量部であることを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記アミン化合物は、主鎖がアクリル骨格を有するものである請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記アミン化合物の酸価は、0.5mgKOH/g未満である請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記アミン化合物は、−NHRおよび/または−NR’R’’(ただし、R、R’、R’’はアルキル基)で表される官能基を有する脂肪族アミンである請求項1ないし3のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記トナー粒子は、水系分散媒中に前記ポリエステル樹脂と前記アミン化合物と有機溶剤とを含む分散質が水系分散媒に分散した乳化液中において、前記分散質を合一させることにより製造されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
ポリエステル樹脂とアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物と有機溶剤とを含む分散質が、水系分散媒に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、
複数個の前記分散質を合一させ、合一粒子を得る合一工程と、
前記合一粒子に含まれる前記有機溶剤を除去し、樹脂微粒子を得る脱溶剤工程と、
前記樹脂微粒子を絶縁性液体に分散させる分散工程とを有し、
前記脱溶剤工程で得られる前記樹脂微粒子が、前記アミン化合物を、前記樹脂微粒子100重量部に対して、1〜10重量部含むものであることを特徴とする液体現像剤の製造方法。
【請求項7】
前記分散液は、前記ポリエステル樹脂と前記アミン化合物と前記有機溶剤とを含む溶液中に水系液体を加えていくことにより、O/W型の乳化液中において、前記ポリエステル樹脂と前記アミン化合物と前記有機溶剤とを含む分散質が水系分散媒に分散したものである請求項6に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項8】
色の異なる複数の液体現像剤を用いて、各色に対応した前記単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を前記記録媒体に転写し、前記記録媒体上に未定着カラー画像を形成する2次転写部と、
前記未定着カラー画像を前記記録媒体上に定着する定着部とを有し、
前記液体現像剤が、絶縁性液体と、ポリエステル樹脂およびアミン価が1〜100mgKOH/gのアミン化合物を構成成分として有するトナー粒子とを含むものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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