説明

液体現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、および画像形成方法

【課題】流動性が向上された液体現像剤を提供。
【解決手段】キャリア液と、前記キャリア液中に分散され、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性樹脂、および下記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子と、を有する液体現像剤。



(前記一般式(I)中、Rは水素または炭素数3以下のアルキル基を、Rは炭素数18以下のアルキレン基を、R乃至Rは炭素数18以下のアルキル基またはアラルキル基を、Xは−COO−または−CONH−を、Yはハロゲンイオンまたは構造中に−COO−基または−SO−基を有するアニオンを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式現像方式に用いるトナーに関しては、例えば以下のものが提案されている。
例えば、ポリエステル系トナー中に添加されたワックスの分散剤としてスチレン−ブタジエンブロック共重合体を使用する乾式の静電荷像現像用トナーが開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、スチレンアクリル系樹脂、ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体、およびワックスを含む乾式のトナー用樹脂組成物が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
また、特定範囲の分子量を有するスチレンアクリル樹脂と、スチレンとオレフィンのブロック共重合体を含む乾式の静電荷像現像用トナーが開示されている(例えば特許文献3参照)。
また、重量平均分子量(Mw)が1万から15万のスチレンアクリル系樹脂と、スチレンとオレフィンのブロック共重合体からなる乾式のトナー用樹脂組成物が開示されている(例えば特許文献4参照)。
【0004】
また、熱可塑性エラストマーを結着樹脂とする乾式のトナーが開示されている(例えば特許文献5参照)。
また、特定の第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有する乾式の正極性トナーが開示されている(例えば特許文献6および7参照)。
【0005】
一方、湿式現像方式に用いる液体現像剤に関しては、例えばキャリア液中に樹脂および着色剤を含むトナー粒子が分散している静電写真用液体現像剤において、キャリア液として特定の一般式で表されるエーテル化合物の1種または2種以上を用いる静電写真用液体現像剤が開示されている(例えば特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−084407号公報
【特許文献2】特開2000−181141号公報
【特許文献3】特開2001−175031号公報
【特許文献4】特開平11−184149号公報
【特許文献5】特開2007−079348号公報
【特許文献6】特開昭63−60458号公報
【特許文献7】特開2000−292987号公報
【特許文献8】特開平06−175414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、流動性が向上された液体現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、以下の発明により達成される。
請求項1に係る発明は、
キャリア液と、
前記キャリア液中に分散され、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性樹脂、および下記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子と、
を有する液体現像剤である。
【0009】
【化1】

【0010】
(前記一般式(I)中、Rは水素または炭素数3以下のアルキル基を、Rは炭素数18以下のアルキレン基を、R乃至Rは炭素数18以下のアルキル基またはアラルキル基を、Xは−COO−または−CONH−を、Yはハロゲンイオンまたは構造中に−COO−基または−SO−基を有するアニオンを示す。)
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記キャリア液が、下記(1)および(2)から選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項1に記載の液体現像剤である。
(1)前記キャリア液に可溶な重合体を形成し得る単量体と無水マレイン酸とを構成単位として有する共重合体であって、1級アミノ化合物または1級アミノ化合物と2級アミノ化合物との反応体であり、且つ構造中に半マレイン酸アミド成分とマレインイミド成分とを繰返し単位として有する共重合体
(2)金属石鹸
【0012】
請求項3に係る発明は、
請求項1に記載の液体現像剤が収容された現像剤カートリッジである。
【0013】
請求項4に係る発明は、
請求項1に記載の液体現像剤を収納し、且つ静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を該液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置を備え、画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジである。
【0014】
請求項5に係る発明は、
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
請求項1に記載の液体現像剤を収納すると共に、静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を該液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、
静電潜像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を請求項1に記載の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、
を有する画像形成方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂を含み、更に前記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子を有しない場合に比べ、流動性が向上された液体現像剤が提供される。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、前記(1)および(2)から選択される少なくとも1種の化合物をキャリア液中に含まない場合に比べ、流動性が向上された液体現像剤が提供される。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂を含み、更に前記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子を有しない液体現像剤を収納する場合に比べ、流動性が向上された液体現像剤が収納された現像剤カートリッジが提供される。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂を含み、更に前記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子を有しない液体現像剤を収納する場合に比べ、操作性に優れたプロセスカートリッジが提供される。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂を含み、更に前記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子を有しない液体現像剤を収納する場合に比べ、操作性に優れた画像形成装置が提供される。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂を含み、更に前記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子を有しない液体現像剤を用いる場合に比べ、操作性に優れた画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
<液体現像剤>
本実施形態に係る液体現像剤は、キャリア液と、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性樹脂、および下記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子と、を有し、該トナー粒子は前記キャリア液中に分散される。
【0025】
【化2】

【0026】
(前記一般式(I)中、Rは水素または炭素数3以下のアルキル基を、Rは炭素数18以下のアルキレン基を、R乃至Rは炭素数18以下のアルキル基またはアラルキル基を、Xは−COO−または−CONH−を、Yはハロゲンイオンまたは構造中に−COO−基または−SO−基を有するアニオンを示す。)
【0027】
液体現像剤においては、キャリア液に対し熱可塑性の結着樹脂を含有するトナー粒子を分散させたものが用いられている。この液体現像剤において、トナー粒子中にスチレン系熱可塑性エラストマーを含有させることで、結着樹脂に柔軟性が付与され得られる画像における耐折り曲げ特性(クリース特性)が向上される。また、トナー粒子中にスチレン系熱可塑性樹脂を含有させることで、得られる画像における耐引っ掻き特性(スクラッチ特性)が向上される。
しかし、スチレン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性樹脂を含有するトナーを用いた場合、液体現像剤の固形分濃度を高めようとすると流動性が低下することがあった。またこれに加えて、液体現像剤を製造する際の粉砕性に劣ることがあり、この粉砕性の低下は特に含有するスチレン系熱可塑性樹脂の分子量を上げる程、顔料濃度を上げる程顕著になる傾向にある。
【0028】
これに対し、本実施形態に係る液体現像剤では、トナー粒子中に更に前記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有するため、液体現像剤の流動性が向上し、その結果操作性が向上する。
これは、必ずしも明確ではないものの、上記第四級アンモニウム塩基含有ポリマーの含有によってキャリア液との相溶性が落ちるため減粘効果が得られ、液体現像剤の流動性が上がるものと推察される。
【0029】
また、上記第四級アンモニウム塩基含有ポリマーの含有によって、さらにキャリア液中でのトナー粒子の粉砕性が向上し、その結果生産性が向上される。
これは、必ずしも明確ではないものの、上記スチレン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性樹脂よりも低分子量である第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有することによって、トナー粒子の粉砕性が向上するか、あるいは、第四級アンモニウム塩基含有ポリマーが塩構造を有するために局所的に他の樹脂との相溶性が低下し、そこが粉砕ポイントとなって粉砕性が向上するものと推察される。
【0030】
尚、従来においても、乾式の現像剤におけるトナー粒子中に第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有させることがあったが、乾式トナーにおける第四級アンモニウム塩基含有ポリマーの添加はトナーに正帯電性を付与するためであり、いわゆる帯電制御剤として含有されるものである。液体現像剤では、摩擦帯電によってトナーに電荷を付与するわけではないため、第四級アンモニウム塩基含有ポリマーによる正帯電性付与の効果は期待できない。また、乾式の現像剤では当然キャリア液が存在しないため、流動性が問題となることもない。
【0031】
また、本実施形態に係る液体現像剤においては、更にキャリア液中に、下記(1)および(2)から選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
(1)前記キャリア液に可溶な重合体を形成し得る単量体と無水マレイン酸とを構成単位として有する共重合体であって、1級アミノ化合物または1級アミノ化合物と2級アミノ化合物との反応体であり、且つ構造中に半マレイン酸アミド成分とマレインイミド成分とを繰返し単位として有する共重合体
(2)金属石鹸
【0032】
キャリア液中に、更に上記(1)の共重合体および上記(2)の金属石鹸から選択される少なくとも1種の化合物を含むことにより、液体現像剤の流動性が更に向上し、その結果操作性が向上する。
これは、必ずしも明確ではないものの、上記化合物の添加によりトナー粒子が帯電され、トナー粒子同士が反発し合うために分散性が向上して減粘効果が得られ、液体現像剤の流動性が上がるものと推察される。
【0033】
以下、本実施形態に係る液体現像剤の構成成分について、詳細に説明する。
【0034】
〔トナー粒子〕
−スチレン系熱可塑性樹脂−
本実施形態のトナー粒子に含まれるスチレン系熱可塑性樹脂としては、スチレン系単量体の重合体、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを構成単位として含むビニル系共重合体が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とはアクリルまたはメタクリルのいずれかまたは両方であることを意味する。
上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ter−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、等が挙げられる。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの他、アクリル酸2−クロルエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、ビスグリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェートなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が好適に用いられる。
上記スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外に、その他のビニル系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸およびそのα−またはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、等の不飽和ジカルボン酸およびそのモノエステル誘導体またはジエステル誘導体;コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド等を使用してもよい。単量体として、必要に応じて2個以上の二重結合を有する架橋性モノマーを使用してもよい。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート等のジアクリレート化合物およびそれらのメタクリレート化合物、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等の多官能架橋性モノマーおよびそれらのメタクリレート化合物等が挙げられる。
【0036】
上記ビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、15万以上50万以下が望ましい。
また、上記ビニル系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2以上20以下が望ましい。
なお、上記ビニル系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定される分子量分布において、複数のピークや肩部をもっていてもよい。
【0037】
トナー粒子中のスチレン系熱可塑性樹脂の含有率は、全結着樹脂に対して、50質量%以上95質量%以下であることが望ましく、60質量%以上90質量%以下がより望ましい。
【0038】
−スチレン系熱可塑性エラストマー−
本実施形態のトナー粒子に含まれるスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体、ランダム共重合体等が挙げられ、常温(20℃)ではゴムの特色を持つが、高温では熱可塑性プラスチックのごとく、軟化する材料である。
例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリブタジエン/ブチレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−水添ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−水添ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−水添ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体には、1−4体、1−2体の結合の形で二重結合が残るが、これを水素添加したものを使用してもよい。さらに、ポリスチレンに挟まれたソフトセグメント部に極性基を導入したブロック共重合体を使用してもよい。なお、上記共重合体の例示において、「−」で区切った前後はブロックポリマーを意味し、「/」で区切った前後はランダムでも良いし、ブロックでも良いことを意味する。
市販品としては、旭化成社製のタフテックM1911、タフテックM1943、タフテックMP10、アサプレンT439、タフプレンA、クラレ社製のDYNARON8630Pなどが挙げられる。特に、ポリスチレンに挟まれたソフトセグメント部が、極性基導入と水素添加された旭化成社製のSOE−L611、SOE−L611X、SOE−L605(以上、商品名)などが好適に使用される。
【0039】
トナー粒子における上記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有率は、全結着樹脂に対して5質量%以上であることが望ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーの含有率の上限は、特に規定されるものではないが、スチレン系熱可塑性樹脂の含有率を考慮すると全結着樹脂に対して50質量%以下が好ましく、全結着樹脂に対して40質量%以下がより好ましい。
【0040】
スチレン系熱可塑性エラストマーの25℃でのキャリア液の吸液率は200%以下であることが望ましい。なお、スチレン系熱可塑性エラストマーの25℃でのキャリア液の吸液率は、0%以上150%以下がより望ましく、5%以上100%以下が特に望ましい。
【0041】
上記吸液率は、熱可塑性エラストマーのペレット2gを、パラフィンオイルが100ml入った200mlビーカーに入れ、25℃の恒温装置に15時間静置したのち、200メッシュの金網でろ過し、濾別したペレットを濾紙に挟んで余分のオイルを吸い取った後、重量増加を測定し、次式で計算される値である。
吸液率(%)=(重量増加/はじめの乾燥ペレットの重量)×100
【0042】
−第四級アンモニウム塩基含有ポリマー−
本実施形態における第四級アンモニウム塩基含有ポリマーは、前述の一般式(1)で示される構成単位を有し、更には該構成単位を1質量%以上50質量%以下含むことが好ましい。
また、スチレンまたはその置換体、アクリル酸類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸類、メタクリル酸エステル類、アクリロニトリル等のスチレン−アクリル系単量体から選ばれる1種または2種を50質量%以上99質量%以下含むことが好ましい。
【0043】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、またはスチレン系化合物の共重合体で、側鎖に四級アンモニウム塩基構造を有するものが好ましく、特に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
【0044】
上記のごとき四級アンモニウム塩基含有ポリマーの具体例を以下例示する。
(a)N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸エステル/他の(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンとの共重合体、の四級アンモニウム塩
(b)N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド/他の(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレンとの共重合体、の四級アンモニウム塩
(c)N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸エステル/他の(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレン、の四級アンモニウム塩
【0045】
前述の一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーにおいて、Rは水素または炭素数3以下のアルキル基を、Rは炭素数18以下のアルキレン基を、R乃至Rは炭素数18以下のアルキル基またはアラルキル基を、表す。
ここで上記アルキル基およびアルキレン基は、それぞれ直鎖状、分子鎖状、環状の脂肪族炭化水素基である。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−,iso−プロピル、n−,sec−,iso−,tert−ブチル、n−,sec−,iso−,tert−アミル、n−,sec−,iso−,tert−ヘキシル、n−,sec−,iso−,tert−オクチル、n−,sec−,iso−,tert−ノニル等が、好適なものとして挙げられる。アルキレン基の例としては、エチレン、プロピレン等の炭素数2以上3以下の直鎖状または分子鎖状のものが、好適なものとして挙げられる。アラルキル基とは、アリール基で置換されている低級アルキル基を意味し、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナルチルエチル基等が挙げられる。
【0046】
尚、上記の第四級アンモニウム塩基含有ポリマーは帯電制御剤としての機能は有していなくてもよい。
【0047】
重量平均分子量は2000以上100000以下が好ましく、更には5000以上20000以下がより好ましい。
該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定される。
【0048】
前記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーの代表的な具体例としては、藤倉化成製FCA−207P,FCA−201PSが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
トナー粒子における前記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーの含有率は、全結着樹脂に対して1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
−その他の添加剤−
本実施形態のトナー粒子は、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂のほか、必要に応じて、他の結着樹脂、着色剤、ワックス、電荷制御剤、シリカ粉末、金属酸化物など他の添加剤を含有していてもよい。これら添加剤は、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂を含む結着樹脂に混練するなどして内添してもよいし、粒子としてトナーを得たのち混合処理を施すなどして外添してもよい。なお、通常、着色剤を含むが、透明のトナーとする場合は、着色剤を含まなくてもよい。
【0051】
トナー粒子に含まれるスチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂以外の結着樹脂としては、公知の結着樹脂が挙げられる。例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、等が挙げられる。
【0052】
着色剤としては、公知の顔料または染料が用いられる。具体的には、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各顔料が用いられる。
【0053】
イエローの顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
マゼンタの顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。
シアンの顔料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用される。
黒の顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、鉄黒等が用いられる。
【0054】
ワックスとしては、特に制限はなく、例えば、カルナバワックス、木蝋、米糠蝋等の植物性ワックス;蜜ワックス、昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックスなどの動物性ワックス;モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物性ワックス、エステルを側鎖に有するフィッシャートロプシュワックス(FTワックス)、特殊脂肪酸エステル、多価アルコールエステル等の合成脂肪酸固体エステルワックス;パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物等の合成ワックス;などが挙げられる。ワックスは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0055】
電荷制御剤としては、特に制限はなく、従来公知の電荷制御剤が使用される。例えば、ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、アミド系化合物、イミド系化合物、有機金属化合物等の正帯電性電荷制御剤;オキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料やサリチル酸誘導体等の負帯電性電荷制御剤;などが挙げられる。電荷制御剤は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0056】
金属酸化物としては、特に制限はなく、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0057】
−トナー粒子の製造方法−
本実施形態で用いるトナー粒子を製造する方法は特に限定されず、例えば、粉砕トナー、液中乳化乾燥トナー、もしくは重合トナーの製造方法で製造したトナーをキャリア液中で微粉砕して得られる。
例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂を含む結着樹脂、前述の第四級アンモニウム塩基含有ポリマー、着色剤、他の添加剤等をヘンシェルミキサー等の混合装置に投入して混合し、この混合物を二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミル、ニーダー等で溶融混練した後、ドラムフレーカー等で冷却し、ハンマーミル等の粉砕機で粗粉砕し、さらにジェットミル等の粉砕機で微粉砕した後、風力分級機等を用いて分級することにより、粉砕トナーが得られる。
また、スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂を含む結着樹脂、前述の第四級アンモニウム塩基含有ポリマー、着色剤、他の添加剤等を酢酸エチル等の溶剤に溶解し、炭酸カルシウムのごとき分散安定剤が添加された水中に乳化/懸濁し、溶剤を除去した後、分散安定剤を除去して得られた粒子を濾過・乾燥することによって液中乳化乾燥トナーが得られる。
また、結着樹脂を形成する重合性単量体、前述の第四級アンモニウム塩基含有ポリマー、着色剤、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、イソプロピルパーオキシカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、2,4−ジクロリルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等)、他の添加剤等を含有する組成物を水相中に攪拌下で加えて造粒し、重合反応後、粒子を濾過・乾燥することによって重合トナーが得られる。
【0058】
尚、上記に示した製造方法において、前述の第四級アンモニウム塩基含有ポリマーの添加は、予め熱可塑性樹脂に溶解した上で添加してもよい。
【0059】
なお、トナーを得る際の各材料(スチレン系熱可塑性エラストマーおよびスチレン系熱可塑性樹脂、着色剤、その他の添加剤など)の配合割合は自由に設定される。得られたトナーは、ボールミル、ビーズミル、高圧湿式微粒化装置等の公知の粉砕装置を用いて、キャリアオイル中で微粉砕することにより本実施形態の液体現像剤用トナー粒子が得られる。
【0060】
トナー粒子の体積平均粒径D50vは、0.5μm以上5.0μm以下であることが望ましい。トナー粒子の体積平均粒径D50vは、0.8μm以上4.0μm以下であることがより望ましく、1.0μm以上3.0μm以下であることが更に望ましい。
【0061】
トナー粒子の体積平均粒径D50v、数平均粒度分布指標(GSDp)、体積平均粒度分布指標(GSDv)等は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 例えば、LA920(堀場製作所社製)を用いて測定される。粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描き、累積16%となる粒子径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒子径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒子径を体積D84v、数D84pと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0062】
[キャリア液]
キャリア液は、トナー粒子を分散させるための絶縁性の液体であり、特に制限はないが、例えば、パラフィンオイル等の脂肪族系炭化水素溶媒(市販品では、松村石油社製モレスコホワイトMT−30P、モレスコホワイトP40、モレスコホワイトP70、エクソン化学社製アイソパーL、アイソパーMなど)、ナフテン系オイル等の炭化水素系溶媒(市販品では、エクソン化学社製 エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130、日本石油化学社製 ナフテゾールL、ナフテゾールM、ナフテゾールH、Newナフテゾール160、Newナフテゾール200、Newナフテゾール220、NewナフテゾールMS−20Pなど)が挙げられ、それらの中に、トルエン等の芳香族化合物を含有させてもよい。
【0063】
本実施形態の液体現像剤に含まれるキャリア液は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。キャリア液を2種以上の混合系として用いる場合は、例えば、パラフィン系溶剤と植物油との混合系や、シリコーン系溶剤と植物油との混合系が挙げられ、パラフィン系溶剤と植物油との混合系であることが望ましい。
本実施形態で用いるキャリア液は、パラフィンオイルを主成分とすることが望ましい。ここで「主成分」とは、キャリア液を構成する成分のうち、最も多く含まれる成分であり、望ましくは50容量%以上である。
【0064】
キャリア液には、下記(1)に示す特定の共重合体や、下記(2)に示す金属石鹸を添加してもよい。
【0065】
−特定の共重合体−
本実施形態においてはキャリア液中に、下記(1)の化合物を含むことが好ましい。
(1)前記キャリア液に可溶な重合体を形成し得る単量体と無水マレイン酸とを構成単位として有する共重合体であって、1級アミノ化合物または1級アミノ化合物と2級アミノ化合物との反応体であり、且つ構造中に半マレイン酸アミド成分とマレインイミド成分とを繰返し単位として有する共重合体(以下単に「特定の共重合体」とも称す)
【0066】
特定の共重合体は、半マレイン酸アミド成分とマレインイミド成分を有する共重合体と、これにキャリア液中での溶解性を付与する重合体成分とを含む、少なくとも三元共重合体であることが好ましい。
【0067】
上記溶解性を付与する重合体の単量体としては、アルケン類、シクロアルケン類、スチレン類、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、カルボン酸エステル類あるいはアクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0068】
更に説明すると、上記溶解性を付与する重合体の単量体は、総炭素数3から40の置換されてもよいアルケン類(例えば、プロペニレン、ブテン、塩化ビニリデン、ω−フェニル−1−プロペン、アリルアルコール、ヘキセン、オクテン、2−エチルヘキセン、デセン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、ドコセン、エイコセン、10−ウンデセン酸ヘキシル等)、総炭素数5から40のシクロアルケン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプテン−2,5−シアノビシクロ〔2.2.1〕−ヘプテン−2等)、総炭素数10から40の置換されてもよいスチレン類(例えば、4−エチルスチレン、4−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、4−ヘキシルオキシスチレン等)、総炭素数1から40の脂肪族基置換ビニルエーテルまたはアリルエーテル類[脂肪族基として、置換されてもよいアルキル基(例えばメチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコサニル、2−エチルヘキシル、4−メトキシブチル等)、置換されてもよいアラルキル基(例えばベンジル、フェネチル等)、置換されてもよいシクロアルキル基(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等)または、置換されてもよいアルケニル基(例えば2−ペンテニル、4−プロピル−2−ペンテニル、オレイル、リノレイル等)が挙げられる]、総炭素数6から40の置換されてもよい芳香族基置換ビニルエーテルあるいはアリルエーテル類(芳香族基として、例えばフェニル、4−ブトキシフェニル、4−オクチルフェニル等)、総炭素数2から40の置換されてもよい脂肪族カルボン酸のビニルエステルあるいはアリルエステル類(例えば、酢酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸のエステル類等)、総炭素数6から24の芳香族カルボン酸のビニルエステルあるいはアリルエステル類(例えば、安息香酸、4−ブチル安息香酸、4−ヘキシル安息香酸のエステル類)、またはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸の総炭素数1から32の置換されてもよい脂肪族基エステル類(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシル、2−ヒドロキシエチル、N,N−ジメチルアミノエチル等)等が挙げられる。
【0069】
これらの単量体と無水マレイン酸との共重合体(特定の共重合体の中間体)について、更に具体的に例示するが、以下の化合物に限定されるものではない。
【0070】
【化3】

【0071】
【化4】

【0072】
【化5】

【0073】
上述の如き、無水マレイン酸を含む共重合体は、従来公知の方法に従って製造し得る。例えば、小田良平編、「近代工業化学 第16巻,高分子工業化学I上」281頁(朝倉書店刊)、J.Brandrup等著「Polymer Handbook 2nd.Edition」John Wiley & Sons,New York,第2章等の総説引例の公知文献等に詳細に記載されている。
【0074】
本実施形態における前記特定の共重合体は、前記の無水マレイン酸を含む共重合体とアミノ化合物との反応体であるが、アミノ化合物としては下記一般式(A)で示される1級アミノ化合物、または一般式(A)で示される1級アミノ化合物および一般式(B)で示される2級アミノ化合物が用いられる。
一般式(A) RNH
一般式(B) NH(R)(R
(式中、RおよびRは脂肪族基、脂環式炭化水素基、芳香族基または複素環基を表し、一般式(B)のRおよびRは同じでも異なってもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
【0075】
およびRは、好ましくは炭素数1から32の置換されてもよいアルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコサニル、2−エチルヘキシル、4−ブトキシブチル、N,N−ジブチルアミノプロピル等)、炭素数3から32の置換されてもよいアルケニル基(例えば、アリル、2−ペンテニル、4−プロピル−2−ペンテニル、デセニル、オレイル、リノレイル等)、炭素数7から36の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル等)、炭素数5から32の置換されてもよい脂環式炭化水素基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプチル、シクロヘキセニル等)、炭素数6から38の置換されてもよいアリール基(例えば、フェニル、トリル、4−ブチルフェニル、4−デシルフェニル、4−ブトキシフェニル等)または、原子数5以上の複素環基(例えば、フリル、チエニル等)を表す。一般式(B)の場合、RとRは炭素原子で閉環されてもよく、また環内にヘテロ原子を含んでもよい(例えばモルホリル等)。
【0076】
アミノ化合物例としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、ドコサニルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3,3−ジメチルペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アリルアミン、ベンジルアミン、4−n−オクチルアニリン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
これらアミノ化合物と前述の特定の共重合体中間体との反応体である本実施形態における特定の共重合体は、半マレイン酸アミド成分およびマレインイミド成分を含むが、この化合物は、高分子化合物中のマレイン酸無水物成分と1級アミノ化合物との高分子反応で半マレイン酸アミド共重合体とし、さらに脱水閉環反応を行うことで半マレイン酸アミド共重合体の一部をマレインイミド成分に変えることによって製造される。
即ち、カルボン酸無水物およびアミノ化合物と反応を生ずることなく且つ下記反応温度において両者を溶解し得る有機溶媒中[例えば、炭化水素類(例えば、デカン、アイソパー、アイソパーH、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等)、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、クロロホルム、ジクロロエチレン、メチルクロロホルム等)、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキサイド等が挙げられ、単独あるいは2種以上混合して使用する]において、該化合物を混合し、温度60℃から200℃、好ましくは100℃から180℃で、1時間から80時間、好ましくは3から15時間反応させる。また、本反応において、有機塩基または無機酸、有機酸を触媒量用いると反応が促進される。また、通常の脱水剤を併用してもよい。この反応により得られる反応体は、上述のごとく高分子化合物中に、半マレイン酸アミド体とマレインイミド体とを含有する高分子化合物であるが、半マレイン酸アミド体とマレインイミド体の質量比は10:90から90:10であることが好ましく、更には30:70から70:30がより好ましい。
【0078】
また特定の共重合体を構成する、キャリア液に可溶な重合体を形成し得る単量体部分と無水マレイン酸部分とは質量比で10:90から99.5:0.5であることが好ましく、更には30:70から70:30がより好ましい。
特定の共重合体の分子量は、GPC法のポリスチレン換算で重量平均1,000から300,000であることが好ましく、更には3,000から100,000がより好ましい。
前記特定の共重合体の例としては、中間体として前述の例(1)の化合物とn−オクタデシルアミンの反応体、中間体として前述の例(2)の化合物とn−ヘキサデシルアミンの反応体、中間体として前述の例(4)の化合物とn−オクチルアミンの反応体、中間体として前述の例(5)の化合物と2−エチルヘキシルアミンの反応体等が挙げられるが、これに限定されない。
【0079】
キャリア液中における上記特定の共重合体の含有率は、キャリア液全量に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
−金属石鹸−
本実施形態においてはキャリア液中に、(2)金属石鹸を含むことが好ましい。
金属石鹸としては、液体現像剤のキャリア液に可溶の金属石鹸類が挙げられる。金属石鹸とは、カチオン成分が1価または多価の金属成分であり、アニオン成分が有機酸成分によって表される化合物を意味している。
【0081】
金属石鹸を構成する金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、ガリウム、チタン、ジルコニウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、錫、鉛、カドミウム、銀等が挙げられる。
金属石鹸を構成する酸としては、カルボン酸、アルキル硫酸、スルホン酸、リン酸エステル等の酸性基を有する有機酸が挙げられる。カルボン酸としては、炭素原子数6から24のカルボン酸が挙げられる。例としては、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸(オクテン酸)、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ナフテン酸、樹脂酸、アルキルフタル酸、アルキルサリチル酸等が、アルキル硫酸としては炭素数12から20のアルキル硫酸エステルが、スルホン酸としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、石油スルホン酸等が、リン酸エステルとしては、炭素数8から20のモノ、ジアルキルリン酸エステルが挙げられる。
【0082】
好ましい金属石鹸の例としては、ナフテン酸鉄、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸ジルコニウム、オクテン酸鉄、オクテン酸コバルト、オクテン酸ニッケル、オクテン酸ジルコニウム、トリステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸銅、樹脂酸鉛、石油酸バリウム、2−エチルヘキシルスルホコハク酸のマンガン塩等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0083】
キャリア液中における上記金属石鹸の含有率は、キャリア液全量に対して0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0084】
またこの他、キャリア液は、各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等を含んでいてもよい。
【0085】
[液体現像剤の製造方法]
本実施形態の液体現像剤は、既述のトナー粒子とキャリア液とを、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ビーズミル等の分散機を用いて混合し、粉砕して、トナー粒子をキャリア液中に分散することにより得られる。
なお、トナー粒子のキャリア液中への分散は分散機に限られず、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散してもよいし、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散してもよいし、超音波によって分散してもよい。
【0086】
キャリア液中のトナー粒子の濃度は、0.5質量%以上40質量%以下の範囲とすることが望ましく、1質量%以上30質量%以下の範囲とすることがより望ましい。
【0087】
その後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミおよび粗大粒子を除去してもよい。
【0088】
<プロセスカートリッジ、画像形成装置>
本実施形態の画像形成装置は、静電潜像保持体(以下「感光体」ともいう)と、前記静電潜像保持体の表面を帯電する帯電装置と、前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、上記本実施形態に係る液体現像剤を収納すると共に、静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を該液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体に該トナー像を定着する定着装置と、を備える。尚、現像装置に供給される液体現像剤は、該液体現像剤が収容され画像形成装置に脱着し得る現像剤カートリッジから供給してもよい。
【0089】
上記画像形成装置において、例えば前記現像装置を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、既述の液体現像剤を収納し、潜像保持体上に形成された静電潜像を液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
以下、本実施形態における、液体現像剤を用いた画像形成装置を、図面を参照しつつ説明する。
【0090】
図1は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置100は、感光体(静電潜像保持体)10、帯電装置20、露光装置(静電潜像形成装置)12、現像装置14、中間転写体(転写装置)16、クリーナ18、転写定着ローラ(転写装置)28を含んで構成される。感光体10は円柱形状を有し、該感光体10の外周に、帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、および、クリーナ18が順次に設けられている。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0091】
帯電装置20が感光体10の表面を予め定められた電位に帯電させ、帯電された表面を画像信号に基づき、露光装置12が、例えばレーザ光線によって露光して静電潜像を形成する。
現像装置14は、現像ローラ14aと現像剤収納容器14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、現像剤収納容器14bに収納される液体現像剤24に一部が浸るようにして設けられる。液体現像剤24は、キャリア液と、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性樹脂、前述の第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子と、を有する。
【0092】
液体現像剤24中では、トナー粒子は分散されているが、例えば液体現像剤24を、さらに現像剤収納容器14b内に設けられる攪拌部材によって攪拌してもよい。
【0093】
現像ローラ14aに供給された液体現像剤24は、規制部材によって一定の供給量に制限された状態で感光体10に搬送され、現像ローラ14aと感光体10とが近接(あるいは接触)する位置で静電潜像に供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像26となる。
【0094】
現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する感光体10に搬送され、用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、感光体10からのトナー像の剥離効率を含めた記録媒体への転写効率を向上させ、さらに記録媒体への転写と同時に定着を行うため、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。このとき、感光体10および中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0095】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像は、転写定着ローラ28との接触位置において用紙30に転写されると共に定着される。
転写定着ローラ28は、中間転写体16とともに用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像を転写し、用紙上にトナー像が定着され、定着画像29となる。トナー像の定着は、転写定着ローラ28に発熱体を設けて加圧および加熱により行うことが望ましい。定着温度は、通常、120℃以上200℃以下である。
【0096】
中間転写体16が図1に示すようにローラ形状であれば、転写定着ローラ28とローラ対を構成するため、中間転写体16、転写定着ローラ28が各々定着装置における定着ローラ、対向ローラに準じた構成となって定着機能を発揮する。すなわち、用紙30が前記ニップを通過する際、トナー像が転写されると共に転写定着ローラ28により中間転写体16に対して加熱および加圧される。これにより、トナー像を構成するトナー粒子中の結着樹脂が軟化すると共に、トナー像が用紙30の繊維中に浸潤して、用紙30に定着画像29が形成される。
【0097】
本実施形態では用紙30への転写と同時に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。この場合には、感光体10からトナー像を転写する転写ローラが、中間転写体16に準じた機能を有することとなる。
【0098】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した感光体10では、転写残トナー粒子クリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設ける必要がない。
画像形成装置100は、さらに、転写後かつ次の帯電までに感光体10の表面を除電する除電装置(図示せず)を備えていてもよい。
画像形成装置100に備えられる帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、転写定着ローラ28、および、クリーナ18は、すべて感光体10の回転速度と同期をとって動作されている。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を制限するものではない。なお、以下において「%」は、特に断りのない限り「質量%」を表す。
【0100】
−実施例1−
<液体現像剤の作製>
スチレンアクリル樹脂(藤倉化成(株)製品FSR−051、重量平均分子量38万)60質量部にシアン顔料C.I.ピグメントブルー15:3(クラリアント(株)製)40質量部を加え、加圧ニーダーで混練した。この混練物を粗粉砕して、シアン顔料マスターバッチを作製した。
【0101】
次に以下の組成の混合物をボールミルで24時間溶解分散した。
・上記シアン顔料マスターバッチ:25質量部
・スチレンアクリル樹脂(藤倉化成社製品:FSR−053、重量平均分子量32万、酸価10):57質量部
・スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製品:「SOE−L605」、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加品):13質量部
・第四級アンモニウム塩基含有ポリマー(藤倉化成社製品:FCA−207P、重量平均分子量1.3万):5質量部
・トルエン:900質量部
【0102】
次いで、攪拌装置(IKA社製、ウルトラタラックスT−25)を設置した5L容器にメタノール2000質量部を入れ、8000rpmで攪拌させた。この中に前記混合物100質量部を滴下し、析出物を得た。得られた析出物を濾過し、40℃で真空乾燥してトナー母材を得た。得られたトナー母材15質量部と揮発性のパラフィンオイル(エクソン社製、アイソパーL)85質量部との混合物をボールミルで微粉砕して平均粒径2.3μmのトナー粒子が分散された液体現像剤1を得た。
【0103】
−実施例2−
<液体現像剤の作製>
スチレンアクリル樹脂(藤倉化成(株)製品FSR−051)60質量部にシアン顔料C.I.ピグメントブルー15:3(クラリアント(株)製)40質量部を加え、加圧ニーダーで混練した。この混練物を粗粉砕して、シアン顔料マスターバッチを作製した。
【0104】
一方、スチレンアクリル樹脂(藤倉化成社製品:FSR−053、重量平均分子量32万、酸価10):48質量部と、第四級アンモニウム塩基含有ポリマー(藤倉化成社製品:FCA−201PS):9質量部と、酢酸エチル200質量部と、を1時間溶解させた後、80℃で真空乾燥させた。
【0105】
次に以下の組成の混合物をバンバリーミキサーで混練した。
・上記シアン顔料マスターバッチ:25質量部
・上記第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有するスチレンアクリル樹脂:57質量部
・スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製品:「SOE−L611」、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の部分水素添加品):18質量部
混練物をジェットミルで粉砕し平均粒径10μmのシアン粒子を得た。
【0106】
このシアン粒子15質量部に、難揮発性のパラフィンオイル(松村石油(株)製モレスコホワイトP40)85質量部を混合し、ボールミルで微粉砕して平均粒径2.5μmのトナー粒子が分散された液体現像剤2を得た。
【0107】
−実施例3−
<液体現像剤の作製>
スチレンアクリル樹脂(藤倉化成(株)製品FSR−053)60質量部にイエロー顔料C.I.ピグメントイエロー185(BASF(株)製)40質量部を加え、加圧ニーダーで混練した。この混練物を粗粉砕して、イエロー顔料マスターバッチを作製した。
【0108】
n−ブチルメタクリレート(和光純薬(株)製)16質量部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)64質量部および第四級アンモニウム塩基含有ポリマー(藤倉化成社製品:FCA−207P):20質量部を混合した後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)5質量部を加えて、単量体と第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含む混合物を調製した。
一方、塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)28質量部をイオン交換水160質量部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、ルミナス)30質量部とカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲン)3.5質量部とを加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。この分散媒体200質量部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックスT−25)にて24000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。
【0109】
攪拌機、温度計、冷却管および窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱し、その後冷却した。反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1Lのイオン交換水で3回繰り返して洗浄を行った後、40℃で真空乾燥し第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有するスチレンアクリル樹脂を得た。
【0110】
次に以下の組成の混合物を加圧ニーダーで混練した。
・上記イエロー顔料マスターバッチ:25質量部
・上記第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有するスチレンアクリル樹脂:55質量部
・スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製品:「SOE−L611」、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の部分水素添加品):20質量部
混練物をジェットミルで粉砕し平均粒径10μmのイエロー粒子を得た。
【0111】
このイエロー粒子15質量部に、パラフィンオイル(松村石油(株)製モレスコホワイトMT30P)85質量部を混合し、ボールミルで微粉砕して平均粒径2.6μmのトナー粒子が分散した液体現像剤3を得た。
【0112】
−実施例4−
<特定の共重合体の作製>
・中間体製造例
無水マレイン酸98質量部、1−オクタデセン378質量部およびトルエン1850質量部の混合物を、窒素雰囲気下攪拌しながら温度90℃に加温した。その温度で、開始剤:過酸化ベンゾイル7.0質量部を添加して3時間攪拌した後、過酸化ベンゾイル7.0質量部を添加して5時間攪拌した。得られたポリマー溶液を冷却した後、イソプロパノール25000質量部に攪拌しながら15分間で加え、そのままさらに1時間攪拌した。沈殿した固体を濾過後、減圧乾燥して白色固体290質量部を得た。
【0113】
・特定の共重合体製造例
中間体製造例で得たポリマー(白色固体)43質量部、n−オクタデシルアミン20質量部、ピリジン1質量部、トルエン420質量部の混合物を温度100℃で3時間攪拌した。冷却後この反応液をメタノール8000質量部中に攪拌しながら15分間で加え、そのままさらに1時間攪拌した。沈殿した固体を濾過後、減圧乾燥して淡黄白色固体(特定の共重合体)43質量部を得た。高速液体クロマトグラフ法で測定した分子量は14000であった。また、水酸化カリウムエタノール溶液で中和滴定した結果から、半マレイン酸アミド成分とマレインイミド成分の割合は6:4であった。
【0114】
<液体現像剤の作製>
実施例3に記載の方法により平均粒径10μmのイエロー粒子を得た。このイエロー粒子15質量部に、上記特定の共重合体0.1質量部、パラフィンオイル(松村石油(株)製モレスコホワイトMT30P)85質量部を混合し、ボールミルで微粉砕して平均粒径2.5μmのトナー粒子が分散した液体現像剤4を得た。
【0115】
−実施例5−
<液体現像剤の作製>
スチレンアクリル樹脂(藤倉化成(株)製品TIZ−475)60質量部にカーボンブラックReagal−330(キャボット社製)40質量部を加え、加圧ニーダーで混練した。この混練物を粗粉砕して、黒顔料マスターバッチを作製した。
【0116】
一方、スチレンアクリル樹脂(藤倉化成社製品:TIZ−475、重量平均分子量32万、酸価10):52質量部と、第四級アンモニウム塩基含有ポリマー(藤倉化成社製品:FCA−201PS):8質量部と、酢酸エチル200質量部と、を1時間溶解させた後、80℃で真空乾燥させた。
【0117】
次に以下の組成の混合物をバンバリーミキサーで混練した。
・上記黒顔料マスターバッチ:25質量部
・上記第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有するスチレンアクリル樹脂:60質量部
・スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製品:「アサプレン−T439」、スチレン・ブタジエンブロック共重合体):15質量部
混練物をジェットミルで粉砕し平均粒径10μmの黒粒子を得た。
【0118】
この黒粒子15質量部に、難揮発性のナフテン系オイル(エクソンモービル(株)製エクソールD80)85質量部を混合し、ボールミルで微粉砕して平均粒径2.5μmのトナー粒子が分散された液体現像剤5を得た。
【0119】
−比較例1−
実施例1で、第四級アンモニウム塩基含有ポリマー(藤倉化成社製品:FCA−207P、重量平均分子量1.3万):5質量部をスチレン系熱可塑性樹脂(藤倉化成製品:FSR−053)に置き換えた他は、実施例1に記載の方法により、液体現像剤101を得た。キャリア液体中のトナー粒子の体積平均粒径は3.4μmであった。
【0120】
−比較例2−
実施例1で、スチレン系熱可塑性樹脂(藤倉化成製品:FSR−053)および(藤倉化成製品:FSR−051)をスチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製品:「SOE−L605」、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加品)に置き換えた他は、実施例1に記載の方法により、液体現像剤102を得た。キャリア液体中のトナー粒子の体積平均粒径は5.2μmであった。
【0121】
−比較例3−
実施例1で、スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成社製品:「SOE−L605」、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加品):13質量部をスチレン系熱可塑性樹脂(藤倉化成製品:FSR−053)に置き換えた他は、実施例1に記載の方法により、液体現像剤103を得た。キャリア液体中のトナー粒子の体積平均粒径は2.5μmであった。
【0122】
<評価>
・定着性
調製した各液体現像剤を、濃度が2.5%になるようにキャリアオイルで希釈しディスポセル(ポリスチレン性)に入れた。この中に1mmの間隙で対向させた二枚の透明電極を浸漬し、300Vの電圧を30秒間印加した。電極を引き上げ、マイナス電極上に堆積させたトナーを富士ゼロックス社製Jコート紙に転写した。堆積したトナーの載り量を測定すると2質量部/mであった。
この転写画像を、一対の定着ロールを有する外部定着器を用い、Nip6mm下、定着速度500mm/secにて定着した。
【0123】
定着性の評価として、最低定着温度の評価を行うため、前記定着器の定着温度が可変となるように改造し、定着ロールの定着温度を、100℃から+5℃おきに高め、画像を定着させた。画像が形成された用紙の、定着トナー像のソリッド部の中央に、内側に折り目を入れ、定着トナー像が破壊された部分をティッシュペーパーで拭い取り、白抜けした線幅を測定し、白抜けした線幅が0.5mm以下となる温度を最低定着温度(MFT)とした。
なお、今回の評価においては、MFTは130℃以下で良好であると評価されるものである。
【0124】
・折り曲げ,引っ掻きの評価
耐折り曲げ特性として、画像を内側にして用紙を折り曲げ、折り曲げた部分を軽く拭きとった後の画像の破壊具合から、以下の評価基準により評価した。
◎:軽微で不連続な画像の剥がれがある
○:不連続な破損
×:連続した破損
【0125】
耐引っ掻き特性として、ライナックス社製引っ掻き試験器の加圧力0.5k重量部を用い、以下の評価基準により評価した。
◎:濃度低下はあるが画像は残っている
○:下地が残り一部分が剥がれている
×:画像の大部分が剥がれている
【0126】
・流動性の評価
流動性として、35度に傾けたアクリル板に現像剤をスポイトで一滴滴下し、30秒間に流れた距離を測定して評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:50mm以上
○:50mm未満20mm以上
△:20mm未満5mm以上
×:5mm未満
【0127】
・粉砕性の評価
粉砕特性として、トナー母材とキャリアオイルをボールミルに仕込み、5mmΦのガラスビーズで粉砕し、3μm以下になった時間を測定して評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:10時間以内
○:10時間を超え20時間以内
△:20時間を超え40時間以内
×:40時間を超える
【0128】
【表1】

【符号の説明】
【0129】
10 感光体(静電潜像保持体)
12 露光装置(静電潜像形成装置)
14 現像装置
16 中間転写体
18 クリーナ
20 帯電装置
24 液体現像剤
26 トナー像
28 転写定着ローラ(転写装置)
29 定着像
30 記録媒体
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液と、
前記キャリア液中に分散され、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性樹脂、および下記一般式(I)で表される構成単位を有する第四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含むトナー粒子と、
を有する液体現像剤。
【化1】



(前記一般式(I)中、Rは水素または炭素数3以下のアルキル基を、Rは炭素数18以下のアルキレン基を、R乃至Rは炭素数18以下のアルキル基またはアラルキル基を、Xは−COO−または−CONH−を、Yはハロゲンイオンまたは構造中に−COO−基または−SO−基を有するアニオンを示す。)
【請求項2】
前記キャリア液が、下記(1)および(2)から選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項1に記載の液体現像剤。
(1)前記キャリア液に可溶な重合体を形成し得る単量体と無水マレイン酸とを構成単位として有する共重合体であって、1級アミノ化合物または1級アミノ化合物と2級アミノ化合物との反応体であり、且つ構造中に半マレイン酸アミド成分とマレインイミド成分とを繰返し単位として有する共重合体
(2)金属石鹸
【請求項3】
請求項1に記載の液体現像剤が収容された現像剤カートリッジ。
【請求項4】
請求項1に記載の液体現像剤を収納し、且つ静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を該液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置を備え、画像形成装置に脱着されるプロセスカートリッジ。
【請求項5】
静電潜像保持体と、
前記静電潜像保持体の表面を帯電する帯電装置と、
前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
請求項1に記載の液体現像剤を収納すると共に、静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を該液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項6】
静電潜像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
前記静電潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像保持体の表面に形成された静電潜像を請求項1に記載の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、
を有する画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−72983(P2013−72983A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211520(P2011−211520)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】