説明

液体現像剤、現像剤カートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置

【課題】静置してもトナー粒子が凝集しにくい液体現像剤を提供する。
【解決手段】スチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位及びアクリル酸エステル構造を有する単量体に由来する繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂と、スチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位からなるブロック、炭素数2以上6以下のアルケンに由来する繰り返し単位からなるブロック、及びスチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位からなるブロックがこの順に結合したブロック共重合体である熱可塑性エラストマー樹脂と、を含有する結着樹脂を含むトナー粒子、並びにキャリア液を有する液体現像剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、現像剤カートリッジ、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低分子量の重合体成分と高分子量の重合体成分とのポリマーアロイであるビニル系共重合体を主成分とする乾式トナー用バインダーが開示されている。
特許文献2には、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを構成成分とするビニル系共重合体を主成分とし、スチレンブロックを構成単位として含むエラストマーを含有してなることを特徴とする乾式トナー用の樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、低分子量のビニル系重合体成分と高分子量のビニル系重合体成分とからなるバインダー樹脂の溶液に、低融点化合物を熔融状態で添加し混合して得られる乾式トナー用の樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、ベースポリマーとポリプレピレンが海島構造を形成する乾式トナーが開示されている。
【0003】
特許文献5から特許文献7には、複数種類の成分を混合した樹脂を用いた液体現像剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−123080号公報
【特許文献2】特開2002−123040号公報
【特許文献3】特開平7−219269号公報
【特許文献4】特開平3−296067号公報
【特許文献5】特開昭58−59460号公報
【特許文献6】特開昭58−59459号公報
【特許文献7】特公昭58−59458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、静置してもトナー粒子が凝集しにくい液体現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
キャリア液と、
前記キャリア液に分散されたトナー粒子であって、結着樹脂として、スチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位及びアクリル酸エステル構造を有する単量体に由来する繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂と、スチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位からなるブロック、炭素数2以上6以下のアルケンに由来する繰り返し単位からなるブロック、及びスチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位からなるブロックがこの順に結合したブロック共重合体である熱可塑性エラストマー樹脂と、を含むトナー粒子と、
を有する液体現像剤である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記結着樹脂全体に対する前記熱可塑性エラストマー樹脂の含有量は、10質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の液体現像剤である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記トナー粒子の表面に付着した帯電制御剤をさらに有する、請求項1又は請求項2に記載の液体現像剤である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体現像剤が収容された現像剤カートリッジである。
【0010】
請求項5に係る発明は、
潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、現像剤保持体の表面に保持された請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着工程と、
を有する、画像形成方法である。
【0011】
請求項6に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体現像剤が収容されるとともに、現像剤保持体を有し、前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、前記現像剤保持体の表面に保持された前記液体現像剤により現像して、トナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着手段と、
を有する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、トナー粒子が前記熱可塑性エラストマー樹脂を含有しない場合に比べて、静置してもトナー粒子の凝集が起こりにくくなる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、前記熱可塑性エラストマー樹脂の含有量が前記範囲から外れる場合に比べて、静置してもトナー粒子の凝集が起こりにくくなる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、帯電制御剤を用いた形態においてトナー粒子が前記熱可塑性エラストマー樹脂を含有しない場合に比べて、静置してもトナー粒子の凝集が起こりにくくなる。
【0015】
請求項4から請求項6に係る発明によれば、トナー粒子が前記熱可塑性エラストマー樹脂を含有しない場合に比べて、液体現像剤を静置しても、トナー粒子の凝集に起因する画像形成不良が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[液体現像剤]
本実施形態に係る液体現像剤は、熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマー樹脂とを含有する結着樹脂を含むトナー粒子、並びにキャリア液を有する。そして前記熱可塑性樹脂として、スチレン骨格を有する単量体(以下「スチレン系単量体」と称する場合がある)に由来する繰り返し単位及びアクリル酸エステル構造を有する単量体(以下「アクリル酸エステル系単量体」と称する場合がある)に由来する繰り返し単位を有する樹脂(以下「スチレン−アクリル酸エステル共重合体」と称する場合がある)を用いる。また前記熱可塑性エラストマー樹脂として、スチレン系単量体に由来する繰り返し単位からなるブロック、炭素数2以上6以下のアルケンに由来する繰り返し単位からなるブロック、及びスチレン系単量体に由来する繰り返し単位からなるブロックがこの順に結合したブロック共重合体(以下「スチレン−アルキレン−スチレンブロック共重合体」と称する場合がある)を用いる。
ここで、「スチレン系単量体に由来する繰り返し単位」とは、重合体を構成する繰り返し単位のうち、スチレン系単量体が反応した結果生成した繰り返し単位を意味する。他の単量体に由来する繰り返し単位についても同様である。
【0018】
本実施形態の液体現像剤が上記構成であることにより、上記以外の構成(例えば上記スチレン−アルキレン−スチレンブロック共重合体以外の熱可塑性エラストマー樹脂を用いた構成等)である場合に比べ、液体現像剤を静置してもトナー粒子の凝集が起こりにくくなる。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0019】
本実施形態では上記のように、結着樹脂として、スチレン−アクリル酸エステル共重合体である熱可塑性樹脂と、スチレン−アルキレン−スチレンブロック共重合体である熱可塑性エラストマー樹脂と、の組み合わせを用いている。そのため、上記熱可塑性樹脂と上記熱可塑性エラストマー樹脂との相溶性が良好であることから、トナー粒子中において上記熱可塑性エラストマー樹脂が連続状態で存在しやすくなり、また上記熱可塑性エラストマー樹脂が偏在しても、上記熱可塑性エラストマー樹脂の領域と上記熱可塑性樹脂の領域との境界が曖昧になりやすいと推測される。
ここで上記「連続状態」とは、例えば、トナー粒子の内部を透過型電子顕微鏡(例えば倍率30000倍、加速電圧:30kV)で観察したTEM画像において、熱可塑性エラストマー樹脂が偏在した直径100μm以上の領域が観察されない状態が挙げられる。また上記「境界が曖昧」とは、例えば上記TEM画像において、熱可塑性エラストマー樹脂の領域から熱可塑性樹脂の領域にかけて濃淡が徐々に変化し、境界が特定されない場合が挙げられる。
【0020】
そして、トナー粒子がキャリア液中に分散された液体現像剤においては、トナー粒子の表面がキャリア液と接触した状態で存在している。また、熱可塑性樹脂に比べて、熱可塑性エラストマー樹脂の方が、キャリア液との親和性が高いと考えられる。
そのため、例えば熱可塑性エラストマー樹脂が偏在し、熱可塑性エラストマー樹脂の領域と熱可塑性樹脂の領域との境界が明確に存在するトナー粒子を用いると、トナー粒子の表面に露出した熱可塑性エラストマー樹脂の領域にキャリア液が吸収されやすく、また上記境界にキャリア液が入りこみやすいと考えられる。そして、上記境界に入り込んだキャリア液は、トナー粒子間を架橋して接着剤としての役割を果たすことで、トナー粒子を凝集させると考えられ、トナー粒子の凝集が進んだ場合には液体現像剤がゲル化する場合も考えられる。
【0021】
これに対して本実施形態では、上記のように、熱可塑性エラストマー樹脂が偏在しにくく、また偏在したとしても上記境界が曖昧になりやすい。そのため、上記のようにトナー粒子の表面に露出した熱可塑性エラストマー樹脂の領域にキャリア液が吸収されることや、上記境界にキャリア液が入りこむことが起こりにくく、トナー粒子が凝集しにくいと考えられる。
そして本実施形態の液体現像剤を用いることで、例えば液体現像剤を静置した後に用いたり、現像剤カートリッジや画像形成装置内で液体現像剤を静置したりしても、トナー粒子の凝集に起因する画像形成時の不具合(例えば、供給ローラ、現像ローラにおけるトナーづまりや固形分濃度の変動による画像濃度ムラ、色再現性の低下等)が抑制され、画質の良好な(例えば画質欠陥の少ない)画像が形成される。
【0022】
また本実施形態では、結着樹脂中における熱可塑性エラストマー樹脂の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲から外れる場合に比べて、液体現像剤を静置してもトナー粒子の凝集が起こりにくくなる。その理由は定かではないが、熱可塑性エラストマー樹脂の上記含有量が上記範囲であることにより、上記範囲から外れる場合に比べて、さらに熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマー樹脂とが相溶しやすく、上記連続状態になりやすくなるためであると推測される。
【0023】
また本実施形態では、結着樹脂が上記構成であり、かつ、トナー粒子の表面に帯電制御剤が付着した液体現像剤であることにより、結着樹脂が上記以外の構成(例えば上記スチレン−アルキレン−スチレンブロック共重合体以外の熱可塑性エラストマー樹脂を用いた構成等)でトナー粒子表面に帯電制御剤が付着した場合に比べ、さらに液体現像剤を静置したときにおけるトナー粒子の凝集が起こりにくくなる。
その理由は定かではないが、本実施形態では、上記のように、熱可塑性エラストマー樹脂が偏在しにくく、偏在したとしても上記境界が曖昧になりやすいため、トナー粒子の表面に満遍なく帯電制御剤が付着しやすいと考えられる。そのため本実施形態では、上記キャリア液によるトナー粒子間の架橋が起こりにくいことに加えて、帯電制御剤の静電反発効果がトナー粒子表面全体において得られやすくなると考えられる。そして本実施形態では、熱可塑性エラストマー樹脂が偏在した領域における上記境界が明確でトナー粒子の表面に付着した帯電制御剤が偏在している場合に比べて、さらにトナー粒子の凝集が起こりにくいと推測される。
以下、上記液体現像剤を構成する成分についてさらに詳細に説明する。
【0024】
<トナー粒子>
トナー粒子は、上記の通り、少なくともスチレン−アクリル酸エステル共重合体である熱可塑性樹脂と、スチレン−アルキレン−スチレンブロック共重合体である熱可塑性エラストマー樹脂と、を含有する結着樹脂を有し、必要に応じて、着色剤、離型剤等のその他成分を含んでもよい。またトナー粒子は、上記のように、表面に帯電制御剤が付着したものであってもよい。
【0025】
−熱可塑性樹脂−
本実施形態では、上記の通り、熱可塑性樹脂としてスチレン−アクリル酸エステル共重合体を用いる。スチレン−アクリル酸エステル共重合体は、上記の通り、スチレン系単量体に由来する繰り返し単位とアクリル酸エステル系単量体に由来する繰り返し単位とを有する樹脂であり、例えば上記スチレン系単量体と上記アクリル酸エステル系単量体とを重合して得られる。
【0026】
上記スチレン系単量体は、スチレン骨格を有する単量体であり、具体的には、例えば、スチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ter−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等が挙げられ、1種のみ用いてもよいし、2種以上の単量体を併用してもよい。
【0027】
上記アクリル酸エステル系単量体は、アクリル酸エステル構造を有する単量体であり、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの他、アクリル酸2−クロルエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、ビスグリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェートなどが挙げられ、1種のみ用いてもよいし、2種以上の単量体を併用してもよい。なお、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルのいずれか又は両方であることを意味する。
【0028】
上記スチレン−アクリル酸エステル共重合体は、上記の通り、スチレン系単量体に由来する繰り返し単位とアクリル酸エステル系単量体に由来する繰り返し単位とを有し、必要に応じてその他の単量体に由来する繰り返し単位を含んでもよいが、含まなくてもよい。また、その他の単量体に由来する繰り返し単位を含む場合、スチレン−アクリル酸エステル共重合体全体に対し、5質量%以下であってもよく、3質量%以下であってもよい。
その他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系単量体、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸及びそのα−又はβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、等の不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又はジエステル誘導体;コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、(メタ)アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、例えば15万以上50万以下の範囲が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)としては、例えば2以上20以下の範囲が挙げられる。
なお、熱可塑性樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定される分子量分布において、複数のピークや肩部をもっていてもよい。
【0030】
上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。そして上記重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。重量平均分子量の測定については、以下同様である。また、数平均分子量(Mn)の測定も上記重量平均分子量(Mw)と同様にして行い、それらの値から分子量分布(Mw/Mn)が算出される。
【0031】
トナー粒子中における上記熱可塑性樹脂の含有比率は、トナー粒子全体に対して、例えば50質量%以上90質量%以下が挙げられ、50質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0032】
−熱可塑性エラストマー樹脂−
本実施形態では、上記の通り、熱可塑性エラストマー樹脂として、上記スチレン−アルキレン−スチレンブロック共重合体を用いる。上記スチレン−アルキレン−スチレンブロック共重合体は、上記の通り、スチレン系単量体に由来する繰り返し単位からなるブロック、炭素数が上記範囲のアルケンに由来する繰り返し単位からなるブロック、及びスチレン系単量体に由来する繰り返し単位からなるブロックがこの順に結合したブロック共重合体である。
ここで「熱可塑性エラストマー樹脂」としては、例えば、25℃においてゴムの性質を有し、高温において熱可塑性プラスチックの性質を有する(例えばISO1133で規定されるMFRが230℃において5.0g/min以上である)ものが挙げられる。
【0033】
上記スチレン系単量体としては、例えば、前記熱可塑性樹脂におけるスチレン系単量体の具体例と同じものが挙げられ、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
炭素数が上記範囲のアルケンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。アルケンの炭素数は、上記の通り2以上6以下であり、2以上5以下であってもよく、2以上4以下であってもよい。
【0034】
熱可塑性エラストマー樹脂の具体例としては、例えば、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−プロピレン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0035】
なお、上記具体例において、例えば「スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン」とは、スチレンのブロック(すなわち、スチレン単量体に由来する繰り返し単位のブロック)と、エチレン及びブチレンのブロック(すなわち、エチレン単量体に由来する繰り返し単位及びブチレン単量体に由来する繰り返し単位が混在したブロック)と、スチレンのブロックと、がこの順に結合したブロック共重合体を示す。
【0036】
上記熱可塑性エラストマー樹脂の重量平均分子量としては、例えば、3万以上30万以下の範囲が挙げられる。
また、熱可塑性エラストマー樹脂全体に対するアルケンに由来する繰り返し単位の割合としては、例えば10質量%以上70質量%以下の範囲が挙げられ、20質量%以上60質量%以下であってもよい。
【0037】
結着樹脂中における上記熱可塑性エラストマーの含有比率は、上記の通り10質量%以上50質量%以下が挙げられ、15質量%以上40質量%以下であってもよく、20質量%以上40質量%以下であってもよい。
【0038】
−その他成分−
トナー粒子は、上記ビニル系樹脂及び上記スチレン系の熱可塑性エラストマー樹脂のほか、必要に応じて、他の樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、シリカ粉末、金属酸化物などその他成分を含有していてもよい。これらその他成分は、上記ビニル系樹脂及び上記スチレン系の熱可塑性エラストマー樹脂に混練するなどして内添してもよいし、トナー粒子を得たのち混合処理を施すなどして外添してもよい。なお、トナー粒子を透明のトナーとする場合は、着色剤を含まなくてもよい。
【0039】
上記他の樹脂としては、公知の結着樹脂が挙げられ、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。トナー粒子が上記他の樹脂を含む場合、トナー粒子全体に対する他の樹脂の含有量としては、例えば10質量%以下が挙げられる。
またトナー粒子は、トナー粒子のガラス転移温度を制御する添加剤として、又は後述する離型剤として、ポリエステル樹脂を含んでもよく、その場合におけるポリエステル樹脂の含有量としては、樹脂全体に対し、例えば5質量%未満の範囲が挙げられる。
【0040】
着色剤としては、公知の顔料または染料が用いられる。具体的には、例えば以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各顔料が挙げられる。
イエローの顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。
マゼンタの顔料としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。
シアンの顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。
黒の顔料としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、鉄黒等が挙げられる。
【0041】
離型剤としては、特に制限はなく、例えば、カルナバワックス、サトウワックス、木ワックス等の植物性ワックス;蜜ワックス、昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックスなどの動物性ワックス;エステルを側鎖に有するフィッシャートロプシュワックス(FTワックス)、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエステルワックス等の合成炭化水素系ワックス;などが挙げられる。離型剤は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0042】
電荷制御剤としては、特に制限はなく、従来公知の電荷制御剤が使用される。例えば、ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、アミド系化合物、イミド系化合物、有機金属化合物等の正帯電性電荷制御剤;オキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料やサリチル酸誘導体等の負帯電性電荷制御剤;などが挙げられる。電荷制御剤は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
金属酸化物としては、特に制限はなく、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0044】
−帯電制御剤−
トナー粒子は、上記の通り、表面に帯電制御剤が付着したものであってもよい。トナー粒子の表面に付着させる帯電制御剤は特に限定されず、正帯電性の帯電制御剤でも、負帯電性の帯電制御剤でもよい。
正帯電性の帯電制御剤としては、例えば、特開平5−119543号公報記載の製造例(1)および製造例(2)で製造される荷電調節剤樹脂、あるいは、特公平6−23865公報記載の化合物製造例1の荷電調節剤等が挙げられ、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、負帯電性の帯電制御剤としては、例えば、ソルスパース13940(日本ルーブリゾール社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール社製)、ステアリン酸アルミニウム(ジ)(和光純薬工業社製)等が挙げられ、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
トナー粒子に上記帯電制御剤を付着させる方法としては、例えば、得られたトナー粒子と帯電制御剤とをホモジナイザーやミキサー等によって混合することでトナー粒子の表面に帯電制御剤を付着させる方法や、トナー粒子とキャリア液と混合してから帯電制御剤を添加し、混合することによってトナー粒子の表面に帯電制御剤を付着させる方法等が挙げられる。
帯電制御剤の添加量としては、例えば、トナー粒子100質量部に対し、0.0001質量部以上1.0質量部以下の範囲が挙げられ、0.0005質量部以上0.1質量部以下の範囲であってもよい。
【0046】
−トナー粒子の製造方法−
本実施形態で用いるトナー粒子を製造する方法は特に限定されず、例えば、粉砕トナー粒子、液中乳化乾燥トナー粒子、又は重合トナー粒子の製造方法でトナー粒子を製造する。また必要に応じて、得られたトナー粒子に、上記帯電制御剤やその他の外添剤を添加し、混合処理を施すことによって、トナー粒子に帯電制御剤やその他の外添剤を外添する。
【0047】
具体的には、例えば、熱可塑性エラストマー樹脂及び熱可塑性樹脂を含む結着樹脂、必要に応じて、着色剤、他の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合装置に投入して混合し、この混合物を二軸押出機等で溶融混練した後、ドラムフレーカー等で冷却し、ハンマーミル等の粉砕機で粗粉砕し、さらにジェットミル等の粉砕機で微粉砕した後、風力分級機等を用いて分級することにより、粉砕トナー粒子が得られる。
【0048】
また、例えば、熱可塑性エラストマー樹脂及び熱可塑性樹脂を含む結着樹脂、必要に応じて、着色剤、他の添加剤を酢酸エチル等の溶剤に溶解し、炭酸カルシウムのごとき分散安定剤が添加された水中に乳化/懸濁し、溶剤を除去した後、分散安定剤を除去して得られた粒子を濾過・乾燥することによって液中乳化乾燥トナー粒子が得られる。
【0049】
また、例えば、結着樹脂を形成する重合性単量体、必要に応じて、着色剤、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、イソプロピルパーオキシカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、2,4−ジクロリルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等)および他の添加剤などを含有する組成物を水相中に撹拌下で加えて造粒し、重合反応後、粒子を濾過・乾燥することによって重合トナー粒子が得られる。
【0050】
なお、トナーを得る際の各材料(熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂、必要に応じて、着色剤、その他の添加剤等)の配合割合は、要求される特性、色などを考慮して設定する。
また上記方法によって得られたトナー粒子は、例えば、ボールミル、ビーズミル、高圧湿式微粒化装置等の公知の粉砕装置を用いて、キャリアオイル中で微粉砕することにより本実施形態の液体現像剤用トナー粒子が得られる。
【0051】
−トナー粒子の特性−
トナー粒子の体積平均粒径D50vとしては、例えば0.5μm以上5.0μm以下の範囲が挙げられ、0.8μm以上4.0μm以下であってもよく、1.0μm以上3.0μm以下であってもよい。
【0052】
トナー粒子の体積平均粒径D50vは、2μm以上のトナー粒子に対しては、コールターマルチサイザー(コールター社製)測定器で測定される。2μmを下回るトナー粒子に対しては、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、LB−500(堀場製作所社製)、マイクロトラックUPA(日機装社製)等)、又はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、LS13 320(BECKMAN COULTER社製)等)を用いて測定される。上記測定によって得られた粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して、体積について小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒子径を体積D50vと定義する。
【0053】
トナー粒子の含有量としては、液体現像剤全体に対し、例えば0.5質量%以上40質量%以下の範囲が挙げられ、1質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0054】
<キャリア液>
キャリア液は、トナー粒子を分散させる液体であり、特に制限はないが、例えば体積低効率1.0×1010Ω・cm以上の非水溶媒が挙げられ、その中でも特に前記結着樹脂が溶解しにくい(すなわち、液体現像剤中においてトナー粒子が固体として存在する)非水溶媒が挙げられる。
非水溶媒とは、水以外の溶媒を含むものをいい、水と水以外の溶媒との混合物でもよいが、水を積極的に含まない溶媒であってもよい。
非水溶媒としては、例えば、パラフィンオイル等の脂肪族系炭化水素溶媒(市販品では、松村石油社製モレスコホワイトMT−30P、モレスコホワイトP40、モレスコホワイトP70、エクソン化学社製アイソパーL、アイソパーMなど)、ナフテン系オイル等の炭化水素系溶媒(市販品では、エクソン化学社製 エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130、日本石油化学社製 ナフテゾールL、ナフテゾールM、ナフテゾールH、Newナフテゾール160、Newナフテゾール200、Newナフテゾール220、NewナフテゾールMS−20Pなど)が挙げられ、それらの中に、トルエン等の芳香族化合物を含有させてもよい。
非水溶媒は、上記成分のうち、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよく、非水溶媒を2種以上混合して用いる場合、例えば、パラフィン系溶剤と植物油との混合系や、シリコーン系溶剤と植物油との混合系が挙げられる。
【0055】
−キャリア液の特性−
キャリア液の体積抵抗率としては、例えば1.0×1010Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下の範囲が挙げられ、1.0×1010Ω・cm以上1.0×1013Ω・cm以下の範囲であってもよい。
【0056】
液体現像剤は、必要に応じて、さらにその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、硬化性材料、分散剤、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等が挙げられる。
【0057】
<液体現像剤の製造方法>
液体現像剤は、既述のトナー粒子(必要に応じて帯電制御剤等を表面に付着させたトナー粒子)、キャリア液、及び必要に応じてその他の成分を、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機を用いて混合し、粉砕して、トナー粒子をキャリア液中に分散することにより得られる。また上記の通り、帯電制御剤を用いる場合は、、あらかじめ帯電制御剤をトナー粒子の表面に付着させてからキャリア液中に分散させてもよいし、トナー粒子をキャリア液中に分散させてから帯電制御剤を添加してトナー粒子の表面に付着させてもよい。
なお、トナー粒子のキャリア液中への分散は分散機に限られず、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を回転させ分散してもよいし、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散してもよいし、超音波によって分散してもよい。
その後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去してもよい。
【0058】
[現像剤カートリッジ]
本実施形態の現像剤カートリッジは、上記本実施形態の液体現像剤が収容された現像剤カートリッジであり、例えば、現像剤カートリッジ内に貯留された液体現像剤が、供給管等を通じて、画像形成装置の現像装置に供給される。現像剤カートリッジは、現像剤カートリッジ内における液体現像剤の残量が無くなった際に交換するため、画像形成装置に着脱される構成としてもよい。
【0059】
[画像形成方法、及び画像形成装置]
本実施形態の画像形成方法は、潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、潜像保持体の表面に形成された潜像を、現像剤保持体の表面に保持された上記本実施形態の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、潜像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着工程と、を有する画像形成方法である。
【0060】
本実施形態の画像形成装置は、潜像保持体と、潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、現像剤保持体を有し、潜像保持体の表面に形成された潜像を、現像剤保持体の表面に保持された上記本実施形態の液体現像剤により現像して、トナー像を形成する現像手段と、潜像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着手段と、を有する画像形成装置である。
以下、本実施形態における、液体現像剤を用いた画像形成方法及び画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0061】
図1は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
画像形成装置100は、例えば、感光体10(潜像保持体)、帯電装置20、露光装置12(帯電装置20と露光装置12とで静電潜像形成手段を構成)、現像装置14(現像手段)、中間転写体16、クリーナ18、及び転写定着ローラ28(中間転写体16と転写定着ローラ28とで転写手段を構成し、転写定着ローラ28は定着手段も兼ねる)を含んで構成される。感光体10は円柱形状を有し、該感光体10の外周に、帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、及び、クリーナ18が順次に設けられている。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0062】
帯電装置20が感光体10の表面を予め定められた電位に帯電させ、帯電された表面を画像信号に基づき、露光装置12が、例えばレーザ光線によって露光して静電潜像を形成する。
現像装置14は、現像ローラ14a(現像剤保持体)と現像剤貯蔵容器14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、現像剤貯蔵容器14bに貯蔵される液体現像剤24に一部が浸るようにして設けられる。尚、現像剤貯蔵容器14bには、図示しない液体現像剤カートリッジから液体現像剤24が供給される構成としてもよい。また、上記液体現像剤カートリッジは、液体現像剤24の残量が無くなった際に交換し得るよう画像形成装置に着脱される構成としてもよい。
【0063】
液体現像剤24中では、トナー粒子は分散されているが、例えば液体現像剤24を、さらに現像剤貯蔵容器14b内に設けられる撹拌部材によって撹拌し続けることで、液体現像剤24中のトナー粒子の濃度の位置ばらつきを低減してもよい。これにより図の矢印A方向に回転する現像ローラ14aには、トナー粒子の濃度バラツキが低減された液体現像剤24が供給される。
【0064】
現像ローラ14aに供給された液体現像剤24は、規制部材によって一定の供給量に制限された状態で感光体10に搬送され、現像ローラ14aと感光体10とが近接(あるいは接触)する位置で静電潜像に供給される。これによって静電潜像は顕像化されてトナー像26となる。
【0065】
現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する感光体10に搬送され用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、感光体10からのトナー像の剥離効率を含めた記録媒体への転写効率を向上させ、さらに記録媒体への転写と同時に定着を行うため、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。このとき、感光体10及び中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0066】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像は、転写定着ローラ28との接触位置において用紙30に転写されると共に定着される。
転写定着ローラ28は、中間転写体16とともに用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像を用紙30に密着させる。これによって用紙30にトナー像を転写し、用紙上にトナー像が定着され、定着画像29となる。トナー像の定着は、転写定着ローラ28に発熱体を設けて加圧及び加熱により行ってもよい。定着温度としては、例えば100℃以上180℃以下が挙げられる。
【0067】
中間転写体16が図1に示すようにローラ形状であれば、転写定着ローラ28とローラ対を構成するため、中間転写体16及び転写定着ローラ28が各々定着装置における定着ローラ及び押圧ローラに準じた構成となって定着機能を発揮する。すなわち、用紙30が転写定着ローラ28と中間転写体16との接触部を通過する際、例えば、トナー像が転写されると共に転写定着ローラ28により中間転写体16に対して加熱及び押圧される。これにより、例えば、トナー像を構成するトナー粒子中の結着樹脂が軟化すると共に、トナー像が用紙30の繊維中に浸潤して、用紙30に定着画像29が形成される。
本実施形態では用紙30への転写と同時に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。
【0068】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した感光体10では、転写されずに感光体10に残留したトナー粒子がクリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設ける必要がない。
【0069】
画像形成装置は、さらに、転写後かつ次の帯電までに感光体10の表面を除電する除電装置(図示せず)を備えていてもよい。
画像形成装置100に備えられる帯電装置20、露光装置12、現像装置14、中間転写体16、転写定着ローラ28、及び、クリーナ18は、例えば、すべてが感光体10の回転速度と同期をとって動作されていてもよい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、文中、「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0071】
<液体現像剤の調整>
−液体現像剤A1の調整−
熱可塑性樹脂1(スチレン−アクリル酸ブチル樹脂、藤倉化成(株)製、商品名:FSR−051、重量平均分子量:39万)60部に、シアン顔料C.I.ピグメントブルー15:3(クラリアント(株)製)40部を加え、加圧ニーダーで混練した。この混練物を粗粉砕して、シアン顔料マスターバッチを作製した。
【0072】
次に、以下の組成の混合物を、再度加圧ニーダーで混錬し、混合物1を得た。
・上記シアン顔料マスターバッチ:25部
・熱可塑性樹脂2(スチレン−アクリル酸ブチル樹脂、藤倉化成(株)製、試作品:KEY−1000、重量平均分子量:22万):55部
・熱可塑性エラストマー樹脂1(旭化成(株)製、試作品:S.O.E.L605、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体):20部
【0073】
得られた混合物をジェットミルで粉砕し、体積平均粒径10μmのシアン粒子を得た。
得られたシアン粒子15部に、非水溶媒としてパラフィンオイル(松村石油(株)製、商品名:モレスコホワイトP40)84部、分散剤(日本ルーブリゾール社製、商品名:ソルスパース20000)1部を添加した混合物をボールミルで微粉砕して体積平均粒径1.1μmとした。
さらに、帯電制御剤として、正帯電性の帯電制御剤(特公平6−23865公報記載の荷電調節剤、化合物製造例1、半マレイン酸アミド成分とマレインイミド成分とを有する高分子化合物)0.001部を加え、超音波で1分撹拌することでトナー粒子表面に帯電制御剤を付着させ、液体現像剤A1を得た。
結着樹脂中における熱可塑性樹脂の含有量及び結着樹脂中における熱可塑性エラストマー樹脂の含有量について、表1に示す。
【0074】
−液体現像剤A2の調整−
帯電制御剤として、上記正帯電性の帯電制御剤の代わりに、負帯電性の帯電制御剤(ステアリン酸アルミニウム(ジ))0.001部を用いた以外は、液体現像剤A1と同様にして、液体現像剤A2を得た。
【0075】
−液体現像剤A3の調整−
帯電制御剤を用いない以外は、液体現像剤A1と同様にして、液体現像剤A3を得た。
【0076】
−液体現像剤A4から液体現像剤A6の調整−
熱可塑性樹脂2及び熱可塑性エラストマー樹脂1の添加量を変えて、結着樹脂中における熱可塑性樹脂の含有量及び結着樹脂中における熱可塑性エラストマー樹脂の含有量を表1に示すようにした以外は、液体現像剤A1と同様にして、液体現像剤A4から液体現像剤A6を得た。
【0077】
−液体現像剤A7の調整−
熱可塑性樹脂2の代わりに、熱可塑性樹脂3(スチレン−アクリル酸ブチル樹脂、藤倉化成(株)製、商品名:FSR−053、重量平均分子量:32万)を用いた以外は、液体現像剤A1と同様にして、液体現像剤A7を得た。
【0078】
−液体現像剤B1の調整−
熱可塑性エラストマー樹脂1の代わりに、熱可塑性エラストマー樹脂2(旭化成(株)製、商品名:L611、スチレン−ブチレン/ブタジエン−スチレンブロック共重合体):20部を用いた以外は、液体現像剤A1と同様にして、液体現像剤B1を得た。
【0079】
−液体現像剤B2の調整−
熱可塑性エラストマー樹脂1の代わりに、熱可塑性エラストマー樹脂3(旭化成(株)製、商品名:タフプレンA、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体:スチレン/ブタジエン重量比=40/60)を用いた以外は、液体現像剤A1と同様にして、液体現像剤B2を得た。
【0080】
−液体現像剤B3の調整−
帯電制御剤を用いない以外は、液体現像剤B2と同様にして、液体現像剤B3を得た。
【0081】
<液体現像剤の評価>
得られた液体現像剤にパラフィンオイルを加えて固形分濃度(すなわち液体現像剤中におけるトナー粒子の含有量)を5質量%にした分散液を用いて評価した。
具体的には、1.0ml試験管に上記分散液を0.8ml秤量した後に静置し、30分後、60分後、120分後、及び240分後において、目視で評価を行った。評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
【0082】
−評価基準−
G1:30分後、60分後、120分後、及び240分後においても、全体に満遍なく色がついていた。
G2:30分後、60分後、及び120分後においては全体に満遍なく色がついていたが、240分後においては上澄みが無色透明になっていた。
G3:30分後及び60分後においては全体に満遍なく色がついていたが、120分後及び240分後においては上澄みが無色透明になっていた。
G4:30分後においては全体に満遍なく色がついていたが、60分後、120分後、及び240分後においては上澄みが無色透明になっていた。
G5:30分後、60分後、120分後、及び240分後のいずれにおいても上澄みが無色透明になっていた。
【0083】
【表1】

【0084】
図1に示す画像形成装置を用い、120分静置した液体現像剤を現像装置にセットし、3.5cm×3.5cmのトナー画像(トナー載り量:4g/m)の形成を行った。120分静置した後において全体に満遍なく色がついていた液体現像剤を用いた場合はいずれも、画質の良好な画像が形成された。一方、120分静置した後において上澄みが無色透明になっていた液体現像剤を用いた場合はいずれも、画像濃度にムラがある画像となった。
【0085】
表1の結果からわかるように、実施例では、比較例に比べ、液体現像剤を静置しても、トナー粒子が凝集しにくいことが分かる。
【符号の説明】
【0086】
10 感光体(潜像保持体)
12 露光装置
14 現像装置(現像手段)
14a 現像ローラ(現像剤保持体)
16 中間転写体
18 クリーナ
20 帯電装置(帯電手段)
24 液体現像剤
26 トナー像
28 転写定着ローラ(転写手段、定着手段)
29 定着画像
30 用紙(記録媒体)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液と、
前記キャリア液に分散されたトナー粒子であって、結着樹脂として、スチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位及びアクリル酸エステル構造を有する単量体に由来する繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂と、スチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位からなるブロック、炭素数2以上6以下のアルケンに由来する繰り返し単位からなるブロック、及びスチレン骨格を有する単量体に由来する繰り返し単位からなるブロックがこの順に結合したブロック共重合体である熱可塑性エラストマー樹脂と、を含むトナー粒子と、
を有する液体現像剤。
【請求項2】
前記結着樹脂全体に対する前記熱可塑性エラストマー樹脂の含有量は、10質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記トナー粒子の表面に付着した帯電制御剤をさらに有する、請求項1又は請求項2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体現像剤が収容された現像剤カートリッジ。
【請求項5】
潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、現像剤保持体の表面に保持された請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着工程と、
を有する、画像形成方法。
【請求項6】
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体現像剤が収容されるとともに、現像剤保持体を有し、前記潜像保持体の表面に形成された前記潜像を、前記現像剤保持体の表面に保持された前記液体現像剤により現像して、トナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させて定着画像を形成する定着手段と、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−155001(P2012−155001A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11911(P2011−11911)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】