説明

液体現像剤および液体現像剤の製造方法

【課題】正帯電性の帯電特性に優れ、適度な粒径のトナー粒子が分散した液体現像剤およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、トナー粒子が絶縁性液体中に分散した正帯電性の液体現像剤であって、トナー粒子は、表面にアニオン性基を有する母粒子と、前記母粒子を被覆する膜とで構成され、該膜は、母粒子側から順に、少なくともカチオン性基と疎水性基と重合性基とを有するカチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有する第1のカチオン層と、アニオン性基と疎水性基と重合性基とを有するアニオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し単位を有するアニオン層と、カチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有する第2のカチオン層とを積層したものであり、膜の最外層が、カチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有するカチオン層であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤および液体現像剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤として、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤が知られている。
液体現像剤としては、負帯電性の液体現像剤と正帯電性の液体現像剤とが挙げられるが、負帯電性の液体現像剤を用いた場合、画像形成する際に、画像形成装置内部でオゾンが発生し、環境問題や画像形成装置内の周辺部品への悪影響を来す等の問題があった。
【0003】
そこで、近年、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくして画像形成を行い得ることから、正帯電性の液体現像剤を用いて画像を形成する方法の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の正帯電性の液体現像剤では、帯電制御剤を添加することにより、トナー粒子を正帯電にしている。
しかしながら、このような液体現像剤では、均一にトナー粒子を正帯電させるのが困難であった。また、十分な帯電量を得るのが困難であった。
【0004】
また、正帯電性の樹脂材料をトナー粒子の構成材料として用いることも考えられるが、正帯電性の樹脂材料は、樹脂そのものの安定性が低く、また、トナー粒子を構成する材料として適用できるものが少なかった。
また、液体現像剤は、樹脂を粉砕して得られたトナーを絶縁性液体に分散させる方法により製造されたものが、広く一般に用いられてきた(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記方法で得られる液体現像剤は、トナー粒子間での粒径のばらつきが大きかった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−319646号公報
【特許文献2】特開平7−234551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、正帯電性の帯電特性および環境安定性に優れ、かつ、適度な粒径のトナー粒子が分散した液体現像剤およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、トナー粒子が絶縁性液体中に分散した正帯電性の液体現像剤であって、
前記トナー粒子は、表面にアニオン性基を有する母粒子と、前記母粒子を被覆する膜とで構成され、
前記膜は、前記母粒子側から順に、少なくとも、カチオン性基と疎水性基と重合性基とを有するカチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有する第1のカチオン層と、アニオン性基と疎水性基と重合性基とを有するアニオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し単位を有するアニオン層と、前記カチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有する第2のカチオン層とを積層したものであり、
前記膜の最外層が、前記カチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有するカチオン層であることを特徴とする。
これにより、正帯電性の帯電特性および環境安定性に優れ、かつ、適度な粒径のトナー粒子が分散した液体現像剤を提供することができる。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記母粒子は、その表面に、前記アニオン性基として、−COO基、−SO基のうち、少なくとも一方を有していることが好ましい。
このような基は、膜との親和性が高く、膜の不本意な剥がれ等を効果的に防止することができる。
本発明の液体現像剤では、前記母粒子を構成する樹脂材料の酸価は、8〜50KOHmg/gであることが好ましい。
母粒子を構成する樹脂材料の酸価がこのような範囲のものであると、母粒子の表面に膜を好適に形成することができ、その結果、液体現像剤の帯電特性を効果的に向上させることができる。また、膜を強固に形成することができるため、膜の不本意な脱落等を効果的に防止することができる。
【0009】
本発明の液体現像剤では、前記母粒子の平均粒径をX[μm]、前記トナー粒子の平均粒径をY[μm]としたとき、0.02≦Y−X≦2.0の関係を満足することが好ましい。
これにより、母粒子を湿気や温度等の環境要因からより確実に保護することができる。その結果、帯電特性、定着特性等の特性の低下をより効果的に防止することができ、母粒子を構成する材料本来の特性を十分に発揮させることができる。
本発明の液体現像剤では、前記膜は、前記第1のカチオン層上に、前記アニオン層および前記第2のカチオン層が複数積層されたものであることが好ましい。
これにより、母粒子を湿気や温度等の環境要因からより確実に保護することができる。
【0010】
本発明の液体現像剤の製造方法は、
前記アニオン性基を表面に有する前記母粒子上に、前記カチオン性重合性界面活性剤を重合することにより、第1のカチオン層を形成する工程と、
前記第1のカチオン層上に、前記アニオン性重合性界面活性剤を重合することにより、アニオン層を積層し、該アニオン層上に、前記カチオン性重合性界面活性剤を重合することにより、第2のカチオン層を積層する積層工程とを有することを特徴とする。
これにより、正帯電性の帯電特性に優れ、適度な粒径のトナー粒子が分散した液体現像剤を提供することができる。
【0011】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記積層工程を繰り返し行うことが好ましい。
これにより、トナー粒子の粒径を任意に調整することができる。その結果、好適な粒径のトナー粒子を得ることができる。
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記各工程を、水系分散媒中で行うことが好ましい。
これにより、母粒子表面に容易に膜を形成することができる。
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記各工程において、前記各界面活性剤とともに、疎水性モノマーを添加することが好ましい。
これにより、母粒子を被覆する膜の不本意な剥がれ等を効果的に防止することができ、トナー粒子の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の液体現像剤の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子の一例を示す図である。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散したものである。
<絶縁性液体>
まず、絶縁性液体について説明する。
【0013】
本発明で用いる絶縁性液体は、十分に絶縁性の高い液体であればよいが、具体的には、室温(20℃)での電気抵抗が10Ωcm以上のものであるのが好ましく、1011Ωcm以上のものであるのがより好ましく、1013Ωcm以上のものであるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の比誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0014】
このような条件を満足する絶縁性液体としては、例えば、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、各種シリコーンオイル、アマニ油、大豆油等の植物油、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー;エクソン社の商品名)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルゾール;シエルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)流動パラフィン(和光純薬工業)等が挙げられる。
【0015】
<トナー粒子>
図1に示すように、トナー粒子100は、表面にアニオン性基11を有する母粒子1と、母粒子1を被覆する膜50とを有している。
(母粒子1)
以下、まず、母粒子1について説明する。
本発明の液体現像剤中のトナー粒子を構成する母粒子は、その表面にアニオン性基を有するものである。
まず、母粒子1を構成する材料について説明する。
【0016】
1.樹脂材料(バインダー樹脂)
母粒子1は、主として樹脂材料で構成されている。
一般に、母粒子表面に存在する官能基は、母粒子を構成する樹脂材料が有する官能基に由来するものである。
従って、母粒子1を構成する樹脂材料としては、アニオン性基を有する樹脂材料を用いるのが好ましい。これにより、母粒子1の表面にアニオン性基を確実に存在させることができる。
【0017】
アニオン性基としては、例えば、−COO基、−SO、−CO基、−OH基、−OSO基、−COO−基、−SO−基、−OSO−基、−PO、−PO基、および第4級アンモニウムならびにそれらの塩等が挙げられる。
また、前述した基の中でも、特に、−COO基、−SO基が好ましい。このような基は、後述する膜50との親和性が高く、膜50の不本意な剥がれ等を効果的に防止することができる。また、このような基を有する樹脂材料は、製造が比較的容易で、比較的安価に入手でき、その結果、液体現像剤の製造の更なる低コスト化を図ることができる。
【0018】
上記のような基は、樹脂材料を構成する高分子の側鎖に存在するものであるのが好ましい。これにより、母粒子1の表面にアニオン性基をより確実に存在させることができる。また、母粒子1の表面にアニオン性基を均一に存在させることができ、その結果、母粒子1の表面を膜50で均一に被覆することができる。
上記のようなアニオン性基を有する樹脂材料は、例えば、後述する原料となる樹脂材料(原料樹脂)またはそのモノマー(単量体)、ダイマー(2量体)、オリゴマー等に、前述したような官能基を有する材料を結合させることにより、製造することができる。
例えば、−COO基を有する樹脂材料は、水難溶性または水不溶性の樹脂(原料樹脂)に不飽和カルボン酸類をグラフト共重合またはブロック共重合させること、または、熱可塑性樹脂を構成する単量体と不飽和カルボン酸類とをランダム共重合させることにより、製造することができる。
【0019】
不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸またはその無水物、その不飽和カルボン酸のメチル、エチル、プロピル等のモノエステル、ジエステル等のエステル化物、また、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の不飽和カルボン酸塩類等を用いることができる。
【0020】
また、例えば、−SO基を有する樹脂材料は、熱可塑性樹脂(原料樹脂)に不飽和スルホン酸類をグラフト共重合またはブロック共重合させること、付加重合性熱可塑性樹脂を構成する不飽和単量体と不飽和スルホン酸類を含有する単量体とをランダム共重合させること、または、重縮合系熱可塑性樹脂を構成する単量体と不飽和スルホン酸類を含有する単量体とを重縮合させることにより、製造することができる。
【0021】
不飽和スルホン酸類としては、例えば、スチレンスルホン酸類、スルホアルキル(メタ)アクリレート類、またはこれらの金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。また、スルホン酸類を含有する単量体としては、スルホイソフタル酸類、スルホテレフタル酸類、スルホフタル酸類、スルホコハク酸類、スルホ安息香酸類、スルホサリチル酸類、またはこれらの金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。
【0022】
原料となる樹脂(原料樹脂)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上述した中でも、ポリエステル樹脂は、透明性が高いため、ポリエステル樹脂を用いた場合、得られる画像の発色性をより高いものとすることができる。
【0023】
また、スチレン−アクリル酸エステル共重合体を用いた場合、トナー粒子の低温での定着性をより優れたものとすることができる。
ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体は、上記のように、樹脂として優れた特性を持っているが、一般に、負帯電性または中性の樹脂であるため、正帯電性の液体現像剤を構成するトナー粒子に適用するのは困難であった。しかしながら、後に詳述するような膜50によって被覆することにより、前述したような負帯電性または中性の材料であっても、正帯電性の液体現像剤を構成するトナー粒子の構成材料として、好適に適用することができる。
【0024】
また、アニオン性基を有する樹脂材料は、例えば、前述したような官能基を有する前駆体(例えば、対応するモノマー(単量体)、ダイマー(2量体)、オリゴマー等)を重合させること等によっても製造することができる。
前記樹脂材料に含有されているアニオン性基の数は、前記樹脂材料100gに対して0.005〜0.5molであるのが好ましく、0.01〜0.1molであるのがより好ましい。これにより、母粒子1の表面に存在するアニオン性基の数を好適なものとすることができ、母粒子1の表面を膜50でより確実に被覆することができる。
【0025】
樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましく、60〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
【0026】
また、樹脂材料の酸価は、特に限定されないが、8〜50KOHmg/gであるのが好ましく、9〜40KOHmg/gであるのがより好ましく、10〜38KOHmg/gであるのがさらに好ましい。母粒子を構成する樹脂材料の酸価がこのような範囲のものであると、後述する膜50(第1のカチオン層20)を強固に形成することができるため、膜50の不本意な脱落等を効果的に防止することができる。また、後述するような方法においては、母粒子の表面に膜50(第1のカチオン層20)を好適に形成することができ、その結果、液体現像剤の帯電特性を効果的に向上させることができる。これに対して、樹脂材料の酸価が前記下限値未満であると、アニオン性基の種類や樹脂材料の種類等によっては、膜50による被覆が不十分となる可能性があり、正帯電性が不安定となり、画像濃度の低下やカブリの増加等の問題が発生する可能性がある。一方、樹脂材料の酸価が前記上限値を超えると、必要以上にアニオン性基の量が多くなり、耐電性が不安定となる場合がある。また、トナー粒子の絶縁性液体中における分散性が低下する場合がある。
【0027】
なお、樹脂材料は、上述したようなアニオン性基を有する樹脂以外の樹脂材料を含むものであってもよい。このような樹脂材料(アニオン性基を有する樹脂以外の樹脂材料)としては、例えば、上記で原料樹脂として例示したものを用いることができる。
なお、上記説明では、樹脂時材料自体が、アニオン性基を有するものものとして説明したが、例えば、樹脂材料等により粒子を形成した後、粒子に表面処理を施すことにより導入されたものであってもよい。後者については、後に詳述する。
【0028】
2.着色剤
また、母粒子は、前述した樹脂材料の他に、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
3.その他の成分
また、母粒子は、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、ステアリン酸金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
【0031】
また、母粒子は、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を含んでいてもよい。
なお、上述したその他の成分は、液体現像剤中に含まれていればよく、例えば、トナー粒子(母粒子)中に含まれていてもよいし、絶縁性液体中に含まれていてもよい。
【0032】
上記のような材料で構成された母粒子の平均粒径は、0.08〜4.5μmであるのが好ましく、0.2〜4.0μmであるのがより好ましく、0.4〜3.5μmであるのがさらに好ましい。母粒子1の平均粒径がこのような範囲のものであると、最終的なトナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。また、母粒子1の平均粒径がこのような範囲のものであると、後述するような方法により、容易に形成することができる。また、母粒子1の平均粒径がこのような範囲のものであると、得られるトナー粒子の粒径のばらつきを十分に小さいものとすることができる。また、粉砕法等のような従来のトナー粒子の製造方法では、粒径のばらつきが大きくなりやすかったが、そのような方法に適用した場合であっても、得られるトナー粒子の粒径のばらつきを小さくすることができる。
【0033】
<膜50>
次に、前述した母粒子1を被覆する膜50について説明する。
膜50は、図1に示すように、母粒子1側から順に、カチオン性基と疎水性基と重合性基とを有するカチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有する第1のカチオン層20と、アニオン性基と疎水性基と重合性基とを有するアニオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し単位を有するアニオン層30と、カチオン性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有する第2のカチオン層との積層体で構成されたものである。
【0034】
第1のカチオン層20は、母粒子1側に、カチオン性重合性界面活性剤由来のカチオン性基21と、母粒子1とは反対側に、カチオン性重合性界面活性剤由来のカチオン性基21’とを有している。
第1のカチオン層20は、母粒子1のアニオン性基11と、カチオン性基21とがイオン的に結合した状態で、母粒子1を被覆している。
【0035】
アニオン層30は、前述した第1のカチオン層20上に積層されており、第1のカチオン層20側に、アニオン性重合性界面活性剤由来のアニオン性基31と、第1のカチオン層20とは反対側に、アニオン性重合性界面活性剤由来のアニオン性基31’とを有している。
アニオン層30は、第1のカチオン層20のカチオン性基21’と、アニオン性基31とがイオン的に結合した状態で、第1のカチオン層20上に積層されたものである。
【0036】
第2のカチオン層40は、前述したアニオン層30上に積層されており、アニオン層30側に、カチオン性重合性界面活性剤由来のカチオン性基41と、アニオン層30とは反対側に、カチオン性重合性界面活性剤由来のカチオン性基41’とを有している。
第2のカチオン層40は、アニオン層30のアニオン性基31’と、カチオン性基41とがイオン的に結合した状態で、第1のカチオン層20上に積層されたものである。
【0037】
ところで、従来の正帯電性の液体現像剤では、帯電制御剤を添加することにより、トナー粒子を正帯電にしていた。しかしながら、従来の液体現像剤では、均一にトナー粒子を正帯電させるのが困難であった。また、十分な帯電量を得るのが困難であった。
また、正帯電性の樹脂材料をトナー粒子の構成材料として用いることも考えられるが、正帯電性の樹脂材料は、樹脂そのものの安定性が低く、また、トナー粒子を構成する材料として適用できるものが少なかった。
【0038】
これに対して、トナー粒子として、表面にアニオン性基を有する母粒子を、カチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤から誘導される層が積層した膜によって被覆したものを用いることにより、母粒子表面の電荷が、カチオン性重合性界面活性剤由来のカチオン性基によって打ち消されるとともに、トナー粒子表面には、カチオン性重合性界面活性剤由来のカチオン性基が存在することとなるため、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤とすることができる。
特に、本発明では、母粒子を被覆する膜として、カチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤から誘導される層が積層した積層体を用いた点に特徴を有している。
【0039】
一般に、トナー粒子の主成分としての樹脂材料は、湿気や温度等の環境要因により影響を受けやすく、帯電特性、定着特性等の特性が低下する傾向がある。特に、表面に電荷を有しているとこのような傾向が顕著であった。しかしながら、本発明のように、母粒子を積層体で構成された膜によって被覆することにより、母粒子を環境要因から確実に保護することができる。その結果、帯電特性、定着特性等の特性の低下を効果的に防止することができ、母粒子を構成する材料本来の特性を十分に発揮させることができる。
これに対して、母粒子を、カチオン性重合性界面活性剤から誘導される層、1層のみで被覆した場合、上述のような効果は得られない。すなわち、1層のみでは、環境要因による影響を十分に防止することができない。その結果、母粒子を構成する材料本来の特性を十分に発揮することができない。
【0040】
また、従来の液体現像剤を構成するトナー粒子は、記録媒体上に定着させるのに、一般に、比較的高い温度で加熱することを要するものであったが、本発明のように、母粒子をカチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤から誘導される層が積層した膜で被覆することにより、比較的低い温度で定着した場合であっても、高い定着強度を得ることができる。これは、上記のような膜が、紙等の記録媒体と高い親和性を有しているため、比較的低い温度で定着した場合であっても、膜が記録媒体に強固に付着するためであると考えられる。
【0041】
また、ただ単に、母粒子を膜で覆っているだけでなく、母粒子と膜とが電気的に強く結合していることから、膜が不本意に母粒子表面から剥がれたりするのを防止することができ、確実に帯電特性の低下を防止することができる。
また、膜を構成する積層体の層の数を適宜調整することにより、トナー粒子の平均粒径を適度なものとすることができる。また、トナー粒子の粒径のばらつきを小さくすることができる。
【0042】
カチオン性重合性界面活性剤のカチオン性基としては、第一アミンカチオン、第二アミンカチオン、第三アミンカチオン、第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。第一アミンカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、第二アミンカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、第三アミンカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(RNH)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R)等を挙げることができる。ここで、Rは、疎水性基および重合性基であり、下記に示すものを挙げることができる。
【0043】
前述のカチオン性基の対アニオンとしては、Cl、Br、Iなどを挙げることができる。
また、カチオン性重合性界面活性剤の疎水性基としては、アルキル基,アリール基およびこれらが組み合わされた基からなる群から選択されることが好ましい。
また、カチオン性重合性界面活性剤の重合性基としては、不飽和炭化水素基が好ましく、さらに詳しくは、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基からなる群から選択されたものであることが好ましい。このなかでも特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい例として例示できる。
【0044】
前述したカチオン性重合性界面活性剤の具体的な例としては、特公平4−65824号公報に記載されているようなカチオン性のアリル酸誘導体などを挙げることができる。
本発明において使用するカチオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式R[4−(l+m+n)]n・Xで表される化合物を挙げることができる(Rは重合性基であり、R、R、Rはそれぞれアルキル基またはアリール基であり、XはCl、BrまたはIであり、l、m、nはそれぞれ1または0である。)。ここで、重合性基としては、ラジカル重合可能な不飽和炭化水素基を有する炭化水素基を好適に例示でき、より具体的には、アリル基、アクロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロぺニル基、ビニリデン基、ビニレン基等を挙げることができる。
【0045】
カチオン性重合性界面活性剤の具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
【0046】
前述のカチオン性重合性界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。例えば、アクリエステルDMC(三菱レイヨン(株))、アクリエステルDML60(三菱レイヨン(株))、C−1615(第一工業製薬(株))などを挙げることができる。
以上に例示したカチオン性重合性界面活性剤は、単独で、または2種以上の混合物として使用することができる。
【0047】
アニオン性重合性界面活性剤のアニオン性基としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、カルボニル基およびこれらの塩の群から選択されたものを好適に例示できる。
また、アニオン性重合性界面活性剤の疎水性基としては、アルキル基,アリール基およびこれらが組み合わされた基からなる群から選択されることが好ましい。
また、アニオン性重合性界面活性剤の重合性基としては、不飽和炭化水素基が好ましく、さらに詳しくは、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基からなる群から選択されたものであることが好ましい。このなかでも特にアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい例として例示できる。
【0048】
また、アニオン性重合性界面活性剤の具体的な例としては、特公昭49−46291号公報、特公平1−24142号公報、又は特開昭62−104802号公報に記載されているようなアニオン性のアリル誘導体、特開昭62−221431号公報に記載されているようなアニオン性のプロペニル誘導体、特開昭62−34947号公報又は特開昭55−11525号公報に記載されているようなアニオン性のアクリル酸誘導体、特公昭46−34898号公報又は特開昭51−30284号公報に記載されているようなアニオン性のイタコン酸誘導体などを挙げることができる。
また、本発明において使用するアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式(31):
【0049】
【化1】

[式中、R21及びR31は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Z1は、炭素−炭素単結合又は式−CH−O−CH−で表される基であり、mは2〜20の整数であり、Xは式−SOで表される基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである]
で表される化合物、又は式(32):
【0050】
【化2】

[式中、R22及びR32は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基であり、Dは、炭素−炭素単結合又は式−CH−O−CH−で表される基であり、nは2〜20の整数であり、Yは式−SOで表される基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、又はアルカノールアミンである]
で表される化合物が好ましい。
【0051】
前述した式(31)で表される重合性界面活性剤は、特開平5−320276号公報、又は特開平10−316909号公報に記載されている。式(31)で表される好ましい重合性界面活性剤としては、下記の式(310)で表される化合物を挙げることができ、具体的には、下記の式(31a)〜(31d)で表される化合物を挙げることができる。
【0052】
【化3】

[式中、R31,m,Mは式(31)で表される化合物と同様]
【0053】
【化4】

【0054】
【化5】

【0055】
【化6】

【0056】
【化7】

【0057】
また、アニオン性重合性界面活性剤としては、市販品を用いることもできる。例えば、第一工業製薬株式会社のアクアロンHSシリーズ(アクアロンHS−05、HS−10、HS−20、HS−1025)、あるいは、旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−10N,SE−20Nなどを挙げることができる。
旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−10Nは、式(310)で表される化合物において、MがNH、R31がC19、m=10とされた化合物である。旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−20Nは、式(310)で表される化合物において、MがNH、R31がC19、m=20とされた化合物である。
また、本発明において使用するアニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式(33):
【0058】
【化8】

[式中、pは9又は11であり、qは2〜20の整数であり、Aは−SOで表わされる基であり、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩又はアルカノールアミンである]
で表される化合物が好ましい。式(33)で表される好ましいアニオン性重合性界面活性剤としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0059】
【化9】

[式中、rは9又は11、sは5又は10]
【0060】
また、アニオン性重合性界面活性剤としては、他の市販品を用いることもできる。例えば、第一工業製薬株式会社のアクアロンKHシリーズ(アクアロンKH−5、アクアロンKH−10)などを挙げることができる。アクアロンKH−5は、上記式で示される化合物において、rが9、sが5とされた化合物と、rが11、sが5とされた化合物との混合物である。アクアロンKH−10は、上記式で示される化合物において、rが9、sが10とされた化合物と、rが11、sが10とされた化合物との混合物である。
また、アニオン性重合性界面活性剤としては、下記の式(A)で表される化合物も好ま
しい。
【0061】
【化10】

[上式中、Rは水素原子または炭素数1から12の炭化水素基を表し、lは2〜20の数を表し、Mはアルカリ金属、アンモニウム塩、またはアルカノールアミンを表す。]
【0062】
上述したようなトナー粒子の平均粒径は、0.1〜5.0μmであるのが好ましく、0.3〜4.0μmであるのがより好ましく、0.5〜3.0μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきを特に小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を特に高いものとしつつ、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での粒径の標準偏差は、1.5μm以下であるのが好ましく、0.01〜1.0μmであるのがより好ましく、0.01〜0.5μmであるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
【0063】
また、母粒子1の平均粒径をX[μm]、トナー粒子100の平均粒径をY[μm]としたとき、0.02≦Y−X≦2.0の関係を満足するのが好ましく、0.05≦Y−X≦1.5の関係を満足するのがより好ましい。これにより、母粒子を湿気や温度等の環境要因からより確実に保護することができる。その結果、帯電特性、定着特性等の特性の低下をより効果的に防止することができ、母粒子を構成する材料本来の特性を十分に発揮させることができる。
【0064】
なお、第1のカチオン層20、第2のカチオン層40は、同じカチオン性重合性界面活性剤から誘導されたものであってもよく、異なるカチオン性重合性界面活性剤から誘導されたものであってもよい。
また、上記説明では、膜50が、第1のカチオン層20、アニオン層30、第2のカチオン層40の3層の積層体で構成されるものとして説明したが、膜50は、最外層がカチオン層であれば、何層有していてもよく、例えば、膜50は、図2に示すように、上記3層上に、さらに、アニオン層とカチオン層との2層が積そうされたものであってもよいし、それ以上積層されたものであってもよい。
【0065】
<液体現像剤の製造方法>
次に、本発明の液体現像剤の製造方法の好適な実施形態について説明する。
図3は、混練物を製造するための混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
以下の説明では、着色剤と樹脂材料とを含む混練物K7を用いて液体現像剤を製造する場合について説明する。なお、以下の説明では、樹脂材料として、アニオン性基を有するものを用いた場合について説明する。
混練物K7は、例えば、図3に示すような装置を用いて製造することができる。
【0066】
[混練工程]
混練に供される原料K5は、前述したような成分を含むものである。特に、着色剤を含む組成物は、着色剤が空気を抱き込みやすいから、組成物中に空気が残存することが起こりやすいが、本工程で混練することにより、原料K5中に含まれる空気(特に着色剤が抱き込んだ空気)を効率よく除去することができ、トナー粒子の内部に気泡が混入(残存)するのを効果的に防止することができる。
混練に供される原料K5は、これらの各成分が予め混合されたものであるのが好ましい。
【0067】
本実施形態では、混練機として、2軸混練押出機を用いる構成について説明する。
混練機K1は、原料K5を搬送しつつ混練するプロセス部K2と、混練された原料(混練物K7)を所定の断面形状に形成して押し出すヘッド部K3と、プロセス部K2内に原料K5を供給するフィーダーK4とを有している。
プロセス部K2は、バレルK21と、バレルK21内に挿入されたスクリューK22、スクリューK23と、バレルK21の先端にヘッド部K3を固定するための固定部材K24とを有している。
【0068】
プロセス部K2では、スクリューK22、スクリューK23が、回転することにより、フィーダーK4から供給された原料K5に剪断力が加えられ、均一な混練物K7が得られる。
プロセス部K2の全長は、50〜300cmであるのが好ましく、100〜250cmであるのがより好ましい。プロセス部K2の全長が前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、プロセス部K2の全長が前記上限値を超えると、プロセス部K2内の温度、スクリューK22、スクリューK23の回転数等によっては、熱による原料K5の変性が起こり易くなり、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0069】
また、混練時の原料温度は、原料K5の組成等により異なるが、80〜260℃であるのが好ましく、90〜230℃であるのがより好ましい。なお、プロセス部K2内での原料温度は、均一であっても、部位により異なるものであってもよい。例えば、プロセス部K2は、設定温度の比較的低い第1の領域と、該第1の領域より基端側に設けられ、かつ、その設定温度が第1の領域より高い第2の領域とを有するようなものであってもよい。
【0070】
また、原料K5のプロセス部K2での滞留時間(通過に要する時間)は、0.5〜12分であるのが好ましく、1〜7分であるのがより好ましい。プロセス部K2での滞留時間が、前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、プロセス部K2での滞留時間が、前記上限値を超えると、生産効率が低下し、また、プロセス部K2内の温度、スクリューK22、スクリューK23の回転数等によっては、熱による原料K5の変性が起こり易くなり、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0071】
スクリューK22、スクリューK23の回転数は、バインダー樹脂の組成等により異なるが、50〜600rpmであるのが好ましい。スクリューK22、スクリューK23の回転数が、前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、スクリューK22、スクリューK23の回転数が、前記上限値を超えると、剪断により、樹脂の分子鎖が切断され、樹脂の特性が劣化する場合がある。
【0072】
また、本実施形態で用いる混練機K1では、プロセス部K2の内部は、脱気口K25を介して、ポンプPに接続されている。これにより、プロセス部K2の内部を脱気することができ、原料K5(混練物K7)が加熱されたり、発熱すること等によるプロセス部K2内の圧力の上昇を防止することができる。その結果、混練工程を安全かつ効率よく行うことができる。また、プロセス部K2の内部が脱気口K25を介してポンプPに接続されていることにより、得られる混練物K7中に気泡(特に、比較的大きな気泡)が含まれるのを効果的に防止することができ、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の特性をより優れたものとすることができる。
【0073】
[押出工程]
プロセス部K2で混練された混練物K7は、スクリューK22とスクリューK23との回転により、ヘッド部K3を介して、混練機K1の外部に押し出される。
ヘッド部K3は、プロセス部K2から混練物K7が送り込まれる内部空間K31と、混練物K7が押し出される押出口K32とを有している。
【0074】
内部空間K31内での混練物K7の温度(少なくとも押出口K32付近での温度)は、特に限定されないが、原料K5中に含まれる樹脂材料の軟化温度以上の温度であるのが好ましい。これにより、トナー粒子を各構成成分がより均一に混ざり合ったものとして得ることができ、各トナー粒子間での特性(帯電特性、定着性等)のばらつきを特に小さくすることができる。
内部空間K31内での混練物K7の具体的な温度(少なくとも押出口K32付近での温度)は、特に限定されないが、80〜150℃であるのが好ましく、90〜140℃であるのがより好ましい。内部空間K31内での混練物K7の温度が上記範囲内の値であると、混練物K7が内部空間K31で固化せず、押出口K32から押し出しやすくなる。
【0075】
図示の構成では、内部空間K31は、押出口K32の方向に向って、その横断面積が漸減する横断面積漸減部K33を有している。このような横断面積漸減部K33を有することにより、押出口K32から押し出される混練物K7の押出量が安定し、また、後述する冷却工程における混練物K7の冷却速度が安定する。その結果、これを用いて製造されるトナーは、各トナー粒子間での特性のばらつきが小さいものとなり、全体としての特性に優れたものになる。
【0076】
[冷却工程]
ヘッド部K3の押出口K32から押し出された軟化した状態の混練物K7は、冷却機K6により冷却され、固化する。
冷却機K6は、ロールK61、K62、K63、K64と、ベルトK65、K66とを有している。
【0077】
ベルトK65は、ロールK61とロールK62とに巻掛けられている。同様に、ベルトK66は、ロールK63とロールK64とに巻掛けられている。
ロールK61、K62、K63、K64は、それぞれ、回転軸K611、K621、K631、K641を中心として、図中e、f、g、hで示す方向に回転する。これにより、混練機K1の押出口K32から押し出された混練物K7は、ベルトK65−ベルトK66間に導入される。ベルトK65−ベルトK66間に導入された混練物K7は、ほぼ均一な厚さの板状となるように成形されつつ、冷却される。冷却された混練物K7は、排出部K67から排出される。ベルトK65、K66は、例えば、水冷、空冷等の方法により、冷却されている。冷却機として、このようなベルト式のものを用いると、混練機から押し出された混練物と、冷却体(ベルト)との接触時間を長くすることができ、混練物の冷却の効率を特に優れたものとすることができる。
【0078】
ところで、混練工程では、原料K5に剪断力が加わっているため、相分離(特に、マクロ相分離)等が十分防止されているが、混練工程を終えた混練物K7は、剪断力が加わらなくなるので、混練物の構成材料によっては、長期間放置しておくと再び相分離(マクロ相分離)等を起こしてしまう可能性がある。従って、上記のようにして得られた混練物K7は、できるだけ早く冷却するのが好ましい。具体的には、混練物K7の冷却速度(例えば、混練物K7が60℃程度まで冷却される際の冷却速度)は、3℃/秒以上であるが好ましく、5〜100℃/秒であるのがより好ましい。また、混練工程の終了時(剪断力が加わらなくなった時点)から冷却工程が完了するまでに要する時間(例えば、混練物K7の温度を60℃以下に冷却するのに要する時間)は、20秒以下であるのが好ましく、3〜12秒であるのがより好ましい。
【0079】
本実施形態では、混練機として、連続式の2軸混練押出機を用いる構成について説明したが、原料の混練に用いる混練機はこれに限定されない。原料の混練には、例えば、ニーダーやバッチ式の三軸ロール、連続2軸ロール、ホイールミキサー、ブレード型ミキサー等の各種混練機を用いることができる。
また、図示の構成では、スクリューを2本有する構成の混練機について説明したが、スクリューは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、混練装置にディスク(ニーディングディスク)部があってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、1つの混練機を用いる構成について説明したが、2つの混練機を用いて混練してもよい。この場合、一方の混練機と、他方の混練機とで、原料の加熱温度、スクリューの回転速度等が異なっていてもよい。
また、本実施形態では、冷却機として、ベルト式のものを用いた構成について説明したが、例えば、ロール式(冷却ロール式)の冷却機を用いてもよい。また、混練機の押出口K32から押し出された混練物の冷却は、前記のような冷却機を用いたものに限定されず、例えば、空冷等により行うものであってもよい。
【0081】
[粉砕工程]
次に、上述したような冷却工程を経た混練物K7を粉砕する。このように、混練物K7を粉砕することにより、後述する水系分散液(水系懸濁液)を、比較的容易に、より微小な母粒子が分散したものとして得ることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、トナー粒子の大きさをより小さなものとすることができ、高解像度の画像形成に好適に用いることができる。
【0082】
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
粉砕の工程は、複数回(例えば、粗粉砕工程と微粉砕工程との2段階)に分けて行ってもよい。また、このような粉砕工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0083】
原料K5に対して上記のような混練を施すことにより、原料K5中に含まれる空気を効果的に除去することができる。言い換えると、上記のような混練により得られる混練物K7は、その内部に空気(気泡)をほとんど含まない。これにより、後述する水系分散液噴霧工程において、異形粒子(中空粒子、欠落粒子、融合粒子等)が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においては、異形トナー粒子による転写性、クリーニング性等の低下等の問題が発生するのを効果的に防止することができる。
本実施形態では、上記のような混練物を用いて、母粒子が分散した水系分散液を調製する。特に、本実施形態では、上記のような混練物を用いて、一旦、水系乳化液を調製し、その後、当該水系乳化液を用いて水系懸濁液(水系分散液)を調製する。
【0084】
水系分散液の調製に混練物K7を用いることにより、以下のような効果が得られる。すなわち、母粒子の構成材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、混練を施すことにより、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。特に、顔料(着色剤)は、通常、後述するような溶媒として用いられる液体に対する分散性が低いが、溶媒に分散する前に予め混練が施されることにより、顔料粒子の周囲を樹脂成分等が効果的にコーティングすることとなり、これにより、溶媒への顔料の分散性が向上し(特に溶媒への微分散が可能となり)、最終的に得られるトナーの発色性も良好となる。このようなことから、トナーの構成材料中に、後述する水系分散液(水系懸濁液)の分散媒(水系分散媒)に対する分散性に劣る成分(以下、「難分散性成分」とも言う。)や水系乳化液の分散媒に含まれる溶媒に対する溶解性に劣る成分(以下、「難溶性成分」とも言う。)が含まれる場合であっても、水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)における分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、各トナー粒子間での組成、特性のばらつきが小さくなり、全体としての特性が特に優れたものとなる。
【0085】
[水系乳化液調製工程]
次に、上記のような混練物K7を用いて、水系液体で構成された水系分散媒中に、母粒子を構成する材料を含む分散質が分散した水系乳化液を調製する(水系乳化液調製工程)。
水系乳化液においては、分散質が液状である(流動性を有し、比較的容易に変形可能である)ため、分散質はその表面張力により、円形度(真球度)の大きい形状になる傾向を示す。したがって、当該水系乳化液を用いて調製される懸濁液(水系懸濁液)も、分散質の形状が比較的円形度(真球度)の大きいものとなり、得られるトナー粒子(母粒子)も比較的円形度(真球度)の大きいものとなる。また、分散質が液状である(流動性を有し、比較的容易に変形可能である)乳化液では、乳化液を攪拌すること等により、比較的容易に分散質の大きさの均一性を十分に高いものとすることができる。
【0086】
水系乳化液の調製方法は、特に限定されないが、本実施形態では、混練物K7の少なくとも一部が溶解した混練物K7の溶液を得、当該溶液を水系液体に分散させることにより水系乳化液を調製する。なお、本明細書中において、「乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)」とは、液状の分散媒中に、液状の分散質(分散粒子)が分散した分散液のことを指し、「懸濁液(サスペンション)」とは、液状の分散媒中に、固体状(固形)の分散質(懸濁粒子)が分散した分散液(懸濁コロイドを含む)のことを指す。また、分散液中に、液状の分散質と、固体状の分散質とが併存する場合には、分散液中において、液状の分散質の総体積が、固体状の分散質の総体積よりも大きいものを乳化液とし、分散液中において、固体の分散質の総体積が、液状の分散質の総体積よりも大きいものを懸濁液とする。
【0087】
以下、水系乳化液の調製方法について詳細に説明する。
(混練物溶液(混練物の溶液)の調製)
本実施形態では、まず、混練物の少なくとも一部が溶解した混練物の溶液を得る。
溶液は、混練物と、混練物の少なくとも一部を溶解し得る溶媒とを混合することにより調製することができる。
【0088】
溶液の調製に用いる溶媒は、混練物の少なくとも一部を溶解しうるものであればいかなるものであってもよいが、通常、後述する水系液体(水系乳化液の調製の用いる水系液体)との相溶性の低いもの(例えば、25℃における水系液体100gに対する溶解度が10g以下の液体)が用いられる。
このような溶媒としては、例えば、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、2−ヘプタノン等のケトン系溶媒、ペンタノール、n−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、フラン、チオフェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、アクリル酸エチル等のエステル系溶媒、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0089】
溶液中における溶媒の含有率は、特に限定されないが、5〜75wt%であるのが好ましく、10〜70wt%であるのがより好ましく、15〜65wt%であるのがさらに好ましい。溶媒の含有率が前記下限値未満であると、溶媒に対する混練物の溶解性(溶解度)によっては、混練物を十分に溶解するのが困難になる可能性がある。一方、溶媒の含有率が前記上限値を超えると、後の処理で溶媒を除去するのに要する時間が長くなり、液体現像剤の生産性が低下する。また、溶媒の含有率が高すぎると、前述した混練工程で、十分均一に混ざり合った各成分が相分離してしまう可能性があり、これにより、最終的に得られる液体現像剤における各トナー粒子の特性のばらつきを十分に小さくするのが困難になる可能性がある。
なお、溶液中においては、混練物を構成する成分の少なくとも一部が溶解(膨潤を含む)していればよく、溶液中に、溶解していない不溶分が存在していてもよい。
【0090】
(水系乳化液の調製)
次に、上記のような溶液を水系液体と混合することにより、水系乳化液を得る。この水系乳化液においては、通常、前述した溶媒と混練物の構成材料とを含む分散質が、水系液体で構成された水系分散媒中に分散している。
本発明において、「水系液体」とは、少なくとも水(HO)を含む液体のことを指し、好ましくは、主として水で構成されたものである。水系液体中に占める水の含有率は、50wt%以上であるのが好ましく、80wt%以上であるのがより好ましく、90wt%以上であるのがさらに好ましい。なお、水系液体は、水以外の成分を含むものであってもよい。例えば、水系液体は、水との相溶性に優れる成分(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の物質)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられる。
【0091】
また、水系乳化液(水系分散液)の調製には、例えば、分散質の分散性を向上させる目的で、分散剤等を用いてもよい。分散剤としては、例えば、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、膜レイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩(例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等)等のカチオン性有機分散剤等が挙げられる。水系乳化液の調製に上記のような分散剤を用いることにより、分散質の分散性が向上するとともに、比較的容易に、水系乳化液中での分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとし、また、分散質の形状を略球形状とすることができる。その結果、最終的な液体現像剤を、略球形状で、均一な形状、大きさのトナー粒子で構成されたものとして得ることができる。また、水系乳化液の調製に上記のような分散剤を用いることにより、水系乳化液の保存安定性を特に優れたものとすることができる。
【0092】
溶液と水系液体との混合は、少なくとも一方の液体を攪拌しつつ行うのが好ましい。これにより、大きさ、形状のばらつきの小さい分散質が均一に分散した乳化液(水系乳化液)を、容易かつ確実に得ることができる。
溶液と水系液体との混合の具体的な方法としては、例えば、容器内の水系液体中に溶液を加える方法(例えば、滴下する方法)、容器内の溶液中に水系液体を加える方法(例えば、滴下する方法)等が挙げられる。これらの場合、少なくとも、攪拌した状態の液体中に、他方の液体を加えるのが好ましい。これにより、上述した効果は更に顕著に発揮される。
【0093】
水系乳化液中における分散質の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の不本意な結合(凝集)をより確実に防止しつつ、トナー粒子(液体現像剤)の生産性を特に優れたものとすることができる。
水系乳化液中における分散質の平均粒径は、特に限定されないが、0.08〜4.5μmであるのが好ましく、0.2〜4.0μmであるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の不本意な結合(凝集)をより確実に防止することができるとともに、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
なお、上記の説明では、水系乳化液中において、混練物中の成分が分散質に含まれるものとして説明したが、混練物の構成成分の一部が分散媒中に含まれていてもよい。
【0094】
また、水系乳化液中には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフミン酸等が挙げられる。
【0095】
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、水系乳化液中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
【0096】
[水系懸濁液調製工程]
本実施形態において、(液状の分散質が水系分散媒中に分散した)水系乳化液から、固形状の分散質、すなわち、母粒子1が水系分散媒62中に分散した水系懸濁液を得、当該水系懸濁液を用いて母粒子1の表面に膜50を形成する。
以下、水系懸濁液の調製方法について詳細に説明する。
【0097】
水系懸濁液の調製は、水系乳化液から分散質を構成する溶媒を除去することにより行うことができる。
溶媒の除去は、例えば、水系乳化液を加熱(加温)したり、減圧雰囲気下に置くことにより行うことができるが、水系乳化液を減圧下で加熱することにより行うものであるのが好ましい。これにより、分散質の大きさ、形状のばらつきが特に小さい水系懸濁液を、比較的容易に得ることができる。また、上記のように溶媒を除去することにより、溶媒の除去とともに、脱気処理を施すことができる。これにより、水系懸濁液中の気体の溶存量を低減させることができ、後述するトナー粒子製造装置M1の分散媒除去部M3において、トナー分散液6の液滴9から分散媒62を除去する際に、当該トナー分散液6中に気泡等が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中に異形状のトナー粒子(中空粒子、欠落粒子等)が混入するのをより効果的に防止することができる。
【0098】
水系乳化液を加熱(加温)する場合、加熱温度は、30〜110℃であるのが好ましく、40〜100℃であるのがより好ましい。加熱温度が前記範囲内の値であると、異形状のトナー粒子100の発生を十分に防止しつつ(水系乳化液の分散質の内部から溶媒が急激に気化(沸騰)するのを確実に防止しつつ)、溶媒を速やかに除去することができる。
また、水系乳化液を減圧雰囲気下に置く場合、水系乳化液が置かれる雰囲気の圧力は、0.1〜50kPaであるのが好ましく、0.5〜5kPaであるのがより好ましい。水系乳化液が置かれる雰囲気の圧力が前記範囲内の値であると、異形状の分散質の発生を十分に防止しつつ(水系乳化液の分散質の内部から溶媒が急激に気化(沸騰)するのを確実に防止しつつ)、溶媒を速やかに除去することができる。
なお、溶媒の除去は、少なくとも分散質が固形状となる程度に行われるものであればよく、水系乳化液中に含まれる実質的に全ての溶媒を除去するものでなくてもよい。
【0099】
なお、上記説明では、アニオン性基を有する樹脂材料を用いることにより、母粒子の表面にアニオン性基を導入する場合について説明したが、例えば、アニオン性基を有していない樹脂材料を用いて水性懸濁液を調整し、形成された母粒子に表面処理を施すことにより、アニオン性基を導入してもよい。この場合、例えば、以下のような表面処理剤を用いることができる。
【0100】
母粒子の表面を処理するためのアニオン性基付与剤としては、まず、硫黄を含有する処理剤を好適に挙げることができる。
硫黄を含有する処理剤としては、硫酸,発煙硫酸,三酸化硫黄,クロロ硫酸,フルオロ硫酸,アミド硫酸,スルホン化ピリジン塩,スルファミン酸が挙げられ、中でも、三酸化硫黄,スルホン化ピリジン塩またはスルファミン酸等のスルホン化剤が好適である。これらを単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0101】
また、前記三酸化硫黄を、三酸化硫黄と錯体を形成することのできる溶剤(N,N−ジメチルホルムアミドジオキサン,ピリジン,トリエチルアミン,トリメチルアミンのような塩基性溶剤、ニトロメタン、アセトニトリル等)と後述する溶剤1種以上との混合溶媒により、錯体化させることも有用である。
特に、三酸化硫黄自身では反応性が大きすぎて、樹脂自身を分解または変質させたり、あるいは強酸による反応制御が困難な場合には、上記のように三酸化硫黄と第三アミンとの錯体を用いて母粒子の表面処理を行うことが好ましい。
【0102】
また、硫酸や発煙硫酸,クロロ硫酸、フルオロ硫酸などを単体で使用すると容易に母粒子が溶解し、一分子ごとに反応する様な強酸に対しては、反応を抑制する必要があり、後述する溶剤の種類や使用する量に関して留意する必要がある。
反応に用いられる溶剤は、硫黄を含む処理剤とは反応せず、また、上記した顔料が不溶性または難溶性となるようなものから選択され、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、キノリン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、液体二酸化硫黄、二硫化炭素、トリクロロフルオロメタンなどが挙げられる。
【0103】
硫黄を含む処理剤による処理は、母粒子を溶剤に分散させ、この分散液に硫黄を含む処理剤を添加し、60〜200℃に加熱、3〜10時間攪拌することにより行う。この際、アニオン性基の導入量の決定には、反応条件と硫黄を含む処理剤の種類が大きく左右する。この後に加熱処理した後、母粒子のスラリーから、溶剤および残留する硫黄を含む処理剤は取り除かれる。除去は、水洗,限外濾過,逆浸透等の方法、遠心分離,濾過等を繰り返して行う。
【0104】
さらに、前述したスルホン酸(−SOH)をアルカリ化合物で処理することによって、スルホン酸アニオン基(−SO)を表面に有する母粒子とすることができる。
アルカリ化合物としては、カチオンがアルカリ金属イオンまたは化学式(RN)(R,R,RおよびRは同一でも異なってもよく、水素原子,アルキル基,ヒドロキシアルキル基またはハロゲン化アルキル基を示す)で示される1価のイオンとなるアルカリ化合物が選択される。好ましくは、カチオンが、リチウムイオン(Li),カリウムイオン(K),ナトリウムイオン(Na),アンモニウムイオン(NH4)、および、トリエタノールアミンカチオン等のアルカノールアミンカチオンとなるアルカリ化合物である。
【0105】
アルカリ化合物のアニオンとしては、水酸化アニオンが好適に用いられ、その具体例としては、アンモニア,アルカノールアミン(モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,N,N−ブチルエタノールアミン,トリエタノールアミン,プロパノールアミン,アミノメチルプロパノール,2−アミノイソプロパノール等)、一価のアルカリ金属の水酸化物(LiOH,NaOH,KOH)が例示できる。
【0106】
上記したアルカリ化合物の添加量としては、母粒子のスルホン酸基の中和当量以上が好ましい。さらに、アンモニア,アルカノールアミン等の揮発性のある添加剤については、概ね、中和当量の1.5倍以上の添加が好ましい。
なお、操作は、アルカリ化合物中に上記スルホン酸基が表面に化学結合された母粒子を入れ、ペイントシェーカー等で振とうすることにより行うことができる。
【0107】
また、母粒子の表面を処理するためのアニオン性基付与剤としては、カルボキシル化剤も好適に挙げることができる。
カルボキシル化剤としては、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等の次亜ハロゲン酸塩の様な酸化剤を使い、母粒子表面の一部結合(C=C、C−C)を切断し、酸化処理することによる。
【0108】
カルボキシル化剤による処理の一例を挙げると、母粒子を水性媒体中に予め分散し、分散液とする。次に、有効ハロゲン濃度で10〜30%の次亜塩素酸ナトリウムのような次亜ハロゲン酸塩とを適量の水中で混合させ、60〜80℃に加熱、5〜10時間程度、好ましくは10時間以上攪拌することにより行う。この作業は、かなりの発熱を伴うため、安全上の注意が必要である。この後に表面処理された母粒子のスラリーから、溶剤および残留するカルボキシル化剤を加熱処理することで取り除く。また、必要によっては水洗、限外濾過、逆浸透等の方法、遠心分離、濾過等を繰り返して行う。
そして、カルボン酸基(−COOH)を有する母粒子をアルカリ化合物で処理することによって、カルボン酸アニオン基(−COO)を表面に有する母粒子とすることができる。
アルカリ化合物の種類およびアルカリ化合物による処理方法は前述と同様である。
【0109】
[膜50の形成(トナー粒子100の形成)]
次に、上記のようにして得られた水性懸濁液中に含まれる母粒子(アニオン性基を表面に有する母粒子)1の表面に、第1のカチオン層20とアニオン層30と第2のカチオン層40とを積層し、膜50を形成する。これにより、トナー粒子100が、主として水系分散媒62で構成された液体中に分散したトナー分散液6を得る。
このように、母粒子表面に、カチオン層、アニオン層を積層することにより、トナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。
【0110】
図4は、母粒子表面に膜を形成する工程の一例を示す図である。
(第1のカチオン層20の形成)
まず、第1のカチオン層20の形成について説明する。
第1のカチオン層20は、アニオン性基11を表面に有する母粒子1上に、カチオン性重合性界面活性剤2、2’を重合することにより形成される(第1のカチオン層20形成工程)。
【0111】
まず、前述のようにして得られた水性懸濁液(水系分散液)中に、前述したカチオン性重合性界面活性剤を添加する。
このとき、図4(a)に示すように、カチオン性重合性界面活性剤2のカチオン性基21が母粒子1のアニオン性基11に向くように配置され、イオン性の強い結合で吸着する。さらに、カチオン性重合性界面活性剤2’の疎水性基22’と重合性基23’が、カチオン性重合性界面活性剤2の疎水性基22と重合性基23との疎水性相互作用によって吸着し、カチオン性重合性界面活性剤2’のカチオン性基21’が、水系分散媒の存在する方向、すなわち母粒子1から離れる方向に向くよう配置される。
この状態に例えば重合開始剤を添加するなどして、隣接するカチオン性重合性界面活性剤2、2’の重合性基23、23’同士を重合させることによって、図4(b)に示すように、母粒子1の表面に第1のカチオン層20が形成される。
【0112】
このような方法によれば、重合系内に、母粒子の表面のアニオン性基と、カチオン性重合性界面活性剤のカチオン性基とが、イオン的に結合し、重合反応によって層を形成することから、乳化重合前における母粒子の周囲に存在するカチオン性重合性界面活性剤の配置形態が重合後の粒子表面の分極状態に影響を与え、よって極めて高精度で制御することができる。
【0113】
第1のカチオン層20は、より具体的には、以下の手順によって好適に形成される。
(1)まず、母粒子1が分散した水系懸濁液に、カチオン性重合性界面活性剤を加える。加えたカチオン性重合性界面活性剤の一部(カチオン性重合性界面活性剤2)がそのカチオン性基を母粒子1のアニオン性基に吸着してイオン的に結合して固定化される。
水系懸濁液に加えるカチオン性重合性界面活性剤の添加量は、水系懸濁液中の母粒子表面のアニオン性基の総モル数に対して、0.5〜2倍molの範囲が好ましく、より好ましくは、0.8〜1.2倍molの範囲である。0.5倍mol以上の添加量とすることによって、アニオン性基を有する母粒子にイオン的に強く結合し、容易に第1のカチオン層20を形成することができる。2倍mol以下の添加量とすることで母粒子に未吸着のカチオン性重合性界面活性剤の発生を少なくすることができる。
【0114】
(2)次に、重合開始剤を加え、乳化重合する。
このような重合開始剤としては、水溶性の重合開始剤が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、または4,4−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)などが挙げられる。
重合開始剤の添加は、水溶性重合開始剤を純水に溶解した水溶液を滴下することにより好適に実施できる。
なお、重合開始剤は、活性化した状態で添加するのが好ましい。
【0115】
重合開始剤の活性化は、水系懸濁液を所定の重合温度まで昇温することにより好適に実施できる。また、重合温度は、60℃〜90℃の範囲とされるのが好ましい。
また、重合反応は、超音波発生器、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗及び温度調節器を備えて反応容器を使用するのが好ましい。
以上のようにして、母粒子1の表面に第1のカチオン層20が形成され、第1のカチオン層20により被覆された母粒子1が分散した第1の分散液が得られる。
【0116】
(積層工程(アニオン層30および第2のカチオン層40の形成工程))
次に、上記のようにして形成された第1のカチオン層20上に、アニオン層30と第2のカチオン層40とを積層する(積層工程)。
まず、アニオン層30の形成について説明する。
アニオン層30は、第1のカチオン層20上に、アニオン性重合性界面活性剤3、3’を重合することにより形成される。
【0117】
まず、前述のようにして得られた、第1のカチオン層20により被覆された母粒子1が分散した第1の分散液中に、前述したアニオン性重合性界面活性剤を添加する。
このとき、図4(c)に示すように、アニオン性重合性界面活性剤3のアニオン性基31が第1のカチオン層20のカチオン性基21’に向くように配置され、イオン性の強い結合で吸着する。さらにアニオン性重合性界面活性剤3’の疎水性基32’と重合性基33’が、アニオン性重合性界面活性剤3の疎水性基32と重合性基33との疎水性相互作用によって吸着し、アニオン性重合性界面活性剤3’のアニオン性基31’が、水系分散媒の存在する方向、すなわち母粒子1から離れる方向に向くよう配置される。
この状態に例えば重合開始剤を添加するなどして、隣接するアニオン性重合性界面活性剤3、3’の重合性基33、33’同士を重合させることによって、図5(d)に示すように、第1のカチオン層20上にアニオン層30が積層される。
【0118】
このような方法によれば、重合系内に、第1のカチオン層の表面のカチオン性基と、アニオン性重合性界面活性剤のアニオン性基とが、イオン的に結合し、重合反応によって層を形成することから、乳化重合前における母粒子の周囲に存在するアニオン性重合性界面活性剤の配置形態が重合後の粒子表面の分極状態に影響を与え、よって極めて高精度で制御することができる。
【0119】
アニオン層30は、より具体的には、以下の手順によって好適に形成される。
(1)まず、第1のカチオン層20により被覆された母粒子1が分散した第1の分散液に、アニオン性重合性界面活性剤を加える。加えたアニオン性重合性界面活性剤の一部(アニオン性重合性界面活性剤3)がそのアニオン性基を第1のカチオン層20のカチオン性基に吸着してイオン的に結合して固定化される。
第1の分散液に加えるアニオン性重合性界面活性剤の添加量は、第1のカチオン層20の形成に用いたカチオン性重合性界面活性剤と当モルとするのが好ましい。
【0120】
(2)次に、第1のカチオン層20の形成と同様に、重合開始剤を加え、乳化重合する。
重合開始剤としては、前述したものと同様のものを用いることができる。
以上のようにして、アニオン層30が形成され、表面に第1のカチオン層20とアニオン層30とが積層された母粒子1が分散した第2の分散液が得られる。
その後、得られた第2の分散液に、第1のカチオン層20の形成と同様の処理を施すことにより、第2のカチオン層40が形成される。
【0121】
すなわち、前述のようにして得られた第2の分散液中に、前述したカチオン性重合性界面活性剤を添加する。
このとき、図4(e)に示すように、カチオン性重合性界面活性剤4のカチオン性基41がアニオン層30のアニオン性基31’に向くように配置され、イオン性の強い結合で吸着する。さらに、カチオン性重合性界面活性剤4’の疎水性基42’と重合性基43’が、カチオン性重合性界面活性剤4の疎水性基42と重合性基43との疎水性相互作用によって吸着し、カチオン性重合性界面活性剤4’のカチオン性基41’が、水系分散媒の存在する方向、すなわち母粒子1から離れる方向に向くよう配置される。
【0122】
この状態に、前述した第1のカチオン層20の形成と同様に、重合開始剤を添加するなどして、隣接するカチオン性重合性界面活性剤4、4’の重合性基43、43’同士を重合させることによって、アニオン層30上に第2のカチオン層40が積層され、膜50が形成される。これにより、図1に示すように、母粒子1の表面に膜50が形成されたトナー粒子が得られる。
【0123】
第2のカチオン層40の形成は、具体的には、第2の分散液に対して、前述した第1のカチオン層20と同様の処理を施すことにより行うことができる。これにより、トナー粒子100が分散したトナー分散液6が得られる。
なお、前述した積層工程を繰り返し行ってもよい。これにより、トナー粒子の粒径を任意に調整することができる。その結果、好適な粒径のトナー粒子を得ることができる。また、得られるトナー粒子の粒径のばらつきを小さいものとすることができる。
【0124】
また、トナー粒子の定着性の向上や保存安定性の向上等の目的で、各層の形成工程において、カチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤の他に、コモノマーを添加してもよい。
また、各層の形成工程において、重合の際、必要に応じて、水系懸濁液中に、重合性界面活性剤(カチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤)と、疎水性モノマーを存在させてもよく、その場合は、各層が、重合性界面活性剤と、疎水性モノマーとから共重合されたものとなる。これにより、母粒子1を被覆する膜50の不本意な剥がれ等を効果的に防止することができる。
【0125】
疎水性モノマーとしては、その構造中に疎水性基と重合性基とを少なくとも有するもので、疎水性基が脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の群から選択されたものを例示できる。脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等を、脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、イソボルニル基等を、芳香族炭化水素基としてはベンジル基、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基であって、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、ビニレン基からなる群から選択されるのが好ましい。
【0126】
疎水性モノマーの具体例としては、スチレンおよびメチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、イソボルニルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、イソボルニルメタクリレート等の単官能メタクリル酸エステル類;アリルベンゼン、アリル−3−シクロヘキサンプロピオネート、1−アリルー3,4−ジメトキシベンゼン、アリルフェノキシアセテート、アリルフェニルアセテート、アリルシクロヘキサン、多価カルボン酸アリル等のアリル化合物;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸のエステル頬;N−置換マレイミド、環状オレフィンなどのラジカル重合性基を有するモノマーが挙げられる。
【0127】
疎水性モノマーは、上記の要求特性を満足させるものが適宜、選択され、その添加量は任意に決定される。
このような疎水性モノマーの添加量は、母粒子100重量部に対して5〜900重量部程度の範囲が好ましく、より好ましくは10〜500重量部の範囲であり、特に好ましくは15〜200重量部の範囲である。
【0128】
また、母粒子1を被覆する膜50は、架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を有することも好ましい。
架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を有することにより、膜50中に架橋構造が形成され、膜50の耐久性を向上させることができる。
架橋性モノマーとしては、ビニル基,アリル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,プロペニル基,ビニリデン基,ビニレン基から選ばれる1種以上の不飽和炭化水素基を2個以上有する化合物を有するもので、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロビレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシー1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラブロモピスフェノールAジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロビレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4一(メタクリロキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリグリセーロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等が挙げられる。
また、母粒子1を被覆する膜50は、さらに下記一般式(1)で表されるモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有することが好ましい。
【0129】
【化11】

【0130】
膜50中に一般式(1)で表されるモノマー由来の“嵩高い”基である前記R基によって、膜の分子のたわみやすさが減り、すなわち、分子の運動性が拘束されるため、膜の機械的強度や耐熱性が向上する。
上記一般式(1)において、Rが示す脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ベンジル基、フェニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンタン基、テトラヒドロフラン基、ナフチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0131】
前述したように、架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を有する膜や一般式(1)で表されるモノマーから誘導された繰り返し構造単位を有する膜は、機械的強度、耐熱性、耐溶剤性等の耐久性に優れるという利点がある。
また、上記一般式(1)で表されるモノマーの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0132】
【化12】

【0133】
【化13】

【0134】
各重合性界面活性剤とともに以下の親水性モノマーを用いることができる。係る親水性モノマーとしては、親水性基として水酸基、エチレンオキサイド基、アミド基、アミノ基を有するものが挙げられる。
前記の親水性モノマーとしては、OH基を有する2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等、エチレンオキサイド基を有するエチルジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等、アミド基を有するアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等、アミノ基を含むN−メチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルアミノエステル類;N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、等のアルキルアミノ基を有する不飽和アミド類等と、ビニルピリジン等のモノビニルピリジン類、ジメチルアミノエチルビニルエーテルなどのアルキルアミノ基を有するビニルエーテル類;ビニルイミダゾール等、N−ビニル−2−ピロリドン、などを挙げることができる。
【0135】
[水系分散媒除去工程(分散媒除去工程)]
次に、上記のようにして得られたトナー分散液6から水系分散媒62を除去することにより、トナー粒子を得る(水系分散媒除去工程)。
本実施形態では、トナー分散液6を噴霧することにより液滴を形成し、液滴から水系分散媒を除去して、トナー粒子を得る。
【0136】
トナー分散液6の噴霧は、いかなる方法で行ってもよいが、トナー分散液6の液滴を間欠的に吐出することにより行うのが好ましい。これにより、トナー粒子の不本意な凝集等を効果的に防止しつつ、水系分散媒の除去をより効率良く行うことができ、液体現像剤の生産性が向上する。また、分散液の液滴を間欠的に吐出して水系分散媒の除去を行うことにより、前述した水系懸濁液の調製において、溶媒の一部が残存している場合であっても、この残存している溶媒を水系分散媒とともに効率良く除去することができる。
【0137】
特に、本実施形態では、図6、図7に示すようなトナー粒子製造装置を用いて、水系分散媒の除去を行う。
図6は、本発明の液体現像剤の製造に用いられるトナー粒子製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図、図7は、図6に示すトナー粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。以下、図6中、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
【0138】
図6に示すように、トナー粒子製造装置M1は、上述したようなトナー分散液6を、液滴9として間欠的に吐出するヘッド部M2と、ヘッド部M2にトナー分散液6を供給する分散液供給部(水系分散液供給部)M4と、ヘッド部M2から吐出された液滴状(微粒子状)のトナー分散液6(液滴9)を搬送しつつ分散媒62を除去し、トナー粒子100とする分散媒除去部M3と、製造されたトナー粒子100を回収する回収部M5とを有している。
【0139】
分散液供給部M4は、ヘッド部M2にトナー分散液6を供給する機能を有するものであればよいが、本実施形態では、図示のように、トナー分散液6を攪拌する攪拌手段M41を有するものである。これにより、例えば、トナー粒子100が分散媒(水系分散媒)62中に分散しにくいものであっても、トナー粒子100が十分均一に分散した状態のトナー分散液6を、ヘッド部M2に供給することができる。
【0140】
ヘッド部M2は、トナー分散液6を微細な液滴(微粒子)9として、吐出する機能を有するものである。
ヘッド部M2は、分散液貯留部M21と、圧電素子M22と、吐出部M23とを有している。
分散液貯留部M21には、トナー分散液6が貯留されている。
分散液貯留部M21に貯留されたトナー分散液6は、圧電素子M22の圧力パルス(圧電パルス)により、ノズルを形成する吐出部M23から、液滴9として分散媒除去部M3に吐出される。
【0141】
吐出部M23(ノズルの吐出口)の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。
吐出部M23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、5〜500μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。吐出部M23の直径が前記下限値未満であると、目詰まりが発生し易くなり、吐出される液滴9の大きさのばらつきが大きくなる場合がある。一方、吐出部M23の直径が前記上限値を超えると、分散液貯留部M21の負圧と、ノズルの表面張力との力関係によっては、吐出されるトナー分散液6(液滴9)が気泡を抱き込んでしまう可能性がある。
【0142】
また、ヘッド部M2の吐出部M23付近(特に、吐出部M23の開口内面や、ヘッド部M2の吐出部M23が設けられている側の面(図中の下側の面))は、トナー分散液6に対し撥液性(撥水性)を有するのが好ましい。これにより、トナー分散液6が吐出部付近に付着するのを効果的に防止することができる。その結果、いわゆる、液切れの悪い状態になったり、トナー分散液6の吐出不良が発生するのを効果的に防止することができる。また、吐出部付近へのトナー分散液6の付着が効果的に防止されることにより、吐出される液滴の形状の安定性が向上し(各液滴間での形状、大きさのばらつきが小さくなり)、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのばらつきも小さくなる。
このような撥液性を有する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、シリコーン系材料等が挙げられる。
【0143】
図7に示すように、圧電素子M22は、下部電極(第1の電極)M221、圧電体M222および上部電極(第2の電極)M223が、この順で積層されて構成されている。換言すれば、圧電素子M22は、上部電極M223と下部電極M221との間に、圧電体M222が介挿された構成とされている。
この圧電素子M22は、振動源として機能するものであり、振動板M24は、圧電素子(振動源)M22の振動により振動し、分散液貯留部M21の内部圧力を瞬間的に高める機能を有するものである。
【0144】
ヘッド部M2は、圧電素子駆動回路(図示せず)から所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子M22の下部電極M221と上部電極M223との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体M222に変形が生じない。このため、振動板M24にも変形が生じず、分散液貯留部M21には容積変化が生じない。したがって、吐出部M23からトナー分散液6は吐出されない。
【0145】
一方、圧電素子駆動回路から所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子M22の下部電極M221と上部電極M223との間に所定の電圧が印加された状態では、圧電体M222に変形が生じる。これにより、振動板M24が大きくたわみ(図8中下方にたわみ)、分散液貯留部M21の容積の減少(変化)が生じる。このとき、分散液貯留部M21内の圧力が瞬間的に高まり、吐出部M23から粒状のトナー分散液6が吐出される。
【0146】
1回のトナー分散液6の吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極M221と上部電極M223との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子M22は、ほぼ元の形状に戻り、分散液貯留部M21の容積が増大する。なお、このとき、トナー分散液6には、分散液供給部M4から吐出部M23へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気が吐出部M23から分散液貯留部M21へ入り込むことが防止され、トナー分散液6の吐出量に見合った量のトナー分散液6が分散液供給部M4から分散液貯留部M21へ供給される。
上記のような電圧の印加を所定の周期で行うことにより、圧電素子M22が振動し、粒状のトナー分散液6が繰り返し吐出される。
【0147】
このように、トナー分散液6の吐出(噴射)を、圧電体M222の振動による圧力パルスで行うことにより、トナー分散液6を一滴ずつ間欠的に吐出することができ、また、吐出されるトナー分散液6の液滴9の形状が安定する。その結果、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができるとともに、製造されるトナー粒子を真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることが比較的容易にできる。
また、分散液の吐出に圧電体の振動を用いることにより、より確実に分散液を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される液滴9同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、異形状のトナー粒子100の形成をより効果的に防止することができる。
【0148】
ヘッド部M2から分散媒除去部M3に吐出されるトナー分散液6(液滴9)の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。トナー分散液6の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、トナー分散液6の初速度が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナー粒子の真球度が低下する傾向を示す。
【0149】
また、ヘッド部M2から吐出されるトナー分散液6の粘度は、特に限定されないが、例えば、0.5〜200[mPa・s]であるのが好ましく、1〜25[mPa・s]であるのがより好ましい。トナー分散液6の粘度が前記下限値未満であると、吐出されるトナー分散液6の大きさを十分に制御するのが困難となり、最終的に得られるトナー粒子のばらつきが大きくなる場合がある。一方、トナー分散液6の粘度が前記上限値を超えると、形成される粒子の径が大きくなり、トナー分散液6の吐出速度が遅くなるとともに、トナー分散液6の吐出に要するエネルギー量も大きくなる傾向を示す。また、トナー分散液6の粘度が特に大きい場合には、トナー分散液6を液滴として吐出できなくなる。
【0150】
また、ヘッド部M2から吐出されるトナー分散液6は、予め冷却されたものであってもよい。このようにトナー分散液6を冷却することにより、例えば、吐出部M23付近におけるトナー分散液6からの分散媒62の不本意な蒸発(揮発)を効果的に防止することができる。その結果、吐出部の開口面積が経時的に小さくなることによるトナー分散液6の吐出量変化等を効果的に防止することができ、各粒子間での大きさ、形状のばらつきが特に小さいトナーを得ることができる。
【0151】
また、トナー分散液6の一滴分の吐出量は、トナー分散液6中に占めるトナー粒子100の含有率等により若干異なるが、0.05〜500plであるのが好ましく、0.5〜50plであるのがより好ましい。トナー分散液6の一滴分の吐出量をこのような範囲の値にすることにより、形成されるトナー粒子100を適度な粒径のものにすることができる。
【0152】
本実施形態では、吐出部M23(ノズル)から吐出された液滴9に2個以上のトナー粒子100が含まれるのを防止するように、トナー分散液6中におけるトナー粒子100の含有量および粒径等が設定されている。これにより、形成された液滴9は、図7に示すように、分散媒62中に1個のトナー粒子100を含むものか、トナー粒子100を含まず実質的に分散媒62のみで構成されたものとなる。
そして、分散媒62中に1個のトナー粒子100を含む液滴9から分散媒62が除去されることにより、トナー粒子100が得られる。
一方、トナー粒子100を含まず実質的に分散媒62のみで構成された液滴は、分散媒62が除去されて、消失する。
【0153】
圧電素子M22の振動数(圧電パルスの周波数)は、特に限定されないが、1kHz〜500MHzであるのが好ましく、5kHz〜200MHzであるのがより好ましい。
図示の構成のトナー粒子製造装置M1は、ヘッド部M2を複数個有している。そして、これらのヘッド部M2から、それぞれ、粒状のトナー分散液6(液滴9)が分散媒除去部M3に吐出される。
【0154】
各ヘッド部M2は、ほぼ同時にトナー分散液6(液滴9)を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、トナー分散液6(液滴9)の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部M2から吐出された液滴9からトナー粒子100が形成される前に、液滴9同士が衝突し、不本意な凝集が発生するのをより効果的に防止することができる。
【0155】
また、図6に示すように、トナー粒子製造装置M1は、ガス流供給手段M10を有しており、このガス流供給手段M10から供給されたガスが、ダクトM101を介して、ヘッド部M2−ヘッド部M2間に設けられた各ガス噴射口M7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部M23から間欠的に吐出された液滴9の間隔を保ち、液滴9同士が衝突するのを効果的に防止しつつ、トナー粒子100を形成することができる。その結果、形成されるトナー粒子100の大きさ、形状のばらつきをより小さくすることができる。
【0156】
また、ガス流供給手段M10から供給されたガスをガス噴射口M7から噴射することにより、分散媒除去部M3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、分散媒除去部M3内で形成されたトナー粒子100をより効率良く搬送することができる。これにより、トナー粒子100の回収効率が向上し、液体現像剤の生産性が向上する。
また、ガス噴射口M7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部M2から吐出される液滴9の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各液滴間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
【0157】
また、ガス流供給手段M10には、熱交換器M11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができ、分散媒除去部M3に吐出された粒状のトナー分散液6から分散媒62を効率良く除去することができる。
また、このようなガス流供給手段M10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部M23から吐出されたトナー分散液6からの分散媒62の除去速度等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0158】
ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度は、トナー分散液6中に含まれるトナー粒子100、分散媒62の組成等により異なるが、通常、0〜70℃であるのが好ましく、15〜60℃であるのがより好ましい。ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度がこのような範囲の値であると、得られるトナー粒子100の形状の均一性、安定性を十分に高いものとしつつ、液滴9中に含まれる分散媒62を効率良く除去することができる。
【0159】
また、ガス噴射口M7から噴射されるガスの湿度は、例えば、50%RH以下であるのが好ましく、30%RH以下であるのがより好ましい。ガス噴射口M7から噴射されるガスの湿度が50%RH以下であると、後述する分散媒除去部M3において、トナー分散液6に含まれる分散媒62を効率良く除去することが可能となり、トナー粒子100の生産性がさらに向上する。
【0160】
分散媒除去部M3は、筒状のハウジングM31で構成されている。分散媒除去部M3内の温度を所定の範囲に保つ目的で、例えば、ハウジングM31の内側または外側に熱源、冷却源を設置したり、ハウジングM31を、熱媒体または冷却媒体の流路が形成されたジャケットとしてもよい。
ハウジングM31内の温度は、トナー粒子100を構成する樹脂材料のガラス転移点温度以下であるのが好ましい。言い換えすれば、トナー粒子製造工程は、トナー粒子100を構成する樹脂材料のガラス転移点以下の温度のもとで行われるのが好ましい。これにより、トナー分散液6の液滴9を形成するに際し、トナー粒子100同士がくっつきにくくなるので、トナー粒子100同士の接合を防止することができる。
【0161】
また、図示の構成では、ハウジングM31内の圧力は、圧力調整手段M12により調整される構成となっている。このように、ハウジングM31内の圧力を調整することにより、より効率良くトナー粒子100を形成することができ、結果として、液体現像剤の生産性が向上する。なお、図示の構成では、圧力調整手段M12は、接続管M121でハウジングM31に接続されている。また、接続管M121のハウジングM31と接続する端部付近には、その内径が拡大した拡径部M122が形成されており、さらに、トナー粒子100等の吸い込みを防止するためのフィルターM123が設けられている。
【0162】
ハウジングM31内の圧力は、特に限定されないが、150kPa以下であるのが好ましく、100〜120kPaであるのがより好ましく、100〜110kPaであるのがさらに好ましい。ハウジングM31内の圧力が前記範囲内の値であると、例えば、液滴9からの急激な分散媒62の除去(沸騰現象)等を効果的に防止することができ、異形状のトナー粒子100の発生等を十分に防止しつつ、より効率良くトナー粒子100を製造することができる。なお、ハウジングM31内の圧力は、各部位でほぼ一定であってもよいし、各部位で異なるものであってもよい。
【0163】
また、ハウジングM31には、電圧を印加するための電圧印加手段M8が接続されている。電圧印加手段M8で、ハウジングM31の内面側に、トナー粒子100(液滴9)と同じ極性、すなわち、正の電圧を印加することにより、ハウジングM31の内面にトナー粒子100が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、異形状のトナー粒子100の発生をより効果的に防止することができるとともに、トナー粒子100の回収効率も向上する。
また、ハウジングM31は、回収部M5付近に、図6中の下方向に向けて、その内径が小さくなる縮径部M311を有している。このような縮径部M311が形成されることにより、トナー粒子100を効率良く回収することができる。
【0164】
そして、上記のようにして形成されたトナー粒子100は、回収部M5に回収される。
得られたトナー粒子100は、そのまま、後述する分散工程に供してもよいし、熱処理等の各種処理を施してもよい。これにより、トナー粒子の機械的強度(形状の安定性)をさらに優れたものとしたり、トナー粒子中の含水量を低下させることができる。また、得られたトナー粒子100に対してエアレーション等の処理を施したり、トナー粒子100を減圧雰囲気下に放置すること等によっても、上記と同様に、含水量を低下させることができる。
また、上記のようなトナー粒子100に対しては、必要に応じて、分級処理、外添処理等の各種処理を施してもよい。
【0165】
[分散工程]
次に、上記のようにして得られたトナー粒子100を絶縁性液体中に分散させる(分散工程)。これにより、トナー粒子100が、絶縁性液体(担持液)中に分散した液体現像剤が得られる。
絶縁性液体中へのトナー粒子100の分散は、いかなる方法で行うものであってもよいが、攪拌した状態の絶縁性液体中にトナー粒子100を加えることにより行うのが好ましい。これにより、液体現像剤の調整時におけるトナー粒子100の不本意な凝集を防止しつつ、得られた液体現像剤においては、トナー粒子の良好な分散状態を長期間にわたって安定的に保持することができる。
【0166】
次に、上述したような本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
図8は、本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。画像形成装置P1には、円筒状の感光体P2のドラムを有し、エピクロロヒドリンゴム等で構成された帯電器P3によりその表面が均一に帯電された後、レーザーダイオード等によって記録すべき情報に応じた露光P4が行なわれて静電潜像が形成される。
【0167】
現像器P10は、現像剤容器P11中にその一部が浸漬された塗布ローラP12、現像ローラP13を有している。塗布ローラP12は、例えば、ステンレス等の金属製のグラビアローラであり、現像ローラP13と対向して回転する。また、塗布ローラP12の表面には、液体現像剤塗布層P14が形成され、メータリングブレードP15によってその厚さが一定に保持される。
【0168】
そして、塗布ローラP12から現像ローラP13に対して液体現像剤が転写される。現像ローラP13は、ステンレス等の金属製のローラ芯体P16上に低硬度シリコーンゴム層を有し、その表面には導電性のPFA(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体)製の樹脂層が形成されており、感光体P2と等速で回転して液体現像剤を潜像部に転写する。感光体P2へ転写後に現像ローラP13に残った液体現像剤は、現像ローラクリーニングブレードP17によって除去されて現像剤容器P11内へ回収される。
【0169】
また、感光体から中間転写ローラへのトナー画像の転写の後には、感光体は、除電光P21によって除電されるとともに、感光体上に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP22によって除去される。
同様に、中間転写ローラP18から情報記録媒体P20へ転写後に中間転写ローラP18に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP23によって除去される。
感光体P2上に形成されたトナー像は、中間転写ローラP18に対して転写された後に、二次転写ローラP19に転写電流を通電して、両者の間を通過する紙等の情報記録媒体P20に画像が転写され、紙等の情報記録媒体P20上でのトナー画像は図10に示す定着装置使用して定着が行われる。
【0170】
図9は、本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。非接触方式にあっては、現像ローラP13には0.5mm厚のリン青銅板で構成された帯電ブレードP24が設けられる。帯電ブレードP24は液体現像剤層に接触して摩擦帯電させる機能を有すると共に、塗布ローラP12がグラビアロールであるために現像ローラP13上にはグラビアロール表面の凹凸に応じた現像剤層が形成されるので、その凹凸を均一に均す機能を果たすものであり、配置方向としては現像ローラの回転方向に対してカウンタ方向でもトレイル方向のいずれでもよく、また、ブレート形状ではなくローラ形状でもよい。
また、現像ローラP13と感光体P2との間は、200μm〜800μmの間隔が設けられると共に、現像ローラP13と感光体P2との間には直流電圧200〜800Vに重畳される500〜3000Vpp、周波数50〜3000Hzの交流電圧が印加されるのが好ましい。それ以外は、図9を参照しつつ説明した画像形成装置と同様である。
【0171】
なお、図8、図9共に一色の液体現像剤による画像形成について説明したが、複数色のカラートナーを用いて画像形成する場合には、複数色の現像器を用いて各色の画像を形成してカラー画像を形成することができる。
図10は定着装置の断面図であり、F1は熱定着ロール、F1aは柱状ハロゲンランプ、F1bはロール基材、F1cは弾性体、F2は加圧ロール、F2aは回転軸、F2bはロール基材、F2cは弾性体、F3は耐熱ベルト、F4はベルト張架部材、F4aは突壁、F5はシート材、F5aは未定着トナー像、F6はクリーニング部材、F7はフレーム、F9はスプリング、Lは押圧部接線である。
【0172】
図に示すように、定着装置F40は、熱定着ロール(以下、加熱ロールともいう)F1、加圧ロールF2、耐熱ベルトF3、ベルト張架部材F4、およびクリーニング部材F6を備えている。
熱定着ロールF1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体F1cを被覆して形成され、ロール基材F1bの内部に、加熱源として1,050W、2本の柱状ハロゲンランプF1aが内蔵されており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。また、加圧ロールF2は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F2bとして、その外周に厚み0. 2mm程度の弾性体F2cを被覆して形成し、熱定着ロールF1と加圧ロールF2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成し、熱定着ロールF1に対向して配置し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0173】
このように、熱定着ロールF1および加圧ロールF2の外径が25mm程度の小径に構成されているため、定着後のシート材F5が熱定着ロールF1または耐熱ベルトF3に巻き付くことがなく、シート材を強制的に剥がすための手段が不要となっている。また、熱定着ロールF1の弾性体F1cの表層には約30μmのPFA層を設けることで、その分剛性が向上する。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ロールF1の周速に対して耐熱ベルトF3またはシート材F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0174】
また、熱定着ロールF1の内部に、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接する部位との異なる条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材との異なる条件下での温度コントロールが容易に行われるようになっている。
【0175】
耐熱ベルトF3は、加圧ロールF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。この耐熱ベルトF3は0.03mm以上の厚みを有し、その表面(シート材F5が接触する側の面)をPFAで形成し、また、裏面(加圧ロールF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0176】
ベルト張架部材F4は、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との定着ニップ部よりもシート材F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロールF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材F4は、シート材F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架するように構成されている。シート材F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架する構成にすることで、シート材F5の進入がスムーズに行われるシート材F5の導入口部が形成でき、安定したシート材F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0177】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ロールF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1と加圧ロールF2との押圧部接線Lより熱定着ロールF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ロールF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ロールF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接して位置決めされる。
【0178】
耐熱ベルトF3を加圧ロールF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ロールF2で安定して駆動するには、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0179】
そこで、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロールF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ロールF2で安定して駆動することができるようになる。
【0180】
更に、クリーニング部材F6が加圧ロールF2とベルト張架部材F4との間に配置されており、このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、この凹部F4fは、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0181】
ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ロールF1に加圧ロールF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。そして、シート材F5はニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ロールF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、シート材F5上に形成された未定着トナー像F5aが定着され、その後、熱定着ロールF1への加圧ロールF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0182】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、トナー粒子製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
【0183】
また、本発明の液体現像剤の製造方法は、前述したような方法に限定されない。例えば、粉砕法によって製造された樹脂微粒子表面に膜を形成し、これを絶縁性液体中に分散することにより製造してもよい。このように粉砕法を用いた場合、樹脂微粒子自体の粒径のばらつきが大きいものであっても、本発明の適用することにより、最終的に得られるトナーの粒径のばらつきを小さいものとすることができる。
【0184】
また、前述した実施形態では、水系分散媒除去工程で得られたトナー粒子を一旦回収した後、分散工程に供するものとして説明したが、トナー粒子を粉体として回収することなく、直接、分散工程に供してもよい。例えば、図示のようなトナー粒子製造装置は、絶縁性液体を貯留し、かつ、製造されたトナー粒子が供給される分散部を有するものであってもよい。これにより、液体現像剤をより効率良く製造することができるとともに、トナー粒子間での不本意な凝集等をより効果的に防止することができる。
【0185】
また、図11に示すように、ヘッド部M2に、音響レンズ(凹面レンズ)M25が設置されていてもよい。このような音響レンズM25が設置されることにより、例えば、圧電素子M22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)を、吐出部M23付近の圧力パルス収束部M26で収束させることができる。その結果、圧電素子M22が発生した振動エネルギーを、水系懸濁液を吐出させるためのエネルギーとして、効率よく利用することができる。したがって、分散液貯留部M21に貯留されたトナー分散液6が比較的高粘度のものであっても、確実に吐出部M23から吐出させることができる。また、分散液貯留部M21に貯留されたトナー分散液6が凝集力(表面張力)の比較的大きいものであっても、微細な液滴として吐出することが可能となるため、容易かつ確実に、トナー粒子100の粒径を比較的小さい値にコントロールすることができる。
このように、図示のような構成とすることにより、トナー分散液6として、より粘度の高い材料や、凝集力の大きい材料を用いた場合であっても、トナー粒子を所望の形状、大きさにコントロールすることができるので、材料選択の幅が特に広くなり、所望の特性を有するトナーをさらに容易に得ることができる。
【0186】
また、図示のような構成とした場合、収束した圧力パルスによりトナー分散液6を吐出させるため、吐出部M23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、吐出するトナー分散液6の大きさを比較的小さいものにすることができる。すなわち、トナー粒子の粒径を比較的小さくしたい場合であっても、吐出部M23の面積を大きくすることができる。これにより、トナー分散液6が比較的高粘度のものであっても、吐出部M23における目詰まりの発生等をより効果的に防止することができる。
【0187】
音響レンズとしては、凹面レンズに限定されず、例えば、フレネルレンズ、電子走査レンズ等を用いてもよい。
さらに、図12〜図14に示すように、音響レンズM25と吐出部M23との間に、吐出部M23に向けて、収斂する形状を有する絞り部材M13等を配置してもよい。これにより、圧電素子M22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)の収束を補助することができ、圧電素子M22が発生した圧力パルスをさらに効率よく利用することができる。
【0188】
また、前述した実施形態では圧電パルスによりヘッド部から分散液を間欠的に吐出するものとして説明したが、分散液の吐出方法(噴射方法)としては、他の方法を用いることもできる。例えば、分散液を吐出(噴射)する方法としては、スプレードライ法や、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法等の方法のほか、「分散液を、ガス流で平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄層流とし、当該薄層流を前記平滑面から離して微小な液滴として噴射するようなノズルを用いて、分散液を液滴状に噴射する方法(特願2002−321889号明細書に記載されたような方法)」等を用いてもよい。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、液体(分散液)を噴射(噴霧)させることにより、液滴を得る方法である。また、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法を適用した方法としては、特願2002−169348号明細書に記載された方法等が挙げられる。すなわち、分散液を吐出(噴射)する方法として、「気体の体積変化によりヘッド部から分散液を間欠的に吐出する方法」を適用することができる。
【0189】
また、分散媒の除去は、トナー分散液の吐出により行うものでなくてもよい。例えば、トナー分散液をろ過することにより、トナー粒子を濾別し、乾燥してもよい。
また、前述した実施形態では、混練物の粉砕物を用いて水系乳化液の調製を行うものとして説明したが、混練物の粉砕工程等は省略してもよい。
また、水系乳化液、水系懸濁液の調製方法は、前述したような方法に限定されない。例えば、固体状態の分散質が分散した分散液を加熱することにより、分散質を一旦液状として水系乳化液を得、当該水系乳化液を冷却することにより水系懸濁液を得てもよい。
また、前述した実施形態では、水系懸濁液中において、母粒子の表面に膜を形成するものとして説明したが、母粒子を一旦乾燥・単離した後に、膜を形成してもよい。
【実施例】
【0190】
[1]トナーの製造
(実施例1)
[母粒子の形成]
まず、樹脂材料としての、側鎖に−SO基(スルホン酸Na基)を有するポリエステル樹脂(軟化温度:120.5℃、酸価:28.8):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。ポリエステル樹脂は、当該ポリエステル樹脂100g中に、−SO基を0.05mol有するものであった。
これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0191】
次に、この原料(混合物)を、図3に示すような2軸混練押出機を用いて、混練した。
2軸混練押出機のプロセス部の全長は160cmとした。
また、プロセス部における原料の温度が125〜135℃となるように設定した。
また、スクリューの回転速度は120rpmとし、原料の投入速度は20kg/時間とした。
【0192】
このような条件から求められる、原料がプロセス部を通過するのに要する時間は約4分間である。
なお、上記のような混練は、脱気口を介してプロセス部に接続された真空ポンプを稼動させることにより、プロセス部内を脱気しつつ行った。
プロセス部で混練された原料(混練物)は、ヘッド部を介して2軸混練押出機の外部に押し出した。ヘッド部内における混練物の温度は、130℃となるように調節した。
【0193】
このようにして2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を、図3中に示すような冷却機を用いて、冷却した。冷却工程直後の混練物の温度は、約40℃であった。
混練物の冷却速度は、−9℃/秒であった。また、混練工程の終了時から冷却工程が終了するのに要した時間は、10秒であった。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.5mmの粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
【0194】
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、このよう溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
一方、イオン交換水:700重量部からなる水系液体を用意した。
【0195】
前記水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が3μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
その後、温度、100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(母粒子)濃度は25.0wt%であった。また、懸濁液中に分散している母粒子の体積平均粒径は0.45μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0196】
[第1のカチオン層の形成工程]
次に、得られた水性懸濁液:400重量部に、カチオン性重合性界面活性剤としてメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライドを1.25重量部添加して混合した後、超音波を15分間照射した。次いで、イソボルニルメタクリレート:12重量部とドデシルメタクリレート:8重量部を混合して加え攪拌混合し、さらにメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド:1.5重量部を添加して混合して再び超音波を30分間照射した。これを、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管および超音波発生器を備えた反応容器に投入した。反応容器の内温を80℃に昇温した後、イオン交換水20重量部に重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.6重量部を溶解した2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩水溶液を滴下し、窒素を導入しながら、80℃で6時間重合した。重合終了後、クエン酸二ナトリウムでpH6前後に調整し、第1のカチオン層で被覆された母粒子が分散した第1の分散液を得た。
【0197】
[積層工程]
次に、得られた第1の分散液:60重量部に、アニオン性重合性界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社社製):6重量部を添加して混合した後、超音波を15分間照射した。次いで、アクアロンKH−10:3重量部とイオン交換水:20重量部とを添加・混合し、再び超音波を30分間照射した。これを、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管および超音波発生器を備えた反応容器に投入した。反応容器の内温を80℃に昇温した後、イオン交換水10重量部に重合開始剤として過硫酸カリウム0.03重量部を溶解した過硫酸カリウム水溶液を滴下し、窒素を導入しながら、80℃で6時間重合した。重合終了後、pH8前後に調整し、第1のカチオン層とアニオン層とで被覆された母粒子が分散した第2の分散液を得た。
【0198】
次に、得られた第2の分散液:400重量部に、カチオン性重合性界面活性剤としてメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライドを1.75重量部添加して混合した後、超音波を15分間照射した。次いで、イソボルニルメタクリレート:18重量部とドデシルメタクリレート:12重量部を混合して加え攪拌混合し、さらにメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド:2.25重量部を添加して混合して再び超音波を30分間照射した。これを、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管および超音波発生器を備えた反応容器に投入した。反応容器の内温を80℃に昇温した後、イオン交換水20重量部に重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.6重量部を溶解した2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩水溶液を滴下し、窒素を導入しながら、80℃で6時間重合した。重合終了後、クエン酸二ナトリウムでpH6前後に調整し、トナー粒子が分散したトナー分散液を得た。
得られたトナー分散液中におけるトナー粒子の体積平均粒子径を測定したところ、1.03μmであった。なお、トナー粒子の体積平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0199】
[分散媒除去工程]
上記のようにして得られたトナー分散液を、図6、図7に示す構成のトナー粒子製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内のトナー分散液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部に供給し、吐出部から分散媒除去部に吐出(噴射)させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部としては、吐出部付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。なお、分散液供給部内における分散液の温度は、25℃になるように調節した。
【0200】
分散液の吐出は、ヘッド部内における分散液温度を25℃、圧電体の振動数を10kHz、吐出部から吐出される分散液の初速度を3m/秒、ヘッド部から吐出される水系懸濁液の一滴分の吐出量を4pl(粒径:20.8μm)に調整した状態で行った。また、分散液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、分散液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
また、分散液の吐出時には、ガス噴射口から温度:25℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、ハウジング内の温度(雰囲気温度)は、45℃となるように設定した。また、ハウジング内の圧力は、約1.5kPaであった。分散媒除去部の長さ(搬送方向の長さ)は1.0mであった。
【0201】
また、分散媒除去部のハウジングには、その内表面側の電位が+200Vとなるように電圧を印加し、内壁に分散液(乾燥微粒子)が付着するのを防止するようにした。
分散媒除去部内において、吐出した分散液から分散媒が除去され、多数の乾燥微粒子(トナー粒子)が形成された。
分散媒除去部で形成された乾燥微粒子をサイクロンにて回収した。回収された乾燥微粒子の含水量は0.36wt%であった。
【0202】
[分散工程]
次に、回収された乾燥微粒子:15重量部と、分散剤(LUBRIZOL社製、商品名「ソルスパース1394」):1.5重量部と、帯電制御剤としてのステアリン酸アルミニウム:0.15重量部とを、絶縁性液体:80重量部中に分散させることにより液体現像剤を得た。絶縁性液体としては、アイソパーH(エクソンモービル社製)を用いた。この絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は1.5×1015Ωcm、絶縁性液体の誘電率は2.0であった。
【0203】
(実施例2)
樹脂材料として、側鎖に−SO基(スルホン酸アニオン基)を有するスチレン−アクリル酸エステル共重合体(軟化温度130.5℃、酸価:10.2)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例3)
樹脂材料として、側鎖に−COO基(カルボン酸アニオン基)を有するポリエステル樹脂(軟化温度:120.5℃、酸価:8.0)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0204】
(実施例4〜6)
酸価の値が表1に示すようなポリエステル樹脂を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例7)
第1のカチオン層の形成工程の後、積層工程を2回繰り返した以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0205】
(比較例1)
まず、結着樹脂としてのポリエステル樹脂(スルホン酸アニオン基を有さないポリエステル樹脂:軟化温度:120.5℃):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。
これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0206】
次に、この原料(混合物)を、図3に示すような2軸混練押出機を用いて、混練した。
2軸混練押出機のプロセス部の全長は160cmとした。
また、プロセス部における原料の温度が105〜115℃となるように設定した。
また、スクリューの回転速度は120rpmとし、原料の投入速度は20kg/時間とした。
【0207】
このような条件から求められる、原料がプロセス部を通過するのに要する時間は約4分間である。
なお、上記のような混練は、脱気口を介してプロセス部に接続された真空ポンプを稼動させることにより、プロセス部内を脱気しつつ行った。
プロセス部で混練された原料(混練物)は、ヘッド部を介して2軸混練押出機の外部に押し出した。ヘッド部内における混練物の温度は、130℃となるように調節した。
【0208】
このようにして2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を、図3中に示すような冷却機を用いて、冷却した。冷却工程直後の混練物の温度は、約45℃であった。
混練物の冷却速度は、9℃/秒であった。また、混練工程の終了時から冷却工程が終了するのに要した時間は、10秒であった。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.5mmの粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
【0209】
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物のポリエステル樹脂が溶解した溶液を得た。なお、このよう溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
一方、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1重量部と、イオン交換水:700重量部とを均一に混合した水系液体を用意した。
前記水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整した。
【0210】
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が3μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
その後、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却した後、所定量の水を加えて濃度調整することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は28.8wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(母粒子)の平均粒径は1.2μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0211】
上記のようにして得られた懸濁液を、図7、図8に示す構成のトナー粒子製造装置の分散液供給部内に投入した。分散液供給部内の水系懸濁液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部に供給し、吐出部から分散媒除去部に吐出(噴射)させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部としては、吐出部付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。なお、分散液供給部内における水系懸濁液の温度は、25℃になるように調節した。
【0212】
水系懸濁液の吐出は、ヘッド部内における分散液温度を25℃、圧電体の振動数を10kHz、吐出部から吐出される分散液の初速度を3m/秒、ヘッド部から吐出される水系懸濁液の一滴分の吐出量を4pl(粒径:20.8μm)に調整した状態で行った。また、水系懸濁液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、水系懸濁液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
また、水系懸濁液の吐出時には、ガス噴射口から温度:25℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、ハウジング内の温度(雰囲気温度)は、45℃となるように設定した。また、ハウジング内の圧力は、約1.5kPaであった。分散媒除去部の長さ(搬送方向の長さ)は1.0mであった。
【0213】
また、分散媒除去部のハウジングには、その内表面側の電位が+200Vとなるように電圧を印加し、内壁に水系懸濁液(乾燥微粒子)が付着するのを防止するようにした。
分散媒除去部内において、吐出した水系懸濁液から分散媒が除去され、各分散質に対応する形状、大きさの多数の乾燥微粒子(トナー粒子)が形成された。
分散媒除去部で形成された乾燥微粒子をサイクロンにて回収し、乾燥微粒子を得た。
【0214】
次に、回収された乾燥微粒子:20重量部と、ポリアミン系分散剤:2重量部と、帯電制御剤としてのステアリン酸アルミニウム:1.0重量部とを、絶縁性液体:80重量部中に分散させることにより液体現像剤を得た。絶縁性液体としては、アイソパーH(エクソンモービル社製)を用いた。この絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は1.5×1015Ωcm、絶縁性液体の誘電率は2.0であった。
【0215】
(比較例2)
樹脂材料として、アニオン基を有さないスチレン−アクリル酸エステル共重合体(軟化温度130.5℃)を用いた以外は、前記比較例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例3)
正帯電性の樹脂材料として、アミノ基を有するポリエステル樹脂(軟化温度122.8℃)を用いた母粒子に、膜を形成した以外は、前記比較例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0216】
(比較例4)
[母粒子の形成]
まず、樹脂材料としての、側鎖に−SO基(スルホン酸Na基)を有するポリエステル樹脂(軟化温度:120.5℃、酸価:28.8):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。ポリエステル樹脂は、当該ポリエステル樹脂100g中に、−SO基を0.1mol有するものであった。
これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0217】
次に、この原料(混合物)を、図3に示すような2軸混練押出機を用いて、混練した。
2軸混練押出機のプロセス部の全長は160cmとした。
また、プロセス部における原料の温度が125〜135℃となるように設定した。
また、スクリューの回転速度は120rpmとし、原料の投入速度は20kg/時間とした。
【0218】
このような条件から求められる、原料がプロセス部を通過するのに要する時間は約4分間である。
なお、上記のような混練は、脱気口を介してプロセス部に接続された真空ポンプを稼動させることにより、プロセス部内を脱気しつつ行った。
プロセス部で混練された原料(混練物)は、ヘッド部を介して2軸混練押出機の外部に押し出した。ヘッド部内における混練物の温度は、130℃となるように調節した。
【0219】
このようにして2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を、図3中に示すような冷却機を用いて、冷却した。冷却工程直後の混練物の温度は、約40℃であった。
混練物の冷却速度は、−9℃/秒であった。また、混練工程の終了時から冷却工程が終了するのに要した時間は、10秒であった。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.5mmの粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
【0220】
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、このよう溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
一方、イオン交換水:700重量部からなる水系液体を用意した。
前記水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整した。
【0221】
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が3μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
その後、温度、100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(母粒子)濃度は25.0wt%であった。また、懸濁液中に分散している母粒子の体積平均粒径は0.45μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0222】
[トナー粒子の形成工程]
次に、得られた水性懸濁液:400重量部に、カチオン性重合性界面活性剤としてメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライドを1.25重量部添加して混合した後、超音波を15分間照射した。次いで、イソボルニルメタクリレート:12重量部とドデシルメタクリレート:8重量部を混合して加え攪拌混合し、さらにメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド:1.5重量部を添加して混合して再び超音波を30分間照射した。これを、攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度調整器、窒素導入管および超音波発生器を備えた反応容器に投入した。反応容器の内温を80℃に昇温した後、イオン交換水20重量部に重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.6重量部を溶解した2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩水溶液を滴下し、窒素を導入しながら、80℃で6時間重合した。重合終了後、クエン酸二ナトリウムでpH6前後に調整し、トナー粒子(カチオン層で被覆された母粒子)が分散した分散液を得た。分散液中のトナー粒子の体積平均粒径は、0.60μmであった。
得られた分散液を、上記実施例1と同様にして、分散媒の除去、絶縁性液体への分散を行い、液体現像剤を製造した。
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の製造条件等を表1に示した。なお、表中、膜を構成するカチオン層をCA、アニオン層をANと示した。
【0223】
【表1】

【0224】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、帯電均一性、かぶり、定着強度の評価を行った。
[2.1]帯電均一性
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤中に平行平板ITO膜蒸着のガラス電極を浸し、電極間距離2.0mm、印加電圧200V、電圧印加時間10秒の条件で電気泳動による両電極面への単位面積当たりのトナー付着量m1[g/m]、m2[g/m]を、室温条件(25℃湿度45%)および高温高湿条件(30℃湿度85%)においてそれぞれ測定した。均一性は(m1/(m1+m2))×100として評価した。この値が大きいほど帯電性は均一であることを示す。
【0225】
[2.2]かぶり評価
富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製普通紙(商品名J)に、住友スリーエム(株)製メンディングテープを、貼り付ける。このテープの色彩をミノルタ(株)製色彩色差計CR−221で測定し、この値を基準値とした。
図8に示すような画像形成装置を用い、評価する液体現像剤を現像機にいれ、全面白(べた白)を印字した。印字中にプリンタの動作を停止させ、感光体を取り出し、感光体と中間転写ローラの接する点(転写ニップ)と現像ローラと感光体の近接する点(現像ニップ)の領域に、メンディングテープを貼り付け、かぶりトナーを付着させ、これをJ紙に貼り付けた。このテープと基準値との色差を測定した。なお、色差が小さいほど、かぶりが少ないことを意味する。
【0226】
[2.3]定着強度
図8に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成した。その後、記録紙上に形成された画像について、オーブンによる熱定着を行った。この熱定着は、120℃×30分間という条件で行った。
【0227】
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の3段階の基準に従い評価した。
○:画像濃度残存率が90%以上。
△:画像濃度残存率が70%以上90%未満。
×:画像濃度残存率が70%未満。
【0228】
[2.4]耐久性
図8および図10に示すような画像形成装置を用いて、1000枚の連続印字テストを行ない、スタート時点の画像濃度Xsおよび1000枚目の画像濃度XeをX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、Xe/Xsの値を以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:0.95以上(画像濃度の変化がほとんど無く、耐久性が優れている)
○:0.85以上0.95未満(画像濃度が多少変化するが許容内である)
△:0.75以上0.85未満(画像濃度が変化していて、耐久性が劣る)
×:0.75よりも小さい(画像濃度の低下が著しく、耐久性が非常に劣っている)
これらの結果を表2に示した。
【0229】
【表2】

【0230】
表2から明らかなように、本発明(実施例1〜7)の液体現像剤は、いずれも、帯電均一性、かぶり、定着強度、耐久性に優れたものであった。また、トナー粒子の粒径のばらつきも小さいものであった。
これに対して、比較例の液体現像剤は、いずれも、帯電均一性、かぶり、定着強度、耐久性に劣っていた。また、トナー粒子の粒径もばらついたものであった。
また、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【0231】
また、トナー粒子製造装置のヘッド部付近の構造を、図7に示すような構成のものから、図11〜図14に示すような構成のものに変更して、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。また、図11〜図14に示すようなヘッド部を備えたトナー粒子製造装置では、吐出部の径を小さくし、分散液の濃度を比較的高くした場合であっても、好適に吐出することができ、上記と同様に結果が得られた。また、高濃度の分散液を用いたことから、乾燥にかかる時間を短縮することができ、生産性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子の一例を示す図である。
【図2】本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子の他の一例を示す図である。
【図3】本発明の液体現像剤の製造方法に用いる混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
【図4】母粒子表面に膜を形成する工程の一例を示す図である。
【図5】母粒子表面に膜を形成する工程の一例を示す図である。
【図6】本発明の液体現像剤の製造に用いられるトナー粒子製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図7】図6に示すトナー粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図8】本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図9】本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図10】本発明の液体現像剤が適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【図11】トナー粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図12】トナー粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図13】トナー粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図14】トナー粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0233】
K1…混練機 K2…プロセス部 K21…バレル K22、K23…スクリュー K24…固定部材 K25…脱気口 K3…ヘッド部 K31…内部空間 K32…押出口 K33…横断面積漸減部 K4…フィーダー K5…原料 K6…冷却機 K61、K62、K63、K64…ロール K611、K621、K631、K641…回転軸 K65、K66…ベルト K67…排出部 K7…混練物 1…母粒子 11…アニオン性基 2、2’…カチオン性重合性界面活性剤 20…第1のカチオン層 21、21’…カチオン性基 22、22’…疎水性基 23、23’…重合性基 3、3’…アニオン性重合性界面活性剤 30…アニオン層 31、31’…アニオン性基 32、32’…疎水性基 33、33’…重合性基 4、4’…カチオン性重合性界面活性剤 40…第2のカチオン層 41、41’…カチオン性基 42、42’…疎水性基 43、43’…重合性基 50…膜 100…トナー粒子 M1…トナー粒子製造装置 M2…ヘッド部 M21…分散液貯留部 M22…圧電素子 M221…下部電極 M222…圧電体 M223…上部電極 M23…吐出部 M24…振動板 M25…音響レンズ M26…圧力パルス収束部 M3…分散媒除去部 M31…ハウジング M311…縮径部 M4…分散液供給部(水系分散液供給部) M41…攪拌手段 M5…回収部 M7…ガス噴射口 M8…電圧印加手段 M10…ガス流供給手段 M101…ダクト M11…熱交換器 M12…圧力調整手段 M121…接続管 M122…拡径部 M123…フィルター M13…絞り部材 P…ポンプ 6…分散液 62…分散媒(水系分散媒) 9…液滴 P1…画像形成装置 P2…感光体 P3…帯電器 P4…露光 P10…現像器 P11…現像剤容器 P12…塗布ローラ P13…現像ローラ P14…液体現像剤塗布層 P15…メータリングブレード P16…ローラ芯体 P17…現像ローラクリーニングブレード P18…中間転写ローラ P19…二次転写ローラ P20…情報記録媒体 P21…除電光 P22…クリーニングブレード P23…クリーニングブレード P24…帯電ブレード F40…定着装置 F1…熱定着ロール(加熱ロール) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ロール基材 F1c…弾性体 F2…加圧ロール F2a…回転軸 F2b…ロール基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…シート材 F5a…未定着トナー像 F6…クリーニング部材 F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子が絶縁性液体中に分散した正帯電性の液体現像剤であって、
前記トナー粒子は、表面にアニオン性基を有する母粒子と、前記母粒子を被覆する膜とで構成され、
前記膜は、前記母粒子側から順に、少なくとも、カチオン性基と疎水性基と重合性基とを有するカチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有する第1のカチオン層と、アニオン性基と疎水性基と重合性基とを有するアニオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し単位を有するアニオン層と、前記カチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有する第2のカチオン層とを積層したものであり、
前記膜の最外層が、前記カチオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位を有するカチオン層であることを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記母粒子は、その表面に、前記アニオン性基として、−COO基、−SO基のうち、少なくとも一方を有している請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記母粒子を構成する樹脂材料の酸価は、8〜50KOHmg/gである請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記母粒子の平均粒径をX[μm]、前記トナー粒子の平均粒径をY[μm]としたとき、0.02≦Y−X≦2.0の関係を満足する請求項1ないし3のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記膜は、前記第1のカチオン層上に、前記アニオン層および前記第2のカチオン層が複数積層されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法であって、
前記アニオン性基を表面に有する前記母粒子上に、前記カチオン性重合性界面活性剤を重合することにより、第1のカチオン層を形成する工程と、
前記第1のカチオン層上に、前記アニオン性重合性界面活性剤を重合することにより、アニオン層を積層し、該アニオン層上に、前記カチオン性重合性界面活性剤を重合することにより、第2のカチオン層を積層する積層工程とを有することを特徴とする液体現像剤の製造方法。
【請求項7】
前記積層工程を繰り返し行う請求項6に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項8】
前記各工程を、水系分散媒中で行う請求項6または7に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項9】
前記各工程において、前記各界面活性剤とともに、疎水性モノマーを添加する請求項6ないし8のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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