説明

液体現像剤および画像形成装置

【課題】正帯電の帯電特性に優れ、トナー粒子の長期分散安定性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、主として樹脂材料で構成されたトナー粒子とを含み、樹脂材料は、アミン価を有するロジン系樹脂を含むものである。アミン価を有するロジン系樹脂のアミン価は、1〜100mgKOH/gであるのが好ましい。アミン価を有するロジン系樹脂のアミン価をA[mgKOH/g]、前記アミン価を有するロジン系樹脂の酸価をA[mgKOH/g]としたとき、0.1≦A/A≦40の関係を満足するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤として、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤が知られている。
従来より、このような液体現像剤を構成するトナー粒子には、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体やエポキシ樹脂等の樹脂材料が用いられている。このような樹脂材料は、取り扱いが容易で、得られる画像の発色性が良く、また、高い定着特性が得られるという特徴を有している。
しかしながら、従来の液体現像剤では、トナー粒子を構成する樹脂材料と絶縁性液体との親和性が低く、絶縁性液体中へのトナー粒子の分散性を十分に高いものとするのが困難であった。
【0003】
このような問題を解決するために、トナー粒子を構成する樹脂材料として、ロジン系樹脂を用いる試みが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
ロジン系樹脂は、絶縁性液体との親和性が高いため、ロジン系樹脂をトナー粒子の構成材料として用いることで、絶縁性液体中におけるトナー粒子の分散安定性を高めることができる。
【0004】
ところで、液体現像剤としては、負帯電性の液体現像剤と正帯電性の液体現像剤とが挙げられるが、負帯電性の液体現像剤を用いた場合、画像形成する際に、画像形成装置内部でオゾンが発生し、環境問題や画像形成装置内の周辺部品への悪影響を来す等の問題があった。そこで、近年、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくして画像形成を行い得ることから、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤の開発が求められている。
上述したようなロジン系樹脂を用いた液体現像剤では、ロジン系樹脂そのものの酸価が高く、負帯電の帯電特性を示す傾向があるため、トナー粒子を正帯電させるのが困難であった。また、帯電制御剤を添加して正帯電させることも考えられるが、十分な帯電量を得るのが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特許第3332961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、トナー粒子の分散安定性に優れるとともに、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、主として樹脂材料で構成されたトナー粒子とを含み、
前記樹脂材料は、アミン価を有するロジン系樹脂を含むものであることを特徴とする。
本発明の液体現像剤では、前記アミン価を有するロジン系樹脂のアミン価は、1〜100mgKOH/gであることが好ましい。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記アミン価を有するロジン系樹脂のアミン価をA[mgKOH/g]、前記アミン価を有するロジン系樹脂の酸価をA[mgKOH/g]としたとき、0.1≦A/A≦40の関係を満足することが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記樹脂材料中における、前記アミン価を有するロジン系樹脂の含有率は、1〜50wt%であることが好ましい。
【0009】
本発明の液体現像剤では、前記アミン価を有するロジン系樹脂の軟化点は、80〜190℃であることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記アミン価を有するロジン系樹脂の重量平均分子量は、500〜100000であることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、アミン価が1〜100mgKOH/gである分散剤を含むことが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記分散剤の含有量は、前記トナー粒子100重量部に対して0.2〜10重量部であることが好ましい。
【0010】
本発明の画像形成装置は、色の異なる複数の液体現像剤を用いて、複数の前記液体現像剤に対応した単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を記録媒体に転写し、前記記録媒体上に未定着カラー画像を形成する2次転写部と、
前記未定着カラー画像を前記記録媒体上に定着する定着部と、を有し、
前記液体現像剤が、絶縁性液体と、トナー粒子とを含み、
前記トナー粒子は、アミン価を有するロジン系樹脂を含むものであることを特徴とする。
このような構成により、トナー粒子の分散安定性に優れるとともに、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤を提供することができる。また、このような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
≪液体現像剤≫
まず、本発明の液体現像剤について説明する。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散したものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0012】
<トナー粒子>
[トナー粒子の構成材料]
トナー粒子は、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)と着色剤とを含むものである。
1.樹脂材料(結着樹脂)
トナー粒子は、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
【0013】
本発明において、トナー粒子を構成する樹脂材料は、アミン価を有するロジン系樹脂を含むものである。
ロジン系樹脂は、後述するような絶縁性液体との親和性(相溶性)の高い成分である。したがって、このようなロジン系樹脂を用いたトナー粒子は、後述するような絶縁性液体中における分散安定性が特に高いものとなる。
【0014】
ところで、液体現像剤としては、負帯電性の液体現像剤と正帯電性の液体現像剤とが挙げられるが、負帯電性の液体現像剤を用いた場合、画像形成する際に、画像形成装置内部でオゾンが発生し、環境問題や画像形成装置内の周辺部品への悪影響を来す等の問題があった。そこで、近年、オゾン等の放電生成物の生成量を少なくして画像形成を行い得ることから、正帯電の帯電特性に優れた液体現像剤の開発が求められている。
【0015】
しかしながら、一般に用いられているロジン系樹脂は、アミン価を有しておらず、かつ、高い酸価を有する成分である。このようなロジン系樹脂を用いたトナー粒子は、負帯電の帯電特性を示す傾向があった。このため、正帯電の帯電特性が求められる液体現像剤に、従来のロジン系樹脂を用いるのが困難であった。また、従来のロジン系樹脂を用いた液体現像剤に対して帯電制御剤を添加して正帯電させることも考えられるが、十分な帯電量を得るのが困難であった。
そこで、本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明では、トナー粒子を構成する樹脂材料として、アミン価を持ったロジン系樹脂を用いることにより、ロジン系樹脂を用いることによる分散安定性の優れた効果を保持しつつ、トナー粒子の正帯電の帯電特性を向上させることができる。
【0016】
ロジン系樹脂にアミン価を持たせる方法としては、例えば、ロジン系樹脂にアミン価を持った官能基を導入する方法や、ウレタン結合やアミド結合等を有する化合物によってロジン系樹脂に変性処理を施す方法等が挙げられる。
上記のような官能基の導入や変性処理することにより、ロジン系樹脂の分子内に窒素原子が導入され、この窒素原子が樹脂材料の酸性基等から遊離したプロトン(H)を引きつけるため、トナー粒子を正帯電させることができる。
【0017】
アミン価を持った官能基とは、アミノ基、第2級アミン構造、第3級アミン構造を備える官能基等が挙げられる。
上述したような官能基の導入や変性処理に供されるロジン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ロジン、フェノール変性ロジン、マレイン酸変性ロジン、ポリエステル変性ロジン、フマル酸変性ロジン、ロジンエステル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
アミン価を有するロジン系樹脂のアミン価は、具体的には、1〜100mgKOH/gであるものが好ましく、10〜80mgKOH/gであるものがより好ましい。これにより、ロジン系樹脂を含むことによるトナー粒子の優れた分散安定性を発揮させつつ、トナー粒子の正帯電の帯電特性をより優れたものとすることができる。
また、本発明で用いるアミン価を有するロジン系樹脂は、酸価を有していてもよい。
【0019】
アミン価を有するロジン系樹脂の酸価は、40mgKOH/g以下であるのが好ましく、30mgKOH/g以下であるのがより好ましく、25mgKOH/g以下であるのがさらに好ましい。これにより、トナー粒子の正帯電の帯電特性をより優れたものとすることができる。
【0020】
また、アミン価を有するロジン系樹脂のアミン価をA[mgKOH/g]、アミン価を有するロジン系樹脂の酸価をA[mgKOH/g]としたとき、0.1≦A/A≦40の関係を満足するのが好ましく、0.1≦A/A≦25の関係を満足するのがより好ましい。これにより、トナー粒子の正帯電の帯電特性を特に優れたものとすることができる。
【0021】
上述したようなアミン価を有するロジン系樹脂の軟化点は、80〜190℃であるのが好ましく、80〜160℃であるのがより好ましく、80〜130℃であるのがさらに好ましい。これにより、トナー粒子の長期分散安定性、帯電特性を優れたものとしつつ、トナー粒子の定着特性をより高いものとすることができる。
また、アミン価を有するロジン系樹脂の重量平均分子量は、500〜100000であるのが好ましく、1000〜80000であるのがより好ましく、1000〜50000であるのがさらに好ましい。これにより、トナー粒子の長期分散安定性、帯電特性を優れたものとしつつ、トナー粒子の定着特性をより高いものとすることができる。
【0022】
また、トナー粒子を構成する樹脂材料中におけるアミン価を有するロジン系樹脂の含有率は、1〜50wt%であるのが好ましく、5〜40wt%であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子を効果的に正帯電させることができるとともに、トナー粒子の分散安定性をより効果的に向上させることができる。
なお、アミン価を有するロジン系樹脂は、トナー粒子の表面の少なくとも一部に存在しているのが好ましい。これにより、トナー粒子をより確実に正に帯電させることができる。また、後述するような分散剤をトナー粒子の表面に存在させることができ、分散安定性および正帯電の帯電特性を特に優れたものとすることができる。
また、トナー粒子は、上述したようなロジン系樹脂以外の公知の樹脂が含まれていてもよい。
【0023】
特に、アミン価を有するロジン系樹脂と、エステル結合を有する樹脂材料とを併用するのが好ましい。このような結合を有する樹脂材料は、上記ロジン系樹脂との相溶性が低いため、ロジン系樹脂をトナー粒子の表面により確実に存在させることができる。その結果、トナー粒子をより確実に正帯電させることができる。また、後述するような分散剤をトナー粒子表面により確実に吸着させることができ、分散安定性をさらに高いものとすることができる。
【0024】
エステル結合を有する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、ポリエステル樹脂を用いるのが好ましい。ポリエステル樹脂は、透明性が高く、結着樹脂として用いた場合、得られる画像の発色性を高いものとすることができる。また、ポリエステル樹脂は、ロジン系樹脂との相溶性が特に低いため、トナー粒子中においてロジン系樹脂とより確実に層分離し、トナー粒子の表面により効果的に上記ロジン系樹脂を存在させることができる。その結果、トナー粒子をより確実に正帯電させることができるとともに、トナー粒子の分散安定性をより高いものとすることができる。
【0025】
トナー粒子中に含まれるロジン系樹脂以外の樹脂材料の酸価は、5〜20mgKOH/gであるのが好ましく、5〜15mgKOH/gであるのがより好ましい。これにより、ロジン系樹脂の正帯電の特性を阻害せず、トナー粒子を確実に正帯電させることができる。
トナー粒子中に含まれるロジン系樹脂以外の樹脂材料の軟化点は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましく、60〜115℃であるのがさらに好ましい。これにより、トナー粒子の定着特性を特に優れたものとすることができる。なお、本明細書で、軟化点とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
【0026】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、特に限定されず、例えば、公知の顔料、染料等を使用することができる。
3.その他の成分
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、公知のワックス、磁性粉末等が挙げられる。
また、トナー粒子の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0027】
[トナー粒子の形状]
上記のような材料で構成されたトナー粒子の平均粒径は、0.5〜3μmであるのが好ましく、1〜2.5μmであるのがより好ましく、1〜2μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での特性のばらつきを小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を高いものとしつつ、液体現像剤により形成されるトナー画像の解像度を十分に高いものとすることができる。また、トナー粒子の絶縁性液体への分散を良好にし、液体現像剤の保存性を高いものとできる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
液体現像剤中におけるトナー粒子の含有率は、10〜60wt%であるのが好ましく、20〜50wt%であるのがより好ましい。
【0028】
<絶縁性液体>
次に、絶縁性液体について説明する。
絶縁性液体は、十分に絶縁性の高い液体であればよいが、具体的には、室温(20℃)での電気抵抗が1×10Ωcm以上であるのが好ましく、1×1011Ωcm以上であるのがより好ましく、1×1013Ωcm以上であるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の比誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0029】
このような条件を満足する絶縁性液体としては、例えば、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー;エクソン化学社の商品名)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルゾール;シエルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)、低粘度・高粘度流動パラフィン(和光純薬工業)等の鉱物油(炭化水素系液体)、脂肪酸グリセリド、脂肪酸モノエステル、中鎖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステルまたはそれらを含む植物油、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、特に、植物油は、上記ロジン系樹脂との親和性(相溶性)が特に高いため、トナー粒子の分散安定性をさらに向上させることができる。
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、上述した成分以外に、公知の酸化防止剤、帯電制御剤等を含んでいてもよい。
【0030】
絶縁性液体の粘度は、特に限定されないが、5〜1000mPa・sであるのが好ましく、50〜800mPa・sであるのがより好ましく、50〜500mPa・sであるのがさらに好ましい。絶縁性液体の粘度が前記範囲内の値であると、液体現像剤が現像剤容器から塗布ローラにくみ出された場合において、適量の絶縁性液体がトナー粒子に付着し、トナー画像の現像性、転写性を特に優れたものにできる。また、トナー粒子の分散性をより高いものとすることができるとともに、後述するような画像形成装置において、塗布ローラに液体現像剤をより均一に供給することができ、また、塗布ローラ等からの液体現像剤の液だれ等をより効果的に防止することができる。加えて、トナー粒子の凝集、沈降をより効果的に防止でき、絶縁性液体中におけるトナー粒子の分散性をより高いものとすることができる。これに対し、絶縁性液体の粘度が前記下限値未満であると、後述するような画像形成装置において、塗布ローラ等からの液体現像剤の液だれ等の問題が起こる可能性がある。一方、絶縁性液体の粘度が前記上限値を超えると、トナー粒子の分散性を十分高くできず、後述するような画像形成装置において、塗布ローラに液体現像剤をより均一に供給することができない場合がある。ただし、本明細書における粘度とは25℃において測定した値を指すものとする。
【0031】
<その他の成分>
また、液体現像剤中には、上記成分の他、分散剤が含まれていてもよい。
本発明で用いる分散剤としては、特に限定されないが、アミン価を有する分散剤を用いるのが好ましい。
アミン価を有する分散剤は、上述したロジン系樹脂との相溶性(親和性)が高く、トナー粒子の表面に強固に付着または吸着する。その結果、トナー粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、トナー粒子の表面に吸着することにより、トナー粒子の正帯電の帯電特性を特に優れたものとすることができる。また、後述するような画像形成装置において、現像部等で回収された液体現像剤を再利用する際に、回収された液体現像剤内のトナー粒子を容易に再分散させることができ、容易に再利用することができる。
また、アミン価を有する分散剤は、後述するような絶縁性液体との相溶性も高く、トナー粒子の表面に付着(吸着)することにより、トナー粒子の分散安定性をさらに優れたものとすることができる。
【0032】
アミン価を有する分散剤は、その分子内に、第2級アミン構造、第3級アミン構造、アミド結合構造なる群から選択される少なくとも1つの構造を有しているのが好ましい。これにより、トナー粒子の表面に分散剤をより強固に吸着させることができ、トナー粒子の長期分散安定性、正帯電の帯電特性をより優れたものとすることができる。
アミン価を有する分散剤のアミン価は、1〜100mgKOH/gであるものが好ましく、10〜80mgKOH/gであるものがより好ましい。これにより、トナー粒子をより確実に正に帯電させることができるとともに、トナー粒子の分散安定性をより高いものとすることができる。これに対して、前記分散剤のアミン価が前記下限値未満であると、十分な正帯電の帯電特性が得られない場合がある。また、前期分散在のアミン価が前記上限値を超えると、分散剤同士が凝集してしまい、十分な分散安定性が得られない場合がある。
【0033】
アミン価を有する分散剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のEFKA−5044、EFKA−5244、EFKA−6220、EFKA−6225、EFKA−7564、EFKA−4080等、ビックケミー社製のAnti−Terra−U、Disperbyk−101、Disperbyk−106、Disperbyk−108、Disperbyk−109、Disperbyk−116、Disperbyk−140(「Disperbyk」は、ビックケミー社の登録商標)等、ニューセンチュリーコーティングス社製のAgrisperse FA、Agrisperse 712等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
液体現像剤中におけるアミン価を有する分散剤の含有率は、トナー粒子100重量部に対して、0.2〜10重量部であるのが好ましく、1〜8重量部であるのがより好ましく、3〜6重量部であるのがさらに好ましい。分散剤の含有量が上記範囲であると、トナー粒子の長期分散安定性を効果的に向上させることができるとともに、正帯電の帯電特性をより優れたものとすることができる。
【0035】
≪液体現像剤の製造方法≫
次に、本発明の液体現像剤の製造方法の好適な実施形態について説明する。
本実施形態の液体現像剤の製造方法は、上述したような樹脂材料、着色剤が水系分散媒に分散した分散液を調製する分散液調製工程と、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る合一工程と、合一粒子に含まれる有機溶剤を除去し、樹脂材料と着色剤とを含むトナー粒子を得る脱溶剤工程と、トナー粒子および上述したような分散剤を絶縁性液体に分散させる分散工程とを有する。
【0036】
以下、液体現像剤の製造方法を構成する各工程について詳細に説明する。
[分散液調製工程(水系分散液調製工程)]
まず、分散液(水系分散液)を調製する。
水系分散液は、いかなる方法で調製されるものであってもよいが、例えば、樹脂材料(ロジン系樹脂およびその他の樹脂材料)、着色剤等のトナー粒子の構成材料(トナー材料)を有機溶剤中に溶解、分散させて樹脂液を得(樹脂液調製処理)、水系液体で構成された水系分散媒を樹脂液に添加することにより、トナー材料を含む分散質(液状の分散質)を水系液体中に形成し、分散質が分散した分散液(水系分散液)を得る(分散質形成処理)。
【0037】
(樹脂液調製処理)
まず、樹脂材料(アミン価を有するロジン系樹脂およびその他の樹脂材料)、加水分解抑制剤を有機溶剤に溶解または分散させた樹脂液を調製する。
調製された樹脂液は、前述したようなトナー粒子の構成材料、および、次に述べるような有機溶剤を含むものである。
有機溶剤としては、樹脂材料の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、後述する水系液体よりも沸点が低いものを用いるのが好ましい。これにより、有機溶剤を容易に除去することができる。
【0038】
また、有機溶剤は、後述する水系分散媒(水系液体)との相溶性が低いもの(例えば、25℃における水系分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、水系乳化液中において、トナー材料を安定した状態で微分散させることができる。
また、有機溶剤の組成は、例えば、前述したような樹脂材料、着色剤の組成や、水系分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
このような有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、MEK等のケトン系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0039】
樹脂液は、例えば、樹脂材料、着色剤、有機溶剤等を、攪拌機等により混合することにより得ることができる。樹脂液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)等の高速攪拌機が挙げられる。
また、攪拌時における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
【0040】
樹脂液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、40〜75wt%であるのが好ましく、50〜73wt%であるのがより好ましく、50〜70wt%であるのがさらに好ましい。固形分の含有率が前記範囲内の値であると、後述する分散液(乳化懸濁液)を構成する分散質を、より球形度の高いもの(真球に近い形状もの)とすることができ、最終的に得られるトナー粒子の形状を、より確実に好適なものとすることができる。
また、樹脂液の調製においては、調製すべき樹脂液の構成成分をすべて同時に混合してもよいし、予め、調製すべき樹脂液の構成成分のうち一部を混合して混合物(マスター)を得、その後、当該混合物(マスター)を、他の成分と混合してもよい。
【0041】
(分散質形成処理)
次に、水系分散液(分散液)を調製する。
水系液体で構成された水系分散媒を樹脂液に添加することにより、トナー材料を含む分散質(液状の分散質)を水系液体中に形成し、分散質が分散した分散液(水系分散液)を得る。
【0042】
水系分散媒は、水系液体で構成されたものである。
水系液体としては、主として水で構成されたものを用いることができる。
水系液体中には、例えば、水との相溶性に優れる溶媒(例えば、25℃での100重量部の水に対する溶解度が、50重量部以上である溶媒)を含むものであってもよい。
また、水系分散媒には、必要に応じて乳化分散剤を添加してもよい。乳化分散剤を添加することにより、より容易に水系乳化液を調製することができる。
乳化分散剤としては、特に限定されず、例えば、公知の乳化分散剤を用いることができる。
【0043】
また、水系分散液の調製に際して、例えば、中和剤を用いてもよい。これにより、例えば、樹脂材料が有する官能基(例えば、カルボキシル基等)を中和することができ、調製される水系分散液中における分散質の形状、大きさの均一性、分散質の分散性を特に優れたものとすることができ。このため、得られるトナー粒子は、粒度分布が特に狭いものとなる。
【0044】
中和剤は、例えば、樹脂液に添加されるものであってもよいし、水系液体に添加されるものであってもよい。
また、中和剤は、水系分散液の調製において、複数回に分けて添加されるものであってもよい。
中和剤としては、塩基性化合物を用いることができ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン等の有機塩基等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、中和剤は、上記のような化合物を含む水溶液であってもよい。
【0045】
また、塩基性化合物の使用量は、樹脂材料が有する全カルボキシル基を中和するために必要な量の1〜3倍に相当する量(1〜3当量)が好ましく、1〜2倍に相当する量(1〜2当量)がより好ましい。これにより、異形の分散質が形成されるのを効果的に防止することができ、また、後に詳述する合一工程において得られる粒子の粒度分布を、よりシャープなものとすることができる。
【0046】
樹脂液への水系液体の添加は、いかなる方法で行うものであってもよいが、樹脂液を撹拌しつつ、樹脂液に水を含む水系液体を添加することが好ましい。すなわち、攪拌機等により樹脂液に剪断を加えつつ、樹脂液中に水系液体を徐々に添加(滴下)することにより行い、W/O型の乳化液からO/W型の乳化液に転相させて、最終的に、水系液体中に、樹脂液由来の分散質が分散した水系分散液を得るのが好ましい。
【0047】
水系分散液の調製に用いることのできる攪拌機としては、例えば、DESPA(浅田鉄工社製)、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼(プライミクス社製)、スラッシャ(三井鉱山社製)、キャビトロン(ユーロテック社製)等の高速攪拌機、あるいは高速分散機等が挙げられる。
また、樹脂液への水系液体の添加時には、翼先端速度が10〜20m/秒となるように撹拌を行うことが好ましく、12〜18m/秒となるように撹拌を行うことがより好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、水系分散液を効率良く得ることができるとともに、水系分散液中における分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができ、過剰に微細な分散質、粗大粒子の発生を防止しつつ、分散質の均一分散性を特に優れたものとすることができる。
【0048】
水系分散液中における固形分の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系分散液中における分散質同士の不本意な凝集をより確実に防止しつつ、トナー粒子の生産性を特に優れたものとすることができる。
また、本処理における材料温度は、20〜60℃であるのが好ましく、20〜50℃であるのがより好ましい。
【0049】
[合一工程]
次に、複数個の分散質を合一させ、合一粒子を得る(合一工程)。分散質の合一は、通常、有機溶剤を含む分散質が衝突することにより、これらが一体化して進行する。このように合一する過程において、アミン価を有するロジン系樹脂とその他の樹脂材料とは相溶性が低いので、層分離を起こし、最終的に得られるトナー粒子の表面に確実にロジン系樹脂を存在(偏在)させることができる。
【0050】
複数個の分散質の合一は、分散液を撹拌しながら、分散液に電解質を添加することにより行う。これにより、容易かつ確実に合一粒子を得ることができる。また、電解質の添加量を調節することにより、容易かつ確実に、合一粒子の粒径、粒度分布を制御することができる。
電解質としては、特に限定されず、公知の有機、無機の水溶性の塩等を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
また、電解質は、1価のカチオンの塩であることが好ましい。これにより、得られる合一粒子の粒度分布を狭いものとできる。また、1価のカチオンの塩を用いることで、本工程において、粗大粒子が発生することを確実に防止することができる。
また、上述した中でも、電解質は、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム)または炭酸塩であることが好ましく、硫酸塩であることが特に好ましい。これにより、特に容易に合一粒子の粒径を制御できる。
【0052】
本工程で添加される電解質の量は、電解質が添加される分散液に含まれる固形分:100重量部に対し、0.5〜3重量部であるのが好ましく、1〜2重量部であるのがより好ましい。これにより、特に容易かつ確実に合一粒子の粒径を制御できるとともに、粗大粒子の発生を確実に防止することができる。
また、電解質は、水溶液の状態で添加されるのが好ましい。これにより、速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができるとともに、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。この結果、所望の粒径で、粒度分布の特に狭い合一粒子を得ることができる。
【0053】
また、電解質を水溶液の状態で添加する場合、水溶液中における電解質の濃度は、2〜10wt%であることが好ましく、2.5〜6wt%であることがより好ましい。これにより、特に速やかに分散液全体に、電解質を拡散させることができ、電解質の添加量を容易かつ確実に制御することができる。また、このような水溶液を加えることにより、電解質を加え終えた際における分散液中の水の含有量が、好適なものとなる。このため、電解質添加後における合一粒子の成長速度を、生産性が落ちない程度に、適度に遅いものとすることができる。結果として、粒径をより確実に制御できる。また、不本意な合一粒子の合一を確実に防止することができる。
【0054】
また、電解質を水溶液で添加する場合、電解質水溶液の添加の速度は、電解質水溶液が添加される分散液に含まれる固形分:100重量部に対し、0.5〜10重量部/分であるのが好ましく、1.5〜5重量部/分であるのがより好ましい。これにより、分散液中で、電解質の濃度のむらが発生することを防止することができ、粗大粒子が発生することを確実に防ぐことができる。また、合一粒子の粒度分布は特に狭いものとなる。さらに、このような速度で電解質を添加することで、合一の速度を特に容易に制御でき、合一粒子の平均粒径を制御することが特に容易になるとともに、トナーの生産性を特に優れたものとすることができる。
電解質の添加は、複数回に分けて行ってもよい。これにより、容易かつ確実に、所望の大きさの合一粒子を得ることができるとともに、得られる合一粒子の円形度を確実に、十分に大きいものとすることができる。
【0055】
また、本工程は、分散液を攪拌した状態で行う。これにより、粒子間での形状、大きさのばらつきが特に小さい合一粒子を得ることができる。
分散液の撹拌には、例えば、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等の攪拌翼を用いることができるが、中でも、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が好ましい。これにより、添加した電解質をすばやく均一に分散、溶解させて、電解質の濃度むらが発生することを確実に防止することができる。また、分散質を効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子が崩壊するのをより確実に防止することができる。その結果、粒子間での形状、粒径のばらつきの小さい合一粒子を効率良く得ることができる。
【0056】
攪拌翼の翼先端速度は、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、0.2〜8m/秒であるのがより好ましく、0.2〜6m/秒であるのがさらに好ましい。翼先端速度が前記範囲内の値であると、添加した電解質を均一に分散、溶解させて、電解質の濃度むらが発生することを確実に防止することができる。また、分散質をより効率良く合一させつつ、一旦形成された合一粒子が崩壊するのをさらに確実に防止することができる。
得られる合一粒子の平均粒径は、0.5〜5μmであるのが好ましく、1.5〜3μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。
【0057】
[脱溶剤(脱溶媒)工程]
その後、分散液中に含まれる有機溶剤を除去する。これにより、分散液中に分散した樹脂微粒子(トナー粒子)が得られる。このようにして得られたトナー粒子は、その表面の少なくとも一部に上述したようなアミン価を持ったロジン系樹脂が存在するものとなる。
有機溶剤の除去は、いかなる方法で行ってもよいが、例えば、減圧により行うことができる。これにより、樹脂材料等の構成材料の変性等を十分に防止しつつ、効率良く有機溶剤を除去することができる。
また、本工程での処理温度は、合一粒子を構成する樹脂材料のガラス転移点(Tg)よりも低い温度であるのが好ましい。
【0058】
また、本工程は、分散液に、消泡剤を添加した状態で行ってもよい。これにより、効率良く有機溶剤を除去することができる。
消泡剤としては、例えば、鉱物油系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、シリコーン系消泡剤のほか、低級アルコール類、高級アルコール類、油脂類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、リン酸エステル類等を用いることができる。
消泡剤の使用量は、特に限定されないが、分散液中に含まれる固形分に対して、重量比で、20〜300ppmであるのが好ましく、30〜100ppmであるのがより好ましい。
【0059】
また、本工程においては、有機溶剤とともに、少なくとも一部の水系液体が除去されてもよい。
なお、本工程においては、必ずしも全ての有機溶剤(分散液中に含まれる有機溶剤の全量)が除去されなくてもよい。このような場合であっても、後述する他の工程において、残存する有機溶剤を十分に除去することができる。
【0060】
[洗浄工程]
次に、上記のようにして得られた樹脂微粒子(トナー粒子)の洗浄を行う(洗浄工程)。
本工程を行うことにより、不純物として、有機溶剤等が含まれる場合であっても、これらを効率良く除去することができる。その結果、最終的に得られる樹脂微粒子における、揮発性有機化合物(TVOC)量を特に少ないものとすることができる。
本工程は、例えば、固液分離(水系液体からの分離)により樹脂微粒子を分離し、さらにその後、固形分(樹脂微粒子)の水中への再分散および固液分離(水系液体からの樹脂微粒子の分離)をすることにより行うことができる。固形分の水中への再分散および固液分離は、複数回、繰り返し行ってもよい。
【0061】
[乾燥工程]
その後、乾燥処理を施すことにより、トナー粒子を得ることができる(乾燥工程)。
乾燥工程は、例えば、真空乾燥機(例えば、リボコーン(大川原製作所社製)、ナウター(ホソカワミクロン社製)等)、流動層乾燥機(大川原製作所社製)等を用いて行うことができる。
【0062】
[分散工程]
次に、上記のようにして得られたトナー粒子と上述したような分散剤とを、絶縁性液体中に分散する。これにより、液体現像剤を得る。
トナー粒子および前記分散剤の絶縁性液体への分散は、いかなる方法を用いてもよく、例えば、絶縁性液体とトナー粒子と前記分散剤とをビーズミル、ボールミル等で混合することにより行うことができる。このような方法で混合することにより、分散剤をトナー粒子の表面により確実に付着または吸着させることができる。
【0063】
また、この分散時において、絶縁性液体、トナー粒子および前記分散剤以外の成分を混合するものであってもよい。
また、トナー粒子および前記分散剤の絶縁性液体への分散は、最終的に得られる液体現像剤を構成する絶縁性液体の全量を用いて行うものであってもよく、絶縁性液体の一部を用いて行うものであってもよい。
【0064】
また、絶縁性液体の一部を用いてトナー粒子および前記分散剤を分散する場合、分散した後に、分散に用いた液体と同じ液体を絶縁性液体として添加するものであってもよいし、また、分散した後に、分散に用いた液体とは異なる液体を絶縁性液体として添加するものであってもよい。後者の場合、最終的に得られる液体現像剤の粘度等の特性を容易に調整することができる。
【0065】
以上説明したような方法により液体現像剤を製造した場合、含まれるトナー粒子は、その表面の少なくとも一部にアミン価を持ったロジン系樹脂が存在するものとなるとともに、トナー粒子間での形状のばらつきが小さいものとなる。これにより、トナー粒子間での帯電特性のばらつきを小さいものとすることができる。また、粒子表面の表面積が粒子間によって異なることがなくなり、前述したような分散剤をトナー粒子の表面により均一に付着または吸着させることができる。その結果、トナー粒子の長期分散安定性を優れたものとすることができる。
【0066】
≪画像形成装置≫
次に、本発明の画像形成装置の好適な実施形態について説明する。本発明の画像形成装置は、上述したような本発明の液体現像剤を用いて記録媒体上にカラー画像を形成するものである。
図1は、本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の第2実施形態を示す模式図、図2は、図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図である。
【0067】
画像形成装置1000は、図1、図2に示すように、4つの現像部30Y、30M、30C、30Kと、中間転写部40と、2次転写ユニット(2次転写部)60と、定着部(定着装置)F40と、4つの液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kとを有している。
現像部30Y、30M、30Cは、それぞれ、イエロー系液体現像剤(Y)、マゼンダ系液体現像剤(M)、シアン系の液体現像剤(C)で、潜像を現像し、各色に対応したカラーの単色像を形成する機能を有している。また、現像部30Kは、ブラック系液体現像剤(K)で、潜像を現像し、ブラック(黒)の単色像を形成する機能を有している。
【0068】
現像部30Y、30M、30C、30Kの構成は同様であるので、以下、現像部30Yについて説明する。
現像部30Yは、図2に示すように、像担持体の一例としての感光体10Yと、感光体10Yの回転方向に沿って、帯電ローラ11Yと、露光ユニット12Yと、現像ユニット100Yと、感光体スクイーズ装置101Yと、1次転写バックアップローラ51Yと、除電ユニット16Yと、感光体クリーニングブレード17Yと、現像剤回収部18Yとを有している。
【0069】
感光体10Yは、円筒状の基材とその外周面に形成され、例えばアモルファスシリコン等の材料で構成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図2中の矢印で示すように時計回りに回転する。
感光体10Yは、後述する現像ユニット100Yにより液体現像剤が供給され、表面に液体現像剤の層が形成されるものである。
【0070】
帯電ローラ11Yは、感光体10Yを帯電するための装置であり、露光ユニット12Yは、レーザを照射することによって帯電された感光体10Y上に潜像を形成する装置である。この露光ユニット12Yは、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の不図示のホストコンピュータから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザを帯電された感光体10Y上に照射する。
現像ユニット100Yは、感光体10Y上に形成された潜像を、本発明の液体現像剤を用いて現像するための装置である。なお、現像ユニット100Yの詳細については後述する。
【0071】
感光体スクイーズ装置101Yは、現像ユニット100Yより回転方向下流側に、感光体10Yに対向して配置されており、感光体スクイーズローラ13Yと、該感光体スクイーズローラ13Yに押圧摺接して表面に付着した液体現像剤を除去するクリーニングブレード14Yと、除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部15Yとで構成される。この感光体スクイーズ装置101Yは、感光体10Yに現像された現像剤から余剰なキャリア(絶縁性液体)および本来不要なカブリトナーを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。
【0072】
1次転写バックアップローラ51Yは、感光体10Yに形成された単色像を、後述する中間転写部40に転写するための装置である。
除電ユニット16Yは、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に中間転写像が転写された後に、感光体10Y上の残留電荷を除去する装置である。
感光体クリーニングブレード17Yは、感光体10Yの表面に当接されたゴム製の部材で、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に像が転写された後に、感光体10Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部18Yは、感光体クリーニングブレード17Yにより除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0073】
中間転写部40は、エンドレスの弾性ベルト部材であり、図示しないモータの駆動力が伝達されるベルト駆動ローラ41および一対の従動ローラ42、43に張架されている。また、中間転写部40は、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kで感光体10Y、10M、10C、10Kと当接しながらベルト駆動ローラ41により反時計回りに回転駆動される。
【0074】
さらに、中間転写部40は、テンションローラ44によって所定のテンションが付与されて、たるみが除去されるようになっている。このテンションローラ44は、一方の従動ローラ42より中間転写部40の回転(移動)方向下流側でかつ他方の従動ローラ43より中間転写部40の回転(移動)方向上流側に配設されている。
この中間転写部40に、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kにより、現像部30Y、30M、30C、30Kで形成された各色に対応した単色像が順次転写され、各色に対応した単色像が重ね合わされる。これにより、中間転写部40にフルカラー現像剤像(中間転写像)が形成される。
【0075】
中間転写部40には、このように複数の感光体10Y、10M、10C、10Kに形成した単色像を順次2次転写して重ね合わせて担持し、後述する2次転写ユニット60において一括して紙、フィルム、布等の記録媒体F5に2次転写する。そのため、2次転写行程において記録媒体F5にトナー像を転写するに当たって、記録媒体F5表面が繊維質などによって平滑でないシート材であっても、この非平滑なシート材表面に倣って2次転写特性を向上させる手段として、弾性ベルト部材を採用している。
【0076】
また、中間転写部40には、中間転写部クリーニングブレード46、現像剤回収部47、非接触式バイアス印加部材48からなるクリーニング装置が配置されている。
中間転写部クリーニングブレード46および現像剤回収部47は、従動ローラ43側に配されている。
中間転写部クリーニングブレード46は、2次転写ユニット(2次転写部)60によって記録媒体F5上に像が転写された後に、中間転写部40上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。
現像剤回収部47は、中間転写部クリーニングブレード46により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0077】
非接触式バイアス印加部材48はテンションローラ44に対向する位置に中間転写部40から離間して配設されている。この非接触式バイアス印加部材48は、二次転写後に中間転写部40上に残留する液体現像剤のトナー(固形分)に、このトナーと逆極性のバイアス電圧を印加するものである。これにより、トナーが除電されて中間転写部40へのトナーの静電付着力が低減されるようにしている。この例では、非接触式バイアス印加部材48として、コロナ帯電器が用いられている。
【0078】
なお、非接触式バイアス印加部材48は、必ずしもテンションローラ44に対向する位置に配設する必要はなく、例えば従動ローラ42とテンションローラ44との間の位置等、従動ローラ42より中間転写部の移動方向下流側で、かつ、従動ローラ43より中間転写部の移動方向上流側の任意の位置に配設することができる。また、非接触式バイアス印加部材48はコロナ帯電器以外の公知の非接触式帯電器を用いることもできる。
【0079】
また、1次転写バックアップローラ51Yより中間転写部40の移動方向下流側に、中間転写部スクイーズ装置52Yが配されている。
この中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40上に転写された液体現像剤が望ましい分散状態に至っていない場合に、転写された液体現像剤から余剰の絶縁性液体を除去する手段として設けられている。
【0080】
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部スクイーズローラ53Yと、中間転写部スクイーズローラ53Yに押圧摺接して表面をクリーニングする中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yと、中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yで除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部56Yとから構成される。
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40に1次転写された現像剤から余剰な絶縁性液体を回収し、像内のトナー粒子比率を上げると共に、本来不要なカブリトナーを回収する機能を有する。
【0081】
2次転写ユニット60は、互いに転写材移動方向に沿って所定間隔離間して配置された一対の2次転写ローラを備えている。これらの一対の2次転写ローラのうち、中間転写部40の移動方向の上流側に配置される2次転写ローラが上流側2次転写ローラ61である。この上流側2次転写ローラ61は、ベルト駆動ローラ41に中間転写部40を介して圧接可能となっている。
【0082】
また、一対の2次転写ローラのうち、転写材の移動方向の下流側に配置される2次転写ローラが下流側2次転写ローラ62である。この下流側2次転写ローラ62は、従動ローラ42に中間転写部40を介して圧接可能となっている。
すなわち、上流側2次転写ローラ61、下流側2次転写ローラ62は、それぞれ、ベルト駆動ローラ41および従動ローラ42に掛けられた中間転写部40に記録媒体F5を当接させて、中間転写部40上に色重ねして形成された中間転写像を記録媒体F5に2次転写する。
【0083】
この場合、ベルト駆動ローラ41および従動ローラ42は、それぞれ上流側2次転写ローラ61、下流側2次転写ローラ62のバックアップローラとしても機能する。すなわち、ベルト駆動ローラ41は、2次転写ユニット60において従動ローラ42より記録媒体F5の移動方向上流側に配置される上流側バックアップローラとして兼用される。また、従動ローラ42は、2次転写ユニット60においてベルト駆動ローラ41より記録媒体F5の移動方向下流側に配置される下流側バックアップローラとして兼用される。
【0084】
したがって、2次転写ユニット60に搬送されてきた記録媒体F5は、上流側2次転写ローラ61とベルト駆動ローラ41との圧接開始位置(ニップ開始位置)から下流側2次転写ローラ62と従動ローラ42との圧接終了位置(ニップ終了位置)までの転写材の所定の移動領域で中間転写部40に密着される。これにより、中間転写部40上のフルカラーの中間転写像が、中間転写部40に密着した状態の記録媒体F5に所定時間にわたって2次転写されるので、良好な2次転写が行われる。
【0085】
また、2次転写ユニット60は、2次転写ローラ61に対して、2次転写ローラクリーニングブレード63と、現像剤回収部64とを備えている。また、2次転写ユニット60は、2次転写ローラ62に対して、2次転写ローラクリーニングブレード65と、現像剤回収部66とを備えている。各2次転写ローラクリーニングブレード63、65は、それぞれ2次転写ローラ61、62に当接されて2次転写後に各2次転写ローラ61、62の表面に残留する液体現像剤を掻き落として除去する。また、各現像剤回収部64、66は、それぞれ各2次転写ローラクリーニングブレード63、65によって各2次転写ローラ61、62から掻き落とされた液体現像剤を回収して貯留する。
2次転写ユニット60により記録媒体F5上に転写されたトナー画像(転写像)F5aは、後述する定着部(定着装置)F40に送られ、定着が行われる。
【0086】
次に、現像ユニット100Y、100M、100C、100Kについて、詳細に説明する。なお、以下の説明では、代表的に、現像ユニット100Yについて説明する。
現像ユニット100Yは、図2に示すように、液体現像剤貯留部31Yと、塗布ローラ32Yと、規制ブレード33Yと、現像剤攪拌ローラ34Yと、現像ローラ20Yと、現像ローラクリーニングブレード21Yと、コロナ放電器(圧縮手段)23Yとを有している。
液体現像剤貯留部31Yは、感光体10Yに形成された潜像を現像するための液体現像剤を貯留する機能を備えたものである。
【0087】
塗布ローラ32Yは、液体現像剤を現像ローラ20Yへ供給する機能を備えたものである。
この塗布ローラ32Yは、鉄等金属性のローラの表面に溝が均一かつ螺旋状に形成されニッケルメッキが施された、いわゆるアニロクスローラを呼称されるものであり、その直径は約25mmである。本実施形態では、塗布ローラ32Yの回転方向に対して斜めに複数の溝が、いわゆる切削加工や転造加工等によって形成されている。この塗布ローラ32Yは、反時計回りに回転しながら液体現像剤に接触することによって、溝に、液体現像剤貯留部31Y内の液体現像剤を担持して、該担持した液体現像剤を現像ローラ20Yへ搬送する。
【0088】
規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Yの表面に当接して、塗布ローラ32Y上の液体現像剤の量を規制する。すなわち、当該規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Y上の余剰液体現像剤を掻き取って、現像ローラ20Yに供給する塗布ローラ32Y上の液体現像剤を計量する役割を果たす。この規制ブレード33Yは、弾性体としてのウレタンゴムからなり、鉄等金属製の規制ブレード支持部材より支持されている。また、規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Yが回転して液体現像剤から進出する側(すなわち、図2中右側)に設けられている。なお、規制ブレード33Yのゴム硬度は、JIS−Aで約77度であり、規制ブレード33Yの、塗布ローラ32Y表面への当接部の硬度(約77度)は、後述する現像ローラ20Yの弾性体の層の塗布ローラ32Y表面への圧接部の硬度(約85度)よりも低くなっている。また、掻き取られた余剰の液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Yに回収され、再利用される。
【0089】
現像剤攪拌ローラ34Yは、液体現像剤を一様分散状態に攪拌する機能を備えたものである。これにより、複数個のトナー粒子1が凝集した場合であっても、トナー粒子1同士を好適に分散させることができる。特に、本発明の液体現像剤は、トナー粒子の分散性が高いため、より好適に分散することができる。また、再利用した液体現像剤であっても、容易に分散させることができる。
液体現像剤貯留部31Y内において、液体現像剤の中のトナー粒子1はプラスの電荷を有し、液体現像剤は、現像剤撹拌ローラ34Yにより撹拌されて一様分散状態になり、塗布ローラ32Yが回転することによって、液体現像剤貯留部31Yから汲み上げられ、規制ブレード33Yによって液体現像剤量が規制されて現像ローラ20Yに供給される。
【0090】
現像ローラ20Yは、感光体10Yに担持された潜像を液体現像剤により現像するために、液体現像剤を担持して感光体10Yと対向する現像位置に搬送する。
現像ローラ20Yは、その表面に、前述した塗布ローラ32Yから液体現像剤を供給することにより、液体現像剤層201Yを形成するものである。
この現像ローラ20Yは、鉄等金属製の内芯の外周部に、導電性を有する弾性体の層を備えたものであり、その直径は約20mmである。また、弾性体の層は、二層構造になっており、その内層として、ゴム硬度がJIS−A約30度で、厚み約5mmのウレタンゴムが、その表層(外層)として、ゴム硬度がJIS−A約85度で、厚み約30μmのウレタンゴムが備えられている。そして、現像ローラ20Yは、前記表層が圧接部となって、弾性変形された状態で塗布ローラ32Yおよび感光体10Yのそれぞれに圧接している。
【0091】
また、現像ローラ20Yは、その中心軸を中心として回転可能であり、当該中心軸は、感光体10Yの回転中心軸よりも下方にある。また、現像ローラ20Yは、感光体10Yの回転方向(図2において時計方向)と逆の方向(図2において反時計方向)に回転する。なお、感光体10Y上に形成された潜像を現像する際には、現像ローラ20Yと感光体10Yとの間に電界が形成される。
【0092】
コロナ放電器(圧縮手段)23Yは、現像ローラ20Yに担持された液体現像剤のトナーを圧縮状態にする機能を備えた装置である。言い換えると、コロナ放電器23Yは、前述した液体現像剤層201Yに対してトナー粒子1と同極性の電界を印加することにより、図3に示すように、液体現像剤層201Y中において、現像ローラ20Yの表面近傍にトナー粒子1を偏在させる機能を備えた装置である。このようにトナー粒子を偏在させることにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、品質の高い鮮明な画像を得ることができる。特に、本発明の液体現像剤は、帯電特性に優れているため、トナー粒子1の帯電量は高いものとなっている。したがって、コロナ放電器23Yから印加される電界を比較的弱くした場合であっても、液体現像剤中のトナー粒子1を確実に圧縮状態にすることができる。すなわち、コロナ放電器23Yにかける電圧を低くすることができ、省電力化を図ることができる。
なお、現像ユニット100Yにおいて、塗布ローラ32Yと現像ローラ20Yとは、異なる動力源(図示せず)によって、別駆動している。そして、塗布ローラ32Yと現像ローラ20Yと回転速度(線速度)比を変えることで、現像ローラ20Y上に供給される液体現像剤の量を調整することができる。
【0093】
また、現像ユニット100Yは、現像ローラ20Yの表面に当接されたゴム製の現像ローラクリーニングブレード21Yと、現像剤回収部22Yとを有している。この現像ローラクリーニングブレード21Yは、前記現像位置で現像が行われた後に、現像ローラ20Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去するための装置である。現像ローラクリーニングブレード21Yにより除去された液体現像剤は、現像剤回収部22Y内に回収される。
【0094】
また、図1、図2に示すように、画像形成装置1000は、液体現像剤を現像部30Y、30M、30C、30Kに補給する液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kを備えている。これらの液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kは、それぞれ、液体現像剤タンク81Y、81M、81C、81Kと、絶縁性液体タンク82Y、82M、82C、82Kと、撹拌装置83Y、83M、83C、83Kとを備えている。
【0095】
各液体現像剤タンク81Y、81M、81C、81Kには、それぞれ各色に対応した高濃度の液体現像剤が収納されている。また、各絶縁性液体タンク82Y、82M、82C、82Kには、それぞれ絶縁性液体が収納されている。さらに、各撹拌装置83Y、83M、83C、83Kには、各液体現像剤タンク81Y、81M、81C、81Kからの所定量の各高濃度液体現像剤と、各絶縁性液体タンク82Y、82M、82C、82Kからの所定量の各絶縁性液体とが供給されるようになっている。
【0096】
そして、各撹拌装置83Y、83M、83C、83Kは、それぞれ、供給された各高濃度液体現像剤および各絶縁性液体をそれぞれ混合撹拌して、各液体現像剤貯留部31Y、31M、31C、31Kで使用する各色に対応した液体現像剤を作製する。各撹拌装置83Y、83M、83C、83Kでそれぞれ作製された各液体現像剤は、それぞれ各液体現像剤貯留部31Y、31M、31C、31Kに供給されるようになっている。
また、図1、図2に示すように、液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kには、それぞれ、現像剤回収部15Y、15M、15C、15Kで回収された各液体現像剤、各現像剤回収部22Y、22M、22C、22Kで回収された各液体現像剤が回収され、再利用される。
【0097】
次に、定着部について説明する。
定着部F40は、前述した現像部、転写部等において形成された未定着のトナー画像F5aを、記録媒体F5上に定着させるものである。
定着部F40は、図4に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、スプリングF9とを有している。
【0098】
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
熱定着ローラF1の内部には、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントは、それぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0099】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5に対して圧力を加えるよう構成されている。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0100】
また、熱定着ローラF1の弾性体F1cの表層にはPFA層が設けられている。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0101】
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体F5が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0102】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体F5の進入がスムーズに行われる記録媒体F5の導入口部が形成でき、安定した記録媒体F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0103】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
【0104】
定着部F40において、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体F5上に形成された未定着のトナー画像F5aが定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0105】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、後述するような摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
また、定着部F40は、記録媒体F5にトナー画像F5aを定着させた後に、熱定着ローラF1の表面に付着(残存)した絶縁性液体を除去する除去ブレード(除去手段)F12を有している。なお、この除去ブレードF12は、絶縁性液体を除去するとともに、定着の際に熱定着ローラF1上に移行したトナー等も同時に除去することができる。
【0106】
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0107】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
熱定着ローラF1により加える熱(定着温度)は、具体的には、80〜160℃であるのが好ましく、100〜150℃であるのがより好ましく、100〜140℃であることがさらに好ましい。
【0108】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような製造方法により製造されたものに限定されない。
【0109】
また、前述した実施形態では、水系乳化液を得、該水系乳化液に電解質を添加することにより合一粒子を得るものとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、合一粒子は、水系液体に、着色剤とモノマーと界面活性剤と重合開始剤とを分散させ、乳化重合により、水系乳化液を調製し、該水系乳化液に電解質を添加して会合させる乳化重合会合法を用いて調製されたものであってもよいし、得られた水系乳化液を噴霧乾燥することにより合一粒子を得るものであってもよい。
また、前述した実施形態では、画像形成装置として、コロナ放電器を有する構成について説明したが、コロナ放電器は無くてもよい。
【実施例】
【0110】
[1]アミン価を有するロジン系樹脂の合成
(樹脂Aの合成)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、中国産ガムロジン(酸価160):300重量部、ステアリン酸:30重量部、およびテレフタル酸:59.4重量部を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融させた。ついで、ペンタエリスリトール:48.4重量部を添加し、攪拌下に260℃まで昇温、エステル化し、酸価が40以下となったらパラトルエンスルホン酸:0.4重量部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応させた、33重量%アマニ油粘度を2.0Pa・sに調整し、0.02MPaで10分間減圧した。こうして得られたロジンエステル樹脂の酸価は13.5、軟化点は130℃、重量平均分子量は5000であった。
【0111】
一方、上記と同様の反応容器内に、キシレン:300.0重量部を仕込み、130〜135℃まで昇温した。これに、グリシジルメタアクリレート:390.0重量部、ブチルメタアクリレート:210.0重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサエート:36.0重量部の混合液を2時間かけて連続的に滴下した後、135℃で1時間重合させた。その後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサエート:3.0重量部をキシレン:10.0重量部に溶解させた混合液を加え、さらに120℃で5時間重合反応を行い反応を終了した。室温まで冷却した後、キシレン:51.0重量部を加えてポリエポキシ化合物を含む反応混合物を得た。この反応混合物の固形分は62.0%(固形分はポリエポキシ化合物で、残りの非固形分はキシレン)、重量平均分子量は4100、そしてエポキシ価は250.0mgKOH/gの特性であった。
【0112】
次に、上記と同様の反応容器内に、キシレン:35.7重量部と、上記のようにして得られたロジンエステル樹脂類:45.1重量部、および、上記のようにして得られたポリエポキシ化合物を含有する反応混合物:15.7重量部を仕込み、120℃まで昇温し反応を行った。酸価が1mgKOH/g以下になった時点で60℃まで冷却し、ジ−n−ブチルアミン:3.5重量部を加え、100℃まで昇温した。この温度で4〜5時間反応を行い、酸価:10mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g、軟化点:135℃、重量平均分子量:15000のロジン変性フェノール樹脂(樹脂A)を得た。
【0113】
(樹脂Bの合成)
ジ−n−ブチルアミンの添加量を1.1重量部としエステル化で内容物の酸価を40〜50にした以外は、上記樹脂Aと同様にして酸価:30mgKOH/g、アミン価:6mgKOH/g、軟化点:138℃、重量平均分子量:16000のロジンエステル類樹脂(樹脂B)を得た。
(樹脂Cの合成)
ジ−n−ブチルアミンの添加量を8.8重量部とした以外は、上記樹脂Aと同様にして酸価:10mgKOH/g、アミン価:50mgKOH/g、軟化点:137℃、重量平均分子量:16000のロジンエステル類樹脂(樹脂C)を得た。
【0114】
(樹脂Dの合成)
攪拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、中国産ガムロジン(酸価160):300重量部を仕込み、窒素気流下で加熱し完全に溶融させた後、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル:164.4重量部を撹拌しながら投入し、140℃にて2−メチルイミダゾール:0.087重量部を添加し、150℃にて5時間反応させることにより、水酸基価:113.0、酸価:1.4mgKOH/g、数平均分子量:950のジオ−ル化合物(I):463重量部を得た。
【0115】
次に、上記と同様の反応容器内に、ジオール化合物(I):463重量部、ε−カプロラクトン:470重量部およびジブチルスズラウレート:0.09重量部を仕込み、窒素気流下に170℃で5時間反応させることにより、ジオール化合物(I)を開始剤とし更にε−カプロラクトンを開環重合させ、水酸基価:55.8mgKOH/g、酸価:0.7mgKOH/g、数平均分子量:2000のジオール化合物(II)を得た。
【0116】
次に、上記と同様の反応容器内に、得られたジオ−ル化合物(II):400重量部、分子量2000のポリ(3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)ジオール:400重量部、イソホロンジイソシアネート:161.8重量部、およびトルエン:240.5重量部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させ遊離イソシアネート含量2.26%のプレポリマー溶液を製造した。次いで、メチルエチルケトン:1342.5重量部を加えて希釈後、イソホロンジアミン:51.5重量部、ジエタノールアミン:4.2重量部、イソプロピルアルコール:791.5重量部からなる混合物を添加し、50℃で3時間反応させ、アミン価を有するウレタン変性ロジン系樹脂(樹脂D)を30wt%含む樹脂液を得た。得られたウレタン変性ロジン系樹脂は、酸価:10mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g、軟化点:170℃、重量平均分子量:74000であった。
【0117】
(樹脂Eの合成)
上記と同様にして得られたジオ−ル化合物(II):400重量部、イソホロンジイソシアネ−ト:80.9重量部、およびトルエン:120.2重量部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させ遊離イソシアネート含量2.26%のプレポリマー溶液を製造した。次いで、トルエン:275重量部およびメチルエチルケトン:395.2重量部を加えて希釈後、イソホロンジアミン:19.8重量部、2−ヒドキシエチルエチレンジアミン:2.8重量部、ジ−n−ブチルアミン:4.6重量部、イソプロピルアルコール:395.2重量部からなる混合物を添加し、50℃で3時間反応させ、ウレタン変性ロジン系樹脂を30wt%含む樹脂液を得た。得られたウレタン変性ロジン系樹脂は、酸価:10mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g、軟化点:145℃、重量平均分子量:32000であった。
【0118】
[2]液体現像剤の製造
以下のようにして、液体現像剤を製造した。
(実施例1)
まず、トナー粒子の製造を行った。なお、温度が記載されていない工程については、室温(25℃)で行った。
<分散液調整工程>
(着色剤マスター溶液の調製)
まず、樹脂材料として、ポリエステル樹脂(酸価:10mgKOH/g、ガラス転移点(Tg):55℃、軟化点:107℃):60重量部を用意した。
【0119】
次に、上記樹脂材料と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)との混合物(質量比50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の着色剤マスターバッチとした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
【0120】
(樹脂液調製処理)
上記着色剤マスターバッチ:97.5重量部にメチルエチルケトン:175重量部、前記ポリエステル樹脂:172.3重量部、上記樹脂A:55.3重量部を高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)で混合し、乳化剤としてのネオゲンSC−F(第一工業製薬社製):1.38重量部を加えて樹脂液を作製した。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0121】
(分散質形成処理)
次いで容器内の樹脂液に1規定アンモニア水:72.8重量部を加えて、高速分散機(プライミクス社製、T.K.ロボミクス/T.K.ホモディスパー2.5型翼)により、攪拌翼の翼先端速度を7.5m/sとして十分に攪拌し、フラスコ内の溶液の温度を25℃に調整し、その後攪拌翼の翼先端速度を14.7m/sとして攪拌を行いつつ、400重量部の脱イオン水を滴下して転相乳化を起こした。攪拌を継続しながら、上記樹脂液に対して、さらに脱イオン水:100重量部を加えた。これにより、樹脂材料を含む分散質が分散した水系分散液を得た。
【0122】
<合一工程>
次に、水系分散液をマックスブレンド翼を有した攪拌容器に移し、攪拌翼の翼先端速度を1.0m/sとして攪拌を行いながら水系分散液の温度を25℃とした。
次に、同様の温度、攪拌条件を保ちつつ、5.0%の硫酸ナトリウム水溶液:200重量部を滴下し、分散質の合一を行い、合一粒子の形成を行った。滴下後、合一粒子のトナー粒子についての50%体積粒径Dv(50)[μm]が2.5μmに成長するまで攪拌を続けた。合一粒子のDv(50)が2.5μmになったら、脱イオン水:200重量部を添加し、合一を終了した。
【0123】
<脱溶剤工程>
得られた合一粒子分散液に対して、減圧下で、固形分含有量が23wt%となるまで有機溶剤を留去を行い、樹脂微粒子のスラリーを得た。
<洗浄工程>
次に、スラリーに対し、固液分離を行い、さらに水中への再分散(リスラリー)、固液分離を繰り返し行うことによる洗浄処理を施した。その後、吸引ろ過法により、着色樹脂微粒子のウェットケーキ(樹脂微粒子ケーキ)を得た。なお、ウェットケーキの含水率は35wt%であった。
<乾燥工程>
その後、真空乾燥機を用いて、得られたウェットケーキを乾燥することにより、トナー粒子を得た。
【0124】
<分散工程>
上記の方法で得られたトナー粒子:37.5重量部、分散剤としてのDisperbyk−116(ビックケミー社製、アミン価:65mgKOH/g):1.88重量部、菜種油(日清オイリオ社製、商品名「ハイオレイック菜種油」):150重量部、帯電制御剤としてのステアリン酸アルミニウム(日本油脂製):0.5重量部をセラミック製ポット(内容積600ml)に入れ、さらにジルコニアボール(ボール直径:1mm)を体積充填率85%になるようにセラミック製ポットに入れ、卓上ポットミルにて回転速度230rpmで24時間分散を行った。これにより、液体現像剤が得られた。
【0125】
得られた液体現像剤中における、トナー粒子のDv(50)は、1.85μmであった。なお、得られたトナー粒子の50%体積粒径Dv(50)[μm]は、Mastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。また、以下に説明する各実施例、各比較例で得られた粒子についても同様にして、粒径を求めた。
【0126】
また、得られた液体現像剤の25℃における粘度は、54mPa・sであった。
また、シアン系顔料の代わりに、マゼンダ系顔料:ピグメントレッド238(山陽色素社製)、イエロー系顔料:ピグメントイエロー180(クラリアント社製)、ブラック系顔料:カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)に、それぞれ変更した以外は、上記と同様にして、マゼンダ系液体現像剤、イエロー系液体現像剤、ブラック系液体現像剤を製造した。
【0127】
(実施例2)
ロジン系樹脂として、樹脂Aの代わりに樹脂Bを用いた以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
(実施例3)
ロジン系樹脂として、樹脂Aの代わりに樹脂Cを用いた以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
【0128】
(実施例4)
ロジン系樹脂として、樹脂Aの代わりに樹脂Dを用いた以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
(実施例5)
ロジン系樹脂として、樹脂Aの代わりに樹脂Eを用いた以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
【0129】
(実施例6)
アミン価を有する分散剤として、EFKA−4080(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、アミン価:4mgKOH/g)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
(実施例7)
アミン価を有する分散剤として、Agrisperse 712(ニューセンチュリーコーティングス社製、アミン価:100mgKOH/g)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
【0130】
(実施例8)
ポリエステル樹脂の代わりに、スチレンとアクリル酸ブチルエステルとを4:1の割合で共重合させたスチレン−アクリル酸エステル共重合体(酸価:6mgKOH/g、ガラス転移点:61.6℃、軟化点:116℃)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
【0131】
(実施例9、10)
ポリエステル樹脂とロジン系樹脂との配合比を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
(実施例11、12)
アミン価を有する分散剤の含有量を、表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
(実施例13)
アミン価を有する分散剤を添加しなかった以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
【0132】
(比較例1)
アミン価を有していないロジン系樹脂(マレイン酸変性ロジン、荒川化学工業社製、商品名「マルキードNo.1」、酸価:25mgKOH/g、軟化点:120〜130、重量平均分子量:3100)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
(比較例2)
アミン価を有するロジン系樹脂を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして各色に対応する液体現像剤を製造した。
【0133】
以上の各実施例および比較例について、液体現像剤の組成、物性、分散剤の物性、含有量等を表1に示した。なお、表中、ポリエステル樹脂をPESと、スチレン−アクリル酸エステル共重合体をST−ACと示した。また、表中、Disperbyk−116をD116と、EFKA−4080をE4080と、Agrisperse 712をA712と示した。
【0134】
【表1】

【0135】
[3]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、以下のような評価を行った。
[3.1]現像効率
図1、図2に示すような画像形成装置を用いて、画像形成装置の現像ローラ上に前記各実施例および各比較例で得られた液体現像剤による液体現像剤層を形成した。次に、現像ローラの表面電位を300Vとし、感光体の表面電位を500Vで均一に帯電させ、感光体に露光を行い、感光体表面の帯電を減衰させ、表面電位を50Vとした。液体現像剤層が感光体と現像ローラとの間を通過した後の、現像ローラ上のトナー粒子と、感光体上のトナー粒子とをテープで採取した。採取に用いた各テープを記録紙上に貼り付け、それぞれのトナー粒子の濃度を測定した。測定後、感光体上で採取されたトナー粒子の濃度を、感光体上で採取されたトナー粒子の濃度と現像ローラ上で採取されたトナー粒子の濃度との総和で除した数値に100を掛けた値を現像効率として求め、以下の4段階の基準に従い評価した。
A :現像効率が95%以上であり、現像効率に特に優れる。
B :現像効率が90%以上、95%未満であり、現像効率に優れる。
C :現像効率が80%以上、90%未満であり、実用上問題のない。
D :現像効率が80%よりも小さく、現像効率に劣る。
【0136】
[3.2]転写効率
図1、図2に示すような画像形成装置を用いて、画像形成装置の感光体上に前記各実施例および各比較例で得られた液体現像剤による液体現像剤層を形成した。次に、液体現像剤層が感光体と中間転写部との間を通過した後の、感光体上のトナー粒子と、中間転写部上のトナー粒子とをテープで採取した。採取に用いた各テープを記録紙上に貼り付け、それぞれのトナー粒子の濃度を測定した。測定後、中間転写部上で採取されたトナー粒子の濃度を、感光体上で採取されたトナー粒子の濃度と中間転写部上で採取されたトナー粒子の濃度との総和で除した数値に100を掛けた値を転写効率として求め、以下の4段階の基準に従い評価した。
A :転写効率が95%以上であり、転写効率に特に優れる。
B :転写効率が90%以上、95%未満であり、転写効率に優れる。
C :転写効率が80%以上、90%未満であり、実用上問題のない。
D :転写効率が80%よりも小さく、転写効率に劣る。
【0137】
[3.3]正帯電の帯電特性
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤について、マイクロチック・ニチオン社製の「顕微鏡式レーザーゼータ電位計」ZC−2000を用いて電位差を測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
測定は、液体現像剤を希釈溶媒で希釈して、□10mmの透明セルに入れ、電極間9mmで300Vの電圧をかけると同時に顕微鏡でセル内の粒子の移動速度を観察することで、移動速度を算出して、その値からゼータ電位を求めることにより行った。
【0138】
A :電位差が+100mV以上(非常に良い)。
B :電位差が+85mV以上、+100mV未満(良い)。
C :電位差が+70mV以上、+85mV未満(普通)。
D :電位差が+50mV以上、+70mV未満(やや悪い)。
E :電位差が+50mV未満(非常に悪い)。
【0139】
[3.4]分散安定性試験−1
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤10mLを試験管(口径12mm、長さ120mm)に入れ、1週間静置後の沈降した深さを測定し、以下の4段階の基準に従って評価した。
A :沈降した深さが0mm。
B :沈降した深さが0mmよりも大きく、2mm以下。
C :沈降した深さが2mmよりも大きく、5mm以下。
D :沈降した深さが5mmよりも大きい。
【0140】
[3.5]分散安定性試験−2
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤45.5mLを遠沈管に入れ、回転半径5cm、回転数500、1000、2000、4000、5000rpm、3分間の条件で遠心分離機(HSIANGTAI製)にかけた後、各回転数における沈降した深さを測定した。
【0141】
遠心加速度rω(rω=1118×回転半径(cm)×1分当たりの回転数(rpm)×10−8×g(重力加速度))を横軸にとり、沈降した深さを縦軸にとって、上記測定結果に基づいてプロットした。各プロットに基づいて、1次近似により傾きkを求め、下記基準に従い評価した。なお、kの値が低いほど、分散安定性が高いと言える。
A:0≦k<0.004
B:0.004≦k<0.008
C:0.008≦k<0.012
D:k≧0.012
【0142】
[3.6]定着強度
図1、図2に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成した。その後、図4に示すような定着装置を用いて、熱定着ローラの設定温度を100℃として、熱定着を行った。
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.2kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0143】
A :画像濃度残存率が95%以上(非常に良い)。
B :画像濃度残存率が90%以上95%未満(良い)。
C :画像濃度残存率が80%以上90%未満(普通)。
D :画像濃度残存率が70%以上80%未満(やや悪い)。
E :画像濃度残存率が70%未満(非常に悪い)。
これらの結果を表2に示す。
【0144】
【表2】

【0145】
表2から明らかなように、本発明の液体現像剤は、帯電特性(正帯電の帯電特性)および、トナー粒子の分散安定性に優れていた。また、本発明の液体現像剤は、現像効率、転写効率、定着強度にも優れていた。これに対し、比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図である。
【図3】現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図である。
【図4】図1に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0147】
1…トナー粒子 1000…画像形成装置 10Y、10M、10C、10K…感光体 11Y…帯電ローラ 12Y…露光ユニット 13M、13Y…感光体スクイーズローラ 14Y、14M…クリーニングブレード 15M、15Y…現像剤回収部 16Y…除電ユニット 17Y…感光体クリーニングブレード 18Y…現像剤回収部 20Y、20M、20C、20K…現像ローラ 201Y…液体現像剤層 21Y…現像ローラクリーニングブレード 22Y…現像剤回収部 23Y…コロナ放電器(圧縮手段) 30Y、30M、30C、30K…現像部 31Y…液体現像剤貯留部 32Y…塗布ローラ 33Y…規制ブレード 34Y…現像剤撹拌ローラ 40…中間転写部 41…ベルト駆動ローラ 42、43…従動ローラ 44…テンションローラ 46…中間転写部クリーニングブレード 47…現像剤回収部 48…非接触式バイアス印加部材 51Y、51M、51C、51K…1次転写バックアップローラ 52Y、52M、52C、52K…中間転写部スクイーズ装置 53Y…中間転写部スクイーズローラ 55Y…中間転写部スクイーズクリーニングブレード 56Y…現像剤回収部 60…2次転写ユニット 61…上流側2次転写ローラ 62…下流側2次転写ローラ 63、65…2次転写ローラクリーニングブレード 64、66…現像剤回収部 80Y、80M、80C、80K…液体現像剤補給部 81Y、81M、81C、81K…液体現像剤タンク 82Y、82M、82C、82K…絶縁性液体タンク 83Y、83M、83C、83K…撹拌装置 100Y…現像ユニット 101Y…感光体スクイーズ装置 F40…定着部(定着装置) F1…熱定着ローラ(加熱ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ローラ基材 F1c…弾性体 F12…除去ブレード F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ローラ基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…記録媒体 F5a…トナー画像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体と、主として樹脂材料で構成されたトナー粒子とを含み、
前記樹脂材料は、アミン価を有するロジン系樹脂を含むものであることを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記アミン価を有するロジン系樹脂のアミン価は、1〜100mgKOH/gである請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記アミン価を有するロジン系樹脂のアミン価をA[mgKOH/g]、前記アミン価を有するロジン系樹脂の酸価をA[mgKOH/g]としたとき、0.1≦A/A≦40の関係を満足する請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記樹脂材料中における、前記アミン価を有するロジン系樹脂の含有率は、1〜50wt%である請求項1ないし3のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記アミン価を有するロジン系樹脂の軟化点は、80〜190℃である請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
前記アミン価を有するロジン系樹脂の重量平均分子量は、500〜100000である請求項1ないし5のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項7】
アミン価が1〜100mgKOH/gである分散剤を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項8】
前記分散剤の含有量は、前記トナー粒子100重量部に対して0.2〜10重量部である請求項1ないし7のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項9】
色の異なる複数の液体現像剤を用いて、複数の前記液体現像剤に対応した単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を記録媒体に転写し、前記記録媒体上に未定着カラー画像を形成する2次転写部と、
前記未定着カラー画像を前記記録媒体上に定着する定着部と、を有し、
前記液体現像剤が、絶縁性液体と、トナー粒子とを含み、
前記トナー粒子は、アミン価を有するロジン系樹脂を含むものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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