説明

液体現像剤

【課題】記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、環境に優しい液体現像剤を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、前記絶縁性液体が、オレイン酸成分と、飽和脂肪酸成分とを含むものであることを特徴とする。絶縁性液体中におけるオレイン酸成分の含有率をX[mol%]、絶縁性液体中における飽和脂肪酸成分の含有率をY[mol%]としたとき、0.5≦X/Y≦50の関係を満足するのが好ましい。絶縁性液体は、主として、グリセリンと、オレイン酸成分および飽和脂肪酸成分とのエステルで構成されたものであるのが好ましい。また、液体現像剤は、酸化防止剤を含むものであるのが好ましい。酸化防止剤の含有量は、絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量部であるのが好ましい。また、酸化防止剤の熱分解温度は、200℃以下であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーによる方法と、トナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤(例えば、特許文献1参照)を用いる方法とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、粉体による人体等への悪影響が懸念されるほか、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、液体現像剤中におけるトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0004】
しかしながら、従来の液体現像剤で用いられてきた絶縁性液体は、石油系の炭化水素を主とするものであるため、例えば、画像形成装置等の外に出た場合に、環境に悪影響を及ぼすことが懸念されていた。
また、通常、液体現像剤では、定着の際にトナー粒子の表面に絶縁性液体が付着している。従来の液体現像剤では、このトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体が定着強度を低下させるという問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−152256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、保存性、長期安定性に優れるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、環境に優しい液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、
前記絶縁性液体が、オレイン酸成分と、飽和脂肪酸成分とを含むものであることを特徴とする。
これにより、保存性、長期安定性に優れるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体中における前記オレイン酸成分の含有率をX[mol%]、前記絶縁性液体中における前記飽和脂肪酸成分の含有率をY[mol%]としたとき、0.5≦X/Y≦50の関係を満足することが好ましい。
これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性、および、記録媒体へのトナー粒子の定着特性のいずれをも、特に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体は、主として、グリセリンと、前記オレイン酸成分および前記飽和脂肪酸成分とのエステルで構成されたものであることが好ましい。
これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性、および、記録媒体へのトナー粒子の定着特性のいずれをも、特に優れたものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体中における前記エステルの含有率は、90wt%以上であることが好ましい。
これにより、環境への負荷を特に低いものとしつつ、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を特に優れたものとすることができる。
【0010】
本発明の液体現像剤では、液体現像剤は、酸化防止剤を含むものであることが好ましい。
これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性を特に優れたものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、前記酸化防止剤の含有量は、前記絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量部であることが好ましい。
これにより、液体現像剤の保存性、長期安定性を特に優れたものとすることができる。
【0011】
本発明の液体現像剤では、前記酸化防止剤の熱分解温度は、定着時における定着温度以下であることが好ましい。
液体現像剤の保存性、長期安定性を特に優れたものとすることができるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着性を特に優れたものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、前記酸化防止剤の熱分解温度は、200℃以下であることが好ましい。
液体現像剤の保存性、長期安定性を優れたものとすることができるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着性をさらに優れたものとすることができる。
【0012】
本発明の液体現像剤は、定着時における前記オレイン酸成分の酸化重合反応を促進する酸化重合促進剤を含むものであることが好ましい。
これにより、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を特に優れたものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、前記酸化重合促進剤は、脂肪酸金属塩であることが好ましい。
これにより、保存時における液体現像剤の安定性をより確実に保持しつつ、定着の際に効果的にオレイン酸成分の酸化重合を効率良く進行させることができる。
【0013】
本発明の液体現像剤では、前記酸化重合促進剤の含有量は、前記絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量部であることが好ましい。
これにより、液体現像剤の保存時における酸化重合反応をより確実に防止しつつ、定着時においてオレイン酸成分の酸化重合反応をより効率良く進行させることができる。
本発明の液体現像剤では、前記酸化重合促進剤は、脂肪酸金属塩であることが好ましい。
これにより、保存時においては酸化重合反応が生じるのをより確実に防止しつつ、定着時等の加熱時において酸化重合反応をより効率良く進行させることができる。
【0014】
本発明の液体現像剤では、前記酸化重合促進剤は、カプセル化された状態で前記絶縁性液体中に含まれることが好ましい。
これにより、液体現像剤の保存時における酸化重合反応をより確実に防止するとともに、定着時においてカプセルが定着時の圧力等によって潰れ、オレイン酸成分の酸化重合反応を確実に進行させることができる。
【0015】
本発明の液体現像剤では、前記カプセル化は、前記酸化重合促進剤を多孔質体に吸着させた後、該多孔質体にポリエーテルで被覆することにより行ったものであることが好ましい。
これにより、液体現像剤中での酸化重合促進剤の分散性をより高いものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体のヨウ素価が、50〜200であることが好ましい。
これにより、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を特に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《液体現像剤》
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散したものである。
<トナー粒子>
まず、トナー粒子について説明する。
【0017】
[トナー粒子の構成材料]
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子(トナー)は、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)と着色剤とを含むものである。
1.樹脂材料
液体現像剤を構成するトナーは、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
【0018】
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、ポリエステル樹脂を用いた場合、液体現像剤中でのトナー粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。これは、ポリエステル樹脂と、後に詳述する絶縁性液体(特に、絶縁性液体が、グリセリンとオレイン酸成分および飽和脂肪酸成分とのエステルで構成されるものである場合)と化学構造の類似性によるものであると考えられる。
【0019】
樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましく、60〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
【0020】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいる。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
3.その他の成分
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、混練物の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0023】
[トナー粒子の形状]
上記のような材料で構成されたトナー粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜4μmであるのがより好ましく、0.5〜3μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での特性のばらつきを特に小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を特に高いものとしつつ、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での粒径の標準偏差は、1.0μm以下であるのが好ましく、0.1〜1.0μmであるのがより好ましく、0.1〜0.8μmであるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
【0024】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子についての下記式(I)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.85以上であるのが好ましく、0.90〜0.99であるのがより好ましく、0.92〜0.99であるのがさらに好ましい。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0025】
これにより、トナー粒子の粒径を十分に小さいものとしつつ、トナー粒子の転写効率、機械的強度を特に優れたものとすることができる。
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での平均円形度の標準偏差は、0.15以下であるのが好ましく、0.001〜0.10であるのがより好ましく、0.001〜0.05であるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
【0026】
<絶縁性液体>
次に、絶縁性液体について説明する。
本発明において、絶縁性液体は、オレイン酸成分と、飽和脂肪酸成分とを含むものである。
ところで、従来の液体現像剤では、使用時等における画像形成装置外への絶縁性液体の漏出(例えば、定着時における絶縁性液体の揮発等)や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境に対する影響が懸念されていた。また、従来の液体現像剤ではトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体の存在により、トナー粒子の記録媒体への定着性が阻害される(定着強度が低下する)という問題点があった。
これに対して、本発明で用いられるオレイン酸成分、飽和脂肪酸成分(およびこれらの成分を含む化合物)は、いずれも、環境に優しい成分である。したがって、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0027】
また、オレイン酸成分は、トナー粒子の記録媒体への定着性向上に寄与することができる成分である。より詳しく説明すると、オレイン酸成分は、酸化されることにより(定着時における定着温度で酸化されることにより)、それ自体が硬化し、トナー粒子の定着性を向上させる機能を有する成分である。これにより、本発明によれば、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を優れたものとすることができる。また、オレイン酸成分が硬化することにより、定着したトナー画像に対して、水性ボールペンでの追記を容易かつ確実に行うことができる。
このようなオレイン酸成分は、例えば、紅花油、米油、米ぬか油、菜種油、オリーブ油、カノーラ油等の植物由来の油脂、牛油等の各種動物由来の油脂等の天然由来の油脂から効率良く得ることができる。中でも、オリーブ油からは、効率良く高収率でオレイン酸成分を得ることができる。
【0028】
また、飽和脂肪酸成分は、液体現像剤の化学的安定性や電気絶縁性及び粘度を高く保つという機能を有する成分である。したがって、絶縁性液体が、飽和脂肪酸成分を所定の割合で含むことにより、液体現像剤の化学的変化を防止し、電気抵抗を高く維持でき、さらに適度の粘度により液体現像剤の搬送性が良好となる。
このような飽和脂肪酸成分を構成する飽和脂肪酸としては、例えば、酪酸(C4)、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミスチリン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような飽和脂肪酸の中でも、分子内の炭素数が、6〜22のものであるのが好ましく、8〜20のものであるのがより好ましく、10〜18のものであるのがさらに好ましい。このような飽和脂肪酸で構成された飽和脂肪酸成分を含むことにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして発揮される。
【0029】
上記のような飽和脂肪酸成分は、例えば、パーム油(特に、パーム核油)、ココナッツ油、ヤシ油等の植物由来の油脂、各種動物由来の油脂(例えば、バター等)等の天然由来の油脂から効率良く得ることができる。
前述したように、本発明においては、絶縁性液体中に、オレイン酸成分と、飽和脂肪酸成分とを含む点に特徴を有し、これにより、優れた効果が得られる。これに対し、絶縁性液体中に、オレイン酸成分、飽和脂肪酸成分のうちのいずれか一方のみしか含まれていない場合には、本発明の効果は得られない。すなわち、絶縁性液体中にオレイン酸成分が含まれない場合には、記録媒体に対するトナー粒子の定着特性が劣ったものとなる。一方、絶縁性液体中に飽和脂肪酸成分が含まれない場合には、液体現像剤中におけるオレイン酸成分の安定性が低下し、オレイン酸成分の硬化が進行してしまう。言い換えると、液体現像剤の保存性、長期安定性が著しく低いものとなってしまう。また、絶縁性液体中に飽和脂肪酸成分が含まれない場合には、液体現像剤中におけるトナー粒子の分散性が低下する。また、電気抵抗が低下し、帯電性が不安定になるとともに感光体中の静電潜像を乱す場合がある。
【0030】
絶縁性液体における、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分との比率は、特に限定されないが、以下のような関係を満足するのが好ましい。すなわち、絶縁性液体中におけるオレイン酸成分の含有率をX[mol%]、絶縁性液体中における前記飽和脂肪酸成分の含有率をY[mol%]としたとき、0.5≦X/Y≦50の関係を満足するのが好ましく、1≦X/Y≦40の関係を満足するのがより好ましく、2≦X/Y≦30の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、液体現像剤の保存性、長期安定性、および、記録媒体へのトナー粒子の定着特性のいずれをも、特に優れたものとすることができる。また、上記のような関係を満足することにより、容易かつ確実に、絶縁性液体のヨウ素価を後述するような範囲内の値とすることができる。
【0031】
また、本発明において、絶縁性液体は、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分とを含むものであればよく、絶縁性液体中において、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分とは、いかなる形態をとっていてもよい。例えば、絶縁性液体中において、オレイン酸成分、飽和脂肪酸成分は、それぞれ独立して、オレイン酸(または、オレイン酸塩)、飽和脂肪酸(また、飽和脂肪酸塩)として存在するものであってもよいし、他の成分と結合して化合物を形成していてもよい。絶縁性液体中において、オレイン酸成分、飽和脂肪酸成分が、他の成分と結合して化合物を形成していると、液体現像剤の保存性、長期安定性、および、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を、特に優れたものとすることができる。このような化合物としては、例えば、オレイン酸成分、飽和脂肪酸成分とアルコール成分(多価アルコール成分)とのエステル、オレイン酸成分、飽和脂肪酸成分とアミン成分(多価アミン成分)とのアミド等が挙げられるが、中でも、エステルが好ましく、グリセリンと、オレイン酸成分および飽和脂肪酸成分とのエステル(以下、「グリセリド」とも言う)がより好ましい。絶縁性液体中において、上記のようなエステルが形成されていることにより、液体現像剤の保存性、長期安定性、および、記録媒体へのトナー粒子の定着特性のいずれをも、特に優れたものとすることができる。
【0032】
絶縁性液体が、上記のようなエステル(グリセリド)を含むものである場合、絶縁性液体中における前記エステルの含有率は、90wt%以上であるのが好ましく、95wt%以上であるのがより好ましく、97wt%以上であるのがさらに好ましい。これにより、環境への負荷を特に低いものとしつつ、記録媒体へのトナー粒子の定着特性を特に優れたものとすることができる。
【0033】
また、絶縁性液体は、上述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、パルミトレイン酸に代表される一価不飽和脂肪酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等に代表される多価不飽和脂肪酸等の不飽和脂肪酸やこれらの誘導体等が挙げられる。
【0034】
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、オレイン酸成分の酸化を防止・抑制する機能を有する酸化防止剤が含まれていてもよい。これにより、液体現像剤中におけるオレイン酸成分の不本意な酸化を防止することができる。その結果、液体現像剤(絶縁性液体)の経時的な劣化等を防止することができ、長期間にわたって、トナー粒子の分散性、記録媒体に対する定着性等を、特に優れたものとすることができる。すなわち、液体現像剤の長期安定性(保存安定性)を特に優れたものとすることができる。
【0035】
上述したような酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、d−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、酢酸−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、α−トコフェロール等のビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩類、アスコルビン酸ステアリン酸エステル等のビタミンC、緑茶抽出物、生コーヒー抽出物、セサモール、セサミノール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
上述した中でも、ビタミンEを用いた場合、以下のような効果が得られる。すなわち、ビタミンEは、環境に優しい成分であるとともに、それ自身が酸化されて生じる物質の液体現像剤へ与える影響が小さい成分であるから、液体現像剤をより環境に優しいものとすることができる。また、ビタミンEは、前述したようなオレイン酸成分および飽和脂肪酸成分を含む液体(特に、グリセリド)への分散性が高いことから、酸化防止剤として好適に用いることができる。また、ビタミンEと前述したようなグリセリドとを併用することにより、絶縁性液体とトナー粒子との親和性をさらに向上させることができる。その結果、液体現像剤の保存性、記録媒体に対するトナー粒子の定着性等が特に優れたものとなる。
【0037】
また、上述した中でも、ビタミンCを用いた場合、以下のような効果が得られる。すなわち、前述したビタミンEと同様に、ビタミンCは、環境に優しい成分であるとともに、それ自身が酸化されて生じる物質の液体現像剤へ与える影響が小さい成分であるから、液体現像剤をより環境に優しいものとすることができる。また、ビタミンCは、熱分解温度が比較的低いため、液体現像剤の保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、酸化防止剤としての機能を十分に発揮させることができるとともに、定着時においては、酸化防止剤としての機能を低下させ、オレイン酸成分の酸化重合反応を促進させることができる。
【0038】
酸化防止剤の熱分解温度は、定着時における定着温度以下であるのが好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等において、絶縁性液体の劣化を効果的に防止するとともに、定着時においては、トナー粒子の表面に付着した絶縁性液体中の酸化防止剤を熱分解させ、オレイン酸成分を効果的に硬化(酸化重合反応)させることができ、記録媒体に対するトナー粒子の定着性を十分に優れたものとすることができる。
酸化防止剤の熱分解温度は、具体的には、200℃以下であるのが好ましく、180℃以下であるのがより好ましい。これにより、酸化防止剤としての機能を十分に保持しつつ、トナー粒子の定着強度をより効果的に向上させることができる。
【0039】
絶縁性液体中における前記酸化防止剤の含有量は、絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量部であるのが好ましく、0.1〜7重量部であるのがより好ましく、1〜7重量部であるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等におけるオレイン酸成分の酸化による劣化をより確実に防止しつつ、必要時(定着時)においてはオレイン酸成分の硬化(酸化重合反応)を効率良く進行させることができる。
【0040】
また、液体現像剤中には、上述したオレイン酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する酸化重合促進剤(硬化促進剤)が含まれていてもよい。これにより、必要時(定着時)において、オレイン酸成分を効果的に酸化重合(硬化)させることができる。その結果、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
液体現像剤中に酸化重合促進剤が含まれる場合、当該酸化重合促進剤は、特に限定されないが、保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、実質的に、オレイン酸成分の酸化重合反応に寄与せず、必要時(定着時)においてオレイン酸成分の酸化重合(硬化)反応に寄与するものであるのが好ましい。これにより、液体現像剤の保存性(長期安定性)を優れたものとしつつ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0041】
このような酸化重合促進剤としては、例えば、加熱条件下でオレイン酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する機能を有し、室温付近では実質的にオレイン酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する機能を有さない物質、すなわち、オレイン酸成分の酸化重合反応(硬化反応)における活性化エネルギーが比較的高い物質を用いることができる。
このような物質(酸化重合促進剤)としては、例えば、各種の脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような物質(酸化重合促進剤)を用いることにより、保存時等における液体現像剤の安定性を保持しつつ、定着の際に効果的にオレイン酸成分の酸化重合を進行させることができる。特に、脂肪酸金属塩は、定着時に酸素を供給することにより、オレイン酸成分の酸化重合反応を促進することができるため、定着時等の加熱時において酸化重合反応を効果的に促進することができる。したがって、保存時等においては酸化重合反応が生じるのをより確実に防止しつつ、定着時等において酸化重合反応をより効果的に促進することができる。また、脂肪酸金属塩は、前述したようなオレイン酸成分および飽和脂肪酸成分を含む液体(特に、グリセリド)への分散性が高いから、絶縁性液体中において均一に分散させることができ、その結果、定着時において、酸化重合反応を全体的に効率良く進行させることができる。
【0042】
このような脂肪酸金属塩としては、例えば、樹脂酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩等)、オクチル酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩、カルシウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、亜鉛塩、カルシウム塩等)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、酸化重合促進剤は、カプセル化された状態で、絶縁性液体中に含まれるものであってもよい。これにより、上記と同様に、酸化重合促進剤を、保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、実質的に、オレイン酸成分の酸化重合反応に寄与せず、必要時においてオレイン酸成分の酸化重合(硬化)反応に寄与するものとすることができる。すなわち、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応をより確実に防止するとともに、定着時においては、カプセルが定着時の圧力等によって潰れることにより、酸化重合促進剤とオレイン酸成分とが接触し、オレイン酸成分の酸化重合反応を確実に進行させることができる。また、このような構成であると、酸化重合促進剤の材料の選択の幅が広がる。言い換えると、反応性の高い酸化重合促進剤(比較的低温でオレイン酸成分の酸化重合反応に寄与する酸化重合促進剤)であっても好適に用いることができ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0044】
絶縁性液体中における酸化重合促進剤の含有量は、絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量であるのが好ましく、0.05〜7重量部であるのがより好ましく、0.1〜5重量部であるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応を十分に防止しつつ、定着時においてオレイン酸成分の酸化重合反応をより確実に進行させることができる。
【0045】
上述したような絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は、1×10Ωcm以上であるのが好ましく、1×1011Ωcm以上であるのがより好ましく、1×1013Ωcm以上であるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
また、絶縁性液体のヨウ素価は、特に限定されないが、50〜200であるのが好ましく、60〜190であるのがより好ましい。これにより、絶縁性液体の化学的な劣化を十分に防止しつつ、酸化重合反応を効率良く進行させることができ、トナー粒子を記録媒体に定着した際の定着強度をより向上させることができる。また、トナー材料との親和性をより高いものとすることができ、その結果、液体現像剤の保存性をより高いものとすることができる。
【0046】
《液体現像剤の製造方法》
次に本発明の液体現像剤の製造方法の一例について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、水系乳化液の調製に用いる混練物を製造するための混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図、図2は、本発明の液体現像剤の製造に用いられる乾燥微粒子製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図、図3は、図2に示す乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。以下、図1中、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
【0047】
本発明の液体現像剤は、いかなる方法を用いて製造されたものであってもよいが、本実施形態に係る液体現像剤の製造方法は、分散媒中に前述したようなトナー材料で構成された分散質が分散した分散液を得る分散液調製工程と、分散媒を除去して、乾燥微粒子を得る分散媒除去工程と、乾燥微粒子を絶縁性液体中に分散させる分散工程とを有する。
本実施形態では、分散液として、水系液体で構成された水系分散媒に分散質が分散した水系分散液を用いた場合について説明する。水系分散液を用いることにより、環境に優しい方法で液体現像剤を提供することができる。
【0048】
水系分散液は、いかなる方法で調製されたものであってもよいが、本実施形態では、着色剤と樹脂材料とを含む混練物を用いて調製したものを用いる。
なお、混練物の構成材料(成分)としては、前述したようなトナーを構成する材料の他に、例えば、無機溶媒、有機溶媒等の溶媒として用いられるような材料を用いてもよい。これにより、例えば、混練の効率を向上させることができ、各成分がより均一に混ざり合った混練物を容易に得ることができる。
【0049】
<混練物>
次に、上記のようなトナー材料を含む原料K5を混練して、混練物K7を得る方法の一例について説明する。
混練物K7は、例えば、図1に示すような装置を用いて製造することができる。
[混練工程]
混練に供される原料K5は、前述したようなトナー材料を含むものである。特に、原料K5が着色剤を含むことにより、本工程で原料K5中に含まれる空気(特に着色剤が抱き込んだ空気)を効率よく除去することができ、トナー粒子の内部に気泡が混入(残存)するのを効果的に防止することができる。混練に供される原料K5は、これらの各成分が予め混合されたものであるのが好ましい。
【0050】
本実施形態では、混練機として、2軸混練押出機を用いる構成について説明する。
混練機K1は、原料K5を搬送しつつ混練するプロセス部K2と、混練された原料(混練物K7)を所定の断面形状に形成して押し出すヘッド部K3と、プロセス部K2内に原料K5を供給するフィーダーK4とを有している。
プロセス部K2は、バレルK21と、バレルK21内に挿入されたスクリューK22、スクリューK23と、バレルK21の先端にヘッド部K3を固定するための固定部材K24とを有している。
プロセス部K2では、スクリューK22、スクリューK23が、回転することにより、フィーダーK4から供給された原料K5に剪断力が加えられ、均一な混練物K7が得られる。
【0051】
プロセス部K2の全長は、50〜300cmであるのが好ましく、100〜250cmであるのがより好ましい。プロセス部K2の全長が前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、プロセス部K2の全長が前記上限値を超えると、プロセス部K2内の温度、スクリューK22、スクリューK23の回転数等によっては、熱による原料K5の変性が起こり易くなり、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0052】
また、混練時の原料温度は、原料K5の組成等により異なるが、80〜260℃であるのが好ましく、90〜230℃であるのがより好ましい。なお、プロセス部K2内での原料温度は、均一であっても、部位により異なるものであってもよい。例えば、プロセス部K2は、設定温度の比較的低い第1の領域と、該第1の領域より基端側に設けられ、かつ、その設定温度が第1の領域より高い第2の領域とを有するようなものであってもよい。
【0053】
また、原料K5のプロセス部K2での滞留時間(通過に要する時間)は、0.5〜12分であるのが好ましく、1〜7分であるのがより好ましい。プロセス部K2での滞留時間が、前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、プロセス部K2での滞留時間が、前記上限値を超えると、生産効率が低下し、また、プロセス部K2内の温度、スクリューK22、スクリューK23の回転数等によっては、熱による原料K5の変性が起こり易くなり、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0054】
スクリューK22、スクリューK23の回転数は、バインダー樹脂の組成等により異なるが、50〜600rpmであるのが好ましい。スクリューK22、スクリューK23の回転数が、前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、スクリューK22、スクリューK23の回転数が、前記上限値を超えると、剪断により、樹脂の分子鎖が切断され、樹脂の特性が劣化する場合がある。
【0055】
また、本実施形態で用いる混練機K1では、プロセス部K2の内部は、脱気口K25を介して、ポンプPに接続されている。これにより、プロセス部K2の内部を脱気することができ、原料K5(混練物K7)が加熱されたり、発熱すること等によるプロセス部K2内の圧力の上昇を防止することができる。その結果、混練工程を安全かつ効率よく行うことができる。また、プロセス部K2の内部が脱気口K25を介してポンプPに接続されていることにより、得られる混練物K7中に気泡(特に、比較的大きな気泡)が含まれるのを効果的に防止することができ、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の特性をより優れたものとすることができる。
【0056】
[押出工程]
プロセス部K2で混練された混練物K7は、スクリューK22とスクリューK23との回転により、ヘッド部K3を介して、混練機K1の外部に押し出される。
ヘッド部K3は、プロセス部K2から混練物K7が送り込まれる内部空間K31と、混練物K7が押し出される押出口K32とを有している。
【0057】
内部空間K31内での混練物K7の温度(少なくとも押出口K32付近での温度)は、特に限定されないが、原料K5中に含まれる樹脂材料の軟化温度以上の温度であるのが好ましい。これにより、トナー粒子を各構成成分がより均一に混ざり合ったものとして得ることができ、各トナー粒子間での特性(帯電特性、定着性等)のばらつきを特に小さくすることができる。
【0058】
内部空間K31内での混練物K7の具体的な温度(少なくとも押出口K32付近での温度)は、特に限定されないが、80〜150℃であるのが好ましく、90〜140℃であるのがより好ましい。内部空間K31内での混練物K7の温度が上記範囲内の値であると、混練物K7が内部空間K31で固化せず、押出口K32から押し出しやすくなる。
図示の構成では、内部空間K31は、押出口K32の方向に向って、その横断面積が漸減する横断面積漸減部K33を有している。このような横断面積漸減部K33を有することにより、押出口K32から押し出される混練物K7の押出量が安定し、また、後述する冷却工程における混練物K7の冷却速度が安定する。その結果、これを用いて製造されるトナーは、各トナー粒子間での特性のばらつきが小さいものとなり、全体としての特性に優れたものになる。
【0059】
[冷却工程]
ヘッド部K3の押出口K32から押し出された軟化した状態の混練物K7は、冷却機K6により冷却され、固化する。
冷却機K6は、ロールK61、K62、K63、K64と、ベルトK65、K66とを有している。
ベルトK65は、ロールK61とロールK62とに巻掛けられている。同様に、ベルトK66は、ロールK63とロールK64とに巻掛けられている。
【0060】
ロールK61、K62、K63、K64は、それぞれ、回転軸K611、K621、K631、K641を中心として、図中e、f、g、hで示す方向に回転する。これにより、混練機K1の押出口K32から押し出された混練物K7は、ベルトK65−ベルトK66間に導入される。ベルトK65−ベルトK66間に導入された混練物K7は、ほぼ均一な厚さの板状となるように成形されつつ、冷却される。冷却された混練物K7は、排出部K67から排出される。ベルトK65、K66は、例えば、水冷、空冷等の方法により、冷却されている。冷却機として、このようなベルト式のものを用いると、混練機から押し出された混練物と、冷却体(ベルト)との接触時間を長くすることができ、混練物の冷却の効率を特に優れたものとすることができる。
【0061】
ところで、混練工程では、原料K5に剪断力が加わっているため、相分離(特に、マクロ相分離)等が十分防止されているが、混練工程を終えた混練物K7は、剪断力が加わらなくなるので、混練物の構成材料によっては、長期間放置しておくと再び相分離(マクロ相分離)等を起こしてしまう可能性がある。従って、上記のようにして得られた混練物K7は、できるだけ早く冷却するのが好ましい。具体的には、混練物K7の冷却速度(例えば、混練物K7が60℃程度まで冷却される際の冷却速度)は、3℃/秒以上であるが好ましく、5〜100℃/秒であるのがより好ましい。また、混練工程の終了時(剪断力が加わらなくなった時点)から冷却工程が完了するまでに要する時間(例えば、混練物K7の温度を60℃以下に冷却するのに要する時間)は、20秒以下であるのが好ましく、3〜12秒であるのがより好ましい。
【0062】
本実施形態では、混練機として、連続式の2軸混練押出機を用いる構成について説明したが、原料の混練に用いる混練機はこれに限定されない。原料の混練には、例えば、ニーダーやバッチ式の三軸ロール、連続2軸ロール、ホイールミキサー、ブレード型ミキサー等の各種混練機を用いることができる。
また、図示の構成では、スクリューを2本有する構成の混練機について説明したが、スクリューは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、混練装置にディスク(ニーディングディスク)部があってもよい。
【0063】
また、本実施形態では、1つの混練機を用いる構成について説明したが、2つの混練機を用いて混練してもよい。この場合、一方の混練機と、他方の混練機とで、原料の加熱温度、スクリューの回転速度等が異なっていてもよい。
また、本実施形態では、冷却機として、ベルト式のものを用いた構成について説明したが、例えば、ロール式(冷却ロール式)の冷却機を用いてもよい。また、混練機の押出口K32から押し出された混練物の冷却は、前記のような冷却機を用いたものに限定されず、例えば、空冷等により行うものであってもよい。
【0064】
[粉砕工程]
次に、上述したような冷却工程を経た混練物K7を粉砕する。このように、混練物K7を粉砕することにより、後述する水系乳化液を、比較的容易に、より微小な分散質が分散したものとして得ることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、トナー粒子の大きさをより小さなものとすることができ、高解像度の画像形成に好適に用いることができる。
【0065】
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
粉砕の工程は、複数回(例えば、粗粉砕工程と微粉砕工程との2段階)に分けて行ってもよい。また、このような粉砕工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0066】
原料K5に対して上記のような混練を施すことにより、原料K5中に含まれる空気を効果的に除去することができる。言い換えると、上記のような混練により得られる混練物K7は、その内部に空気(気泡)をほとんど含まない。これにより、後述する水系分散媒除去工程において、異形粒子(中空粒子、欠落粒子、融合粒子等)が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においては、異形トナー粒子による転写性、クリーニング性等の低下等の問題が発生するのを効果的に防止することができる。
本実施形態では、上記のような混練物を用いて、水系乳化液を調製する。
【0067】
水系乳化液の調製に混練物K7を用いることにより、以下のような効果が得られる。すなわち、トナーの構成材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、混練を施すことにより、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。特に、顔料(着色剤)は、通常、後述するような溶媒として用いられる液体に対する分散性が低いが、溶媒に分散する前に予め混練が施されることにより、顔料粒子の周囲を樹脂成分等が効果的にコーティングすることとなり、これにより、溶媒への顔料の分散性が向上し(特に溶媒への微分散が可能となり)、最終的に得られるトナーの発色性も良好となる。このようなことから、トナーの構成材料中に、後述する水系乳化液の分散媒(水系分散媒)に対する分散性に劣る成分(以下、「難分散性成分」とも言う。)や水系乳化液の分散媒に含まれる溶媒に対する溶解性に劣る成分(以下、「難溶性成分」とも言う。)が含まれる場合であっても、水系乳化液における分散質の分散性を特に優れたものとすることができ、また、この水系乳化液を用いて調製される水系懸濁液3(液滴9)においても、分散質31の分散性が優れたものとなる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、各トナー粒子間での組成、特性のばらつきが小さくなり、全体としての特性が特に優れたものとなる。
【0068】
これに対し、水系乳化液の調製に、混練を施していない原料を用いると、難分散性成分や難溶性成分が凝集して、水系乳化液中や後述する水系懸濁液中で沈降したり、主として難分散性成分や難溶性成分で構成され、他の成分と十分に混ざり合っていない粒径の比較的大きい分散質が水系乳化液(および後述する水系懸濁液)中に存在することとなり(主として難分散性成分および/または難溶性成分で構成された大粒径の分散質と、主として難分散性成分、難溶性成分以外の成分で構成された分散質とが混在することとなり)、後に詳述する水系分散媒除去工程で得られる乾燥微粒子(トナー粒子)は、各粒子間での組成、大きさ、形状等のばらつきが大きくなる。その結果、トナー全体(液体現像剤全体)としての特性が低下する。
【0069】
また、上記のようにして得られる混練物の粉砕物を、後述するような水系乳化液の調製に用いることなく、直接、トナー粒子とする場合、トナー中における構成成分の均一性(分散性)を高めるには限界があった。また、このような方法では、一般に比較的強固な凝集体である(強固な凝集体となり易い)顔料の分散(微分散)は、特に困難となる。
これに対し、上記のような混練物を水系乳化液の調製に用いることにより、最終的に得られるトナー粒子は、各成分が十分均一に相溶、分散(微分散)したものとなる。
【0070】
また、本実施形態で用いるような水系乳化液においては、分散質が液状である(流動性を有し、比較的容易に変形可能である)ため、分散質はその表面張力により、円形度(真球度)の大きい形状になる傾向を示す。したがって、当該水系乳化液を用いて調製される懸濁液(水系懸濁液)も、分散質の形状が比較的円形度(真球度)の大きいものとなり、結果として、最終的に得られるトナー粒子も比較的円形度(真球度)の大きいものとなる。また、分散質が液状である(流動性を有し、比較的容易に変形可能である)乳化液では、乳化液を攪拌すること等により、比較的容易に分散質の大きさの均一性を十分に高いものとすることができる。これに対して、後述する乾燥微粒子の製造に用いられる懸濁液として、水系乳化液を経由することなく調製されたものを用いた場合、懸濁液中に含まれる分散質は、円形度の小さいものとなり、特に、各粒子間での形状、粒子径のばらつきが大きいものとなる。また、このような形状のばらつきを抑制するために、後述するような乾燥微粒子の形成時または乾燥微粒子の形成後に、熱球形化処理を施すことも考えられるが、このような場合(特に、乾燥微粒子の形成時に熱球形化を行う場合)、熱球形化処理の条件を比較的過酷なものとしなければ、得られる乾燥微粒子の形状のばらつきを十分に小さくするのが困難であり、乾燥微粒子の構成材料の劣化や、乾燥微粒子中での各構成成分の相溶化状態、微分散状態の破壊を招き易く、最終的に得られる液体現像剤において、十分な特性を発揮させるのが困難となる。
【0071】
<水系乳化液調製工程>
次に、上記のような混練物K7を用いて、水系液体で構成された水系分散媒中に、トナー材料で構成された分散質が分散した水系乳化液を調製する(水系乳化液調製工程)。
水系乳化液の調製方法は、特に限定されないが、本実施形態では、混練物K7の少なくとも一部が溶解した混練物K7の溶液を得、当該溶液を水系液体に分散させることにより水系乳化液を調製する。なお、本明細書中において、「乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)」とは、液状の分散媒中に、液状の分散質(分散粒子)が分散した分散液のことを指し、「懸濁液(サスペンション)」とは、液状の分散媒中に、固体状(固形)の分散質(懸濁粒子)が分散した分散液(懸濁コロイドを含む)のことを指す。また、分散液中に、液状の分散質と、固体状の分散質とが併存する場合には、分散液中において、液状の分散質の総体積が、固体状の分散質の総体積よりも大きいものを乳化液とし、分散液中において、固体の分散質の総体積が、液状の分散質の総体積よりも大きいものを懸濁液とする。
【0072】
以下、水系乳化液の調製方法について詳細に説明する。
[混練物溶液(混練物の溶液)の調製]
本実施形態では、まず、混練物の少なくとも一部が溶解した混練物の溶液を得る。
溶液は、混練物と、混練物の少なくとも一部を溶解し得る溶媒とを混合することにより調製することができる。
【0073】
溶液の調製に用いる溶媒は、混練物の少なくとも一部を溶解しうるものであればいかなるものであってもよいが、通常、後述する水系液体(水系乳化液の調製の用いる水系液体)との相溶性の低いもの(例えば、25℃における水系液体100gに対する溶解度が10g以下の液体)が用いられる。
このような溶媒としては、例えば、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、2−ヘプタノン等のケトン系溶媒、ペンタノール、n−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、フラン、チオフェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、アクリル酸エチル等のエステル系溶媒、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0074】
溶液中における溶媒の含有率は、特に限定されないが、5〜75wt%であるのが好ましく、10〜70wt%であるのがより好ましく、15〜65wt%であるのがさらに好ましい。溶媒の含有率が前記下限値未満であると、溶媒に対する混練物の溶解性(溶解度)によっては、混練物を十分に溶解するのが困難になる可能性がある。一方、溶媒の含有率が前記上限値を超えると、後の処理で溶媒を除去するのに要する時間が長くなり、液体現像剤の生産性が低下する。また、溶媒の含有率が高すぎると、前述した混練工程で、十分均一に混ざり合った各成分が相分離してしまう可能性があり、これにより、最終的に得られる液体現像剤における各トナー粒子の特性のばらつきを十分に小さくするのが困難になる可能性がある。
なお、溶液中においては、混練物を構成する成分の少なくとも一部が溶解(膨潤を含む)していればよく、溶液中に、溶解していない不溶分が存在していてもよい。
【0075】
[水系乳化液の調製]
次に、上記のような溶液を水系液体と混合することにより、水系乳化液を得る。この水系乳化液においては、通常、前述した溶媒と混練物の構成材料とを含む分散質が、水系液体で構成された水系分散媒中に分散している。
本明細書中において、「水系液体」とは、少なくとも水(HO)を含む液体のことを指し、好ましくは、主として水で構成されたものである。水系液体中に占める水の含有率は、50wt%以上であるのが好ましく、80wt%以上であるのが好ましく、90wt%以上であるのが好ましい。なお、水系液体は、水以外の成分を含むものであってもよい。例えば、水系液体は、水との相溶性に優れる成分(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の物質)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられる。
【0076】
また、水系乳化液の調製には、例えば、分散質の分散性を向上させる目的で、分散剤等を用いてもよい。分散剤としては、例えば、粘度鉱物、シリカ、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤等が挙げられる。水系乳化液の調製に上記のような分散剤を用いることにより、分散質の分散性が向上するとともに、比較的容易に、水系乳化液中での分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとし、また、分散質の形状を略球形状とすることができる。その結果、最終的な液体現像剤を、略球形状で、均一な形状、大きさのそろったトナー粒子で構成されたものとして得ることができる。
【0077】
溶液と水系液体との混合は、少なくとも一方の液体を攪拌しつつ行うのが好ましい。これにより、大きさ、形状のばらつきの小さい分散質が均一に分散した乳化液(水系乳化液)を、容易かつ確実に得ることができる。
溶液と水系液体との混合の具体的な方法としては、例えば、容器内の水系液体中に溶液を加える方法(例えば、滴下する方法)、容器内の溶液中に水系液体を加える方法(例えば、滴下する方法)等が挙げられる。これらの場合、少なくとも、攪拌した状態の液体中に、他方の液体を加えるのが好ましい。これにより、上述した効果は更に顕著に発揮される。
【0078】
水系乳化液中における分散質の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止しつつ、トナー粒子(液体現像剤)の生産性を特に優れたものとすることができる。
水系乳化液中における分散質の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmであるのが好ましく、0.1〜3μmであるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止することができるとともに、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0079】
なお、上記の説明では、水系乳化液中において、混練物中の成分が分散質に含まれるものとして説明したが、混練物の構成成分の一部が分散媒中に含まれていてもよい。
また、水系乳化液中には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフミン酸等が挙げられる。
【0080】
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、水系乳化液中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
【0081】
<水系懸濁液調製工程>
上記のようにして得られた水系乳化液は、そのまま、後述する水系分散媒除去工程に供するものであってもよいが、本実施形態においては、(液状の分散質が水系分散媒中に分散した)水系乳化液から、固形状の分散質31が分散媒(水系分散媒)32中に分散した水系懸濁液3を得、当該水系懸濁液3を水系分散媒除去工程に供する。
【0082】
以下、水系懸濁液3の調製方法について詳細に説明する。
水系懸濁液3の調製は、水系乳化液から分散質を構成する溶媒を除去することにより行うことができる。
溶媒の除去は、例えば、水系乳化液を加熱(加温)したり、減圧雰囲気下に置くことにより行うことができるが、水系乳化液を減圧下で加熱することにより行うものであるのが好ましい。これにより、分散質31の大きさ、形状のばらつきが特に小さい水系懸濁液3を、比較的容易に得ることができる。また、上記のように溶媒を除去することにより、溶媒の除去とともに、脱気処理を施すことができる。これにより、水系懸濁液3中の気体の溶存量を低減させることができ、乾燥微粒子製造装置M1の分散媒除去部M3において、水系懸濁液3の液滴9から分散媒32を除去する際に、当該水系懸濁液3中に気泡等が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中に異形状のトナー粒子(中空粒子、欠落粒子等)が混入するのをより効果的に防止することができる。
【0083】
水系乳化液を加熱(加温)する場合、加熱温度は、30〜110℃であるのが好ましく、40〜100℃であるのがより好ましい。加熱温度が前記範囲内の値であると、異形状の分散質31の発生を十分に防止しつつ(水系乳化液の分散質の内部から溶媒が急激に気化(沸騰)するのを確実に防止しつつ)、溶媒を速やかに除去することができる。
また、水系乳化液を減圧雰囲気下に置く場合、水系乳化液が置かれる雰囲気の圧力は、0.1〜50kPaであるのが好ましく、0.5〜5kPaであるのがより好ましい。水系乳化液が置かれる雰囲気の圧力が前記範囲内の値であると、異形状の分散質31の発生を十分に防止しつつ(水系乳化液の分散質の内部から溶媒が急激に気化(沸騰)するのを確実に防止しつつ)、溶媒を速やかに除去することができる。
【0084】
なお、溶媒の除去は、少なくとも分散質が固形状となる程度に行われるものであればよく、水系乳化液中に含まれる実質的に全ての溶媒を除去するものでなくてもよい。
水系懸濁液3中における分散質31の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜5μmであるのが好ましく、0.1〜3μmであるのがより好ましい。これにより、分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止することができるとともに、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。
【0085】
<水系分散媒除去工程>
次に、水系分散液(水系懸濁液3)から水系分散媒を除去することにより、水系分散液(水系懸濁液3)の分散質に対応する乾燥微粒子を得る(水系分散媒除去工程)。このようにして得られる乾燥微粒子は、液体現像剤のトナー粒子に相当するものである。
水系分散媒の除去は、いかなる方法で行ってもよいが、水系分散媒中に分散質が分散した分散液(水系分散液)の液滴を間欠的に吐出することにより行うのが好ましい。これにより、分散質の凝集等を効果的に防止しつつ、水系分散媒の除去をより効率良く行うことができ、液体現像剤の生産性が向上する。また、水系分散液の液滴を間欠的に吐出して水系分散媒の除去を行うことにより、前述した水系懸濁液の調製において、溶媒の一部が残存している場合であっても、この残存している溶媒を水系分散媒とともに効率良く除去することができる。
特に、本実施形態では、図2、図3に示すような乾燥微粒子製造装置(トナー粒子製造装置)を用いて、水系分散媒の除去を行う。
【0086】
[乾燥微粒子製造装置]
図2に示すように、乾燥微粒子製造装置(トナー粒子製造装置)M1は、上述したような水系懸濁液(水系分散液)3を、液滴9として間欠的に吐出するヘッド部M2と、ヘッド部M2に水系懸濁液3を供給する水系懸濁液供給部(水系分散液供給部)M4と、ヘッド部M2から吐出された液滴状(微粒子状)の水系懸濁液3(液滴9)を搬送しつつ分散媒32を除去し、乾燥微粒子(トナー粒子)4とする分散媒除去部M3と、製造された乾燥微粒子(トナー粒子)4を回収する回収部M5とを有している。
【0087】
水系懸濁液供給部M4は、ヘッド部M2に水系懸濁液3を供給する機能を有するものであればよいが、図示のように、水系懸濁液3を攪拌する攪拌手段M41を有するものであってもよい。これにより、例えば、分散質31が分散媒(水系分散媒)32中に分散しにくいものであっても、分散質31が十分均一に分散した状態の水系懸濁液3を、ヘッド部M2に供給することができる。
【0088】
ヘッド部M2は、水系懸濁液3を微細な液滴(微粒子)9として、吐出する機能を有するものである。
ヘッド部M2は、分散液貯留部M21と、圧電素子M22と、吐出部M23とを有している。
分散液貯留部M21には、水系懸濁液3が貯留されている。
分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3は、圧電素子M22の圧力パルス(圧電パルス)により、吐出部M23から、液滴9として分散媒除去部M3に吐出される。
【0089】
吐出部M23の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。これにより、吐出される水系懸濁液3や、分散媒除去部M3内において形成される乾燥微粒子4の真球度を高めることができる。
吐出部M23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、5〜500μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。吐出部M23の直径が前記下限値未満であると、目詰まりが発生し易くなり、吐出される液滴9の大きさのばらつきが大きくなる場合がある。一方、吐出部M23の直径が前記上限値を超えると、分散液貯留部M21の負圧と、ノズルの表面張力との力関係によっては、吐出される水系懸濁液3(液滴9)が気泡を抱き込んでしまう可能性がある。
【0090】
また、ヘッド部M2の吐出部M23付近(特に、吐出部M23の開口内面や、ヘッド部M2の吐出部M23が設けられている側の面(図中の下側の面))は、水系懸濁液3に対し撥液性(撥水性)を有するのが好ましい。これにより、水系懸濁液3が吐出部付近に付着するのを効果的に防止することができる。その結果、いわゆる、液切れの悪い状態になったり、水系懸濁液3の吐出不良が発生するのを効果的に防止することができる。また、吐出部付近への水系懸濁液3の付着が効果的に防止されることにより、吐出される液滴の形状の安定性が向上し(各液滴間での形状、大きさのばらつきが小さくなり)、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのばらつきも小さくなる。
このような撥液性を有する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、シリコーン系材料等が挙げられる。
【0091】
図3に示すように、圧電素子M22は、下部電極(第1の電極)M221、圧電体M222および上部電極(第2の電極)M223が、この順で積層されて構成されている。換言すれば、圧電素子M22は、上部電極M223と下部電極M221との間に、圧電体M222が介挿された構成とされている。
この圧電素子M22は、振動源として機能するものであり、振動板M24は、圧電素子(振動源)M22の振動により振動し、分散液貯留部M21の内部圧力を瞬間的に高める機能を有するものである。
【0092】
ヘッド部M2は、圧電素子駆動回路(図示せず)から所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子M22の下部電極M221と上部電極M223との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体M222に変形が生じない。このため、振動板M24にも変形が生じず、分散液貯留部M21には容積変化が生じない。したがって、吐出部M23から水系懸濁液3は吐出されない。
【0093】
一方、圧電素子駆動回路から所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子M22の下部電極M221と上部電極M223との間に所定の電圧が印加された状態では、圧電体M222に変形が生じる。これにより、振動板M24が大きくたわみ(図3中下方にたわみ)、分散液貯留部M21の容積の減少(変化)が生じる。このとき、分散液貯留部M21内の圧力が瞬間的に高まり、吐出部M23から粒状の水系懸濁液3が吐出される。
【0094】
1回の水系懸濁液3の吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極M221と上部電極M223との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子M22は、ほぼ元の形状に戻り、分散液貯留部M21の容積が増大する。なお、このとき、水系懸濁液3には、水系懸濁液供給部M4から吐出部M23へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気が吐出部M23から分散液貯留部M21へ入り込むことが防止され、水系懸濁液3の吐出量に見合った量の水系懸濁液3が水系懸濁液供給部M4から分散液貯留部M21へ供給される。
【0095】
上記のような電圧の印加を所定の周期で行うことにより、圧電素子M22が振動し、粒状の水系懸濁液3が繰り返し吐出される。
このように、水系懸濁液3の吐出(噴射)を、圧電体M222の振動による圧力パルスで行うことにより、水系懸濁液3を一滴ずつ間欠的に吐出することができ、また、吐出される水系懸濁液3の液滴9の形状が安定する。その結果、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができるとともに、製造されるトナー粒子を真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることが比較的容易にできる。
【0096】
また、分散液の吐出に圧電体の振動を用いることにより、より確実に分散液を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される液滴9同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、異形状の乾燥微粒子4の形成をより効果的に防止することができる。
ヘッド部M2から分散媒除去部M3に吐出される水系懸濁液3(液滴9)の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。水系懸濁液3の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、水系懸濁液3の初速度が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナー粒子の真球度が低下する傾向を示す。
【0097】
また、ヘッド部M2から吐出される水系懸濁液3の粘度は、特に限定されないが、例えば、0.5〜200[mPa・s]であるのが好ましく、1〜25[mPa・s]であるのがより好ましい。水系懸濁液3の粘度が前記下限値未満であると、吐出される水系懸濁液3の大きさを十分に制御するのが困難となり、最終的に得られるトナー粒子のばらつきが大きくなる場合がある。一方、水系懸濁液3の粘度が前記上限値を超えると、形成される粒子の径が大きくなり、水系懸濁液3の吐出速度が遅くなるとともに、水系懸濁液3の吐出に要するエネルギー量も大きくなる傾向を示す。また、水系懸濁液3の粘度が特に大きい場合には、水系懸濁液3を液滴として吐出できなくなる。
【0098】
また、ヘッド部M2から吐出される水系懸濁液3は、予め冷却されたものであってもよい。このように水系懸濁液3を冷却することにより、例えば、吐出部M23付近における水系懸濁液3からの分散媒32の不本意な蒸発(揮発)を効果的に防止することができる。その結果、吐出部の開口面積が経時的に小さくなることによる水系懸濁液3の吐出量変化等を効果的に防止することができ、各粒子間での大きさ、形状のばらつきが特に小さいトナーを得ることができる。
【0099】
また、水系懸濁液3の一滴分の吐出量は、水系懸濁液3中に占める分散質31の含有率等により若干異なるが、0.05〜500plであるのが好ましく、0.5〜50plであるのがより好ましい。水系懸濁液3の一滴分の吐出量をこのような範囲の値にすることにより、形成される乾燥微粒子4を適度な粒径のものにすることができる。
また、ヘッド部M2から吐出される液滴9の平均粒径は、水系懸濁液3中に占める分散質31の含有率等により若干異なるが、1.0〜100μmであるのが好ましく、5〜50μmであるのがより好ましい。液滴9の平均粒径をこのような範囲の値にすることにより、形成される乾燥微粒子4を適度な粒径のものにすることができる。
【0100】
圧電素子M22の振動数(圧電パルスの周波数)は、特に限定されないが、1kHz〜500MHzであるのが好ましく、5kHz〜200MHzであるのがより好ましい。圧電素子M22の振動数が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、圧電素子M22の振動数が前記上限値を超えると、粒状の水系懸濁液3の吐出が追随できなくなり、水系懸濁液3一滴分の大きさのばらつきが大きくなり、結果として、形成される乾燥微粒子(トナー粒子)4の大きさのばらつきが大きくなる可能性がある。
【0101】
図示の構成の乾燥微粒子製造装置M1は、ヘッド部M2を複数個有している。そして、これらのヘッド部M2から、それぞれ、粒状の水系懸濁液3(液滴9)が分散媒除去部M3に吐出される。
各ヘッド部M2は、ほぼ同時に水系懸濁液3(液滴9)を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、水系懸濁液3(液滴9)の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部M2から吐出された液滴9から乾燥微粒子4が形成される前に、液滴9同士が衝突し、不本意な凝集が発生するのをより効果的に防止することができる。
【0102】
また、図2に示すように、乾燥微粒子製造装置M1は、ガス流供給手段M10を有しており、このガス流供給手段M10から供給されたガスが、ダクトM101を介して、ヘッド部M2−ヘッド部M2間に設けられた各ガス噴射口M7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部M23から間欠的に吐出された液滴9の間隔を保ち、液滴9同士が衝突するのを効果的に防止しつつ、乾燥微粒子4を形成することができる。その結果、形成される乾燥微粒子4の大きさ、形状のばらつきをより小さくすることができる。
【0103】
また、ガス流供給手段M10から供給されたガスをガス噴射口M7から噴射することにより、分散媒除去部M3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、分散媒除去部M3内で形成された乾燥微粒子4をより効率良く搬送することができる。これにより、乾燥微粒子4の回収効率が向上し、液体現像剤の生産性が向上する。
【0104】
また、ガス噴射口M7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部M2から吐出される液滴9の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各液滴間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
また、ガス流供給手段M10には、熱交換器M11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができ、分散媒除去部M3に吐出された粒状の水系懸濁液3から分散媒32を効率良く除去することができる。
また、このようなガス流供給手段M10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部M23から吐出された水系懸濁液3からの分散媒32の除去速度等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0105】
ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度は、水系懸濁液3中に含まれる分散質31、分散媒32の組成等により異なるが、通常、0〜70℃であるのが好ましく、15〜60℃であるのがより好ましい。ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度がこのような範囲の値であると、得られる乾燥微粒子4の形状の均一性、安定性を十分に高いものとしつつ、液滴9中に含まれる分散媒32を効率良く除去することができる。
【0106】
また、ガス噴射口M7から噴射されるガスの湿度は、例えば、50%RH以下であるのが好ましく、30%RH以下であるのがより好ましい。ガス噴射口M7から噴射されるガスの湿度が50%RH以下であると、後述する分散媒除去部M3において、水系懸濁液3に含まれる分散媒32を効率良く除去することが可能となり、乾燥微粒子4の生産性がさらに向上する。
【0107】
分散媒除去部M3は、筒状のハウジングM31で構成されている。分散媒除去部M3内の温度を所定の範囲に保つ目的で、例えば、ハウジングM31の内側または外側に熱源、冷却源を設置したり、ハウジングM31を、熱媒体または冷却媒体の流路が形成されたジャケットとしてもよい。
また、図示の構成では、ハウジングM31内の圧力は、圧力調整手段M12により調整される構成となっている。このように、ハウジングM31内の圧力を調整することにより、より効率良く乾燥微粒子4を形成することができ、結果として、液体現像剤の生産性が向上する。なお、図示の構成では、圧力調整手段M12は、接続管M121でハウジングM31に接続されている。また、接続管M121のハウジングM31と接続する端部付近には、その内径が拡大した拡径部M122が形成されており、さらに、乾燥微粒子4等の吸い込みを防止するためのフィルターM123が設けられている。
【0108】
ハウジングM31内の圧力は、特に限定されないが、150kPa以下であるのが好ましく、100〜120kPaであるのがより好ましく、100〜110kPaであるのがさらに好ましい。ハウジングM31内の圧力が前記範囲内の値であると、例えば、液滴9からの急激な分散媒32の除去(沸騰現象)等を効果的に防止することができ、異形状の乾燥微粒子4の発生等を十分に防止しつつ、より効率良く乾燥微粒子4を製造することができる。なお、ハウジングM31内の圧力は、各部位でほぼ一定であってもよいし、各部位で異なるものであってもよい。
また、ハウジングM31には、電圧を印加するための電圧印加手段M8が接続されている。電圧印加手段M8で、ハウジングM31の内面側に、乾燥微粒子4(液滴9)と同じ極性の電圧を印加することにより、これにより、以下のような効果が得られる。
【0109】
通常、乾燥微粒子4等は、正または負に帯電している。このため、乾燥微粒子4と異なる極性に帯電した帯電物があると、乾燥微粒子4は、当該帯電物に、静電的に引き付けられ付着するという現象が起こる。一方、乾燥微粒子4と同じ極性に帯電した帯電物があると、当該帯電物と乾燥微粒子4とは、互いに反発しあい、前記帯電物表面に乾燥微粒子4が付着するという現象を効果的に防止することができる。したがって、ハウジングM31の内面側に、粒状の乾燥微粒子4と同じ極性の電圧を印加することにより、ハウジングM31の内面に乾燥微粒子4が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、異形状の乾燥微粒子4の発生をより効果的に防止することができるとともに、乾燥微粒子4の回収効率も向上する。
【0110】
また、ハウジングM31は、回収部M5付近に、図2中の下方向に向けて、その内径が小さくなる縮径部M311を有している。このような縮径部M311が形成されることにより、乾燥微粒子4を効率良く回収することができる。
そして、上記のようにして形成された乾燥微粒子4は、回収部M5に回収される。
上記のようにして得られる乾燥微粒子4は、通常、各分散質31に対応する大きさ、形状を有するものである。これにより、最終的に得られる液体現像剤は、比較的小粒径で、円形度(球形度)が高く、各粒子間での形状、大きさのばらつきの小さいトナー粒子を含むものとなる。
【0111】
また、上記のようにして得られる乾燥微粒子4は、水系懸濁液3の分散媒32が除去されることにより得られる粒状物であればよく、例えば、その内部に分散媒の一部が残存していてもよい。
得られた乾燥微粒子4は、そのまま、後述する分散工程に供してもよいし、熱処理等の各種処理を施してもよい。これにより、乾燥微粒子(トナー粒子)の機械的強度(形状の安定性)をさらに優れたものとしたり、乾燥微粒子中の含水量を低下させることができる。また、得られた乾燥微粒子4に対してエアレーション等の処理を施したり、乾燥微粒子4を減圧雰囲気下に放置すること等によっても、上記と同様に、含水量を低下させることができる。
また、上記のような乾燥微粒子4に対しては、必要に応じて、分級処理、外添処理等の各種処理を施してもよい。
【0112】
<絶縁性液体の調製>
上述したような絶縁性液体は、例えば、以下のようにして調製することができる。なお、以下の説明では、カプセル化した酸化重合促進剤を含む絶縁性液体の調製について説明する。
酸化重合促進剤のカプセル化は、例えば、以下のようにして行うことができる。
まず、酸化重合促進剤を用意する。
次に、酸化重合促進剤を溶媒に溶解させる。
【0113】
このような溶媒としては、酸化重合促進剤が溶解するものであれば、特に限定されず、例えば、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、2−ヘプタノン等のケトン系溶媒、ペンタノール、n−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、フラン、チオフェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、アクリル酸エチル等のエステル系溶媒、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0114】
次に、得られた溶液に、親水性シリカ、親水性アルミナ、親水性酸化チタン等の多孔質体を加え、多孔質体に溶液を吸着させる。
次に、溶液を吸着させた多孔質体とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルとを加温しつつ混合する。
多孔質体とポリエーテルとの混合比は、重量比で、1:0.5〜1:10程度であるのが好ましく、1:1〜1:5程度であるのがより好ましい。
【0115】
また、多孔質体とポリエーテルとを混合する際の温度は、5〜80℃であるのが好ましく、20〜80℃であるのがより好ましい。
次に、得られた混合物を、石油系炭化水素中に十分に分散した後、冷却し、多孔質体の表面にポリエーテルを沈着させる。これにより、多孔質体の表面にポリエーテルの膜が形成される。
【0116】
その後、ろ過して石油系炭化水素を除去することにより、カプセル化した酸化重合促進剤が得られる。
以上のようにしてカプセル化した酸化重合促進剤は、絶縁性液体中での分散性がより高いものとなる。
このようにして得られたカプセル化した酸化重合促進剤を、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分とを含む液体中に分散することにより、絶縁性液体が得られる。
【0117】
なお、酸化防止剤を含む液体現像剤を調製する場合、酸化防止剤は、例えば、酸化重合促進剤を分散する前に、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分とを含む液体中に含ませておいてもよいし、酸化重合促進剤を分散した後に、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分とを含む液体中に加えてもよいし、酸化重合促進剤を分散させる際に、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分とを含む液体中に加えてもよい。
【0118】
<分散工程>
次に、上記のようにして得られた乾燥微粒子4を、前述したような絶縁性液体中に分散させる(分散工程)。これにより、乾燥微粒子4としてのトナー粒子が、絶縁性液体(担持液)中に分散した液体現像剤が得られる。
絶縁性液体中への乾燥微粒子4の分散は、いかなる方法で行うものであってもよいが、攪拌した状態の絶縁性液体中に乾燥微粒子4を加えることにより行うのが好ましい。これにより、液体現像剤の調整時における乾燥微粒子4の不本意な凝集を防止しつつ、得られた液体現像剤においては、トナー粒子の良好な分散状態を長期間にわたって安定的に保持することができる。
【0119】
<液体現像剤>
上記のようにして得られる液体現像剤は、トナー粒子の形状、大きさのばらつきが小さい。したがって、このような液体現像剤は、トナー粒子が絶縁性液体中(液体現像剤中)で泳動し易く、高速現像にも有利である。また、トナー粒子の形状、大きさのばらつきが小さく、さらに、前述したような絶縁性液体を用いているため、トナー粒子の分散性に優れており、液体現像剤中でのトナー粒子の沈降や浮遊等が効果的に防止される。したがって、このような液体現像剤は、保存性に特に優れたものとなる。
【0120】
次に、上述したような本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
図4は、本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。画像形成装置P1には、円筒状の感光体P2のドラムを有し、エピクロロヒドリンゴム等で構成された帯電器P3によりその表面が均一に帯電された後、レーザーダイオード等によって記録すべき情報に応じた露光P4が行なわれて静電潜像が形成される。
【0121】
現像器P10は、現像剤容器P11中にその一部が浸漬された塗布ローラP12、現像ローラP13を有している。塗布ローラP12は、例えば、ステンレス等の金属製のグラビアローラであり、現像ローラP13と対向して回転する。また、塗布ローラP12の表面には、液体現像剤塗布層P14が形成され、メータリングブレードP15によってその厚さが一定に保持される。
【0122】
そして、塗布ローラP12から現像ローラP13に対して液体現像剤が転写される。現像ローラP13は、ステンレス等の金属製のローラ芯体P16上に低硬度シリコーンゴム層を有し、その表面には導電性のPFA(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体)製の樹脂層が形成されており、感光体P2と等速で回転して液体現像剤を潜像部に転写する。感光体P2へ転写後に現像ローラP13に残った液体現像剤は、現像ローラクリーニングブレードP17によって除去されて現像剤容器P11内へ回収される。
【0123】
また、感光体から中間転写ローラへのトナー画像の転写の後には、感光体は、除電光P21によって除電されるとともに、感光体上に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP22によって除去される。
同様に、中間転写ローラP18から情報記録媒体P20へ転写後に中間転写ローラP18に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP23によって除去される。
感光体P2上に形成されたトナー像は、中間転写ローラP18に対して転写された後に、二次転写ローラP19に転写電流を通電して、両者の間を通過する紙等の情報記録媒体P20に画像が転写され、紙等の情報記録媒体P20上でのトナー画像は図6に示す定着装置使用して定着が行われる。
【0124】
図5は、本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。非接触方式にあっては、現像ローラP13には0.5mm厚のリン青銅板で構成された帯電ブレードP24が設けられる。帯電ブレードP24は液体現像剤層に接触して摩擦帯電させる機能を有すると共に、塗布ローラP12がグラビアロールであるために現像ローラP13上にはグラビアロール表面の凹凸に応じた現像剤層が形成されるので、その凹凸を均一に均す機能を果たすものであり、配置方向としては現像ローラの回転方向に対してカウンタ方向でもトレイル方向のいずれでもよく、また、ブレート形状ではなくローラ形状でもよい。
【0125】
また、現像ローラP13と感光体P2との間は、200μm〜800μmの間隔が設けられると共に、現像ローラP13と感光体P2との間には直流電圧200〜800Vに重畳される500〜3000Vpp、周波数50〜3000Hzの交流電圧が印加されるのが好ましい。それ以外は、図4を参照しつつ説明した画像形成装置と同様である。
なお、図4、図5共に一色の液体現像剤による画像形成について説明したが、複数色のカラートナーを用いて画像形成する場合には、複数色の現像器を用いて各色の画像を形成してカラー画像を形成することができる。
【0126】
図6は定着装置の断面図であり、F1は熱定着ロール、F1aは柱状ハロゲンランプ、F1bはロール基材、F1cは弾性体、F2は加圧ロール、F2aは回転軸、F2bはロール基材、F2cは弾性体、F3は耐熱ベルト、F4はベルト張架部材、F4aは突壁、F5はシート材、F5aは未定着トナー像、F6はクリーニング部材、F7はフレーム、F9はスプリング、Lは押圧部接線である。
図に示すように、定着装置F40は、熱定着ロール(以下、加熱ロールとも言う)F1、加圧ロールF2、耐熱ベルトF3、ベルト張架部材F4、およびクリーニング部材F6を備えている。
【0127】
熱定着ロールF1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体F1cを被覆して形成され、ロール基材F1bの内部に、加熱源として1,050W、2本の柱状ハロゲンランプF1aが内蔵されており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。また、加圧ロールF2は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F2bとして、その外周に厚み0. 2mm程度の弾性体F2cを被覆して形成し、熱定着ロールF1と加圧ロールF2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成し、熱定着ロールF1に対向して配置し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0128】
このように、熱定着ロールF1および加圧ロールF2の外径が25mm程度の小径に構成されているため、定着後のシート材F5が熱定着ロールF1または耐熱ベルトF3に巻き付くことがなく、シート材を強制的に剥がすための手段が不要となっている。また、熱定着ロールF1の弾性体F1cの表層には約30μmのPFA層を設けることで、その分剛性が向上する。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ロールF1の周速に対して耐熱ベルトF3またはシート材F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0129】
また、熱定着ロールF1の内部に、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接する部位との異なる条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材との異なる条件下での温度コントロールが容易に行われるようになっている。
【0130】
耐熱ベルトF3は、加圧ロールF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。この耐熱ベルトF3は0.03mm以上の厚みを有し、その表面(シート材F5が接触する側の面)をPFAで形成し、また、裏面(加圧ロールF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0131】
ベルト張架部材F4は、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との定着ニップ部よりもシート材F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロールF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材F4は、シート材F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架するように構成されている。シート材F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架する構成にすることで、シート材F5の進入がスムーズに行われるシート材F5の導入口部が形成でき、安定したシート材F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0132】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ロールF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1と加圧ロールF2との押圧部接線Lより熱定着ロールF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ロールF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ロールF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接して位置決めされる。
【0133】
耐熱ベルトF3を加圧ロールF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ロールF2で安定して駆動するには、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0134】
そこで、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロールF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ロールF2で安定して駆動することができるようになる。
【0135】
更に、クリーニング部材F6が加圧ロールF2とベルト張架部材F4との間に配置されており、このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、この凹部F4fは、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0136】
ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ロールF1に加圧ロールF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。そして、シート材F5はニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ロールF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、シート材F5上に形成された未定着トナー像F5aが定着され、その後、熱定着ロールF1への加圧ロールF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0137】
未定着トナー画像を定着する際の定着温度は、100〜200℃であるのが好ましく、100〜180℃であるのがより好ましい。このような定着温度であると、酸化防止剤として前述したようなものが含まれる場合には、酸化防止剤の分解が容易となり、トナー粒子の定着強度をより効果的に向上させることができる。また、このような定着温度が前記範囲内の値であると、オレイン酸成分の酸化重合反応(硬化反応)をより効果的に進行させることができる。このような傾向は、液体現像剤中に酸化重合促進剤が含まれる場合において、より顕著に発揮される。
【0138】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像剤は、前述したような方法により製造されたものに限定されず、いかなる方法で製造されたものであってもよい。例えば、絶縁性液体中で、前述したような粉砕物を熱溶融して分散し、これを冷却することにより製造されたものであってもよい。このような場合、絶縁性液体中に酸化防止剤が含まれていると、製造工程においても、オレイン酸成分の酸化による劣化を防止することができる。なお、このような場合、必要に応じて、冷却した後にさらに酸化防止剤を加えてもよい。
【0139】
また、乾燥微粒子製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
また、前述した実施形態では、水系分散媒除去工程で得られた乾燥微粒子を一旦回収した後、分散工程に供するものとして説明したが、乾燥微粒子を粉体として回収することなく、直接、分散工程に供してもよい。例えば、図示のような乾燥微粒子製造装置は、絶縁性液体を貯留し、かつ、製造された乾燥微微粒子が供給される分散部を有するものであってもよい。これにより、液体現像剤をより効率良く製造することができるとともに、乾燥微粒子間での不本意な凝集等をより効果的に防止することができる。
【0140】
また、図7に示すように、ヘッド部M2に、音響レンズ(凹面レンズ)M25が設置されていてもよい。このような音響レンズM25が設置されることにより、例えば、圧電素子M22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)を、吐出部M23付近の圧力パルス収束部M26で収束させることができる。その結果、圧電素子M22が発生した振動エネルギーを、水系懸濁液3を吐出させるためのエネルギーとして、効率よく利用することができる。したがって、分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3が比較的高粘度のものであっても、確実に吐出部M23から吐出させることができる。また、分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3が凝集力(表面張力)の比較的大きいものであっても、微細な液滴として吐出することが可能となるため、容易かつ確実に、乾燥微粒子(トナー粒子)9の粒径を比較的小さい値にコントロールすることができる。
このように、図示のような構成とすることにより、水系懸濁液3として、より粘度の高い材料や、凝集力の大きい材料を用いた場合であっても、乾燥微粒子4を所望の形状、大きさにコントロールすることができるので、材料選択の幅が特に広くなり、所望の特性を有するトナーをさらに容易に得ることができる。
【0141】
また、図示のような構成とした場合、収束した圧力パルスにより水系懸濁液3を吐出させるため、吐出部M23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、吐出する水系懸濁液3の大きさを比較的小さいものにすることができる。すなわち、乾燥微粒子4の粒径を比較的小さくしたい場合であっても、吐出部M23の面積を大きくすることができる。これにより、水系懸濁液3が比較的高粘度のものであっても、吐出部M23における目詰まりの発生等をより効果的に防止することができる。
【0142】
音響レンズとしては、凹面レンズに限定されず、例えば、フレネルレンズ、電子走査レンズ等を用いてもよい。
さらに、図8〜図10に示すように、音響レンズM25と吐出部M23との間に、吐出部M23に向けて、収斂する形状を有する絞り部材M13等を配置してもよい。これにより、圧電素子M22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)の収束を補助することができ、圧電素子M22が発生した圧力パルスをさらに効率よく利用することができる。
また、前述した実施形態では、トナーの構成成分が固形成分として、分散質中に含まれるものとして説明したが、トナーの構成成分の少なくとも一部は、分散媒中に含まれていてもよい。
【0143】
また、前述した実施形態では圧電パルスによりヘッド部から分散液(水系懸濁液)を間欠的に吐出するものとして説明したが、分散液の吐出方法(噴射方法)としては、他の方法を用いることもできる。例えば、分散液を吐出(噴射)する方法としては、スプレードライ法や、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法等の方法のほか、「分散液を、ガス流で平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄層流とし、当該薄層流を前記平滑面から離して微小な液滴として噴射するようなノズルを用いて、分散液を液滴状に噴射する方法(特願2002−321889号明細書に記載されたような方法)」等を用いてもよい。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、液体(分散液)を噴射(噴霧)させることにより、液滴を得る方法である。また、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法を適用した方法としては、特願2002−169348号明細書に記載された方法等が挙げられる。すなわち、分散液を吐出(噴射)する方法として、「気体の体積変化によりヘッド部から分散液を間欠的に吐出する方法」を適用することができる。
【0144】
また、乾燥微粒子の形成は、分散液(水系懸濁液)の吐出により行うものでなくてもよい。例えば、水系懸濁液をろ過することにより、分散質に相当する微粒子を濾別し、これを乾燥微粒子としてもよい。
また、前述した実施形態では、水系懸濁液中の各分散質に対応する大きさ、形状の乾燥微粒子を得るものとして説明したが、乾燥微粒子は、例えば、水系懸濁液の複数個の分散質に対応する微粒子が凝集(接合)してなる凝集体であってもよい。
【0145】
また、前述した実施形態では、混練物の粉砕物を用いて水系乳化液の調製を行うものとして説明したが、混練物の粉砕工程等は省略してもよい。
また、水系乳化液、水系懸濁液の調製方法は、前述したような方法に限定されない。例えば、固体状態の分散質が分散した分散液を加熱することにより、分散質を一旦液状として水系乳化液を得、当該水系乳化液を冷却することにより水系懸濁液を得てもよい。
【0146】
また、前述した実施形態では、水系乳化液を用いて一旦水系懸濁液を得た後、当該水系懸濁液を用いて乾燥微粒子を製造するものとして説明したが、水系懸濁液を介することなく、水系乳化液から直接乾燥微粒子を得る構成であってもよい。例えば、水系乳化液を液滴状に吐出し、当該液滴から分散媒中の溶媒とともに分散媒を除去することにより乾燥微粒子を得てもよい。
【0147】
また、前述した実施形態では、カプセル化された酸化重合促進剤が絶縁性液体中に分散した構成について説明したが、酸化重合促進剤は、カプセル化されていないものであってもよい。また、酸化重合促進剤(特にカプセル化された酸化重合促進剤)は、例えば、トナー粒子中に含まれていてもよいし、トナー粒子表面に付着していてもよい。酸化重合促進剤がトナー粒子の表面に付着している場合、定着する際に、オレイン酸成分をより確実に硬化させることができる。
また、本発明で用いるオレイン酸成分、飽和脂肪酸成分は、化学合成(人工合成)されたものであってもよい。
【実施例】
【0148】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
[乾燥微粒子の作製]
まず、結着樹脂としてのポリエステル樹脂(軟化温度:124℃):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。
これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0149】
次に、この原料(混合物)を、図1に示すような2軸混練押出機を用いて、混練した。
2軸混練押出機のプロセス部の全長は160cmとした。
また、プロセス部における原料の温度が105〜115℃となるように設定した。
また、スクリューの回転速度は120rpmとし、原料の投入速度は20kg/時間とした。
【0150】
このような条件から求められる、原料がプロセス部を通過するのに要する時間は約4分間である。
なお、上記のような混練は、脱気口を介してプロセス部に接続された真空ポンプを稼動させることにより、プロセス部内を脱気しつつ行った。
プロセス部で混練された原料(混練物)は、ヘッド部を介して2軸混練押出機の外部に押し出した。ヘッド部内における混練物の温度は、130℃となるように調節した。
【0151】
このようにして2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を、図1中に示すような冷却機を用いて、冷却した。冷却工程直後の混練物の温度は、約45℃であった。
混練物の冷却速度は、9℃/秒であった。また、混練工程の終了時から冷却工程が終了するのに要した時間は、10秒であった。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.5mmの粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
【0152】
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物のポリエステル樹脂が溶解した溶液を得た。なお、このよう溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
一方、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1重量部と、イオン交換水:700重量部とを均一に混合した水系液体を用意した。
【0153】
前記水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が3μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
その後、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却した後、所定量の水を加えて濃度調整することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は28.8wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(固形微粒子)の平均粒径は1.2μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0154】
上記のようにして得られた懸濁液を、図2、図3に示す構成の乾燥微粒子製造装置の水系懸濁液供給部内に投入した。水系懸濁液供給部内の水系懸濁液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部に供給し、吐出部から分散媒除去部に吐出(噴射)させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部としては、吐出部付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。なお、水系懸濁液供給部内における水系懸濁液の温度は、25℃になるように調節した。
【0155】
水系懸濁液の吐出は、ヘッド部内における分散液温度を25℃、圧電体の振動数を10kHz、吐出部から吐出される分散液の初速度を3m/秒、ヘッド部から吐出される水系懸濁液の一滴分の吐出量を4pl(粒径:20.8μm)に調整した状態で行った。また、水系懸濁液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、水系懸濁液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0156】
また、水系懸濁液の吐出時には、ガス噴射口から温度:25℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、ハウジング内の温度(雰囲気温度)は、45℃となるように設定した。また、ハウジング内の圧力は、約1.5kPaであった。分散媒除去部の長さ(搬送方向の長さ)は1.0mであった。
また、分散媒除去部のハウジングには、その内表面側の電位が−200Vとなるように電圧を印加し、内壁に水系懸濁液(乾燥微粒子)が付着するのを防止するようにした。
分散媒除去部内において、吐出した水系懸濁液から分散媒が除去され、各分散質に対応する形状、大きさの多数の乾燥微粒子(トナー粒子)が形成された。
分散媒除去部で形成された乾燥微粒子をサイクロンにて回収し、乾燥微粒子を得た。
【0157】
[酸化重合促進剤のカプセル化]
一方、以下のようにして、カプセル化された酸化重合促進剤を用意した。
まず、酸化重合促進剤としてのオクチル酸亜鉛:10gをアセトン15mlに溶解させ、得られた溶液を多孔質親水性シリカゲルに吸着させ、芯材を得た。
次に、得られた芯材10gとポリエチレングリコール(PEG)20gとを加温混合し、混合物を得た。
次に、この混合物を日石三菱社製AF6号ソルベント400ml中に入れ、ホモミキサーにて十分分散させた後、徐冷してPEGを沈着させた。
その後、ろ過により溶剤を除去してカプセル化された酸化重合促進剤を得た。
【0158】
[絶縁性液体の調製]
一方、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分とを含む絶縁性液体を以下のようにして得た。
まず、オレイン酸成分を含む液体の調製について説明する。
まず、溶剤として、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、アセトン等を用いた低温結晶法によりオリーブ油を粗精製した。
【0159】
次に、粗精製したオリーブ油(第1の粗精製油):300体積部をフラスコに投入し、その後、フラスコ内に沸騰した水:100体積部を注いでフラスコに栓をした。
次に、フラスコを振り、上記のオリーブ油(第1の粗精製油)と沸騰した水とを混合した。
次に、フラスコ内の混合液が、3層に分離するまで、フラスコを静置した。
完全に分離が確認された後、フラスコを冷凍庫に移し、24時間放置した。
その後、凍結していない成分を別のフラスコに移した。
この凍結していない成分に対して、再度、上記と同様の操作を繰り返し、得られた凍結していない成分を取り出し、粗製油脂(第2の粗精製油)を得た。
【0160】
次に、フラスコ内に、前述のようにして得られた粗製油脂(第2の粗精製油):100体積部と、主として含水ケイ酸アルミニウムで構成された活性白土:35体積部とを混合・撹拌した。
次に得られた混合物を加圧下(0.18MPa)で、48時間保存し、活性白土を完全に沈殿させた。
その後、沈殿物を除去し、オレイン酸成分を含む(主としてオレイン酸グリセリドで構成された)液体を得た。
【0161】
次に、飽和脂肪酸成分を含む液体の調製について説明する。
まず、溶剤として、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、アセトン等を用いた低温結晶法によりパーム核油を粗精製した。
次に、粗精製したパーム核油:300体積部をフラスコに投入し、その後、フラスコ内に沸騰した水:100体積部を注いでフラスコに栓をした。
【0162】
次に、フラスコを振り、上記のパーム核油と沸騰した水とを混合した。
次に、フラスコ内の混合液が、3層に分離するまで、フラスコを静置した。
完全に分離が確認された後、フラスコを冷蔵庫に移し、24時間放置した。
その後、凍結成分を分離した。
得られた凍結成分について、上記と同様な処理を3回繰り返し施すことにより、飽和脂肪酸成分を含む(主として飽和脂肪酸グリセリドで構成された)液体(以下、「飽和脂肪酸成分液」とも言う)を得た。
【0163】
その後、オレイン酸グリセリド液:470重量部と、飽和脂肪酸成分液:30重量部とを混合し、エステル交換反応を行った。これにより、分子内に、オレイン酸成分と飽和脂肪酸成分とを有するグリセリドを主成分とする液体が得られた。
その後、エステル交換反応により得られたグリセリド液:500重量部と、酸化防止剤としてのアスコルビン酸ステアリン酸エステル(熱分解温度:300℃以上):5重量部とを混合し、絶縁性液体を得た。
得られた絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は6.8×1014Ωcmであった。
【0164】
[乾燥微粒子および酸化重合促進剤の分散]
上記のようにして得られた絶縁性液体:505重量部と、界面活性剤(ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド):1重量部と、カプセル化された酸化重合促進剤:1.25重量部(酸化重合促進剤として1重量部)と、上記乾燥微粒子:75重量部とを、ホモミキサー(特殊機化工業製)で10分間撹拌・混合することにより、液体現像剤を得た。
【0165】
(実施例2〜5)
エステル交換反応に供するオレイン酸グリセリド液および飽和脂肪酸成分液の比率を調整するとともに、酸化重合促進剤、酸化防止剤として表1に示したものを用い、液体現像剤中におけるオレイン酸成分、飽和脂肪酸成分、酸化防止剤、酸化重合促進剤の含有量を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0166】
(実施例6、7)
混練物の調製において、結着樹脂として表1に示すものを用いるとともに、液体現像剤中におけるオレイン酸成分、飽和脂肪酸成分、酸化防止剤、酸化重合促進剤の含有量を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例8)
酸化重合促進剤として、カプセル化していないオクチル酸亜鉛を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0167】
(実施例9)
酸化重合促進剤を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例10)
酸化重合促進剤および酸化防止剤を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0168】
(実施例11)
絶縁性液体の調製において、オレイン酸グリセリド液と飽和脂肪酸成分液とを用いたエステル交換反応を行わず、これらの混合液をそのまま用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例12)
飽和脂肪酸成分液の調製条件を変更することにより、飽和脂肪酸成分液の組成を変更した以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0169】
(比較例1)
絶縁性液体として、アイソパーGを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例2)
オレイン酸グリセリド液を用いず、飽和脂肪酸成分液とアスコルビン酸ステアリン酸エステルとを混合することにより絶縁性液体を調製した以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0170】
(比較例3)
飽和脂肪酸成分液を用いず、オレイン酸グリセリド液とアスコルビン酸ステアリン酸エステルとを混合することにより絶縁性液体を調製した以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
(比較例4)
オレイン酸グリセリド液の代わりに、主としてリノール酸のグリセリド(リノール酸グリセリド)で構成された液体(リノール酸グリセリドの含有率:94wt%以上)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0171】
なお、主としてリノール酸のグリセリドで構成された液体の調製は、以下のようにして行った。
まず、溶剤として、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、アセトン等を用いた低温結晶法により月見草油を粗精製した。
次に、粗精製した月見草油(第1の粗精製油):300体積部をフラスコに投入し、その後、フラスコ内に沸騰した水:100体積部を注いでフラスコに栓をした。
【0172】
次に、フラスコを振り、上記の月見草油(第1の粗精製油)と沸騰した水とを混合した。
次に、フラスコ内の混合液が、3層に分離するまで、フラスコを静置した。
完全に分離が確認された後、フラスコを冷凍庫に移し、24時間放置した。
その後、凍結していない成分を別のフラスコに移した。
この凍結していない成分に対して、再度、上記と同様の操作を繰り返し、得られた凍結していない成分を取り出し、粗製油脂(第2の粗精製油)を得た。
【0173】
次に、フラスコ内に、前述のようにして得られた粗製油脂(第2の粗精製油):100体積部と、主として含水ケイ酸アルミニウムで構成された活性白土:35体積部とを混合・撹拌した。
次に得られた混合物を加圧下(0.18MPa)で、48時間保存し、活性白土を完全に沈殿させた。
その後、沈殿物を除去し、リノール酸成分を含む(主としてリノール酸グリセリドで構成された)液体を得た。
【0174】
(比較例5)
オレイン酸グリセリド液の代わりに、主としてリノレン酸のグリセリド(リノレン酸グリセリド)で構成された液体(リノレン酸グリセリドの含有率:94wt%以上)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
なお、主としてリノレン酸のグリセリドで構成された液体の調製は、以下のようにして行った。
【0175】
まず、溶剤として、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、アセトン等を用いた低温結晶法により亜麻仁油を粗精製した。
次に、粗精製した亜麻仁油(第1の粗精製油):300体積部をフラスコに投入し、その後、フラスコ内に沸騰した水:100体積部を注いでフラスコに栓をした。
次に、フラスコを振り、上記の亜麻仁油(第1の粗精製油)と沸騰した水とを混合した。
【0176】
次に、フラスコ内の混合液が、3層に分離するまで、フラスコを静置した。
完全に分離が確認された後、フラスコを冷凍庫に移し、24時間放置した。
その後、凍結していない成分を別のフラスコに移した。
この凍結していない成分に対して、再度、上記と同様の操作を繰り返し、得られた凍結していない成分を取り出し、粗製油脂(第2の粗精製油)を得た。
【0177】
次に、フラスコ内に、前述のようにして得られた粗製油脂(第2の粗精製油):100体積部と、主として含水ケイ酸アルミニウムで構成された活性白土:35体積部とを混合・撹拌した。
次に得られた混合物を加圧下(0.18MPa)で、48時間保存し、活性白土を完全に沈殿させた。
その後、沈殿物を除去し、リノレン酸成分を含む(主としてリノレン酸グリセリドで構成された)液体を得た。
【0178】
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の条件を表1に示した。また、表1中には、絶縁性液体中におけるオレイン酸成分の含有率をX[mol%]、絶縁性液体中における飽和脂肪酸成分の含有率をY[mol%]としたときのX/Yの値も示した。なお、表中、比較例4、5についてのオレイン酸成分に関する欄には、オレイン酸成分酸に対応する脂肪酸成分に関する記載をした。また、表中、ポリエステル樹脂をPEs、エポキシ樹脂をEP、スチレン−アクリル共重合体をSt−Ac、オレイン酸をOL、リノール酸をLN、α−リノレン酸をLL、カプリン酸をCA、ラウリン酸をLA、ミスチリン酸をMY、パルミチン酸をPA、ステアリン酸をST、アラキジン酸をAR、ベヘン酸をBE、リグノセリン酸をLI、オクチル酸亜鉛をO−Zn、ナフテン酸カルシウムをN−Ca、リノレン酸コバルトをL−Co、α−トコフェロールをVE、ジブチルヒドロキシトルエンをBHT、ブチルヒドロキシアニソールをBHA、アスコルビン酸ステアリン酸エステルをVCで示した。
【0179】
【表1】

【0180】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、定着強度、保存性、および長期安定性の評価を行った。
[2.1]定着強度
図4に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成した。その後、記録紙上に形成された画像について、オーブンによる熱定着を行った。この熱定着は、120℃×30分間という条件で行った。
【0181】
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎ :画像濃度残存率が90%以上。
○ :画像濃度残存率が80%以上90%未満。
△ :画像濃度残存率が70%以上80%未満。
× :画像濃度残存率が70%未満。
【0182】
[2.2]保存性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、温度:20〜28℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:トナー粒子の浮遊および凝集沈降がまったく認められない。
○:トナー粒子の浮遊および凝集沈降がほとんど認められない。
△:トナー粒子の浮遊または凝集沈降がわずかに認められる。
×:トナー粒子の浮遊および凝集沈降がはっきりと認められる。
【0183】
[2.3]長期安定性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、35℃、相対湿度70%の環境下に、6ヶ月間放置した。その後、液体現像剤の様子を観察し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:液体現像剤の増粘/変色がまったく認められない。
○:液体現像剤の増粘/変色がほとんど認められない。
△:液体現像剤の増粘/変色がわずかに認められる。
×:液体現像剤の増粘/変色がはっきりと認められる。
【0184】
これらの結果を、トナー粒子の平均円形度R、円形度標準偏差、個数基準の平均粒径、粒径標準偏差とともに表2に示す。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0185】
【表2】

【0186】
表2から明らかなように、本発明の液体現像剤は、定着強度、保存性、および長期安定性に優れていた。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
また、表2から明らかなように、本発明の液体現像剤では、いずれも、トナー粒子の円形度が大きく、粒度分布の幅の小さいものであった。また、トナー粒子の形状のばらつき(円形度の標準偏差)も小さかった。
【0187】
また、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
また、乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造を、図3に示すような構成のものから、図7〜図10に示すような構成のものに変更して、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。また、図7〜図10に示すようなヘッド部を備えた乾燥微粒子製造装置では、吐出部の径を小さくし、水系懸濁液の濃度を比較的高くした場合であっても、好適に吐出することができ、上記と同様に結果が得られた。また、高濃度の水系懸濁液を用いたことから、乾燥にかかる時間を短縮することができ、生産性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】水系乳化液の調製に用いる混練物を製造するための混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の液体現像剤の製造に用いられる乾燥微粒子製造装置(トナー粒子製造装置)の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図2に示す乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図4】本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の液体現像剤が適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【図7】乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図8】乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図9】乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図10】乾燥微粒子製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0189】
K1…混練機 K2…プロセス部 K21…バレル K22、K23…スクリュー K24…固定部材 K25…脱気口 K3…ヘッド部 K31…内部空間 K32…押出口 K33…横断面積漸減部 K4…フィーダー K5…原料 K6…冷却機 K61、K62、K63、K64…ロール K611、K621、K631、K641…回転軸 K65、K66…ベルト K67…排出部 K7…混練物 M1…乾燥微粒子製造装置(トナー粒子製造装置) M2…ヘッド部 M21…分散液貯留部 M22…圧電素子 M221…下部電極 M222…圧電体 M223…上部電極 M23…吐出部 M24…振動板 M25…音響レンズ M26…圧力パルス収束部 M3…分散媒除去部 M31…ハウジング M311…縮径部 M4…水系懸濁液供給部(水系分散液供給部) M41…攪拌手段 M5…回収部 M7…ガス噴射口 M8…電圧印加手段 M10…ガス流供給手段 M101…ダクト M11…熱交換器 M12…圧力調整手段 M121…接続管 M122…拡径部 M123…フィルター M13…絞り部材 P…ポンプ 3…水系懸濁液(水系分散液) 31…分散質 32…分散媒(水系分散媒) 4…乾燥微粒子(トナー粒子) 9…液滴 P1…画像形成装置 P2…感光体 P3…帯電器 P4…露光 P10…現像器 P11…現像剤容器 P12…塗布ローラ P13…現像ローラ P14…液体現像剤塗布層 P15…メータリングブレード P16…ローラ芯体 P17…現像ローラクリーニングブレード P18…中間転写ローラ P19…二次転写ローラ P20…情報記録媒体 P21…除電光 P22…クリーニングブレード P23…クリーニングブレード P24…帯電ブレード F40…定着装置 F1…熱定着ロール(加熱ロール) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ロール基材 F1c…弾性体 F2…加圧ロール F2a…回転軸 F2b…ロール基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…シート材 F5a…未定着トナー像 F6…クリーニング部材 F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、
前記絶縁性液体が、オレイン酸成分と、飽和脂肪酸成分とを含むものであることを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記絶縁性液体中における前記オレイン酸成分の含有率をX[mol%]、前記絶縁性液体中における前記飽和脂肪酸成分の含有率をY[mol%]としたとき、0.5≦X/Y≦50の関係を満足する請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記絶縁性液体は、主として、グリセリンと、前記オレイン酸成分および前記飽和脂肪酸成分とのエステルで構成されたものである請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記絶縁性液体中における前記エステルの含有率は、90wt%以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
液体現像剤は、酸化防止剤を含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
前記酸化防止剤の含有量は、前記絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量部である請求項5に記載の液体現像剤。
【請求項7】
前記酸化防止剤の熱分解温度は、定着時における定着温度以下である請求項5または6に記載の液体現像剤。
【請求項8】
前記酸化防止剤の熱分解温度は、200℃以下である請求項5ないし7のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項9】
液体現像剤は、定着時における前記オレイン酸成分の酸化重合反応を促進する酸化重合促進剤を含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項10】
前記酸化重合促進剤は、脂肪酸金属塩である請求項9に記載の液体現像剤。
【請求項11】
前記酸化重合促進剤の含有量は、前記絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量部である請求項9または10に記載の液体現像剤。
【請求項12】
前記酸化重合促進剤は、脂肪酸金属塩である請求項9ないし11のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項13】
前記酸化重合促進剤は、カプセル化された状態で前記絶縁性液体中に含まれる請求項9ないし12のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項14】
前記カプセル化は、前記酸化重合促進剤を多孔質体に吸着させた後、該多孔質体にポリエーテルで被覆することにより行ったものである請求項13に記載の液体現像剤。
【請求項15】
前記絶縁性液体のヨウ素価が、50〜200である請求項1ないし14のいずれかに記載の液体現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−350024(P2006−350024A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176673(P2005−176673)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】