説明

液体現像剤

【課題】環境安定性に優れるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、環境に優しい液体現像剤を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、絶縁性液体は、第1の油脂と、第2の油脂とを含み、かつ、第1の油脂および前記第2の油脂は、不飽和脂肪酸成分を含むものであり、第1の油脂のヨウ素価をI、第2の油脂のヨウ素価をIとしたとき、I−I≧20の関係を満足することを特徴とする。第1の油脂として乾性油、第2の油脂として半乾性油を用いることができる。また、第1の油脂および前記第2の油脂として、ともに乾性油を用いることができる。また、第1の油脂および前記第2の油脂として、ともに半乾性油を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーによる方法と、トナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤(例えば、特許文献1参照)を用いる方法とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、粉体による人体等への悪影響が懸念されるほか、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、液体現像剤中におけるトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0004】
しかしながら、従来の液体現像剤で用いられてきた絶縁性液体は、石油系の炭化水素を主とするものであるため、例えば、画像形成装置等の外に出た場合に、環境に悪影響を及ぼすことが懸念されていた。
また、通常、液体現像剤では、定着の際にトナー粒子の表面に絶縁性液体が付着している。従来の液体現像剤では、このトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体が定着強度を低下させるという問題もあった。また、トナーの定着強度を向上させるために、比較的高い温度で、長時間加熱してトナー粒子を定着させることも考えられるが、近年の画像形成のさらなる高速化、省エネルギー化という要望を満足させるのが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−152256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、環境安定性に優れるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、環境に優しい液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、
前記絶縁性液体は、第1の油脂と、第2の油脂とを含み、かつ、
前記第1の油脂および前記第2の油脂は、不飽和脂肪酸成分を含むものであり、
前記第1の油脂のヨウ素価をI、前記第2の油脂のヨウ素価をIとしたとき、I−I≧20の関係を満足することを特徴とする。
これにより、環境安定性に優れるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れ、かつ、環境に優しい液体現像剤を提供することにある。
【0008】
本発明の液体現像剤では、前記第1の油脂および前記第2の油脂は、ともに半乾性油であることが好ましい。
これにより、優れた定着特性を発揮させつつ、液体現像剤の環境安定性を特に高いものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、前記第1の油脂が乾性油で、前記第2の油脂が半乾性油であることが好ましい。
これにより、優れた環境安定性を保持しつつ、定着特性に特に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明の液体現像剤では、前記第1の油脂および前記第2の油脂は、ともに乾性油であることが好ましい。
これにより、乾性油の優れた酸化重合性(乾燥性)、半乾性油の優れた環境安定性といった双方の特徴をより効果的に発揮させることができる。
本発明の液体現像剤では、前記乾性油は、共役不飽和結合を有する不飽和脂肪酸成分を含むものであることが好ましい。
これにより、定着時において、比較的低い温度で酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。また、共役不飽和脂肪酸成分は、トナー粒子を構成する樹脂材料との親和性が特に高いことから、液体現像剤中におけるトナー粒子の分散性を特に高いものとすることができる。
【0010】
本発明の液体現像剤では、前記乾性油は、脱水ひまし油、桐油、または、アマニ油であることが好ましい。
これにより、定着時において、比較的低い温度で酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。
本発明の液体現像剤では、前記半乾性油は、大豆油、菜種油、または、サフラワー油であることが好ましい。
これにより、優れた定着性を保持しつつ、環境安定性に特に優れた液体現像剤を提供することができる。
【0011】
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体のヨウ素価は、80〜220であることが好ましい。
これにより、絶縁性液体の化学的な劣化を十分に防止しつつ、酸化重合反応を効率良く進行させることができ、トナー粒子を記録媒体に定着した際の定着強度をより向上させることができる。
【0012】
本発明の液体現像剤は、酸化防止剤を含むものであることが好ましい。
これにより、液体現像剤中における不飽和脂肪酸成分の不本意な酸化をより効果的に防止することができる。
本発明の液体現像剤は、定着時における、前記油脂の酸化重合反応を促進する酸化重合促進剤を含むものであることが好ましい。
これにより、必要時(定着時)において、不飽和脂肪酸成分を効果的に酸化重合(硬化)させることができる。その結果、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0013】
本発明の液体現像剤では、前記酸化重合促進剤は、カプセル化された状態で前記絶縁性液体中に含まれることが好ましい。
これにより、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応をより確実に防止するとともに、定着時においては、カプセルが定着時の圧力等によって潰れることにより、酸化重合促進剤と不飽和脂肪酸成分とが接触し、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を確実に進行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散したものである。
<絶縁性液体>
まず、絶縁性液体について説明する。
絶縁性液体は、第1の油脂と、第2の油脂とを含むものである。
【0015】
また、第1の油脂および第2の油脂は、不飽和脂肪酸成分を含むものである。
不飽和脂肪酸成分は、植物由来の油脂であり、環境に優しい成分である。したがって、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0016】
また、不飽和脂肪酸成分は、トナー粒子の記録媒体への定着性向上に寄与することができる成分である。より詳しく説明すると、不飽和脂肪酸成分は、酸化重合することにより(定着時における定着温度で酸化重合することにより)、それ自体が硬化し、トナー粒子の定着性を向上させる機能を有する成分である。また、不飽和脂肪酸成分が硬化することにより、定着したトナー画像に対して、水性ボールペンでの追記を容易かつ確実に行うことができる。
【0017】
しかしながら、絶縁性液体として、不飽和脂肪酸成分を含み、かつ、ヨウ素価が比較的高い油脂を用いた場合、このような油脂は比較的酸化されやすいため、液体現像剤の環境安定性が低下するという問題がある。
また、絶縁性液体として、不飽和脂肪酸成分を含み、かつ、ヨウ素価が比較的低い油脂を用いた場合、このような油脂は比較的酸化されにくいため、液体現像剤の環境安定性を保持することが可能であるが、不飽和脂肪酸成分の酸化重合を進行させるのに十分な熱量が必要であるという問題がある。
【0018】
そこで、本発明者は、絶縁性液体の構成成分として、不飽和脂肪酸成分を含む、ヨウ素価が比較的高い第1の油脂と、不飽和脂肪酸成分を含む、ヨウ素価が比較的低い第2の油脂とを併用し、さらに、第1の油脂のヨウ素価をI、第2の油脂のヨウ素価をIとしたとき、I−I≧20の関係を満足することにより、優れた環境安定性と優れた定着特性とを両立できることを見出した。すなわち、本発明によれば、環境安定性に優れるとともに、記録媒体へのトナー粒子の定着特性に優れた液体現像剤とすることができる。また、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0019】
このように本発明では、第1の油脂のヨウ素価をI、第2の油脂のヨウ素価をIとしたとき、I−I≧20の関係を満足するものであるが、20≦I−I≦50の関係を満足するのが好ましい。これにより、本発明の効果がより顕著なものとなる。なお、絶縁性液体が3種以上の油脂を含む場合、最もヨウ素価の高い油脂を第1の油脂とし、最もヨウ素価の低い油脂を第2の油脂とする。
【0020】
第1の油脂のヨウ素価は、具体的には、120以上であるのが好ましく、150以上であるのがより好ましい。これにより、液体現像剤は、優れた環境安定性を十分に保持しつつ、より優れた定着特性を示すものとなる。
また、第2の油脂のヨウ素価は、具体的には、120以下であるのが好ましく、100以下であるのがより好ましい。これにより、液体現像剤は、優れた定着特性を十分に保持しつつ、より優れた環境安定性を示すものとなる。
【0021】
また、絶縁性液体中における第1の油脂と第2の油脂との含有量比(混合比)は、9:1〜1:9であるのが好ましく、8:2〜2:8であるのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著に発揮させることができる。
上述したような第1の油脂および第2の油脂としては、乾性油および/または半乾性油が挙げられる。なお、乾性油とは、不飽和脂肪酸成分を含む、ヨウ素価が120よりも大きい油脂のことを言い、半乾性油とは、不飽和脂肪酸成分を含む、ヨウ素価が90〜120の油脂のことを言う。
【0022】
乾性油としては、例えば、脱水ひまし油、桐油、アマニ油、ひまわり油、ローズヒップ油、荏油等や、これらから誘導された脂肪酸、脂肪酸モノエステル等が挙げられる。上述した中でも、例えば、脂肪酸モノエステルを用いた場合、記録媒体への浸透性が向上し、定着特性がさらに向上する。
また、乾性油としては、共役不飽和結合を有する不飽和脂肪酸成分を含むものを用いるのが好ましい。これにより、定着時において、比較的低い温度で酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。また、共役不飽和脂肪酸成分は、トナー粒子を構成する樹脂材料との親和性が特に高いことから、液体現像剤中におけるトナー粒子の分散性を特に高いものとすることができる。このような共役不飽和脂肪酸成分を比較的多く含むものとしては、脱水ひまし油、桐油、アマニ油が挙げられる。このような脱水ひまし油、桐油、アマニ油を用いた場合、定着時において、比較的低い温度で酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。
【0023】
半乾性油としては、例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、綿実油、胡麻油、トウモロコシ油等や、これらから誘導された脂肪酸、脂肪酸モノエステル等が挙げられる。上述した中でも、大豆油、菜種油、サフラワー油は、保存時における環境安定性が特に高く、これらを用いた場合、優れた定着性を保持しつつ、環境安定性に特に優れた液体現像剤を提供することができる。また、上述した中でも、例えば、脂肪酸モノエステルを用いた場合、記録媒体への浸透性が向上し、定着特性がさらに向上する。
【0024】
第1の油脂および第2の油脂としては、そのヨウ素価の差が20以上あるものであれば、乾性油、半乾性油のいずれを用いてもよく、例えば、以下に示すような組み合わせで用いることができる。
例えば、第1の油脂として乾性油を用い、第2の油脂として半乾性油を用いることができる。これにより、乾性油の優れた酸化重合性(乾燥性)、半乾性油の優れた環境安定性といった双方の特徴をより効果的に発揮させることができる。
【0025】
また、このような組み合わせの場合、第1の油脂(乾性油)としては、上述した乾性油の中でも、特に、アマニ油、脱水ひまし油、桐油を用いるのが好ましく、第2の油脂(半乾性油)としては、上述した半乾性油の中でも、特に、大豆油、菜種油を用いるのが好ましい。これにより、前述の効果がより顕著なものとなる。
また、第1の油脂および第2の油脂として、ともに乾性油を用いることができる。これにより、優れた環境安定性を保持しつつ、定着特性に特に優れたものとすることができる。また、これにより、定着特性の精巧な設計も可能となる。
【0026】
また、このような組み合わせの場合、第1の油脂(乾性油)としては、上述した乾性油の中でも、特に、アマニ油を用いるのが好ましく、第2の油脂(乾性油)としては、上述した乾性油の中でも、特に、脱水ひまし油を用いるのが好ましい。これにより、前述の効果がより顕著なものとなる。
また、第1の油脂および第2の油脂として、ともに半乾性油を用いることができる。これにより、優れた定着特性を発揮させつつ、液体現像剤の環境安定性を特に高いものとすることができる。また、特に、後述するような紫外線照射手段を有する定着装置に適用した場合、高い環境特性を有するとともに、優れた定着特性を効果的に発揮させることができる。
【0027】
また、このような組み合わせの場合、第1の油脂(半乾性油)としては、上述した半乾性油の中でも、特に、大豆油を用いるのが好ましく、第2の油脂(半乾性油)としては、上述した半乾性油の中でも、特に、菜種油を用いるのが好ましい。これにより、前述の効果がより顕著なものとなる。
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、不飽和脂肪酸成分の酸化を防止・抑制する機能を有する酸化防止剤が含まれていてもよい。このように酸化防止剤を含んでいると、液体現像剤中における不飽和脂肪酸成分の不本意な酸化をより効果的に防止することができる。その結果、液体現像剤(絶縁性液体)の経時的な劣化等を防止することができ、長期間にわたって、トナー粒子の分散性、記録媒体に対する定着性等を、特に優れたものとすることができる。すなわち、液体現像剤の環境安定性を特に優れたものとすることができる。
【0028】
上述したような酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、d−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、酢酸−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、α−トコフェロール等のビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩類、アスコルビン酸ステアリン酸エステル等のビタミンC、緑茶抽出物、生コーヒー抽出物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
上述した中でも、ビタミンEを用いた場合、以下のような効果が得られる。すなわち、ビタミンEは、環境に優しい成分であるとともに、それ自身が酸化されて生じる物質の液体現像剤へ与える影響が小さい成分であるから、液体現像剤をより環境に優しいものとすることができる。また、ビタミンEは、上記のような絶縁性液体への分散性が高いことから、酸化防止剤として好適に用いることができる。また、ビタミンEと、前述したような第1の油脂および第2の油脂とを併用することにより、絶縁性液体とトナー粒子との親和性をさらに向上させることができる。その結果、液体現像剤の環境安定性、記録媒体に対するトナー粒子の定着性等を特に優れたものとすることができる。
【0030】
また、上述した中でも、ビタミンCを用いた場合、以下のような効果が得られる。すなわち、前述したビタミンEと同様に、ビタミンCは、環境に優しい成分であるとともに、それ自身が酸化されて生じる物質の液体現像剤へ与える影響が小さい成分であるから、液体現像剤をより環境に優しいものとすることができる。また、ビタミンCは、熱分解温度が比較的低いため、液体現像剤の保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、酸化防止剤としての機能を十分に発揮させることができるとともに、定着時においては、酸化防止剤としての機能を低下させ、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を促進させることができる。
【0031】
酸化防止剤の熱分解温度は、定着時における定着温度以下であるのが好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等において、絶縁性液体の劣化を効果的に防止するとともに、定着時においては、トナー粒子の表面に付着した絶縁性液体中の酸化防止剤を熱分解させ、不飽和脂肪酸成分を効果的に硬化(酸化重合反応)させることができ、記録媒体に対するトナー粒子の定着性を十分に優れたものとすることができる。
【0032】
酸化防止剤の熱分解温度は、具体的には、200℃以下であるのが好ましく、180℃以下であるのがより好ましい。これにより、酸化防止剤としての機能を十分に保持しつつ、トナー粒子の定着強度をより効果的に向上させることができる。
絶縁性液体中における酸化防止剤の含有量は、絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜5重量部であるのが好ましく、0.1〜4重量部であるのがより好ましく、1〜3重量部であるのがさらに好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等における不飽和脂肪酸成分の酸化による劣化をより確実に防止しつつ、必要時(定着時)においては不飽和脂肪酸成分の硬化(酸化重合反応)を効率良く進行させることができる。
【0033】
また、液体現像剤中には、上述した不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する酸化重合促進剤(硬化促進剤)が含まれていてもよい。これにより、必要時(定着時)において、不飽和脂肪酸成分を効果的に酸化重合(硬化)させることができる。その結果、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
液体現像剤中に酸化重合促進剤が含まれる場合、当該酸化重合促進剤は、特に限定されないが、保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、実質的に、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与せず、必要時(定着時)において不飽和脂肪酸成分の酸化重合(硬化)反応に寄与するものであるのが好ましい。これにより、液体現像剤の環境安定性を優れたものとしつつ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0034】
このような酸化重合促進剤としては、例えば、加熱条件下で不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する機能を有し、室温付近では実質的に不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する機能を有さない物質、すなわち、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)における活性化エネルギーが比較的高い物質を用いることができる。
【0035】
このような物質(酸化重合促進剤)としては、例えば、各種の脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような物質(酸化重合促進剤)を用いることにより、保存時等における液体現像剤の安定性を保持しつつ、定着の際に効果的に不飽和脂肪酸成分の酸化重合を進行させることができる。特に、脂肪酸金属塩は、定着時に酸素を供給することにより、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を促進することができるため、定着時等の加熱時において酸化重合反応を効果的に促進することができる。したがって、保存時等においては酸化重合反応が生じるのをより確実に防止しつつ、定着時等において酸化重合反応をより効果的に促進することができる。また、脂肪酸金属塩は、前述したようなごま油への分散性が高いから、絶縁性液体中において均一に分散させることができ、その結果、定着時において、酸化重合反応を全体的に効率良く進行させることができる。
【0036】
このような脂肪酸金属塩としては、例えば、樹脂酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩等)、オクチル酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩、カルシウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、亜鉛塩、カルシウム塩等)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
また、酸化重合促進剤は、カプセル化された状態で、絶縁性液体中に含まれるものであってもよい。これにより、上記と同様に、酸化重合促進剤を、保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、実質的に、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与せず、必要時において不飽和脂肪酸成分の酸化重合(硬化)反応に寄与するものとすることができる。すなわち、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応をより確実に防止するとともに、定着時においては、カプセルが定着時の圧力等によって潰れることにより、酸化重合促進剤と不飽和脂肪酸成分とが接触し、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を確実に進行させることができる。また、このような構成であると、酸化重合促進剤の材料の選択の幅が広がる。言い換えると、反応性の高い酸化重合促進剤(比較的低温で不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与する酸化重合促進剤)であっても好適に用いることができ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0038】
絶縁性液体中における酸化重合促進剤の含有量は、絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜10重量部であるのが好ましく、0.05〜7重量部であるのがより好ましく、0.1〜5重量部であるのがさらに好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応を十分に防止しつつ、定着時において不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応をより確実に進行させることができる。
【0039】
上述したような絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は、1×10Ωcm以上であるのが好ましく、1×1011Ωcm以上であるのがより好ましく、1×1013Ωcm以上であるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
また、絶縁性液体のヨウ素価は、特に限定されないが、80〜220であるのが好ましく、100〜200であるのがより好ましい。これにより、絶縁性液体の化学的な劣化を十分に防止しつつ、酸化重合反応を効率良く進行させることができ、トナー粒子を記録媒体に定着した際の定着強度をより向上させることができる。
【0040】
<トナー粒子>
次に、トナー粒子について説明する。
[トナー粒子の構成材料]
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子(トナー)は、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)と着色剤とを含むものである。
【0041】
1.樹脂材料
液体現像剤を構成するトナーは、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、ポリエステル樹脂を用いた場合、液体現像剤中でのトナー粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。また、ポリエステル樹脂は、透明性が高く、結着樹脂として用いた場合、得られる画像の発色性を高いものとすることができる。
【0042】
樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましく、60〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
【0043】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいる。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
3.その他の成分
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、混練物の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0046】
[トナー粒子の形状]
上記のような材料で構成されたトナー粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.1〜4μmであるのがより好ましく、0.5〜3μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での特性のばらつきを特に小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を特に高いものとしつつ、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
【0047】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での粒径の標準偏差は、1.0μm以下であるのが好ましく、0.1〜1.0μmであるのがより好ましく、0.1〜0.8μmであるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
また、液体現像剤を構成するトナー粒子についての下記式(I)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.85以上であるのが好ましく、0.90〜0.99であるのがより好ましく、0.92〜0.99であるのがさらに好ましい。
【0048】
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
これにより、トナー粒子の粒径を十分に小さいものとしつつ、トナー粒子の転写効率、機械的強度を特に優れたものとすることができる。
【0049】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での平均円形度の標準偏差は、0.15以下であるのが好ましく、0.001〜0.10であるのがより好ましく、0.001〜0.05であるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
以上説明したような液体現像剤は、いかなる方法で得られたものであってもよく、例えば、トナー材料を粉砕法により粉砕して得られたトナー粒子を絶縁性液体中に分散させて製造したものであってもよいし、トナー材料が分散媒中に分散させて得られた分散液を用いて、液体現像剤を製造する方法(例えば、特願2004−370231号の明細書に記載されたような方法)により製造したものであってもよい。
【0050】
次に、上述したような本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。画像形成装置P1には、円筒状の感光体P2のドラムを有し、エピクロロヒドリンゴム等で構成された帯電器P3によりその表面が均一に帯電された後、レーザーダイオード等によって記録すべき情報に応じた露光P4が行なわれて静電潜像が形成される。
【0051】
現像器P10は、現像剤容器P11中にその一部が浸漬された塗布ローラP12、現像ローラP13を有している。塗布ローラP12は、例えば、ステンレス等の金属製のグラビアローラであり、現像ローラP13と対向して回転する。また、塗布ローラP12の表面には、液体現像剤塗布層P14が形成され、メータリングブレードP15によってその厚さが一定に保持される。
【0052】
そして、塗布ローラP12から現像ローラP13に対して液体現像剤が転写される。現像ローラP13は、ステンレス等の金属製のローラ芯体P16上に低硬度シリコーンゴム層を有し、その表面には導電性のPFA(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体)製の樹脂層が形成されており、感光体P2と等速で回転して液体現像剤を潜像部に転写する。感光体P2へ転写後に現像ローラP13に残った液体現像剤は、現像ローラクリーニングブレードP17によって除去されて現像剤容器P11内へ回収される。
【0053】
また、感光体から中間転写ローラへのトナー画像の転写の後には、感光体は、除電光P21によって除電されるとともに、感光体上に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP22によって除去される。
同様に、中間転写ローラP18から紙等の記録媒体F5へ転写後に中間転写ローラP18に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP23によって除去される。
【0054】
感光体P2上に形成されたトナー像は、中間転写ローラP18に対して転写された後に、二次転写ローラP19に転写電流を通電して、両者の間を通過する記録媒体F5に画像が転写され、記録媒体F5上でのトナー画像は、後述するような定着装置を使用して定着が行われる。
図2は、本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。非接触方式にあっては、現像ローラP13には0.5mm厚のリン青銅板で構成された帯電ブレードP24が設けられる。帯電ブレードP24は液体現像剤層に接触して摩擦帯電させる機能を有すると共に、塗布ローラP12がグラビアロールであるために現像ローラP13上にはグラビアロール表面の凹凸に応じた現像剤層が形成されるので、その凹凸を均一に均す機能を果たすものであり、配置方向としては現像ローラの回転方向に対してカウンタ方向でもトレイル方向のいずれでもよく、また、ブレート形状ではなくローラ形状でもよい。
【0055】
また、現像ローラP13と感光体P2との間は、200μm〜800μmの間隔が設けられると共に、現像ローラP13と感光体P2との間には直流電圧200〜800Vに重畳される500〜3000Vpp、周波数50〜3000Hzの交流電圧が印加されるのが好ましい。それ以外は、図4を参照しつつ説明した画像形成装置と同様である。
なお、図1、図2共に一色の液体現像剤による画像形成について説明したが、複数色のカラートナーを用いて画像形成する場合には、複数色の現像器を用いて各色の画像を形成してカラー画像を形成することができる。
【0056】
図3は、本発明の液体現像剤が適用される定着装置の一例を示す断面図である。
定着装置F40は、図1に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、紫外線照射手段F8と、スプリングF9とを有している。
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
【0057】
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
また、熱定着ローラF1の弾性体F1cの表層にはPFA層が設けられている。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0058】
また、熱定着ローラF1の内部に、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0059】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像が形成された記録媒体F5に対して圧力を加えるよう構成されている。圧力を加えることにより、絶縁性液体を記録媒体F5中により効率良く浸透させることができる。その結果、熱と後述する紫外線照射によって、絶縁性液体中の不飽和脂肪酸成分を記録媒体F5内部でより確実に硬化させることができ、アンカー効果により、記録媒体F5上にトナー画像F5aをより強固に定着させることができる。
【0060】
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
前述した熱定着ローラF1の弾性体F1cと加圧ローラF2の弾性体F2cとは、略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップを形成する。また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0061】
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体F5が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0062】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体F5の進入がスムーズに行われる記録媒体F5の導入口部が形成でき、安定した記録媒体F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0063】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
【0064】
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
定着装置F40において、後述するような画像形成装置を用いて未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体F5上に形成された未定着のトナー画像F5aが熱定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0065】
紫外線照射手段F8は、上記のようにして排出された記録媒体F5のトナー画像F5aが形成されている面に対して、紫外線を照射する機能を有している。
このように、記録媒体F5上の未定着のトナー画像F5aを熱定着ローラで加熱し、その後紫外線照射することにより、記録媒体に染み込んだ不飽和脂肪酸成分を確実に酸化重合させることができる。その結果、硬化した不飽和脂肪酸成分によって、アンカー効果が働き、トナー粒子を記録媒体上に強固に定着させることができる。また、前述したような不飽和脂肪酸成分の酸化重合を利用することにより、熱定着ローラによって特に高い温度に加熱しなくても、トナー粒子を記録媒体上に強固に定着させることができる。
【0066】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
【0067】
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0068】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
【0069】
未定着トナー画像を定着する際の定着温度は、100〜200℃であるのが好ましく、100〜180℃であるのがより好ましい。このような定着温度であると、酸化防止剤として前述したようなものが含まれる場合には、酸化防止剤の分解が容易となり、トナー粒子の定着強度をより効果的に向上させることができる。また、このような定着温度が前記範囲内の値であると、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)をより効果的に進行させることができる。このような傾向は、液体現像剤中に酸化重合促進剤が含まれる場合において、より顕著に発揮される。
【0070】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
また、前述した実施形態では、第2の油脂として、乾性油、半乾性油を用いる場合について説明したが、不乾性油を用いてもよい。
【実施例】
【0071】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
[トナー粒子の製造]
まず、ポリエステル樹脂(軟化温度:99℃、分子量:7500):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0072】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0073】
一方、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:1重量部と、イオン交換水:700重量部とを均一に混合した水系液体を用意した。
この水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が3.0μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
【0074】
その後、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は30.5wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(固形微粒子)の平均粒径は1.4μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
上記のようにして得られた懸濁液を噴霧乾燥により乾燥することで、吐出した水系懸濁液の液滴から分散媒が除去され、乾燥トナー粒子を得た。
【0075】
[絶縁性液体の調製]
一方、絶縁性液体を以下のようにして得た。
まず、第1の油脂としてのアマニ油(日清オイリオ社製、ヨウ素価:190):120重量部と、第2の油脂としての菜種油(日清オイリオ社製、ヨウ素価:100):90重量部とを用意した。
これら第1の油脂と第2の油脂とを混合することにより、絶縁性液体を調整した。
得られた絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は2.0×1013Ωcmであった。また、得られた絶縁性液体のヨウ素価は、150であった。
【0076】
[酸化重合促進剤のカプセル化]
一方、以下のようにして、カプセル化された酸化重合促進剤を用意した。
まず、酸化重合促進剤としてのオクチル酸亜鉛:10gをアセトン15mlに溶解させ、得られた溶液を多孔質親水性シリカゲルに吸着させ、芯材を得た。
次に、得られた芯材10gとポリエチレングリコール(PEG)20gとを加温混合し、混合物を得た。
次に、この混合物を日石三菱社製AF6号ソルベント400ml中に入れ、ホモミキサーにて十分分散させた後、徐冷してPEGを沈着させた。
その後、ろ過により溶剤を除去してカプセル化された酸化重合促進剤を得た。
【0077】
[トナー粒子および酸化重合促進剤の分散]
上記のようにして得られた絶縁性液体:505重量部と、界面活性剤(ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド):1重量部と、カプセル化された酸化重合促進剤:1.25重量部(酸化重合促進剤として1重量部)と、上記トナー粒子:75重量部とを、ホモミキサー(特殊機化工業製)で10分間撹拌・混合することにより、液体現像剤を得た。
得られた液体現像剤中における、トナー粒子の平均粒径は1.4μm、トナー粒子の平均円形度は0.96μmであった。
【0078】
(実施例2〜5)
第1の油脂と第2の油脂との混合量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例6)
第1の油脂として、アマニ油の代わりに、大豆油(日清オイリオ社製、商品名:「大豆白絞油」、ヨウ素価:120)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0079】
(実施例7〜10)
第1の油脂と第2の油脂との混合量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例6と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例11)
第2の油脂として、菜種油の代わりに、脱水ひまし油(小倉合成社製、ヨウ素価:140)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0080】
(実施例12〜15)
第1の油脂と第2の油脂との混合量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例11と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例16)
第1の油脂として、アマニ油の代わりに、アマニ油脂肪酸メチル(日清オイリオ社製、ヨウ素価:190)を用い、第2の油脂として、菜種油の代わりに、菜種油脂肪酸メチル(日清オイリオ社製、ヨウ素価:100)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0081】
(実施例17〜20)
第1の油脂と第2の油脂との混合量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例16と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例21)
第1の油脂として、アマニ油脂肪酸メチルの代わりに、大豆油脂肪酸メチル(日清オイリオ社製、ヨウ素価:120)を用いた以外は、前記実施例16と同様にして液体現像剤を調製した。
【0082】
(実施例22〜25)
第1の油脂と第2の油脂との混合量を表2に示すように変更した以外は、前記実施例21と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例26)
第2の油脂として、菜種油脂肪酸メチルの代わりに、脱水ひまし油脂肪酸メチル(小倉合成社製、ヨウ素価:150)を用いた以外は、前記実施例16と同様にして液体現像剤を調製した。
【0083】
(実施例27〜30)
第1の油脂と第2の油脂との混合量を表2に示すように変更した以外は、前記実施例26と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例31)
第1の油脂として、アマニ油の代わりに、脱水ひまし油脂肪酸メチル(小倉合成社製、ヨウ素価:150)を用い、第2の油脂として、菜種油の代わりに、大豆油脂肪酸メチル(日清オイリオ社製、ヨウ素価:120)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0084】
(実施例32〜35)
第1の油脂と第2の油脂との混合量を表2に示すように変更した以外は、前記実施例31と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例36)
第1の油脂として、アマニ油の代わりに、桐油(ヨウ素価:160)を用い、第2の油脂として、菜種油の代わりに、サフラワー油(日清オイリオ社製、ヨウ素価:120)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
(実施例37〜40)
第1の油脂と第2の油脂との混合量を表2に示すように変更した以外は、前記実施例36と同様にして液体現像剤を調製した。
【0085】
(比較例1)
絶縁性液体として、アイソパーGを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例2)
絶縁性液体として、第2の油脂を用いずに、第1の油脂(アマニ油)のみで構成されたものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0086】
(比較例3)
絶縁性液体として、第1の油脂を用いずに、第2の油脂(菜種油)のみで構成されたものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤中の絶縁性液体の構成を表1および表2に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、定着強度および環境安定性の評価を行った。
[2.1]定着強度
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤を図1に示す画像形成装置に投入し、記録媒体(富士ゼロックスオフィスサプライ製、J紙)上に未定着のトナー画像を形成した。
【0090】
次に、形成した未定着のトナー画像を図3に示すような定着装置を用いて、記録媒体上に定着した。
なお、定着装置としては、アルミ芯金(外径φ30mm、長さ240mm、肉厚1mm)の表面に、厚さ30μmの離型層を形成した熱定着ローラと、熱加硫型シリコーンゴムで形成された外径φ30mm、長さ240mm、肉厚7mmの加圧ローラとを有するものを用いた。離型層としては、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で構成されたものを用いた。
【0091】
また、熱定着ローラ内の加熱源としては、発光部長さ240mm、全長292mm、850ワットのハロゲンランプを用いた。また、加圧ローラの圧接力は、4kgとし、ニップ幅は約8mmとした。また、定着温度は、180℃に設定した。また、定着装置の記録媒体の搬送速度を30枚/分とした。
また、紫外線照射手段として、高圧水銀ランプ(100W/cm)を用い、記録媒体から2cmの距離から照射した。
上記のようにして得られた記録媒体上の定着トナー画像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0092】
◎◎:画像濃度残存率が95%以上。
◎ :画像濃度残存率が90%以上95%未満。
○ :画像濃度残存率が80%以上90%未満。
△ :画像濃度残存率が70%以上80%未満。
× :画像濃度残存率が70%未満。
【0093】
[2.2]環境安定性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、35℃、相対湿度65%の環境下に、6ヶ月間放置した。その後、液体現像剤の様子を観察し、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:液体現像剤の増粘/変色がまったく認められない。
◎ :液体現像剤の増粘/変色がほとんど認められない。
○ :液体現像剤の増粘/変色がわずかに認められるが、液体現像剤として問題の無
い範囲である。
△ :液体現像剤の増粘/変色がはっきりと認められる。
× :液体現像剤の増粘/変色が顕著に認められる。
これらの結果を表3および表4に示した。
【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
表3、表4から明らかなように、本発明の液体現像剤は、定着強度および長期安定性に優れていた。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
また、定着装置の定着温度を、160℃、140℃、120℃、100℃、80℃に変更し、上記と同様にして定着強度を評価したところ、同様の結果が得られた。このことから、本発明の液体現像剤は、低温定着に適したものであることがわかる。
【0097】
また、定着装置の記録媒体の搬送速度を、30枚/分から、40枚/分、50枚/分、60枚/分と速くし、上記と同様にして定着強度を評価したところ、同様の結果が得られた。このことから、本発明の液体現像剤は、高速印刷に適したものであることがわかる。
また、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の液体現像剤が適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0099】
P1…画像形成装置 P2…感光体 P3…帯電器 P4…露光 P10…現像器 P11…現像剤容器 P12…塗布ローラ P13…現像ローラ P14…液体現像剤塗布層 P15…メータリングブレード P16…ローラ芯体 P17…現像ローラクリーニングブレード P18…中間転写ローラ P19…二次転写ローラ P21…除電光 P22…クリーニングブレード P23…クリーニングブレード P24…帯電ブレード F40…定着装置 F1…熱定着ローラ(定着ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ローラ基材 F1c…弾性体 F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ローラ基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…記録媒体 F5a…トナー画像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F8…紫外線照射手段 F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、
前記絶縁性液体は、第1の油脂と、第2の油脂とを含み、かつ、
前記第1の油脂および前記第2の油脂は、不飽和脂肪酸成分を含むものであり、
前記第1の油脂のヨウ素価をI、前記第2の油脂のヨウ素価をIとしたとき、I−I≧20の関係を満足することを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記第1の油脂および前記第2の油脂は、ともに半乾性油である請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記第1の油脂が乾性油で、前記第2の油脂が半乾性油である請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記第1の油脂および前記第2の油脂は、ともに乾性油である請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記乾性油は、共役不飽和結合を有する不飽和脂肪酸成分を含むものである請求項3または4に記載の液体現像剤。
【請求項6】
前記乾性油は、脱水ひまし油、桐油、または、アマニ油である請求項3ないし5のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項7】
前記半乾性油は、大豆油、菜種油、または、サフラワー油である請求項2または3に記載の液体現像剤。
【請求項8】
前記絶縁性液体のヨウ素価は、80〜220である請求項1ないし7のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項9】
液体現像剤は、酸化防止剤を含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項10】
液体現像剤は、定着時における、前記油脂の酸化重合反応を促進する酸化重合促進剤を含むものである請求項1ないし9のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項11】
前記酸化重合促進剤は、カプセル化された状態で前記絶縁性液体中に含まれる請求項10に記載の液体現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−192947(P2007−192947A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9316(P2006−9316)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】