液体現像剤
【課題】バインダーとの親和性向上させる事により分散性を向上し、非常に濁りの少ない均一なフィルター層を形成し得る液体現像剤を提供する。
【解決手段】電気絶縁性溶媒と、金属酸化物を主成分とする無機顔料粒子、
該無機顔料粒子表面に設けられたアミノシラン系カップリング剤表面処理層、及び処理層表面に添加された、5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満の酸価を有するバインダー、及び有機酸金属塩及び有機金属錯体のうち少なくとも1種の電荷制御剤を含有するトナー粒子とを含む。
【解決手段】電気絶縁性溶媒と、金属酸化物を主成分とする無機顔料粒子、
該無機顔料粒子表面に設けられたアミノシラン系カップリング剤表面処理層、及び処理層表面に添加された、5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満の酸価を有するバインダー、及び有機酸金属塩及び有機金属錯体のうち少なくとも1種の電荷制御剤を含有するトナー粒子とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動技術を用いて現像可能な液体現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管やカラー受像機のフェースプレート内面には赤、青、緑色をしたドット状やストライプ状等の蛍光体層が形成されている。この蛍光体層に電子ビームが衝突することにより、蛍光体層が発光して画像表示がなされる。コントラストや色純度等の画像表示特性を向上させるために、従来より蛍光体層の改善がなされている。例えば、フェースプレートと蛍光体層との間に、蛍光体層の発光色と同色の体色を持つ顔料層を設けるフィルター層を設けることにより、入射した外光のうち赤色顔料は緑や青成分の光を、青色顔料は緑や赤成分の光を、緑色顔料は青や赤成分の光を、選択的にそれぞれ吸収するためコントラストや色純度が向上する。
【0003】
上述のようなフィルター層を形成するためには、従来、感光液の塗布、露光、現像といったフォトリソグラフィー工程を繰り返す必要があり、全体の工程数が多く、材料使用効率も悪いためコスト高であった。(特許文献1参照)
このような状況下で、近年、デジタル印刷技術を用いたパターン形成技術が注目されつつあり、例えばインクジェット技術は、装置の簡便さや非接触パターニングといった特徴を生かしたパターニング技術として実用化され始めている。しかしながら、高解像度化や高生産性には限界があった。
【0004】
これに対し、液体現像剤を用いた電子写真技術等を含む電気泳動技術は、低価格、高解像度化、及び高生産性に関して、優れた可能性を有している。例えば、液体現像剤のトナーとして蛍光体を使用し、電気泳動技術を用いて、フラットパネルディスプレイ用の前面基板の蛍光体層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献2,特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、この技術に用いられる蛍光体粒子を単に顔料粒子に置き換えても、顔料粒子の分散性が不十分であり、濁りの少ない良好なフィルター層を形成することは困難であった。
【0006】
また、複写機、プリンタ用に、例えば顔料粒子を、絶縁性溶媒及びシランカップリング剤を含む溶液中に分散させた液体現像剤がある(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、このような液体現像剤をフラットパネルディスプレイに適用しても、濁りの少ない良好なフィルター層を形成することは困難であった。
【0007】
このようなことから、フィルター層に適した改良された液体現像剤が望まれていた。
【特許文献1】特開2000−57946公報
【特許文献2】特開平9−202995号公報
【特許文献3】特開2005−91800号公報
【特許文献4】特許第3765756号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、その目的は、分散性を向上し、濁りの少ない均一なフィルター層を形成し得る液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体現像剤は、電気絶縁性溶媒と、
該電気絶縁性溶媒中に包含され、金属酸化物を主成分とする無機顔料粒子、
該無機顔料粒子表面に設けられたアミノシラン系カップリング剤により表面処理されたシランカップリング処理層、及び該シランカップリング処理層表面に添加された、5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満の酸価を有するバインダー、及び有機酸金属塩及び有機金属錯体のうち少なくとも1種の電荷制御剤を含有するトナー粒子とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バインダーの持つ酸価を有する官能基と、アミノシランカップリング処理でアミノ化された顔料表面とが、酸−塩基相互作用により親和性が向上し、結果として、液体現像剤中の顔料分散単位が細かくなる。このような液体現像剤を使用すると、濁りの無い均一なカラーフィルタ層を形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の液体現像剤は、電気絶縁性溶媒とトナー粒子とを含む。
【0012】
このトナー粒子は、無機顔料粒子と、無機顔料粒子表面に設けられたシランカップリング処理層と、シランカップリング処理層上に添加された、バインダー層及び電荷制御剤とを有する。
【0013】
シランカップリング処理層は、無機顔料粒子をアミノシラン系カップリング剤により表面処理したものである。
【0014】
また、使用されるバインダーは、5mgKOH/g以上の酸価を有する。
【0015】
電荷制御剤として、有機金属錯体及び有機酸金属塩のうち少なくとも1つが使用される。
【0016】
本発明の液体現像剤は、次のような方法で製造することができる。かかる液体現像剤の製造方法では、無機顔料粒子を予めアミノシラン系カップリング剤で表面処理し、電気絶縁性溶媒中で、シラン系カップリング処理された無機顔料粒子とバインダーとを例えばサンドミル中でガラスビーズと共に攪拌しながら、無機顔料粒子表面に、シランカップリング処理層上にバインダーを付着させる。続いて、バインダー被覆されたシランカップリング処理顔料粒子を含む電気絶縁性溶媒に、電荷制御剤を適用することにより、液体現像剤が得られる。
【0017】
また、無機顔料粒子とバインダーとをサンドミル中で撹拌する際に電荷制御剤を添加することも可能である。
【0018】
本発明に使用可能な金属酸化物系無機顔料としては、酸化チタン、酸化バリウム、酸化アンチモン、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの白色系顔料、マンガン固溶酸化第二鉄系の黒色顔料、酸化第二鉄系の赤色顔料、アルミン酸コバルト(Al2O3−CoO)、群青などの青色系顔料、TiO2−NiO−CoO−ZnO系、CoO−Al2O3−Cr2O3−TiO2系、CoO−Al2O3−Cr2O3系、Cr2O3系などの緑色系顔料が挙げられる。
【0019】
このような金属酸化物は空気中の水分によって最表面にヒドロキシル基を有する。このヒドロキシル基はシランカップリング剤の反応部位であるメトキシ基やエトキシ基などのアルコキシル基と加水分解をともなって結合しやすく、表面が均一に処理されやすい傾向がある。十分な透明性を有するカラーフィルタ層を得るためには、液体現像剤中の顔料は良好な分散性が要求されるので、無機顔料のアミノシランカップリング剤による表面処理は非常に有効である。
【0020】
この無機顔料の体積平均粒径は、20nm ないし 300nmであることが好ましい。
【0021】
無機顔料の体積平均粒径は、 20nm未満であると、 顔料が凝集しやすくなりかえって透明なフィルタ層を得るのが困難となる傾向があり、 300nmを超えると、可視光を散乱しやすくなり、不透明になる傾向がある。
【0022】
カラーフィルタには、上述の各色の顔料を使用し、規則正しく配列された、三原色の各フィルター層すなわち赤色フィルター層、緑色フィルター層、及び青色フィルター層を設けることができる。
【0023】
また、本発明に使用可能なアミノシランカップリング剤としては、例えばγ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β −アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。なお、これらに限定されず、アミノ基を有するシランカップリング剤ならば適用可能である。
【0024】
バインダーのカルボキシル基などに有機金属錯体あるいは有機酸金属塩が吸着、配位して電荷を帯びることは前述した通りであるが、アミノシランカップリング剤により処理された顔料表面のアミノ基も金属配位能を持つため、有機金属錯体あるいは有機酸金属塩により帯電することができる。顔料表面がバインダーですべて覆われていなくて帯電部位が表面に存在することになるので、バインダーと顔料成分の比率は任意に選択できるが、バインダーとアミノシランカップリング剤により処理された顔料の合計の重量に対しバインダーが3重量%未満の場合は、顔料成分が相対的に多くなるため、フィルター膜厚の変化に対する透過率の変化が急激になり、その制御が困難となる。また、電気泳動によって形成したフィルター膜の凝集力が不足し、にじみや流れといった問題が発生しやすい。一方、バインダーが70重量%以上の場合は顔料成分が相対的に少なくなるため、所定の透過率を得るためにはフィルター膜を厚くしなければならなくなり、均一性が損なわれやすいと同時に、乾燥や焼成により溶媒やバインダーを除去した場合にはその体積収縮率が大きくなり、変形やひび割れの発生が問題となる傾向がある。これらの問題を考慮し、さらに好ましくは、バインダーは、バインダーとアミノシランカップリング剤により処理された顔料の合計の重量に対し5重量%以上30重量%未満に設定することができる。
【0025】
また、本発明に使用される有機酸金属塩の有機酸成分としては、例えばオクチル酸、ステアリン酸、及びドデシル酸等の飽和脂肪酸、例えばパルミチン酸、オレイン酸、及びリノール酸などの不飽和脂肪酸、例えばナフテン酸、及びアビエチン酸など環状構造を持つカルボン酸、例えばドデシルスルホン酸、及びドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸があげられる。また、金属成分としては、例えばアルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、ランタン、ジルコニウム、錫、及びチタンなどが挙げられる。
【0026】
また有機金属錯体としては、アセチルアセトンなどのベータジケトンと上記金属とのキレート化合物や、ステアリルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの高級アルコールと上記金属とのアルコキシド、また上記キレート化合物とアルコキシドの複合錯体などがあげられる。
【0027】
本発明に用いられるバインダーは、5mgKOH/g以上の酸価を有する。
【0028】
バインダーの酸価が5mgKOH/g未満の場合は、その酸成分が少なすぎるために顔料表面のアミノ基と有効に作用することが出来ない。また、バインダーと有機酸金属塩あるいは有機金属錯体との相互作用も弱くなるため、これらの物質の吸着により得られる電荷量も小さくなる。電荷量が小さいと、顔料が凝集しやすくなり、液体現像剤としての十分な電気泳動性が得られなくなる。このため、本発明では、5mgKOH/g以上の酸価を有するバインダーを用いる。より好ましくは、バインダーの酸価は20mgKOH/g以上である。
【0029】
一方、バインダーの酸価が100mgKOH/g以上となると、顔料表面のアミノ基と相互作用する部位以外に過剰の酸価が存在することとなり、その量は有機酸金属塩や有機金属錯体が吸着、配位して荷電に寄与できる量よりも多くなってしまうので、溶液の導電率を上昇させ、電気泳動性能が阻害される可能性がある。また、過剰な酸価が原因で樹脂同士が凝集しやすくなり、溶媒中で均一な分散状態を保てなくなる。本発明に用いられるバインダーはその酸価が5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満であれば公知のワックス、分散剤、樹脂等が使用できる。
【0030】
また、本発明に用いられるバインダーは使用する絶縁性溶媒に親和性が高く、溶解性、膨潤性あるいは分散性のいずれかの形態であることが望ましい。
【0031】
このようなバインダーとしては、酢酸ビニル樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、酸化ポリエチレン樹脂、酸化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン及びロジン変性樹脂、エチレン− 酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。特に、アクリル系樹脂は、比較的容易に樹脂設計できる点で有用である。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
このバインダーに5mgKOH/g以上100mgKOH/gの酸価を持たせるためには、例えばモノマとして酸価の元となるカルボキシル基を有するアクリル酸やメタクリル酸などを導入し、他のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン誘導体、酢酸ビニル誘導体などと適切な比率で共重合させることができる。
【0033】
本発明に用いられる電気絶縁性溶媒は、好ましくは、70〜250℃の温度範囲に沸点を有し、109Ω・cm以上の体積比抵抗と3未満の誘電率を有することが好ましい。
【0034】
このような電気絶縁性溶媒として、例えばn−ペンタン,ヘキサン,ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン等脂環族炭化水素,塩素化されたアルカン,フッ素化されたアルカン,クロロフルオロカーボン等のハロゲン化された炭化水素溶媒,シリコンオイル類及びこれら混合物を使用することが出来る。好ましくは、Exxon Corporation製 アイソパーG(登録商標),アイソパーH(登録商標),アイソパーK(登録商標),アイソパーL(登録商標),アイソパーM(登録商標)及びアイソパーV(登録商標)などの分枝型パラフィン溶媒混合物を使用することが出来る。
【0035】
本発明の液体現像剤を用いると平面型画像表示装置のカラーフィルタ層の形成が簡便にできる。
【0036】
本発明の液体現像剤を適用し得る平面型画像表示装置の製造方法の一例は、以下のような前面基板の形成プロセスを含む。
【0037】
この前面基板の形成プロセスは、
透明基板上に、格子状またはストライプのパターンを有する遮光層を形成する工程と、
本発明にかかる液体現像剤を、供給部材を介して像保持体の表面に供給し、供給部材と像保持体との間に電界を形成して像保持体表面に、ドットまたはストライプ状のパターン像を形成する現像工程と、
パターン像が形成された像保持体を、定位置に保持された、遮光層を有する透明基板に沿って転動させる転動工程と、
転動する像保持体と透明基板との間に電界を形成し、像保持体表面上のパターン像を透明基板へ転写し、遮光層で区画された透明基板上の各領域に、カラーフィルター層を形成する転写工程と、
カラーフィルター層上に蛍光体層を形成する工程と、
蛍光体層上にメタルバック層を形成する工程とを含む。
【0038】
また、蛍光体粒子を電気絶縁性溶媒中に分散させて、液体現像剤を形成し、上記現像工程、転動工程、及び転写工程と同様にしてカラーフィルター層上に蛍光体層を形成することができる。
【0039】
この方法では、液体現像剤の組成及び濃度等を調整することにより、得られる表示装置の蛍光体層やカラーフィルタ層の膜厚を制御できる。
【0040】
また、本発明の一実施態様においては、像保持体は、その表面にパターン像を形成するためのパターン状の電極層を有し得る。電極層の形状を変えることで、任意の形状に蛍光体層やカラーフィルタ層を簡便にかつ低コストにパターニングすることができる。
【0041】
次に、図1ないし図10を用いて、本発明に用いられる前面基板の形成プロセスの一例を説明する。
【0042】
図1は、前面基板の形成プロセスに使用されるパターン形成装置の一例を表す外観図を示す。
【0043】
図2に示すように、このパターン形成装置10は、図中時計回り方向(矢印R方向)に回転するドラム素管(後述する)の周面に巻かれた原版1(像保持体)、この原版1の後述する高抵抗層に電荷を与えて帯電させる帯電器2、原版1に各色(r:赤、g:緑、b:青)の液体現像剤を供給して現像する複数の現像装置3r、3g、3b(以下、総称して現像装置3と称する場合もある)、現像によって原版1に付着した液体現像剤の溶媒成分をエアブローによって気化して乾燥させる乾燥器4(乾燥装置)、原版1に付着した現像剤粒子を転写してパターンを形成する被転写媒体となる透明基板としてのガラス板5を定位置で保持するステージ6(保持機構)、転写に先立ってガラス板5の表面に高抵抗もしくは絶縁性の溶媒を塗布する塗布装置7(濡らし装置)、転写を終えた原版1をクリーニングするクリーナ8、および原版1の電荷を除去する除電器9を有する。
【0044】
各色の現像装置3r、3g、3bに収納される液体現像剤は、絶縁性溶媒中に帯電したトナー粒子が含まれたもので、この微粒子が電界で電気泳動することによって現像が行われる。このトナー粒子は、金属酸化物を主成分とする無機顔料粒子と、無機顔料粒子表面に設けられたシランカップリング処理層と、シランカップリング処理層表面に添加された、5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満の酸価を有するバインダー及び有機酸金属塩及び有機金属錯体のうち少なくとも1種の電荷制御剤とを有する。
【0045】
図2(a)に平面図を示すように、原版1は、矩形の薄板状に形成されている。この原版1は、図2(b)に断面図を示すように、厚さ0.05(mm)ないし0.4(mm)、より好ましくは厚さ0.1(mm)ないし0.2(mm)の矩形の金属フィルム12の表面に高抵抗層13を形成して構成されている。金属フィルム12は可撓性を有し、アルミニウム、ステンレス、チタン、アンバーなどの素材で構成可能であるほかに、ポリイミドやPETなどの表面に金属を蒸着したものなどでも良いが、転写パターンを高い位置精度で形成するためには、熱膨張や応力による伸びなどが生じにくい素材で構成することが望ましい。また、高抵抗層13は、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロンなどの体積抵抗率が1010Ωcm以上の材料(絶縁体を含む)により形成され、その膜厚は、10μm〜40μm、より好ましくは20μm±5μmに形成されている。
【0046】
また、原版1の高抵抗層13の表面13aには、図4に部分的に拡大して示すような矩形の凹部14aを多数整列配置したドット状のパターン14が形成されている。本実施の形態では、例えば平面型画像表示装置の前面基板に形成する蛍光体スクリーンを製造する凹版として、1色分の画素に相当する凹部14aだけを高抵抗層13の表面13aから凹ませて形成し、図4中に破線で示す他の2色分の領域14bには凹部を形成しないでスペースだけを確保してある。
【0047】
図4には、1つの凹部14aを拡大した原版1の断面図を示してある。本実施の形態では、凹部14aの底には金属フィルム12の表面12aが露出しており、この金属フィルム12の露出した表面12aがこの発明のパターン状の電極層として機能する。凹部14aの深さは、高抵抗層13の層厚に概ね相当する。凹部14aの底に露出した金属フィルム12の表面12a、および高抵抗層13の表面13aを含む原版1の表面全体に、厚さ0.5(μm)ないし3(μm)程度の表面離型層をコーティングすれば、転写特性が向上しより好ましい特性が得られる。
【0048】
図5には、上記構造のフィルム状の原版1をドラム素管31に巻きつける様子を描いた概略断面図を示してある。ドラム素管31の図中上部の切り込み部31aには、原版1の一端を固定するクランプ32と他端を固定するクランプ33が設けられている。原版1をドラム素管31の周面上に巻き付ける場合、まず、原版1の一端をクランプ32に固定し、その後、原版1を架張しつつその他端34をクランプ33で固定する。これにより、たるみ無く原版1をドラム素管31周面の規定位置に巻き付けることができる。
【0049】
図6は、このようにしてドラム素管31に巻きつけられた原版1の高抵抗層13の表面13aを帯電器4によって帯電する工程を説明するための部分構成図である。帯電器4は、周知のコロナ帯電器であり、コロナワイヤー42とシールドケース43で基本的に構成されているが、メッシュ状のグリッド44を設けることで帯電の均一性を向上できる。例えば、原版1の金属フィルム12とシールドケース43を接地し、コロナワイヤー42に不図示の電源装置によって+5.5(kV)の電圧を印加し、更にグリッド44に+500(V)の電圧を印加して原版1を図中矢印R方向に移動させると、高抵抗層13の表面13aは略+500(V)に均一に帯電される。
【0050】
同図に示した除電器9は、帯電器4とほぼ同様の構造であるが、コロナワイヤー46に例えば実効電圧6(kV)、周波数50(Hz)の交流電圧を印加すべく不図示の交流電源に接続し、シールドケース47とグリッド48を設置すると、帯電器4による帯電に先立って原版1の高抵抗層13の表面13aを略0(V)となるよう除電することが可能で、高抵抗層13の繰り返し帯電特性を安定化させることができる。
【0051】
図7には、上記のように帯電された原版1に対する現像動作を説明するための図を示してある。現像時には、現像する色の現像器3を原板1に対向させて、その現像ローラ51(供給部材)とスクイズローラ52を原版1に近接させ、原版1に上述した液体現像剤を供給する。現像ローラ51は、搬送される原版1の高抵抗層13の表面13aに対して100〜150(μm)程度のギャップを介してその周面が対向する位置に配置され、原版1の回転方向と同じ方向(図中反時計回り方向)に1.5倍ないし4倍程度の速度で回転する。
【0052】
図示しない供給系によって現像ローラ51周面に供給される液体現像剤53は、絶縁性液体としての溶媒54に現像剤粒子としての帯電したトナー粒子55を分散させて構成されており、現像ローラ51の回転に伴って原版1の周面に供給される。ここで、現像ローラ51に図示しない電源装置によって例えば+250(V)の電圧を印加すると、正に帯電しているトナー粒子55は、接地電位の金属フィルム12に向かって溶媒54中を泳動し、原版1の凹部14a内に集められる。このとき、高抵抗層13の表面13aは、+500(V)程度に帯電されているので正帯電したトナー粒子55は表面13aから反発されて付着しない。
【0053】
このようにして原版1の凹部14a内にトナー粒子55が集められた後、トナー粒子55の濃度が薄くなった液体現像剤53が引き続いてスクイズローラ52と原版1が対向するギャップに進入する。ここでは、ギャップ(絶縁層13表面13aとスクイズローラ52表面の間の距離)が30(μm)ないし50(μm)、スクイズローラの電位が+250(V)で、スクイズローラ52は原版1とは逆向きに原版1の速度の3倍から5倍程度の速度で移動するように設定されているため、現像をさらに促進しつつ、同時に原版1に付着している溶媒56の一部を絞り取る効果を奏する。このようにして、原版1の凹部14aにトナーによるパターン57が形成される。
【0054】
ところで、ガラス板5上に3色のフィルター層のパターンを形成する場合、図8に示すように、まず、青色顔料粒子を含む液体現像剤を収納する現像器3bが原版1の直下に移動し、ここで図示しない昇降機構によって現像器3bが上昇して原版1に近接させる。この状態で、原板1が矢印R方向に回転して凹部14aによるパターンが現像される。青色パターンの現像が終了すると、現像器3bが下降して原版1から離間する。
【0055】
この青色現像プロセスの間に、図示しない搬送装置によって予め搬送されてステージ6上に保持されているガラス板5のステージ6から離間した表面に沿って塗布装置7が図中の破線矢印T1方向に移動し、ガラス板5の表面に溶媒(絶縁性液体)が塗布される。この溶媒の役割と材料組成については後述する。
【0056】
しかる後に、青色のパターンを周面に担持した原版1が回転しつつ図中の破線矢印に沿って移動(この動作を転動と称する)し、青色のパターン像がガラス板5の表面に転写される。転写の詳細についても後述する。青色のパターンの転写を終えた原版1は図中左方に平行移動し、現像時の初期位置に戻る。このとき、ガラス板5を保持したステージ6が下降して初期位置に戻る原版1との接触が避けられる。
【0057】
次に、3色の現像器3r、3g、3bが図中左方に移動し、緑色の現像器3gが原版1の直下に位置するところで停止し、青色のパターンの現像のときと同様にして現像器3gの上昇、現像、下降が行われる。引き続いて、上記と同様の操作で緑パターンが原版1からガラス板5の表面に転写される。このとき、緑色のパターンのガラス板5表面上の転写位置は、上述した青色のパターンから1色分ずらされる。
【0058】
そして、上記の動作を赤色の現像についても繰り返し、ガラス板5の表面上に3色パターンを並べて転写して3色のパターン像をガラス板5の表面に形成する。このように、ガラス板5を定位置に保持して固定し、原版1をガラス板5に対して移動させることで、ガラス板5の往復移動が不要になり、大きな移動スペースの確保や装置の大型化を抑制できる。
【0059】
図9には、上述した原版1をガラス板5に沿って転動させるための転動機構の要部の構造を示してある。原版1を周面上に巻き付けたドラム素管31の軸方向両端には、ピニオンと呼ばれる歯車71が取り付けられている。原版1は、この歯車71とモーター72の駆動歯車73のかみ合わせによって回転するとともに、ステージ6の両端に設置されている直線軌道のラック74とピニオン(歯車71)の噛み合わせによって図中右方向に並進する。このとき、ステージ6上に保持されたガラス板5の表面と原版1の表面との間に相対的なズレを生じることのないように、転動機構の各部の構造が設計されている。特許請求の範囲では、このように回転しながらガラス板5に沿って平行に移動する動作を転動と称している。
【0060】
このようなラック・アンド・ピニオン機構によれば、駆動伝達用のアイドラが無いため、バックラッシュの無い高精度の回転・並進駆動を実現でき、ガラス板5上に例えば±5(μm)といった位置精度の高い高精細パターンを転写することが可能となる。
【0061】
一方、ガラス板は、図8に示すように、ステージ6の平らな接触面6aに対して、その裏面5b(原版1から離間した側の面)の略全面を面接させるようにステージ6上に配置される。その上、ガラス板5には、ステージ6を貫通して接触面6aまで延びた吸気口76に、接続パイプ75から主パイプ77を経由して不図示の真空ポンプを接続することによって、吸気口76の接触面6aに開口した図示しない吸着孔を介して負圧が作用され、ステージ6の接触面6a上に吸着される。この吸着機構によって、ガラス板5は、高い平面度を持った接触面6aにその裏面5bの略全面を押圧させて密着され、平面性が高い状態でステージ6上に保持される。このように平らな接触面6aにガラス板5を押し付けることにより、ガラス板5の歪み等をも矯正でき、後述する原版1との間の転写ギャップを高精度に維持できる。
【0062】
図10は、原版1からガラス板5にトナー粒子55を転写する際の様子を説明する要部断面図である。図示しない遮光層を有するガラス板5の表面5aには、例えば導電性高分子などで構成される導電層81が塗布されており、この導電層81の表面81aと原版1の高抵抗層13の表面13aとは、ギャップd2を介して非接触状態に設置される。d2は例えば10(μm)ないし40(μm)の範囲の値に設定される。高抵抗層13の厚さが例えば20(μm)の場合は、金属フィルム12と導電層81表面81aとの間の距離は、30(μm)ないし60(μm)となる。
【0063】
この状態で、電源装置82(転写装置)を介して導電層81に例えば−500(V)の電圧を印加すると、接地電位の金属フィルム12との間に500(V)の電位差が形成され、その電界によってトナー粒子55が溶媒54中を電気泳動して導電層81の表面81aに転写される。このように、トナー粒子55は非接触状態でも転写が可能なので、オフセット印刷やフレキソ印刷の場合のように、ブランケットやフレキソ版といった弾性体を介在させる必要がなく、常に位置精度の高い転写を実現することが可能となる。導電層81は、トナー粒子55の転写後、ガラス板5を図示しないベーク炉へ投入して焼成することで消失させる。このようにして、前面基板のフィルター層が得られる。
【0064】
また、例えば蛍光体粒子を電気絶縁性溶媒中に分散させて、液体現像剤を形成し、上記現像工程、転動工程、及び転写工程と同様にしてカラーフィルター層上に蛍光体層を形成することができる。
【0065】
なお、上記のように、電界を用いてトナー粒子をガラス板5に転写する場合、転写ギャップに溶媒が存在してガラス板5側の導電層81と原版1との間を濡らすことが必須条件となるため、転写に先立ってガラス板5の表面5aを溶媒でプリウェットしておくことが有効である。プリウェット溶媒としては絶縁性もしくは高抵抗であれば良いが、液体現像剤に用いられている溶媒と同一の溶媒、もしくはこれに帯電制御剤などが添加されたものであればなお好適である。プリウェット溶媒は、図9を用いて説明したように、塗布装置7によって適切なタイミングで適当な塗布量でガラス板5の表面5a上に塗布される。
【0066】
以上のように、上述した実施の形態によると、定位置に配置したガラス板5に対して原版1を転動させて現像したトナー粒子55をガラス板5の表面5aに転写するようにしたため、原版1を転動させる転動機構の構成を小型化でき、装置の設置スペースを小さくできる。また、上述した実施の形態によると、非接触状態で対向配置した原版1からガラス板5へ電界を用いてトナー粒子55を転写するようにしたため、従来のようにフレキソ版を用いた転写方式と比較して、転写像の解像度を高めることができ、高精細なパターンを形成できる。
【0067】
また、上述した実施の形態では、原版1の凹部14aに集めた(現像した)トナー粒子55を乾燥器4からのエアブローによって一旦適度に乾燥させた後、ガラス板5の表面5aを溶媒によって濡らして(プリウェットして)トナー粒子55を転写するようにしたため、ガラス板5の表面5aに転写されるトナー像の形状を安定させることができ、パターンの輪郭を鮮明にできる。
【0068】
図11にこのようにして得られた前面基板を模式的に表す断面図を示す。
【0069】
図11に示すように、得られた前面基板111は、透明基板5とその上にドット状に設けられた蛍光体層116と、蛍光体層116の周囲に格子状に設けられた遮光層117とを有する。
【0070】
図12は、本発明に係る表示装置としてのFEDの一例を表す斜視図を示す。
【0071】
また、図13には、そのA−A’断面図を示す。
【0072】
図12及び図13に示すように、このFEDは、絶縁基板としてそれぞれ矩形状のガラス板からなる前面基板111、および背面基板112を備え、これらの基板は1〜2mmの隙間を置いて対向配置されている。そして、前面基板111および背面基板112は、矩形枠状の側壁113を介して周縁部同士が接合され、内部が真空状態に維持された扁平な矩形状の真空外囲器110を構成している。
【0073】
真空外囲器110の内部には、前面基板111および背面基板112に加わる大気圧荷重を支えるため、複数のスペーサ114が設けられている。スペーサ114としては、板状あるいは柱状のスペーサ等を用いることができる。
【0074】
前面基板111の内面上には、画像表示面として、赤、緑、青の蛍光体層116とマトリクス状の遮光層117とを有した蛍光面115が形成されている。これらの蛍光体層116はストライプ状あるいはドット状に形成してもよい。この蛍光面115上には、アルミニウム膜等からなるメタルバック120が形成されている。さらに真空外囲器110の内部圧力を下げるためにゲッタ膜121を形成し、内部の不要ガスを吸着している。ゲッタ粉末に接着効果のある材料を混ぜて接着している。
【0075】
背面基板112の内面上には、蛍光面115の蛍光体層116を励起する電子源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子118が設けられている。これらの電子放出素子118は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子118は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板112の内面には、電子放出素子118に電位を供給する多数本の配線121がマトリクス状に設けられ、その端部は真空外囲器110の外部に引出されている。
【0076】
このようなFEDでは、画像を表示する場合、蛍光面115およびメタルバック120にアノード電圧を印加して、電子放出素子118から放出された電子ビームをアノード電圧により加速して蛍光面へ衝突させる。これにより、蛍光面115の蛍光体層116が励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0077】
実施例
(青色顔料の表面処理)
2リットルのビーカに純水800g、エタノール100gを加え、マグネットスターラで攪拌しながら、アルミン酸コバルト(Al2O3−CoO)系である商品名コバルトブルーX (粒子径0.01〜0.02μm、東洋顔料社製)100gをダマにならないよう少しずつ添加する。次に、アミノシランカップリング剤(KBM603信越シリコーン社製)10gを少しずつ添加し、すべて添加し終わってから2時間攪拌を続ける。その後吸引ろ過によって固形分をろ別し、水分を含んだペースト状の顔料を1日自然乾燥させ、アルコール分を蒸発させる。最後に100℃の乾燥機に5時間投入して水分を完全に除去する。室温にて自然冷却し、その後、ブロック状の顔料凝集体を実験用ミキサにて解砕する。100メッシュの篩を通してアミノシラン処理青色顔料(青色顔料1)を得た。
【0078】
(赤色顔料の表面処理)
赤色顔料としてシコトランスレッドL−2817(粒子径0.01〜0.02μm、BASF社製を用い、アミノシランカップリング剤としては東レダウコーニングシリコーン社製Z−6610を使用した以外は上記青色顔料の表面処理と同様にしてアミノシラン処理赤色顔料(赤色顔料2)を得た。
【0079】
(バインダ樹脂1の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製 マクロモノマ(AB−6)25gおよびメチルエチルケトン(以下、MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートから、メタクリル酸ブチル25.0g、メタクリル酸ラウリル45.0g、アクリル酸5gおよびアゾビスイソブチロニトリル)(以下、AIBNいう)1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後、引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0080】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、不揮発分(NV)=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂1)の酸価は33.7mgKOH/gであった。
【0081】
(バインダ樹脂2の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製マクロモノマ(AB−6)14.0gおよびメチルエチルケトン(以下MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで、滴下ロートから、メタクリル酸ブチル40.0g、メタクリル酸ラウリル45.0g、アクリル酸1.0gおよびAIBN1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後、引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0082】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、NV=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂2)の酸価は5.3mgKOH/gであった。
【0083】
(バインダ樹脂3の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製マクロモノマ(AB−6)20.0gおよびメチルエチルケトン(以下MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートから、メタクリル酸ブチル30.0g、メタクリル酸ラウリル35.0、アクリル酸15.0gおよびAIBN1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0084】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、NV=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂3)の酸価は80.5mgKOH/gであった。
【0085】
(バインダ樹脂4の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製マクロモノマ(AB−6)14.7gおよびメチルエチルケトン(以下MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートから、メタクリル酸ブチル45.0g、メタクリル酸ラウリル40.0g、アクリル酸0.30gおよびAIBN1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0086】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、NV=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂4)の酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0087】
(バインダ樹脂5の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製マクロモノマ(AB−6)10.0gおよびメチルエチルケトン(以下MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートから、メタクリル酸ブチル10.0g、メタクリル酸ラウリル50.0、アクリル酸25.0gおよびAIBN1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0088】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、NV=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂5)の酸価は118.5mgKOH/gであった。
【0089】
実施例1
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、全重量を10gとなるよう調整した。ナフテン酸ジルコニウム(大日本インキ化学工業社製)を1g加えた後、さらに、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を加えて全体を100gとする。直径2mmのガラスビーズ300gを投入し、1500rpmで2時間ミキシングした後に、ガラスビーズと処理液をメッシュで分離し、さらに、100gのアイソパーLで希釈して固形分濃度5重量%のカラーフィルター用液体現像剤を得た。
【0090】
上述のトナー製造方法に従ってトナー化し、青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径は、堀場製作所製粒径分布測定装置(LB−500)によって測定し、0.35μmであった。
【0091】
図15に、得られた液体現像剤を用いてトナー層を形成するための実験装置の一例を表す概略図を示す。
【0092】
図示する様に、実験装置としてのサンドイッチセルは、一対のITO電極211,212間に、テフロン(登録商標)製スペーサ213を配置し、ITO電極211,212間に電圧を印可できるようになっている。テフロン(登録商標)製スペーサ213は、一辺が40mmの正方形で、中央に30mm角の正方形の開孔が設けられ、その一辺から、開孔に通じる2つのパスを形成するようにスペーサ213の一部が除去されている。2つのパスの一方は、空気抜き穴215として、もう一方は、液体現像剤の注入路214として使用される。
【0093】
上記青色顔料含有液体現像剤を、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0094】
このことから、トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また、乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計(日本電色工業社製NDH500W)によるヘイズ値は4.3であった。
【0095】
また、実施例1の応用例として、ナフテン酸ジルコニウムをミキシング前ではなく、ミキシングの後分離された処理液に添加することにより、さらに、100gのアイソパーLで希釈して固形分濃度5重量%のカラーフィルター用液体現像剤を得た。
【0096】
同様に、電着膜の様子を観察したところ、グランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0097】
また、濁度計によるヘイズ値は4.0であった。
【0098】
実施例2
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.43μmであった。
【0099】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0100】
このことから、トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計(日本電色工業社製NDH500W)によるヘイズ値は5.2であった。
【0101】
実施例3
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.66μmであった。
【0102】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0103】
このことからトナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計(日本電色工業社製NDH500W)によるヘイズ値は5.0であった。
【0104】
実施例4
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.33μmであった。
【0105】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な赤色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0106】
このことからトナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計によるヘイズ値は4.8であった。
【0107】
実施例5
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.53μmであった。
【0108】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。バインダ成分が少ないため膜がややにじみやすい傾向があったが、トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計によるヘイズ値は4.6であった。
【0109】
実施例6
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.49μmであった。
【0110】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。樹脂成分がやや多いため膜の濃度は薄めであったが、トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計によるヘイズ値は5.5であった。
【0111】
比較例1
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.62μmであった。
【0112】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な赤色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無かったが、乾燥後の膜はあきらかに濁りが多く不透明であり、濁度計によるヘイズ値は18.2であった。
【0113】
比較例2
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.72μmであった。
【0114】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、グランド側のITO電極と正極側のITO電極の両極にトナーが付着しており、トナー粒子の帯電極性が不安定であることが分かった。
【0115】
比較例3
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.69μmであった。
【0116】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無かったが、バインダ樹脂成分が少なすぎるため膜のにじみが激しく、膜としての形状を維持できなかった。
【0117】
比較例4
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.22μmであった。
【0118】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。よってトナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことがわかった。
【0119】
乾燥後の膜透明性は高いものの、膜濃度が非常に薄いため、トナーの固形分濃度を倍(10重量%)にして上述のセルで電着したが、得られた膜濃度はあまり変わらず、半分以上が電着しきれずに流れてしまっていることがわかった。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】前面基板の形成プロセスに使用されるパターン形成装置の一例を表す外観図
【図2】図1のパターン形成装置で使用する原版を示す平面図(a)、および断面図(b)
【図3】図2の原版を部分的に拡大して示す部分拡大平面図
【図4】図2の原版の1つの凹部の構造を説明するための部分拡大斜視図
【図5】図2の原版をドラム素管に巻き付けた状態を示す概略図
【図6】図2の原版の高抵抗層の表面を帯電させるための構成を示す概略図
【図7】図2の原版に液体現像剤を供給してトナー粒子によるパターンを形成するための構成を示す概略図
【図8】図2の原版に形成したパターンをガラス板に転写するための構成を示す概略図
【図9】図2の原版をガラス板に沿って転動させるための転動機構の要部の構成を示す概略図
【図10】原版の凹部に集めたトナー粒子をガラス板に転写する動作を説明するための動作説明図
【図11】本発明にかかる前面基板の一例を模式的に表す断面図
【図12】本発明に係る表示装置としてのFEDの一例を表す斜視図
【図13】図12のA−A’断面図
【図14】本発明に使用し得る実験装置の一例を表す概略図
【図15】液体現像剤を用いてトナー層を形成するための実験装置の一例を表す概略図
【符号の説明】
【0121】
1…原版、3r、3g、3b…現像装置、4…乾燥器、5…ガラス板、6…ステージ、7…塗布装置、10…パターン形成装置、12…金属フィルム、13…高抵抗層、14a…凹部、61…核粒子、62…被覆層、63…熱可塑性樹脂微粒子、60…トナー粒子、131…ジムロート還流冷却器、132…防爆モータ、133…熱電対、134…リレー温調ユニット、135…マントルヒータ、136…攪拌機、110…真空外囲器、111…前面基板、112…背面基板、113…側壁、115…蛍光面、116…蛍光体層、117…遮光層、118…電子放出素子、120…メタルバック、121…ゲッタ層、211,212…ITO電極、213…スペーサ、214…注入路、215…空気抜き穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動技術を用いて現像可能な液体現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管やカラー受像機のフェースプレート内面には赤、青、緑色をしたドット状やストライプ状等の蛍光体層が形成されている。この蛍光体層に電子ビームが衝突することにより、蛍光体層が発光して画像表示がなされる。コントラストや色純度等の画像表示特性を向上させるために、従来より蛍光体層の改善がなされている。例えば、フェースプレートと蛍光体層との間に、蛍光体層の発光色と同色の体色を持つ顔料層を設けるフィルター層を設けることにより、入射した外光のうち赤色顔料は緑や青成分の光を、青色顔料は緑や赤成分の光を、緑色顔料は青や赤成分の光を、選択的にそれぞれ吸収するためコントラストや色純度が向上する。
【0003】
上述のようなフィルター層を形成するためには、従来、感光液の塗布、露光、現像といったフォトリソグラフィー工程を繰り返す必要があり、全体の工程数が多く、材料使用効率も悪いためコスト高であった。(特許文献1参照)
このような状況下で、近年、デジタル印刷技術を用いたパターン形成技術が注目されつつあり、例えばインクジェット技術は、装置の簡便さや非接触パターニングといった特徴を生かしたパターニング技術として実用化され始めている。しかしながら、高解像度化や高生産性には限界があった。
【0004】
これに対し、液体現像剤を用いた電子写真技術等を含む電気泳動技術は、低価格、高解像度化、及び高生産性に関して、優れた可能性を有している。例えば、液体現像剤のトナーとして蛍光体を使用し、電気泳動技術を用いて、フラットパネルディスプレイ用の前面基板の蛍光体層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献2,特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、この技術に用いられる蛍光体粒子を単に顔料粒子に置き換えても、顔料粒子の分散性が不十分であり、濁りの少ない良好なフィルター層を形成することは困難であった。
【0006】
また、複写機、プリンタ用に、例えば顔料粒子を、絶縁性溶媒及びシランカップリング剤を含む溶液中に分散させた液体現像剤がある(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、このような液体現像剤をフラットパネルディスプレイに適用しても、濁りの少ない良好なフィルター層を形成することは困難であった。
【0007】
このようなことから、フィルター層に適した改良された液体現像剤が望まれていた。
【特許文献1】特開2000−57946公報
【特許文献2】特開平9−202995号公報
【特許文献3】特開2005−91800号公報
【特許文献4】特許第3765756号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、その目的は、分散性を向上し、濁りの少ない均一なフィルター層を形成し得る液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体現像剤は、電気絶縁性溶媒と、
該電気絶縁性溶媒中に包含され、金属酸化物を主成分とする無機顔料粒子、
該無機顔料粒子表面に設けられたアミノシラン系カップリング剤により表面処理されたシランカップリング処理層、及び該シランカップリング処理層表面に添加された、5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満の酸価を有するバインダー、及び有機酸金属塩及び有機金属錯体のうち少なくとも1種の電荷制御剤を含有するトナー粒子とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バインダーの持つ酸価を有する官能基と、アミノシランカップリング処理でアミノ化された顔料表面とが、酸−塩基相互作用により親和性が向上し、結果として、液体現像剤中の顔料分散単位が細かくなる。このような液体現像剤を使用すると、濁りの無い均一なカラーフィルタ層を形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の液体現像剤は、電気絶縁性溶媒とトナー粒子とを含む。
【0012】
このトナー粒子は、無機顔料粒子と、無機顔料粒子表面に設けられたシランカップリング処理層と、シランカップリング処理層上に添加された、バインダー層及び電荷制御剤とを有する。
【0013】
シランカップリング処理層は、無機顔料粒子をアミノシラン系カップリング剤により表面処理したものである。
【0014】
また、使用されるバインダーは、5mgKOH/g以上の酸価を有する。
【0015】
電荷制御剤として、有機金属錯体及び有機酸金属塩のうち少なくとも1つが使用される。
【0016】
本発明の液体現像剤は、次のような方法で製造することができる。かかる液体現像剤の製造方法では、無機顔料粒子を予めアミノシラン系カップリング剤で表面処理し、電気絶縁性溶媒中で、シラン系カップリング処理された無機顔料粒子とバインダーとを例えばサンドミル中でガラスビーズと共に攪拌しながら、無機顔料粒子表面に、シランカップリング処理層上にバインダーを付着させる。続いて、バインダー被覆されたシランカップリング処理顔料粒子を含む電気絶縁性溶媒に、電荷制御剤を適用することにより、液体現像剤が得られる。
【0017】
また、無機顔料粒子とバインダーとをサンドミル中で撹拌する際に電荷制御剤を添加することも可能である。
【0018】
本発明に使用可能な金属酸化物系無機顔料としては、酸化チタン、酸化バリウム、酸化アンチモン、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの白色系顔料、マンガン固溶酸化第二鉄系の黒色顔料、酸化第二鉄系の赤色顔料、アルミン酸コバルト(Al2O3−CoO)、群青などの青色系顔料、TiO2−NiO−CoO−ZnO系、CoO−Al2O3−Cr2O3−TiO2系、CoO−Al2O3−Cr2O3系、Cr2O3系などの緑色系顔料が挙げられる。
【0019】
このような金属酸化物は空気中の水分によって最表面にヒドロキシル基を有する。このヒドロキシル基はシランカップリング剤の反応部位であるメトキシ基やエトキシ基などのアルコキシル基と加水分解をともなって結合しやすく、表面が均一に処理されやすい傾向がある。十分な透明性を有するカラーフィルタ層を得るためには、液体現像剤中の顔料は良好な分散性が要求されるので、無機顔料のアミノシランカップリング剤による表面処理は非常に有効である。
【0020】
この無機顔料の体積平均粒径は、20nm ないし 300nmであることが好ましい。
【0021】
無機顔料の体積平均粒径は、 20nm未満であると、 顔料が凝集しやすくなりかえって透明なフィルタ層を得るのが困難となる傾向があり、 300nmを超えると、可視光を散乱しやすくなり、不透明になる傾向がある。
【0022】
カラーフィルタには、上述の各色の顔料を使用し、規則正しく配列された、三原色の各フィルター層すなわち赤色フィルター層、緑色フィルター層、及び青色フィルター層を設けることができる。
【0023】
また、本発明に使用可能なアミノシランカップリング剤としては、例えばγ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β −アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。なお、これらに限定されず、アミノ基を有するシランカップリング剤ならば適用可能である。
【0024】
バインダーのカルボキシル基などに有機金属錯体あるいは有機酸金属塩が吸着、配位して電荷を帯びることは前述した通りであるが、アミノシランカップリング剤により処理された顔料表面のアミノ基も金属配位能を持つため、有機金属錯体あるいは有機酸金属塩により帯電することができる。顔料表面がバインダーですべて覆われていなくて帯電部位が表面に存在することになるので、バインダーと顔料成分の比率は任意に選択できるが、バインダーとアミノシランカップリング剤により処理された顔料の合計の重量に対しバインダーが3重量%未満の場合は、顔料成分が相対的に多くなるため、フィルター膜厚の変化に対する透過率の変化が急激になり、その制御が困難となる。また、電気泳動によって形成したフィルター膜の凝集力が不足し、にじみや流れといった問題が発生しやすい。一方、バインダーが70重量%以上の場合は顔料成分が相対的に少なくなるため、所定の透過率を得るためにはフィルター膜を厚くしなければならなくなり、均一性が損なわれやすいと同時に、乾燥や焼成により溶媒やバインダーを除去した場合にはその体積収縮率が大きくなり、変形やひび割れの発生が問題となる傾向がある。これらの問題を考慮し、さらに好ましくは、バインダーは、バインダーとアミノシランカップリング剤により処理された顔料の合計の重量に対し5重量%以上30重量%未満に設定することができる。
【0025】
また、本発明に使用される有機酸金属塩の有機酸成分としては、例えばオクチル酸、ステアリン酸、及びドデシル酸等の飽和脂肪酸、例えばパルミチン酸、オレイン酸、及びリノール酸などの不飽和脂肪酸、例えばナフテン酸、及びアビエチン酸など環状構造を持つカルボン酸、例えばドデシルスルホン酸、及びドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸があげられる。また、金属成分としては、例えばアルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、ランタン、ジルコニウム、錫、及びチタンなどが挙げられる。
【0026】
また有機金属錯体としては、アセチルアセトンなどのベータジケトンと上記金属とのキレート化合物や、ステアリルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの高級アルコールと上記金属とのアルコキシド、また上記キレート化合物とアルコキシドの複合錯体などがあげられる。
【0027】
本発明に用いられるバインダーは、5mgKOH/g以上の酸価を有する。
【0028】
バインダーの酸価が5mgKOH/g未満の場合は、その酸成分が少なすぎるために顔料表面のアミノ基と有効に作用することが出来ない。また、バインダーと有機酸金属塩あるいは有機金属錯体との相互作用も弱くなるため、これらの物質の吸着により得られる電荷量も小さくなる。電荷量が小さいと、顔料が凝集しやすくなり、液体現像剤としての十分な電気泳動性が得られなくなる。このため、本発明では、5mgKOH/g以上の酸価を有するバインダーを用いる。より好ましくは、バインダーの酸価は20mgKOH/g以上である。
【0029】
一方、バインダーの酸価が100mgKOH/g以上となると、顔料表面のアミノ基と相互作用する部位以外に過剰の酸価が存在することとなり、その量は有機酸金属塩や有機金属錯体が吸着、配位して荷電に寄与できる量よりも多くなってしまうので、溶液の導電率を上昇させ、電気泳動性能が阻害される可能性がある。また、過剰な酸価が原因で樹脂同士が凝集しやすくなり、溶媒中で均一な分散状態を保てなくなる。本発明に用いられるバインダーはその酸価が5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満であれば公知のワックス、分散剤、樹脂等が使用できる。
【0030】
また、本発明に用いられるバインダーは使用する絶縁性溶媒に親和性が高く、溶解性、膨潤性あるいは分散性のいずれかの形態であることが望ましい。
【0031】
このようなバインダーとしては、酢酸ビニル樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、酸化ポリエチレン樹脂、酸化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン及びロジン変性樹脂、エチレン− 酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。特に、アクリル系樹脂は、比較的容易に樹脂設計できる点で有用である。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
このバインダーに5mgKOH/g以上100mgKOH/gの酸価を持たせるためには、例えばモノマとして酸価の元となるカルボキシル基を有するアクリル酸やメタクリル酸などを導入し、他のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン誘導体、酢酸ビニル誘導体などと適切な比率で共重合させることができる。
【0033】
本発明に用いられる電気絶縁性溶媒は、好ましくは、70〜250℃の温度範囲に沸点を有し、109Ω・cm以上の体積比抵抗と3未満の誘電率を有することが好ましい。
【0034】
このような電気絶縁性溶媒として、例えばn−ペンタン,ヘキサン,ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン等脂環族炭化水素,塩素化されたアルカン,フッ素化されたアルカン,クロロフルオロカーボン等のハロゲン化された炭化水素溶媒,シリコンオイル類及びこれら混合物を使用することが出来る。好ましくは、Exxon Corporation製 アイソパーG(登録商標),アイソパーH(登録商標),アイソパーK(登録商標),アイソパーL(登録商標),アイソパーM(登録商標)及びアイソパーV(登録商標)などの分枝型パラフィン溶媒混合物を使用することが出来る。
【0035】
本発明の液体現像剤を用いると平面型画像表示装置のカラーフィルタ層の形成が簡便にできる。
【0036】
本発明の液体現像剤を適用し得る平面型画像表示装置の製造方法の一例は、以下のような前面基板の形成プロセスを含む。
【0037】
この前面基板の形成プロセスは、
透明基板上に、格子状またはストライプのパターンを有する遮光層を形成する工程と、
本発明にかかる液体現像剤を、供給部材を介して像保持体の表面に供給し、供給部材と像保持体との間に電界を形成して像保持体表面に、ドットまたはストライプ状のパターン像を形成する現像工程と、
パターン像が形成された像保持体を、定位置に保持された、遮光層を有する透明基板に沿って転動させる転動工程と、
転動する像保持体と透明基板との間に電界を形成し、像保持体表面上のパターン像を透明基板へ転写し、遮光層で区画された透明基板上の各領域に、カラーフィルター層を形成する転写工程と、
カラーフィルター層上に蛍光体層を形成する工程と、
蛍光体層上にメタルバック層を形成する工程とを含む。
【0038】
また、蛍光体粒子を電気絶縁性溶媒中に分散させて、液体現像剤を形成し、上記現像工程、転動工程、及び転写工程と同様にしてカラーフィルター層上に蛍光体層を形成することができる。
【0039】
この方法では、液体現像剤の組成及び濃度等を調整することにより、得られる表示装置の蛍光体層やカラーフィルタ層の膜厚を制御できる。
【0040】
また、本発明の一実施態様においては、像保持体は、その表面にパターン像を形成するためのパターン状の電極層を有し得る。電極層の形状を変えることで、任意の形状に蛍光体層やカラーフィルタ層を簡便にかつ低コストにパターニングすることができる。
【0041】
次に、図1ないし図10を用いて、本発明に用いられる前面基板の形成プロセスの一例を説明する。
【0042】
図1は、前面基板の形成プロセスに使用されるパターン形成装置の一例を表す外観図を示す。
【0043】
図2に示すように、このパターン形成装置10は、図中時計回り方向(矢印R方向)に回転するドラム素管(後述する)の周面に巻かれた原版1(像保持体)、この原版1の後述する高抵抗層に電荷を与えて帯電させる帯電器2、原版1に各色(r:赤、g:緑、b:青)の液体現像剤を供給して現像する複数の現像装置3r、3g、3b(以下、総称して現像装置3と称する場合もある)、現像によって原版1に付着した液体現像剤の溶媒成分をエアブローによって気化して乾燥させる乾燥器4(乾燥装置)、原版1に付着した現像剤粒子を転写してパターンを形成する被転写媒体となる透明基板としてのガラス板5を定位置で保持するステージ6(保持機構)、転写に先立ってガラス板5の表面に高抵抗もしくは絶縁性の溶媒を塗布する塗布装置7(濡らし装置)、転写を終えた原版1をクリーニングするクリーナ8、および原版1の電荷を除去する除電器9を有する。
【0044】
各色の現像装置3r、3g、3bに収納される液体現像剤は、絶縁性溶媒中に帯電したトナー粒子が含まれたもので、この微粒子が電界で電気泳動することによって現像が行われる。このトナー粒子は、金属酸化物を主成分とする無機顔料粒子と、無機顔料粒子表面に設けられたシランカップリング処理層と、シランカップリング処理層表面に添加された、5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満の酸価を有するバインダー及び有機酸金属塩及び有機金属錯体のうち少なくとも1種の電荷制御剤とを有する。
【0045】
図2(a)に平面図を示すように、原版1は、矩形の薄板状に形成されている。この原版1は、図2(b)に断面図を示すように、厚さ0.05(mm)ないし0.4(mm)、より好ましくは厚さ0.1(mm)ないし0.2(mm)の矩形の金属フィルム12の表面に高抵抗層13を形成して構成されている。金属フィルム12は可撓性を有し、アルミニウム、ステンレス、チタン、アンバーなどの素材で構成可能であるほかに、ポリイミドやPETなどの表面に金属を蒸着したものなどでも良いが、転写パターンを高い位置精度で形成するためには、熱膨張や応力による伸びなどが生じにくい素材で構成することが望ましい。また、高抵抗層13は、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリエステル、ウレタン、エポキシ、テフロン(登録商標)、ナイロンなどの体積抵抗率が1010Ωcm以上の材料(絶縁体を含む)により形成され、その膜厚は、10μm〜40μm、より好ましくは20μm±5μmに形成されている。
【0046】
また、原版1の高抵抗層13の表面13aには、図4に部分的に拡大して示すような矩形の凹部14aを多数整列配置したドット状のパターン14が形成されている。本実施の形態では、例えば平面型画像表示装置の前面基板に形成する蛍光体スクリーンを製造する凹版として、1色分の画素に相当する凹部14aだけを高抵抗層13の表面13aから凹ませて形成し、図4中に破線で示す他の2色分の領域14bには凹部を形成しないでスペースだけを確保してある。
【0047】
図4には、1つの凹部14aを拡大した原版1の断面図を示してある。本実施の形態では、凹部14aの底には金属フィルム12の表面12aが露出しており、この金属フィルム12の露出した表面12aがこの発明のパターン状の電極層として機能する。凹部14aの深さは、高抵抗層13の層厚に概ね相当する。凹部14aの底に露出した金属フィルム12の表面12a、および高抵抗層13の表面13aを含む原版1の表面全体に、厚さ0.5(μm)ないし3(μm)程度の表面離型層をコーティングすれば、転写特性が向上しより好ましい特性が得られる。
【0048】
図5には、上記構造のフィルム状の原版1をドラム素管31に巻きつける様子を描いた概略断面図を示してある。ドラム素管31の図中上部の切り込み部31aには、原版1の一端を固定するクランプ32と他端を固定するクランプ33が設けられている。原版1をドラム素管31の周面上に巻き付ける場合、まず、原版1の一端をクランプ32に固定し、その後、原版1を架張しつつその他端34をクランプ33で固定する。これにより、たるみ無く原版1をドラム素管31周面の規定位置に巻き付けることができる。
【0049】
図6は、このようにしてドラム素管31に巻きつけられた原版1の高抵抗層13の表面13aを帯電器4によって帯電する工程を説明するための部分構成図である。帯電器4は、周知のコロナ帯電器であり、コロナワイヤー42とシールドケース43で基本的に構成されているが、メッシュ状のグリッド44を設けることで帯電の均一性を向上できる。例えば、原版1の金属フィルム12とシールドケース43を接地し、コロナワイヤー42に不図示の電源装置によって+5.5(kV)の電圧を印加し、更にグリッド44に+500(V)の電圧を印加して原版1を図中矢印R方向に移動させると、高抵抗層13の表面13aは略+500(V)に均一に帯電される。
【0050】
同図に示した除電器9は、帯電器4とほぼ同様の構造であるが、コロナワイヤー46に例えば実効電圧6(kV)、周波数50(Hz)の交流電圧を印加すべく不図示の交流電源に接続し、シールドケース47とグリッド48を設置すると、帯電器4による帯電に先立って原版1の高抵抗層13の表面13aを略0(V)となるよう除電することが可能で、高抵抗層13の繰り返し帯電特性を安定化させることができる。
【0051】
図7には、上記のように帯電された原版1に対する現像動作を説明するための図を示してある。現像時には、現像する色の現像器3を原板1に対向させて、その現像ローラ51(供給部材)とスクイズローラ52を原版1に近接させ、原版1に上述した液体現像剤を供給する。現像ローラ51は、搬送される原版1の高抵抗層13の表面13aに対して100〜150(μm)程度のギャップを介してその周面が対向する位置に配置され、原版1の回転方向と同じ方向(図中反時計回り方向)に1.5倍ないし4倍程度の速度で回転する。
【0052】
図示しない供給系によって現像ローラ51周面に供給される液体現像剤53は、絶縁性液体としての溶媒54に現像剤粒子としての帯電したトナー粒子55を分散させて構成されており、現像ローラ51の回転に伴って原版1の周面に供給される。ここで、現像ローラ51に図示しない電源装置によって例えば+250(V)の電圧を印加すると、正に帯電しているトナー粒子55は、接地電位の金属フィルム12に向かって溶媒54中を泳動し、原版1の凹部14a内に集められる。このとき、高抵抗層13の表面13aは、+500(V)程度に帯電されているので正帯電したトナー粒子55は表面13aから反発されて付着しない。
【0053】
このようにして原版1の凹部14a内にトナー粒子55が集められた後、トナー粒子55の濃度が薄くなった液体現像剤53が引き続いてスクイズローラ52と原版1が対向するギャップに進入する。ここでは、ギャップ(絶縁層13表面13aとスクイズローラ52表面の間の距離)が30(μm)ないし50(μm)、スクイズローラの電位が+250(V)で、スクイズローラ52は原版1とは逆向きに原版1の速度の3倍から5倍程度の速度で移動するように設定されているため、現像をさらに促進しつつ、同時に原版1に付着している溶媒56の一部を絞り取る効果を奏する。このようにして、原版1の凹部14aにトナーによるパターン57が形成される。
【0054】
ところで、ガラス板5上に3色のフィルター層のパターンを形成する場合、図8に示すように、まず、青色顔料粒子を含む液体現像剤を収納する現像器3bが原版1の直下に移動し、ここで図示しない昇降機構によって現像器3bが上昇して原版1に近接させる。この状態で、原板1が矢印R方向に回転して凹部14aによるパターンが現像される。青色パターンの現像が終了すると、現像器3bが下降して原版1から離間する。
【0055】
この青色現像プロセスの間に、図示しない搬送装置によって予め搬送されてステージ6上に保持されているガラス板5のステージ6から離間した表面に沿って塗布装置7が図中の破線矢印T1方向に移動し、ガラス板5の表面に溶媒(絶縁性液体)が塗布される。この溶媒の役割と材料組成については後述する。
【0056】
しかる後に、青色のパターンを周面に担持した原版1が回転しつつ図中の破線矢印に沿って移動(この動作を転動と称する)し、青色のパターン像がガラス板5の表面に転写される。転写の詳細についても後述する。青色のパターンの転写を終えた原版1は図中左方に平行移動し、現像時の初期位置に戻る。このとき、ガラス板5を保持したステージ6が下降して初期位置に戻る原版1との接触が避けられる。
【0057】
次に、3色の現像器3r、3g、3bが図中左方に移動し、緑色の現像器3gが原版1の直下に位置するところで停止し、青色のパターンの現像のときと同様にして現像器3gの上昇、現像、下降が行われる。引き続いて、上記と同様の操作で緑パターンが原版1からガラス板5の表面に転写される。このとき、緑色のパターンのガラス板5表面上の転写位置は、上述した青色のパターンから1色分ずらされる。
【0058】
そして、上記の動作を赤色の現像についても繰り返し、ガラス板5の表面上に3色パターンを並べて転写して3色のパターン像をガラス板5の表面に形成する。このように、ガラス板5を定位置に保持して固定し、原版1をガラス板5に対して移動させることで、ガラス板5の往復移動が不要になり、大きな移動スペースの確保や装置の大型化を抑制できる。
【0059】
図9には、上述した原版1をガラス板5に沿って転動させるための転動機構の要部の構造を示してある。原版1を周面上に巻き付けたドラム素管31の軸方向両端には、ピニオンと呼ばれる歯車71が取り付けられている。原版1は、この歯車71とモーター72の駆動歯車73のかみ合わせによって回転するとともに、ステージ6の両端に設置されている直線軌道のラック74とピニオン(歯車71)の噛み合わせによって図中右方向に並進する。このとき、ステージ6上に保持されたガラス板5の表面と原版1の表面との間に相対的なズレを生じることのないように、転動機構の各部の構造が設計されている。特許請求の範囲では、このように回転しながらガラス板5に沿って平行に移動する動作を転動と称している。
【0060】
このようなラック・アンド・ピニオン機構によれば、駆動伝達用のアイドラが無いため、バックラッシュの無い高精度の回転・並進駆動を実現でき、ガラス板5上に例えば±5(μm)といった位置精度の高い高精細パターンを転写することが可能となる。
【0061】
一方、ガラス板は、図8に示すように、ステージ6の平らな接触面6aに対して、その裏面5b(原版1から離間した側の面)の略全面を面接させるようにステージ6上に配置される。その上、ガラス板5には、ステージ6を貫通して接触面6aまで延びた吸気口76に、接続パイプ75から主パイプ77を経由して不図示の真空ポンプを接続することによって、吸気口76の接触面6aに開口した図示しない吸着孔を介して負圧が作用され、ステージ6の接触面6a上に吸着される。この吸着機構によって、ガラス板5は、高い平面度を持った接触面6aにその裏面5bの略全面を押圧させて密着され、平面性が高い状態でステージ6上に保持される。このように平らな接触面6aにガラス板5を押し付けることにより、ガラス板5の歪み等をも矯正でき、後述する原版1との間の転写ギャップを高精度に維持できる。
【0062】
図10は、原版1からガラス板5にトナー粒子55を転写する際の様子を説明する要部断面図である。図示しない遮光層を有するガラス板5の表面5aには、例えば導電性高分子などで構成される導電層81が塗布されており、この導電層81の表面81aと原版1の高抵抗層13の表面13aとは、ギャップd2を介して非接触状態に設置される。d2は例えば10(μm)ないし40(μm)の範囲の値に設定される。高抵抗層13の厚さが例えば20(μm)の場合は、金属フィルム12と導電層81表面81aとの間の距離は、30(μm)ないし60(μm)となる。
【0063】
この状態で、電源装置82(転写装置)を介して導電層81に例えば−500(V)の電圧を印加すると、接地電位の金属フィルム12との間に500(V)の電位差が形成され、その電界によってトナー粒子55が溶媒54中を電気泳動して導電層81の表面81aに転写される。このように、トナー粒子55は非接触状態でも転写が可能なので、オフセット印刷やフレキソ印刷の場合のように、ブランケットやフレキソ版といった弾性体を介在させる必要がなく、常に位置精度の高い転写を実現することが可能となる。導電層81は、トナー粒子55の転写後、ガラス板5を図示しないベーク炉へ投入して焼成することで消失させる。このようにして、前面基板のフィルター層が得られる。
【0064】
また、例えば蛍光体粒子を電気絶縁性溶媒中に分散させて、液体現像剤を形成し、上記現像工程、転動工程、及び転写工程と同様にしてカラーフィルター層上に蛍光体層を形成することができる。
【0065】
なお、上記のように、電界を用いてトナー粒子をガラス板5に転写する場合、転写ギャップに溶媒が存在してガラス板5側の導電層81と原版1との間を濡らすことが必須条件となるため、転写に先立ってガラス板5の表面5aを溶媒でプリウェットしておくことが有効である。プリウェット溶媒としては絶縁性もしくは高抵抗であれば良いが、液体現像剤に用いられている溶媒と同一の溶媒、もしくはこれに帯電制御剤などが添加されたものであればなお好適である。プリウェット溶媒は、図9を用いて説明したように、塗布装置7によって適切なタイミングで適当な塗布量でガラス板5の表面5a上に塗布される。
【0066】
以上のように、上述した実施の形態によると、定位置に配置したガラス板5に対して原版1を転動させて現像したトナー粒子55をガラス板5の表面5aに転写するようにしたため、原版1を転動させる転動機構の構成を小型化でき、装置の設置スペースを小さくできる。また、上述した実施の形態によると、非接触状態で対向配置した原版1からガラス板5へ電界を用いてトナー粒子55を転写するようにしたため、従来のようにフレキソ版を用いた転写方式と比較して、転写像の解像度を高めることができ、高精細なパターンを形成できる。
【0067】
また、上述した実施の形態では、原版1の凹部14aに集めた(現像した)トナー粒子55を乾燥器4からのエアブローによって一旦適度に乾燥させた後、ガラス板5の表面5aを溶媒によって濡らして(プリウェットして)トナー粒子55を転写するようにしたため、ガラス板5の表面5aに転写されるトナー像の形状を安定させることができ、パターンの輪郭を鮮明にできる。
【0068】
図11にこのようにして得られた前面基板を模式的に表す断面図を示す。
【0069】
図11に示すように、得られた前面基板111は、透明基板5とその上にドット状に設けられた蛍光体層116と、蛍光体層116の周囲に格子状に設けられた遮光層117とを有する。
【0070】
図12は、本発明に係る表示装置としてのFEDの一例を表す斜視図を示す。
【0071】
また、図13には、そのA−A’断面図を示す。
【0072】
図12及び図13に示すように、このFEDは、絶縁基板としてそれぞれ矩形状のガラス板からなる前面基板111、および背面基板112を備え、これらの基板は1〜2mmの隙間を置いて対向配置されている。そして、前面基板111および背面基板112は、矩形枠状の側壁113を介して周縁部同士が接合され、内部が真空状態に維持された扁平な矩形状の真空外囲器110を構成している。
【0073】
真空外囲器110の内部には、前面基板111および背面基板112に加わる大気圧荷重を支えるため、複数のスペーサ114が設けられている。スペーサ114としては、板状あるいは柱状のスペーサ等を用いることができる。
【0074】
前面基板111の内面上には、画像表示面として、赤、緑、青の蛍光体層116とマトリクス状の遮光層117とを有した蛍光面115が形成されている。これらの蛍光体層116はストライプ状あるいはドット状に形成してもよい。この蛍光面115上には、アルミニウム膜等からなるメタルバック120が形成されている。さらに真空外囲器110の内部圧力を下げるためにゲッタ膜121を形成し、内部の不要ガスを吸着している。ゲッタ粉末に接着効果のある材料を混ぜて接着している。
【0075】
背面基板112の内面上には、蛍光面115の蛍光体層116を励起する電子源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の表面伝導型の電子放出素子118が設けられている。これらの電子放出素子118は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。各電子放出素子118は、図示しない電子放出部、この電子放出部に電圧を印加する一対の素子電極等で構成されている。また、背面基板112の内面には、電子放出素子118に電位を供給する多数本の配線121がマトリクス状に設けられ、その端部は真空外囲器110の外部に引出されている。
【0076】
このようなFEDでは、画像を表示する場合、蛍光面115およびメタルバック120にアノード電圧を印加して、電子放出素子118から放出された電子ビームをアノード電圧により加速して蛍光面へ衝突させる。これにより、蛍光面115の蛍光体層116が励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0077】
実施例
(青色顔料の表面処理)
2リットルのビーカに純水800g、エタノール100gを加え、マグネットスターラで攪拌しながら、アルミン酸コバルト(Al2O3−CoO)系である商品名コバルトブルーX (粒子径0.01〜0.02μm、東洋顔料社製)100gをダマにならないよう少しずつ添加する。次に、アミノシランカップリング剤(KBM603信越シリコーン社製)10gを少しずつ添加し、すべて添加し終わってから2時間攪拌を続ける。その後吸引ろ過によって固形分をろ別し、水分を含んだペースト状の顔料を1日自然乾燥させ、アルコール分を蒸発させる。最後に100℃の乾燥機に5時間投入して水分を完全に除去する。室温にて自然冷却し、その後、ブロック状の顔料凝集体を実験用ミキサにて解砕する。100メッシュの篩を通してアミノシラン処理青色顔料(青色顔料1)を得た。
【0078】
(赤色顔料の表面処理)
赤色顔料としてシコトランスレッドL−2817(粒子径0.01〜0.02μm、BASF社製を用い、アミノシランカップリング剤としては東レダウコーニングシリコーン社製Z−6610を使用した以外は上記青色顔料の表面処理と同様にしてアミノシラン処理赤色顔料(赤色顔料2)を得た。
【0079】
(バインダ樹脂1の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製 マクロモノマ(AB−6)25gおよびメチルエチルケトン(以下、MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートから、メタクリル酸ブチル25.0g、メタクリル酸ラウリル45.0g、アクリル酸5gおよびアゾビスイソブチロニトリル)(以下、AIBNいう)1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後、引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0080】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、不揮発分(NV)=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂1)の酸価は33.7mgKOH/gであった。
【0081】
(バインダ樹脂2の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製マクロモノマ(AB−6)14.0gおよびメチルエチルケトン(以下MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで、滴下ロートから、メタクリル酸ブチル40.0g、メタクリル酸ラウリル45.0g、アクリル酸1.0gおよびAIBN1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後、引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0082】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、NV=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂2)の酸価は5.3mgKOH/gであった。
【0083】
(バインダ樹脂3の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製マクロモノマ(AB−6)20.0gおよびメチルエチルケトン(以下MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートから、メタクリル酸ブチル30.0g、メタクリル酸ラウリル35.0、アクリル酸15.0gおよびAIBN1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0084】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、NV=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂3)の酸価は80.5mgKOH/gであった。
【0085】
(バインダ樹脂4の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製マクロモノマ(AB−6)14.7gおよびメチルエチルケトン(以下MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートから、メタクリル酸ブチル45.0g、メタクリル酸ラウリル40.0g、アクリル酸0.30gおよびAIBN1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0086】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、NV=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂4)の酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0087】
(バインダ樹脂5の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、ガス導入管および温度計を装備するガラスフラスコに東亞合成株式会社製マクロモノマ(AB−6)10.0gおよびメチルエチルケトン(以下MEKと言う)80.0gを仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートから、メタクリル酸ブチル10.0g、メタクリル酸ラウリル50.0、アクリル酸25.0gおよびAIBN1.00gをMEK70.0gに溶解した重合開始剤溶液と混合液を3時間かけて滴下した。その後引き続き4時間反応を継続させることにより重合を完結させた。
【0088】
次に、上記重合溶剤のMEKを真空留去し、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を添加して、NV=25重量%の分散溶液を得た。このようにして得られた樹脂(バインダ樹脂5)の酸価は118.5mgKOH/gであった。
【0089】
実施例1
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、全重量を10gとなるよう調整した。ナフテン酸ジルコニウム(大日本インキ化学工業社製)を1g加えた後、さらに、アイソパーL(エクソンモービル化学社製)を加えて全体を100gとする。直径2mmのガラスビーズ300gを投入し、1500rpmで2時間ミキシングした後に、ガラスビーズと処理液をメッシュで分離し、さらに、100gのアイソパーLで希釈して固形分濃度5重量%のカラーフィルター用液体現像剤を得た。
【0090】
上述のトナー製造方法に従ってトナー化し、青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径は、堀場製作所製粒径分布測定装置(LB−500)によって測定し、0.35μmであった。
【0091】
図15に、得られた液体現像剤を用いてトナー層を形成するための実験装置の一例を表す概略図を示す。
【0092】
図示する様に、実験装置としてのサンドイッチセルは、一対のITO電極211,212間に、テフロン(登録商標)製スペーサ213を配置し、ITO電極211,212間に電圧を印可できるようになっている。テフロン(登録商標)製スペーサ213は、一辺が40mmの正方形で、中央に30mm角の正方形の開孔が設けられ、その一辺から、開孔に通じる2つのパスを形成するようにスペーサ213の一部が除去されている。2つのパスの一方は、空気抜き穴215として、もう一方は、液体現像剤の注入路214として使用される。
【0093】
上記青色顔料含有液体現像剤を、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0094】
このことから、トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また、乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計(日本電色工業社製NDH500W)によるヘイズ値は4.3であった。
【0095】
また、実施例1の応用例として、ナフテン酸ジルコニウムをミキシング前ではなく、ミキシングの後分離された処理液に添加することにより、さらに、100gのアイソパーLで希釈して固形分濃度5重量%のカラーフィルター用液体現像剤を得た。
【0096】
同様に、電着膜の様子を観察したところ、グランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0097】
また、濁度計によるヘイズ値は4.0であった。
【0098】
実施例2
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.43μmであった。
【0099】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0100】
このことから、トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計(日本電色工業社製NDH500W)によるヘイズ値は5.2であった。
【0101】
実施例3
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.66μmであった。
【0102】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0103】
このことからトナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計(日本電色工業社製NDH500W)によるヘイズ値は5.0であった。
【0104】
実施例4
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.33μmであった。
【0105】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な赤色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。
【0106】
このことからトナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計によるヘイズ値は4.8であった。
【0107】
実施例5
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.53μmであった。
【0108】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。バインダ成分が少ないため膜がややにじみやすい傾向があったが、トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計によるヘイズ値は4.6であった。
【0109】
実施例6
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして青色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.49μmであった。
【0110】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。樹脂成分がやや多いため膜の濃度は薄めであったが、トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことが分かった。また乾燥後の膜の透明性は良好であり、濁度計によるヘイズ値は5.5であった。
【0111】
比較例1
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.62μmであった。
【0112】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な赤色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無かったが、乾燥後の膜はあきらかに濁りが多く不透明であり、濁度計によるヘイズ値は18.2であった。
【0113】
比較例2
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.72μmであった。
【0114】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、グランド側のITO電極と正極側のITO電極の両極にトナーが付着しており、トナー粒子の帯電極性が不安定であることが分かった。
【0115】
比較例3
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.69μmであった。
【0116】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。トナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無かったが、バインダ樹脂成分が少なすぎるため膜のにじみが激しく、膜としての形状を維持できなかった。
【0117】
比較例4
200ccのサンドミル用ベッセルに、顔料およびバインダ樹脂を下記表1に示す組成比で投入し、実施例1と同様にして赤色顔料含有液体現像剤を得た。このときトナーの体積平均粒子径を、粒径分布測定装置によって測定したところ、0.22μmであった。
【0118】
また、電気泳動性評価するため、図示するようなサンドイッチセルに注入し、直流電圧300Vを5秒間印加した後にセルを分解し、電着膜の様子を観察したところ、いずれの場合もグランド側のITO電極に均一な青色フィルター層が形成されており、正極側のITO電極にはなにも付着していなかった。よってトナー粒子はすべて正極性に帯電しており、逆極性に帯電しているものは無いことがわかった。
【0119】
乾燥後の膜透明性は高いものの、膜濃度が非常に薄いため、トナーの固形分濃度を倍(10重量%)にして上述のセルで電着したが、得られた膜濃度はあまり変わらず、半分以上が電着しきれずに流れてしまっていることがわかった。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】前面基板の形成プロセスに使用されるパターン形成装置の一例を表す外観図
【図2】図1のパターン形成装置で使用する原版を示す平面図(a)、および断面図(b)
【図3】図2の原版を部分的に拡大して示す部分拡大平面図
【図4】図2の原版の1つの凹部の構造を説明するための部分拡大斜視図
【図5】図2の原版をドラム素管に巻き付けた状態を示す概略図
【図6】図2の原版の高抵抗層の表面を帯電させるための構成を示す概略図
【図7】図2の原版に液体現像剤を供給してトナー粒子によるパターンを形成するための構成を示す概略図
【図8】図2の原版に形成したパターンをガラス板に転写するための構成を示す概略図
【図9】図2の原版をガラス板に沿って転動させるための転動機構の要部の構成を示す概略図
【図10】原版の凹部に集めたトナー粒子をガラス板に転写する動作を説明するための動作説明図
【図11】本発明にかかる前面基板の一例を模式的に表す断面図
【図12】本発明に係る表示装置としてのFEDの一例を表す斜視図
【図13】図12のA−A’断面図
【図14】本発明に使用し得る実験装置の一例を表す概略図
【図15】液体現像剤を用いてトナー層を形成するための実験装置の一例を表す概略図
【符号の説明】
【0121】
1…原版、3r、3g、3b…現像装置、4…乾燥器、5…ガラス板、6…ステージ、7…塗布装置、10…パターン形成装置、12…金属フィルム、13…高抵抗層、14a…凹部、61…核粒子、62…被覆層、63…熱可塑性樹脂微粒子、60…トナー粒子、131…ジムロート還流冷却器、132…防爆モータ、133…熱電対、134…リレー温調ユニット、135…マントルヒータ、136…攪拌機、110…真空外囲器、111…前面基板、112…背面基板、113…側壁、115…蛍光面、116…蛍光体層、117…遮光層、118…電子放出素子、120…メタルバック、121…ゲッタ層、211,212…ITO電極、213…スペーサ、214…注入路、215…空気抜き穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性溶媒と、
該電気絶縁性溶媒中に包含され、金属酸化物を主成分とする無機顔料粒子、
該無機顔料粒子表面に設けられたアミノシラン系カップリング剤により表面処理されたシランカップリング処理層、及び該シランカップリング処理層表面に添加された、5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満の酸価を有するバインダー、及び有機酸金属塩及び有機金属錯体のうち少なくとも1種の電荷制御剤を含有するトナー粒子とを含むことを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記アミノシラン系カップリング剤により表面処理された無機顔料粒子とバインダーの全重量に対して、バインダーの含有量は3重量%以上70重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記アミノシラン系カップリング剤は、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、及びN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記有機酸金属塩の有機酸成分は、例えばオクチル酸、ステアリン酸、及びドデシル酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ナフテン酸、アビエチン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、金属成分は、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、ランタン、ジルコニウム、錫、及びチタンからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1ない3のいずれか1項に記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記有機酸金属塩の有機酸成分は、アセチルアセトンなどのベータジケトンとアルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、ランタン、ジルコニウム、錫、及びチタンからなる群から選択される金属とのキレート化合物や、ステアリルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの高級アルコールと上記金属とのアルコキシド、また上記キレート化合物とアルコキシドの複合錯体であることを特徴とする請求項1ない3のいずれか1項に記載の液体現像剤。
【請求項6】
前記バインダーは、酢酸ビニル樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、酸化ポリエチレン樹脂、酸化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン及びロジン変性樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−アクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体現像剤。
【請求項1】
電気絶縁性溶媒と、
該電気絶縁性溶媒中に包含され、金属酸化物を主成分とする無機顔料粒子、
該無機顔料粒子表面に設けられたアミノシラン系カップリング剤により表面処理されたシランカップリング処理層、及び該シランカップリング処理層表面に添加された、5mgKOH/g以上100mgKOH/g未満の酸価を有するバインダー、及び有機酸金属塩及び有機金属錯体のうち少なくとも1種の電荷制御剤を含有するトナー粒子とを含むことを特徴とする液体現像剤。
【請求項2】
前記アミノシラン系カップリング剤により表面処理された無機顔料粒子とバインダーの全重量に対して、バインダーの含有量は3重量%以上70重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記アミノシラン系カップリング剤は、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、及びN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記有機酸金属塩の有機酸成分は、例えばオクチル酸、ステアリン酸、及びドデシル酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ナフテン酸、アビエチン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、金属成分は、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、ランタン、ジルコニウム、錫、及びチタンからなる群から選択される少なくとも1つである請求項1ない3のいずれか1項に記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記有機酸金属塩の有機酸成分は、アセチルアセトンなどのベータジケトンとアルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、ランタン、ジルコニウム、錫、及びチタンからなる群から選択される金属とのキレート化合物や、ステアリルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの高級アルコールと上記金属とのアルコキシド、また上記キレート化合物とアルコキシドの複合錯体であることを特徴とする請求項1ない3のいずれか1項に記載の液体現像剤。
【請求項6】
前記バインダーは、酢酸ビニル樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、酸化ポリエチレン樹脂、酸化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン及びロジン変性樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−アクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体現像剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−268600(P2008−268600A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112251(P2007−112251)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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