説明

液体現像剤

【課題】分散性を低下させることなく、ドキュメントオフセットを防ぐことができる液体現像剤を提供する。
【解決手段】液体現像剤は、トナー粒子と分散剤とを含み、該トナー粒子の樹脂は、低級アルキル基を有しうるスチレン、アクリル酸低級アルキル、およびメタクリル酸低級アルキルからなる群より選ばれる第1モノマーと、アクリル酸またはメタクリル酸である第2モノマーと、を含む複数のモノマーを構成モノマーとするビニル系共重合体樹脂を含み、該分散剤は、炭素数10〜30のアルキル基を有する塩基性高分子からなり、前記トナー粒子の全質量に対して0.5質量%以上3質量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる液体現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる現像剤としては、従来より粉体状の現像剤が用いられてきた。このような粉体状の現像剤(所謂トナー)は、顔料を樹脂中に分散したものであるが、取り扱い時に生じるトナー粒子の粉塵が人体に吸入されるという問題があることから、その粒径の下限値を5〜6μm以上にする必要があった。しかしながら、当該装置により形成される画像は、上記粒径が小さいものほど高画質となるため、その粒径をより小さくすることが求められていた。
【0003】
このため、取り扱い時に粉塵の発生がないことからトナー粒子の粒径をより小さくすることが可能な液体現像剤が注目されている。このような液体現像剤は、通常、トナー粒子と絶縁性液体と分散剤とを含み、トナー粒子は、樹脂と、該樹脂中に分散された顔料とを含む。このような液体現像剤として、たとえば、トナー粒子中の樹脂としてエチレン共重合体を用い、分散剤としてメタクリル酸エステルとビニルピロリドンの共重合体を用いるもの(特許文献1)、トナー粒子中の樹脂としてエチレンアクリル共重合体を用い、分散剤としてオレフィンとビニルピロリドンの共重合体を用いるもの(特許文献2)、トナー粒子中の樹脂としてポリエステル樹脂を用い、分散剤としてオレフィンとビニルピロリドンの共重合体を用いるもの(特許文献3)、トナー粒子中の樹脂としてスチレン−アクリル系樹脂を用い、分散剤としてラウリルメタクリレートとビニルピロリドンの共重合体を用いるもの(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−66666号公報
【特許文献2】特開平6−208256号公報
【特許文献3】特開2009−175670号公報
【特許文献4】特開平8−220813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の液体現像剤を用いた印刷物は、その画像同士を重ねると、画像面が接着してしまうという問題が生じることがあった。このような現象は一般的にドキュメントオフセットと言われる。ドキュメントオフセットの大きな原因の一つは、トナー粒子中の樹脂が絶縁性液体を取り込み膨潤することにより生じると考えられる。トナー粒子中に取り込まれた絶縁性液体は、メディア上にトナー粒子を転写して熱による定着処理を行なった後であっても、トナー粒子中に残存してしまうことがあり、ドキュメントオフセットの原因になると考えられる。
【0006】
また、液体現像剤においては、絶縁性液体中におけるトナー粒子の凝集を防ぐために、分散剤の添加が必須であるが、分散剤を添加しすぎると、ドキュメントオフセットの原因になると考えられる。分散剤は、親絶縁性液体成分と親トナー粒子成分とを含むが、分散剤の含有量が多くなるとその分親絶縁性液体成分も多くなるので、絶縁性液体成分が残存しやすくなり、ドキュメントオフセットを生じさせる原因となり得る。したがって、少量で十分な分散効果が得られる分散剤が好ましい。特許文献4では、トナー粒子30重量部に対して5重量部もの分散剤を配合しており、その分親絶縁性液体成分も多くなるので、画像上に絶縁性液体成分が残存しやすくなっていると考えられられる。
【0007】
本発明は、このような状況下においてなされたものであって、その目的とするところは、分散性を低下させることなく、ドキュメントオフセットを防ぐことができる液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、トナー粒子に用いられるアクリル系樹脂を構成するモノマーの種類を選択することにより膨潤しにくい化学構造を採用するとともに、少量であっても高い分散効果を示す分散剤を採用し、さらにこの分散剤の含有量を選択することにより上記の課題を解決できるのではないかと考え、この知見に基づきさらに検討を重ねることにより、ついに本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体と分散剤とを含み、該トナー粒子は、樹脂と、該樹脂中に分散された顔料とを含み、該樹脂は、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいスチレン、アクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4)、およびメタクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである第1モノマーと、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである第2モノマーと、を含む複数のモノマーを構成モノマーとするビニル系共重合体樹脂を含み、第1モノマーと第2モノマーとの比率は、これら両者の全量に対する第2モノマーの比率が5〜25モル%であり、第1モノマーと第2モノマーとの全量が、ビニル系共重合体樹脂の全量に対して90質量%以上であり、上記分散剤は、炭素数10〜30のアルキル基を有する塩基性高分子からなり、トナー粒子の全質量に対して0.5質量%以上3質量%以下である。ここで「構成モノマー」とは、それが重合することにより重合体樹脂を構成し、その構成単位となるものである。
【0010】
上記液体現像剤において、上記塩基性高分子は、好ましくは、アミノ基、アミド基、イミン基、およびピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0011】
上記液体現像剤において、上記塩基性高分子の好ましい例として、炭素数10〜30のアルキル基を有するビニルモノマーである第3モノマーと、ピロリドン基を有し、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいN−ビニルピロリドンである第4モノマーと、を含む複数のモノマーを構成モノマーとするビニル系共重合体樹脂が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体現像剤は、画像面を重ねたときに生じるドキュメントオフセットを防ぐという好適な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子写真方式の画像形成装置の概略概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<液体現像剤>
本発明の液体現像剤は、トナー粒子と絶縁性液体と分散剤とを含む。かかる液体現像剤は、これらの成分を含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえば荷電制御剤、粘度調整剤等を挙げることができる。ここで、各成分の配合割合は、たとえばトナー粒子を10〜50質量%、絶縁性液体を50〜90質量%とすることができる。
【0015】
このような液体現像剤は、電子写真方式の画像形成装置用の現像剤として有用である。
<トナー粒子>
本発明の液体現像剤に含まれるトナー粒子は、通常絶縁性液体に相溶せず絶縁性液体中に分散された状態で存在し、少なくとも、樹脂と、該樹脂中に分散された顔料とを含む。かかるトナー粒子は、これらの成分を含む限り、他の任意の成分を含むことができる。他の成分としては、たとえばワックス、荷電制御剤等を挙げることができる。
【0016】
このようなトナー粒子の粒径は、特に限定されるものではないが、高画質の画像を得ることを目的として、0.5〜6μm、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1〜3μmとすることが好適である。これらの粒径は、従来用いられていた粉体状現像剤(乾式現像剤)のトナー粒子の粒径に比べて小さく、本発明の特徴の一つとなるものである。
【0017】
なお、本発明でいう粒径とは、平均粒径を意味し、各種の粒度分布計により体積平均粒径として特定することができる。
【0018】
<樹脂>
本発明のトナー粒子を構成する樹脂は、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいスチレン、アクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4)、およびメタクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである第1モノマーと、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである第2モノマーと、を含む複数のモノマーを構成モノマーとするビニル系共重合体樹脂を含み、該第1モノマーと該第2モノマーとの比率は、これら両者の全量に対する該第2モノマーの比率が5〜25モル%であることを特徴とする。なお、本発明において、「炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいスチレン」とは、スチレンを含むとともに、スチレンを構成するベンゼン環に炭素数1〜4のアルキル基が1または2個置換基として置換した化合物が含まれる。
【0019】
上記第1モノマーの候補化合物である、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいスチレンは、以下の化学式(1)で表される。
【0020】
【化1】

【0021】
化学式(1)において、R、Rは、Hまたは炭素数1〜4のアルキル基である。
上記第1モノマーの候補化合物である、アクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4)は、以下の化学式(2)で表される。
【0022】
【化2】

【0023】
化学式(2)において、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。
上記第1モノマーの候補化合物である、メタクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4)は、以下の化学式(3)で表される。
【0024】
【化3】

【0025】
化学式(3)において、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。
一般的に、トナー粒子を構成する樹脂として上記構成のビニル系共重合体樹脂をはじめとするアクリル系樹脂を採用する理由は、熱特性等の特性を広範囲に変化させることができるとともに、透光性、延展性、粘弾性に優れるためである。このようにアクリル系樹脂は、透光性に優れることから、カラー画像を得る場合に美しい色彩を得ることができ、また延展性および粘弾性に優れることから紙等の記録媒体上に形成された画像(樹脂膜)が強靭で、しかもその記録媒体と強力に接着することができる。そして、本発明のビニル系共重合体樹脂は、第2モノマーとして極性基を含み、またこの第2モノマーの含有率を上記範囲内で高めることにより、上記のような一般的な特性に加えて、絶縁性液体との相溶性が低下し、また、極性基が架橋することにより、絶縁性液体が浸入しにくくなり、以ってこのビニル系共重合体樹脂により構成されるトナー粒子は絶縁性液体に対する膨潤性が抑制され、ドキュメントオフセットを抑制することができるという優れた効果を示すことになる。
【0026】
さらに、第1モノマーの末端基であるまたは末端基となりうるアルキル基として、炭素数1〜4のアルキル基を選択する理由は、炭素数が5以上のアルキル基である場合、絶縁性液体との相溶性が上がり、ドキュメントオフセットを悪化させる可能性があるからである。また、第1モノマーとして、少なくとも炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいスチレンを含む場合、トナーの強度が確保しやすくなり、定着後の耐擦傷性が向上するという効果を得ることができる。第1モノマーとして、少なくとも炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいスチレンを含む場合、このスチレンの含有量は、上記効果を得る観点から、第1モノマーと第2モノマーとの合計量に占める割合が50モル%以上であることが好ましい。
【0027】
ここで、第1モノマーと第2モノマーの比率を表わす第2モノマーの含有率(モル%)は、第1モノマーと第2モノマーとの合計量に占める第2モノマーのモル比として表わされ、このモル比が上記のとおり5〜25モル%になることを要する。なお、上記第2モノマーのモル比が5モル%未満では、ビニル系共重合体樹脂の極性が低くなり、SP(ソルビリティーパラメータ)値が下がり、絶縁性液体との相溶性が上がり、絶縁性液体に膨潤しやすくなることから、ドキュメントオフセットが生じ易くなる。また、25モル%を超えると、ガラス転移点(Tg)が高くなり過ぎ、記録媒体への画像の定着が不可能となったり、極めて高温の定着温度が必要となり画像形成装置に対する負荷が大きくなるという不都合が生じる。より好ましいモル比は、8〜20モル%である。
【0028】
本発明のビニル系共重合体樹脂は、その構成モノマーとして、第1モノマーおよび第2モノマーのみで構成されることが好ましいが、本発明の効果が示される限り、他のモノマーが含まれていても差し支えない。なお、他のモノマーが含まれている場合であっても、第1モノマーと第2モノマーとの全量が、ビニル系共重合体樹脂の全量に対して90モル%以上となるようにする。90モル%未満の場合、絶縁性液体に対する相溶性が高くなることがあり、その場合ドキュメントオフセットが発生しやすくなる。他のモノマーとしては、たとえば酢酸ビニル、アルキル基の炭素数が5以上のアクリル酸アルキル、アルキル基の炭素数が5以上のメタクリル酸アルキル等を挙げることができる。
【0029】
構成モノマーの種類、第1モノマーと第2モノマーのモル比、および第1モノマーと第2モノマーの全量のビニル系重合体樹脂の全量に対するモル%は、ビニル系共重合体樹脂を合成する際の原料モノマーの使用量を制御することにより調整することが可能であるが、液体現像剤中のトナー粒子または画像中のビニル系共重合体樹脂成分を、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)を用いて、1H−NMR分析を行なってその積分比より決定することができる。
【0030】
また、本発明のビニル系共重合体樹脂は、重量平均分子量(Mw)が10000以上1000000以下であることが好ましく、より好ましくは50000以上200000以下である。重量平均分子量が10000未満では顔料との均一分散が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が1000000を超えると、記録媒体への定着時に要するエネルギが大きくなり好ましくない場合がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0031】
また、本発明のビニル系共重合体樹脂は、熱可塑性を示し、40℃以上80℃以下のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。ガラス転移点が40℃未満の場合、保管安定性が悪化する場合がありドキュメントオフセットの発生の原因ともなり、80℃を超えると、画像を定着させるエネルギーが著しく増加し経済的に不利であるばかりか画像形成装置の各部に熱的ダメージを与えやすく、また定着温度が低い場合には画像の光沢が低下する場合がある。より好ましいガラス転移点は、55℃以上75℃以下である。
【0032】
また、本発明のビニル系共重合体樹脂は、酸価が5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。酸価が5mgKOH/g未満では絶縁性液体との相溶性が上がり膨潤しやすくなる場合がある。一方、100mgKOH/gを超えると、ガラス転移点や溶融温度が高くなりすぎ定着エネルギーが多大に必要となる場合がある。
【0033】
このような本発明のビニル系共重合体樹脂は、通常通りの方法、すなわちビニル系共重合体のラジカル重合反応により得ることができる。
【0034】
ここで、上記第1モノマーとしては、たとえばスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン(以上、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいスチレン)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル(以上、アクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4))、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル(以上、メタクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4))等を挙げることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0035】
なお、本発明の樹脂としては、このようなビニル系共重合体樹脂を単独で用いることができるが、必要に応じてスチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン共重合体樹脂(特にエチレン系共重合体樹脂)、エポキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、パラフィンワックス等の樹脂を、樹脂の全質量に対して20質量%未満の範囲において適量混合して用いても差し支えない。
【0036】
<顔料>
本発明の液体現像剤の顔料は、上記の樹脂中に分散されトナー粒子を構成する。本発明で用いる顔料は、公知である各色の有機顔料、無機顔料を用いることができる。有機顔料としては、フタロシアニン系、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ系等のアゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ペリノン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、等が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられる顔料の具体例としては、オルトアニリンブラック、トルイジンオレンジ、パーマネントカーミンFB、ファーストイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、キナクリドンレッド、C.I.ピグメントブルー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントイエロー、ジオキサンバイオレット、ピクトリアピュアブルー、アルカリブルートナー、アルカリブルーRトナー、ファーストイエロー10G、オルトニトロアニリンオレンジ、トルイジンレッド等が挙げられる。
【0038】
顔料の分散性を上げるため、塩基性もしくは酸性に処理した顔料誘導体を用いても良い。顔料は、樹脂中で、その二次粒径が50nm以上300nm以下となるように分散されることが好ましい。二次粒径が300nmを超えると、一定の付着量で十分な着色力、隠ぺい力、定着後の透明性が得られにくい。顔料の配合量は、トナー粒子の樹脂の全量に対して好ましくは8質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下である。8質量%未満の場合、所望の濃度が得られないことがあり、一方50質量%を肥えると、樹脂への分散性や定着性を損なう場合がある。好適な量は色種によって異なる。たとえば、シアン顔料の場合、トナー粒子の樹脂の全量に対して10質量%以上40質量%以下が好ましく、マゼンタ顔料の場合、トナー粒子の樹脂の全量に対して15質量%以上50質量%以下が好ましく、イエロー顔料の場合、トナー粒子の樹脂の全量に対して8質量%以上30質量%以下が好ましい。適量は粒径によっても異なり小粒径になるほど顔料コンテンツを高くする効果が顕著となる。なお、用いられる顔料は1種類に限定されることはなく、2種以上の顔料を合わせて用いることもできる。この場合、上記した配合量は、複数種類の顔料の合計配合量とする。
【0039】
<絶縁性液体>
本発明の液体現像剤に含まれる絶縁性液体とは、常温で不揮発性であり、電気的に絶縁性を示すもの(たとえば抵抗値が1011〜1016Ω・cmの範囲のもの)が好ましい。この範囲の抵抗値を有すれば、通常静電潜像を乱すことがないためである。さらに、このような絶縁性液体としては、臭気および毒性がないものが好ましい。
【0040】
このような絶縁性液体としては、たとえば脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン等を挙げることができる。特に、臭気、無害性、コストの観点から、ノルマルパラフィン系溶媒、イソパラフィン系溶媒が好ましい。より具体的には、松村石油研究所社製のモレスコホワイトP40(商品名)、同P60(商品名)、同P120(商品名)、アイソパー(商品名、エクソン化学社製)、シェルゾール71(商品名、シェル石油化学社製)、IPソルベント1620(商品名、出光石油化学社製)、IPソルベント2028(商品名、出光石油化学社製)等を挙げることができる。
【0041】
<分散剤>
本発明の液体現像剤に含まれる分散剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に安定的に分散させる作用を有するものであり、このため、通常はトナー粒子の表面部に存在(吸着)している。このような分散剤は、絶縁性液体に対して可溶性であることが好ましい。
【0042】
本発明の液体現像剤は、炭素数10〜30のアルキル基を有する塩基性高分子からなる分散剤を含む。トナー粒子を構成する樹脂は酸成分を含んでいるため、塩基性高分子からなる分散剤を用いることにより、分散剤とトナー粒子との吸着性が上がり、分散性が良くなる。塩基性高分子は、窒素元素を含むことが好ましく、アミノ基、アミド基、イミン基およびピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0043】
分散剤は、トナー粒子の全質量に対して0.5質量%以上3質量%以下の範囲で含有される。塩基性高分子中の炭素数10〜30のアルキル基は、親絶縁性液体成分として作用する。分散剤の含有量が3質量%を超えると、親絶縁性液体成分が過剰になることがある。この場合、定着後もトナー粒子中から絶縁性液体が完全に抜けないことがあり、ドキュメントオフセットが発生する。また、分散剤の含有量が0.5質量%未満であると、十分な分散性を確保することが難しくなる。
【0044】
分散剤として用いられる本発明に係る塩基性高分子としては、たとえば、ポリエステルアミン、変性ポリウレタン、ポリアルキレンポリアミン、変性ウレタン、ポリエステルポリアミン等が挙げられる。このような塩基性高分子からなる分散剤の具体例としては、「Disperbyk−109」(商品名、アルキロールアミノアマイド、BYK Chemie社製)、「Disperbyk−130」(商品名、不飽和ポリカルボン酸ポリアミノアマイド、BYK Chemie社製)、「S13940」(商品名、ポリエステルアミン系、アビシア社製)、「S17000」、「S18000」、「S19000」(商品名、脂肪酸アミン系、アビシア社製)、「S11200」(商品名、アビシア社製)等が挙げられる。
【0045】
分散剤として用いられる本発明に係る塩基性高分子の好ましい一例として、炭素数10〜30のアルキル基を有するビニルモノマーである第3モノマーと、ピロリドン基を有し、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいN−ビニルピロリドンである第4モノマーと、を含む複数のモノマーを構成モノマーとするビニル系共重合体樹脂が挙げられる。第3モノマーの炭素数10〜30のアルキル基は親絶縁性液体成分として作用し、第4モノマーのピロリドン基は親トナー粒子成分として作用する。ピロリドン基は、トナー粒子に強く吸着するため、ごく少量の分散剤で分散が可能になる。したがって、親絶縁性液体成分が過剰となることを抑制し、ドキュメントオフセットの悪化や絶縁性への悪影響を防止することができる。このような第3モノマーとしては、ヘキサデセン、エイコセン、トリアコンテン等が例示される。第4モノマーとしては、N−ビニル−2−ピロリドン等が例示される。ここで、「炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいN−ビニルピロリドン」とは、N−ビニルピロリドンを含むとともに、N−ビニルピロリドンを構成するビニル基に炭素数1〜4のアルキル基が1または2個置換基として置換した化合物が含まれる。
【0046】
炭素数10〜30のアルキル基を有するビニルモノマーである第3モノマーは、以下の化学式(4)で表される。
【0047】
【化4】

【0048】
化学式(4)において、Rは、炭素数10〜30のアルキル基である。
ピロリドン基を有し、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいN−ビニルピロリドンである第4モノマーは、以下の化学式(5)で表される。
【0049】
【化5】

【0050】
化学式(5)において、R、RはHまたは炭素数1〜4のアルキル基である。
このような第3モノマーおよび第4モノマーを構成モノマーとするビニル系共重合体からなる分散剤の具体例としては、「V−216」、「V−220」、「W−660」(商品名、炭素数10〜30のアルキル基を有するビニルモノマーとビニルピロリドンの共重合体、ISP社製)が挙げられる。
【0051】
上述のビニル系共重合体からなる分散剤は、第4モノマーのピロリドン基がトナー粒子の表面に吸着し、第3モノマーの炭素数10〜30のアルキル基が絶縁性液体に可溶することにより、トナー粒子を絶縁性液体中に安定的に分散させる。第3モノマーに含まれるアルキル基の炭素数が10未満の場合、分散性が悪く、またトナー粒子の電荷保持性が低下してしまう可能性がある。第3モノマーに含まれるアルキル基の炭素数が30を超えると絶縁性液体に溶解しにくくなる。
【0052】
分散剤を構成する塩基性高分子が第3モノマーと第4モノマーとを構成モノマーとして含むビニル系共重合体樹脂である場合、ビニル系共重合体樹脂中の第3モノマーと第4モノマーとの比率は任意であるが、これらの全量に対する第4モノマーの比率が好ましくは10〜80モル%であり、より好ましくは10〜50モル%である。第4モノマーの比率が10モル%未満になると、分散性が悪化する。
【0053】
第3モノマーおよび第4モノマーを構成モノマーとして含むビニル系共重合体樹脂を分散剤として用いる場合、本発明の効果が奏される限り、第3モノマーおよび第4モノマー以外の他のモノマーを構成モノマーとして含んでいてもよい。なお、他のモノマーが含まれている場合であっても、第3モノマーと第4モノマーとの全量が、ビニル系共重合体樹脂の全量に対して90モル%以上となるようにすることが好ましい。他のモノマーとしては、炭素数9以下のアルキル基を有するモノマー、炭素数31以上のアルキル基を有するモノマーが例示される。分散剤を構成する塩基性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1000〜20000程度である。
【0054】
構成モノマーの種類および第3モノマーと第4モノマーのモル比は、ビニル系共重合体樹脂を合成する際の原料モノマーの使用量を制御することにより調整することが可能であるが、分散剤中のビニル系共重合体樹脂を、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)を用いて、1H−NMR分析を行なってその積分比より決定することができる。
【0055】
分散剤に用いられるビニル系共重合体樹脂は、通常通りの方法、たとえば、ラジカル重合反応により得ることができる。
【0056】
<製造方法>
まず、トナー粒子を構成するビニル系共重合体樹脂は、上述の組成を有する限り従来公知のラジカル重合方法により製造することができる。すなわち、用いる原料モノマーの種類に応じて異なるものの、一般的には50〜300℃の温度範囲で行なうことができる。また、雰囲気ガスとして不活性ガスを用いたり、各種の溶媒を任意に選択したり、反応容器内圧力を常圧または減圧にする等、任意の条件を採用することができる。
【0057】
次いで、上記のようにして得られたビニル系共重合体樹脂を用いて、液体現像剤を調製する。液体現像剤の調製は、従来公知の技法に基づいて行なうことができる。たとえば、加圧ニーダ、ロールミル、3本ロール等の混練機を用いて、ビニル系共重合体樹脂と顔料とを所定の配合比で溶融混練し、ビニル系共重合体樹脂中に顔料を均一に分散させることにより顔料−樹脂分散体を得る。
【0058】
続いて、上記で得られた顔料−樹脂分散体を冷却し、冷却後これを粗粉砕する。引き続き、粗粉砕された顔料−樹脂分散体(これを「粗粉砕トナー」ということもある)をさらに所望の粒径となるまで粉砕することにより、トナー粒子を得る。
【0059】
上記で用いることができる粉砕方法としては、乾式粉砕法と湿式粉砕法を挙げることができるが、省エネルギーで所望の粒径まで粉砕できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0060】
たとえば、カッターミルにより粗粉砕トナーを得、引き続き乾式粉砕法としてジェットミルを用いて、粗粉砕トナーを所望の粒径となるまでさらに粉砕することによりトナー粒子を得る。そして、このトナー粒子を絶縁性液体および分散剤と混合することにより液体現像剤を調製することができる。
【0061】
一方、湿式粉砕法を採用する場合は、たとえば上記で得られた粗粉砕トナー、絶縁性液体、および分散剤を混合し、サンドミルを用いてこの混合物を粉砕することによりトナー粒子を所望の粒径とし、液体現像剤を調製することができる。
【0062】
<プロセスの概略>
図1は、本発明に係る液体現像剤を適用可能な電子写真方式の画像形成装置1の概略概念図である。像担持体21は、その表面が帯電装置23により所定の表面電位に一様に帯電され、その後露光装置24により画像情報が露光され、静電潜像が形成される。現像ローラ13は、規制ブレード11のコントロールにより、その表面に液体現像剤12の薄層が形成される。
【0063】
現像ローラ13と像担持体21とのニップで液体現像剤12の薄層中のトナー粒子が移動し、像担持体21の表面にトナー画像が形成される。このとき、トナー粒子だけでなく絶縁性液体も像担持体21の表面に付着する。
【0064】
像担持体21上のトナー像は、1次転写ローラ32に所定の電圧が印加されることによって、中間転写体31上転写される。像担持体21上に残ったトナー粒子および絶縁性液体はクリーニングブレード22によって除去される。
【0065】
中間転写体31は、1次転写ローラ32とともに配置されているバックアップローラ35,36によって周回される。テンションローラ38は、中間転写体31のテンションを調整する。
【0066】
2次転写ローラ41は、バックアップローラ36に対向する位置に配置される。中間転写体31上のトナー像は、2次転写ローラ41とバックアップローラ36との間を通るメディア44に転写される。メディア44上のトナー像は、熱ローラ42,43により加熱され定着される。
【0067】
画像形成装置1のシステムの速度は、たとえば400mm/secとすることができる。1次転写ローラ32には、トナー粒子と逆極性の電圧が印加され、像担持体21との電位差は、たとえば300V〜3kVである。図1に示すように、中間転写体31がベルトである場合、ベルトの材質は樹脂および/または弾性体からなることが好ましい。樹脂としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、フッ素系樹脂、ポリフェニルサルフェート等が例示される。弾性体としては、シリコンゴム、フッ素ゴム、EPDM、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が例示される。ラフ紙への転写性の観点からは弾性体がより好ましく、また耐熱性があるものが好ましい。搬送の安定性の観点からは、樹脂基体の上に弾性体の層が形成されている複層タイプのベルトが好ましい。このような複層タイプのベルトである場合、樹脂基体の厚さが50〜200μm、弾性体の層の厚さが200μm〜1mmであることが好ましい。単層タイプのベルトである場合、中間転写体31は、厚さが50μm〜1mmであることが好ましい。
【0068】
中間転写体31は、体積抵抗率が10〜1012Ωcm、表面抵抗率が10〜1012Ω/sqであることが好ましい。中間転写体31の最表層は、高い離型性を有することが好ましく、そのため最表層にフッ素系、シリコン系等の低表面エネルギーの重合体層を設けたり、プラズマ処理等で1μm以下の硬い層を設けることが好ましい。熱ローラ42,43は、たとえば直径80mmのものを用い、加熱温度を180度とすることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とあるのは特に断らない限り「質量部」を示す。
【0070】
<トナー粒子用樹脂>
実施例1〜10、比較例1〜9の液体現像剤のトナー粒子用樹脂として、表1に記載の組成の樹脂を準備した。
【0071】
【表1】

【0072】
表1中のモノマー組成、モル%、および分子量(重量平均分子量(Mw))は、後述の方法によりトナー粒子中の各樹脂を分析することにより得られた値である。表1中、樹脂中の第1モノマーと第2モノマーの割合とは、トナー粒子用樹脂を構成するビニル系共重合体に占める第1モノマーと第2モノマーの全量の割合を示すものである。
【0073】
<分散剤>
分散剤として、以下のi〜ivの分散剤を準備した。
【0074】
分散剤i:「Ganex V−216」(商品名、ISP社):第3モノマー(Rが炭素数14のアルキル基である化学式(4)で表されるモノマー)と第4モノマー(RおよびRがHである化学式(5)で表されるモノマー)を構成モノマーとし、第3モノマーと第4モノマーのモル比率が80:20であるビニル系共重合体樹脂からなる、分子量3000の分散剤。
【0075】
分散剤ii:「Ganex V−220」(商品名、ISP社):第3モノマー(Rが炭素数18のアルキル基である化学式(4)で表されるモノマー)と第4モノマー(RおよびRがHである化学式(5)で表されるモノマー)を構成モノマーとし、第3モノマーと第4モノマーのモル比率が70:30であるビニル系共重合体樹脂からなる、分子量2000の分散剤。
【0076】
分散剤iii:「ソルスパース13940」(商品名、日本ルーブリゾール社製):ポリエステルアミン(炭素数15〜18のアルキル基を含む)からなる分散剤。なお、「ソルスパース13940」は液体状であるので、分散剤iiiとはその固形成分(全体の40%)を指す。
【0077】
分散剤iv:「ソルスパース11200」(商品名、日本ルーブリゾール社製):ポリエステルアミン(炭素数15〜18のアルキル基を含む)からなる分散剤。なお、「ソルスパース11200」は液体状であるので、分散剤ivとはその固形成分(全体の40%)を指す。
【0078】
分散剤v:第3モノマー(ラウリルメタクリレート)と第4モノマー(RおよびRがHである化学式(5)で表されるモノマー)を構成モノマーとし、第3モノマーと第4モノマーのモル比率が30:70で、分子量3000の分散剤。
【0079】
<顔料>
顔料として、銅フタロシアニン(商品名:「FASTGEN BLUE GNPT」、DIC社製)、カーミン6B(商品名:「SYMULER Brilliant Carmine 6B 226」、DIC社製)、カーボンブラック(商品名:「Regl−330R」、キャボット社製)を準備した。
【0080】
<絶縁性液体>
絶縁性液体として、「IPソルベント2028」(商品名、出光石油化学社製)、「モレスコホワイトP−40」(商品名、松村石油社製)を準備した。
【0081】
<実施例1>
実施例1のトナー粒子用樹脂100部と、銅フタロシアニン顔料20部とを、ヘンシェルミキサーにて十分混合した。その後、ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出し機を用いて、この混合物を溶融混合し、冷却後、これをジェット粉砕機にて粉砕することによりトナー粒子を得た。トナー粒子の粒径を、粒度分布計(商品名:「SALD−2200」、島津製作所社製)で測定したところ、体積平均粒径は6μmであった。
【0082】
このトナー粒子を30部、分散剤iをトナー粒子の全質量に対して2質量%、「IPソルベント2028」を70部、ジルコニアビーズ100部を混合し、サンドミルにて120時間攪拌し、実施例1の液体現像剤を得た。液体現像剤の粒径を、粒度分布計(商品名:「SALD−2200」、島津製作所社製)にて測定したところ、体積平均粒径は2.3μmであった。
【0083】
<実施例2〜10、比較例1〜9>
各実施例および各比較例では、表1に記載のトナー粒子用樹脂100部と、表2に記載の顔料を表2に記載の配合量で混合し、実施例1と同様の方法で実施例2〜10、比較例1〜9で用いられるトナー粒子を製造した。
【0084】
【表2】

【0085】
このトナー粒子30部、表2に記載の各分散剤を表2に記載の配合量で配合し、さらに表2に記載の各絶縁性液体を70部、ジルコニアビーズ100部を混合し、サンドミルにて120時間攪拌し、実施例2〜10、比較例1〜9の液体現像剤を得た。液体現像剤の体積平均粒径についても表2に示す。
【0086】
<測定1:分子量の測定>
トナー粒子用樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。測定条件は以下の通りである。
DETECTOR:RI
COLUMN:ShodexKF-404HQ(商品名、昭和電工社製)+ShodexKF-402HQ(商品名、昭和電工社製)
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.3ml/min.
較正曲線:標準ポリスチレン
【0087】
<測定2:構成モノマーの割合(モル%)>
トナー粒子用樹脂を構成するモノマーの割合(モル%)は、フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)(商品名:「Lambda400」、日本電子社製)を用いて、1H−NMR分析を行なってその積分比より決定した。測定溶媒はクロロホルムD溶剤とした。その結果を表1に示す。
【0088】
<評価1:ドキュメントオフセットの評価>
図1に示す画像形成装置を用いて、実施例1〜10、比較例1〜9の各液体現像剤を用いて、コート紙(商品名:「OKトップコートプラス」、坪量:128g/m、王子製紙社製)にベタの定着画像を形成した。ベタのトナー付着量は2g/mとした。コート紙の定着画像面同士を重ね、10g/mの加重をかけ、50℃で1週間保管し、保管後両者の紙をはがし定着画像を観察した。全く剥落がないものを◎、ごく微量に剥落があるものを○、明らかに剥落があるものを×とした。その結果をドキュメントオフセット(DO)として表2に示す。剥落があるほど、ドキュメントオフセットが発生しやすいことを示す。
【0089】
なお、画像形成装置のプロセス条件およびプロセスの概略は以下の通りとした。
システム速度:40cm/sec
像担持体:負帯電OPC
帯電電位:−650V
現像電圧(現像ローラ印加電圧):−450V
1次転写電圧(1次転写ローラ印加電圧):+620V
2次転写電圧(2次転写ローラ印加電圧):+1200V
現像前コロナCHG:針印加電圧−3〜5kVで適宜調整。
【0090】
<評価2:分散性の評価>
実施例1〜10、比較例1〜9の各液体現像剤を40℃の室温で1ヶ月保管後の平均粒径を、保管開始前の平均粒径に対する比率で算出した。比率が1.1未満のものを◎、1.1以上1.3未満のものを○、1.3以上のものを×とした。その結果を表2に示す。
【0091】
<評価3:光沢度の評価>
評価1で作成した定着画像が形成された実施例1〜10、比較例1〜9のコート紙の定着画像が形成されている面の光沢度を、Gloss Meter VC2000(日本電飾社製)で測定し、光沢度が50以上のもを○、50未満のものを×とした。その結果を表2に示す。
【0092】
表2より明らかなように、実施例の液体現像剤は、ドキュメントオフセットの発生が抑制されることが確認できた。また、液体現像剤を保管した際の分散性にも優れ、画像面の光沢性も優れていることが確認された。なお、比較例1〜4、7、9はドキュメントオフセットが発生し、また比較例5は光沢度が低く、比較例6、8は分散性に問題があった。比較例2で用いたポリエステル樹脂は、その酸価を上げても、ドキュメントオフセットが発生した。
【0093】
以上のように、本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【符号の説明】
【0094】
1 画像形成装置、11 規制ブレード、12 液体現像剤、13 現像ローラ、21 像担持体、22 クリーニングブレード、23 帯電装置、24 露光装置、31 中間転写体、32 1次転写ローラ、35,36 バックアップローラ、38 テンションローラ、41 2次転写ローラ、42,43 熱ローラ、44 メディア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と絶縁性液体と分散剤とを含み、
前記トナー粒子は、樹脂と、該樹脂中に分散された顔料とを含み、
前記樹脂は、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいスチレン、アクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4)、およびメタクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜4)からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである第1モノマーと、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである第2モノマーと、を含む複数のモノマーを構成モノマーとするビニル系共重合体樹脂を含み、前記第1モノマーと前記第2モノマーとの比率は、これら両者の全量に対する前記第2モノマーの比率が5〜25モル%であり、
前記第1モノマーと前記第2モノマーとの全量が、前記ビニル系共重合体樹脂の全量に対して90モル%以上であり、
前記分散剤は、炭素数10〜30のアルキル基を有する塩基性高分子からなり、前記トナー粒子の全質量に対して0.5質量%以上3質量%以下である、液体現像剤。
【請求項2】
前記塩基性高分子は、アミノ基、アミド基、イミン基およびピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記塩基性高分子は、炭素数10〜30のアルキル基を有するビニルモノマーである第3モノマーと、ピロリドン基を有し、炭素数1〜4のアルキル基を1または2個有していてもよいN−ビニルピロリドンである第4モノマーと、を含む複数のモノマーを構成モノマーとするビニル系共重合体樹脂である、請求項1または2に記載の液体現像剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−78575(P2012−78575A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223895(P2010−223895)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】