説明

液体現像用電子写真感光体及び画像形成装置

【課題】 液体現像系において繰り返し使用してもクラックが生じ画像欠陥を生じることがないような十分な耐クラック性を有し、且つ良好な電気特性及び耐オゾン特性を有する電子写真感光体並びに、これを備えた画像形成装置、を提供することにある。
【解決手段】 液体現像用電子写真感光体の感光層に特定の構造を有する化合物を含有させることにより、得られる感光体が良好な電気特性及び耐オゾン性を示すとともに、現像用溶剤に対して優れた耐クラック性を示すことを見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等に用いられる電子写真感光体に関する。詳しくは、耐溶剤性に優れ、且つ、電気特性の良好な液体現像用電子写真感光体並びに液体現像方式の画像形成装置及び画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術において、画像を可視化する現像工程の方式には、大きく分けて乾式現像方式と液体(湿式)現像方式が存在する。このうち液体現像方式は、1950年代に端を発する歴史の長い技術ではあるが、現像用溶剤(通常は有機溶剤)を使うなど、オフィスユースには課題も有り、一般にオフィスユースには専ら乾式現像方式が用いられているのが現状である。しかし、0.1μm〜2μmと小径のトナーが使用でき、乾式よりも高解像度化が可能で、オフセット印刷に近い高画質が得られ、しかも高速化にも対応可能であるという利点を生かし、オンデマンド印刷などの新しい商業印刷システム向けに、オフセット印刷に代わって使用されるようになってきている。
【0003】
一方、電子写真技術の中核となる電子写真感光体(以下、適宜「感光体」という。)については、無公害で成膜が容易である、製造が容易で低コストである等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体が主流となっている。有機系の光導電材料を用いた感光体(有機感光体)としては、例えば、光導電性微粉末をバインダー樹脂中に分散させたいわゆる分散型感光体(単層型感光体)、電荷発生層および電荷輸送層を積層した積層型感光体(機能分離型感光体)が知られている。そのうち積層型感光体は、電荷発生効率の高い電荷発生物質と、高移動度でイオン化電位が電荷発生物質にマッチした電荷輸送物質とを組み合わせることにより、高感度な感光体が得られること、材料選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、また感光層を塗布により容易に形成可能で生産性が高く、コスト面でも有利なことから、多く使用されている。
【0004】
そのような有機感光体は、液体現像系においては、キャリアとして使用される現像用溶剤と、現像工程の一定時間接触することになる。特に通常のカラー工程においては4色以上の現像剤が使用されるため、より多くの時間現像用溶剤にさらされることになる。このように感光体が現像用溶剤に繰り返しさらされると、感光体の表面にクラックと呼ばれる欠陥が生じ、それが印刷画像にスジ欠陥となって現れ、耐久性向上の妨げとなることがある。
【0005】
このようなクラックの生じるメカニズムについては諸説あるが、一つには、現像用溶剤により感光体の低分子成分が溶出して空洞(ボイド)が生じ、それが繰り返し周囲から機械的負荷を受けて成長してクラックとなる、というような疲労破壊的なメカニズムが考えられる。そのような場合、感光体の表面層に使用されているバインダー樹脂の機械物性を改善することによって、ボイドが成長してクラックとなるのを抑制し、その結果耐久性が向上することが期待される。
【0006】
そのような感光層の表面層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂が用いられている。数あるバインダー樹脂のなかではポリカーボネート樹脂が総合的に優れた性能を有しており、これまで種々の構造のものが開発され実用に供されている。
【0007】
また、最近の液体現像系に関しては、ポリエステル系樹脂のバインダー樹脂が好適に用いられるケースがあることが報告されている(例えば、特許文献1〜5参照)。これは、ポリエステル系樹脂が、ポリカーボネート樹脂よりも、機械物性の観点から優れた点が認められているためである。
なお、感光体の最表面に硬化型等の保護層(オーバーコート層)を形成することによりクラックを抑制する手段もあるものの、これはコスト的に不利である。また、保護層は塗布時に下層を侵食しないようにするために、スプレー塗布やリング塗布を実施する必要がある等、製造面での制約が大きい。さらに、保護層が有ることによる電気特性面での副作用もある。これらのことから、保護層の形成は汎用的な解決手段とは言い難い。
【0008】
一方、感光体の導電性支持体(以下、適宜「支持体」という。)に関しては、ドラム(シリンダー)状のものが大半であるが、性状がフレキシブルで装置内に配置する際の設計自由度が大きい等の理由からシートあるいはベルト状の感光体も使用されている。特に、商業印刷のように高速で大量の印刷が要求される場合には、大径のドラム状感光体よりは、シートあるいはベルト状感光体を用いることが設計面、コスト面から好ましく、使用されるケースが増えている。
【0009】
また、感光層は、通常、シート状の支持体上に光導電性物質及びバインダー樹脂等を含有する塗布液を、リバースコート、グラビアコート、バーコート、ロールコート、ブレードコート等により塗布して形成される。あるいは、シート状あるいはシームレスベルト状の支持体をドラム状の支持体に巻き付け、ディップコート等の塗布方法で塗布して形成することもできる。これらの層形成方法では、層に含有させる物質を溶剤に溶解させて得られる塗布液が使用される。そして多くの工程では、予め塗布液を調製し、それを塗布するまでの間、保存することが行なわれている。そのため、バインダー樹脂には、塗布工程に用いられる溶剤に対し、溶解性が優れること、および溶解後の塗布液中で安定であることも要求される。
【0010】
特許文献6では、上記のような要求を満たすために、感光層のバインダー樹脂として、特定の構造を有するポリアリレート樹脂を用いることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−295485号公報
【特許文献2】特開2006−113352号公報
【特許文献3】特開2006−113354号公報
【特許文献4】特開2006−89702号公報
【特許文献5】特開2005−115091号公報
【特許文献6】特開2010−96811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の感光体は、液体現像系に使用するには十分な耐クラック性を有しておらず、繰り返し使用するうちに表面にクラックを生じ、画像欠陥となるケースがあった。また、特許文献1〜5に記載のように感光体の表面層のバインダー樹脂としてポリエステル樹脂を使用したケースでは、若干の改善は認められたものの耐久性の面では十分ではなく、電気特性面も劣っており、また、特許文献6に記載のように感光体の感光層のバインダー樹脂として特定の構造を有するポリアリレート樹脂を使用したケースでは、耐久性(耐摩耗性)は改善されたものの、電気特性面や耐オゾン特性面では劣っていたため、十分な実用性能を有していたとは言い難い。またポリアリレート樹脂は、電荷輸送物質の構造によっては、相性が悪く残留電位が下がりにくい場合もしばしばあり、電荷輸送物質の選択範囲が狭
まってしまう。
【0013】
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものである。即ち、本発明の目的は、液体現像系においても十分な耐クラック性を有し、且つ良好な電気特性及び耐オゾン特性を有する電子写真感光体並びに、これを備えた画像形成装置、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、感光層に特定の構造を有する化合物を含有させることにより、得られる感光体が良好な電気特性及び耐オゾン性を示すとともに、現像用溶剤に対して優れた耐クラック性を示すことを見いだし、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、下記式(1)で表される化合物を含有する感光層を備えることを特徴とする液体現像用電子写真感光体に存する。
【0015】
【化1】

【0016】
式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい縮合多環芳香族炭化水素基、下記式(2)、または下記式(3)で表される基を表し、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基を表し、Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。mは2以上6以下の整数を表す。
【0017】
【化2】

【0018】
式(2)、(3)中、Ar6は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Ar
およびArは、置換基を有していてもよいアリール基を表し、nは2または3の整数を表す。
また、本発明の感光体は、シート状導電性支持体を備えることが好ましい。
本発明の別の要旨は、本発明の液体現像用電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置に存する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液体現像系において十分な耐クラック性を有し、且つ良好な電気特性及び耐オゾン性を有する電子写真感光体及びこれを備えた画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態としての画像形成装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図2】(a),(b)はいずれも、本発明の一実施形態としての画像形成装置の液体現像装置のユニット構成の一例を模式的に示す図である。
【図3】実施例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
【図4】実施例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
[1.概要]
本発明の電子写真感光体(本発明の感光体)は、液体現像用の感光体であって、下記式(1)で表される化合物を(以下、適宜「本発明に係る化合物」という。)を含有する感光層を備える。感光層において、本発明に係る化合物は通常は電荷輸送物質として用いられる。また、感光体は通常は導電性支持体(支持体)を備え、この支持体上に前記の感光層を備えるものであるが、本発明の感光体では前記の支持体としてシート状支持体を備えることが好ましい。
【0022】
【化3】

【0023】
式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい縮合多環芳香族炭化水素基、下記式(2)、または下記式(3)で表される置換基を有するアリール基を表し、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基を表し、Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。mは2以上6以下の整数を表す。
【0024】
【化4】

【0025】
式(2)、(3)中、Ar6は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Ar
およびArは、置換基を有していてもよいアリール基を表し、nは2または3の整数を表す。
感光体の具体的な構成としては、例えば、支持体上に電荷発生物質を主成分とする電荷
発生層と、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とした電荷輸送層とを積層した感光層(積層型感光層。又は機能分離型感光層。)を備える積層型(又は機能分離型)感光体;支持体上に、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた感光層(単層型感光層。又は分散型感光層。)を有する分散型(又は単層型)感光体等が挙げられる。本発明に係る化合物は、単層型感光体でも使用されるが、好ましくは積層型感光体の電荷輸送層に用いられる。
【0026】
[2.本発明に係る化合物]
本発明の感光体の感光層は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0027】
【化5】

【0028】
式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい縮合多環芳香族炭化水素基、下記式(2)、または下記式(3)で表される基を表し、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基を表し、Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。mは2以上6以下の整数を表す。
【0029】
【化6】

【0030】
式(2)、(3)中、Ar6は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Ar
およびArは、置換基を有していてもよいアリール基を表し、nは2または3の整数を表す。
【0031】
Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい縮合多環芳香族炭化水素基、上記式(2)、または上記式(3)で表される基を表す。
縮合多環芳香族炭化水素基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオレニル基等の炭素数14以下の縮合多環芳香族炭化水素基が挙げられ、バインダーとの相溶性及び電気的特性の面から炭素数13以下の縮合多環芳香族炭化水素基が好ましく、また高度に共役系が拡張すると分子同士の相互作用が強くなり、溶媒への溶解性が低下するおそれがあることから炭素数11以下の縮合多環芳香族炭化水素基がより好ましい。
【0032】
縮合多環芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、水素原子、ハロゲン基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられ、これらの中でも、製造原料の汎用
性から水素原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、電子写真感光体としての電気特性の面からは、水素原子、アルキル基がより好ましく、繰り返し耐久特性や耐オゾン性の面から、水素原子が更に好ましい。アルキル基、及びアルコキシ基中のアルキル基部分は、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、エチルヘキシル基等の分岐上のアルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。これらアルキル基、及びアルコキシ基中のアルキル基部分の中でも、製造時の取扱性の面から、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基であり、感光体の電気的特性の面から、更に好ましくは炭素数4以下のアルキル基であり、電荷移動度の面から更により好ましくは炭素数2以下である。
【0033】
Ar3、Ar4、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基を表す。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオレニル基等の炭素数15以下の芳香族炭化水素基が挙げられ、電気的特性の面から炭素数10以下の芳香族炭化水素基が好ましく、溶剤への溶解性の面からフェニル基がより好ましい。
【0034】
Ar3、Ar4、Ar及びArにおいて、アリール基が有していてもよい置換基としては、水素原子、ハロゲン基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられ、これらの中でも、製造原料の汎用性から水素原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。アルキル基、及びアルコキシ基中のアルキル基部分は、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、エチルヘキシル基等の分岐上のアルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。これらアルキル基、及びアルコキシ基中のアルキル基部分の中でも、電子写真感光体として用いた際の繰り返し使用に対する耐久性、オゾンに対する耐久性および低残留電位の特性を有することを考慮するとメチル基、エチル基、2−プロピル基等の炭素数5以下の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数5以下のアルコキシ基等を有することが好ましい。
【0035】
Ar及びArは、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数10以下の2価の芳香族炭化水素基が挙げられ、製造原料の汎用性の面からフェニレン基が特に好ましい。
Ar及びArにおいて、アリーレン基が有していてもよい置換基としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜4のアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリール基等が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、フェニル、4−トリル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、ナフチル等が挙げられる。中でも、電気特性の面から、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
【0036】
上記式(1)において、mは、電子写真感光体の電気特性を向上させるという点で、通常2以上の整数であり、電気特性に悪影響を与えない限り特に上限はないが、5以下の整数が好ましく、3以下の整数がより好ましい。感光層に対する相溶性や製造コストなどの観点から総合的に考えると、mは2または3が好ましく、m=2の場合が特に好ましい。
【0037】
上記式(2)において、nは2または3の整数を表し、製造コストの面からは2が好ましい。
上記Ar及びArは、製造の容易性の観点から、ArとArが同一であることが好ましく、耐クラック性の観点から、ArとArが共に縮合多環芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
上記式(1)で表される化合物の例としては以下の例示化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
[3.導電性支持体]
支持体の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料;金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を含有させて導電性を付与した樹脂材料;アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等
の導電性材料をその表面に蒸着または塗布した樹脂、ガラス、紙;などが主として使用される。また、金属材料等の支持体の表面には、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のために、適切な抵抗値を有する導電性材料を塗布するようしてもよい。
【0041】
支持体の形態としては、例えば、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。これらのうち、本発明の感光体においては、支持体としてはシート状のものを用いることが好ましい。中でも具体的には、二軸延伸フィルム等のフィルム上に金属層が形成されたものが特に好適に用いられる。画像形成装置内の設計自由度、感光層形成用塗布液の塗布の容易性、低コスト等の観点からである。
【0042】
前記のフィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の線状ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。中でも、機械的強度及び寸法安定性等の点から線状ポリエステル樹脂が好ましく、特にポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。また、耐熱性の観点からはポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンナフタレート樹脂が好ましい。なお、これらの樹脂は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0043】
また、フィルムの厚みは、通常30μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは70μm以上であり、通常200μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下である。この範囲の厚みにすることにより、コスト上有利で、乾燥後の変形(カール)を防止し、かつ十分な引張り強度等の機械的強度を確保することが可能となる。
【0044】
また、支持体を構成する金属層の金属としては、例えば、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ITO(インジウム−スズ酸化物)等が挙げられるが、中でもアルミニウムが好ましい。なお、これらの金属は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。また、金属層の厚みは、通常40nm以上100nm以下である。
【0045】
前記フィルムへ金属層を形成する場合、通常は蒸着法により金属蒸着層を形成する。蒸着法は、例えば、前記金属の電熱加熱溶融蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法等の公知の蒸着法が用いられる。
また、金属層としては、アルミニウム箔、ニッケル箔等の金属箔や、これら金属を積層したラミネートフィルムを用いることができる。この場合の金属箔の厚みは、5μm以下が好ましい。また、金属箔の上にさらに適切な抵抗値を持つ導電性材料を積層することもできる。
【0046】
支持体の表面は、平滑であっても良いし、例えば樹脂に粒径の大きな粒子を混合すること等によって、粗面化されていても良い。粗面化することによって、レーザーのような可干渉光に対して干渉縞が発生するのを抑制したり、感光層の接着性を増したりする等の効果が得られる。
[4.下引き層]
支持体と感光層との間には、接着性及びブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
【0047】
下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、
チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などが挙げられる。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、例えば酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物;又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。また酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。なお、一つの粒子には複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0048】
これらの金属酸化物粒子は1種類を用いても良いし2種類上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および下引き層形成用の塗布液の安定性の面から、平均一次粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは10nm以上50nm以下である。
【0049】
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した構造で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できる。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。なお、これらは1種類を用いても良いし2種類上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0050】
バインダー樹脂に対する金属酸化物粒子の量比は任意に選べるが、通常10質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは100質量%以上であり、通常500質量%以下、好ましくは400質量%以下、より好ましくは380質量%以下、特に好ましくは350質量%以下である。下引き層形成用の塗布液の安定性、塗布性を良好にするためである。
【0051】
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、通常25μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。感光体の特性及び下引き層形成用の塗布液の塗布性を良好にするためである。
また下引き層には、公知の酸化防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0052】
さらに下引き層として、導電層とブロッキング層の二層構成としてもよい。
[5.感光層]
本発明の感光体において、感光層のタイプは特に限定されず、その層内に本発明に係る化合物を含有するものであれば積層型感光層であってもよく単層型感光層であってもよい。中でも積層型感光層が好ましく、その中でも電荷輸送層に本発明に係る化合物を含有させることがより好ましい。
【0053】
[5−1.電荷発生層]
積層型感光体の電荷発生層は、電荷発生物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷発生層は、具体的には、例えば電荷発生物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液(電荷発生層形成用塗布液)を作製し、これを順積層型感光層の場合には支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)、また、逆積層型感光層の場合には電荷輸送層上に塗布、乾燥して得ることができる。
【0054】
電荷発生物質としては、例えば、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料;フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料;などの各種光導電材料が使用できる。特に有機顔料が好ましく、更にはフタロシアニン顔料及びアゾ顔料が特に好ましい。なお、電荷発生物質は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0055】
なかでも電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、その具体例としては、無金属フタロシアニン;銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコーン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類;などが使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、上に示した酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基などが挙げられる。特に感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。なお、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型についてはW.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit. Kristallogr.159(1982)173)、A型はβ型とも呼ばれ、安定型として知られているものである。D型はY型とも呼ばれる準安定型で、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。
【0056】
フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかの混合状態でも良い。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態における混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理、磨砕処理、溶剤処理等が知られている。
【0057】
これらの電荷発生物質は、通常、その微粒子を例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルプロピオナール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。なお、この際バインダー樹脂として本発明に係るポリエステル樹脂を使用してもよい。また、バインダー樹脂は1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0058】
電荷発生層における電荷発生物質の使用比率は、バインダー樹脂100質量部に対して、通常30質量部以上、好ましくは50質量部以上であり、通常500質量部以下、好ましくは300質量部以下である。
また、電荷発生層の膜厚は、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上であり、通常1μm以下、好ましくは0.6μm以下である。
【0059】
電荷発生層には、本発明の効果を著しく損なわない限り上述した以外の成分を含有していてもよい。例えば、電荷発生層には添加剤を含有させても良い。これらの添加剤は、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させるために用いられるもので、その例を挙げると、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子求引性化合物、染料、顔料、レベリング剤、残留電位抑制剤、分散補助剤、可視光遮光剤、増感剤、界面活性剤などが挙げられる。なお、可塑剤を用いれば層の機械的強度等が改良でき、残留電位抑制剤を用いれば残留電位を抑制でき、分散補助剤を用いれば分散安定性を向上させることができ、レベリング剤を用いれば塗布液の塗布性を改善できる。酸化防止剤の例として
は、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物などが挙げられ、界面活性剤の例としては、シリコーンオイル、フッ素系オイルなどが挙げられる。なお、添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用しても良い。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはシリコーンオイルやワックス、およびフッ素系樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂粒子を含有させてもよい。また、無機化合物の粒子を含有させてもよい。
【0060】
[5−2.電荷輸送層]
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダー樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液(電荷輸送層形成用塗布液)を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
【0061】
電荷輸送物質としては、上記[2.本発明に係る化合物]にて詳述した化合物が用いられる。電荷輸送物質は、本発明に係る化合物1種類のみを用いても良く、本発明に係る化合物以外の電荷輸送物質を1種類以上、任意の比率で併用しても良い。併用する本発明に係る化合物以外の電荷輸送物質は特に限定されず、公知の任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物などの電子求引性物質;カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質;などが挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。
【0062】
本発明に係る式(1)で表される化合物の効果を発揮するためには、全電荷輸送物質に対する本発明に係る式(1)で表される化合物の割合が、通常、50質量%以上であり、電子写真感光体の光減衰特性の面から、好ましくは70質量%以上であり、クラック性能を維持するという面からは、100質量%であることが最も好ましい。
【0063】
バインダー樹脂は膜強度確保のために使用される。電荷輸送層のバインダー樹脂としては、例えば、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。これらのバインダー樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。これらのバインダー樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで用いても良い。
【0064】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送物質を10質量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から20質量
部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から25質量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は100質量部以下の比率で使用する。さらに、耐刷性の観点から80質量部以下が好ましく、耐傷性の観点から70質量部以下がより好ましく、クラック性能維持の観点から60質量部以下が最も好ましい。
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
【0065】
[5−3.分散型(単層型)感光層]
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダー樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
【0066】
電荷輸送物質およびバインダー樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質およびバインダー樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を十分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
【0067】
単層型感光層内に分散さ
れる電荷発生物質の量は、少な過ぎると十分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、液安定性の低下等の弊害があることから、単層型感光層全体に対して、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダー樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下の範囲とする。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
【0068】
[5−4.その他の機能層]
積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させても良い。
【0069】
[5−5.各層の塗布方法]
感光層の形成方法に制限は無く、任意の方法を用いることができる。例えば、各層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液(電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液、分散型感光層形成用塗布液、など)を順次塗布し、乾燥させて形成される。
【0070】
塗布方法は特に限定されないが、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ノズル塗布法、バーコート法、ロールコート法、ブレード塗布法などを用いることができる。また特にシート状の支持体を備えた感光体(シート状感光体)の場合の塗布方法としては、公知のダイコート法、リバースコート法、グラビアコート法、バーコート法等により塗布液を支
持体上に塗布して形成される。
【0071】
塗布後の感光体は、通常、塗布膜の溶剤が実質的に蒸発除去されるまで乾燥工程に付される。乾燥方法としては、従前公知で行なわれている方法を適用することができる。例えば、加熱ローラー、熱風乾燥機、蒸気乾燥機、赤外線乾燥機、遠赤外線乾燥機等の少なくとも一つによって行なわれる。乾燥温度は通常60℃〜140℃の範囲で実施される。
本発明の感光体がシート状感光体である場合、例えば、その両端部を超音波融着等の公知の方法によって接合してエンドレスベルトとして使用される。また、例えば、シート状感光体をそのままドラムに巻き付けて使用することもできる。ドラムに巻き付ける場合、例えば細巻きにしたロールをドラム内部に保持して巻き出す形を取ることもあれば、1枚のシートを巻き付けることもある。
【0072】
[6.画像形成装置]
次に、本発明の感光体を用いた画像形成装置の一実施形態について、装置の要部構成を図面を用いて説明する。但し、本発明の実施形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施することができる。
図1は本発明の一実施形態としての画像形成装置の要部構成を模式的に示す図である。この図1に示すように、本実施形態の画像形成装置は、感光体1、帯電手段としての帯電装置2、露光手段としての露光装置3及び現像手段としての現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置6及び定着手段としての定着装置(図示せず)が設けられる。
【0073】
感光体1は、上述した本発明の感光体であれば特に形状に制限はないが、図1ではその一例として、シート状支持体の表面に上述した感光層を形成し、超音波融着によってエンドレスベルト状とした感光体を示している。
帯電装置2は感光体1を帯電させるもので、感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる装置である。図1では帯電装置2の一例としてコロナ放電型の帯電装置(コロトロン)を示しているが、他にも、例えばスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ローラや帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
【0074】
なお、感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下、適宜「感光体カートリッジ」と言う。)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述する現像液についても、多くの場合、カートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているカートリッジ中の現像液が無くなった場合に、このカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいカートリッジを装着することができるようになっている。更に、感光体1、帯電装置2及び現像液が全て備えられたカートリッジを用いることもある。
【0075】
露光装置3は、感光体1に露光を行なって感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体の支持体を光透過性にし、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。
【0076】
露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。中でも波長380nm〜500nmの光を用いると感光体
を、より小さなスポットサイズの光で露光することができ、高解像度で高階調性を有する高品質の画像を形成することができることから、高品質の画像を得たい際には好ましい。
【0077】
現像装置4は液体現像装置を表す。使用される現像液は、通常、絶縁性の高い現像用溶剤(通常は有機溶剤)中に荷電性を付与した顔料及び樹脂からなるトナーを分散したものである。液中で荷電したトナーが、現像電界に応じ電気泳動していく機構であるため、粘性を有する現像用溶剤中のトナーの移動度などが関係するが、基本的な電界モデルは乾式現像と同様である。
【0078】
図2(a),(b)に液体現像装置4のユニット構成の一例を模式的に示す。
図2(a)に示す液体現像装置4は、感光体1に近接又は当接する現像ローラ7とスクイズローラ8とを感光体1の移送方向に沿ってこの順に備える。そして、まず現像ローラ7から濃度の低い現像液を感光体に転写して現像を行い、続いて感光体1上の余剰な現像用溶剤をスクイズローラ8で電界の力も借りながら搾り取ることで、感光体1上に薄く均一で密度の高いトナー像を形成できるようになっている。
【0079】
一方、図2(b)に示す液体現像装置4は、感光体1に近接する現像ローラ7と、現像ローラ7に当接したスクイズローラ8とを備える。そして、現像前に現像ローラ7とスクイズローラ8間の電界及び圧力により、高濃度、高帯電の薄いトナー層を現像ローラ7上に予め形成し、続いてこのトナー層を、感光体1と現像ローラ7間の電界により現像することで、高密度のトナー像を形成できるようになっている。
【0080】
なお、必要に応じて、液体現像装置4には現像ローラ7及びスクイズローラ8に残留した現像液を除去するクリーニングローラ9を設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、例えばコロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が感光体1に対向して配置された転写チャージャー、転写ローラ、転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体,転写材)Pに転写するものである。なお、図1は感光体から記録紙Pへの直接転写方式を表しているが、感光体から中間転写ベルト、中間転写ローラ等の中間転写体にいったんトナー像を転写した後に記録紙Pに転写する、中間転写方式も用いることができる。
【0081】
クリーニング装置6について特に制限はなく、例えばブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。
記録紙P上に転写されたトナーは、通常、定着器(図示せず)を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
【0082】
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、例えば熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された画像形成装置では、現像液を用いた液体現像方式の画像形成方法によって、次のようにして画像の記録が行なわれる。
【0083】
即ち、図1に示すように、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される(帯電工程)。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する(露光工程)。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう(現像工程)。
【0084】
図2(a),(b)に示すように現像装置4の現像ローラ7に担持された帯電トナーが感光体1の表面に接触あるいは近接すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される(手印写工程)。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される(クリーニング工程)。トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで(定着工程)、最終的な画像が得られる。
【0085】
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、感光体に露光あるいは交流電圧の印加を行なうことで感光体上の余分な帯電電荷をキャンセルする工程である。除電装置としては、例えば、蛍光灯、LED等の露光装置や、交流印加が可能なワイヤ等が使用される。また除電工程で露光を用いる場合、光強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0086】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、複数種のトナーを用いたフルカラー方式の構成としてもよい。
さらに、例えばエンドレスベルト状感光体に代えて、金属ドラム上にシート状感光体を静電気力等によって貼り付けた形態にしてもよい。
【0087】
なお、感光体1は、必要に応じて、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(電子写真カートリッジ)として構成し、この電子写真カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、上記実施形態で説明したカートリッジと同様に、例えば感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【0088】
以上詳述したような本発明の感光体は、感光層に本発明に係る式(1)で表される構造の化合物を含有するため、液体現像系において十分な耐クラック性を有し、且つ良好な電気特性及び耐オゾン性を有する電子写真感光体及びこれを備えた画像形成装置を実現できる。したがって、上述した画像形成装置によれば、高画質の画像形成を、液体現像系に特有のクラックを生じることなく長期間にわたって行うことができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いる「部」は特に断りがない限り「質量部」を示す。
実施例1
平均一次粒子径13nmの酸化アルミニウム粒子(日本アエロジル社製 Aluminum Oxide C)を、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中で超音波により分散させることにより、酸化アルミニウムの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール(質量比7/3)の混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[
下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを、加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、酸化アルミニウム/共重合ポリアミドを質量比1/1で含有する固形分濃度8.0%の下引き層用分散液とした。
【0090】
【化9】

【0091】
このようにして得られた下引き層形成用塗布液を、表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート(厚さ75μm)上に、乾燥後の膜厚が1.2μmになるようにワイアバーで塗布、乾燥して下引き層を設けた。
電荷発生物質として、図3に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するチタニウムオキシフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いて、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)の2.5%1,2−ジメトキシエタン溶液400部と、170部の1,2−ジメトキシエタンを混合して分散液1)を調製した。次に、図4に示すCuKα特性X線に対する粉末X線回折スペクトルパターンを有するチタニウムオキシフタロシアニンについても同様の操作を行い分散液2)を調整した。これらの分散液を1:1で混合・撹拌した混合液を、前記下引き層上にバーコーターで塗布して、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるよう
に電荷発生層を形成した。
【0092】
次にこのフィルム上に、下記構造の電荷輸送物質(1)を35部、および下記構造のバインダー樹脂(1)(粘度平均分子量:31000)を100部と、下記構造を有する酸化防止剤8部、およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.1部をテトラヒドロフラン/トルエン(8/2)混合溶媒640部に溶解させた液を塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が18μmとなるように電荷輸送層を設け感光体を作製した。この
感光体を感光体X1とする。
【0093】
【化10】

【0094】
実施例2
実施例1において、電荷輸送物質を下記構造の電荷輸送物質(2)に変えた以外は実施例1と同様にして、感光体X2を得た。
【0095】
【化11】

【0096】
実施例3
実施例2において、電荷輸送層用塗布液のバインダー樹脂を下記繰り返し構造のバインダー樹脂(2)(粘度平均分子量:30000)に変え、溶剤としてジオキソランを使用した以外はすべて実施例2と同様にして、感光体X3を得た。
【0097】
【化12】

【0098】
実施例4
実施例3において、電荷輸送物質を40部に変えた以外はすべて実施例3と同様にして、感光体X4を得た。
実施例5
実施例1において、電荷輸送物質(1)の代わりに電荷輸送物質(3)を28部使用した以外はすべて同様にして、感光体X5を得た。
【0099】
【化13】

【0100】
実施例6
実施例1において、電荷輸送物質として下記構造の電荷輸送物質(4)を30部使用した以外はすべて実施例1と同様にして、感光体X6を得た。
【0101】
【化14】

【0102】
比較例1
実施例1において、電荷輸送物質として下記構造の電荷輸送物質(5)を使用した以外はすべて実施例1と同様にして、感光体Y1を得た。
【0103】
【化15】

【0104】
比較例2
実施例1において、バインダー樹脂として上記繰り返し構造のバインダー樹脂(2)を使用した以外はすべて比較例1と同様にして、感光体Y2を得た。
比較例3
実施例1において、電荷輸送物質として下記構造の電荷輸送物質(6)を使用した以外はすべて実施例1と同様にして、感光体Y3を得た。
【0105】
【化16】

【0106】
比較例4
比較例1において、バインダー樹脂として下記の繰り返し構造をもつバインダー樹脂(3)(粘度平均分子量:38000)を使用した以外はすべて比較例1と同様にして、感光体Y4を得た。
【0107】
【化17】

【0108】
実施例7
比較例4において、電荷輸送物質として上記電荷輸送物質(2)を使用した以外はすべて比較例4と同様にして、感光体Z1を得た。
製造した感光体シートX1〜X6、Y1〜Y4、Z1について、以下の電気特性試験とクラックテストを行なった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0109】
<電気特性試験>
電子写真学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、日本画像学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体シートX1〜Z1を直径80mmのアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体シートのアルミニウム支持体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.0μJ/cm2で露光したときの100ms後の表面電位(以下、VLと呼ぶことがある)を測定
した。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行なった。
【0110】
<クラックテスト>
上記で作製した感光体シートを1cm×20cmの短冊に切り、感光体表面に溶剤;アイソパーLを薄く塗りつけて約3時間放置した。この短冊をテンシロン万能材料試験機
TENSILON RTM100(株式会社エー・アンド・デイ社製)にとりつけ、アイソパーLを再度
塗りつけて30ニュートンの力で引っ張り、感光体表面にクラックが出現するまでの時間を測定した。クラック性に弱い感光体は短時間でクラックが発生するが、クラックに強い感光体はクラック発生までの時間が長い。
【0111】
【表1】

【0112】
以上、表−1の結果より、式(1)で表される化合物を液体現像用電子写真感光体の感光層に含有させることにより、電気特性及び耐クラック性が同時に優れることが分かる。また、比較例4と実施例7との対比より、バインダー樹脂としてポリアリレート樹脂を使用した場合でも、実施例7の電子写真感光体は、電気特性を大きく悪化させることなく良好に維持したまま、優れた耐クラック性をも実現していることが理解される。
【0113】
<実施例8>
幅が500mmであり、膜中にシリカ粒子を含有させることで表面が粗面化(Ra=0.1μm)された厚み75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタラートフィルムの表面に70nmの厚さでアルミニウム蒸着膜を設け、巻き取り、長さ2000mのロールとした。
次に、実施例1で調整した下引き層用塗布液を、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタラートフィルムのロールを巻き出しながら、リバースコート法を用い、その上に乾燥後の膜厚が1.2μmとなるように塗布し、下引き層を設けた。
【0114】
次に、実施例1で調整した電荷発生層用塗布液を、上述の下引き層を形成したアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタラートフィルムのロールを巻き出しながら、リバースコート法を用い、その上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように塗布し、電荷発生層を設けた。
次に、実施例2で調整した電荷輸送層用塗布液を、上述の下引き層及び電荷発生層を形成したアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタラートフィルムのロールを巻き出しながら、ダイコート法を用い、その上に乾燥後の膜厚が18μmとなるように塗布し、電荷輸送層を設けた。
【0115】
このようにして得られた感光層の塗布されたロール状シートを、連続式の断裁機を用いて353mm×584mmのサイズに切り出し、感光体シートを得た。さらにこのシートの両端から、アセトン及びエタノールを用いて、感光層をそれぞれ25mmの幅で剥離し、さらに片側は水酸化ナトリウム溶液を用いてアルミ蒸着層も除去した。このようにして
、電子写真感光体Aを得た。
製造した感光体シートAについて以下の実機試験を行なった。
【0116】
<実機試験>
市販の液体現像タイプの軽印刷機、ヒューレットパッカード社製TurboStreamに感光体シートAを装着し、画像評価を行なった。装着に於いては、機内のアルミニウ
ムドラムに感光体シートを巻き付け、両端の未塗布領域を重ね合わせてドラム上に感光体シートMを保持した。片側のアルミニウム層を除去したことで、静電気によって容易に重ね合わせることができた。
【0117】
この感光体Aを用いて、ハーフトーン画像を100枚連続で出力したが、濃度変化はな
く、良好な画像を得た。さらに、繰り返し使用しても感光層にクラックが入る等のトラブルもなく、実使用上も問題なかった。
以上から、本発明に係る電荷輸送物質を用いた場合に限り、電気特性、画像特性、耐クラック性のいずれにも優れる感光体を初めて得ることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含有する感光層を備えることを特徴とする液体現像用電子写真感光体。
【化1】

(式(1)中、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい縮合多環芳香族炭化水素基、下記式(2)、または下記式(3)で表される基を表し、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基を表し、Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。mは2以上6以下の整数を表す。)
【化2】

(式(2)、(3)中、Ar6は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Ar
およびAr8は置換基を有していてもよいアリール基を表し、nは2または3の整数を
表す。)
【請求項2】
シート状導電性支持体を備えることを特徴とする請求項1記載の液体現像用電子写真感光体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の液体現像用電子写真感光体を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−47792(P2013−47792A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161661(P2012−161661)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】