説明

液体用包装容器と液体用包装容器の開封方法

【課題】空の容器に収容物を注ぎ込む際に液体用包装容器を切り口の近い位置で注ぎ込む相手の容器の口部に係止させて位置決めし易くするとともに、液体用包装容器が自立しているときに容器上部が大きく窪まないようにし、注ぎ出しているときに振動やズレによっても切り口が相手の容器から外れず、そして、自立時の容器外観を整える。
【解決手段】容器上部6の一方の隅部に、上方に向けて立ち上がり容器側部9上に位置する頂部8から斜め下方に傾斜した傾斜辺部10を有する注出口部7を設け、注出口部7とこの注出口部7以外の容器上部6との間に、下方に向けて落ち込んだ形状の凹部12を設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は液体洗剤や液体柔軟剤などを収容する液体用包装容器に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】従来から、合成樹脂製などによりなるボトルタイプの容器においてはその不要時における廃棄処理を行うことでゴミの増大や環境破壊を招き易いという点が問題となってきている。このような状況から近年、一般家庭での使用量が大きい台所用液体洗剤や洗濯用液体洗剤、液体柔軟剤、シャンプー、リンス、ボディーソープなどの商品に対しては、詰め替え用として環境への影響を考慮した素材を選択した容器であってかさ張り難い形状の液体用包装容器を用いて提供されるようになってきた。このような液体用包装容器の一つとして、それぞれ積層構成とした正面シートと背面シートと底シートからなり、容器底部に底シートを介在させた状態で正面シートと背面シートとを貼り合わせ(例えば、ヒートシール)、容器底部の正面シートの下辺と背面シートの下辺との間を広げるようにして自立できる形態の容器がある。そして、空容器に内容物を移し替えるに際しては容器上部の一方の隅部を切り取り、その切り口を空容器の口部に当てがいながら注ぎ入れるようにしている。
【0003】しかしながら、上述したように内容物の移し替えに際しては単にカットして得られた切り口を空容器の口部に当てがうだけのものであることから、また、注出時の脈動による振動が生じるため、空容器の口部から切り口が簡単にズレ易くなって口部から外れる可能性もあり、その注ぎ入れは、液体用包装容器全体を手で保持して切り口が相手の容器の口部に確実に位置するように調節しながら行わなければならないという手間を要している。また、このように容器底部に底シートを介在させて正面シートと背面シートとを貼り合わせ、容器底部が広がることで自立するスタンディングパウチタイプの液体用包装容器では、その容器上部の貼り合わせ部分が一直線状に形成されて、その容器上部は比較的に変形し易い部分となっている。そして、自立している状態で収容物の液体が自重で容器底部側に寄ることで前記容器上部側が引き込まれ、その容器上部の中央部分が大きく窪んでんで容器の外観を損なうという問題がある。そこで、本発明は上記した事情に鑑み、空の容器に収容物を注ぎ込む際に液体用包装容器を切り口の近い位置で注ぎ込む相手の容器の口部に係止させて位置決めし易くするとともに、上述したように液体用包装容器が自立しているときに容器上部が大きく窪まないようにすることを課題とし、注ぎ出しているときに振動やズレによっても切り口が相手の容器から外れないようにして、そして、自立時の容器外観を整えるようにすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を考慮してなされたもので、容器底部に底シートを介在させた状態で正面シートと背面シートとを貼り合わせてなる液体用包装容器において、容器上部の一方の隅部に、上方に向けて立ち上がり容器側部上に位置する頂部から斜め下方に傾斜した傾斜辺部を有する注出口部を設け、かつ、該注出口部とこの注出口部以外の容器上部との間に、下方に向けて落ち込んだ形状の凹部を設けたことを特徴とする液体用包装容器を提供して、上記課題を解消するものである。そして、本発明において、注出口部以外の容器上部における貼り合わせ領域の下高さ位置が、上記凹部の底の下の近傍となる高さに揃えられ、注出口部以外の容器上部は、この凹部の底の下の近傍となる高さから上方の全領域が貼り合わされていることが良好である。そして、もう一つの発明にあっては、上記液体用包装容器の注出口部を容器側部から傾斜辺部に亘って斜め上方に向けて切断開口する液体用包装容器の開封方法であり、この開封方法を提供して、安定した注ぎ出しを行えるようにするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】つぎに本発明を図1から図4に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は液体用包装容器で、該液体用包装容器1はスタンディングパウチタイプと称する形態であって、容器底部2に二つ折り折り状にした底シート3を介在させた状態で正面シート4と背面シート5との辺部をヒートシールし、その容器底部2における正面シート4の下辺4aと背面シート5の下辺5aとの間を開くようにすることで、前記下辺4a、5aを脚として自立できるようにしたものである。そして、上記液体用包装容器1にあっては、図示されているように、正面シート4の上辺4bと背面シート5の上辺bとを直接ヒートシールしてなる容器上部6に、その容器上部6の一方の隅部を上方に延設することで容器上部6の一般部上縁高さ位置6aより高く立ち上がった注出口部7が設けられている。この注出口部7は正面視が略三角状となるように立ち上がった形状であって、頂部8が、直線状に伸びた容器側部9の上に位置し、その頂部8から容器中心線側に向けて斜め下方に傾斜した傾斜辺部10を有している。なお、この注出口部7ではその外縁に沿った辺をヒートシールしており、このヒートシールの領域内において容器側部9に、この注出口部7を切断するための目安となる切欠き11が設けられている(図においては注出口部7の図上、左側にのみ設けているが、右側にも設けることができる)。
【0006】また、容器上部6にあっては、上記注出口部7とこの注出口部7以外の容器上部6(容器上部6において容器幅方向に亘っている一般部分)との間に、下方に向けて落ち込んだ形状の凹部12が設けられている。さらに、その注出口部7以外の容器上部6においてのヒートシール領域13の上下方向の幅(即ち、一般部分での正面シート4の上辺4bと背面シート5の上辺5bとのヒートシール上下幅)を他のヒートシール部分のシール幅よりも大きくしているとともに、そのヒートシール領域13の下高さ位置13aは、前記凹部12の底の下の近傍となる高さに揃えられ、この凹部12の底の下の近傍となる高さに揃った下高さ位置13aから一般部上縁高さ位置6aまでの全領域がヒートシールされている。本液体用包装容器1では、上述したように注出口部7と一般部分の容器上部6との間に凹部12が設けられていて、この凹部12は、図3に示すように開封した注出口部7を、相手の容器Aの口部Bに挿入したときにその口部Bに係止させることができるものであり、この凹部12を口部Bに係止させることで注出口部7が口部Bに対して位置決めされ、開封してなる注出口部7の切り口14が確実に口部Bの内部に位置するようにしている。このように凹部12を口部Bに係止させて切り口14を口部Bの内部に位置させるため、注ぎ出ししている液体用包装容器1に軽く手を添えているだけでも注出時の状態は安定し、仮に注出に際しての脈動などによる振動が生じたとしても切り口が口部から外れない。切り口14は、正面シート4と背面シート5の材質構成を選択し、無方向性のフィルムを選択することで斜め方向に切断することができ、横方向性のフィルムを選択することで横方向に切断することができる。
【0007】そして、上記ヒートシール領域13の上下方向の幅を大きくしているためにこの部分の強度が向上しており、かつ、その側方に上記凹部12が位置していて変形を吸収し易い形状となっていることから、この液体用包装容器1を自立させた状態にしても、収容液体が下がって引き込まれることによる変形が凹部12に集まることになり、容器上部6全体が大きく窪むことがなくなるようにしている。このため、容器全体形状や正面視したときの商品の姿が損なわれない。勿論、上下シール幅を大きくしたヒートシール領域13は取り扱い時の持ち手としても十分に利用でき、注出操作が行い易くなるとともに、取り扱い時に収容部分を直接挟み持つことがないため、即ち、収容部分に圧力が加わり難くしているため、注出口部を開封した際や注出作業ときに内容物が飛び出さないようになる。さらに、ヒートシール領域13の下高さ位置13aを、上記凹部12の底の下の近傍となる高さに揃えているため、ヒートシール時の収容液体の液面からヒートシール箇所が離れることになり、ヒートシール時の液噛みを無くしてシール不良が生じないようにしている。
【0008】本発明に使用する材料構成としては、下記のものを例として挙げることができる。
(1)
正面シート、背面シート:(外面)ポリエチレンテレフタレート(12μm)/アルミ箔(7μm)/延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(100μm)
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/アルミ箔(7μm)/線状低密度ポリエチレン(120μm)
(2)
正面シート、背面シート:(外面)内面に蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレート(12μm)/延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(100μm)
*蒸着層としてはアルミニウムなどの金属蒸着、アルミナ、シリカなどの無機化合物蒸着などを挙げることができる。
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(120μm)
(3)
正面シート、背面シート:(外面)ポリエチレンテレフタレート(12μm)/外面に蒸着層を設けた延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(120μm)
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(120μm)
(4)
正面シート、背面シート:(外面)延伸ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(150μm)
底シート:(外面)延伸ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(150μm)
【0009】本発明の液体用包装容器では、つぎの構成を付加することができる。注出口部7の正面シート、背面シートに、注出口部の頂部へ向けて求心状に(頂部側からは放射状に)伸びる一本以上の溝を形成することができる。この溝は、容器の内部へ窪ませることも容器の外部へ突出させることもでき、これらの窪み、突出を組み合わせるようにしてもよい。そして前記溝は雌雄の成形金型による押圧加工、及び又は雌雄成形金型に熱と圧力を加えた成形加工で設けることができる。この溝を設けることにより、注出口部の不慮の折り曲がりを防止でき、注ぎ出し時に、内容物が流れ易くなるという効果がある。
【0010】上記液体用包装容器を開封するにあたっては、注出口部7を容器側部から傾斜辺部に亘って斜め上方に向けて切断開口する。このように斜めに開封した切り口とすることで、容器側部側に向けて下り傾斜となる切り口が得られ、注出に際して相手の容器口部平面に対して比較的覆い被せるような切り口にて、内容物の飛び出しを抑えながら安全に注出を行わせることができるようになる。
【0011】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の液体用包装容器によれば、容器底部に底シートを介在させた状態で正面シートと背面シートとを貼り合わせてなるものであって、容器上部の一方の隅部に、上方に向けて立ち上がり容器側部上に位置する頂部から斜め下方に傾斜した傾斜辺部を有する注出口部を設け、かつ、該注出口部とこの注出口部以外の容器上部との間に、下方に向けて落ち込んだ形状の凹部を設けたことを特徴とするものである。このように上方に立ち上がる注出口部とこの注出口部以外の容器上部との間に凹部を設けているため、注出口部を開封して内容物を注出する際にこの凹部を、注ぎ込む容器の口部に係止させることができ、その凹部の係止によって注出口部を口部に対して安定した状態で位置決めできるようになる。これによって、内容物の移し替えなどの注出を行う際、液体用包装容器に軽く手を添えておくだけで安全にして、かつ簡単に注ぎ出しが行えるようになる。また、容器上部に凹部が設けられているため、収容液体が底部側に下がって容器上部側に対する引き込み作用が生じても、凹部が変形することで全体の型崩れが防止されるようになり、容器上部全体の折れ込みや正面シートと背面シートの上部側での窪みの発生を抑えて容器の外観を損なうことがない。さらに注出口部にあっては、容器中央側の辺のみを傾斜させて尖頭状にして立ち上げているため、開封に際し、切断距離を短くしようとする使用者側の意識の働きから容器側部側に向けて下り傾斜となるカットを無意識的に行わせるようになり、容器側部側に向けて下り傾斜となる切り口が得られ、注出に際して相手の容器口部平面に対して比較的覆い被せるような切り口にて、内容物の飛び出しを抑えながら安全に注出を行わせることができる。さらにまた、液体用包装容器の注出口部を容器側部から傾斜辺部に亘って斜め上方に向けて切断開口することで、上述したような容器側部側に向けて下り傾斜となる切り口が得られ、内容物の飛び出しを抑えながら安全に注出を行わせることができるようになるなど、実用性に優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体用包装容器の一例を示す説明図である。
【図2】一例における容器上部を示す説明図である。
【図3】注出口部からの注ぎ出しを示す説明図である。
【図4】容器上部を挟み持った状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1…液体用包装容器
4…正面シート
5…背面シート
6…容器上部
6a…一般部上縁高さ位置
7…注出口部
8…頂部
10…傾斜辺部
12…凹部
13…ヒートシール領域
13a…下高さ位置
14…切り口
A…相手の容器
B…口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】容器底部に底シートを介在させた状態で正面シートと背面シートとを貼り合わせてなる液体用包装容器において、容器上部の一方の隅部に、上方に向けて立ち上がり容器側部上に位置する頂部から斜め下方に傾斜した傾斜辺部を有する注出口部を設け、かつ、該注出口部とこの注出口部以外の容器上部との間に、下方に向けて落ち込んだ形状の凹部を設けたことを特徴とする液体用包装容器。
【請求項2】上記注出口部以外の容器上部における貼り合わせ領域の下高さ位置は、上記凹部の底の下の近傍となる高さに揃えられ、注出口部以外の容器上部は、この凹部の底の下の近傍となる高さから上方の全領域が貼り合わされている請求項1に記載の液体用包装容器。
【請求項3】請求項1または2における液体用包装容器の注出口部を容器側部から傾斜辺部に亘って斜め上方に向けて切断開口する液体用包装容器の開封方法。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate