説明

液体肥料

【課題】亜リン酸を成分とする新規な液体肥料を提供する。
【解決手段】
亜リン酸20〜40質量部と、アルカリ性化合物10質量部とを配合して水溶液とする。更に、リン酸一カリウムを添加することができる。
この水溶液では、アルカリ性化合物の存在により、亜リン酸の単独の水溶液よりもpH値が大きくなる(すなわち、アルカリ性側に変位する)ので、亜リン酸単独の場合よりも高濃度で亜リン酸を溶解させることができる。従って、亜リン酸を高濃度で含有する液体肥料になる。
この液体肥料は、希釈せずに使用してもよいし、例えば10倍〜1000倍に希釈して使用してもよい。葉面散布や株元灌注が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体肥料の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
リン(P)は肥料の3要素の一つとして知られ、例えばリン酸、亜リン酸等の形態で使用されてきた。リン酸肥料の肥効としては、発根・分けつ促進、着果・着色促進、細胞皮(膜)の硬化促進、病気への抵抗力強化などが知られている。
【0003】
特開2006−28000号公報には、亜リン酸が含まれる水溶液を肥料として使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−28000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
亜リン酸の水溶液を葉面に散布すると葉面から直接吸収されるので、その点では散布効率が良いと言える。
一方、単に亜リン酸の水溶液を調製しただけでは、濃度に不満がある場合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の液体肥料は、
亜リン酸と、
アルカリ性化合物と
を溶質とした水溶液であることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の液体肥料は、
前記2成分の他にリン酸一カリウムをも溶質とした水溶液であることを特徴とする請求項1記載の液体肥料である。
【0008】
請求項3記載の液体肥料は、
液体肥料全体に占めるアルカリ性化合物の配合比が4〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体肥料である。
【0009】
請求項4記載の液体肥料は、
アルカリ性化合物を10質量部としたときに
亜リン酸が20〜40質量部であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の液体肥料である。
【0010】
請求項5記載の液体肥料は、
リン酸一カリウムを10質量部としたときに
亜リン酸が20〜30質量部であることを特徴とする請求項2又は請求項2を引用する請求項3もしくは4記載の液体肥料である。
【0011】
請求項6記載の液体肥料は、
アルカリ性化合物が水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の液体肥料である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に使用されるアルカリ性化合物とは、その水溶液がアルカリ性となる化合物で、言うまでもなく水溶性である。
具体的な例としては、請求項6に記載の水酸化カルシウムを挙げることができる。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物も好適である。なお、複数種類のアルカリ性化合物を混用することもできる。
【0013】
亜リン酸と、アルカリ性化合物とを溶質とした水溶液では、アルカリ性化合物の存在により、亜リン酸の単独の水溶液よりもpH値が大きくなる(すなわち、アルカリ性側に変位する)。すると、亜リン酸単独の場合よりも高濃度で亜リン酸を溶解させることができる。
【0014】
請求項1記載の液体肥料にあっては、亜リン酸とアルカリ性化合物との2成分の他に、肥料成分を添加することもできる。請求項2に記載のリン酸一カリウムが、その一例である。リン酸一カリウムは、リン酸肥料かつカリウム肥料としての肥効がある。
【0015】
なお、リン酸一カリウムの好ましい配合比は請求項5記載の配合比、すなわちリン酸一カリウムを10質量部としたときに亜リン酸が20〜30質量部となる範囲が好ましい。
本発明の液体肥料は、根本は亜リン酸肥料であり、アルカリ性化合物はいわば助剤であるから、その配合比が過剰又は過少になるのは好ましくない。使用するアルカリ性化合物の種類にもよるが、一般的には請求項3に記載の配合比、すなわち液体肥料全体に占めるアルカリ性化合物の配合比が4〜10質量%が好ましい。
【0016】
また、アルカリ性化合物の好ましい配合比は亜リン酸との比率によって規定することもでき、その場合は請求項4記載の配合比、すなわちアルカリ性化合物を10質量部としたときに亜リン酸が20〜40質量部となる範囲が好ましい。
[実施例]
下記の表1に示す配合比で液体肥料を調製した。この液体肥料は、そのまま希釈せずに使用してもよいが、通常は10倍〜1000倍に希釈して葉面散布や株もとに灌注する形態で使用される。
【0017】
【表1】

[施用実験]
実施例(表1)の液体肥料をウンシュウミカンに施用して、その果実品質に及ぼす影響を調査した。
試験方法
1)供試品種:「青島温州」 青島温州28年生樹(交互結実、シートマルチ栽培樹)
2)試験区:散布区(実施例の液体肥料の1000倍希釈液を散布)、無処理
3)散布月日:2008年10月20日、10月29日、11月7日、11月20日
4)処理区:樹冠散布;1区1樹6反復
5)調査日:収穫;12月22日 着色、果汁内容;12月25日 果皮障害果;12月28日
6)調査結果:表2に示す通り。
【0018】
【表2】

表2に示すとおり、実施例の液体肥料には糖度向上効果及び浮皮軽減効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜リン酸と、
アルカリ性化合物と
を溶質とした水溶液であることを特徴とする液体肥料。
【請求項2】
前記2成分の他にリン酸一カリウムをも溶質とした水溶液であることを特徴とする請求項1記載の液体肥料。
【請求項3】
液体肥料全体に占めるアルカリ性化合物の配合比が4〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体肥料。
【請求項4】
アルカリ性化合物を10質量部としたときに
亜リン酸が20〜40質量部であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の液体肥料。
【請求項5】
リン酸一カリウムを10質量部としたときに
亜リン酸が20〜30質量部であることを特徴とする請求項2又は請求項2を引用する請求項3もしくは4記載の液体肥料。
【請求項6】
アルカリ性化合物が水酸化カルシウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の液体肥料。

【公開番号】特開2010−37182(P2010−37182A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61183(P2009−61183)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000167897)晃栄化学工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】