説明

液体製剤からエアロゾルを生成し、その無菌性を保証するための装置および方法

無菌マルチドーズ容器を含有する薬物送達装置について開示する。滅菌容器は、インジェクターまたはエアロゾル薬物送達システムを含む多種類の送達に使用することができる。無菌性が確実に維持されるように、保存中は容器に高圧を使用する。無菌性が損なわれる可能性がある場合に送達を防止する機構が開示されている。圧力を使用して容器から製剤を計量する装置が開示されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、液体薬物製剤を保存する方法および好ましくはエアロゾル送達によってヒトまたは動物に送達するためにそれらを提供する方法に関する。製剤を無菌状態で維持する方法および無菌性が損なわれた場合にユーザーに通知するまたはユーザーへの送達をロックアウトする方法が記載されている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
微細分散したエアロゾルの生成は、ヒトまたは動物の気道にエアロゾル化粒子を到達させるための薬物のエアロゾル化送達にとって重要である。多数のエアロゾル薬物送達システムは、使用時にマルチドーズ液体製剤を含有する容器からエアロゾルを生成する。このような装置の一例は米国特許第5,497,944号(特許文献1)に記載されている。この種類の送達に適合することができる他の技術は、全体の内容が参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,119,953号(特許文献2)および同第6,174,469号(特許文献3)ならびに米国特許出願第09/591,365号(特許文献4)および同第10/649,376号(特許文献5)に記載されている。これらの発明および同様の発明に使用されるエアロゾル化技術は幾分高価であるので、シングルドーズではなくマルチドーズの送達のためにそれらを使用することが好ましい。同様に、マルチドーズ容器を使用することによって費用削減を達成することができる。この容器から用量を計量する機構は単純であることが好ましい。
【0003】
これらの技術は肺への製剤の効率的な送達のために最適化されているので、エアロゾル化し、送達する前に製剤に含有される細菌またはウイルスなどの任意の感染菌も肺に送達され、肺または全身感染症の可能性を生じるという問題がある。肺感染症は、例えば、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ニューモシスチス(Pneumocystis)およびレジオネラ(Legionella)によって生じることがある。
【0004】
米国保健社会福祉省(US Department of Health and Human Services)食品医薬品局(Food and Drug Administration)医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research)(CDER)は2002年7月に、表題「鼻腔スプレーおよび吸入液、懸濁液およびスプレー製剤-化学、製造および制御に関する文書(Nasal spray and Inhalation Solution, Suspension, and Spray Drug Products-Chemistry, Manufacturing, and Controls Documentation)」(非特許文献1)の工業用ガイダンスを発行した。このガイダンスは、「装置-計量式水性吸入スプレー製剤について、…容器保存期間中および容器使用中の適当な微生物学的質を実証するための検討を実施しなければならない。このような試験は、容器密閉システムが、製剤への微生物の侵入を防止する能力および/または製剤の増殖阻止特性を評価することができると思われる」と記載している。従って、今では、水性吸入器が終生無菌または静菌的であることは米国における規制要件である。
【0005】
一解決法は、製剤中に塩化ベンジルコニウム(benzylkonium chloride)などの保存剤を含ませることである。しかし、保存剤は肺刺激を生じることがあり、全ての微生物に有効であるわけではない。
【0006】
好ましい解決法は、機械的手段中に薬物容器の無菌性を維持することおよび保存剤を含有しない製剤を送達することである。無菌性を確実にする一方法は圧力勾配の使用である。例えば、製剤は無菌領域で製造される。空気ろ過およびガウン着用手法以外に、周囲領域より高い空気圧にこれらの領域を維持することによってこれらの領域の無菌製を維持する。これにより、任意の漏洩は無菌領域からの流出となり、病原菌の侵入の可能性が確実に排除される。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,497,944号
【特許文献2】米国特許第6,119,953号
【特許文献3】米国特許第6,174,469号
【特許文献4】米国特許出願第09/591,365号
【特許文献5】米国特許出願第10/649,376号
【非特許文献1】米国保健社会福祉省食品医薬品局医薬品評価研究センター(US Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research(CDER)), 2002年7月,「Nasal spray and Inhalation Solution, Suspension, and Spray Drug Products-Chemistry, Manufacturing, and Controls Documentation」
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
容器は無菌であり、インジェクターおよびエアロゾル薬物送達装置を含む種々の送達と併用使用することができる無菌マルチ・ドーズ容器を含む薬物送達装置を開示する。本発明の装置は、高圧に維持されており、容器を包囲するチャンバーまたはプレナムを使用している。本発明の装置は、無菌性が損なわれた場合に薬物の送達を防止するおよび/または警告を提供する要素を含む。弁を使用して容器から製剤を計量し、それによってエアロゾルを生成するためまたは注射に使用することができる製剤の無菌流を容器から生成することができる。
【0009】
開示されている薬物送達装置は圧縮ガス容器を含む。容器はドッキングユニット内に離脱可能であるように配置されている。ドッキングユニットの容器は、作動時に容器から計量された量のガスを放出する計量弁を有する。本発明の装置はまた、薬学的に活性な薬物の溶液または懸濁液などの製剤とともに充填される容器も含む。キャピラリーチューブなどのチャネルが容器から通じ、一方向弁がチャネルに存在してもよく、チャネルの末端にエアロゾル化ノズルを含んでもよい。チャンバーは容器と物理的に接触しており、加圧ガス容器とガス流動的に接続している。加圧ガスが計量弁から放出されるとき、チャンバーが加圧され、容器の柔軟な壁を圧縮し、それによって製剤を所定の送達速度で排出する。
【0010】
本発明の第1の局面によると、計量された量の製剤を容器からエアロゾル化手段に送達するための装置が提供される。本発明の装置は:
(a)加圧ガス源;
(b)ガス源から所定の量のガスを計量する手段;
(c)容器周囲のプレナム;
(d)プレナムに計量されたガスの一部または全てを送達するための第1の流体チャネル;
(e)プレナムにガス圧力が発揮されるとき、容器に含有される所定の量の製剤をエアロゾル化手段に送達するための第2の流体チャネル
を含む。
【0011】
好ましい態様において、計量されたガスは、アトマイザーのためのパワー源としてさらに使用される。
【0012】
本発明の装置は、加圧ガス源および/または薬物容器の離脱および交換のための(ドッキングユニットなどの)手段を組み入れてもよい。好ましい態様において、容器内の製剤の量およびガス源から送達することができるガスの量は、それらが共に本質的に同じ回数の投与のために存続し、用量が使い果たされたら、全システムが廃棄されるように選択される。
【0013】
本発明の第2の局面は、所定の量の製剤が第1の圧力において排出されると、プレナムの圧力は、通気手段によるガスの流動によって取り巻いている周囲圧より高い第2の圧力に低下することである。該第2の圧力において、ガスを通気し、圧力を低下する手段は通気閉鎖手段によって閉鎖され、プレナムの第2の圧力は本質的に維持される。これは、以下の効果を有する:
(a)圧力が第2の圧力より大きい場合にのみ通気手段が開かれ、投与事象中に薬物容器内への病原菌の任意の侵入を防止することを確実にする、ならびに
(b)プレナムまたは通気閉鎖手段の任意の漏洩はプレナムおよび薬物容器から外側方向への流動を有し、保存中の病原菌の任意の侵入を防止することを確実にする。
【0014】
通気手段は、任意の種類の弁または任意の形状もしくは性状のオリフィスであってもよい。好ましい態様において、通気手段はアトマイザーの不可欠の部分であり、通気過程は噴霧過程の不可欠な部分である。通気閉鎖手段は、任意の様式のシール、カバー、キャップ等であってもよい。それは、例えば、タイマーおよびモーター、バネ等などの作動手段によって記載されている本発明とは独立に作動することができる。好ましくは、弁または通気閉鎖手段はプレナムのガス圧力によって開かれ、第1の圧力と第2の圧力の間の圧力において開き、第2の圧力において閉鎖する。
【0015】
本発明の第3の局面は、製剤の無菌性が損なわれた可能性がある場合に医薬の送達を防止する手段を提供することである。この手段は、圧力が第3の圧力以下に低下した場合に作動されると思われ、該第3の圧力は第2の圧力より低く、取り巻いている周囲圧より高い。これは、圧力変換機およびエレクトロニクスを使用して、電子部品を用いて実施することができると思われる。好ましくは、それは、プレナムの圧力に応答する機械機器を用いて実施される。この機械機器はスタンド-アロン型サブ-システムであってもよいが、好ましくは、通気閉鎖要素に組み入れられる。送達を防止するための機構は、無菌性欠如の可能性をユーザーに通知するまたは装置の使用をロックアウトすることを含むが、これに限定されない多数の方法で実現してもよい。
【0016】
本発明のこれらおよび他の目的、利点および特徴は、以下にさらに詳細に記載されている装置および方法の詳細を読むことにより当業者に明らかになる。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の装置、製剤および方法を記載する前に、本発明は記載されている特定の製剤および方法に限定されるわけではなく、従って変更することができることが理解するべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書に使用される用語は特定の態様のみを記載する目的のためであり、限定する意図のものではないことも理解されるべきである。
【0018】
値の範囲が提供されている場合には、文脈で明らかにそうでないことを記載しない限り下限の10分の1単位までのその範囲の上限と下限の間に介在する各値も具体的に開示されていることが理解される。記載されている範囲の任意の記載されている値または介在する値の間の小さい各範囲および記載されているその範囲の記載されている任意の他の値または介在する値は本発明に含まれる。これらの小さい範囲の上限および下限は独立に範囲に含ませてもまたは除外してもよく、記載されている範囲において具体的に除外されている任意の限界に従って、小さい範囲にどちらかの限界が含まれる、どちらの限界も含まれないまたは両方の限界が含まれる各範囲も本発明に含まれる。記載されている範囲が限界の一方または両方を含む場合には、含まれるそのような限界のどちらかまたは両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0019】
特に規定しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様または等価な任意の方法および材料を本発明を実施または試験する際に使用することができるが、好ましい方法および材料をここで記載する。本明細書に記載する全ての刊行物は、刊行物が引用されているものと関連して本発明の方法および/または材料を開示および記載するために参照により本明細書に組み入れられる。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「ある1つの」および「その1つの」は、内容が明らかにそうでないことを記載しない限り、複数の指示対象を含むことに注目しなければならない。従って、例えば、「ある1つの製剤」の言及は複数のこのような製剤を含み、「その方法」の言及は当業者に公知の1つ以上の方法および等価物の言及を含む等々である。
【0021】
本明細書において考察されている刊行物は、本願の提出日以前の開示内容のためだけに提供されている。本発明が以前の発明によりそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものと考慮するべきものは本明細書にはない。さらに、提供されている刊行物の日付は、個別に確認する必要があるかもしれない実際の刊行日と異なることがある。
【0022】
定義
周囲圧とは、本発明を使用または保存するときに本発明の装置およびユーザーを取り囲んでいる大気の絶対圧力と規定される。さらに具体的には、周囲圧は、装置集団の存続期間において遭遇することが期待されると思われる最大周囲圧を意味すると理解される。例えば、死海の海抜は海面より1286フィート低い。この領域でこれまでに観察された最高圧は1.0818 barである。
【0023】
噴霧、噴霧手段、アトマイザー等は、現在利用可能であるまたはエアロゾルを生成するために将来発明されるかもしれない数多くの方法のいずれかを意味すると解釈される。例には、振動メッシュ、ジェットネブライザー、ノズルによる押し出し、スピニングトップ(spinning top)、超音波ネブライザー、乾燥粉末ディスパーサー、凝縮エアロゾルジェネレーター、エレクトロ・ジェネレーターならびに米国特許第6,123,068号に開示されている多孔性膜の形態のノズルおよび全て参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,123,068号に引用されている特許および刊行物に開示されている他の装置による押し出しが挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
製剤とは、任意の液体、固体または噴霧することができる物質の他の状態を意味する。好ましい製剤は、溶液および/または懸濁液であってもよい液体製剤である。製剤は、肺投与または注射に好適な賦形剤を含むものが挙げられるが、これに限定されず、1つ以上の活性な薬学的成分を含む。
【0025】
空気圧タイマーとは、エネルギー源がガス圧である、事象を調節する機構を意味する。
【0026】
計量弁とは、公知の容量から一定の公知の量のガスを計測することによって一定の公知の量のガスを送達するための機構を意味する。容量はガスを含有してもよいが、好ましくは、計量弁から放出されるとガスになる液体を含有する。一例は、薬物および液体プロペラントの投与が計量弁によって制御されている定量吸入器である。
【0027】
キャピラリーとは物質を輸送するためのチャネルを意味する。チャネルは任意の径および断面を有する管であってもよいが、好ましくは、円形の断面である。それはまた、先細の断面を含む、変動または一定断面積であってもよい。物質は管を輸送可能な任意の物質であってもよいが、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に活性な物質を含有する。それはガスまたは乾燥粉末であってもよいが、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に活性な物質が溶液または懸濁液の状態である液体である。
【0028】
図面の態様
図1は、本発明の態様を使用するエアロゾル薬物送達システムの一態様を示す。気密圧縮ガス源1は、装置にエネルギーを提供するガスを発生するために使用される液体、ガスまたは固体を含有し、例えば、容器4からの液体にエアロゾルを生成させる。化学反応を含む多数の異なる方法を使用してガスを発生してもよい。しかし、加圧ガスを使用することが好ましく、またはさらに好ましくは、高蒸気圧の液体を使用することが好ましく、例えば、キャニスター内で液体である低沸点プロペラントはチャンバーまたはプレナム3に放出されるとガス状になる。
【0029】
この態様のガスはユーザーに吸入される、従って無毒性で、ほこりがなく、無菌性で、医薬品用のガスである必要がある。好ましい加圧ガスには、空気、アルゴン、ヘリウムが挙げられ、さらに好ましくは、窒素が挙げられる。高蒸気圧液体は、ガス源の内容物が枯渇するとき一定の圧力を維持するので好ましい。この態様の高圧は小粒子および大送達用量を達成するので、金属シリンダー内の医薬品用製品として容易に入手可能である、CO2またはNO2を含むが、これに限定されない比較的高蒸気圧液体がさらに好ましい。低用量または大粒子サイズ製品のためには、ヒドロ-フルオロ-アルカン(HFA)またはクロロ-フルオロ-カーボン(CFC)を含むが、これに限定されない他の低蒸気圧液体を使用してもよい。両者は吸入製品に広範に使用されているが、HFAは、オゾン層破壊の可能性が低いので好ましい。送達用量、投与回数および望ましい粒子サイズに応じて異なる量の液体、ガスまたは気体がガス源に含有されてもよい。しかし、ガス源は2〜50グラムの物質、より好ましくは、5〜25グラム、もっとも好ましくは、8〜16グラムの液体、例えば、キャニスター1の計量弁2から放出されると気化する液体CO2を含有することが好ましい。
【0030】
計量弁2はガス源1と流体的に接触している。この弁は、加圧定量吸入器(pMDI)に現在使用されている計量弁と同様である。ガス源1の末端部分が移動し、計量弁2を機械的に移動して開くようにガス源1を下に押すことを含む、計量弁を作動する数多くの方法がある。他の方法には、機械的および電子的呼吸作動が挙げられるが、これに限定されない。
【0031】
投与の再現性が重要であるので、計量弁2の再現性は、弁が繰り返し作動されるとき、作動の90%は目的の量の±25%以内、好ましくは目的の量の±15%以内、さらに好ましくは目的の量の±5%以内の量を計量するようでなければならない。または、計量弁2は、化学反応を制御して所定の量のガスを生成するための機構と交換してもよい。または、ガスの量は、加圧ガスがシステムに送達される時間の長さを制御する時間計測手段によって計量されてもよい。時間計測要素は、機械的タイマーまたは電子タイマーであってもよいが、これに限定されない。好ましくは、時間計測手段は空気圧タイマーである。
【0032】
キャニスター1は本発明の装置の永久的な部分であってもよい。しかし、キャニスター1はドッキングユニット40に挿入され、チャンバー3と気密的に接続するような位置に配置される可能性が高い。本発明の装置は定位置にキャニスターが存在しない状態で販売されてもよく、キャニスターは別個に販売してもよい。キャニスターは、容器4から全ての製剤を排出するのに十分なガスだけを有するように設計してもよい。または、キャニスターがドッキングチャンバー40から離脱されて、十分に充填された容器4と共に装置内に配置されるように、いくつかの容器から全ての製剤を排出するのに十分なガスを有してもよい。
【0033】
ガス源の計量時には、計量弁はガスをプレナム3に放出し、プレナムまたはチャンバー3の内部容量の圧力を増加させる。プレナム3の容量および計量されるガス量を制御することによって、ガス源1内の圧に等しい圧力までの任意の圧力を達成することができる。柔軟な容器4はプレナム3内に完全に含有され、ガスによって取り囲まれている。送達事象後にプレナム3を密閉するために連結機構14を使用する。エアロゾルが生成され、マウスピース36を介して患者に送達される。
【0034】
図2は、ガス圧を使用して、容器4から所定の量の製剤を計量する方法の一態様の略図を示す。容器4において、液体製剤は、自身がハウジング5内に含有されている柔軟な容器7に含有されている。ハウジング5は、開口部6によって、プレナム3に含有される加圧ガスと流体的に連絡している。柔軟な容器7は、バルーンブレーダー蛇腹、ダイヤフラム、ピストン/シリンダー等が挙げられるが、これに限定されないタスの方法で実施することができる。好ましくは、それはポリマー、ホイルまたはそのラミネートである。低い抽出性を含む、製剤に有害に影響しない許容可能な特性を有する限り、多数の異なる物質を柔軟な容器7に使用することができると思われる。好ましい物質には、薬物との接触のためにはポリエチレン(polyethelene)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等、蒸気バリヤー特性のためにはポリクロロトリフルオロエチレンクロロトリフルオロエテン(PCTFE)またはアルミニウムなどのホイルおよび機械的強度のためにはナイロンまたはポリエステルなどのポリマーが挙げられる。
【0035】
プレナム3が加圧されると、ハウジング5も開口部6によって加圧される。この圧力は柔軟な容器7を圧縮し、液体製剤がキャピラリー9を通過するように駆動する。次いで、液体製剤は開口部10方向に集束され、オリフィス10方向に向かい通過するガスおよび液体の流動過程がエアロゾル11を形成する。
【0036】
開口部6の外側方向のガス速度vが、流動が存在しない場合にプレナム内のガスが有すると思われる圧力から量1/2ρv2だけ低いが、取り囲んでいる周囲の圧力より高く、キャピラリー9の出口の圧力より大きいように、プレナム3の一方の側面である側面8は内側方向の輪郭を有してもまたは他の形状であってもよい。望ましい圧力を達成する別の方法には、ベンチュリまたは圧力調節器の使用が挙げられる。
【0037】
開口部6の位置および面積を適切に選択することによって、開口部6の外側方向のガス速度、柔軟な容器7の硬さ、製剤の速度ならびにキャピラリー9の長さおよび内側断面、製剤の送達量および送達速度を制御することができる。粘度を変える添加剤を製剤に含まないことが好ましい。好ましくは、容器7は、送達される製剤の速度および量が開口部6の位置、開口部6の外側方向のガス速度およびキャピラリー9の寸法によって主に設定されるように十分に柔軟で、開口部6は十分に大きい。
【0038】
キャピラリー9は任意の形状を有してもよいが、好ましくは、一定の断面であり(円筒)、さらに好ましくは、直円柱である。キャピラリー9の出口において、断面積は、好ましくは0.001〜1mm2であり、より好ましくは0.01〜0.1 mm2であり、最も好ましくは0.01〜0.05mm2である。キャピラリー9の長さは、好ましくは25mm未満であり、より好ましくは12mm未満であり、最も好ましくは6mm未満である。
【0039】
製剤の粘度は、好ましくは1〜50センチポアズであり、より好ましくは1〜10センチポアズであり、最も好ましくは1〜5センチポアズである。開口部6からオリフィス10までの距離は、好ましくは1〜50mmであり、より好ましくは5〜25mmであり、最も好ましくは10〜20 mmである。送達速度は、好ましくは0.1〜500μL/sであり、より好ましくは1〜250μL/sであり、最も好ましくは3〜100μL/sである。
【0040】
各々が上記の特性を有する任意の数のオリフィス/キャピラリー対を同時に使用することができる。薬学的に許容される任意の担体を製剤に使用することができるが、好ましくはエタノールまたはエタノール/水混合液を含み、より好ましくは水を含む。好ましくは、薬物は溶液状態であるが、懸濁液状態であってもよい。溶解度の悪い化合物は、シクロデキストリンを含むが、これに限定されない種々の添加剤を使用して溶液内に配置することができる。担体内の薬物量は、好ましくは0.1〜500mg/mLの範囲内であり、より好ましくは1〜100mg/mLの範囲内であり、最も好ましくは、10〜75mg/mLの範囲内である。
【0041】
図3は、投与間に保存中の製剤の無菌性を確実にする機構の一態様を示し、ここでは閉鎖されて保存されている状態で示す。圧力変化に応答して可動性のダイヤフラム13または他の要素はプレナム3に接触しており、プレナム3の圧力に応答性である。プレナム3の圧力が送達中に第1の圧力から第2の圧力に低下すると、ダイヤフラム13は、連結14を介してオリフィス10を覆うカバー15を引く。
【0042】
シール12は、圧力が投与間に維持される程度に十分に長い間耐圧フィットを確実にする。シール12は、図1および3において断面図で示しポリマー物質の柔軟なリングを含んでもよい。第2の圧力は、ダイヤフラム13の移動が最大になるように、第1の圧力から相対的に異なる(例えば、2、3または4倍以上大きい)ことが好ましい。第2の圧力は、漏洩量およびシール12の必要量が最小になるように最小にされることが好ましい。第2の圧力は、好ましくは50bar未満であり、より好ましくは10bar未満であり、最も好ましくは5bar未満である。圧力は、好ましくは少なくとも1日、より好ましくは少なくとも1週間、最も好ましくは少なくとも1ヶ月間は許容されるレベルに維持される。本発明の装置は安定性を確実にするためのこの加圧された状態で使用前に集荷および保存してもよいが、未加圧状態で、使用前に無菌オーバー・ラップ状態で保存および出荷することが好ましい。
【0043】
図4は、エアロゾル11が生成されている本発明を示す。プレナム3の高い第1の圧力のために、オリフィス10を形成して、ガスおよび液体の流動ならびにエアロゾル11の外側方向の流動を可能にするために、カバー15が外側方向に移動するように、ダイヤフラム13は膨張される。第1の圧力は、好ましくは2barより大きく、より好ましくは10barより大きく、最も好ましくは25barより大きい。好ましい一態様において、ガスはCO2であり、圧力は25〜70barである。
【0044】
作動手段をダイヤフラム13としてここで略図で示すが、蛇腹、伸縮バネ(機械的またはガス)付きピストン、圧力変換器および電気機械的手段等を含む、プレナム3の圧力に応答する他のアクチュエーターを使用してもよい。
【0045】
図9は、ダイヤフラム13、連結15、カバー15、およびシール12をキャピラリー9の機械的一方向弁35と交換した本発明の簡単な態様を示す。一方向弁35は、キャピラリー9の入口37を含むキャピラリー9の任意の場所に配置されてもよいが、好ましくは、キャピラリー9の全長の無菌性を確実にするためにキャピラリー9の出口38に配置される。一方向弁35は、製剤が第1の圧力にあるとき製剤の流動を可能にするが、製剤の圧力が、第1の圧力より小さい第2の圧力に低下すると、閉鎖し、汚染物質の侵入を防止する。一方向弁35は、製剤が加圧されている場合のみ開いて、流入を防止するので、この一方向弁35を用いて容器内の液体を上記とほとんど同じ方法で無菌状態に維持する。しかし、それは、プレナム(3)の内部が無菌状態に維持されないとい欠点を有する。
【0046】
図5は、大規模な漏洩があった場合、シール12が機能しなかった場合または装置が使用されないで予想外に長期間放置された場合に生じる可能性のある、無菌性が損なわれた可能性がある事象において装置の使用をロックアウトする機構の一態様を略図で示す。圧力が、第2の圧力より小さい所定の第3の圧力以下に低下すると、ロッキング要素16および17が係合して、装置のさらなる作動をロックアウトするような位置にダイヤフラム13はカバー15を移動する。ダイヤフラム13は、第3の圧力において凹形状から凸形状に遷移して、カバー15に利用可能な移動量を増加する双安定装置であってもよい。
【0047】
別の態様において、圧力が第3の圧力に低下すると、キャニスター(図1の1)が押圧されることがないように、計量弁(図1に示す2)はロックアウトされる。圧力変換器および電気機械的ロックアウト手段を含む数多くの他の態様を使用してもよい。本発明は、使用しなかったことにより本発明の装置が有効期限を大幅に超えた場合には、本発明の装置は使用不可能になるというさらなる利点を有する。
【0048】
図6は、無菌性が損なわれた可能性があり、ユーザーは本発明の装置を使用するべきではないことをユーザーに通知する本発明の一態様を示す。圧力が、第2の圧力より小さい所定の第3の圧力以下に低下すると、ダイヤフラム13は、標的、旗またはマーキング18が窓19からみえる位置にカバー15を移動する。旗は任意の色であってもよいが、赤、橙または黄色の色が好ましい。圧力変換器および光線または音などの信号を活性化するエレクトロニクスを含むユーザーに警告する多数の他の方法を使用してもよい。
【0049】
実施例1
製剤を軽量するためにガスを使用し、次いでエアロゾルを生成するために同一のガスを使用するシステムを開発した(図7)。この場合において、ガスは、外部タンク(21)に含有される空気であった。システムに送達されるガスは圧力調節器(22)によって60 PSIに調節された。次いで、ガスを空気圧スイッチ(Kuhnke部品番号75.022.27.22)(23)に送達する。スイッチ(23)のボタン(33)を押すと、管(24)を介してガスが空気圧タイマー(Kuhnke部品#51.006.00)(25)に流動した。ノブ(34)を使用してタイマー(25)を22秒に設定した。22秒後、タイマー(25)は、管(26)を通してガスをスイッチ(23)まで流動させ、ガスの流動をターン・オフにし、それによって迅速なターン-オフのためにシステムを通気する。22秒間ガスは流動し、製剤(28)は35 PSIに加圧され、該35 PSIは調節器(27)によって制御された。また、エアロゾル化ガス流動圧も調節器(29)によって30 PSIに制御された。加圧された製剤(28)はキャピラリー(30)を通過させられ、ガスおよび液体はオリフィス(31)から流出してエアロゾル(32)を形成した。エアロゾル化ガス圧および製剤圧を測定するための圧力変換器ならびに液体の流動を測定するためのキャピラリー(30)の圧力差変換器は示していない。
【0050】
結果を図8に示す。〜22秒のエアロゾル生成期間を与えるために、ガス圧、液体圧およびガス流動速度(任意の単位)を全て制御する。
【0051】
本発明は本発明の具体的な態様を参照して記載されているが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更を加えることができ、等価物と交換できることが当業者によって理解されるべきである。また、本発明の目的、精神および範囲に、特定の状況、材料、物質の組成、過程、過程段階を適合させるため多数の改良を加えることができる。このような改良は全て添付の特許請求の範囲内であることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明は、添付の図面と合わせて読むと、詳細な説明から最もよく理解される。慣習によると、図面の種々の特徴は実物大ではないことが強調される。一方、種々の特徴の寸法は、明確にするために、任意に拡大または縮小される。図面には以下の図面が含まれる:
【図1】薬物送達システムに組み入れられた本発明の一態様による概略図である。
【図2】容器から所定の量の製剤を送達するための本発明の一態様の略図である。
【図3】保存中の無菌状態で示される容器の無菌性を確実にするための本発明のシステムの一態様の略図である。
【図4】加圧された送達状態で示される容器の無菌性を確実にするための本発明のシステムの一態様の略図である。
【図5】無菌性が損なわれた状態で示されている、無菌性が損なわれた可能性がある事象において製剤の送達を防止するための本発明のシステムの一態様の略図である。
【図6】無菌性が損なわれた状態で示されている、無菌性が損なわれた可能性がある事象においてユーザーに通知するための本発明のシステムの一態様の略図である。
【図7】空気圧タイマーを使用してエアロゾルの量を制御するために実施されるシステムの略図である。
【図8】図7のシステムを用いて実施されるガスおよび液体圧力ならびに液体流速および期間のグラフである。
【図9】キャピラリーに一方向弁を使用することによって無菌性が維持されている別の態様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ガス容器;
作動時に容器から一定量のガスを放出することができる要素;
薬学的に活性な薬物の製剤を保持する容器;
容器と流体的に接続しているチャネル;および
加圧ガスが容器からチャンバーに放出されるとき、容器が圧縮され、製剤が一定の送達速度でチャネルから排出されるように、容器と物理的に接触しており、加圧ガス容器とガス流動的に接続しているチャンバー
を含む、薬物送達装置。
【請求項2】
要素が計量弁であり、製剤の送達速度が0.1〜500μL/sの範囲内である、請求項1記載の薬物送達装置。
【請求項3】
製剤の送達速度が1〜250μL/sの範囲内である、請求項2記載の薬物送達装置。
【請求項4】
製剤の送達速度が3〜100μL/sの範囲内である、請求項3記載の薬物送達装置。
【請求項5】
チャンバーが機械的連結に加圧されるとき、容器およびチャネルを取り囲んでいる密閉領域を開くために、チャンバーのダイヤフラム要素と物理的に接触している機械的連結
をさらに含む、請求項1記載の薬物送達装置。
【請求項6】
容器の加圧ガス内に、CO2、N2O、およびヒドロ-フルオロ-アルカンから選択される液体を含む、請求項5記載の薬物送達装置。
【請求項7】
約2グラム〜約50グラムの量の液体形態の加圧ガスが存在する、請求項6記載の薬物送達装置。
【請求項8】
容器が、ポリエテレン(polyetherene)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエテン(PCTFE)、アルミニウム、ナイロン、およびポリエステルから選択される柔軟な材料を含む、請求項1記載の薬物送達装置。
【請求項9】
計量弁が、反復作動ごとに実質的に同じ量のガスを計量する、請求項2記載の薬物送達装置。
【請求項10】
チャネルに対して外側の流動方向に位置決めされているマウスピース
をさらに含む、請求項2記載の薬物送達装置。
【請求項11】
チャネルが直円柱である、請求項1記載の薬物送達装置。
【請求項12】
円柱が、約0.01〜0.05mm2の断面積および約1mm〜約12mmの長さを有する、請求項11記載の薬物送達装置。
【請求項13】
計量弁を含む加圧ガス容器を取り付けるためのドッキングユニット;
薬学的に活性な薬物の製剤を保持する容器;
容器と流体的に接続しているチャネル;および
容器と物理的に接触しており、ドッキングユニットとガス流動的に接続しているチャンバー
を含む、薬物送達装置。
【請求項14】
ドッキングユニットに接続している加圧ガス容器
をさらに含む、請求項13記載の薬物送達装置。
【請求項15】
容器からの流出を可能にするが、容器内への流入を可能にしないチャネルの一方向弁
をさらに含む、請求項13記載の薬物送達装置。
【請求項16】
チャンバーが加圧されるとき、容器およびチャネルを取り囲んでいる密閉領域を開くために、可動式要素が機械的連結を動かすように、チャンバーの可動式要素に接続している機械的連結
をさらに含む、請求項13記載の薬物送達装置。
【請求項17】
チャンバー圧が所定のレベル未満に低下すると、チャネルからの薬物の送達を防止するような様式で領域を密閉するように位置決めされ構成されているチャンバーに接続しているロック-アウト連結
をさらに含む、請求項13記載の薬物送達装置。
【請求項18】
チャンバー圧が所定の期間にわたって所定のレベル未満に低下すると、警告連結が無菌性破綻警告信号を示すよう動くように位置決めされ構成されているチャンバーに接続している無菌性破綻警告連結
をさらに含む、請求項13記載の薬物送達装置。
【請求項19】
キャニスターからチャンバー内に加圧ガスを放出する段階;
チャンバーに接続している可動式要素を移動するようにチャンバーの圧力を第1の圧力から第2の圧力量に変更する段階;
薬物製剤の容器からの薬物製剤の排出を制御するように出口オリフィスに対して一定の方向に密閉要素を強要する段階
を含む、薬物の無菌性を維持する方法。
【請求項20】
圧力の変更が低下であり、密閉要素が、排出を防止することによって排出を制御する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第1の圧力の液体製剤を送達する段階;
第2の圧力の液体製剤を保存する段階を含み、
第2の圧力が取り巻いている周囲圧より大きい、
薬物容器内の無菌性を維持する方法。
【請求項22】
第2の圧力が50 bar未満である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第2の圧力が10 bar未満である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
第2の圧力が5 bar未満である、請求項23記載の無菌容器。
【請求項25】
空気圧タイマー;
マルチドーズ容器からアトマイザーに製剤を送達する機構;
製剤をアトマイザーに送達するキャピラリー;および
製剤が第1の圧力に加圧されると、製剤がアトマイザーに流動することができるように構成されている一方向弁を含み、
一方向弁は第1の圧力未満の第2の圧力で閉鎖する、薬物送達装置。
【請求項26】
製剤が液体製剤である、請求項25記載の機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−515606(P2008−515606A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536861(P2007−536861)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/036755
【国際公開番号】WO2006/042297
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(397065387)アラダイム コーポレーション (10)