説明

液体麻酔薬カートリッジおよび気化器

気化器およびカートリッジシステムを開示する。気化器は、1つだけよりもむしろいくつかの異なる液体麻酔材料を使用してもよいという点で、汎用気化器と見なされてもよい。カートリッジは、エンドユーザによって補充されるよりもむしろ、使用後に処分される使い捨てカートリッジであってもよい。カートリッジは、このカートリッジによって運ばれる液体麻酔材料の種類等のカートリッジに関する情報が、気化器に伝達されてもよいように、カートリッジ内に1つ以上のメモリデバイスを有してもよい。気化器/カートリッジシステムは、気化器が、カートリッジの特定の使用セッション中に消費された液体麻酔材料の量等のカートリッジメモリ内の情報を更新することを可能にするように、実装されてもよい。気化器は、気化器の動作に関する情報とともに仮想ログブックを維持してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下、2008年3月28日に出願された「Universal Anesthesia Administration System Consisting of Electronic Vaporizer with Disposable Cartridges」というタイトルの米国仮特許出願第61/040,619号の優先権を主張し、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、概して、麻酔の供給に関する。より具体的には、液体形態の麻酔材料からの蒸気を提供する精密気化器に関する。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
現在使用されている吸入麻酔薬のほとんどは、大気圧および室温で液体である。これらの液体麻酔材料は、麻酔をかけられる患者に提供されるガスで使用するための蒸気に変換される必要がある。多すぎる麻酔は、患者にとって有害になる可能性があり、少なすぎる麻酔は、患者が手術中に完全に麻酔されていない状態を引き起こし得ることから、気化器は、エンドユーザによって要求される特定の量に従って蒸気を提供することが重要である。
【0004】
気化器に関して考えられるさらなる問題は、気化器が警告なしに液体麻酔材料を使い果たし、エンドユーザが状況を迅速に改善する準備ができておらず、患者が十分に麻酔されていない状態を引き起こし得ることである。
【0005】
多くの気化器システムが、エンドユーザが液体麻酔材料を保持する貯蔵器を補充することを可能にすることから、強力な液体麻酔材料が気化器または貯蔵器の外側に漏れ、それによって手術室内の周囲空気を汚染し得るリスクがある。また、貯蔵器を補充する工程中に、液体麻酔材料が気化器内の管に入る可能性があり、正確に計量された蒸気に対して大量の液体麻酔材料を含有する液滴が患者に提供されるガスに入り、それによって患者に提供される麻酔薬の量の急上昇をもたらし得るリスクもある。
【0006】
気化器が多くの異なる液体麻酔薬に対して存在する一方で、これらの気化器は、薬剤に固有である。したがって、病院は、多くの異なる液体麻酔薬とともに使用され得る「汎用」気化器がないことから、該病院で使用される各麻酔薬に対する気化器を維持する必要がある。
【0007】
既存の気化器に関する一般的な問題は、大気圧の差の補正の不足である。かなりの標高で運営している病院は、界面近くで運営されている病院と比較して大気圧の差を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(本発明の概要)
気化器およびカートリッジシステムを開示する。気化器は、1つだけよりもむしろいくつかの異なる液体麻酔材料を使用してもよいという点で、汎用気化器と見なされてもよい。カートリッジは、エンドユーザによって補充されるよりもむしろ、使用後に処分される使い捨てカートリッジであってもよい。カートリッジは、このカートリッジによって運ばれる液体麻酔材料の種類等のカートリッジに関する情報が、気化器に伝達されてもよいように、カートリッジ内に1つ以上のメモリデバイスを有してもよい。気化器/カートリッジシステムは、気化器が、カートリッジの特定の使用セッション中に消費された液体麻酔材料の量等のカートリッジメモリ内の情報を更新することを可能にするように、実装されてもよい。
【0009】
気化器は、気化器の動作に関する情報とともに仮想ログブックを維持してもよい。特定の患者への麻酔蒸気の特定の供給に対する気化器の動作に関する情報は、他の関連医療記録とともに記憶するために、気化器の外側の場所に伝達されてもよい。
【0010】
本発明の概要は、本文書内の広範な考察において提供される多くの教示およびそれらの教示の変化形の包括的なリストであることはなく、本明細書内に開示される概念を紹介するよう意図されている。したがって、本発明の概要の内容は、以下の特許請求の範囲の限定として解釈されるべきではない。
【0011】
本発明の他のシステム、方法、機能、および利点は、以下の図面および詳細な説明の考察によって当業者に明らかであるか、または明らかになる。全てのそのような追加のシステム、方法、機能、および利点は、添付の特許請求の範囲内に含まれ、かつそれによって保護されることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、以下の図面を参照してよりよく理解することができる。図面内の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を例示することに重点を置いている。さらに、図面中、同様の参照番号は、異なる図面全体を通して対応する部分を示す。
【図1】図1は、気化器およびカートリッジを使用するための方法のフローチャートである。
【図2】図2は、1次カートリッジを交換する方法のフローチャートである。
【図3】図3は、麻酔蒸気を運ぶガスの生成で使用される構成要素の一実施例を示す。
【図4】図4は、気化器制御システムと通信している構成要素を示す。
【図5】図5は、1次およびスペアカートリッジの両方を有する気化器の正面図である。
【図6】図6は、1次およびスペアカートリッジの両方を有する気化器の上面図である。
【図7】図7は、気化器の背面図である。
【図8】図8は、1次およびスペアカートリッジの両方を有する気化器の左側面図である。
【図9】図9は、1次およびスペアカートリッジの両方を有する気化器の右側面図である。
【図10】図10は、1次およびスペアカートリッジの両方を有する気化器の底面図である。
【図11】図11は、1次およびスペアカートリッジの両方を有する気化器の上面、左側面、および正面の斜視図である。
【図12】図12は、1次およびスペアカートリッジの両方を有する気化器の上面、右側面、および正面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
実装の実施例の以下の説明において、本明細書の一部を形成し、例示目的で利用され得る本発明の特定の実装を示す、添付の図面を参照する。他の実装が利用されてもよく、本発明の範囲から逸脱することなく構造的な変更が加えられてもよい。
【0014】
本発明は、液体麻酔材料からの蒸気の生成のための方法に関する。制御された量の麻酔蒸気を有するガスの流れが当業者に既知の機器に提供され、該機器が、外科手術の一部として麻酔を受ける患者に麻酔を提供する。
【0015】
電子気化器および液体麻酔材料が装填されたカートリッジを使用する方法を説明した後に、挿入されたカートリッジを有する電子気化器の実施例を提供する。当業者は、予め装填されたカートリッジの特定の形状に関して提供される実施例が、本発明の教示に従って修正されてもよく、それによって該カートリッジが、本発明に関連する利点のいくつかまたは全てを提供する一方で、開示されるカートリッジとは異なって見えることを認識するであろう。
【0016】
(使用方法)
カートリッジおよび気化器を利用する方法を、図1に記載される工程として示す。
【0017】
(ステップ1010−気化器を接続する)
電子気化器は、麻酔機器のシステムに接続される。麻酔システムは、新鮮ガス供給、気化器、および呼吸回路として高レベルで要約することができる。多くの新しいシステムは、特定の患者に提供される麻酔に関する幅広い情報を収集および記憶し、それを手術に関する患者の記録の一部にするために、麻酔情報管理システム(AIMS)とのデータインターフェースを有する。多くのシステムは、1つの気化器のみが任意の所与の時間に蒸気を提供していることを確実にするために、いくつかの気化器ユニットおよび連動装置を有するシステム等の多くの追加の安全機能および冗長性を有する。麻酔システムが一連の構成要素で作られているため、構成要素を収容するバックバー等の標準取り付けシステムがある。
【0018】
2つ以上の気化器が、呼吸回路に進むガス流に蒸気を同時に提供することを防止する一方で、一連の気化器が所与の麻酔システムで使用され得るように、本発明の1つ以上の教示に従って製造される気化器は、バックバーに取り付けられる容量を含み、標準連動装置システムと協働してもよい。限定ではなく一例として、これは、Selectatec(登録商標)ブランドバーを含み、Selectatec(登録商標)互換性連動装置システムと協働し得る。
【0019】
気化器は、一時的な停電の影響を最小限に抑えるために搭載バッテリを有してもよい。気化器は、気化器の動作および気化器に関連する任意の再充電可能バッテリの充電に必要な電力を提供するために、電気コンセントおよび電力供給と接続するためのコードを有してもよい。
【0020】
(ステップ1020−カートリッジを選択する)
特定の液体麻酔材料が予め装填されたカートリッジが、外科手術で使用するために選択される。カートリッジは、内部に含有される液体麻酔材料の視覚指示をエンドユーザに提供するために使用される色を有してもよい。いくつかのシステムは、単一の液体麻酔材料を使用するように適合されてもよい。所与の液体麻酔材料に対して、液体は、蒸気が液体および温度の関数である飽和蒸気圧に達するまで、液体からの分子をガス中に放出する傾向を有する。飽和蒸気圧の予測可能性(使用される液体、および液体の温度、加熱された温度、ならびに周囲空気圧力に基づく)は、麻酔蒸気を含有するキャリアガスの作成を可能にする。
【0021】
キャリアガスは、呼吸回路に提供される産出物を作成するために、バイパスガス(気化チャンバに入らない)と混合されてもよい。
【0022】
カートリッジは、熱制御された気化システムとともに使用され得る、任意の液体麻酔材料を含有してもよい。本発明での使用に好適であり得る液体麻酔材料の実施例としては、ハロタン、エンフルラン、イソフルレン、デスフルラン、およびセボフルランが挙げられる。
【0023】
(ステップ1040−カートリッジを装填する)
カートリッジは、1次カートリッジになるように、気化器カートリッジ空洞に装填される。装填工程は、揮発性液体麻酔材料が気化し、周囲空気に麻酔を提供するのを防いでいた気密シールを開ける。カートリッジと気化器ユニットとの間の接続は、カートリッジと係合するためにユーザによって難なく接続が確立され得るくらい単純かつ確実であるように実装されてもよく、接続は、カートリッジが除去される時に、多くの自転車および自動車のタイヤに使用されるシュレーダーバルブと同じくらい単純かつ確実に閉鎖する必要がある。
【0024】
(ステップ1050−1次カートリッジからの情報を受信する)
電子気化器は、1次カートリッジ内の特定の液体麻酔材料が挙げられるがこれに限定されない、1次カートリッジの内容物に関する関連情報を、1次カートリッジから直接受信することが可能であることが好ましい。1次カートリッジメモリから気化器に伝達され得る他の情報としては、ロット番号、有効期限、および工場で挿入された液体麻酔材料の量が挙げられる。当業者は、同一の機能性を提供するために、又は追加の機能性を提供するために、他のパラメータが1次カートリッジ上に記憶され、気化器によって使用され得ることを認識するであろう。例えば、カートリッジの作成日は、作成日および他の関連情報に基づいて有効期限を決定し得るシステムによって使用され得る。
【0025】
随意で、気化器への挿入時に、気化器は、1次カートリッジが気化器に挿入されたことを1次カートリッジ上のメモリに伝達することができ、1次カートリッジが気化器から除去され、その後、この気化器または別の気化器に挿入されたなら、この情報を1次カートリッジ内に記憶させ、後で伝達することができる。
【0026】
製造時に1次カートリッジに入れられた(または前回の使用後に1次カートリッジ内に残っている)液体麻酔材料の量を含む1次カートリッジからの情報は、気化器に対する仮想ログブックの一部として、タイムスタンプとともに記憶される。
【0027】
量は、立方センチメートル等の体積、重量、ミリリットル等の容量、または液体麻酔材料の量を記載するのに合理的な任意の他の測定値として表されてもよい。
【0028】
1次カートリッジからの情報は、従来の有線データバスで気化器に伝達されてもよく、またはRFID技術を介する等、無線で伝達されてもよい。RFID技術(無線識別)は、在庫管理のための幅広い用途で使用される。それら自体の電源を含有する能動デバイスを使用するRFID技術もあれば、受動デバイスにおける電力への依存なしにデータの転送をもたらす別の電力供給されたデバイスと相互作用する、受動RFIDデバイスを使用するRFID技術もある。
【0029】
無線通信は、ブルートゥース短距離通信、Wi−Fi、およびTexas Instruments,Inc.によって提供される、単純で低電力のネットワークのためのSimpliciTI(登録商標)ネットワークプロトコル等の幅広い独自プロトコルスタックを含む、幅広い技術およびプロトコルを包含する。
【0030】
(ステップ1060−情報を表示する)
1次カートリッジからの情報は、エンドユーザが見るために表示される。気化器は、液晶ディスプレイまたは他の好適なディスプレイ等の内蔵ディスプレイを有してもよい。1次カートリッジの挿入後に表示され得る1次カートリッジからの情報の実施例としては、1次カートリッジ内に存在する液体麻酔材料が挙げられる。当業者は、液体麻酔材料の識別が、製品コードを使用して伝達されるが、1次カートリッジから提供される情報の完全なコピーではないテキスト文字列または他のフォーマットで表示され得ることを理解するであろう。
【0031】
(ステップ1070−特定の液体麻酔材料を使用する意図を確認する)
エンドユーザは、1次カートリッジ内に存在すると1次カートリッジが気化器に報告した特定の液体麻酔材料を、エンドユーザが使用することを意図するという確認を気化器に伝えるように要求され得る。液体麻酔材料の種類は、エンドユーザが該材料を使用する意図を認め得る前に、エンドユーザに表示されるか、または別様に伝達される。
【0032】
(ステップ1080−スペアカートリッジを収容する)
随意で、気化器筐体は、スペアカートリッジが手術室内で容器に入っていないよりもむしろ既知の箇所に存在するように、第2のカートリッジを収容するように適合されてもよい。カートリッジ用の2つの箇所を有する気化器において、気化器による使用のために定位置にあるカートリッジは、1次カートリッジと呼ばれてもよく、第2のカートリッジは、スペアカートリッジと呼ばれてもよい。カートリッジが現在使用されている以外は、2つのカートリッジは同一であってもよい。
【0033】
このスペアカートリッジは、消耗した、またはほぼ消耗した1次カートリッジが気化器との能動係合から除去され得、スペアカートリッジがその直後に挿入されるように使用可能であり得る。挿入は、スペアカートリッジを新しい1次カートリッジに変える。スペアカートリッジが使用される状態に配置された後、エンドユーザは、追加のカートリッジがそれらが格納される場所から運ばれ、新しいスペアカートリッジとして気化器に挿入されるように要求することができる。
【0034】
随意で、気化器は、スペアカートリッジが現在の1次カートリッジと同一の液体麻酔材料を有し、該液体麻酔材料が期限切れではないことを確実にするために、スペアカートリッジをチェックすることができるように、気化器に格納されるスペアカートリッジ上に記憶される情報を読み取るように構成されてもよい。1次カートリッジが気化器による使用から除去される際に、カートリッジの残りの体積を格納するシステムにおいて、気化器のスペアカートリッジ部分に配置されるスペアカートリッジは、どれくらいの体積がスペアカートリッジ上にあると考えられるか確かめられてもよく、この情報は表示され得る。
【0035】
(ステップ1090−エンドユーザの入力を受信する)
エンドユーザは、所望の流量および蒸気濃度を設定する。電子気化器は、カートリッジ内の液体麻酔材料および他の関連情報の指示を提供するためにディスプレイを有する。エンドユーザは、当該技術分野において既知の入力機構を通して電子気化器と相互作用する。実施例としては、ユーザがリスト内を上下に移動すること、および別様に一連のメニュー内で検索し、項目を選択することを可能にするボタンが挙げられる。あるいは、選択を表示すること、およびエンドユーザの入力を承認することの両方のために、タッチスクリーンが使用されてもよい。電子気化器は、ノブまたはダイアルの回転が、気化された液体麻酔材料の速度を入力することを可能にする、1つ以上の大型回転デコーダを含んでもよい。
【0036】
送達のための選択された麻酔の量に関するエンドユーザへの1次フィードバックは、ディスプレイスクリーン上で操作されてもよい。この概念を表す一般的な方法は、次に呼吸回路に提供される気化器ユニットの出口ガス中の蒸気の%濃度による。出口ガスは、気化器の動作部分に曝露され麻酔蒸気を運ぶキャリアガスと、気化器の動作部分に曝露されず、したがって麻酔蒸気を捕捉しないバイパスガスとの混合物である。
【0037】
ディスプレイは、使用中の液体麻酔材料、選択された投与速度、液体麻酔材料の推定残量、現在の投与速度において残存液体麻酔材料を消耗するまでの推定時間、使用中の液体麻酔材料に対する許容可能な投与速度範囲のスケールに対する現在の投与速度の比較、および気化器の現在の状態の指示を示すことができる。
【0038】
エンドユーザは、この手術を通じた平均投与速度、手術が開始されてからの時間を示す値、アラームログ、および気化器が最後に検査された時等の気化器のメンテナンスに関する情報を、ディスプレイが示すことを要求してもよい。
【0039】
投与量は、蒸気を運ぶキャリアガスおよびバイパスガスの混合物である、気化器の出口ガスに対する蒸気の割合で表されてもよい。
【0040】
1つの麻酔材料に使用される蒸気の割合が0〜5%の範囲であり得るが、別の麻酔材料に対しては、安全範囲が0〜20%であり得ることから、多くの異なる液体麻酔材料に対して1つのスケールを使用することは困難であり得るため、回転ノブのスケールを考えようとするよりもむしろ、ディスプレイに提供されるデータだけに依存することが最適であり得る。
【0041】
(ステップ1100−入力設定を確認する)
エンドユーザは、気化器が患者に必要とされるものを送達する準備をするように要求されていることを確認するために、気化器によって受信されるパラメータの範囲を再調査および確認する。
【0042】
(ステップ1110−仮想ログブックに書き込む)
これらの確認されたパラメータはまた、仮想ログブックが利用できるようにされる。パラメータとしては、使用中の液体麻酔材料、選択された投与量、該特定の液体麻酔材料に対する許容濃度、材料の残量(いかなるユニット又は形態であれエンドユーザに有用である)、気化器の現在の状態、および他のパラメータが挙げられ得る。表示され得る他のパラメータの実施例としては、液体麻酔材料の平均使用率、現在の平均使用率におけるこのカートリッジの使用に対する残り時間、手術の実行時間を示すタイマー、およびアラーム状態が挙げられる。通常手術中に必要ではないが、気化器はクエリされ、気化器が稼働した最後の時間および次の要求された稼働までの時間を表示してもよい(メンテナンスルーチンがどのように計算されるかに応じて暦日または作業時間で)。
【0043】
気化器によって計算および表示されるアラームは、従来技術の気化器に見られる従来のアラームを含んでもよい。アラームは、カートリッジが消耗の数分以内であるという警告を提供することができる。アラームは、気化器がバッテリ電力で動作するように停電を表わすことができる。アラームは、圧力の有意な低下等の入力ガスの状況の変化を表わすことができる。
【0044】
当業者は、情報のある特定の集合体が、外科手術中にデフォルト表示として表示される可能性があり、情報の他の組み合わせが、ユーザの入力に基づいて一時的な、または継続中の表示のために選択されてもよいことを認識するであろう。
【0045】
出口ガス中の麻酔材料の初期の所望の%濃度に関するエンドユーザからの入力を受信した後、所望の蒸気供給を提供するためにカートリッジが加熱される際、短時間の遅延が存在し得る。カートリッジが十分に加熱された後、呼吸回路への供給をもたらすようにキャリアガスおよびバイパスガスを移動させるために、1つ以上の制御弁が開く。エンドユーザの入力は、仮想ログブックが利用できるようにされる。
【0046】
(ステップ1120−1次カートリッジを加熱する)
カートリッジは、エンドユーザの要求を満たすのに必要な蒸気速度を提供するために、要求温度まで加熱される。カートリッジ内容物の加熱は、主に、伝導性熱伝達のための経路が確立されるように、カートリッジの外部に熱伝導材料によって接続されるカートリッジの内部に、液体麻酔材料を包囲する熱伝導材料(金属等)を有することによってもよい。
【0047】
熱が気化器から1次カートリッジ内に移動するための1つ以上の経路を提供することが設計目標である一方で、エンドユーザが使用後に消耗した、またはほぼ消耗した1次カートリッジを除去する際に、1次カートリッジの熱い部分に触れ得るリスクを最小限に抑えることが、もう1つの設計目標である。カートリッジは、電気の可変量が貯蔵器および貯蔵器内容物を温めるためにストリップ熱に提供され得るように、液体麻酔材料を保持する貯蔵器の外壁に内蔵される、電気ストリップ熱を有してもよい。カートリッジは、熱が気化器からカートリッジ内に流動するための導電性経路と、カートリッジの内部を温めるためのストリップ熱との組み合わせを使用してもよい。
【0048】
出口ガス中の麻酔材料の初期の所望の%濃度に関するエンドユーザからの入力を受信した後、所望の蒸気供給を提供するためにカートリッジが加熱される際、短時間の遅延が存在し得る。カートリッジが十分に加熱された後、呼吸回路への供給をもたらすようにキャリアガスおよびバイパスガスを移動させるために、1つ以上の精密制御弁が開く。
【0049】
1次カートリッジに熱を提供するための制御システムは、温度測定値に依存し得るが、圧力が、1次カートリッジが適度な蒸気を提供するために十分な熱を収容しているかどうかを示すことから、他の実装が、主に圧力測定値に依存するように構成されてもよい(1次カートリッジが消耗していないと仮定して)。
【0050】
蒸気圧は、カートリッジへの弁が開いており、気化器への弁が閉じている時に測定され得る。
【0051】
気化器の出力上の1つ以上の精密弁は、種々のパラメータおよびチェックが弁を開放することが適切であることを示す場合のみ、弁が開くように、気化器マイクロコントローラによって制御され得る。
【0052】
(ステップ1130−蒸気送達の開始)
蒸気送達の開始は、動作圧力および任意の測定された温度等の蒸気の作成に関するパラメータを含む、仮想ログブックにメモされる。一旦第1の入力が仮想ログブックに提供されると、システムは、設定時間間隔でアラーム、またはカートリッジの除去、または蒸気生成の停止を含む出力速度を変更する命令の受信等の、特定の事象に関して得られる測定値によって増大される、全ての重要なパラメータの周期的なスナップショット測定値を提供することを要求してもよい。
【0053】
(ステップ1140−低レベル警告)
圧力測定値が所望の蒸気速度に対して要求された圧力を下回り、温度測定値が、適度な熱が要求された蒸気速度を生成するために提供されていることを示す場合、システムは、本事例を消耗した、またはほぼ消耗した1次カートリッジを示すものと解釈し、所定のアラームを提供する。アラームは、エンドユーザの注意を引くための色、点滅、テキスト、および場合によっては可聴アラームの使用を含む、当業者に既知の任意の種類のアラームを使用して提供することができる。ほとんどのシステムは、低レベル警告の時間および詳細を仮想ログブックにメモする。
【0054】
多くの実装において、システムは、エンドユーザが1次カートリッジを交換するよう指示するために、消耗したカートリッジからの圧力低下が必要とされないように、エンドユーザが1次カートリッジ消耗までの推定時間を受信するように、1次カートリッジ内の初期の体積および手術中の総使用量に関してシステムが提供されたものを踏まえて、残存液体麻酔材料を計算する。アラーム警告は、システムがこの1次カートリッジからの所定数の時間(分)の蒸気供給を計算する時に、エンドユーザに提供されてもよい。このアラーム警報の供給は、仮想ログブックにメモされてもよい。追加のアラームが提供され、仮想ログブックにメモされてもよい。例えば、警告は、消耗まで10分の時に提供され、アラームが消耗まで5分の時、および消耗まで1分の時に再び提供されてもよい。
【0055】
何らかの理由で1次カートリッジが工場において所定量の液体麻酔材料を収容せず、カートリッジが予測よりも早くに消耗し得る可能性があるため、消耗までの時間を計算したシステムでさえ、消耗を示す圧力低下に関して監視し得ることに留意されたい。1次カートリッジを新しい1次カートリッジと交換するための工程を以下および図2で検討する。
【0056】
(ステップ1150−手術中の蒸気送達速度の変更)
気化器は、蒸気放出の正確な制御が、主に、制御弁のカートリッジ側からキャリアガス中に蒸気を放出するための制御弁の開閉によって制御されるように実装されてもよい。弁を横切る圧力差が既知であり、弁を通る流動特徴が既知であるため、制御弁のそれぞれの短い開放によってキャリアガスに放出される蒸気の量は、容易に計算される。提供される蒸気速度を変更させるというエンドユーザからの要求に応じて、制御弁は、より長時間開放される(より頻繁な開放またはわずかに長い期間の開放のある組み合わせによって)。1次カートリッジに対する温度設定点は、所望の蒸気圧を維持するために必要とされる場合、気化速度を増加させるために必要とされる場合、上方調整される。
【0057】
(ステップ1160−気化器を停止する)
蒸気速度をゼロに設定するというエンドユーザからの要求によって、それ以上の蒸気がカートリッジから収容されないように、制御弁は閉じ開放を停止する。1次カートリッジにはそれ以上の熱が提供されない。気化器が、残留液体麻酔材料が気化器内で凝縮するのに十分冷却される前に、気化器の内部を通じて新鮮なガスを送るために、パージサイクルが開始される。最終データセットは、仮想ログブックに送信される。
【0058】
(ステップ1170−1次カートリッジに周囲空気を提供する)
1次カートリッジが冷却されると、蒸気の一部が液体形態に戻るにつれて、液体麻酔材料の蒸気圧からの1次カートリッジ内の圧力は低下する。冷却カートリッジ内の有意な真空を有することを回避するために、圧力解放弁は、カートリッジに周囲空気が入ることを可能にする。圧力解放弁は、周囲空気への麻酔蒸気の漏れに対するさらなる保護を提供するために、逆止弁等の1つ以上の一方向弁と直列であってもよい。
【0059】
(ステップ1180−手術のための仮想ログブック入力を完了する)
蒸気供給の停止の要求は、気化器が蒸気の提供を停止する際の気化器の状態のスナップショットをトリガーしてもよい。随意で、この手術のための気化器の動作を要約するために、要約データセットが、仮想ログブックに送信されてもよい。仮想ログブックに提供される種々の複数の情報は、麻酔がこの気化器によって提供された時間の長さ、総麻酔量、および手術中の経時的な蒸気の供給速度を識別するために、ログブック解釈を可能にする。仮想ログブックは、応答の種類およびアラームの供給と応答の受信との間の遅延を含む、エンドユーザによるアラームへの応答とともに、アラームの時間および種類の指示を含有してもよい。
【0060】
(ステップ1190−1次カートリッジにデータを書き込む)
随意で、手術の終わりに使用されている1次カートリッジの使用に関する情報は、1次カートリッジ上のメモリに書き込まれてもよい。1次カートリッジに書き込まれる情報は、気化器に報告された液体麻酔材料の量からこの手術中の液体麻酔材料の計算された消費量を引いたものに基づいた、カートリッジ内に残った液体麻酔材料の推定量であってもよい。
【0061】
カートリッジが使用中であることを示すためにある特定の記憶場所を要求するシステムが、確立されてもよい。これらの記憶場所は、カートリッジの使用の終わりおよび除去前に、気化器によって更新され得る。1次カートリッジが、1次カートリッジのメモリへの最終更新の前に除去される場合、それでもなお、カートリッジメモリは、カートリッジが使用中であることを示し得る。次にこのカートリッジが気化器による使用のために挿入される時、気化器は、このカートリッジが最終メモリ更新前に早くに除去され、したがってカートリッジメモリ上の情報が不完全であり得ることを認識し得る。気化器は、該カートリッジを除去し、メモリの問題がないカートリッジを使用するよう、エンドユーザに警告するようにプログラムされてもよい。
【0062】
気化器システムおよび関連手術は、任意の前回の手術において、1次カートリッジとして使用されておらず、実際に蒸気を提供していないカートリッジのみを、各手術が使用するように、カートリッジを再利用しないように実施され得る。任意の液体麻酔材料が気化器に提供された後に、手術がカートリッジを再利用しない場合、カートリッジが蒸気を提供するために使用されたという指示以外、1次カートリッジに何も書き込む必要はない。カートリッジが使用されたという、1次カートリッジに書き込まれたメモは、1次カートリッジが気化器の1次カートリッジ部分に挿入されるとすぐに、または1次カートリッジから蒸気が出ることを可能にするために制御弁が開く時に、書き込まれ得る。いくつかの実装において、気化器は、カートリッジが新しくないと表示されるように、カートリッジが気化器に挿入されるとすぐに、または蒸気を生成するために使用されるとすぐに、カートリッジに書き込んでもよい。カートリッジが新しくなくなるとすぐに情報が書き込まれる場合、無線通信システムの範囲内ではあるが、カートリッジが除去されようとしている時、または除去されたばかりの時に、カートリッジに新しくないと書き込む必要はない場合がある。
【0063】
(ステップ1200−仮想ログブックをアンロードする)
この外科手術のための仮想ログブックは、データの移動のための多くの従来の方法のいずれかによって、この外科手術のための関連記録の一部になる。データは、気化器に関連するメモリ記憶デバイスに書き込まれてもよい。メモリデバイスは、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)フラッシュドライブであってもよい。仮想ログブックは、特定の患者に提供される麻酔に関する幅広い情報を収集および記憶し、それを手術に関する患者の記録の一部にするために、麻酔情報管理システム(AIMS)、またはいくつかの他の医療記録管理システムに、通信リンクを介して提供されてもよい。仮想ログブックが、メモリ記憶デバイスまたは通信リンクに関連するメモリのいずれかに成功裏に伝達された後、この手術のための仮想ログブックは、気化器から自動的に消去されてもよく、または消去されるように手入力で要求されるまで、気化器内に保持されてもよい。
【0064】
気化器のメンテナンス記録に必要ないくつかの情報は、別個のメモリに保持されてもよい。医療デバイスのメンテナンスに有用な項目は当業者に既知であるが、例示目的で、デバイスの使用時間、単に消耗した、またはほぼ消耗した1次カートリッジよりもむしろ、気化器に関する問題を示す、受信された任意のアラーム、ならびに気化器が稼働するべき時間および最後の稼働から気化器が経験した可能性のある問題の種類を決定するのに有用であり得る他の情報を含んでもよい。
【0065】
(1次カートリッジを交換する工程)
図2は、1次カートリッジを別のカートリッジと交換するための工程2000の一連のステップを含む。
【0066】
(ステップ2010−1次カートリッジを除去する)
1次カートリッジが消耗した、または消耗しようとしており、1次カートリッジを交換する時間であるという指示を受信した後、1次カートリッジは気化器から除去される。
【0067】
(ステップ2020−除去されたカートリッジの貯蔵器を周囲空気から隔離する)
エンドユーザが1次カートリッジを気化器から物理的に除去すると、エンドユーザは、カートリッジ内の残存麻酔材料から離れる必要がある。この隔離は、それが液体麻酔材料へのチャネルを解放する気化器との物理的な相互作用であり、シュレーダー弁の使用を介する等、カートリッジの除去がこのチャネルを閉鎖することから、自動的に生じ得る。
【0068】
(ステップ2030−気化器内の蒸気を周囲空気から隔離する)
エンドユーザからの任意の残存液体麻酔材料の隔離に加えて、システムは、気化器内の気化された麻酔材料を周囲空気から隔離しなければならない。気化器は、気化器内部から1次カートリッジ(または1次カートリッジが配置され得る空隙)に向かってではなく、気化器カートリッジから気化器内部への通過のみに、材料の流動を制限するために、1つ以上の一方向弁を有してもよい。
【0069】
制御システムが、気化器からの1次カートリッジの除去に気付くと、気化器とカートリッジとの間の制御弁は閉じる。この閉鎖した制御弁が、1つ以上の一方向弁に加えられる。
【0070】
(ステップ2040−1次カートリッジの除去がタイマーを開始する)
新しい1次カートリッジが所定期間内に挿入されない場合、パージガスを気化器に通すために、オートパージがトリガーされる。パージサイクルは、気化器が長時間新しいカートリッジを収容しないなら、気化器内の麻酔蒸気の凝縮を防止し得る。このタイマーは、ハードウェアまたはソフトウェアを使用した任意の従来の方法で実装されてもよい。選択された実装に応じて、タイマーである別個のデバイスがなくてもよい。
【0071】
(分岐2050)
タイマーがパージサイクルをトリガーする前に、新しい1次カートリッジが挿入される場合、ステップ2060に続き、そうでない場合は、システムをパージし、新しい1次カートリッジを待つ。
【0072】
気化器は、1つのカートリッジの除去と次のカートリッジの挿入との間の総時間を調べるように構成されてもよい。総時間がある特定の所定期間を超える場合、システムは、この新しい1次カートリッジが現行の手術の継続中に使用されていること(したがって、仮想ログブックを開くに進む)、またはそれが新しい手術の開始であり、エンドユーザが新しい手術を開始し、新しい仮想ログブックを開くために全ての要求された情報を入力しなければならないことのいずれかの確認をエンドユーザから求めてもよい。
【0073】
(ステップ2060−新しい1次カートリッジからの情報を読み取る)
この新しい1次カートリッジは、スペアカートリッジとして気化器の空洞内に位置していた可能性があるか、またはこの新しいカートリッジは、別の場所に格納されていた可能性がある。スペアカートリッジがそのメモリを読み取られ、液体麻酔材料および有効期限の一致に関してチェックされた可能性がある一方で、新しい1次カートリッジが気化器と短期間にわたって直接接触していないと、該カートリッジがスペアカートリッジと同一であることが確信されず、したがってある他のカートリッジと不注意に交換され得ることから、気化器がこの情報を再びチェックすることに留意されたい。
【0074】
(分岐2070−同一の液体麻酔材料であるか)
新しい1次カートリッジになる準備ができているカートリッジの内容物を読み取った後、気化器は、これが同一の液体麻酔材料の継続使用であるかどうかを決定することができる。そうである場合、工程はステップ2080に続く。
【0075】
逆に、新しい1次カートリッジが直前の材料と同一の液体麻酔材料を有しない場合、制御システムは、1次カートリッジと気化器の内部との間の制御弁を開放せず、気化器は、新しい1次カートリッジにいかなる熱も印加せず、その代わりに、液体麻酔材料の変更の確認を要求する。液体麻酔材料の変更があった場合、分岐2090において、エンドユーザは、この異常な交換を確認するよう求められる。
【0076】
(ステップ2080−カートリッジを加熱し、使用を開始する)
新しい1次カートリッジが直前の1次カートリッジで使用されたものと同一種類の液体麻酔材料を含有し、液体麻酔材料が使用に適切であると見なされる場合(有効期限を越えていない、または記憶された作成日からあまり離れていない等)、新しい1次カートリッジは、意図された速度で気化工程を開始するために熱に曝露される。制御システムが、新しい1次カートリッジが準備ができていることを示す場合、気化器は、新しい1次カートリッジからの蒸気を使用し、この蒸気を新鮮なガスと混合し、呼吸回路に混合物を提供し始めてもよい。
【0077】
ステップ2080は、カートリッジを交換する工程の正常な終了を示す。
【0078】
(ステップ2090−液体麻酔材料の変更の意図の確認に関する分岐)
エンドユーザは、麻酔材料の変更への注意を喚起され、この選択を確認するよう求められる。はいの場合、ステップ2100に進む。いいえの場合、システムをパージし、新しい1次カートリッジを待つ。
【0079】
場合によっては、単一の医療処置中の1つの液体麻酔材料から第2の液体麻酔材料への交換は、意図された選択ではない。交換を確認するように求められる場合、エンドユーザは、単に不適切なカートリッジを除去し、新しい1次カートリッジとなる異なるカートリッジを挿入し、直前の1次カートリッジによって提供されたものと同一種類のより多くの液体麻酔材料を提供する。材料の変更にもかかわらず新しいカートリッジを使用する意図を確認する代わりに、カートリッジを除去することは、いいえの答えとして扱われる。第3のカートリッジが取得および挿入される一方で、不適切な(第2の)カートリッジが蒸気を提供することなく除去される場合、適切なカートリッジを挿入するのに遅延が存在し、気化器が冷却し蒸気を凝縮させるリスクがあるため、気化器は、パージサイクルを強制するように設定されてもよい。
【0080】
比較的小さい液滴が、同一の液体麻酔材料の比較的大きい蒸気量と同じ量の液体麻酔を有するため、凝縮された液滴は、投与速度の計測を不正確にし得る。
【0081】
(ステップ2100 パージサイクル)
分岐2090において、ユーザがはいと答えた場合、パージサイクルが開始される。パージサイクル中、気化器カートリッジとの接続に近接して新鮮なガスを提供するために、制御弁が開放される。制御弁は、新鮮なガスが気化器の内部を通過し、パージ出口から出るために必要に応じて開放される。パージガスが気化器を出た後、パージガスは、いかなる残留蒸気も除去するために、当業者に既知の方法で処理されてもよい。パージサイクルは、2つの異なる液体麻酔材料の混合、または液体麻酔材料の液滴の非制御送達を最小限に抑えるために、気化器内部の液体麻酔材料の蒸気の凝縮を防止する。
【0082】
所定のパージの後、エンドユーザは、異なる液体麻酔材料を有する新しい1次カートリッジの使用に進んでもよい。第1の液体麻酔材料からの蒸気をパージするために、または呼吸回路を異なる呼吸回路と交換するために、呼吸回路への任意の要求された調整を行うことは、エンドユーザ次第であり得る。
【0083】
(サンプル配管および制御レイアウト)
本発明は、当業者によって種々の方法で実装されてもよいが、本発明の概念を効果的に伝えるために、サンプルレイアウトを図3に提供する。
【0084】
(気化中の1次ガスの流動)
圧力調整器206は、一方向弁218に接続される制御弁212に提供される新鮮なガス406の圧力を調整する。新鮮なガスは、気化器ループに向かう移動に制限される。接合部224において、一部のガスはバイパスガス412になり、一部のガスはキャリアガス418になる。キャリアガス418は、気化器部から捕捉される蒸気を運び、バイパスガス412は、気化器部を通過しない。バイパスガス412対キャリアガス418の比は、バイパスガス経路上の制御弁236およびキャリアガス経路上の制御弁272の相対位置によって制御されてもよい。
【0085】
新鮮なガス406の総流量(キャリアガス418およびバイパスガス412の両方)は、接合部224の直前に位置する流量計624で測定されてもよい。当業者は、もう1つの方法として、接合部224の直後に配置される2つの流量計を使用することによって、蒸気を取得する前のキャリアガス流量およびバイパスガス412を別々に測定するために、2つの流量計が使用され得ることを認識するであろう(デュアル流量計は図示せず)。
【0086】
バイパスガス412は、接合部242においてキャリアガス418と再結合するために、一方向弁230を出て制御弁236を通過する。接合部242から、流動は、一方向弁248および制御弁254を出て呼吸回路に方向付けられる。
【0087】
キャリアガス418は、接合部224から一方向弁266、制御弁272、制御弁304を通じて、および制御弁308が正常動作中に閉じており、パージサイクルに対してのみ開いている場合は、一方向弁278を通して移動する。接合部286において、キャリアガスは、カートリッジ400から蒸気を捕捉し、一方向弁290を通じて接合部242に進み、バイパスガス412と混合し、上記のように呼吸回路424に向かって移動する。
【0088】
蒸気は、熱源460からのカートリッジ400への熱の印加によってシステムに提供される。制御システムは、温度検知デバイス606を通じて加熱工程に関するフィードバックを受信してもよい。図3に示すように、工程が蒸気温度を制御することを目的としているため、温度センサ606は、開放したカートリッジ弁518と気化器弁284および282との間に配置されてもよい。蒸気温度に基づいて、熱源に提供される電力量は調整されてもよい。当該技術分野で既知のように、熱源は、熱源を通じる連続電力流量を増加させることによって、または蒸気温度を増加させるために、より大きい割合の時間、電力が熱源に提供されるように、定数源の負荷サイクルを変化させることによって調整されてもよい。
【0089】
蒸気は、液体麻酔材料の貯蔵器を出て、カートリッジ一方向弁512およびカートリッジ弁518を通過する。カートリッジ弁518は、カートリッジ400の1次カートリッジになるための位置への機械的挿入によって作動する。このカートリッジ弁518は、シュレーダー弁等の任意の好適な種類の弁であってもよい。
【0090】
一旦カートリッジ弁518が開くと、蒸気は、接合部286に達するように、一方向弁284および制御弁282を通じて流動してもよい。制御弁282が閉じている時、圧力センサ618は、液体麻酔材料506の気化に関連する圧力を検知する。圧力センサ612で測定された周囲空気圧力が、絶対圧力の計算を可能にするため、圧力センサ618における圧力測定は、絶対圧力よりもむしろゲージ圧力であってもよい。圧力センサ618によって検知される圧力は、さらなる熱が必要であるか、またはカートリッジ400が消耗しているかを決定するために、制御システムによって使用されてもよい。消耗したカートリッジは、所与の温度に対して予測圧力を有しない。
【0091】
(パージサイクル)
上記のように、気化器の動作中、パージサイクルを有することが望ましくあり得る。パージサイクルは、所定期間内の新しいカートリッジの挿入なしのカートリッジの除去後、または直前のカートリッジとは異なる液体麻酔材料を有するカートリッジの使用前が望ましくあり得る。
【0092】
パージサイクル中、一方向弁284は、蒸気含有ガスが気化器から周囲空気に出て行くことを防止する。
【0093】
バイパスガス412は、制御弁236の付近での液体麻酔材料の凝縮を回避するために、制御弁236を通じてゆっくりと流動し続ける。
【0094】
パージサイクル中、制御弁304は閉じており、制御弁308は、新鮮なガスが一方向弁284と制御弁282との間の接合部に送られるように開いている。パージガスは、通常カートリッジ400からの蒸気を含有する通路を通じて送られる。パージガスとして使用されている新鮮なガスは、一方向弁278または閉じた制御弁304を通過することができず、したがって、一方向弁290を通じて接合部242に進む。接合部242から、バイパスガス412およびパージガスの組み合わせが、一方向弁318および制御弁324を通じて、パージガスおよび他の麻酔薬含有ガスを処理する設備におけるパージガスシステム430に進む。
【0095】
(冷却カートリッジの通気)
気化器システムに蒸気を提供した後に、カートリッジ400が冷却すると、液体麻酔材料の一部は、蒸気状態から液体に戻る。蒸気が液体に戻ると、カートリッジが除去されている場合、カートリッジ弁518は閉じているため、カートリッジ400内の圧力は低下する。カートリッジが気化器内にまだ挿入されている時に、そのカートリッジ弁が開いているとしても、ガスがカートリッジ400に戻るための流路はなく、なぜならば、そのような移動は、一方向弁512、一方向弁284、および制御弁282によって防止されるためである。
【0096】
周囲空気に近い圧力436でカートリッジ内部を維持するために、圧力リリーフシステムが提供されてもよい。周囲空気圧力436とカートリッジ400の内部との間の差が、予め設定された限度を超える場合、カートリッジ圧力リリーフ弁524が開き、周囲空気が一方向弁530および圧力リリーフ弁524を通じてカートリッジ内部に流入することを可能にする。
【0097】
(気化器制御システム)
本発明を実施するための制御システムは、当業者に既知の種々の方法で実装され得る。以下に示す実施例は概念の例示であり、特定の例示が本発明のこれらの態様を実施する唯一の方法であることを意味するよりもむしろ、本発明のより詳しい説明を伝えることを意図されている。
【0098】
気化器制御システム806は、エンドユーザによって要求される麻酔蒸気の要求されたレベル(ユーザからの入力818として図4に示す)を満たすために、十分な量の蒸気を提供するように動作する。エンドユーザは、気化された液体麻酔材料の速度を入力するためのノブまたはダイアルの回転を可能にする、1つ以上の大型回転デコーダ、および他の入力デバイスを含む、種々のユーザインターフェースを介して、気化器制御システムと通信する。他の入力デバイスとしては、タッチスクリーン入力、キーパッドまたはキーボード、マウス、およびマイクからの入力を処理する音声認識ソフトウェアさえ挙げることができる。
【0099】
エンドユーザとの通信は、双方向でなければならない。制御システムからエンドユーザへの通信は、主に1つ以上の視覚表示であってもよい。潜在的に好適なディスプレイの一実施例は、液晶ディスプレイである。エンドユーザは、表示のためのある特定の情報の集合体を選択するために、種々のオプションを検索するためのある能力を有してもよい。気化器制御システムは、エンドユーザへのアラームまたは他の警告情報の供給に関連する視覚表示を提供するために、要求された情報を表示する現在の工程を中断する能力を有してもよい。アラームおよび他の状態情報はまた、1つ以上の色付き表示ランプによって伝達されてもよい。
【0100】
アラームおよび他の情報は、少なくとも部分的に、音声材料を提供するための、または気化器が準備ができていることを示すベル音等のアラームまたは他のマイルストーンを示す音を提供するための、1つ以上のスピーカまたは他のオーディオデバイスによって、エンドユーザに提供されてもよい。
【0101】
上記のように、気化器制御システム806は、カートリッジからの入力812を受信してもよい。入力は、デジタルデータの形態であってもよい。カートリッジから気化器制御システム806に提供されるこの情報は、有線または無線通信経路を介して、カートリッジ上のメモリデバイスからもたらされてもよい。通信経路は、RFID技術を使用してもよい。
【0102】
カートリッジからの入力812は、1次カートリッジになるように気化器内に配置されるカートリッジ内に存在する、特定の液体麻酔材料の識別を含んでもよい。カートリッジが作成された時またはカートリッジの期限が切れる時等の追加情報が伝えられてもよい。カートリッジは、カートリッジのシリアル番号またはロット番号等が考えられる、カートリッジ源に関する情報を含有してもよい。カートリッジは、工場においてどれくらいの液体麻酔材料がカートリッジに装填されたか、またはカートリッジ使用後にカートリッジに戻る推定体積を書き込むシステム内で動作した場合、どれくらいの液体麻酔材料がカートリッジ内に残るように計算されるのかを伝えてもよい。
【0103】
カートリッジ内に含有される液体麻酔材料の種類を記憶および伝達するためのカートリッジ内のメモリの使用は、含有される液体麻酔材料の種類を伝達するためのカートリッジの外側の色識別の使用を除外しないことに留意されたい。
【0104】
随意で、いくつかのシステムは、カートリッジ上のメモリに書き戻すように実装されてもよい。これは、カートリッジメモリへの出力のための出力848によって本図に表される。出力は、カートリッジ内の液体麻酔材の推定量、カートリッジの使用日時、および後日カートリッジを使用するかどうかを評価するのに、または特定の手術もしくは気化器デバイスで使用されたカートリッジを追跡するのに有用であり得る他の情報を含んでもよい。使用される無線通信システムの種類に応じて、カートリッジが無線通信システムの制限範囲内にとどまっている限り、最近除去されたカートリッジのメモリに書き込むことが可能であり得る。
【0105】
カートリッジからの入力812の一部としての液体麻酔材料の種類の識別は、気化器制御システム806が、適度な蒸気および蒸気生成が適切である場合に観察されるべき圧力を提供するための標的温度を知るために、液体麻酔材料830に関する記憶された情報にアクセスすることを可能にする。
【0106】
気化器制御システムは、熱源460の制御、ならびに制御弁に連通した制御弁位置のセット854を介した種々の制御弁の動作によって、既知の種類の液体麻酔材料に必要とされる蒸気を生成する。いくつかの制御弁は、完全に開いているか、あるいは完全に閉じているように作動する傾向がある。他の制御弁は、バイパスガス412およびキャリアガス418の比を決定する制御弁272および236等、部分的に開放した位置を有するように作動してもよい。
【0107】
気化器制御システム806は、蒸気圧センサ618、周囲空気圧力センサ612、カートリッジ蒸気の温度を監視する温度センサ606、および新鮮なガス406の総流量を測定する流量計624等の1つ以上のセンサからの入力を受信してもよい。種々の制御弁の制御は、バイパスガス412対キャリアガス418の比だけでなく、圧力調整器206の所与の圧力設定に対する気化器に入る新鮮なガスの総量の両方の制御を可能にする。
【0108】
上記のように、仮想ログブック824は、この特定の手術中の気化器動作に関する情報とともに維持されてもよい。気化器ログブックは、蒸気生成に加えて、エンドユーザとの相互作用に関する情報を含んでもよい。仮想ログブックに伝達されるエンドユーザとの相互作用は、タイムスタンプ、ならびにタイムスタンプを含むエンドユーザに伝達される任意のアラームまたは他の状態変更を含む、エンドユーザによって行われる要求を含んでもよい。
【0109】
仮想ログブック824からの情報は、メモリ媒体ドライブ842を介して、リムーバブルメモリ媒体に伝達されてもよい。1つの好適なリムーバブルメモリ媒体は、USBフラッシュドライブである。完了した手術に関する関連情報を、メモリ媒体ドライブ842を介して仮想ログブック824からリムーバブル媒体に書き込んだ後、情報は、気化器制御システムの仮想ログブック824からすぐに削除されてもよく、またはその後にデータの必要性があった場合にバックアップとして機能するように、ある一定の期間気化器内に記憶されてもよい(リムーバブルメモリデバイスが何らかの方法で置き間違えられた、または破損した場合等)。
【0110】
仮想ログブック824からの情報はまた、情報管理通信リンク836を介して、気化器の外側に位置する情報管理システムに伝達されてもよい。情報管理通信リンクは、有線または無線接続を介して実装されてもよい。
【0111】
(スペアカートリッジからの入力)
上記のように、気化器は、気化器制御システム806が、1次カートリッジが消耗した、またはほぼ消耗した時に使用されるカートリッジのある特定の関連特性を前もって知ることができるように、スペアカートリッジ872からの入力を受信するように構成されてもよい。スペアカートリッジ872から読み取られる情報は、スペアカートリッジ内と現在の1次カートリッジ内との液体麻酔材料間の不一致が、この不一致が意図されたものではなかった場合に、スペアカートリッジを使用する必要性の前に十分に識別され得るように、液体麻酔材料の種類を含んでもよい。スペアカートリッジから読み取られる情報は、スペアカートリッジの期限が切れていないかを評価するのに十分な情報を含んでもよい。スペアカートリッジから読み取られる情報は、カートリッジ内に存在する液体麻酔材料の量を含んでもよい。そのような情報は、システムが、所与の液体麻酔材料の種類内で異なる量の液体麻酔材料を伴うカートリッジを使用するように実装される場合に有用であり得る。そのようなシステムにおいて、液体麻酔材料のみを知ることは、カートリッジ内の液体麻酔材料の量を知るには十分ではない。
【0112】
(安全性強化)
エンドユーザがカートリッジを補充する工程を回避することによって、この補充工程中に、過充填されたカートリッジが気化器の内部に液体麻酔材料を入り込ませ得るリスクを排除する。
【0113】
(カートリッジ除去の検出)
1次カートリッジの除去は、当業者に既知の多くの従来の方法のうちの1つを使用して検出され得る。カートリッジの除去を検出するための一方法は、蒸気圧を提供する1次カートリッジがもはやないことから、蒸気圧センサ618において測定される圧力が、圧力測定デバイス612において測定される周囲空気圧力436と等しい時である。
【0114】
(パージサイクル)
パージサイクルの動作中、気化器制御システム806は、制御弁位置854をパージ構成に設定する。気化器制御システム806は、弁のパージ構成が所定期間維持されることを確実にするために、タイマー876を使用してもよい。
【0115】
気化器内の蒸気凝縮の可能性を最小限に抑えるか、または排除するために、パージサイクルを迅速に開始することが望ましくあり得る。
【0116】
気化器制御システム806は、1次電力供給(図示せず)の一時的中断が気化器制御システム806の動作に影響しない、または揮発性メモリ内に記憶されるデータの損失を引き起こさないように、1つ以上のバッテリ882に接続されてもよい。
【0117】
ブロック888に概念的に表されるように、気化器制御システム806は、他の機能を達成するために、他のプログラムおよびメモリへのアクセスを有してもよい。
【0118】
(カートリッジおよび気化器の実施例)
図5は、1次カートリッジ400およびスペアカートリッジ402の両方を有する、気化器3000の正面図である。ディスプレイ860は、ユーザ入力制御3006および回転入力3012の正面に隣接する。
【0119】
図6は、1次カートリッジ400およびスペアカートリッジ402の両方を有する、気化器3000の上面図である。回転入力3012は、麻酔蒸気の送達速度の変更の要求等、気化器制御システムにユーザ入力を伝えるために使用されてもよい。
【0120】
回転デコーダ3012は、任意の後続の回転位置の変更が、偶然接触によってではなく意図的に行われるように、回転デコーダ3012の位置を係止するロック3018を有してもよい。図6は、連動装置の取り付けのためのロック3024の図を提供する。
【0121】
図7は、気化器3000の背面図である。回転入力3012およびロック3024がこの面から見える。
【0122】
図8は、1次カートリッジ(この図では見えない)およびスペアカートリッジ402の両方を有する、気化器3000の左側面図である。回転入力3012およびロック3024がこの面から見える。気化器3000の内部の通気は、少なくとも部分的にベントポート3030によって提供されてもよい。
【0123】
図9は、1次カートリッジ400およびスペアカートリッジ402の両方を有する、気化器3000の右側面図である。回転入力3012およびロック3024がこの面から見える。外部電源への電気接続は、外部電力ポートを介して行われてもよい。コネクタがどのように見えるかに関する詳細は、国によって異なり得るが、電力ポートの位置は、ポート位置3036としてこの図に表される。
【0124】
図10は、1次カートリッジ400およびスペアカートリッジ402の両方を有する、気化器3000の底面図である。気化器の入口および出口ガスを連動装置システムに接続する接続ポート3048および3052もまた、この面から見える。気化器が連動装置バー上の2つの気化器スロットを占領し得るように、他の従来の気化器の幅の2倍である気化器がどのように実装され得るかを示すために、空洞3042をこの図に示す。
【0125】
図11は、1次カートリッジ400およびスペアカートリッジ402の両方を有する、気化器3000の上面、左側面、および正面の斜視図である。
【0126】
図12は、1次カートリッジ400およびスペアカートリッジ402の両方を有する気化器3000の上面、右側面、および正面の斜視図である。
【0127】
(詳細、オプション、および変化形)
カートリッジは、1つのカートリッジが1時間の手術の間適切な量の材料を有し、第2のカートリッジが、同一材料を伴うが2時間の使用に十分な材料を有してもよいように、異なる量の液体麻酔材料を伴って作成されてもよい。同一材料を伴うが該材料を4時間供給する、第3のカートリッジが作成されてもよい。
【0128】
あるいは、病院や診療所が異なる量の液体麻酔材料を伴う多くの異なるカートリッジを格納するよりもむしろ、2時間の手術に十分であるような共通の体積の液体麻酔材料を使用し、単に2つ以上のカートリッジを使用することがより便利であり得る。当然のことながら、成人に使用されるカートリッジとは対照的に、小児外科手術で使用するための標準的な小型化したサイズがあってもよい。
【0129】
気化器が、カートリッジを正常な動作温度まで素早く加熱するのに十分な能力を有する場合、気化器は、麻酔システム内の単一気化器として使用されてもよい。呼吸回路への蒸気供給の一時的中断は、直ちには起こらないが肝臓によって麻酔が除去されるまで、呼吸回路が減少した量の麻酔蒸気を有し続け、患者が患者内にすでに存在しているある特定の量の麻酔を有し、該麻酔が効果を有し続けるため、麻酔効果を妨げない。
【0130】
気化器がカートリッジを正常な動作温度まで素早く加熱するのに十分な能力を有しない場合、または冗長機器の優先がある場合、気化器は、単一気化器に常に蒸気を提供する気化器の数を制限するように構成されるシステム内の、2つ以上の気化器のセットのうちの1つとして使用されてもよい。2つ以上の気化器と連動装置とのセットの使用は、当該技術分野でよく知られており、本明細書に取り上げる必要はない。
【0131】
(カートリッジ内の加熱ユニット)
1次カートリッジと熱的に連通している気化器内の加熱ユニットを有することの代替法は、各カートリッジ内に存在する加熱ユニットを有することである。一実施例として、カートリッジ内の抵抗加熱ユニットは、消耗したカートリッジを処理するユーザがカートリッジの加熱された領域に曝露されないように、液体麻酔材料の貯蔵器を包囲するが、それにもかかわらず絶縁層によって覆われてもよい。1次カートリッジになるためのカートリッジの結合は、電気回路が抵抗加熱に電流を提供するための接触を確立するように構成されてもよい。
【0132】
当業者は、他の加熱システムがカートリッジ内に採用され得ることを認識するであろう。カートリッジは使い捨てであるため、設計目標は、安価に実装され、それにもかかわらずカートリッジを加熱するのに素早く、かつ気化器によって提供される所与の量のエネルギーでどのように熱が提供されるか予測可能である方法で熱を提供し得る、加熱機構を選択することであり得る。
【0133】
開示された気化器およびカートリッジを製造および使用する方法の説明を強化するために、本文書内で特定の実施例が使用されてきた。反対の明確な指示がない限り、1つ以上の実施例のリストは、多数の可能性の限定的なリストを提供することではなく、要点を例示することを意図されている。
【0134】
当業者は、上記に記載する代替の実装のいくつかが、普遍的に相互排他的ではなく、場合によっては、上記の変化形のうちの2つ以上の態様を採用する追加の実装が作成され得ることを認識するであろう。さらに、以下の特許請求の範囲は、当業者に既知であり得るように、本明細書に記載する構成要素の変更、修正、および置換の範囲を対象とする。
【0135】
請求された発明の範囲の法的限定は、以下に続き、それらの法的均等物に及ぶ、特許請求の範囲に記載される。均等性の法的試験に詳しくない者は、米国特許商標局(United States Patent and Trademark Office)またはその相当機関等の本特許を付与した特許機関の前に、実施を登録した人物に相談すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻酔蒸気を提供する気化器システムで使用するためのカートリッジであって、
液体麻酔材料で少なくとも部分的に充填される貯蔵器と、
該貯蔵器と流体連通している弁であって、気化器システム内の構造体と係合し、該弁を開放して該貯蔵器から該気化器への蒸気の通過を可能にするように適合される、弁と、
該貯蔵器内の圧力が周囲空気圧力との所定の差異よりも下がることを防止するように、該貯蔵器と流体連通している、圧力リリーフシステムと、
該気化器によって読み取られてもよい、該カートリッジ内の少なくとも1つのメモリデバイスであって、該貯蔵器内に含有される該液体麻酔材料の少なくとも識別を含有する、メモリデバイスと
を備える、カートリッジ。
【請求項2】
前記カートリッジは、前記液体麻酔材料の気化を促進するように、気化器ユニットから前記貯蔵器に熱を伝導するための経路を有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記カートリッジは、気化器から提供された電力を使用して前記貯蔵器を加熱するように、該気化器から該カートリッジ内の加熱ユニットを介して電流の流れを提供するための経路を有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
少なくとも1つのメモリデバイスは、無線技術を使用して前記気化器によって読み取られてもよい、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
少なくとも1つのメモリデバイスは、RFID技術を使用して前記気化器によって読み取られてもよい、請求項4に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記カートリッジは、前記少なくとも1つのメモリとの通信のためのデータ経路を提供するように、前記気化器上の少なくとも1つの接点と係合する電気通信経路を含有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記カートリッジ内の少なくとも1つのメモリデバイスは、気化器との1つの相互作用中に気化器から情報を受信してもよく、その情報は、後に気化器によってアクセスされてもよい、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
少なくとも1つのメモリデバイスは、前記カートリッジが使用期限を越えているかどうかを前記気化器が決定するために十分な情報を含有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記情報は、前記カートリッジの前記有効期限である、請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記情報は、前記カートリッジの作成日を含み、前記有効期限を含まない、請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記少なくとも1つのメモリは、前記貯蔵器内の液体麻酔材料の量の値を含有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記液体麻酔材料の量は、前記カートリッジを作成した工場で該カートリッジに入れられた量である、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記カートリッジは、少なくとも2つのカートリッジのセットのうちの1つであり、各カートリッジは、同一の特定の液体麻酔材料を伴うが、同一の蒸気生成率で使用される場合、一方のカートリッジが、該セット内のもう一方のカートリッジよりも一時間長く、成人にとって有効な麻酔の蒸気生成率で蒸気を提供するために使用されてもよいように、各カートリッジは、該カートリッジに入れられる異なる量の該液体麻酔材料を有する、請求項12に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記少なくとも1つのメモリは、気化器での前回の使用後に前記カートリッジ内に残存する液体麻酔材料の推定量の値を含有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記貯蔵器と流体連通している前記弁は、前記カートリッジが気化器から除去される時に閉じられていて、それにより蒸気が該カートリッジから前記周囲空気に出て行くことを防止する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記カートリッジは、少なくとも2つのカートリッジのセットのうちの1つであり、該セット内の各カートリッジは、同一の外部形状を有し、それにより、一方のカートリッジをもう一方と区別するために形状を使用することができないが、該少なくとも2つのカートリッジの各々は、該カートリッジ内に異なる液体麻酔材料を有し、各カートリッジは、該カートリッジ内にどのような液体麻酔材料があるかという少なくとも識別を含有する、少なくとも1つのメモリデバイスを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項17】
少なくとも2つのカートリッジの前記セットは、該カートリッジ内にどのような液体麻酔材料があるかという前記識別を示すために、色コードシステムを使用し、それにより、エンドユーザが特定の液体麻酔材料を含有するカートリッジを選択するために色を使用することができる、請求項16に記載のカートリッジ。
【請求項18】
前記カートリッジは、エンドユーザによる使用を目的としたカートリッジを補充するためのいかなる手段も欠けており、それにより、該カートリッジは、製造工程中に一度だけ充填され、次いで、エンドユーザによって補充されない、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項19】
麻酔蒸気を提供する気化器システムで使用するためのカートリッジであって、
液体麻酔材料を保持するのに使用するための貯蔵器と、
該貯蔵器と流体連通している弁であって、気化器システム内の構造体と係合し、該弁を開放して該貯蔵器から該気化器への蒸気の通過を可能にするように適合される、弁と、
該貯蔵器内の圧力が周囲空気圧力との所定の差異よりも下がることを防止するために、該貯蔵器と流体連通している、圧力リリーフシステムと、
デジタルデータを保持するための、該カートリッジ内の、少なくとも1つのメモリデバイスと
を備える、カートリッジ。
【請求項20】
麻酔で使用するための蒸気の生成で使用するための気化器であって、
蒸気が気化器カートリッジから該気化器に流動するための該気化器と該気化器カートリッジとの間の経路を確立するように、該気化器カートリッジ上の弁を開放するための手段と、
気化器カートリッジ貯蔵器を加熱するための手段と、
該気化器カートリッジ内に記憶される液体麻酔材料の少なくとも種類を識別するように、該気化器カートリッジ内に記憶されるデジタル情報にアクセスするための手段と
を備える、気化器。
【請求項21】
前記気化器カートリッジの後続の使用の間の気化器によるアクセスのための該気化器カートリッジ内の記憶のために、該気化器の気化器カートリッジの使用に関する情報を伝達するための手段をさらに備える、請求項20に記載の気化器。
【請求項22】
無線通信リンクを通して気化器カートリッジ内の少なくとも1つのメモリを読み取る機器をさらに備える、請求項20に記載の気化器。
【請求項23】
前記機器は、前記無線通信リンクのためにRFIDを使用する、請求項22に記載の気化器。
【請求項24】
無線通信を使用することなく、デジタル情報が前記気化器カートリッジから前記気化器に流れることを可能にする接触点をさらに備える、請求項20に記載の気化器。
【請求項25】
前記気化器内にあり、前記気化器カートリッジの内部と流体連通している配管における特定の圧力測定を提供するように調整される、加熱デバイスをさらに備える、請求項20に記載の気化器。
【請求項26】
気化器カートリッジ内の加熱デバイスに電力を提供するための電気接点をさらに備える、請求項20に記載の気化器。
【請求項27】
前記気化器は、成人に麻酔をかけるのに十分な蒸気含有ガスを生成するように動作するために、前記気化器カートリッジ内の前記特定の液体麻酔材料を示す気化器カートリッジからの情報、および該気化器がアクセス可能なメモリ内に記憶される該特定の麻酔材料に固有の制御情報を使用する、請求項20に記載の気化器。
【請求項28】
前記気化器は、成人に麻酔をかけるのに十分な蒸気含有ガスを生成するように動作する時に、周囲空気圧力に対して調整される、請求項27に記載の気化器。
【請求項29】
前記気化器は、第1の温度における第1の蒸気圧で第1の液体麻酔材料を含有する第1の気化器カートリッジとともに使用され、その後、該第1の温度における、該第1の蒸気圧とは異なる第2の蒸気圧で、該第1の液体麻酔材料とは異なる第2の液体麻酔材料を伴う第2の気化器カートリッジとともに使用されるように適合され、それにより、該気化器が、麻酔で使用するための制御された量の蒸気を生成するために、2種類以上の液体麻酔材料とともに使用されてもよい、請求項20に記載の気化器。
【請求項30】
スペアカートリッジ内の弁を開放することなく、該スペアカートリッジとして気化器カートリッジを収容および保持するために、前記気化器内に空隙をさらに備え、それにより、該気化器が、前記蒸気の生成のために該第1のカートリッジを使用し、空隙内に第2のカートリッジを有して、第1のカートリッジに液体麻酔材料がほとんどまたは全く残っていない時に使用するためにスペアカートリッジをすぐ近くに有するために、該気化器カートリッジを収容および保持してもよい、請求項20に記載の気化器。
【請求項31】
前記気化器は、前記スペアカートリッジ内に含有される液体麻酔材料の種類の識別を含む、該スペアカートリッジ内に記憶される情報を読み取るように適合され、それにより、該気化器が、該スペアカートリッジ内の液体麻酔材料の種類を、蒸気を生成するために該気化器によって使用されている前記気化器カートリッジ内の液体麻酔材料の種類と比較することができる、請求項30に記載の気化器。
【請求項32】
前記気化器は、第1のカートリッジの使用後に該第1のカートリッジを交換するために挿入される新しいカートリッジが、該第1のカートリッジ内とは同一でない種類の液体麻酔材料である、該新しいカートリッジ内の特定の種類の液体麻酔材料を有することに気付き、該気化器ユニットは、この不一致を伝達する警告をエンドユーザに提供する、請求項20に記載の気化器。
【請求項33】
前記気化器は、前記新しいカートリッジから蒸気を作成および使用する前に、エンドユーザからの確認を求める、請求項32に記載の気化器。
【請求項34】
前記気化器は、この気化器のこの使用の開始前に、新たに挿入された気化器カートリッジから、該気化器カートリッジ内に存在する液体麻酔材料の量の指示を取得し、
該気化器は、使用中に該気化器カートリッジから除去される液体麻酔材料の量を計算し、カートリッジ消耗までの推定時間が規定レベルまで低下すると警告を伝達する、請求項20に記載の気化器。
【請求項35】
前記気化器は、前記気化器カートリッジと流体連通している配管内の圧力を測定し、前記特定の液体麻酔材料の蒸気の要求された送達速度を提供するために、該測定された圧力が、該気化器システムによって選択される標的レベルを下回ると、カートリッジ消耗を伝達する、請求項20に記載の気化器。
【請求項36】
液体麻酔材料から蒸気を生成するための方法であって、該方法は、
蒸気生成のために気化器にカートリッジを挿入することと、
液体麻酔材料の貯蔵器と該気化器の少なくとも一部との間で、流体連通の少なくとも一方向経路を提供するように、カートリッジ弁を開放することと、
該カートリッジ内に含有される特定の液体麻酔材料の識別を提供するように、該カートリッジから該気化器にデジタル情報を転送することと、
全ての液体麻酔材料ではなく、該挿入されたカートリッジ内に含有される該特定の麻酔材料に適用する、該気化器がアクセス可能なメモリ内の蒸気生成情報に基づいて、該気化器を動作させることと、
蒸気の形成を促進するように、該液体麻酔材料に熱を提供することと、
少なくとも1つの監視器具に基づいて、該液体麻酔材料に提供される熱の量を制御することと、
キャリアガスを作成するように該カートリッジからの蒸気がガスに添加されることを可能にするように、該気化器内の少なくとも1つの弁を選択的に開放することと
を含む、方法。
【請求項37】
スペアカートリッジとして機能するように前記気化器に第2のカートリッジを挿入し、そうして、1次カートリッジが除去された後に、該スペアカートリッジが次のカートリッジとして該気化器に挿入されてもよいように、もう一方のカートリッジを1次カートリッジにすることをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記気化器は、エンドユーザが前記カートリッジ内に含有される前記特定の液体麻酔材料を使用することを希望するという該エンドユーザからの確認を求める、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記気化器は、蒸気生成の標的レベルをエンドユーザから受信し、該気化器は、少なくとも1つの測定値に基づいて、少なくとも1つの弁のセットの前記動作および少なくとも1つの熱源の該動作を制御することによって、この蒸気生成の標的レベルを生成する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記熱源は、前記気化器内にある、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記熱源は、前記カートリッジ内にあるが、前記気化器が、該熱源に提供される電力量を制御する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記気化器は、前記カートリッジ内に含有される特定の液体麻酔材料の前記識別と、少なくとも1つの選択された蒸気生成速度と、少なくとも1つのタイムスタンプとを含む、該気化器の使用に関する情報で、該気化器がアクセス可能なメモリ内の仮想ログブックを作成する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記気化器から前記カートリッジを除去することと、
該気化器から該カートリッジを除去した後に、蒸気の生成に使用するために該気化器に第2のカートリッジを挿入することと、
該第2のカートリッジ内の液体麻酔材料の貯蔵器と該気化器の少なくとも一部との間で、流体連通の少なくとも一方向経路を提供するように、カートリッジ弁を開放することと、
該第2のカートリッジ内に含有される特定の液体麻酔材料の識別を提供するように、該第2のカートリッジから該気化器にデジタル情報を転送することと、
該第2のカートリッジ内の該液体麻酔材料に熱を提供して蒸気の形成を促進する前に、該第2のカートリッジ内の該特定の液剤の該識別が、該カートリッジ内の特定の液剤と同一であることを確実にするようにチェックすること、または液体麻酔材料の種類を交換する意図の確認を前記エンドユーザから受信することと
をさらに含む、請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−515184(P2011−515184A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501732(P2011−501732)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/MX2009/000030
【国際公開番号】WO2009/120057
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510257743)アランドラ メディカル, エセ.アー.ペー.イー.デー セー.ヴェー. (1)