説明

液充填ノズル

【課題】 液充填ノズルにおいて、液体の整流化を図り、かつ液ダレを防止すること。
【解決手段】 ノズル本体21の吐出口22の外側に少なくとも1つの網状体23を設け、網状体23が、ノズル本体21の吐出口22の吐出方向外側より視て吐出口22及びその周辺に広がる半球面部を有してなる液充填ノズル12であって、前記網状体23の半球面部が、ノズル本体21の吐出口22の周辺の半球面状外周部に被着されているもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液充填ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
袋体等の容器への液充填ノズルとして、特許文献1に記載の如く、ノズル本体の吐出口に網状体を設けたものがある。液体を網状体に通すことによって整流化し、容器への充填時に発泡が生ずることを防止するものである。
【特許文献1】特開平9-118314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の液充填ノズルでは、ノズル本体の貫通孔状の吐出口に対し、網状体を内側から落とし込んで固定している。従って、網状体は吐出口の内径部の内側に設けられる。このため、液充填ノズルからの充填終了時に、吐出口の口径の範囲(口径内)にある網状体の網目に付着して液溜まりを生ずるとともに、網状体の外側に位置することとなる吐出口の内径部に付着する液溜まりを生じ、この網状体の外側の液溜まりが液ダレの原因になる。
【0004】
本発明の課題は、液充填ノズルにおいて、液体の整流化を図り、かつ液ダレを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、ノズル本体の吐出口の外側に少なくとも1つの網状体を設け、網状体が、ノズル本体の吐出口の吐出方向外側より視て吐出口及びその周辺に広がる半球面部を有してなる液充填ノズルであって、前記網状体の半球面部が、ノズル本体の吐出口の周辺の半球面状外周部に被着されているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(実施例1)(図1〜図5、図9)
液充填装置10は、図4、図5に示す如く、充填ノズル12及び吐出バルブ13を備えた液充填ヘッド11にポンプ15の切替バルブ14が接続されている。切替バルブ14には給液管16も接続されている。
【0007】
充填ノズル12は、図1、図2に示す如く、ノズル本体21の吐出口22の吐出方向に沿う前面及び外周に亘って吐出口22及びその周辺に広がる1枚の網状体23を備えている。網状体23は筒部23Aとその先端側に連続する半球面部23Bとで構成される。ノズル本体21の筒状外周部21Aに嵌着された筒部23Aの外周に筒状網押さえ24を装填することにてノズル本体21に網状体23は固定化される。ノズル本体21の半球面状外周部21Bに被着されている半球面部23B及び網押さえ24の外周に吐出口周壁部を構成するカバー状網支持体25を装填し、この網支持体25をノズル本体21の外周ねじ部21Cに螺着する。網支持体25とノズル本体21をクランプにより固定しても良い。
【0008】
充填ノズル12は、網状体23をノズル本体21の吐出口22の吐出方向に沿う外側(吐出口22の開口22Aの外)に備える。
【0009】
また、充填ノズル12は、網状体23をノズル本体21の吐出口22の吐出方向外側(図1の下方)より視たとき、吐出口22の周辺に広がっている。本実施例では、網状体23はノズル本体21の筒状外周部21A及び半球面状外周部21Bに添って延びている。
【0010】
充填ノズル12は、ノズル本体21の吐出口22の外周に網支持体25を有し、網支持体25とノズル本体21の外面(筒状外周部21A、半球面状外周部21B)との間に隙間26を有する。隙間26内には、網状体23の吐出口22の周辺に広がっている部分(半球面部23Bの一部)が存在している。言い換えると、網状体23は、吐出口22の周辺において、ノズル本体21と吐出口周壁部を構成する網支持体25とに挟まれている。
【0011】
液充填ノズル10による袋体(スタンディングパウチ)等への液充填動作は以下の如くなされる。
【0012】
(1)ポンプ15の切替バルブ14を給液管16につなぎ、ポンプ15のピストンを引いてそのシリンダに液体を計量する(図4(A))。
【0013】
(2)ポンプ15の切替バルブ14を充填ヘッド11につなぎ、かつ吐出バルブ13を開き、ポンプ15のピストンを押してそのシリンダ内の液体を充填ノズル12から吐出する(図4(B))。このとき、吐出液体は充填ノズル12の網状体23を通る際に整流化され、発泡を生じない。
【0014】
(3)上述(2)の充填終了直前に、ポンプ15のピストンを少し引き、切替バルブ14から充填ノズル12までの液圧力(液流れ)を抑え、充填終了時の充填ノズル12への残液を少なくさせる(図5(A))。
【0015】
尚、液充填装置10の洗浄時には、図5(B)に示す如く、充填ノズル12の網支持体25の外面に、洗浄カップ17の封着部17Aを密着させ、ポンプ15が圧送する洗浄液を充填ヘッド11経由で洗浄カップ17に排出する。
【0016】
液充填装置10は、充填終了後の充填ノズル12からの液ダレを以下の如く防止する(図3参照)。尚、図3では、ノズル本体21の外周に広げられた網状体23により液が捕捉される範囲の変化を示すため、ノズル本体21の外周の網押さえ24、網支持体25を省略している。
【0017】
(1)充填ノズル12から容器への充填時に、液体Lはノズル本体21の吐出口22から網状体23を通って吐出される(図3(A))。
【0018】
(2)充填ノズル12からの充填終了時に、吐出口22の開口22Aの範囲内にある網状体23に液体が保持される。保持された液体により、液溜まりが生ずる(図3(B))。
【0019】
(3)開口22A内にある液体の一部が、開口22Aの外の、即ち網状体23の吐出口22の周辺の網目の毛細管現象により吸引されてその網目内に移動する(図3(C))。また、上述(2)の液溜まりを形成する液体の一部は、開口22A外にある網支持体25とノズル本体21の外面の間の隙間26に至る。
【0020】
(4)充填ノズル12からの再充填時に、ノズル本体21の吐出口22から網状体23を通って吐出される液体が周辺に及ぼす負圧により、上述(2)の液溜まり及び、(3)の吐出口22の周辺部分及び隙間26に移動した液は、吐出される液体とともに充填ノズル12の外に排出される。
【0021】
尚、充填ノズル12からの充填終了後の液ダレを防止するために、網状体23の面積は吐出口22の面積の1.2倍以上にすることが好ましく、2倍以上の面積にすることがより好ましい。吐出する液の種類にもよるが、吐出口22の開口22A内にある網目に付着して液ダレの原因となる液について、吐出口22の面積の1.2倍の表面積をもつ網状体23を設けることにより付着の予想される最小量の液を保持でき、吐出口22の面積の2倍の表面積をもつ網状体23を設けることにより付着の予想される最大量の液を保持できると予想している。
【0022】
充填ノズル12において、網支持体25とノズル本体21の外面との間に設ける隙間26は、吐出口22に近接するほど大きくすることが好ましい。具体的には、液体洗剤を充填液とするとき、図9に示す如く、網支持体25の吐出口22から上方に10mm離れた部分の上記隙間d1を0.5mmとするとき、網支持体25の吐出口22に最も近い最下部の上記隙間d2を2mmとする。網支持体25即ち吐出口周壁部とノズル本体21の外面との間の隙間26が吐出口22に近接するほど大きくなるようにすることで、網支持体25の最下部内面(径の範囲)に存在する液を減少させ、条件によっては全くなくすことができ、結果として液ダレ発生の防止に寄与する。尚、図9は、網支持体25とノズル本体21をクランプ100により固定した充填ノズル12を示す。
【0023】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)充填ノズル12は、吐出液体のための整流手段になって液体の整流化を図る網状体23を、ノズル本体21における吐出口22の内径部(開口22A)の外側に設けた。従って、網状体23は液体吐出方向に沿う方向において直接外界に臨み、充填ノズル12からの充填終了時に、残留した液は吐出口22の開口22Aの範囲(口径内)にある網状体23の網目に付着してその網目内に保持され、液溜まりを生ずることがあっても、網状体23の外には液ダレの原因になる液溜まりを生じない。
【0024】
(b)網状体23が、吐出口22の吐出方向外側より視て、吐出口22の周辺まで広がることにより、充填終了時に、網状体23の吐出口22の開口22A内にある網目に付着した液溜まりの一部が開口22Aの外に広がる網状体23の毛細管現象により吸引されて開口22Aの外の網目内に保持される。網状体23による液保持範囲が吐出口22の開口22A内だけでなく、開口22A外にまで拡張され、液ダレを一層防止できる。
【0025】
(c)ノズル本体21の吐出口22の外周に網支持体25を被着し、網支持体(吐出口周壁部)25とノズル本体21の外面との間に隙間26を設けたことにより、充填ノズル12からの充填終了時に、網状体23の吐出口22の開口22A内にある網目に付着した液の一部が開口22A外にある網支持体25とノズル本体21の外面との間にある隙間26に吸引されてその隙間26内に保持され、液ダレを一層防止できる。
【0026】
(d)前述(a)の吐出口22の開口22A内にある網状体23の網目内に保持された液、前述(b)の開口22A外の網状体23の網目内に保持された液、前述(c)の網支持体(吐出口周壁部)25とノズル本体21の外面との間に保持された液のそれぞれは、充填ノズル12からの再充填時に、吐出口22から吐出する液体が周辺に及ぼす負圧により吐出する液体とともに充填ノズル12の外に排出される。従って、前述(a)〜(c)の液が液溜まりとして成長する可能性を減らすことができ、長時間かけて形成される液溜まりによる液ダレを防止できる。
【0027】
参考例1)(図6、図7)
参考例1の充填ノズル12は、図6、図7に示す如く、ノズル本体31の吐出口32の吐出方向に沿う前面(必要により、前面及び外周)に網状体33を設けるに際し、ノズル本体31の外周に螺着される(クランプでも可)カバー状網支持体34の中央孔部34Aの内縁に網状体33の外縁を一体結合したものである。
【0028】
充填ノズル12は、網状体33をノズル本体31の吐出口32の吐出方向に沿う外側(吐出口32の開口32Aの外)に備える。
【0029】
充填ノズル12は、ノズル本体31の吐出口32の外周に吐出口周壁部を構成する網支持体34を有し、網支持体34とノズル本体31の外面との間に隙間35を有する。
【0030】
従って、液充填装置10にあっては、充填終了後の充填ノズル12からの液ダレを以下の如くにして防止する。
【0031】
(1)充填ノズル12から容器への充填時に、液体は吐出口32から網状体33を通って吐出される。
【0032】
(2)充填ノズル12からの充填時終了時に、吐出口32の開口32Aの範囲内にある網状体33に液体が保持される。保持された液体により液溜まりが生ずる。
【0033】
(3)開口32A内にあって上述(2)の液溜まりを形成する液体の一部が、開口32Aの外にある網支持体34とノズル本体31の外面の間の隙間35の毛細管現象によって吸引されてその隙間35内に至る。
【0034】
(4)充填ノズル12からの再充填時に、吐出口32から網状体33を通って吐出される液体が周辺に及ぼす負圧により、上述(2)の液溜まり及び(3)の隙間35に移動した液は、吐出される液体とともに充填ノズル12の外に排出される。
【0035】
参考例1によれば以下の作用効果を奏する。
(a)充填ノズル12は、吐出液体のための整流手段になって液体の整流化を図る網状体33を、ノズル本体31における吐出口32の内径部の外側に設けた。従って、網状体33は液体吐出方向に沿う方向において直接外界に臨み、充填ノズル12からの充填終了時に、残留した液は、吐出口32の開口32Aの範囲(開口内)にある網状体33の網目に付着してその網目内に保持され、液溜まりを生ずることがあっても、網状体33の外には、液ダレの原因になる液溜まりを生じない。
【0036】
(b)ノズル本体31の吐出口32の外周に網支持体34を被着し、網支持体(吐出口周壁部)34とノズル本体31の外面との間に隙間35を設けたことにより、充填ノズル12からの充填終了時に、網状体33の吐出口32の開口32A内にある網目に付着した液の一部が開口32Aの外にある網支持体34とノズル本体31の外面との間にある隙間35に吸引されてその隙間35内に保持され、液ダレを一層防止できる。
【0037】
(c)前述(a)の吐出口32の開口32A内にある網状体33の網目内に保持された液、前述(b)の網支持体(吐出口周壁部)34とノズル本体31の外面との間に保持された液のそれぞれは、充填ノズル12からの再充填時に、吐出口32から吐出する液体が周辺に及ぼす負圧により吐出する液体とともに充填ノズル12の外に排出される。従って、前述(a)〜(b)の液が液溜まりとして成長する可能性を減らすことができ、長時間かけて形成される液溜まりによる液ダレを防止できる。
【0038】
(実施例)(図8)
実施例の充填ノズル12は、図8に示す如く、Oリング40を用いて網状体23をノズル本体21に固定するものである。
【0039】
(実施例)(図10)
実施例の充填ノズル12は、図10に示す如く、実施例1の充填ノズル12においてノズル本体21の吐出口22に張り設けた1枚の網状体23を、2枚の積層して重ね合せた網状体41、42の組に代えたものである。両網状体41、42は筒部41A、42Aの先端側に半球面部41B、42Bを連続してなり、ノズル本体21の筒状外周部21Aに嵌着された筒部41A、42Aの外周に筒状網押さえ24を装填し、ノズル本体21の半球面状外周部21Bに被着される半球面部41B、42B及び網押さえ24の外周にカバー状網支持体25を装填し、この網支持体25をノズル本体21の外周ねじ部21Cに螺着することにてノズル本体21に固定化される。
【0040】
本発明において、網状体のメッシュの大きさは、網目開口部の1辺を0.14〜2.07mm(♯100〜♯10)、網を形成する線の太さをφ0.1〜φ0.47mmとするのが好ましい。特に、粘度が1〜2500mPa・s程度の液に対しては、網目開口部が上述の範囲にあることで液を保持しつつ、充填の度にノズル吐出口より吐出される液の流れにつられて網目開口部に保持されている液もあわせて排出され、格別なメンテナンスを施すことなく液ダレ防止性能を維持できる。
【0041】
尚、本発明者は、実施例1の液充填装置10において、線径0.345mmのポリエチレン素線からなる20メッシュの網状体23を用いて充填ノズル12を構成し、この液充填装置10を粘度21mPa・s、比重1.007、液温20℃の液体洗剤の充填に供し、液体吐出性、液ダレ防止性の双方で良好な結果を得た。
【0042】
また、実施例1の液充填装置10において、線径0.2mmのSUS304素線からなる20メッシュの網状体41、42を2枚重ね合せて充填ノズル12を構成し、この液充填装置10を粘度約100mPa・s、比重1.04、液温20℃の液体洗剤の充填に供し、液体吐出性、液ダレ防止性の双方で良好な結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は実施例1の液充填ノズルを示す断面図である。
【図2】図2は液充填ノズルの分解図である。
【図3】図3は液充填ノズルの液ダレ防止メカニズムを示す模式図である。
【図4】図4は充填装置を示す模式図である。
【図5】図5は充填装置を示す模式図である。
【図6】図6は参考例1の液充填ノズルを示す断面図である。
【図7】図7は液充填ノズルの分解図である。
【図8】図8は実施例の液充填ノズルを示す斜視図である。
【図9】図9は液充填ノズルの網支持体とノズル本体の間の隙間状態を示す断面図である。
【図10】図10は実施例の液充填ノズルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
12 充填ノズル
21 ノズル本体
22 吐出口
23、41、42 網状体
25 カバー状網支持体(網支持体)
26 隙間
40 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体の吐出口の外側に少なくとも1つの網状体を設け
網状体が、ノズル本体の吐出口の吐出方向外側より視て吐出口及びその周辺に広がる半球面部を有してなる液充填ノズルであって、
前記網状体の半球面部が、ノズル本体の吐出口の周辺の半球面状外周部に被着されている液充填ノズル。
【請求項2】
前記網状体が前記ノズル本体の吐出口面積の少なくとも1.2倍の面積範囲に亘って広がっている請求項1に記載の液充填ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−222312(P2008−222312A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167537(P2008−167537)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【分割の表示】特願2005−17497(P2005−17497)の分割
【原出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】