説明

液晶シール剤、それを用いた液晶表示パネルの製造方法、及び液晶表示パネル

【課題】表示信頼性、粘度安定性、接着強度、及び耐湿性に優れ、変形や液晶のリークが生じ難いシール部を形成可能な液晶シール剤を提供する。
【解決手段】光及び熱によって硬化する液晶シール剤であり、1分子内の水素結合性官能基当量が3.0×10−3未満であり、重量平均分子量が500以上、800未満である、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基をそれぞれ少なくとも1個有する(メタ)アクリルエポキシ樹脂と、光ラジカル重合開始剤と、熱潜在性エポキシ硬化剤と、を含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶シール剤、それを用いた液晶表示パネルの製造方法、及び液晶表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型・軽量・低消費電力という面で、フラットパネルディスプレイの中でも液晶表示パネルの需要が急速に増大している。最近では、液晶表示パネルの大型化、低コスト化が加速している。そこで、液晶表示パネルの製造分野では、設備スペースの拡大や投資額をできる限り抑えながら、製造時間の短縮等を図り、高生産性で大型かつ高品質の液晶表示パネルを製造できる技術の構築が望まれている。
【0003】
最近では、液晶滴下方式と呼ばれる液晶表示パネルの製造方法が注目されている。液晶滴下方式は、2枚の透明基板のいずれか一方に液晶を滴下した後、高真空下で透明基板どうしを貼り合わせる。そのため、大型液晶表示パネルを製造する場合でも、数分間で液晶の充填が可能であるといわれ、従来の液晶注入方式よりも製造時間の短縮が可能となるから、液晶滴下方式は液晶表示パネルの製造方法として主流となりつつある。液晶滴下方式に用いられる液晶シール剤としては、紫外線硬化性と熱硬化性を併せ持つ液晶シール剤が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
ところが、液晶滴下方式では、未硬化の液晶シール剤に液晶が接触するため、液晶シール剤の樹脂成分や添加剤が液晶に溶け出すことにより液晶が汚染され、液晶表示パネルの表示性が低下するという問題を抱えている。液晶の汚染は、液晶シール剤の樹脂成分や添加剤が液晶に馴染み易い成分であるほど、また液晶シール剤の硬化物中に未硬化部分が多く残るほど起こりやすい。また、液晶シール剤の硬化物中に未硬化部分が残ると、液晶が汚染されるだけでなく、かかる硬化物と液晶表示パネルを構成する基板(単に「基板」と称することもある)との接着強度の低下が懸念される。そのために、液晶滴下方式に用いられる液晶シール剤に対しては、液晶を汚染しにくいこと(低液晶汚染性)、短時間のうちに隅々まで硬化が進行すること(高硬化性)等の特性が求められている。
【0005】
上記の特性を満たすべく、1分子中の水素結合性官能基数を分子量で除した値が3.5×10−3以上である、光や熱によって硬化する硬化性樹脂を含有する液晶滴下方式用の樹脂組成物、この樹脂組成物からなる液晶シール剤、及びこの液晶シール剤を用いて製造された液晶表示素子が開示されている(例えば、特許文献3〜6参照)。なお、特許文献7には、3又は4個のグリシジル基を有するエポキシ化合物の一部のグリシジル基と、(メタ)アクリル酸誘導体の一部のカルボキシル基とを反応させて得られる、液晶シール剤の原料として有用な化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】特開2002−214626号公報
【特許文献3】特開2005−208115号公報
【特許文献4】特開2005−308813号公報
【特許文献5】特開2006−23581号公報
【特許文献6】特開2006−308812号公報
【特許文献7】特開2008−179796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献3〜6で開示された液晶シール剤であっても、耐湿性や粘度安定性等の特性については未だに不十分であると言わざるを得ず、更なる改良の余地があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、表示信頼性、粘度安定性、接着強度、及び耐湿性に優れ、変形や液晶のリークが生じ難いシール部を形成可能な液晶シール剤を提供することにある。
【0009】
また、本発明の課題とするところは、生産性の高さを保持しながら表示性が高く良好であり、シール部と基板との接着強度が高く、高湿条件下での耐久性に優れた液晶表示パネル、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、水素結合性官能基当量が3.0×10−3未満であるとともに、重量平均分子量が500以上、800未満である(メタ)アクリルエポキシ樹脂を配合することによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、以下に示す液晶シール剤、液晶表示パネルの製造方法、及び液晶表示パネルが提供される。
【0012】
[1]光及び熱によって硬化する液晶シール剤であって、1分子内の水素結合性官能基当量が3.0×10−3未満であり、重量平均分子量が500以上、800未満である、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基をそれぞれ少なくとも1個有する(メタ)アクリルエポキシ樹脂と、光ラジカル重合開始剤と、熱潜在性エポキシ硬化剤と、を含有する液晶シール剤。
【0013】
[2]前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂が、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基をそれぞれ1個有する樹脂である前記[1]に記載の液晶シール剤。
【0014】
[3]前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂が、1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部の前記エポキシ基と、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系化合物の前記カルボキシル基と、を反応させて得られるものである前記[2]に記載の液晶シール剤。
【0015】
[4]前記(メタ)アクリル酸系化合物が、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの組み合わせのいずれかのみである前記[2]又は[3]に記載の液晶シール剤。
【0016】
[5]前記液晶シール剤に含有される、前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂の割合が20〜90質量%である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の液晶シール剤。
【0017】
[6]アクリル樹脂を更に含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の液晶シール剤。
【0018】
[7]前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂、前記アクリル樹脂、及び前記熱潜在性エポキシ硬化剤の合計100質量部に対する、前記熱潜在性エポキシ硬化剤の含有量が3〜40質量部である前記[6]に記載の液晶シール剤。
【0019】
[8]エポキシ樹脂を更に含有する前記[1]〜[7]のいずれかに記載の液晶シール剤。
【0020】
[9]フィラーとシランカップリング剤を更に含有する前記[1]〜[8]のいずれかに記載の液晶シール剤。
【0021】
[10]前記フィラーが、環球法により測定される軟化点温度が50〜120℃の熱可塑性ポリマーを含む、数平均粒子径が0.05〜5μmの熱可塑性ポリマー微粒子である前記[9]に記載の液晶シール剤。
【0022】
[11]前記[1]〜[10]のいずれかに記載の液晶シール剤を用いて、第一の基板上に枠状のシールパターンを形成する工程と、前記シールパターンが未硬化の状態において前記シールパターンの枠内、又は第二の基板上に液晶を滴下する工程と、前記第一の基板と前記第二の基板を減圧条件下で重ね合わせる工程と、前記第一の基板と前記第二の基板の間に挟まれた前記液晶シール剤を光硬化させる工程と、光硬化後の前記液晶シール剤を熱硬化させる工程と、を含む液晶表示パネルの製造方法。
【0023】
[12]前記[11]に記載の液晶表示パネルの製造方法によって製造される液晶表示パネル。
【発明の効果】
【0024】
本発明の液晶シール剤は、表示信頼性、粘度安定性、接着強度、及び耐湿性に優れ、変形や液晶のリークが生じ難いシール部を形成可能なものである。
【0025】
本発明の液晶表示パネルの製造方法によれば、表示性が高く良好であり、シール部と基板との接着強度が高く、高湿条件下での耐久性に優れた液晶表示パネルを高い生産性で製造することができる。
【0026】
本発明の液晶表示パネルは、表示性が高く良好であり、シール部と基板との接着強度が高く、高湿条件下での耐久性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
1.液晶シール剤:
本発明の液晶シール剤は、(メタ)アクリルエポキシ樹脂、光ラジカル重合開始剤、及び熱潜在性エポキシ硬化剤を含有するものであり、光及び熱によって硬化する液晶シール剤である。
【0029】
((メタ)アクリルエポキシ樹脂)
(メタ)アクリルエポキシ樹脂は、(メタ)アクリル基と、反応性が高いエポキシ基を、1分子内にそれぞれ少なくとも1個有するものである。このため、この(メタ)アクリルエポキシ樹脂は室温条件下での反応性が低いとともに、粘度安定性が高く、光照射と加熱による高い反応性を示すものである。
【0030】
(メタ)アクリルエポキシ樹脂は、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基をそれぞれ1個有する樹脂であることが好ましい。このような(メタ)アクリルエポキシ樹脂を用いると、液晶シール剤を硬化させた硬化物のガラス転移点(Tg)が高くなり過ぎず、接着強度をより高めることが可能となる。
【0031】
また、(メタ)アクリルエポキシ樹脂の1分子内の水素結合性官能基当量は3.0×10−3未満、好ましくは0.5×10−3〜2.5×10−3、更に好ましくは1.0×10−3〜2.0×10−3である。液晶シール剤に含有される(メタ)アクリルエポキシ樹脂の1分子内の水素結合性官能基当量が3.0×10−3未満であると、この液晶シール剤によって形成されるシール部(硬化物)の耐湿性が顕著に向上する。このため、本発明の液晶シール剤を用いれば、高湿条件下であっても耐久性が良好で、信頼性に優れた液晶表示パネルを製造することができる。
【0032】
また、(メタ)アクリルエポキシ樹脂の1分子内の水素結合性官能基当量が3.0×10−3未満であると、この(メタ)アクリルエポキシ樹脂を含有する液晶シール剤の粘度は長期間経過しても変化(上昇)し難く、粘度安定性に優れている。このため、本発明の液晶シール剤は、液晶表示パネルを構成する基板上への塗布性が長期間にわたって良好なものである。また、本発明の液晶シール剤は、ディスペンサー等の塗布装置内で長時間粘度が安定しているので、塗布装置内に入れ替える頻度が少なくてすみ、液晶表示パネルの生産性向上に寄与するものである。
【0033】
なお、本明細書における「水素結合性官能基当量」は、下記式(1)により算出される値である。
水素結合性官能基当量=((メタ)アクリルエポキシ樹脂1分子中の水素合性官能基数)/((メタ)アクリルエポキシ樹脂の重量平均分子量) ・・・(1)
【0034】
水素結合性官能基は、水素結合性を有する官能基である。水素結合性官能基の具体例としては、−OH基、−NH基、−NHR基(Rは、芳香族基、脂肪族炭化水素基、又はこれらの基から誘導される基を示す)、−COOH基、−CONH基、−NHOH基等の1価の基;−NHCO−基、−NH−基、−CONHCO−基、−NH−NH−基等の2価の基を挙げることができる。
【0035】
また、(メタ)アクリルエポキシ樹脂は、1分子内の水素結合性官能基当量が上記の数値範囲内であると同時に、その重量平均分子量が500以上、800未満、好ましくは550〜750、更に好ましくは550〜700である。液晶シール剤に含有される(メタ)アクリルエポキシ樹脂の重量平均分子量が500以上であると、液晶シール剤が液晶に溶出し難く、液晶を汚染する可能性が顕著に低減される。このため、本発明の液晶シール剤を用いれば、シール部の近傍における色むら等の発生がなく、優れた表示特性を示す液晶表示パネルを提供することができる。一方、(メタ)アクリルエポキシ樹脂の重量平均分子量が800未満であると、液晶シール剤の粘度安定性が向上するとともに、基板に対する印刷性や塗布性が良好になるといった利点がある。
【0036】
なお、(メタ)アクリルエポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でポリスチレンを標準として測定することができる。
【0037】
液晶シール剤に含有される(メタ)アクリルエポキシ樹脂の割合は、20〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることが更に好ましい。(メタ)アクリルエポキシ樹脂の含有割合が上記範囲内であると、光照射と加熱による高い反応性が保持され、高い接着信頼性を確保することができる。
【0038】
(メタ)アクリルエポキシ樹脂は、水素結合性官能基当量と重量平均分子量がいずれも上述の数値範囲内であるとともに、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基をそれぞれ少なくとも1個有するものであれば、それ以外の置換基の種類や構造については特に制限されない。但し、(メタ)アクリルエポキシ樹脂の好適例としては、(a)エポキシ基を有するエポキシ化合物の一部のエポキシ基と、(b)カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系化合物のカルボキシル基と、を反応させて得られる樹脂を挙げることができる。なお、(a)エポキシ化合物は、1分子内に2個のエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
【0039】
前記(a)エポキシ化合物の具体例としては、下記一般式(1−a)、下記式(1−b)、下記一般式(1−c)、下記式(1−d)、及び下記式(1−e)で表される化合物を挙げることができる。
【0040】
【化1】

【0041】
前記一般式(1−a)中、R11は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、nは1又は2を示す。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
前記一般式(1−c)中、R12は水素原子又はメチル基を示し、R13は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
前記一般式(1−e)中、Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0048】
前記一般式(1−a)で表されるエポキシ化合物は市販品でもよいし、新たに合成したもの(合成品)でもよい。前記一般式(1−a)で表されるエポキシ化合物は、例えば、フェノール誘導体とホルマリンとの縮合反応により得られるノボラック型化合物の3核体又は4核体に、エピハロヒドリンを反応させること等によって合成することができる。また、前記式(1−b)、前記一般式(1−c)、前記式(1−d)、及び前記式(1−e)で表される化合物も、市販品でもよいし、合成品でもよい。
【0049】
前記一般式(1−a)中のR11、前記一般式(1−c)中のR13、及び前記一般式(1―e)中のRで示される炭素数1〜10のアルキル基の好適例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基を挙げることができる。R11及びR13としては、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0050】
エポキシ化合物の重量平均分子量は、400〜700であることが好ましく、450〜650であることが更に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であるエポキシ化合物を用いることで、(メタ)アクリルエポキシ樹脂の分子量を500〜800とすることができる。
【0051】
前記(b)(メタ)アクリル酸系化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、下記一般式(2−a)で表される化合物等を挙げることができる。なかでも、(b)(メタ)アクリル酸系化合物としては、(i)アクリル酸、(ii)メタクリル酸、及び(iii)これらの組み合わせ、のいずれかのみが好ましい。アクリル酸やメタクリル酸は、いずれも工業的に入手し易く、極めて汎用性の高い原料化合物である。このため、アクリル酸やメタクリル酸を用いると、諸特性に優れた液晶シール剤を安価に提供することができる。また、アクリル酸やメタクリル酸は、下記一般式(2−a)で表される化合物等に比して、いずれも分子量が小さいものである。このため、アクリル酸やメタクリル酸を用いて得られる(メタ)アクリルエポキシ樹脂は、(メタ)アクロイル基を含む側鎖が比較的小さく、コンパクトである。従って、この(メタ)アクリルエポキシ樹脂は結晶性が良好なものであり、液晶に溶出し難いシール部を形成可能な液晶シール剤を提供することができる。
【0052】
【化6】

【0053】
前記一般式(2−a)中、R21は水素原子又はメチル基を示し、X21は炭素数1〜10のアルキレン基又は下記一般式(3)で表される基を示し、X22は炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基を示す。
【0054】
前記一般式(2−a)中、X21で示される炭素数1〜10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、シクロペンチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基を挙げることができる。X21は、炭素数2〜6のアルキレン基又は下記一般式(3)で表される基が好ましい。
【0055】
【化7】

【0056】
前記一般式(3)中、Y31及びY32は、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキレン基を示し、nは1〜10の整数を示す。なお、Y31は前記一般式(2−a)中のアクリロイル基の「O」と結合している。
前記一般式(3)中、Y31及びY32で示される炭素数1〜10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、シクロペンチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等を挙げることができる。なかでも、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましい。また、前記一般式(3)中のnは、1〜6の整数が好ましい。
【0057】
前記一般式(2−a)中、X22で示される炭素数1〜20のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、シクロペンチレン基、ヘキサメチレン基、シクロヘキシレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ノナメチレン基、ドデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基等を挙げることができる。
【0058】
前記一般式(2−a)中、X22で表される炭素数2〜6のアルケニレン基の具体例としては、−CH=CH−基、−CH=CH−CH−基、−CH=CH−CH−CH−基、−CH−CH=CH−CH−基等を挙げることができる。X22は、炭素数1〜6のアルキレン基、−CH=CH−基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基、−CH=CH−基が更に好ましい。
【0059】
前記一般式(2−a)で表される化合物は工業的に入手可能である。また、前記一般式(2−a)で表される化合物は、例えば、対応する「ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体」と「2個のカルボキシル基を有する化合物」とをエステル化反応させることによっても合成することができる。
【0060】
上述の(a)エポキシ化合物と(b)(メタ)アクリル酸系化合物を、公知の手法に従って開環付加反応させれば、本発明の液晶シール剤に含有させる(メタ)アクリルエポキシ樹脂を製造することができる。
【0061】
(光ラジカル重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤は、光のエネルギーを吸収することによって活性化し、ラジカルを発生する化合物である。光ラジカル重合開始剤の種類は特に限定されず、光ラジカル重合開始剤として公知の化合物が使用できる。
【0062】
光ラジカル重合開始剤の例には、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α−アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系化合物、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類が含まれる。
【0063】
液晶シール剤に含有される光ラジカル重合開始剤の割合は、0.01〜5質量%とすることが好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有割合が0.01質量%以上であると、短時間の光照射で液晶シール剤を硬化させることができる。また、光ラジカル重合開始剤の含有割合が5質量%以下の液晶シール剤は、塗布性が高くなり、かつムラなく均質に硬化した硬化物(シール部)が得られる。
【0064】
(熱潜在性エポキシ硬化剤)
熱潜在性エポキシ硬化剤は、室温下での反応性は低いものの、熱を与えることによりエポキシ樹脂が有する官能基と反応して硬化に寄与する化合物である。熱潜在性エポキシ硬化剤を液晶シール剤に含ませることにより、液晶シール剤の室温下での粘度安定性が向上する。このため、基板にシールパターンを描画するために、スクリーン印刷機等に充填された液晶シール剤を長時間にわたって安定して使用できる。このように液晶シール剤の可使時間が長くなると、液晶表示パネルの製造にかかる生産性の向上が実現され得る。
【0065】
熱潜在性エポキシ硬化剤の種類は特に限定されず、熱潜在性エポキシ硬化剤として公知である化合物が使用できる。なかでも、高密度架橋構造を得る観点からは、分子内にアミノ基を有するアミン系熱潜在性硬化剤が好ましい。アミン系熱潜在性硬化剤の好ましい例には、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミン、並びにポリアミノウレア等が含まれるが、特に限定されない。液晶シール剤には、これらの熱潜在性エポキシ硬化剤の二種類以上を添加してもよい。
【0066】
熱潜在性エポキシ硬化剤は、その融点又は環球法により測定される軟化点温度が100℃以上であるものが好ましい。このような熱潜在性エポキシ硬化剤を含有させた液晶シール剤は、室温での粘度安定性が非常に高く、液晶表示パネルを製造する場合の可使時間がよりいっそう長くなるためである。
【0067】
融点又は環球法により測定される軟化点温度が100℃以上であるアミン系熱潜在性硬化剤の例には、ジシアンジアミド類、有機酸ジヒドラジド、及びイミダゾール誘導体が含まれる。ジシアンジアミド類の例には、ジシアンジアミド(融点:209℃)が含まれる。有機酸ジヒドラジドの例には、アジピン酸ジヒドラジド(融点:181℃)、及び1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点:120℃)が含まれる。イミダゾール誘導体の例には、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチルイミダゾリル−(1’)]−エチルトリアジン(融点:215〜225℃)、2−フェニルイミダゾール(融点:137〜147℃)が含まれる。熱潜在性エポキシ硬化剤は、水洗法、再結晶法等によって高純度化処理されていることが好ましい。液晶シール剤には、これらの化合物の二種類以上を添加してもよい。
【0068】
液晶シール剤に含有される熱潜在性エポキシ硬化剤の割合は、1〜25質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることが更に好ましい。熱潜在性エポキシ硬化剤の含有割合が上記範囲内にあると、粘度安定性と硬化性のいずれもが高い液晶シール剤が得られる。このような液晶シール剤は、その硬化物と基板との接着強度が高く、接着信頼性が良好な液晶表示パネルを提供することができる。
【0069】
なお、後述するアクリル樹脂が液晶シール剤に含有される場合には、熱潜在性エポキシ硬化剤の含有量は、(メタ)アクリルエポキシ樹脂、アクリル樹脂、及び熱潜在性エポキシ硬化剤の合計100質量部に対して3〜40質量部とすることが好ましい。熱潜在性エポキシ硬化剤の含有量が上記範囲内にあると、粘度安定性と硬化性のいずれもが高い液晶シール剤が得られる。
【0070】
熱潜在性エポキシ硬化剤を含有する液晶シール剤は、保存安定性が高いために一液タイプとして有用である。保存安定性が高いとは、液晶シール剤を室温以下で保存しても硬化反応がほとんど進行しないことを意味する。具体的には、液晶シール剤を25℃で5日間保存したときの粘度の増加率が、保存前の液晶シール剤の粘度の2倍以下程度であることをいう。一液タイプの液晶シール剤は、(メタ)アクリルエポキシ樹脂等の主成分と、熱潜在性エポキシ硬化剤のような硬化促進成分とが使用前の段階で混合されているため、使用時に混合する手間が省ける等、作業性が高いものである。
【0071】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、1分子内に1個以上のアクリル基を有する化合物(前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂を除く)である。アクリル樹脂を含有させた液晶シール剤は、耐水性が高くなる。このため、液晶表示パネルの製造に適用すると、液晶シール剤の硬化物と液晶表示パネルを構成する基板との接着強度が高くなり、耐湿信頼性に優れた高品質の液晶表示パネルが得られる。
【0072】
アクリル樹脂の例には、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー、及びこれらのオリゴマーのような(メタ)アクリル樹脂が含まれる。アクリル樹脂の好ましい例には後述する樹脂(化合物)が含まれるが、特に限定されない。
【0073】
アクリル樹脂の例には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールのジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールのジ(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのオリゴマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びそのオリゴマー;ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート;カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート;アルキル変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート;エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート;ネオペンチルグルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのオリゴ(メタ)アクリレートが含まれる。液晶シール剤には、これらのアクリル樹脂の二種類以上を添加してもよい。
【0074】
アクリル樹脂は、後述するエポキシ樹脂と併せて液晶シール剤に含ませることが好ましい。アクリル樹脂とエポキシ樹脂の両方を液晶シール剤に含有させる場合、エポキシ樹脂の含有量は、アクリル樹脂100質量部に対して20〜200質量部とすることが好ましい。このような液晶シール剤に光や熱を照射すると、ガラス転移温度(Tg)が高く、高温下でも安定した硬化物が得られる。なお、硬化物のTgは動的粘弾性測定装置(DMA)で測定できる。
【0075】
(エポキシ樹脂)
本明細書における「エポキシ樹脂」は、1分子内に1個以上エポキシ基を有するが、(メタ)アクリロイル基を有しない化合物である。エポキシ樹脂の例には、芳香族多価グリシジルエーテル化合物、ノボラック型多価グリシジルエーテル化合物、グリシジルエーテル化合物類が含まれる。
【0076】
芳香族多価グリシジルエーテル化合物の例には、芳香族ジオール類及びそれらを各種グリコールで変性したジオール類とエピクロルヒドリンとの反応で得られる化合物が含まれる。なお、芳香族多価グリシジルエーテル化合物の具体例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂が含まれる。前記グリコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、アルキレングリコールが含まれる。
【0077】
ノボラック型多価グリシジルエーテル化合物の例には、ポリアルケニルフェノールやそのコポリマー等に代表されるポリフェノール類に該当する化合物とエピクロルヒドリンとの反応で得られた化合物が含まれる。また、グリシジルエーテル化合物の例には、キシリレンフェノール樹脂が含まれる。
【0078】
エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アクリルゴム変性エポキシ樹脂が好ましく、アクリルゴム変性エポキシ樹脂が更に好ましい。液晶シール剤には、これらのエポキシ樹脂の二種類以上を添加してもよい。なお、エポキシ樹脂は、分子蒸留法などによって高純度化され、不純物が取り除かれた樹脂であることが好ましい。
【0079】
エポキシ樹脂は、(i)環球法によって測定される軟化点温度が40℃以上であるとともに、(ii)重量平均分子量が1000〜10000であるものが好ましい。このようなエポキシ樹脂は、液晶に対する溶解性や拡散性が低い。このため、このようなエポキシ樹脂を含む液晶シール剤は、表示性が良好な液晶表示パネルの製造に最適である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレンを標準として測定することができる。
【0080】
液晶シール剤に含有されるエポキシ樹脂の割合は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましい。エポキシ樹脂の含有割合が上記範囲内にあると、その液晶シール剤は耐熱性が高く良好である。一方、エポキシ樹脂の含有割合が5質量%未満又は50質量%超であると、液晶シール剤の耐熱性が低下する場合がある。
【0081】
(フィラー)
フィラーは、液晶シール剤の粘度を制御するため、或いは液晶シール剤を硬化させた硬化物の強度向上又は線膨張性の抑制によって液晶シール剤の接着信頼性を向上させるために添加される充填剤である。
【0082】
フィラーとしては、公知のフィラーを使用すればよく特に限定されない。フィラーの例には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、二酸化珪素、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、アスベスト粉、石英粉、雲母、ガラス繊維、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機フィラーが含まれる。
【0083】
フィラーは、液晶シール剤の特性を損なわない範囲であれば、ポリメタクリル酸メチル微粒子、ポリスチレン微粒子、これらを構成するモノマーと他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子等の公知の有機フィラーであってもよい。
【0084】
液晶シール剤を硬化させた硬化物の線膨張率や形状保持性を向上させるという観点からは、無機フィラーが好ましい。また、UV透過性が高い等の理由から、二酸化ケイ素、タルクが更に好ましい。なお、無機フィラーと有機フィラーのいずれについても、エポキシ樹脂やシランカップリング剤等でグラフト変性されたものでもよい。フィラーの形状は特に限定されず、球状、板状、針状等の定形物であっても、非定形物であってもよい。
【0085】
一方、有機フィラーのなかでは、環球法により測定される軟化点温度が50〜120℃の熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ポリマー微粒子が好ましい。このような熱可塑性ポリマー微粒子を含有させることで、液晶シール剤の接着強度が更に向上する。なお、熱可塑性ポリマー微粒子の数平均粒子径は、0.05〜5μmであることが好ましい。
【0086】
液晶シール剤に含有されるフィラーの量は、フィラーを除く液晶シール剤100質量部に対して2〜40質量部とすることが好ましく、5〜30質量部とすることが更に好ましい。フィラーの含有割合が上記範囲内にある液晶シール剤は、基板に対する塗布性、及びその硬化物と液晶表示パネルを構成する基板との接着強度が高く良好である。
【0087】
(その他の添加剤)
液晶シール剤には、必要に応じて上記の各成分とともに、熱ラジカル重合開始剤、シランカップリング剤等のカップリング剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等の各種添加剤を含有させることができる。また、液晶表示パネルにおいて2枚の基板間に形成される液晶セルの間隔を確保するためのスペーサーを含んでいてもよい。
【0088】
(有機溶剤)
液晶シール剤には、スクリーン印刷機等による塗布性を向上させる等の観点から、公知の有機溶剤を含ませてもよい。有機溶剤の例には、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤;ジエチレングリコールジアセテート、アルコキシジエチレングリコールモノアセテート等のアセテート溶剤の他、トルエン、ヘキサンが含まれる。液晶シール剤には、これらの有機溶剤の二種類以上を添加してもよい。
【0089】
液晶シール剤に含有される有機溶剤の割合は、20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることが更に好ましい。有機溶剤の含有割合が上記範囲内にある液晶シール剤は塗布性が高くなる。また、液晶シール剤を用いて得られる硬化物中に有機溶剤がほとんど残らなくなるため、表示性の高い液晶表示パネルを製造することができる。
【0090】
(液晶シール剤の調製方法)
液晶シール剤を調製する方法は特に限定されず、公知の技術を使用することができる。また、液晶シール剤の各成分を混合する手段の例には、双腕式撹拌機、ロール混練機、2軸押出機、ボールミル混練機、遊星式撹拌機が含まれるが特に限定されず、公知の撹拌機又は混練機を適宜選択し、使用すればよい。いずれかの手段により混合された液晶シール剤は、フィルタでろ過され不純物が取り除かれる。不純物が取り除かれた液晶シール剤は真空脱泡処理が施されてからガラス瓶やポリ容器に密封充填され、必要に応じて貯蔵、輸送される。
【0091】
2.液晶表示パネル及びその製造方法:
次に、本発明の液晶表示パネルの製造方法について説明する。本発明の液晶シール剤は、光照射による硬化プロセスが組み込まれている公知の液晶表示パネルの製造方法に好ましく適用できる。そのなかでも、以下に説明する液晶滴下方式が採用された液晶表示パネルの製造方法に適用すれば、優れた生産性で高品質の液晶表示パネルを製造することができるので好ましい。
【0092】
本発明の液晶表示パネルの製造方法は、(1)前述の液晶シール剤を用いて、第一の基板上に枠状のシールパターンを形成する工程と、(2)シールパターンが未硬化の状態においてシールパターンの枠内、又は第二の基板上に液晶を滴下する工程と、(3)第一の基板と第二の基板を減圧条件下で重ね合わせる工程と、(4)第一の基板と第二の基板の間に挟まれた液晶シール剤を光硬化させる工程と、(5)光硬化後の液晶シール剤を熱硬化させる工程と、を含む。
【0093】
前記(1)の工程では、2枚の基板のうちのいずれか一方(第一の基板)に液晶シール剤を塗布し、枠状のシールパターンを形成する。このシールパターンの枠内は、表示領域となる部分である。また、この枠状のシールパターンは、第一の基板の外周付近に設置されることが好ましいが、特に限定されない。更に、第一の基板上に液晶シール剤を塗布する方法についても特に限定されない。なお、液晶シール剤の塗布方法の例には、スクリーン印刷方法やディスペンサーによる塗布方法が含まれる。また、液晶シール剤は、両方の基板(第一の基板及び第二の基板)の表面に塗布してもよい。
【0094】
2枚の基板の例には、TFTがマトリックス状に形成されたガラス基板や、カラーフィルタ、ブラックマトリクスが形成された基板が含まれる。基板の材質の例には、ガラスの他、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、PMMA等のプラスチックが含まれる。基板の表面には、酸化インジウムに代表される透明電極、ポリイミド等に代表される配向膜、その他、無機質イオン遮蔽膜等が施工されていてもよい。なお、配向膜の例には、公知での有機又は無機成分からなる配向膜が含まれる。
【0095】
前記(2)の工程では、未硬化状態のシールパターンの枠内、又は第二の基板上に適量の液晶を滴下する。液晶の滴下は、通常、大気圧下で行う。このとき、液晶がシールパターンの枠内に収まるように、枠のサイズに応じて液晶の滴下量を調節することが好ましい。このようにして枠内に液晶を滴下すれば、液晶の容量が貼り合わせ後の枠と基板とで囲まれる空のセルの容量を超えることがない。このため、枠に過剰の圧力がかからず、枠を形成するシールが破れるおそれが少ない。
【0096】
第二の基板とは、表示領域を有する第一の基板とは異なる基板を意味する。シールパターンが形成されていない第二の基板上に液晶を滴下する場合には、基板どうしを重ね合わせた際に、表示領域となり得る第二の基板上の任意の位置に液晶を滴下すればよい。
【0097】
前記(3)の工程では、液晶が滴下された基板と、もう一方の基板とを減圧条件下にて重ね合わせる。基板どうしの重ね合わせは、真空貼り合せ装置等を用いて行なえばよいが、特に限定されない。
【0098】
また、通常、液晶滴下方式では、基板の重ね合わせが減圧条件下で行われる。このように減圧下で重ね合わせた2枚の基板を大気圧へ戻せば、発生する気圧差により短時間で効率よく基板どうしを貼り合わせることができる。このように気圧差を利用して貼り合わされた基板どうしは密着性が良好であるから、高品質の液晶表示パネルを製造することができる。
【0099】
前記(4)の工程では、第一の基板と第二の基板の間に挟まれた液晶シール剤を光硬化させる。より具体的には、適量の光を照射することで液晶シール剤を光硬化させる。これにより、第一の基板と第二の基板を、液晶シール剤を介して仮接着することができる。
【0100】
光の種類や照射時間等の硬化処理条件は、用いられる液晶シール剤の組成に応じて適宜選択すればよい。例えば、安全性や作業性の観点から紫外線を好適に用いることができる。より具体的には、加圧条件下にて1000〜18000mJの範囲内で液晶シール剤に紫外線を照射すればよい。
【0101】
前記(5)の工程では、光硬化後の液晶シール剤を熱硬化させる。これにより、第一の基板と第二の基板を、液晶シール剤を介して強固に接着(本接着)することができる。加熱時の温度や時間等の硬化処理条件は、用いられる液晶シール剤の組成に応じて適宜選択すればよい。例えば、無加圧のまま加熱温度を110〜140℃の範囲内とし、1時間の加熱を行えば、十分に液晶シール剤を硬化させることができる。
【0102】
本発明の液晶シール剤を用いて上記のような製造方法で製造された液晶表示パネルは、短時間のうちに優れた生産性で得られるにもかかわらず、基板と液晶シール剤の硬化物との接着強度が高く、液晶汚染も抑えられるので極めて良好な表示性を示す。また、本発明の液晶シール剤は、硬化させた場合に優れた高温・高湿耐久性を示すものであるため、ある程度の過酷な条件下でも使用可能な液晶表示パネルを製造することができる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に記載の「%」及び「部」は、特に断りのない限り「質量%」及び「質量部」をそれぞれ意味する。また、原料や試薬は、特に断りのない限り分子蒸留や精製等の高純度化処理したものを使用した。
【0104】
1.各種特性の評価方法:
[ディスペンス塗布性]:シリンジに20gの液晶シール剤を真空条件下で充填した。口径0.35mmの針先をシリンジに装着し、針先から1gの液晶シール剤を吐出後、23℃で1日放置した。その後、シリンジをディスペンサー(日立プラントテクノロジー社製)にセットし、360mm×470mmの液晶表示パネル用ガラス基板(日本電気硝子社製)の上に35mm×40mmの四角枠状のシールパターンを50個描画した。なお、吐出圧力は0.3MPa、塗布速度は100mm/secとし、シールパターンの断面積は3000μmとした。描画したシールパターンのシール形状を以下に示す基準により評価した。
○(優れる):切れ及びかすれが全く発生していないシールパターンが50個
△(やや優れる):切れ及びかすれが全く発生していないシールパターンが48〜49個
×(劣る):切れ及びかすれが全く発生していないシールパターンが48個未満
【0105】
[耐液晶リーク性]:液晶シール剤100部に対して粒径5μmの球状スペーサー1部を添加して脱泡処理を行い、球状スペーサーが添加された液晶シール剤を調製した。調製した液晶シール剤をイエローランプ下でディスペンス用シリンジに充填した。ディスペンス装置(日立プラントテクノロジー社製)を使用し、360mm×470mmの液晶表示パネル用のガラス基板(日本電気硝子社製)の上に、描画スピード100mm/sで液晶シール剤を塗布し、35mm×40mm角の四角形枠状のシールパターン(線の断面積:3500μm)を50個作製した。更に、作製した50個のシールパターンを囲むように、同一の条件で液晶シール剤を塗布し、二重枠のシールラインを作製した。シールパターン内に、貼り合わせ後のパネル内容量に相当する量の液晶材料(「MLC−11900−000」、メルク社製)を、ディスペンス装置(日立プラントテクノロジー社製)を使用して精密に滴下した。真空貼り合せ装置(信越エンジニアリング社製)を使用し、5Paの減圧下で上記ガラス基板と、対向するガラス基板とを重ね合わせた。重ね合わせたガラス基板を遮光ボックス内で3分間保持後、2000mJの紫外線を照射してシールパターン(液晶シール剤)を仮硬化させた。次いで、120℃で60分加熱してシールパターン(液晶シール剤)を熱硬化させて液晶表示パネルを得た。得られた液晶表示パネルの「シールの最大幅に対する最小幅の比率(%)」を下記式(A)に従って算出し、シールパターン直線性(シール直線性)を以下の基準により評価した。なお、シール直線性は、耐液晶リーク性の指標とすることができる。
「シールの最大幅に対する最小幅の比率(%)」=(「シールの最小幅」/「シールの最大幅」)×100 ・・・(A)
<シール直線性の評価基準>
○(優れる):上記比率が95%以上のもの
△(やや優れる):80%以上95%未満であるもの
×(劣る):80%未満であるもの:×(劣る)
なお、上記の判定であっても、シールライン内に液晶が入り込んでいるものについては、耐液晶リーク性に劣るため「×」と評価した。
【0106】
[液晶表示パネルの表示特性評価]:ディスペンサー(「ショットマスター」、武蔵エンジニアリング製)を使用し、透明電極及び配向膜を付した40mm×45mmのガラス基板(「RT−DM88−PIN」、EHC社製)上に液晶シール剤を塗布し、35mm×40mmの四角形枠状のシールパターン(線の断面積:3500μm)(メインシール)を作製した。更に、作製したメインシールを囲むように、同一の条件で液晶シール剤を塗布した。メインシールの枠内に、貼り合せ後のパネル内容量に相当する量の液晶材料(「MLC−11900−000」、メルク社製)を、ディスペンサーを用いて精密に滴下した。上記ガラス基板と、対向するガラス基板とを減圧下で重ね合わせた後、大気圧下に開放して貼り合わせた。貼り合わせたガラス基板を遮光ボックスに3分間保持後、3000mJ/cmの紫外線を照射してメインシール(液晶シール剤)を仮硬化させた。次いで、120℃で60分加熱してメインシール(液晶シール剤)を熱硬化させて液晶表示パネルを得た。得られた液晶表示パネルを、直流電源装置を使用して印加電圧5Vで駆動させ、メインシール(液晶シール剤)近傍における液晶の色むら発生の有無を目視観察し、以下に示す基準により液晶表示パネルの表示特性を評価した。
<表示特性の評価基準>
○(優れる):シール際まで表示機能が発揮されており、表示機能の異常が認められない
△(やや優れる):シール際0.3mm以内の位置で表示機能の異常が認められる
×(劣る):シール際0.3mmを超える位置で表示機能の異常が認められる
【0107】
[液晶表示パネルの耐湿表示特性評価]:上記「液晶表示パネルの表示特性評価」に記載した手順と同様の手順で作製した液晶表示パネルを、高温高湿条件下(70℃、95%RH)で500時間放置した。高温高湿条件下に放置後の液晶表示パネルを、直流電源装置を使用して印加電圧5Vで駆動させ、メインシール(液晶シール剤)近傍における液晶の色むら発生の有無を目視観察し、以下に示す基準により液晶表示パネルの耐湿表示特性を評価した。
<耐湿表示特性の評価基準>
○(優れる):シール際まで表示機能が発揮されており、表示機能の異常が認められない
△(やや優れる):シール際0.3mm以内の位置で表示機能の異常が認められる
×(劣る):シール際0.3mmを超える位置で表示機能の異常が認められる
【0108】
[接着強度]:上記「液晶表示パネルの表示特性評価」に記載した手順と同様の手順で作製した液晶表示パネルを、高温高湿条件下(70℃、95%RH)で500時間放置した。引張試験装置(インテスコ社製)を使用し、引張速度2mm/分の条件で、高温高湿条件下に放置後の液晶表示パネルの二枚のガラス基板の平面引張強度(接着強度)を測定した。なお、以下に示す基準により接着強度を評価した。
<接着強度の評価基準>
○(優れる):接着強度が15MPa以上
△(やや優れる):接着強度が7MPa以上、15MPa未満
×(劣る):接着強度が7MPa未満
【0109】
[粘度安定性]:ディスペンス用シリンジに10gの液晶シール剤を入れ、脱泡処理を行った。脱法処理後の液晶シール剤2gを使用して初期粘度を測定した。また、この液晶シール剤の23℃、50%RHで1週間保存後の粘度を測定し、以下に示す基準により粘度安定性を評価した。
<粘度安定性の評価基準>
○(優れる):初期粘度に対する1週間後の粘度の割合(上昇率)が1.5倍以下
△(やや優れる):初期粘度に対する1週間後の粘度の割合(上昇率)が1.5倍を超え2倍以下
×(劣る):初期粘度に対する1週間後の粘度の割合(上昇率)が2倍を超える
【0110】
2.使用した成分:
(アクリル樹脂)
トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名「NKエステルA−TMPT」、新中村化学工業社製)
【0111】
(エポキシ樹脂)
商品名「エピクロン154」(ジャパンエポキシレジン社製)
【0112】
(熱潜在性エポキシ硬化剤)
1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(商品名「アミキュアVDH」、味の素社製、融点:120℃)
【0113】
(光ラジカル重合開始剤)
商品名「イルガキュア651」(チバスペシャルティー・ケミカルズ社製)
【0114】
(熱可塑性ポリマー微粒子)
ポリメタクリル酸メチル微粒子(商品名「F325」、ゼオン化成社製、環球法により測定される軟化点温度:80℃、1次粒子径:0.5μm)
【0115】
(シランカップリング剤)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−403」、信越化学工業社製)
【0116】
3.合成例:
(合成例1)
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器、及び邪魔板を備え、下部に分液コックが付いた2L容量のセパラブルフラスコに、4核体フェノールアラルキル樹脂(軟化点:62℃)200部、エピクロルヒドリン600部、第三級ブチルアルコール300部、及びイソプロピルアルコール300部を仕込み、撹拌して40℃に加熱した。滴下ロートより、48%水酸化カリウム水溶液200部を3時間かけて滴下した。なお、常圧で40℃を維持して反応させた。滴下終了後、30分間撹拌を続けて反応を完結させた。反応完結後、水300部を加えて生成した塩を溶解させた。撹拌を停止して静置し、分液して水相を除去した後、濃縮して粗樹脂を得た。得られた粗樹脂中の加水分解性塩素量を測定し、測定した加水分解性塩素量と当量の3%水酸化ナトリウム水溶液を調製した。粗樹脂300部をメチルイソブチルケトン300部に溶解した溶液に対して、調製した3%水酸化ナトリウム水溶液を加え、80℃で3時間撹拌した。生成した塩を水洗して除去した後、メチルイソブチルケトンと水を共沸させて水分を除去した。更に、微量に残存する塩を濾過して除去した。濾液を濃縮してエポキシ化合物(1−e)(ザイロック型エポキシ樹脂・4核体、重量平均分子量:492、エポキシ当量:246g/eq)を得た。得られたエポキシ化合物(1−e)は、前記一般式(1−e)中のRが水素原子(H)のものである。
【0117】
撹拌機、気体導入管、温度計、及び冷却管を備えた1L容量の4口フラスコに、エポキシ樹脂(1−e)246g、トルエン200g、メタクリル酸43g(0.5mol)、及びトリエタノールアミン0.5gを仕込み、乾燥空気を吹き込みながら90℃で5時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、反応液を超純水で10回洗浄処理した。次いで、トルエンを留去して(メタ)アクリルエポキシ樹脂(1)260gを得た。得られた(メタ)アクリルエポキシ樹脂(1)の重量平均分子量は580であり、水素結合性官能基当量は1.7×10−3であった。
【0118】
(合成例2〜7)
表1に示す種類のエポキシ化合物を0.5mol、及び表1に示す量のメタクリル酸を用いたこと以外は、前述の合成例1と同様にして(メタ)アクリルエポキシ樹脂(2)〜(7)を得た。得られた(メタ)アクリルエポキシ樹脂(2)〜(7)の重量平均分子量、水素結合性官能基当量を表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
(合成例8)
撹拌機、気体導入管、温度計、及び冷却管を備えた1L容量の4口フラスコに、エポキシ化合物(1−e)246g、トルエン200g、メタクリル酸86g、及びトリエタノールアミン0.5gを仕込み、乾燥空気を吹き込みながら90℃で5時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、反応液を超純水で10回洗浄処理した。次いで、トルエンを留去して(メタ)アクリルエポキシ樹脂(8)299gを得た。得られた(メタ)アクリルエポキシ樹脂(8)の重量平均分子量は664であり、水素結合性官能基当量は3.0×10−3であった。
【0121】
(合成例9)
撹拌機、気体導入管、温度計、及び冷却管を備えた1L容量の4口フラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「エピクロンYL980」、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量:185g/eq)185g、トルエン200g、メタクリル酸43g、及びトリエタノールアミン0.5gを仕込み、乾燥空気を吹き込みながら90℃で5時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、反応液を超純水で10回洗浄処理した。次いで、トルエンを留去して(メタ)アクリルエポキシ樹脂(9)205gを得た。得られた(メタ)アクリルエポキシ樹脂(9)の重量平均分子量は426であり、水素結合性官能基当量は2.4×10−3であった。
【0122】
(合成例10)
撹拌機、気体導入管、温度計、冷却管を備えた1L容量の4口フラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「エピクロンYL980」、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量:185g/eq)185g、トルエン200g、メタクリル酸86g、及びトリエタノールアミン0.5gを仕込み、乾燥空気を吹き込みながら90℃で5時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、反応液を超純水で10回洗浄処理した。次いで、トルエンを留去して(メタ)アクリルエポキシ樹脂(10)244gを得た。得られた(メタ)アクリルエポキシ樹脂(10)の重量平均分子量は513であり、水素結合性官能基当量は3.9×10−3であった。
【0123】
(合成例11)
撹拌機、気体導入管、温度計、及び冷却管を備えた1L容量の4口フラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名「エピクロンYL983U」、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ当量170g/eq)170g、トルエン200g、メタクリル酸86g、及びトリエタノールアミン0.5gを仕込み、乾燥空気を吹き込みながら90℃で5時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、反応液を超純水で10回洗浄処理した。次いで、トルエンを留去して(メタ)アクリルエポキシ樹脂(11)230gを得た。得られた(メタ)アクリルエポキシ樹脂(11)の重量平均分子量は485であり、水素結合性官能基当量は4.1×10−3であった。
【0124】
(合成例12)
撹拌機、気体導入管、温度計、及び冷却管を備えた1L容量の4口フラスコに、エポキシ樹脂(1−d)156g、トルエン200g、メタクリル酸172g、及びトリエタノールアミン0.5gを仕込み、乾燥空気を吹き込みながら90℃で5時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、反応液を超純水で10回洗浄処理した。次いで、トルエンを留去して(メタ)アクリルエポキシ樹脂(12)295gを得た。得られた(メタ)アクリルエポキシ樹脂(12)の重量平均分子量は966であり、水素結合性官能基当量は4.1×10−3であった。
【0125】
4.実施例:
(実施例1)
アクリル樹脂20部、(メタ)アクリルエポキシ樹脂(1)80部、熱潜在性エポキシ硬化剤7部、光ラジカル重合開始剤1部、シランカップリング剤1部、及び熱可塑性ポリマー微粒子15部をダルトンミキサーと3本ロールを用いて十分に混練して液晶シール剤を得た。得られた液晶シール剤の、E型粘度計(1.0rpm)により測定される25℃での粘度は300Pa・sであった。得られた液晶シール剤のディスペンス塗布性の評価は「○」、耐液晶リーク性の評価は「○」、液晶表示パネルの表示特性評価は「○」、液晶表示パネルの耐湿表示特性評価は「○」、接着強度の評価は「○」、及び粘度安定性の評価は「○」であった。
【0126】
(実施例2〜11、比較例1〜5)
表2に示す組成としたこと以外は、上述の実施例1と同様にして液晶シール剤を得た。得られた液晶シール剤の各種評価結果を表2に示す。
【0127】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の液晶シール剤は、液晶表示パネルを製造する際に用いられる、液晶を封入するためのシール剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光及び熱によって硬化する液晶シール剤であって、
1分子内の水素結合性官能基当量が3.0×10−3未満であり、重量平均分子量が500以上、800未満である、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基をそれぞれ少なくとも1個有する(メタ)アクリルエポキシ樹脂と、
光ラジカル重合開始剤と、
熱潜在性エポキシ硬化剤と、
を含有する液晶シール剤。
【請求項2】
前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂が、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基をそれぞれ1個有する樹脂である請求項1に記載の液晶シール剤。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂が、1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部の前記エポキシ基と、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系化合物の前記カルボキシル基と、を反応させて得られるものである請求項2に記載の液晶シール剤。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸系化合物が、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの組み合わせのいずれかのみである請求項2又は3に記載の液晶シール剤。
【請求項5】
前記液晶シール剤に含有される、前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂の割合が20〜90質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項6】
アクリル樹脂を更に含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項7】
前記(メタ)アクリルエポキシ樹脂、前記アクリル樹脂、及び前記熱潜在性エポキシ硬化剤の合計100質量部に対する、前記熱潜在性エポキシ硬化剤の含有量が3〜40質量部である請求項6に記載の液晶シール剤。
【請求項8】
エポキシ樹脂を更に含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項9】
フィラーとシランカップリング剤を更に含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶シール剤。
【請求項10】
前記フィラーが、環球法により測定される軟化点温度が50〜120℃の熱可塑性ポリマーを含む、数平均粒子径が0.05〜5μmの熱可塑性ポリマー微粒子である請求項9に記載の液晶シール剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶シール剤を用いて、第一の基板上に枠状のシールパターンを形成する工程と、
前記シールパターンが未硬化の状態において前記シールパターンの枠内、又は第二の基板上に液晶を滴下する工程と、
前記第一の基板と前記第二の基板を減圧条件下で重ね合わせる工程と、
前記第一の基板と前記第二の基板の間に挟まれた前記液晶シール剤を光硬化させる工程と、
光硬化後の前記液晶シール剤を熱硬化させる工程と、
を含む液晶表示パネルの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶表示パネルの製造方法によって製造される液晶表示パネル。

【公開番号】特開2011−221168(P2011−221168A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88522(P2010−88522)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】