説明

液晶ポリマー組成物

規定量の非サイズ塗りガラスフィラーと約280℃以上の融点を有する液晶ポリマーとを含む液晶ポリマー組成物は、サイズ塗りガラスフィラーを含有する類似の組成物と比較して改善された高温安定性を有する。組成物は、電気および電子装置での部品、ならびに調理器具のような、組成物が長期間高温に曝される場合に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高温での熱老化からの分解に対する改善された耐性を有する液晶ポリマー(LCP)組成物は、LCPと何のサイジングも持たないガラスフィラーとを含む。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリマー(LCP)は、一般目的用途向けの成形樹脂として、より具体的にはそれらの熱安定性、耐化学薬品性、および他の望ましい特性のために電気およびエレクトロニクス産業で有用であるので、商業の重要なアイテムになってきた。多くの用途向けには、成形樹脂は、それらが長期間にわたって高温に保たれる時だけでなく、少しの間加熱される時にも良好な安定性を示すべきである。
【0003】
高温で老化する時、LCP組成物は1つまたは複数の有害な特性を示す。膨れは、ガス封入(「気泡」)、特により大きな封入がポリマーマトリックス内に形成される時の現象である。観察される結果は、部品の表皮の真下に形成される望ましくない膨れである。熱酸化分解は、特により高温でおよび/または酸素の存在下で実質的にすべての有機ポリマーによって示される現象である。分解の速度は、温度、部品と接触している媒体の性質、損傷を与える放射線の存在、および部品がこの環境に曝される時間をはじめとする因子に依存する。それらはしばしば他の熱可塑性樹脂材料と比べて優れた耐熱老化性を有するが、十分に厳しい条件を仮定すれば、LCPでさえも時々熱酸化分解を受ける。かかる分解はしばしばポリマー部品からの徐々の重量損失につながり、フィラーのような不活性成分を後に残す。靱性、引張強度および破断伸びのような他の物理的性質はしばしばこの重量損失と平行して低下し、それ故これらはしばしば熱酸化分解についての測定可能な指標である。熱酸化分解の速度は通常、より高い温度で漸次より高くなり、典型的には温度との指数関数的アレニウム(Arrhenius)型相関に従う。
【0004】
繊維のようなガラスフィラーは、物理的性質を改質するために広範囲にわたって使用される。かかるガラスフィラーは様々な方法によって製造され、その最も一般に用いられるものは、それぞれ数十または数百の繊維の束の形でガラス繊維を提供する。繊維束の利点は、容易に包装され、輸送されること、およびガラス強化プラスチックを製造するために用いられる配合装置中へ後で供給されるのが容易であることである。これらの束を形成するために、ガラス繊維は、それらが押し出された後に非常に薄いコーティング(「サイジング」)を受け、このサイジングは、これらの束中に繊維を一緒に保持し、互いに擦り合うことによる損傷から個々の繊維を保護する。通常加熱を伴う高剪断条件下で、例えば熱可塑性樹脂中への配合中に、束はバラバラになり、個々の繊維をプラスチックマトリックス中へ放出する。これらの機能に加えて、熱可塑性樹脂中への配合を意図されたガラスフィラー上のサイジングはまた、例えば、エポキシド、シランなどと共に、熱可塑性樹脂へのガラスの接着力を改善する結合剤を含むかもしれない。熱可塑性樹脂用フィラーとして使用されるガラス繊維(特に細断ガラス繊維)およびミルド・ガラス(繊維)のようなガラスフィラーは、ほとんど必ずそれらの上にサイジングを有する。
【0005】
サイジングなしのガラス繊維を含有するLCP組成物は文書化されており、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、および米国特許公報(特許文献4)を参照されたい。これらの参考文献に記載されている組成物は、350℃未満の融点のLCPを含有し、および/またはより高温で安定でない、かなりの量の他のタイプのポリマーをも含有する。これらの文書のすべてが、引張強度および伸びのような改善された物理的性質を有する組成物を指向している。
【0006】
【特許文献1】特開平08−134334号公報
【特許文献2】特開平07−003137号公報
【特許文献3】特開平05−331356号公報
【特許文献4】米国特許第5,646,209号明細書
【特許文献5】米国特許第4,118,372号明細書
【特許文献6】国際公開特許出願第02/02717号パンフレット
【非特許文献1】N−C Lee著、「Reflow Soldering Processes and Troubleshooting(リフローはんだ付け法およびトラブルシューティング)」、ボストン(Boston)、Newnes、2001年
【非特許文献2】J.S.Hwang著、「Modern Solder Technology for Competitive Electronics Manufacturing(競合できるエレクトロニクス製造のための最新はんだ技術)」、ニューヨーク(New York)、McGraw Hill、1996年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(a)サイジングなしのガラスフィラーと、
(b)約350℃以上の融点を有するサーモトロピック液晶ポリマーと
を含む組成物に関する。
【0008】
本発明はまた、はんだ浴法によって、電気または電子装置に導電路を形成する方法に関し、前記装置が
(a)サイジングなしのガラスフィラーと、
(b)約280℃以上の融点を有するサーモトロピック液晶ポリマーと
を含む組成物を含有することを改良点として含む。
【0009】
本明細書ではまた、
(a)サイジングなしのガラスフィラーと、
(b)約280℃以上の融点を有するサーモトロピック液晶ポリマーと
を含む、1つまたは複数の導電路を有する電気または電子装置も開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
「サーモトロピック液晶ポリマー」とは、本明細書ではTOT試験または参照により本明細書によって援用される米国特許公報(特許文献5)に記載されているような、その任意の差し支えない変形を用いて試験された時にアニソトロピックであるポリマーを意味する。有用なLCPには、ポリエステル、ポリ(エステル−アミド)、およびポリ(エステル−イミド)が含まれる。ポリマーの好ましい一形態は「全芳香族」である、すなわち、ポリマー主鎖中の基のすべてが芳香族であるが(エステル基のような連結基を除いて)、芳香族でない側基が存在してもよい。好ましくは、LCPは組成物の少なくとも約35重量パーセントである。好ましくは、LCPの融点は約350℃以上、より好ましくは約365℃以上、特に好ましくは約390℃以上である。融点は米国材料試験協会(ASTM)方法D3418によって測定される。融点は溶融吸熱の最大値として取られ、10℃/分の加熱速度での二次加熱で測定される。2つ以上の融点が存在する場合、ポリマーの融点は該融点のうちの最高のものとして取られる。
【0011】
「ガラスフィラー」とは、本明細書では熱可塑性樹脂への混合に好適な任意の比較的小さい粒子状または繊維状ガラス材料を意味する。有用なガラス材料には、いわゆる「E−ガラス」、「S−ガラス」、ソーダ石灰ガラス、およびホウケイ酸ガラスが含まれる。このフィラーは、繊維(ファイバーガラス)、ミルド・ガラス(粉砕ガラス繊維)、ガラスフレーク、中空または中実球のような、任意の形態にあってもよい。ガラスの好ましい形態は、ガラス繊維およびミルド・ガラスであり、ガラス繊維が特に好ましい。
【0012】
「サイジングなし」とは、ガラス(または他の材料)がポリマー、オリゴマー、モノマー化合物、または重合性化合物をはじめとする任意の有機化合物で意図的にコートされていないことを意味する。サイジングなしには、その表面からいかなる有機成分も除去するために十分に高い温度で処理された(焼成された)任意のガラスフィラーが含まれる。ガラスフィラーは、シリカまたはアルミナのような無機化合物でコートされていてもよい。典型的には、サイズ塗りガラスフィラーは約0.5〜2重量パーセントのサイジングを含有する。
【0013】
本明細書ではすべての重量パーセントは、特に明記しない限り、LCPとガラスフィラーとを含有する全組成物を基準にしている。
【0014】
好ましくは、組成物中のLCPの量は少なくとも約35重量パーセント、より好ましくは少なくとも約45重量パーセントである。好ましくは、ガラスフィラー(それはある場合には強化材と考えられてもよい)の量は0.1〜約65重量パーセント、より好ましくは約5〜約50重量パーセントである。
【0015】
他の材料、特に熱可塑性樹脂組成物中にしばしば見いだされるものまたは該組成物での使用のために製造されるものもまた組成物中に存在してもよい。これらの材料は、使用中におよび/または部品形成中に、成形部品の動作環境下で好ましくは化学的に不活性で、かつ、適度に熱的に安定であるべきである。特に、使用中の成形部品の動作環境中でまたはそれが加工されつつある間に実質的に熱的に安定でない他のポリマーは、好ましくは回避されるべきである。安定な材料には、1つまたは複数のフィラー、強化材、顔料、および成核剤が含まれるかもしれない。他のポリマーもまた存在してもよく、こうしてポリマーブレンドを形成する。他のポリマー(LCP以外の)が存在する場合、それらは組成物の25重量パーセント未満であることが好ましい。別の好ましいタイプの組成物では、他のポリマー(LCP以外の)は、滑剤および加工助剤のような、少ない総量(5重量パーセント未満、より好ましくは3重量パーセント未満、非常に好ましくは1.0重量パーセント未満、特に好ましくはなし)のポリマーを除いては存在しない。別の好ましい形態では、組成物は、約1〜約55重量パーセントのフィラーおよび/または強化材(ガラスフィラー以外の)、より好ましくは約5〜約40重量パーセントのこれらの材料を含有する。強化材および/またはフィラーには、アラミド繊維、ウォラストナイト、二酸化チタンウィスカー、および例えば雲母、粘土、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、タルクなどの粉末(微粒子)のような繊維状材料が含まれる。これらの材料の幾つかは、組成物の強度および/または弾性率を改善する役割を果たすかもしれない、および/または耐燃焼性を改善するかもしれない(例えば、参照により本明細書によって援用される(特許文献6)を参照されたい)。好ましいフィラー/強化材には、雲母およびタルクが含まれる。好ましくは、フィラー/強化材はサイズを塗られていないし、または別のやり方で有機材料でコートされていない。
【0016】
好ましいLCPは、4,4’−ビフェノール/テレフタル酸/イソフタル酸/4−ヒドロキシ安息香酸またはそれらの誘導体(100/95/5/100モル部)から製造され、約400℃の融点を有する。テレフタル酸/イソフタル酸のモル部はまた、90/10〜約97.5/2.5の範囲であることもできる。
【0017】
多くの電気および電子用途向けにかかる組成物は好ましくは難燃性である、すなわち、組成物は0.79mmの厚さでV−1のUL−94格付け、より好ましくは0.79mmの厚さでV−0のUL−94格付けを有することもまた好ましい。UL−94試験(アンダーライターズ・ラボラトリーズ(Underwriter's Laboratories))はプラスチック材料についての燃焼性試験であり、V−0格付けの要件はV−1格付けの要件に対してより厳しい。試験片が薄ければ薄いほど、より良好な耐燃焼性格付けを達成することは困難になる。
【0018】
好ましくは、組成物は1.82MPaで少なくとも約240℃、より好ましくは少なくとも約275℃、特に好ましくは少なくとも約340℃の加熱撓み温度(HDT)を有する。HDTはASTM方法D648によって測定される。
【0019】
本明細書に記載される組成物は、熱可塑性樹脂組成物を混合し、成形するために用いられる通常の方法によって製造され、部品に成形されてもよい。組成物は、単軸もしくは二軸スクリュー押出機または溶融混練機のような典型的な混合装置で原料を溶融混合(LCPと任意の他の低融点原料とが溶融される)することによって製造されてもよい。部品は、押出、押出コーティング、熱成形、ブロー成形、または射出成形のような典型的な熱可塑性樹脂成形法によって形成されてもよい。
【0020】
これらの組成物(その中に上述した融点の任意のLCP)は、特に電気および電子用途で有用であり、特に鉛フリーのはんだ付けまたは他の加工工程中に260℃までのまたは300℃さえのピーク温度に急速に到達するかもしれない場合、または使用中に260℃を超える連続温度に遭遇する場合、および特に280℃を超える温度に対して有用である。かかる用途には、ランプソケット、ランプホルダー、ランプ基部、電気または電子コネクター、回路基板、端子ブロック、端末コネクター、ヒーター取付台、点火コイル、リレーソケット、高電圧コネクター、スパークプラグ部品、非常スイッチ;オーブン、炊事用具および洗浄機をはじめとする家庭電気器具用のコントローラーおよびスイッチ;電気モーターブラシホルダー、巻型、回路ブレーカー、回路ブレーカー・ハウジング、接触器ハウジングおよびプリントコネクター、ならびに電気および電子コネクター、分配器;コピー機およびプリンターでのような高温に曝される事務機器部品;スペーサーおよび支持材のような変圧器部品、スイッチおよびマイクロスイッチが含まれる。さらなる用途には、エンジン・ターボチャージャー部品、およびガス・リサイクリング・システムに見いだされるようなエンジン排気部品が含まれる。
【0021】
このように、LCPの融点が約280℃以上、より好ましくは約300℃以上、特に好ましくは約350℃以上である本発明組成物は、回路基板、または電気もしくは電子コネクターのような装置に(電気的)連結を形成するためにはんだ浴中で加熱を容易に受けてもよい。上述のように、これらの組成物の高い熱安定性のために、それらは、鉛フリーであるはんだ浴を使用する場合に特に有用である。これらのはんだ浴はより高い温度で動作する傾向がある。
【0022】
「はんだ浴法」とは、表面取付けおよび/またはスルーホール・デバイスのような1つまたは複数の部品をそれに付けていてもよい、そして単層または多層を有してもよい、回路基板または電気コネクターのような装置中に/上に導電路を形成するために用いられるリフローはんだ付けまたはウェーブはんだ付けのような方法を意味する。かかる方法は周知であり、例えば、その両方とも参照により本明細書によって援用される(非特許文献1)、および(非特許文献2)を参照されたい。
【0023】
これらのはんだ浴法の使用は典型的には、少なくとも1つの導電路を有する電気または電子部品をもたらす。これらの経路の少なくとも1つは典型的にははんだを含む。
【0024】
他の用途(LCPの融点が350℃以上、または約280℃以上である場合)は、調理器具および耐熱皿を含み、使用の間ずっと調理器具および耐熱皿によって体験される環境を考慮している。この調理器具は、フルオロポリマーまたはシリコーン系コーティングのような剥離コーティングでコートされてもよい。調理器具の表面を処理するおよび/またはプライマーを使用する、およびまたはこれらの剥離コーティングを耐久性にするためにかかる剥離コーティングに上でベーキングすることがしばしば必要である。プライマーおよび/またはトップコート上でベーキングすることが望ましい場合、高温がしばしば用いられる。本発明のLCP組成物の高温安定性は特に、高い溶融温度のフルオロポリマーコーティングの使用を可能にし、望ましい質の優れた耐久性、耐汚染性および改善された剥離を提供する。これらの高温では、特に、剥離コーティングの下方にまたはLCP内に捕捉されるようになり、それによって気泡(膨れ)を形成するかもしれないいかなるガスもLCP組成物が発しないように、LCPの安定性は非常に望ましい。本発明LCP組成物は優れた熱安定性を有するので、それらは、かかるコート調理器具、または実際にはかかるノンスティック・コーティングでコートすることが望まれる任意の装置を製造するために特に有用である。
【0025】
本発明で使用される塗料は、接着力を高めるために場合により基材への事前グリットブラスティングによってシングルまたはマルチコート層で通常の方法によって基材に塗布することができる。各層を形成する吹き付けおよびローラー塗布は、コートされつつある基材の形に依存して、最も便利な塗布方法である。浸漬およびコイル塗装をはじめとする他の公知のコーティング方法もまた用いられてもよい。
【0026】
驚くべきことに、ガラス上のサイジングの存在は、LCPそのものをより熱的に安定でないようにする。
【実施例】
【0027】
実施例でLCP1は、4,4’−ビフェノール/テレフタル酸/イソフタル酸/4−ヒドロキシ安息香酸またはそれらの誘導体(100/95/5/100モル部)から製造し、約400℃の融点を有する。
【0028】
LCP2は、ヒドロキノン/4,4’−ビフェノール/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4−ヒドロキシ安息香酸(50/50/60/40/320モル部)から製造し、約335℃の融点を有した。
【0029】
実施例1〜3で、専売特許のサイジング付き細断ガラス繊維(配合前の元の長さ約5.0mm)はTP−78であり、非サイズ塗りミルド・ガラスはREV−4であり、両方とも日本国三重県津市高茶屋の日本板硝子株式会社製であった。
【0030】
(実施例1)
LCP1を使用して、原料をワーナー・アンド・プフライデラー(Werner and Pfleiderer)ZSK−40・40mm二葉の二軸スクリュー押出機に供給し、温度を、押出機を出る溶融物温度が約410℃であるように設定した。正方形カップ(60mm×60mm×30mm高さ、壁厚さ2mm)を、エンジェル(Engel)1450射出成形機で約145トンの締付力を用いて成形した。溶融物温度は約410℃であり、金型温度は約80℃であった。組成(全体組成物の重量百分率)を、280℃の空気循環オーブン中で老化させる間の12週にわたる測定重量損失と共に表1に示す。サイズ塗りガラスでの重量損失が組成物中のサイジングの推定量よりはるかに高いこと、そして本試験でサイジングがLCPそのものをより熱的に安定でないようにするように思われることに留意されたい。表1での重量損失パーセントは、全体組成物の重量を基準にしている。
【0031】
【表1】

【0032】
(実施例2〜3)
使用した組成物LCPは60%LCPと40%ガラス繊維とを含有した。LCPは、4,4’−ビフェノール/テレフタル酸/イソフタル酸/4−ヒドロキシ安息香酸、100/95/5/100モル部の組成を有した。2つのタイプのプラークを製造して使用した。第1タイプは、熱処理した(1時間にわたって23から250℃へ、次に250℃で2時間、次に7時間にわたって250℃から350℃へ)LCP組成物ペレットを使用し、それを次にプラークへ射出成形した。第2タイプは、射出成形後の試験検体について熱処理(10℃/分で23から200℃へ、次に1℃/分で200から290℃へ、290℃で3時間)を用いた。熱処理は、本出願の技術背景で議論したような膨らみを減らすために用いた。プラークを、430℃のバレル温度、および428℃の溶融物温度で射出成形することによって形成した。
【0033】
プラークの幾つかを、記述したように接着力を高めるためにグリットブラストした。グリットブラスティングは300kPa(3バール)の圧力および80メッシュ酸化アルミニウム粒子を使って行った。グリットブラスティング後の典型的な表面粗さは4±0.3μmのRであった。これらの実施例では使用されないが、化学エッチングもまたかかる表面を粗くするために用いられてもよい。
【0034】
本研究で使用したプライマーおよびノンスティック・トップコートを表2にリストする。これらのすべては本願特許出願人(米国デラウェア州19899、ウィルミントン(Wilmington,DE 19899,USA))から入手可能である。樹脂は次の通り略記される:
FEP−テフロン(Teflon)(登録商標)FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)
PFA−テフロン(登録商標)PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)との共重合体)
PAI−ポリ(アミド−イミド)
PES−ポリエーテルスルホン
【0035】
【表2】

【0036】
接着力を、(指)爪接着力(NA)、ポスト水(指)爪接着力(PWNA)およびポスト水接着力(PWA)によって評価した。爪接着力試験では、外科用メスを用いてコーティングに小さな掻き傷を入れた。次に指爪を用いて外科用メス掻き傷のエッジからコーティングを少しずつ削り取ったまたは剥がした。爪跡の長さをmm単位で報告する。0mmの爪跡長さは優れた接着を表す。PWNA試験は、コートしたLCPを沸騰水に15分間曝し、爪試験前に冷却したことを除いて同様に行う。PWA試験はASTM−D−3359(ISO 2409)接着力試験の変形であり、クロスハッチ付きコーティングを20分間沸騰水にさらし、引き続いて3Mスコッチ(Scotch)ブランド(登録商標)898テープ(3Mカンパニー、米国ミネソタ州セントポール(3M Company,St.Paul,MN,USA))を用いてテープ引きにさらした。
【0037】
(実施例2)
LCPプラークを、場合によりグリットブラストして表面を粗くし、表3に示すようなプライマー組成物で吹き付け塗装した。220℃でベーキングした後、プラークを、表3に示すトップコート組成物で上塗りし、335℃で45分間ベーキングした。コーティングの接着力をNAおよびPWNA試験手順を用いて試験した。結果もまた表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
(実施例3)
LCPプラークを、場合により表4のプライマー組成物で吹き付け塗装した。218℃で15分間ベーキングした後、プラークを表4のトップコート組成物で上塗りし、316℃で10分間ベーキングした。コーティングの接着力を、上記のようなPWA接着力試験を用いて試験した。
【0040】
【表4】

【0041】
(実施例4および比較例A)
LCP2を含有する組成物を、使用するガラスをサイドフィーダーによって添加しながら、二軸スクリュー押出機で調製した。組成物は、55.8(重量)パーセントLCP2、4%のカーボンブラック・コンセントレート、40%ガラス、およびクラリアント社、米国ノースカロライナ州28205、シャーロット(Clariant Corp.,Charlotte,NC 28205,USA)から入手可能な、0.2%のリコワックス(Licowax)(登録商標)PE190ポリエチレンワックスを含有した。実施例4については使用したガラスはOCF739ミルド・ガラスであったが、比較例AについてはOCF408ファイバーガラス(Fiberglass)を使用した。両方ともオーエンス・コーニング・ファイバーガラス、米国オハイオ州トリード(Owens Corning Fiberglass,Toledo,OH,USA)から入手可能である。ミルド・ガラスは裸であった(何のサイジングも持たなかった)が、ファイバーガラスはサイズを塗られていた。これらの組成物の棒(1.6mm厚さ、ASTM方法D790による曲げ試験用の棒に従った他の寸法)を射出成形した。これらの棒を、おおよそ270℃に維持された溶融金属(はんだ)中へ突っ込み、規定時間浴中に保持した。棒を次に取り出し、放冷し、そして目視検査した。1、3、6および9分間金属浴中にあった比較例Aの棒はすべて膨れていた。同じ時間浸漬した実施例4の棒は膨れていなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)サイジングなしのガラスフィラーと、
(b)約350℃以上の融点を有するサーモトロピック液晶ポリマーと
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
はんだ浴法によって電気または電子装置に導電路を形成する方法であって、前記装置が
(a)サイジングなしのガラスフィラーと、
(b)約280℃以上の融点を有するサーモトロピック液晶ポリマーと
を含む組成物を含有することを改良点として含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
(a)サイジングなしのガラスフィラーと、
(b)約280℃以上の融点を有するサーモトロピック液晶ポリマーと
を含む1つまたは複数の導電路を有する電気または電子装置。
【請求項4】
(a)サイジングなしのガラスフィラーと、
(b)約280℃以上の融点を有するサーモトロピック液晶ポリマーと
を含む組成物を含有するランプソケット、ランプホルダー、ランプ基部、電気または電子コネクター、回路基板、端子ブロック、端末コネクター、ヒーター取付台、点火コイル、リレーソケット、高電圧コネクター、スパークプラグ、非常スイッチ、家庭電気器具用のコントローラーまたはスイッチ、電気モーターブラシホルダー、巻型、回路ブレーカー、回路ブレーカー・ハウジング、接触器ハウジング、およびプリントコネクター、分配器、高温に曝される事務機器部品、変圧器部品、スイッチまたはマイクロスイッチ、エンジン・ターボチャージャー部品、エンジン排気部品、調理器具または耐熱皿。

【公表番号】特表2007−525557(P2007−525557A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518855(P2006−518855)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/021681
【国際公開番号】WO2005/003221
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】