説明

液晶材料の安定化方法およびこれを用いた液晶素子

【課題】液晶表示素子の高性能化に伴う各種の液晶化合物又はそれらの混合物の安定化法について開示すること
【解決手段】下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは光学活性を示す不斉炭素を含んでいてもよいC1 〜C12アルキル基を表し、nは0〜5の正数を表す。)で示される化合物又はそれらを少なくとも1種含む液晶材料中に、イソプレノイド側鎖を有する化合物を、1種又は2種以上混合することを特徴とする液晶材料の安定化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TN(捩れネマティック)型液晶素子、STN(超捩れネマティック)型液
晶素子、FLCD(強誘電性液晶ディスプレイ)、PDLC(ポリマー分散型液晶)型液
晶素子に代表される表示素子に用いられる液晶材料の安定化法、及び該安定化法を用いる
ことにより、安定化された液晶材料並びにこれらの液晶材料を用いた液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展に伴い、各種の表示素子はマン―マシーンインターフェースの
一つとして、その重要性がますます高まっている。このような中で平面ディスプレイ、特
に液晶ディスプレイ(LCD)は、薄型・軽量・低電圧駆動・低消費電力などの特徴を有
していることから急速に普及してきている。各画素に薄膜トランジスターをつけたアクティブマトリックス液晶表示素子(AM-LCD)は、ブラウン管(CRT)にも代替できる高画質を備え、フラット化、省エネルギー化の後押しを受けて、もっとも将来性のあるディスプレイとして期待されている。
【0003】
AM-LCDではコントラストを上げるために、各画素に薄膜トランジスターやダイオードのスイッチング素子をつけて、画素に電圧を供給する。このAM-LCDは従来のパッシブ駆動方式とは異なり、スイッチング素子を通して、各画素に数十ms毎に電圧を印加することにより駆動する。このため、電圧を印加されてから数十ms後の次の書き込み時間までの間は、与えられた電圧を完全に保持できないと、表示の悪化をきたすことになる。電極間の電圧が下がると、透過光強度が変化してコントラストが低下してしまう。このため、AM-LCDでは、高い電圧保持特性が求められる。高い電圧保持特性(電圧保持率)を得るため、AM-LCD用の液晶材料は、高比抵抗を維持しやすい材料を取捨選択して使用する必要がある。
【0004】
テレビをはじめとして、近年、動画のちらつき改善のため、高速応答型の需要が高まり、低粘性の液晶材料が求められている(非特許文献1、非特許文献2)。高速応答性を高めるには、液晶材料として誘電率異方性(Δε)の小さい液晶化合物が必要であるが、Δεが小さい液晶化合物を使用すると、駆動電圧が上昇して消費電力が悪化することと、周囲の汚染の影響を受けやすく、高比抵抗を維持することが難しくなるという問題や、バックライト光あるいは屋外暴露下での電圧保持率低下や表示不良がみられる等、温度や光といった環境の影響を受けやすいといった問題があった。
【0005】
この理由として、Δεの小さい液晶化合物は、高温環境下や経時もしくは光により、徐々に劣化が起こり、これが電圧保持率低下の原因の一つと考えられる。そこで、液晶化合物の劣化を防止する目的で、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤を液晶材料に添加することが行われている。しかし、これらの酸化防止剤は一般に蒸気圧が高く、液晶化合物との相溶性も十分でないため、液晶材料をセルへ注入する際の加熱脱気処理で揮発したり、低温環境下で結晶が析出するといった問題や、液晶材料中の酸化防止剤の量が減少し酸化防止効果を十分発揮できないといった問題もある。
【0006】
これに対して特許文献1には、フェニレン骨格、シクロヘキシレン骨格又はナフタレン骨格を有する2,6−ジ−tert−ブチルフェノール化合物からなる酸化防止剤を液晶組成物に添加することが記載されている。この酸化防止剤は、フェニレン骨格やシクロヘキシレン骨格等の組み合わせからなる液晶化合物との相溶性に優れているが、より極性の高い液晶化合物には相溶しづらい。また、該酸化防止剤を添加した液晶組成物をAM-LCDの液晶材料として使用した際、長期間、熱や光、特にバックライト光源に曝露すると、液晶材料の劣化が促進され、該酸化防止剤の消失などが起こり、液晶材料中の酸化防止剤濃度が低下し、酸化防止機能が十分機能せず、電圧保持率が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−124529公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Materials Chemistry, 14 , 1219-1227 (2004)
【非特許文献2】Journal of the SID, 10/2 , 127-132(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、液晶表示素子の高性能化に伴う各種の液晶化合物又はそれらの混合物の
安定化法については、これ迄に有効な方法は見出されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、屈折率異方性に優れた液晶材料に適した液晶化合物又はそれらの混合物
の安定化法について鋭意検討した結果、イソプレノイド側鎖を有する化合物を、1種又は2種以上混合することが有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は
(1)下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは光学活性を示す不斉炭素を含んでいてもよいC1 〜C12アルキル基を表し、nは0〜5の正数を表す。)
で示される化合物又はそれらを少なくとも1種含む液晶材料中に、イソプレノイド側鎖を有する化合物を、1種又は2種以上混合することを特徴とする液晶材料の安定化方法、
【0012】
(2)イソプレノイド側鎖を有する化合物が、ユビキノン類、トコキノン類、プラストキノン類、メナキノン類、フィロキノン類、トコフェロールキノン類、及びトコトリエノールキノン類からなる群から選択される1種もしくは2種以上であることを特徴とする(1)記載の液晶材料の安定化方法、
(3)液晶材料中のイソプレノイド側鎖を有する化合物の含有量が0.001〜5重量%である前記(1)または(2)記載の方法、
(4)酸化防止剤及び/又は光安定剤を含有することを特徴とする、(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の方法、
(5)酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、ホスフォイト系酸化防止剤又はイオウ系酸化防止剤である(4)記載の方法、
(6)光安定剤が、ヒンダートアミン系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、トリアゾール光安定剤又はニッケル系消光剤である(4)記載の方法、
(7)前記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の方法により安定化された液晶材料、
(8)前記(7)記載の液晶材料を一対の電極板間に挟持してなる液晶素子、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、イソプレノイド側鎖を有する化合物が屈折率異方性を示す液晶材料の安定化に有効であることが明らかとなった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における液晶材料中に含まれる一般式(1)の化合物は、液晶媒体の成分として適しており、特に比較的低い粘度および比較的高いネマティック相形成性を同時に有する、新規な液晶化合物を提供する。この化合物は、相当するジアルキル化化合物およびモノアルケニル化合物に比較して、より高い透明点、良好な溶解性および格別に低いスメクティック相形成性を有する。液晶材料の高速応答性は非常に重要な特性であり、応答の高速化のためには物性的に(i)粘性を小さくするか、あるいは(ii)弾性定数を大きくすることが必要である。しかしながら、弾性定数を大きくすると閾値電圧が上昇することが多いので粘性を小さくすることが最も効果的である。
【0015】
一般式(1)の化合物としては、例えば、4-プロピル−4’−ビニルビシクロヘキシル、4-ペンチル−4’−ビニルビシクロヘキシルなどが挙げられ、本発明においては特に4-プロピル−4’−ビニルビシクロヘキシルが好ましい。
これら一般式(1)の化合物は、たとえば、4-(4−アルキルシクロヘキシル)シクロヘキサンカルボアルデヒドとメチルトリフェニルハライドとのウィティッヒ反応など、それ自体公知の方法により、当該反応に適する公知の反応条件の下に製造することができる。
また、本発明において、液晶材料中の一般式(1)の化合物が占める割合は、60重量%以下、好ましくは50重量%以下であり、その下限は通常10重量%程度である。
【0016】
本発明における液晶材料中の添加剤としては、イソプレノイド側鎖を有する化合物が挙げられる。
本発明においてイソプレノイド側鎖を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ユビキノン類、トコキノン類、プラストキノン類、メナキノン類、フィロキノン類、トコフェロールキノン類、トコトリエノールキノン類などが挙げられる。
【0017】
ユビキノン類としては、例えば、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ジプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-トリプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-テトラプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ペンタプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ヘキサプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ヘプタプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-オクタプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ノナプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノンなどのユビキノン誘導体、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ジプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-トリプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-テトラプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ペンタプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ヘキサプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ヘプタプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-オクタプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-ノナプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノールなどのユビキノール誘導体などが挙げられる。
【0018】
トコキノン類としては、2,3,5-トリメチル-6-ジプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3,5-トリメチル-6-トリプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3,5-トリメチル-6-テトラプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3,5-トリメチル-6-ペンタプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3,5-トリメチル-6-ヘキサプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3,5-トリメチル-6-ヘプタプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3,5-トリメチル-6-ノナプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3,5-トリメチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノンなどのトコキノン誘導体、2,3,5-トリメチル-6-ジプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3,5-トリメチル-6-トリプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3,5-トリメチル-6-テトラプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3,5-トリメチル-6-ペンタプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3,5-トリメチル-6-ヘキサプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3,5-トリメチル-6-ヘプタプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3,5-トリメチル-6-ノナプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3,5-トリメチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノールなどのトコキノール誘導体などが挙げられる。
【0019】
プラストキノン類としては、2,3-ジメチル-6-ジプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-6-トリプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-6-テトラプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-6-ペンタプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-6-ヘキサプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-6-ヘプタプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-6-ノナプレニル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノンなどのプラストキノン誘導体、2,3-ジメチル-6-ジプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメチル-6-トリプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメチル-6-テトラプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメチル-6-ペンタプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメチル-6-ヘキサプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメチル-6-ヘプタプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメチル-6-ノナプレニル-1,4-ベンゾキノール、2,3-ジメチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノールなどのプラストキノール誘導体などが挙げられる。
【0020】
メナキノン類としては、Menaquinone-4、Menaquinone-6、Menaquinone-7、Menaquinone-10などが挙げられる。フィロキノン類としては、2-メチル-3-(3-メチル-2-ヘキサデセニル)-1,4-ナフタレンジオン、2-メチル-3-(3,7-ジメチル-2-ヘキサデセニル)-1,4-ナフタレンジオン、2-メチル-3-(3,7,11-トリメチル-2-ヘキサデセニル)-1,4-ナフタレンジオン、2-メチル-3-(3,7,11,15-テトラメチル-2-ヘキサデセニル)-1,4-ナフタレンジオンなどが挙げられる。トコフェロールキノン類としては、α-トコフェロールキノン、β-トコフェロールキノン、γ-トコフェロールキノン、δ-トコフェロールキノンなどが挙げられ、トコトリエノールキノン類としては、2,3,5-トリメチルトコトリエノールキノン、2,5-ジメチルトコトリエノールキノン、2,3-ジメチルトコトリエノールキノン、2-メチルトコトリエノールキノンなどが挙げられる。
これらイソプレノイド側鎖を有する化合物はいずれも市販品として東京化成工業等から入手可能である。
【0021】
これらイソプレノイド側鎖を有する化合物は、特に限定される事なく、液晶材料中に1種又は2種以上混合してよい。本発明におけるイソプレノイド側鎖を有する化合物の液晶材料中の含有率は、0.001〜5重量%程度、好ましくは0.002〜3重量%が好ましい。
【0022】
本発明は、上記記載のイソプレノイド側鎖を有する化合物に加え、酸化防止剤及び/又は光安定剤を含有することが好ましい。 本発明における酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、ホスフォオイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。また光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、トリアゾール系光安定剤、ニッケル系消光剤等が挙げられる。
【0023】
本発明においてフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、
2,6―ジ―t―ブチル―4―メチルフェノール、オクタデシル―3―(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’―メチレンビス(6―t―ブチル―4―メチルフェノール)、2―t―ブチル―6―(3―t―ブチル―2―ヒドロキシ―5―メチルベンジル)―4―メチルフェニルアクリレート、2―[1―(2―ヒドロキシ―3,5―ジ―t―ペンチルフェニル)エチル]―4,6―ジ―t―ペンチルフェニルアクリレート、4,4’―ブチリデンビス(6―t―ブチル―3―メチルフェノール)、3,9’―ビス[2―{3―(3―t―ブチル―4―ヒドロキシ―5―メチルフェニル)プロピオニルオキシ}―1,1―ジメチルエチル]―2,4,8,10―テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、2―(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシアニリノ)―4,6―ビス(n―オクチルチオ)―1,3,5―トリアジン、2,2’―エチリデンビス(4,6―ジ―t―ブチルフェノール)、2,2’―エチリデンビス(4―sec―ブチル―6―t―ブチルフェノール)
【0024】
2,2’―チオビス(6―t―ブチル―3―メチルフェノール)、1,1,3―トリス(5―t―ブチル―4―ヒドロキシ―2―メチルフェニル)ブタン、ビス[2―t―ブチル―4―メチル―6―(3―t―ブチル―2―ヒドロキシ―5―メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、 テトラキス[メチレン―3―(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2’―チオジエチレンビス[3―(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコールビス[3―(3―t―ブチル―4―ヒドロキシ―5―メチルフェニル)プロピオネート]、1,6―ヘキサンジオールビス[3―(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5―トリス(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5―トリス[2―{3―(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]イソシアヌレート、1,3,5―トリス(4―t―ブチル―3―ヒドロキシ―2,6―ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5―トリス(3,5―ジ―t―ブチル―4―ヒドロキシベンジル)―2,4,6―トリメチルベンゼン等が挙げられる。
【0025】
また、本発明においてイオウ系酸化防止剤としては、特に限定されないが、ジラウリル 3,3’―チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’―チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3’―チオジプロピオネート、テトラキス(3―ラウリルチオプロピオニルオキシメチル)メタン等が挙げられる。
さらに、本発明においてホスファイト系酸化防止剤及びホスフォオイト系酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体例としては、 トリス(ノニルフェニル) ホスファイト、トリス(2,4―ジ―t―ブチルフェニル) ホスファイト、テトラキス(2,4―ジ―t―ブチルフェニル)4,4’―ビフェニレンジホスフォナイト、ビス(2,4―ジ―t―ブチルフェニル) ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,6―ジ―t―ブチルフェニル) ペンタエリスリトール ジホスファイトジステアリル ペンタエリスリトール ジホスファイト、フェニル ジイソオクチル ホスファイト、フェニル ジイソデシル ホスファイト、フェニル ジ(トリデシル) ホスファイト、ジフェニル イソオクチル ホスファイト、ジフェニル イソデシル ホスファイト、ジフェニル トリデシル ホスファイト、 4,4’―イソプロピリデンビス(フェニルジアルキル ホスファイト)、2,2’―メチレンビス(4,6―ジ―t―ブチルフェニル)オクチル ホスファイト、2,2’―エチリデンビス(4,6―ジ―t―ブチルフェニル)フルオロホスフォナイト等が挙げられる。
【0026】
本発明においてヒンダードアミン系光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル) セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル) セバケート、N,N’ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、 テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル) (1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチル{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔(6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6
,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、 コハク酸ジメチルと 1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、N,N’4,7−テトラキス〔4,6−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が挙げられる。
本発明において、ベンゾフェノン系光安定剤としては、特に限定されないが、具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0027】
本発明において、トリアゾール系光安定剤としては、特に限定されないが、具体例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
本発明において、ニッケル系消光剤としては、特に限定されないが、基本骨格として有機ニッケル系が挙げられ、具体例としては、ニッケルジブチルジチオカルバメート等が挙げられる。これら酸化防止剤及び/又は光安定剤の添加量は、全液晶材料中に0.005〜0.3重量%が挙げられる。
【実施例】
【0028】
次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
液晶材料中に、式(2)
【化2】

で示される4-プロピル−4’−ビニルビシクロヘキシルを37%含有する液晶組成物に、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノン(東京化成工業製)を濃度500ppmになるように添加し、VHR測定液晶を得た。
【0030】
比較例1
実施例1記載で使用した液晶組成物中に、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカプレニル-1,4-ベンゾキノンの代わりに、2,6―ジ―t―ブチル―4―メチルフェノールを濃度500ppm添加し、VHR測定液晶を得た。
【0031】
比較例2
実施例1記載で使用した液晶組成物中に、特に添加剤を含有させずにVHR測定液晶として用いた。
【0032】
測定セルの作成:
1cm角のITO電極を設けた、イオン密度測定用基板に、配向膜SE-5410(日産化学製)を、オングストローマーにて塗布。これをプリキュアを100℃で1分施した後、230℃で30分加熱硬化し、配向膜を設置した。得られた配向膜塗布測定基板は、600rpm 40mm/sec.の条件でラビング処理した。ラビング処理測定基板は、超音波洗浄後、面内スペーサーとして、KCB525F(ナトコ製)を散布し、 150℃10分の加熱条件で固着させた。この基板に、熱硬化型シール剤ML-9600C(日本化薬製)を塗布し、 プリキュア90℃10分した後、150℃×120分の条件で、冶具プレス(圧力100kg)を用いて、加圧・加熱硬化し、電圧保持率(VHRと略す)測定用空セルを得た。
【0033】
前記実例1、比較例1および2で調製した液晶組成物は、上記記載の方法で得られたVHR測定用空セル中に注入した後、注入口を封口材で封止することによりVHR測定基板を得た。
VHRの測定は、液晶物性評価装置(東洋テクニカ製6254型)を用いて、60℃において1Vの電圧を印加し1秒後に開放した時の電圧保持率(%)を測定した。
測定後、各試験片は点灯したバックライト上に1000時間置き、光劣化させた。光劣化させた各測定サンプルは、同様にVHRの測定を行った。その結果を表1に示す。
【0034】

照射 0h 照射 1000h
実施例1 94.99 79.47
比較例1 95.17 54.25
比較例2 95.66 39.05

この結果、実施例1で調製した液晶組成物はいずれも高い表示特性を有し、長期間のバックライト光の照射を伴っても、高い電圧保持率を示したが、比較例1および2の液晶組成物は長期間のバックライト光の照射に耐え切れず、電圧保持率が下がってしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは光学活性を示す不斉炭素を含んでいてもよいC1 〜C12アルキル基を表し、nは0〜5の正数を表す。)
で示される化合物又はそれらを少なくとも1種含む液晶材料中に、イソプレノイド側鎖を有する化合物を1種又は2種以上混合することを特徴とする液晶材料の安定化方法。
【請求項2】
イソプレノイド側鎖を有する化合物が、ユビキノン類、トコキノン類、プラストキノン類、メナキノン類、フィロキノン類、トコフェロールキノン類、及びトコトリエノールキノン類からなる群から選択される1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1記載の液晶材料の安定化方法。
【請求項3】
液晶材料中のイソプレノイド側鎖を有する化合物の含有量が0.001〜5重量%である請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
酸化防止剤及び/又は光安定剤を含有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、ホスフォイト系酸化防止剤又はイオウ系酸化防止剤である請求項4記載の方法。
【請求項6】
光安定剤が、ヒンダートアミン系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、トリアゾール光安定剤又はニッケル系消光剤である請求項4記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法により安定化された液晶材料。
【請求項8】
請求項7記載の液晶材料を一対の電極板間に挟持してなる液晶素子。

【公開番号】特開2010−180266(P2010−180266A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22399(P2009−22399)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】