説明

液晶素子

【課題】応答速度が速い液晶素子を提供する。
【解決手段】液晶素子1は、液晶層11と、第1の電極21と、第2の電極22とを備える。第1の電極21は、第1の電極部21aと、第2の電極部21bとを有する。第1の電極部21aは、開口21a1を有する。第2の電極部21bは、開口21a1内に配されている。第2の電極22は、第1の電極21と液晶層11を介して対向している。第2の電極部21bは、少なくとも液晶層11が設けられた領域の全体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1などにおいて、液晶レンズなどの液晶素子が提案されている。例えば液晶レンズでは、液晶層に印加する電圧を変化させることにより、光学的パワーを変化させることができる。従って、液晶レンズを用いることにより、光学系をコンパクト化したり、高機能化したりし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−175105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶レンズの適用用途を拡大していくにあたっては、液晶レンズの応答速度を速くすることが重要となる。
【0005】
本発明は、応答速度が速い液晶素子を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液晶素子は、液晶層と、第1の電極と、第2の電極とを備える。第1の電極は、第1の電極部と、第2の電極部とを有する。第1の電極部は、開口を有する。第2の電極部は、開口内に配されている。第2の電極は、第1の電極と液晶層を介して対向している。第2の電極部は、少なくとも液晶層が設けられた領域の全体に設けられている。
【0007】
第2の電極は、少なくとも液晶層が設けられた領域の全体に設けられていることが好ましい。
【0008】
第2の電極部が円形であると共に、第2の電極が第2の電極部と同心の円形であることが好ましい。その場合、第2の電極の半径は、第2の電極部の半径の2倍以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、応答速度が速い液晶素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る液晶レンズの略図的断面図である。
【図2】第1の実施形態における第1の電極の略図的平面図である。
【図3】第2の実施形態に係る液晶レンズの略図的断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る液晶レンズの略図的断面図である。
【図5】第3の実施形態における第2の電極の略図的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0012】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る液晶素子1の略図的断面図である。液晶素子1は、液晶レンズであるが、本発明に係る液晶素子は、液晶レンズ以外の種類の液晶素子であってもよい。
【0014】
液晶素子1は、液晶分子を含む液晶層11を備えている。液晶層11は、第1及び第2の電極21,22により挟持されている。第1及び第2の電極21,22により、液晶層11に電圧が印加され、これにより液晶素子1の光学的パワーが変化する。
【0015】
より具体的には、液晶素子1は、相互に間隔をおいて対向するように配された第1の基板31と第2の基板32とを有する。第1の基板31と第2の基板32との間には、隔壁部材34が配されている。この隔壁部材34と第1及び第2の基板31,32とにより区画形成された空間に液晶層11が設けられている。なお、液晶層11は、ガラス板などによって複数の液晶層に区画されていてもよい。
【0016】
第1の基板31、第2の基板32及び隔壁部材34は、それぞれ、例えば、ガラスなどにより構成することができる。第1の基板31及び第2の基板32の厚みは、例えば、0.1mm〜1.0mm程度とすることができる。隔壁部材34の厚みは、得ようとする光学的パワーにより決定される液晶層11の厚みや、液晶層11に要求される応答速度等に応じて適宜設定することができる。隔壁部材34の厚みは、例えば、1μm〜80μm程度とすることができる。
【0017】
第1の基板31の液晶層11側の表面31aの上には、第1の電極21が配されている。一方、第2の基板32の液晶層11側の表面32aの上には、第2の電極22が、液晶層11を介して第1の電極21と対向するように配されている。本実施形態では、第1の電極21の全体が第2の電極22と対向している。なお、第1及び第2の電極21,22は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)等の透明導電性酸化物により構成することができる。
【0018】
第1の電極21は、円形の開口21a1を有する第1の電極部21aと、第1の電極部21aの開口21a1の内部に配された円形の第2の電極部21bと、第2の電極部21bに接続された引き出し電極21cとを有する。液晶素子1では、液晶層11の第2の電極部21bが設けられた領域に位置する部分が、レンズとして機能する。尚、第1の電極部21aと第2の電極部21bとは、互いに絶縁されている。第1の電極部21aと第2の電極部21bとの間の隙間は、中空となっていてもよいし、絶縁体が配されて中実となっていてもよい。
【0019】
液晶素子1では、第1の電極部21aと第2の電極22との間に電圧V1が印加され、第2の電極部21bと第2の電極22との間に電圧V2が印加される。電圧V1と電圧V2との大きさを変化させることによって、液晶レンズを構成している液晶素子1の光学的パワーを変化させることができる。
【0020】
第2の電極部21bは、少なくとも液晶層11が設けられた領域の全体に設けられている。具体的には、本実施形態では、第2の電極部21bが設けられた領域は、液晶層11が設けられた領域と一致している。このため、第2の電極部を液晶層が設けられた領域の一部に配した場合と比較して、液晶素子1の応答速度を速くすることができる。
【0021】
この理由としては、定かではないが、以下の理由が考えられる。即ち、第2の電極部を、液晶層が設けられた領域の一部に配した場合は、液晶層に印加される電界が変化した際に、液晶層の第2の電極部が設けられていない領域に位置する液晶分子により、レンズとして機能する、液晶層の第2の電極部が設けられた領域に位置する液晶分子の配向変化が阻害されるものと考えられる。これにより、液晶素子の応答速度が遅くなるものと考えられる。
【0022】
それに対して、液晶素子1では、第2の電極部21bが、少なくとも液晶層11が設けられた領域の全体に設けられている。このため、液晶層11には、第2の電極部21bが設けられていない領域に位置する部分がない。従って、液晶層11に印加される電界が変化した際に、液晶層11に含まれる液晶分子の配向の変化が阻害されにくい。従って、速い応答速度が実現できるものと考えられる。
【0023】
また、液晶層を第2の電極部よりも広い領域に設けた場合は、液晶層が大型化した分だけ配向を変化させなければならない液晶分子の数が多くなる。従って、ひとつの液晶分子に与えられるエネルギーが小さくなることも、応答速度が遅くなる一因として考えられる。
【0024】
ところで、第2の電極部21bに引き出し電極21cが接続されている場合は、引き出し電極21cと第2の電極22との間の電位差に起因して、引き出し電極21cと第2の電極22との間にも電気力線が生じる。その結果、波面収差が大きくなりやすい。ここで、液晶素子1では、第2の電極部21bが少なくとも液晶層11が設けられた領域に配されている。このため、引き出し電極21cに起因して発生する電気力線により液晶層11内の液晶分子の配向が乱れにくい。従って、波面収差の増大を抑制することができる。
【0025】
なお、従来、開口を有する第1の電極部と、開口の内部に配された第2の電極部とを有する第1の電極を用いる場合、第2の電極部は、液晶層が設けられた領域の一部に配されている。これは、隔壁の近傍に位置する液晶分子の配向が隔壁により拘束されるおそれがあるため、レンズとして機能する、第2の電極部が設けられた領域から隔壁を離すことにより波面収差の増大の抑制を図ろうとしていたためであると考えられる。また、第1の電極部の一部分と第2の電極とを、隔壁よりも誘電率が低い液晶層を介して対向させることにより、液晶素子の駆動電圧を低くできると考えられていたことも一因として挙げられる。従って、第2の電極部21bを、少なくとも液晶層11が設けられた領域の全体に設ける構成は、当業者には、容易に想到し得ない構成である。
【0026】
本実施形態では、第2の電極22が、少なくとも液晶層11が設けられた領域の全体に設けられている。従って、波面収差を低減することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る液晶レンズの略図的断面図である。
【0028】
第1の実施形態では、第2の電極部21bが設けられた領域と、液晶層11が設けられた領域とが一致している例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図3に示すように、第2の電極部21bは、液晶層11が設けられた領域を含め、さらに広い領域に配されていてもよい。
【0029】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係る液晶レンズの略図的断面図である。図5は、第3の実施形態における第2の電極の略図的平面図である。第3の実施形態では、図4に示されるように、第2の電極22が第2の基板32の液晶層11側の主面の一部の上に配されている。第2の電極22は、図5に示されるように、第1の電極部21aと同心の円形である。第2の電極22には、引き出し電極23が電気的に接続されている。
【0030】
第2の電極22の半径は、第2の電極部21bの半径の2倍以下であることが好ましく、1.5倍以下であることがより好ましい。そうすることにより、液晶素子1の駆動電圧を低くすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…液晶素子
11…液晶層
21…第1の電極
21a…第1の電極部
21a1…開口
21b…第2の電極部
21c、23…引き出し電極
22…第2の電極
31…第1の基板
31a…第1の基板の表面
32…第2の基板
32a…第2の基板の表面
34…隔壁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、
開口を有する第1の電極部と、前記開口内に配された第2の電極部とを有する第1の電極と、
前記第1の電極と前記液晶層を介して対向している第2の電極と、
を備え、
前記第2の電極部は、少なくとも前記液晶層が設けられた領域の全体に設けられている、液晶素子。
【請求項2】
前記第2の電極は、少なくとも前記液晶層が設けられた領域の全体に設けられている、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項3】
前記第2の電極部が円形であると共に、前記第2の電極が前記第2の電極部と同心の円形であり、
前記第2の電極の半径が前記第2の電極部の半径の2倍以下である、請求項1または2に記載の液晶素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109224(P2013−109224A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255297(P2011−255297)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【出願人】(511228300)ニューマンパワーサービス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】