説明

液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、及び調光材料

【課題】室温でTGBA相を示す液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、及び調光材料に関し、特に光散乱方式およびゲスト−ホスト方式に好適に利用できる液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、及び調光材料を提供すること。
【解決手段】少なくとも1種のコレステリック液晶組成物と少なくとも1種の第1のネマチック液晶化合物又は組成物とを混合することで、室温にてTGBA相を発現させる。前記第1のネマチック液晶化合物又は組成物は、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基もしくはパーフルオロアルキル基を末端に有する化合物、又は該化合物を含有する組成物であることが好ましい。前記コレステリック液晶組成物は、第2のネマチック液晶化合物又は組成物と、カイラル剤と、を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、及び調光材料に関し、特に光散乱方式およびゲスト−ホスト方式に好適に利用できる液晶組成物、液晶素子、反射型表示材料、及び調光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶は、周期的な螺旋構造に由来する選択反射を利用した表示材料や、二色性色素を含有するゲストホスト表示モードにおいて、光漏れを低減することで表示性能を高めたWhite-Taylor表示方式等に利用されている。また、コレステリック液晶は、液晶素子中では、プレーナー状態とフォーカルコニック状態において、メモリ性を有するという特徴がある。しかしながら、ネマチック液晶由来の秩序度および液晶層の連続性により、コレステリック液晶は、ホメオトロピック状態においてはメモリ性がなく、また、光散乱の程度が低くなるという問題があった。
【0003】
一方、スメクチック相は、ネマチック相より秩序度が高く、液晶層の連続性が低い液晶層である。スメクチック相において、液晶層がらせん構造をとったTGBA(Twisted grain boundary SmA)相は、上記問題を解決できる相として期待されている。しかしながら、これまでに開示されているTGBA相は、高温域でかつ狭い温度範囲でのみ発現する相であり、室温で発現する例はほとんど知られていない(例えば、非特許文献1又は2参照。)。
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,111, 8119 (1989)
【非特許文献2】Liquid Crystals, Vol. 22, No.5, 535-541 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、室温でTGBA相を発現する液晶組成物、および表示性能の高い液晶素子、反射型表示材料、及び調光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 少なくとも1種のコレステリック液晶組成物と少なくとも1種の第1のネマチック液晶化合物又は組成物とを含有し、室温でTGBA相を示す液晶組成物である。
【0006】
[2] 少なくとも1種のコレステリック液晶組成物と、少なくとも1種の第1のネマチック液晶化合物又は組成物と、を混合することで、室温にてTGBA相が誘起されたものであることを特徴とする前記[1]に記載の液晶組成物である。
【0007】
[3] 前記第1のネマチック液晶化合物又は組成物が、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基もしくはパーフルオロアルキル基を末端に有する化合物、又は該化合物を含有する組成物であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の液晶組成物である。
【0008】
[4] 前記コレステリック液晶組成物が、少なくとも1種の第2のネマチック液晶化合物又は組成物と、少なくとも1種のカイラル剤と、を含有することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の液晶組成物である。
【0009】
[5] 前記コレステリック液晶組成物が、室温でコレステリック相であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液晶組成物である。
【0010】
[6] 前記の第2のネマチック液晶化合物又は組成物が、エステル基、アゾメチン基もしくはアゾキシ基を分子内に有する化合物又は該化合物を含有する組成物であることを特徴とする前記[4]又は[5]に記載の液晶組成物である。
【0011】
[7] 二周波駆動性を示すことを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の液晶組成物である。
【0012】
[8] 更に、少なくとも1種の二色性色素を含有することを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の液晶組成物である。
【0013】
[9] 少なくとも一方が透明電極である一対の電極と、該一対の電極間に液晶層を有する液晶素子であって、
前記液晶層が前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の液晶組成物を少なくとも1種含有することを特徴とする液晶素子である。
【0014】
[10] 前記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の液晶素子を備える反射型表示材料である。
【0015】
[11] 前記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の液晶素子を備える調光材料である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、室温でTGBA相を発現する液晶組成物、および表示性能の高い液晶素子、反射型表示材料、及び調光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0018】
従来報告されているTGBA相は、高温時かつ狭い温度範囲でしか発現しない。非常に限定された分子構造のもののみ室温で発現し、しかも極めて狭い温度範囲でしか発現しないことから、汎用性が低いという問題があった。
そこで、鋭意研究を重ねたところ、特定のコレステリック液晶組成物、好ましくは非極性あるいは弱い極性を示し、かつ液晶コアを連結する基として、エステル基、アゾメチン基あるいはアゾキシ基を有するネマチック液晶化合物を含有し、室温でコレステリック相を示す液晶組成物と、特定のネマチック液晶化合物又は組成物、好ましくは末端にシアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基もしくはパーフルオロアルキル基を有するものとを組み合わせると、得られた液晶は、室温でかつ広い温度範囲でTGBA相を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
以下、本発明の、室温でTGBA相を示す液晶組成物を「TGBA相液晶組成物」と称する場合がある。
【0019】
なお、本発明において、ネマチック液晶化合物とは、25℃(室温)に限らず、昇温することでネマチック相を呈する化合物をいい、ネマチック液晶組成物とは、25℃(室温)でネマチック相を呈する組成物をいう。コレステリック液晶組成物とは、25℃(室温)でコレステリック相を呈する組成物をいう。
【0020】
<第1のネマチック液晶化合物又は組成物>
特定のコレステリック液晶組成物と混合することでTGBA相を誘起させるネマチック液晶化合物又はネマチック液晶組成物を、本発明では「第1のネマチック液晶化合物又はネマチック液晶組成物」と称する。
第1のネマチック液晶化合物又はネマチック液晶組成物は、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基、又はパーフルオロアルキル基を末端に有する液晶化合物又は該液晶化合物を含有する液晶組成物である。
【0021】
第1のネマチック液晶化合物の骨格は、液晶性を有し、上記置換基を末端に有するものであれば特に限定されないが、スメクチック液晶性を誘起させる力を高める観点から、第1のネマチック液晶化合物は下記一般式(I)で表される化合物であることが好適である。
【0022】
一般式(I): T−((D−(L−(D−T
【0023】
一般式(I)中、D及びDは、各々独立にアリーレン基、ヘテロアリーレン基又は2価の環状脂肪族炭化水素基を表す。Lは2価の連結基を表す。Tは、アルキル基、アルコキシ基を表す。Tは、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基、又はパーフルオロアルキル基を表す。eは1〜3の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、kは1又は2であり、fは0〜3の整数を表す。
【0024】
及びDで表されるアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基である。好ましいアリーレン基の具体例を挙げると、フェニレン基及びナフタレン基であり、例えば、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基が挙げられる。
【0025】
及びDで表されるヘテロアリーレン基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜9のヘテロアリーレン基である。好ましいヘテロアリーレン基の具体例には、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環及びトリアゾール環からなる基、及びこれらが縮環して形成される縮環の2個の炭素原子から水素をそれぞれ1個ずつ除いて得られるヘテロアリーレン基が含まれる。
【0026】
及びDで表される2価の環状脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数4〜12の2価の環状脂肪族炭化水素基である。好ましい2価の環状脂肪族炭化水素基の具体例は、シクロヘキサンジイル、デカヒドロナフタレンジイルであり、より好ましくはシクロヘキサン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基である。
【0027】
及びDの表す2価のアリーレン基、2価のヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても、無置換であってもよい。また、式(1)中、e、m又はkが、2以上の場合、複数のD、Dは、各々独立に置換基を有していてもよく、同一の置換基を有していても、異なる置換基を有していても、或いは、無置換であってもよい。
これらの置換基としては、下記の置換基群Vが挙げられる。
【0028】
(置換基群V)
ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、メルカプト基、シアノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、モルホリノカロボニル)、炭素数0〜10、好ましくは炭素数2〜8、更に好ましくは炭素数2〜5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ピペリジノスルフォニル)、ニトロ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−フェニルエトキシ)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、p−クロロフェノキシ、ナフトキシ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、トリクロロアセチル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル、エタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8の置換又は無置換のアミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ、4−メチルフェニルアミノ、4−エチルフェニルアミノ、3−n−プロピルフェニルアミノ、4−n−プロピルフェニルアミノ、3−n−ブチルフェニルアミノ、4−n−ブチルフェニルアミノ、3−n−ペンチルフェニルアミノ、4−n−ペンチルフェニルアミノ、3−トリフルオロメチルフェニルアミノ、4−トリフルオロメチルフェニルアミノ、2−ピリジルアミノ、3−ピリジルアミノ、2−チアゾリルアミノ、2−オキサゾリルアミノ、N,N−メチルフェニルアミノ、N,N−エチルフェニルアミノ)、炭素数0〜15、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム)、炭素数0〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基)、炭素数1〜15、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜6のイミド基(例えばスクシンイミド基)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ)、炭素数6〜80、好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、2−ピリジルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニルチオ、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニルチオ)、炭素数1〜80、好ましくは炭素数1〜40、更に好ましくは炭素数1〜30のヘテロアリールチオ基(例えば2−ピリジルチオ、3−ピリジルチオ、4−ピリジルチオ、2−キノリルチオ、2−フリルチオ、2−ピロリルチオ)、炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−ベンジルオキシカルボニル)、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜12、更に好ましくは炭素数6〜10のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の無置換アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5の置換アルキル基{例えばヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、またここでは炭素数2〜18、好ましくは炭素数3〜10、更に好ましくは炭素数3〜5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれる}、炭素数6〜20、好ましくは炭素数6〜15、更に好ましくは炭素数6〜10の置換又は無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル、4−プロピルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ブチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−ペンチルシクロヘキシル−4’−ビフェニル、4−プロピルフェニル−2−エチニル−4’−ビフェニル)、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数4〜6の置換又は無置換のヘテロアリール基(例えばピリジル、5−メチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)。
【0029】
これら置換基群Vは、ベンゼン環やナフタレン環が縮合した構造であってもよい。さらに、これらの置換基上にさらに此処までに説明したVの説明で示した置換基が置換していてもよい。
【0030】
置換基群Vの中でも、D及びDの表す2価のアリーレン基、2価のヘテロアリーレン基及び2価の環状脂肪族炭化水素基の置換基として好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基である。
特に、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基、又はパーフルオロアルキル基を表す末端基Tに結合するDは、置換基として、ハロゲン原子やシアノ基などの電子吸引性基を有することが、スメクチック液晶性を誘起させる力を高める観点から好ましく、その中でも、Dの置換基として電子吸引性基が置換する位置は、Tに対してオルト位であることが好適である。
【0031】
一般式(I)中、Lは2価の連結基を表す。好ましくは、アルカンジイル基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、エステル基(−COO−,−OCO−)、カルボニル基、アゾメチン基(−C=N−,−N=C−)、アゾ基、アゾキシ基、アルキレンオキシ基であり、より好ましくは、エステル基、アゾメチン基である。
【0032】
一般式(I)中、Tは、アルキル基、アルコキシ基を表す。Tとして好ましくは、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜10のアルキル基(例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ノニル基などをあげることができる);炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜10のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基などをあげることができる)である。
【0033】
一般式(I)中のTで表される置換基は、更に置換基を有していてもいなくてもよく、このような置換基としては、上記置換基群Vが挙げられる。
【0034】
一般式(I)中、Tは、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基、又はパーフルオロアルキル基を表し、Tとして好ましくは、炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のパーフルオロアルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基、ノナフルオロブトキシ基)、炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、ノナフルオロブチル基)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子)、ニトロ基、又はシアノ基である。
【0035】
一般式(I)中のTで表される置換基は、更に置換基を有していてもいなくてもよく、このような置換基としては、上記置換基群Vが挙げられる。
【0036】
一般式(I)中、eは1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2である。eが2又は3を表す場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(I)中、mは1〜3の整数を表し、好ましくは1又は2である。mが2又は3を表す場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、複数のL1はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(I)中、kは1又は2である。kが2の場合、複数のDはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一般式(I)中、fは0〜3の整数を表し、好ましくは0〜2である。fが2の場合、複数のLはそれぞれ異なった連結基を表す。
【0037】
一般式(I)中、DとDで表される基の総数、すなわちe×m+kが2〜5の整数であり、より好ましくは2〜4の整数であり、特に好ましくは2〜3の整数である。e及びkがそれぞれ2以上の時、2以上のD及びDはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、fが2以上の時、2以上のLは、同一でも異なっていてもよく、mが2以上の時、2以上の((D−(L)は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0038】
特に好ましいe、f、m、kの組み合わせを以下に記す。
(i)e=1、f=1、m=2、k=1
(ii)e=2、f=1、m=1、k=1
(iii)e=2、f=2、m=1、k=1
(iV)e=1、f=1、m=1、k=2
(V)e=1、f=2、m=1、k=2
(VI)e=1、f=1、m=1、k=1
(VII)e=1、f=0、m=2、k=1
(VIII)e=1、f=0、m=1、k=1
【0039】
以下に、第1のネマチック液晶化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
【化1】

【0041】
【化2】

【0042】
【化3】

【0043】
第1のネマチック液晶組成物は、目的に応じて、第1のネマチック液晶化合物以外の化合物を複数種混合してもよい。
【0044】
<コレステリック液晶組成物>
本発明における、コレステリック液晶組成物は、室温(25℃)でコレステリック相を示すものであれば特に限定されないが、非極性あるいは弱い極性を示し、かつエステル連結基あるいはアゾキシ基を有するものが好ましい。また、少なくとも1種の第2のネマチック液晶化合物又は組成物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含有することが好適である。
【0045】
コレステリック液晶組成物を用いると、特定の末端基を有する前記第1のネマチック液晶化合物又は組成物との間で、弱いドナー−アクセプター相互作用を生じ、レイヤー構造が安定化して、スメクチック性が発現する。更に、カイラル剤と第2のネマチック液晶化合物を含むコレステリック液晶組成物を用いると、カイラル剤の効果でねじれ力が発生することで、室温でTGBA相を呈しやすくなるものと推測される。しかし、本発明はこのような推測によって限定されない。
【0046】
−カイラル剤−
コレステリック液晶組成物に含有するカイラル剤の種類としては、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第199〜202頁に記載のTN、STN用カイラル剤などを挙げることができ、好ましくは、ねじれ力を表すHTP(Herical Twisting Power)値が大きいものが好ましく、1〜100、より好ましくは3〜50、特に好ましくは5〜50である。
【0047】
−第2のネマチック液晶化合物又は組成物−
第2のネマチック液晶化合物又は組成物としては、分子内にエステル結合、アゾメチン基もしくはアゾキシ基を有する液晶化合物又は該液晶化合物を含有し、室温でネマチック相を示す組成物であることが好ましい。
【0048】
前記第2のネマチック液晶化合物の骨格として特に制限はないが、液晶コアを連結する基として、エステル基(−COO−,−OCO−)、アゾメチン基(−N=C−,−C=N−)あるいはアゾキシ基を有し且つ液晶性を有することが好ましい。更に、前記第1のネマチック液晶化合物として前記一般式(I)で表される化合物を用いた場合には、下記一般式(II)で表される化合物を第2のネマチック液晶化合物として適用することが好適である。
【0049】
一般式(II): T−((D−(L2−(D−T
【0050】
一般式(II)中のT、D、D、e、m、k及びfは、一般式(I)中のT、D、D、e、m、k及びfとそれぞれ同義である。
【0051】
一般式(II)中、Tは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲンを表す。Tとして好ましくは、炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜10のアルキル基(例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ノニル基などをあげることができる);炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜20、更に好ましくは炭素数3〜10のアルコキシ基(例えば、n−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基などをあげることができる)、フッ素原子である。
【0052】
一般式(II)中のTおよびTで表される置換基は、更に置換基を有していてもいなくてもよく、このような置換基としては、上記置換基群Vが挙げられる。
【0053】
一般式(II)中、Lは2価の連結基を表す。好ましくは、アルカンジイル基、アルケニレン基、アルキニレン基、エーテル基、エステル基(−COO−,−OCO−)、カルボニル基、アゾメチン基(−C=N−,−N=C−)、アゾ基、アゾキシ基、アルキレンオキシ基であり、より好ましくは、エステル基、アゾメチン基、アゾキシ基である。
【0054】
以下に、第2のネマチック液晶化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
−コレステリック液晶組成物−
本発明のコレステリック液晶組成物において、第2のネマチック液晶化合物又は組成物とカイラル剤との比率は、混合して得られた液晶組成物が室温でコレステリック相を示すのであれば、いかなる割合であってもよいが、第2のネマチック液晶化合物又は組成物:カイラル剤は80mol%:20mol%〜99.9mol%:0.1mol%が好ましく、85mol%:15mol%〜99mol%:1mol%がより好ましく、80mol%:20mol%〜95mol%:5mol%であることが特に好ましい。
【0058】
なお、コレステリック液晶組成物が25℃(室温)でコレステリック相を呈するかの確認は、偏光顕微鏡で液晶相を観察することによって行うことができる。
【0059】
また、本発明におけるコレステリック液晶組成物において、目的に応じて(例えば、液晶温度範囲を制御する目的など)、前記第2のネマチック液晶化合物や前記カイラル剤以外の化合物を複数種混合してもよい。
【0060】
<TGBA相液晶組成物>
本発明のTGBA相液晶組成物における、コレステリック液晶組成物と第1のネマチック液晶化合物又は組成物との比率は、混合して得られた液晶組成物が室温でTGBA相を示すのであれば、いかなる割合であってもよいが、コレステリック液晶組成物:第1のネマチック液晶化合物又は組成物は50mol%:50mol%〜99.9mol%:0.1mol%が好ましく、65mol%:35mol%〜99mol%:1mol%がより好ましく、80mol%:20mol%〜95mol%:5mol%であることが特に好ましい。
【0061】
本発明のTGBA相液晶組成物は、二周波駆動性を示すものであってもよい。
本発明において、二周波駆動性とは、印加電圧の周波数を大きくすることで誘電率異方性が正から負に変化し、クロスオーバー周波数fcを有することをいう。クロスオーバー周波数の測定は、市販の誘電率測定器(東陽テクニカ製Solartron1255B,1296)によって行うことができる。
クロスオーバー周波数を有する液晶組成物では、周波数によって誘電率異方性Δεを正と負に変更することができるので、この性質を利用して、配向方向を変えることができる。その他二周波駆動性液晶については、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第189〜192頁を参照することができる。
【0062】
本発明の液晶組成物が二周波駆動性を奏するには、前記第1のネマチック液晶化合物又は組成物が二周波駆動性を示すか、前記コレステリック液晶組成物が二周波駆動性を示すものとすればよい。
【0063】
第1のネマチック液晶化合物又は組成物が二周波駆動性を示す場合、第1のネマチック液晶化合物又は組成物は、一般式(I)におけるDとDで表される基の総数、すなわちe×m+kが3〜4であることが好ましく、2価の連結基Lがエステル基(−COO−,−OCO−)またはアルキレンオキシ基が好ましい。
【0064】
前記コレステリック液晶組成物が二周波駆動性を示す場合、コレステリック液晶組成物は、一般式(II)におけるDとDで表される基の総数、すなわちe×m+kが3〜4であることが好ましく、2価の連結基L2がエステル基(−COO−,−OCO−)またはアルキレンオキシ基が好ましい。
【0065】
本発明のTGBA相液晶組成物が二色性色素を含有すると、カラー表示可能な液晶組成物となるため、室温TGBA相液晶組成物が二色性色素を含有するのは好適な態様の1つである。二色性色素は、ホスト液晶中に溶解し、光を吸収する機能を有する化合物と定義される。
前記二色性色素の吸収極大ならびに吸収帯に関しては特に制限はないが、イエロー域(Y)、マゼンタ域(M)、あるいはシアン域(C)に吸収極大を有する場合が好ましい。
【0066】
それぞれのTGBA相液晶組成物に用いられる二色性色素は、単独で使用してもよいが、複数を混合したものであってもよい。複数の色素を混合する場合には、同一種の発色団を有する色素同士を混合してもよいし、互いに異なる発色団を有する二色性色素を混合してもよく、Y、M、Cに吸収極大を有する二色性色素の混合物を用いるのが好ましい。
公知の二色性色素としては、例えば、A. V. Ivashchenko著、Diachronic Dyes for Liquid Crystal Display、CRC社、1994年に記載のものが挙げられる。
イエロー色素、マゼンタ色素ならびにシアン色素を混合することによるフルカラー化表示を行う方法については、「カラーケミストリー」(時田澄男著、丸善、1982年)に詳しい。ここでいう、イエロー域とは、430〜490nmの範囲、マゼンタ域とは、500〜580nmの範囲、シアン域とは600〜700nmの範囲である。
【0067】
次に、本発明の二色性色素に用いられる発色団について説明する。
前記二色性色素の発色団はいかなるものであってもよいが、例えば、アゾ色素、アントラキノン色素、ペリレン色素、メロシアニン色素、アゾメチン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、アズレン色素、ジオキサジン色素、ポリチオフェン色素、フェノキサジン色素などが挙げられる。好ましくはアゾ色素、アントラキノン色素、フェノキサジン色素であり、特に好ましくはアントラキノン色素、フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)である。
【0068】
アゾ色素はモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、ペンタキスアゾ色素などいかなるものであってもよいが、好ましくはモノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素である。
アゾ色素に含まれる環構造としては芳香族基(ベンゼン環、ナフタレン環など)のほかにも複素環(キノリン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリミジン環など)であってもよい。
【0069】
アントラキノン色素の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基である。該置換基の置換数はいかなる数であってもよいが、ジ置換、トリ置換、テトラキス置換が好ましく、特に好ましくはジ置換、トリ置換である。該置換基の置換位置はいかなる場所であってもよいが、好ましくは1,4位ジ置換、1,5位ジ置換、1,4,5位トリ置換、1,2,4位トリ置換、1,2,5位トリ置換、1,2,4,5位テトラ置換、1,2,5,6位テトラ置換構造である。
【0070】
フェノキサゾン色素(フェノキサジン−3−オン)の置換基としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を含むものが好ましく、例えば、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルアミノ、アリールアミノ基である。
【0071】
本発明の液晶組成物におけるホスト液晶に対する二色性色素の比率は、吸光係数が色素によって異なるため、いかなる割合であってもよいが、0.1〜15質量%が好ましく、0.2〜8質量%が特に好ましい。なお、本発明においてホスト液晶とは、室温TGBA相液晶組成物をいう。
【0072】
ホスト液晶への二色性色素の溶解は、機械的攪拌、加熱、超音波、あるいはその組合せなどを利用することができる。その他、本発明の液晶組成物の調製については、公知の方法を採用することができる。
【0073】
次に本発明の液晶素子について説明する。少なくとも一方が透明電極である一対の電極と、該一対の電極間に上記液晶組成物を含有する層を有する。該層に含有される前記液晶組成物の形態については限定されず、例えば、該層が、前記液晶組成物からなる液晶層であってもよいし、また、後述する様に、前記液晶組成物が、マイクロカプセル中に包含されていても、ポリマー中に分散されていてもよい。
【0074】
本発明の液晶素子に用いられる電極基板としては、通常ガラスあるいはプラスチック基板が用いられ、プラスチック基板が好ましい。本発明に用いられるプラスチック基板としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ポリイミド(PI)などが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0075】
プラスチック基板の厚みには、特に規定されないが30μm〜700μmが好ましく、より好ましくは40μm〜200μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。さらにいずれの場合もヘイズは3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、全光透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0076】
プラスチック基板には、必要により本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、染顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機微粒子、剥離促進剤、レベリング剤及び潤滑剤などの樹脂改質剤を添加してもよい。
【0077】
前記プラスチック基板は光透過性及び非光透過性のいずれであってもよい。前記支持体として、非光透過性支持体を用いる場合には、光反射性を有する白色の支持体を用いることができる。白色支持体としては、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機顔料を添加したプラスチック基板が挙げられる。なお、前記支持体が表示面を構成する場合は、少なくとも可視域の光に対して光透過性を有することが必要である。
基板については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第218〜231頁に詳しい。
【0078】
一対の基板のうち少なくとも一方の基板表面に、電極層、好ましくは透明電極層が形成される。その電極層としては、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズなどが用いられる。透明電極については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第232〜239頁に記載のものが用いられる。透明電極は、スパッタ法、ゾルゲル法、印刷法により形成することができる。
【0079】
本発明の液晶素子は液晶を配向させる目的で、液晶と基板の接する表面に配向処理を施した層を形成してもよい。該配向処理としては、たとえば、4級アンモニウム塩を塗布し配向させる方法、ポリイミドを塗布しラビング処理により配向する方法、SiOxを斜め方向から蒸着して配向する方法、さらには、光異性化を利用した光照射による配向方法などが挙げられる。配向膜については、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第240〜256頁に記載のものが用いられる。
【0080】
但し、上記のように、本発明の液晶素子は、二周波駆動可能な本発明のスメクチック液晶組成物を利用しているので、配向膜がなくても印加電圧の増減だけで液晶の配向をスイッチングできる。従って、本発明の液晶素子は、配向膜があっても、なくてもよく、配向膜がない場合、構成が簡略化され、且つ配向膜に起因した表示特性の低下がない等の利点を有する。
【0081】
本発明の液晶素子は一対の基板同士をスペーサーなどを介して、1〜50μmの間隔を設け、その空間に注入することができる。スペーサーについては、たとえば、日本学術振興会第142委員会編、液晶デバイスハンドブック、日刊工業新聞社、1989年、第257〜262頁に記載のものが用いられる。本発明の液晶組成物は、基板上に塗布あるいは印刷することにより基板間の空間に配置することができる。
【0082】
本発明の液晶素子は、更に白色反射板、反射防止膜、輝度向上膜などを備えていてもよい。
【0083】
本発明の液晶素子は、単純マトリックス駆動方式あるいは薄膜トランジスタ(TFT)などを用いたアクテイブマトリックス駆動方式を用いて駆動することができる。駆動方式については、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第387〜460頁に詳細が記載され、本発明の液晶素子の駆動方法として利用できる。
【0084】
本発明にかかる液晶層では、1つの液晶組成物中に複数の二色性色素を混合してもよい。液晶組成物の色についても、いかなるものであってもよい。例えば、複数の二色性色素を混合して用いる等、黒色の液晶組成物を調製した場合には、電圧の印加によって白黒表示用の液晶素子として利用することができる。
また、レッド、グリーン及びブルーに各々着色された液晶組成物を調製し、3種類の組成物を基板上に並置配置することにより、カラー表示用の液晶素子を作製することもできる。
【0085】
更に、本発明にかかる液晶層は、特開平11−24090号公報などに記載のように、液晶組成物をマイクロカプセルとして構成してもよい。かかるマイクロカプセルは、高分子樹脂を壁材として、上記二色性色素を含むTGBA相液晶組成物を壁材に内包させるものである。マイクロカプセルの製造方法は、公知の方法を適宜適用することができる。
【0086】
また、本発明にかかる液晶層は、特開平5−61025号、同5−265053号、同6−3691号、同6−23061号、同5−203940号、同6−242423号、同6−289376号、同8−278490号、同9−813174号に記載されているように高分子分散液晶であってもよい。
高分子分散液晶は、独立空胞を有する高分子材料の空胞を液晶が満たしていて、液晶が不連続相をとるいわゆるPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal )タイプと、連続空胞を有する高分子材料の連続空胞を液晶が満たして液晶が連続相をとるいわゆるPNLC(Polymer Network Liquid Crystal )タイプとに大別されるが、本発明においてはいずれであってもよい。当該高分子分散液晶の製造方法は、公知の方法を適宜適用することができる。更に、本発明では、高分子分散液晶を積層させて構成してもよい。
【0087】
本発明の室温TGBA相液晶組成物は、液晶素子の作製に広く用いることができ、特に光散乱型表示材料およびゲストホスト方式液晶表示素子の作製に用いるのに適する。本発明の液晶組成物を用いて作製されたPDLC表示素子やゲストホスト方式液晶表示素子は、高い表示コントラスト比の画像を表示可能であるとともに、メモリ性を有するため、反射型表示材料や調光材料に好適に用いることができる。
【実施例】
【0088】
次に本発明をより詳細に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0089】
<実施例1>
(コレステリック液晶組成物1の調製)
第2のネマチック液晶組成物として、Applied Physics Letters, Vol.25, 186-188(1974)記載の二周波駆動ネマチック液晶(H−1)98.6mgおよびカイラル剤R−1011(Merck社製)1.4mgの混合物を、180℃のホットプレート上で1時間加熱したあと、室温にまで冷却させ、1晩放置させて、コレステリック液晶組成物1を得た。
【0090】
【化6】

【0091】
(室温TGBA相液晶組成物1の調製)
前記コレステリック液晶組成物1(90mg)および下記第1のネマチック液晶化合物(10mg)の混合物を、180℃のホットプレート上で1時間加熱したあと、室温にまで冷却させ、1晩放置させたものを、偏光顕微鏡にて観察したところ、室温にてTGBA相を示した。
TGBA相を示す温度範囲について、INSTEC社製ホットステージを用い、偏光顕微鏡観察にて測定したところ、15℃(これ以下の温度は未測定)〜41℃でTGBA相を示すことが明らかとなった。
【0092】
【化7】

【0093】
<実施例2>
(色素吸収測定)
実施例1で得られたTGBA相液晶組成物に二色性色素を溶解させ、また、比較として、前記第2のネマチック液晶組成物H−1に二色性色素を溶解させた。吸光度を分光光度測定器(島津製作所社製、UV−2400PC)を用いて測定した所、比較の液晶組成物の1.95倍の吸光度を示した。この結果から、TGBA相の螺旋周期構造により、色素吸光度が向上していることがわかる。
【0094】
(二周波駆動性)
周波数の異なる電圧100Vを印加したところ、100Hzでは、色素吸収が減少し、続いて、10kHzにしたところ、吸収が増加した。このことから、該液晶組成物は、二周波駆動性を示すことがわかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のコレステリック液晶組成物と、少なくとも1種の第1のネマチック液晶化合物又は組成物と、を含有し、室温でTGBA相を示す液晶組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のコレステリック液晶組成物と、少なくとも1種の第1のネマチック液晶化合物又は組成物と、を混合することで、室温にてTGBA相が誘起されたものであることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
前記第1のネマチック液晶化合物又は組成物が、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、パーフルオロアルコキシ基もしくはパーフルオロアルキル基を末端に有する化合物、又は該化合物を含有する組成物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
前記コレステリック液晶組成物が、少なくとも1種の第2のネマチック液晶化合物又は組成物と、少なくとも1種のカイラル剤と、を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記コレステリック液晶組成物が、室温でコレステリック相であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
前記の第2のネマチック液晶化合物又は組成物が、エステル基、アゾメチン基もしくはアゾキシ基を分子内に有する化合物又は該化合物を含有する組成物であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の液晶組成物。
【請求項7】
二周波駆動性を示すことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
更に、少なくとも1種の二色性色素を含有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
少なくとも一方が透明電極である一対の電極と、該一対の電極間に液晶層を有する液晶素子であって、
前記液晶層が請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の液晶組成物を少なくとも1種含有することを特徴とする液晶素子。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の液晶素子を備える反射型表示材料。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の液晶素子を備える調光材料。

【公開番号】特開2008−201887(P2008−201887A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39293(P2007−39293)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】