説明

液晶表示素子

OCBモードの液晶表示素子であって、第1偏光層(51)と液晶層(30)との間に面内方位に位相差を生ずる第1位相差層(41)をその遅相軸が第1偏光層(51)の吸収軸と直交するよう配置し、第2偏光層(52)と第1位相差層(41)との間に面内方位に位相差を生ずる第2位相差層(42)をその遅相軸が液晶分子の傾く面内方位と直交する方位となるよう配置し、なおかつ、第2偏光層(52)と第1位相差層(41)との間に液晶表示素子の法線方向に光軸を有するとともに層全体で負の一軸性の機能を有する第3位相差層(43)を配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示素子に係り、特に、広視野角及び高速応答の実現が可能なOCB(Optically Compensated Bend)モードの液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型、軽量、低消費電力である等の様々な特徴を有しており、OA機器、情報端末、時計、及びテレビ等の様々な用途に応用されている。特に、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)を有する液晶表示装置は、その高い応答性から、携帯テレビやコンピュータなどのように多量の情報を表示するモニタとして用いられている。
【0003】
近年、情報量の増加に伴い、画像の高精細化や表示速度の高速化に対する要求が高まっている。これら要求のうち画像の高精細化は、例えば、上述したTFTが形成するアレイ構造を微細化することによって実現されている。
【0004】
一方、表示速度の高速化に関しては、従来の表示モードに代わって、例えばネマティック液晶を用いたOCB(Optically Compensated Birefringence)モード、VAN(Vertically Aligned Nematic)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、およびπ配列モード、並びにスメクチック液晶を用いた界面安定型強誘電性液晶(SSFLC:Surface−Stabilized Ferroelectric Liquid Crystal)モードおよび反強誘電性液晶(AFLC:Anti−Ferroelectric Liquid Crystal)モードが検討されている。
【0005】
これら表示モードのうち、視野角及び応答速度を改善可能な液晶表示装置として、OCBモードの液晶表示装置が注目されている。このOCBモード液晶表示装置は、一対の基板間にベンド配列が可能な液晶分子を有する液晶層が挟持されてなるものである。このOCBモード液晶表示装置は、TNモードに比して応答速度が一桁改善され、さらに液晶分子の配列状態により液晶層を通過する光の複屈折の影響を光学的に自己補償できるため視野角が広いという利点がある。
【0006】
このようなOCBモードの液晶表示装置を用いて画像を表示する場合、複屈折性を制御し偏光板との組み合わせによって、例えば高電圧印加時に光を遮断して黒を表示し、低電圧印加時に光を透過して白を表示することが考えられる。
【0007】
しかしながら、黒を表示する際には、大多数の液晶分子は高電圧印加により電界方向に沿って配列する(すなわち基板の法線方向に配列する)が、基板近傍の液晶分子は配向膜との相互作用により法線方向に配列せず、光は所定方向に位相差の影響を受ける。このため、画面を正面方向(すなわち基板の法線方向)から観察した場合、黒表示時の透過率を十分に低減させることができず、コントラストの低下を招く。
【0008】
そこで、例えば一軸性の位相差板を組み合わせることで、黒表示時の液晶層の位相差を補償し、透過率を十分に低減させることが知られている。また、画面を斜め方向から観察した場合でも十分に透過率の低い黒表示を実現する、あるいはコントラスト特性を補償する手法として、例えば特許文献1に開示されるように、ハイブリッド配列した光学的に負のディスコティック液晶分子を有するディスコティック液晶層を位相差板として組み合わせることも知られている。(例えば、特開平10−197862号公報参照。)。
【0009】
OCBモードの液晶表示装置において、従来の構成では、それぞれの吸収軸(または透過軸)が互いに直交するような配置された2枚の偏光板の間にベンド配列した液晶分子からなるベンド液晶層が配置されており、黒表示時の視野角特性を補償するために、2つのディスコティック液晶層及び2つの2軸性位相差板を用いて構成されている。
【0010】
このような従来構成においては、光学的に補償すべき対象が3つある。すなわち、ベンド液晶層の法線方向における正の位相差、ベンド液晶層の面内方位における残留位相差、及び、偏光板の正の2色性が補償対象である。
【0011】
すなわち、ベンド液晶層は、全体的に見ると、2軸の屈折率異方体(nz>nx>ny)である。このため、ベンド液晶層は、その法線方向に正の位相差を有するとともに、その面内方位に位相差を有している。法線方向における位相差は、主にディスコティック液晶層及び2軸性位相差板を用いて補償している。また、面内方位における残留位相差は、主に、ディスコティック液晶層を用いて補償している。
【0012】
しかしながら、これら液晶起因の位相差は、波長分散性が大きい。一方で、法線方向の位相差を補償するための2軸性位相差板は、延伸フィルムによって形成されたものが多く、液晶分子を含むような位相差板ほど波長分散性を大きくすることができない。したがって、法線方向の位相差について、特定波長に対して補償できたとしてもその他の大部分の波長に対してベンド液晶層と2軸性位相差板との波長分散性が合致せず、十分な補償ができない。このため、画面の法線からの傾きに対するコントラスト特性及び色再現性すなわちコントラスト及び色の視野角特性が不十分であるといった問題がある。
【0013】
なお、面内方位の位相差を補償するためのディスコティック液晶層は、ベンド液晶層と同様に波長分散性が大きく、可視域の波長範囲内においてベンド液晶層の面内方位における位相差を略補償できている。このため、画面の法線方向でのコントラスト特性及び色再現性は良好である。
【0014】
また、偏光板における正の2色性は、2色性方位と直交する方位に遅相軸を持つ2軸性位相差板を用いて補償可能である。しかしながら、偏光板の2色性は、ベンド液晶層の波長分散性とは逆極性の波長分散性を有している(例えば、ベンド液晶層の波長分散性は短波長ほど位相差が大きい特性であるのに対して、偏光板の波長分散性は長波長ほど位相差が大きい特性である)。これに対して、2軸性位相差板は波長分散性が小さい。したがって、正の2色性について、特定波長に対して補償できたとしてもその他の大部分の波長に対して偏光板と2軸性位相差板との波長分散性が合致せず、十分な補償ができない。このため、コントラスト及び色の視野角特性が不十分であるといった問題がある。
【0015】
さらに、このような問題に加えて、ディスコティック液晶層及び2軸性位相差板は、製造コストが高く、液晶表示装置全体のコストアップを招くといった課題もある。
【発明の開示】
【0016】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、視野角特性及び表示品位に優れ、しかも、コスト低減が可能な液晶表示素子を提供することにある。
【0017】
この発明の態様による液晶表示素子は、
一対の基板間にネマティック液晶層を挟持したドットマトリクス型の液晶パネルを第1偏光層と第2偏光層との間に配置した液晶表示素子であり、画素に電圧を印加していない状態において、前記液晶層の界面近傍の液晶分子は基板の法線方向に対して傾きを持っており、且つそれぞれの基板近傍の液晶分子は基板面内で傾く面内方位が略同じ方位であるスプレイ状若しくはベンド状の分子配列をなし、前記画素に電圧を印加し前記液晶分子の傾き角をベンド状の分子配列にて制御することによって液晶層の位相差を変調させて表示の明暗を制御するベンドモードの液晶表示素子であって、
前記第1偏光層と前記液晶層との間に、面内方位に位相差を生ずる第1位相差層をその遅相軸が前記第1偏光層の吸収軸と直交するよう配置し、
前記第2偏光層と前記第1位相差層との間に、面内方位に位相差を生ずる第2位相差層をその遅相軸が前記液晶分子の傾く面内方位と直交する方位となるよう配置し、
なおかつ、前記第2偏光層と前記第1位相差層との間に、前記液晶表示素子の法線方向に光軸を有するとともに層全体で負の一軸性の機能を有する第3位相差層を配置したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
[図1]図1は、この発明の一実施の形態としてのOCB型液晶表示装置の構成を概略的に示す断面図である。
[図2]図2は、OCB型液晶表示装置に適用される光学補償素子の構成を概略的に示す図である。
[図3]図3は、図2に示した光学補償素子を構成する各光学部材の光軸方向と液晶配向方向との関係を示す図である。
[図4]図4は、画像を表示可能な状態でのベンド液晶層における位相差を説明するための図である。
[図5]図5は、第1位相差層及び第2位相差層において生ずる位相差を説明するための図である。
[図6]図6は、第3位相差層において生ずる位相差を説明するための図である。
[図7]図7は、クロスニコル偏光板を透過する光の透過率についての波長分散性を説明するための図である。
[図8]図8は、偏光板における正の2色性の補償原理を説明するための図である。
[図9]図9は、偏光板における正の2色性の補償原理を説明するための図である。
[図10]図10は、光学補償された偏光層及び位相差層を透過する光の透過率についての波長分散性を説明するための図である。
[図11]図11は、実施例に係るOCB型液晶表示装置の構成を概略的に示す図である。
[図12]図12は、実施例に係るOCB型液晶表示装置による黒表示時の視野角依存性を説明するための色度図である。
[図13]図13は、実施例に係るOCB型液晶表示装置によるコントラストの視野角依存性を説明するための図である。
[図14]図14は、実施例に係るOCB型液晶表示装置による8階調について、画免の左右方向に傾いた角度についての輝度の測定結果を示す図である。
[図15]図15は、実施例に係るOCB型液晶表示装置による8階調について、画免の上下方向に傾いた角度についての輝度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の一実施の形態に係る液晶表示素子について図面を参照して説明する。この実施の形態では、複屈折モードの液晶表示素子として、特に、OCB(Optically Compensated Bend)モード方式による液晶表示装置を例に説明する。
【0020】
図1に示すように、OCB型液晶表示装置は、一対の基板すなわちアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層(ネマティック液晶層)30を保持して構成されたドットマトリクス型の液晶パネル1を備えている。この液晶パネル1は、例えば透過型であり、アレイ基板10側に配置された図示しないバックライトユニットからのバックライト光を対向基板20側に透過可能に構成されている。
【0021】
アレイ基板10は、ガラスなどの絶縁基板11を用いて形成されている。このアレイ基板10は、絶縁基板11の一方の主面にスイッチング素子12、画素電極13、配向膜14などを備えている。スイッチング素子12は、TFT(Thin Film Transistor)やMIM(Metal Insulated Metal)、TFT(Thin Film Diode)などで構成されている。画素電極13は、マトリクス状の画素毎に配置され、スイッチング素子12に電気的に接続されている。この画素電極13は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの光透過性を有する導電性部材によって形成されている。配向膜14は、絶縁基板11の主面全体を覆うように配置されている。
【0022】
対向基板20は、ガラスなどの絶縁基板21を用いて形成されている。この対向基板20は、絶縁基板21の一方の主面に対向電極22、配向膜23などを備えている。対向電極22は、例えばITOやIZOなどの光透過性を有する導電性部材によって形成されている。配向膜23は、絶縁基板21の主面全体を覆うように配置されている。
【0023】
なお、カラー表示タイプの液晶表示装置では、液晶パネル1は、複数色例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の色画素を有している。すなわち、赤色画素は赤色波長の光を透過する赤色カラーフィルタを備え、緑色画素は緑色波長の光を透過する緑色カラーフィルタを備え、青色画素は青色波長の光を透過する青色カラーフィルタを備えている。これらカラーフィルタは、アレイ基板10または対向基板20の主面に配置されている。
【0024】
上述したような構成のアレイ基板10と対向基板20とは、図示しないスペーサを介して互いに所定のギャップを維持した状態で貼り合わせられている。液晶層30は、これらアレイ基板10と対向基板20との間のギャップに封入されている。液晶層30に含まれる液晶分子31は、正の誘電率異方性を有するとともに光学的に正の一軸性を有する材料を選択可能である。
【0025】
このような液晶パネル1は、一対の偏光層すなわち第1偏光層51と第2偏光層52との間に配置されている。第1偏光層51は、例えば液晶パネル1の光入射側すなわちアレイ基板10の外面側に配置されている。第2偏光層52は、例えば液晶パネル1の光出射側すなわち対向基板20の外面側に配置されている。また、第1偏光層51と液晶パネル1との間、及び、第2偏光層52と液晶パネル2との間には、所定の表示状態における液晶層30の位相差、及び、第1偏光層51及び第2偏光層52の正の2色性を光学的に補償する光学補償素子40が配置されている。
【0026】
例えば、図2に示すように、第1偏光層51と液晶パネル1との間に配置された光学補償素子40Aは、第1位相差層(Aプレート)41を有している。また、第2偏光層52と液晶パネル1との間に配置された光学補償素子40Bは、第2位相差層(Aプレート)42及び第3位相差層(Cプレート)43を有している。なお、第1位相差層41は、第1偏光層51と液晶層30との間であればどこに配置されても良い。また、第2位相差層42は、第2偏光層52と第1位相差層41との間であればどこには位置されても良い。さらに、第3位相差層43は、第2偏光層52と第1位相差層41との間であればどこには位置されても良い。
【0027】
いま、図3に示すように、アレイ基板10及び対向基板20の主面と平行な平面を便宜上基板面と称し、この基板面内の方位を面内方位と称する。ここでは、画面の左右方位が図中矢印Aで示した0°方位に対応し、画面の上下方位が図中矢印Bで示した90°方位に対応するものとする。
【0028】
配向膜14及び23は、パラレル配向処理されている。すなわち、配向膜14及び23は、ともに図中の矢印Aで示す方向にラビング処理されている。これにより、液晶分子31の光軸の正射影(液晶配向方向)は、図中矢印Bと平行となる。つまり、液晶分子31は、画素に電圧を印加していない状態において、配向膜14及び23の影響により、液晶層30の界面近傍において基板面の法線方向(液晶層の厚み方向)に対して傾きを持って配列しており、しかも、アレイ基板10及び対向基板20の近傍において、傾く面内方位が基板面内で略同じ方位であり、略90°方位に傾いている。
【0029】
このとき、液晶分子31は、アレイ基板10と対向基板20との間でスプレイ状若しくはベンド状の分子配列をなしている。また、画像を表示可能な状態、例えば所定のバイアスを印加した状態では、液晶分子31は、矢印Bで規定される液晶層30の断面内において、アレイ基板10と対向基板20との間においてベンド状に配列している。
【0030】
第1偏光層51は、その光軸(すなわち透過軸または吸収軸)が図中の矢印Cで示した135°方位を向くように配置されている。また、第2偏光層52は、その光軸(透過軸または吸収軸)が図中の矢印Dで示した45°方位を向くように配置されている。つまり、第1偏光層51及び第2偏光層52のそれぞれの光軸は、液晶配向方向Bに対して45°の角度をなし、しかも、互いに直交する。
【0031】
OCB型液晶表示装置では、画素に電圧を印加し、液晶分子31の傾き角をベンド状の分子配列にて制御することにより、液晶層30の位相差を変調させて表示の明暗を制御している。
【0032】
ところで、上述したように、ベンド液晶層30に対して高い電圧を印加しても、すべての液晶分子31が基板の法線方向に沿って配列せず、液晶層30は位相差を有する。すなわち、ベンド液晶層30は、全体的に見ると、図4に示すように、2軸の屈折率異方体(nz>nx>ny)である。このため、ベンド液晶層30は、その法線方向(z方向)に正の位相差を有するとともに、その面内方位(x−y平面)に位相差を有している。ここでは、x軸が0°方位に対応するものとしx軸方向の主屈折率をnx、y軸が90°方位に対応するものとしy軸方向の主屈折率をny、z軸が基板面の法線方位に対応するものしz軸方向の主屈折率をnzとする。
【0033】
このような液晶層30の面内方位における位相差を光学的に補償するために、第2位相差層42が設けられている。すなわち、この第2位相差層42は、ある特定の電圧印加状態(例えば高電圧を印加して黒を表示する状態;暗表示時)で、液晶層30の面内方位における位相差(画面を正面方向から観察した時に影響する液晶層30の位相差)をキャンセルするような位相差機能を有している。
【0034】
この第2位相差層42は、図5に示すように、1軸の屈折率異方性(nx>ny=nz)を有している。ここでは、第2位相差層42は、x軸が0°方位に対応し、y軸が90°方位に対応し、z軸が基板面の法線方位に対応するように配置される。つまり、このような第2位相差層42の光軸(すなわち遅相軸)の方位(0°方位)Aは、液晶層30の面内方位において位相差を発生する方位(90°方位)すなわち液晶配向方向Bに直交する。すなわち、第2位相差層42は、方位Aに位相差を有する。
【0035】
これにより、液晶層30が有する面内方位での位相差をキャンセルさせて、液晶層30と第2位相差層42とを複合してリタデーション量が実効的にゼロになる状態を形成し、画面の正面方向(基板面の法線方向)から観察した時に十分なコントラストを得ることが可能となる。
【0036】
このような位相差を有する第2位相差層42は、液晶ポリマーによって形成可能である。この液晶ポリマーは、例えばネマティック液晶ポリマーからなる。この第2液晶層42は、液晶ポリマーの分子長軸が第2位相差層42の遅相軸方位すなわち0°方位と略平行となるように液晶ポリマー分子を配列させることによって形成される。
【0037】
このような液晶分子を用いて形成した第2位相差層42の波長分散性は、少なくとも可視域の波長範囲内において、同様に液晶分子からなる液晶層30の波長分散性と略合致する。つまり、波長440nmでの値を波長620nmでの値で割った比を波長分散値としたとき、第2位相差層42における位相差の波長分散値がベンド状の分子配列をなした液晶層30における屈折率異方性Δn1cの波長分散値と略等しい。このため、画面を正面方向から観察した時に、良好なコントラスト特性及び色再現性を実現できる。
【0038】
第2位相差層42の位相差値R2は、位相差層を形成する液晶ポリマーの屈折率異方性と位相差層の層厚とを制御することにより調整可能である。ここでは、第2位相差層42の位相差値R2は、ベンド状の分子配列をなした液晶層30に特定の電圧を印加したとき(例えば黒表示時の電圧を印加したとき)の面内方位における位相差値R1cと略等しく設定されている。厳密には、位相差値R2と位相差値R1cとの絶対値が略等しく、それぞれの極性(正または負)は異なる。このため、特に、特定の電圧を印加した際の液晶層30の面内方位における位相差がキャンセルされ、良好なコントラスト特性を実現できる。
【0039】
また、第2位相差層42の位相差値R2は、波長550nmにおいて、100nm以下に設定されている。位相差値R2が小さいほど、黒表示を得る液晶層30の液晶分子の平均傾き角は大きくなる。つまり垂直配向に近い分子配列となる。従って位相差値R2が小さいほど、黒表示を得るために画素に印加する電圧は大きくなる。電圧値が大きすぎると駆動に負荷がかかるので問題となるが、低すぎると電気光学特性が急峻になりすぎるのでマージンが取れなくなる。液晶層厚の制御性やスイッチング素子12の特性ばらつきなどを考慮すると位相差値R2は100nm以下とするのが好ましい。なお、位相差値R2を小さくしすぎると前述したように駆動電圧が高くなってしまうが、これは液晶材料の誘電率異方性にも依存するので位相差値R2の下限値は一概には決められない。
【0040】
一方で、上述したような液晶層30の法線方向(厚み方向)における正の位相差を光学的に補償するために、第3位相差層43が設けられている。すなわち、この第3位相差層43は、その法線方向に光軸を有するとともに、ある特定の電圧印加状態(例えば高電圧を印加して黒を表示する状態)で、層全体で液晶分子31とは逆の光学特性すなわち負の一軸性の位相差機能を有している。つまり、この第3位相差層43は、液晶層30の法線方向における位相差(画面を斜め方向から観察した時に影響する液晶層30の位相差)をキャンセルするような位相差を生ずる。より望ましくは、第3位相差層43は、第1偏光層51と第2偏光層52との間に配置された第3位相差層43以外の構成部材における法線方向の位相差の和R(total)が波長550nmにおいて略ゼロとなるとなるような位相差を生ずる。
【0041】
この第3位相差層43は、図6に示すように、その層厚方向(法線方向)の主屈折率nzが相対的に小さく、面内方位の主屈折率nx及びnyが相対的に大きい1軸の屈折率異方性(nx=ny>nz)を有している。ここでは、第3位相差層43は、x軸が0°方位に対応し、y軸が90°方位に対応し、z軸が基板面の法線方位に対応するように配置される。つまり、このような第3位相差層43の光軸(すなわち遅相軸)の方位は、液晶層30の法線方向に平行となる。すなわち、第3位相差層43は、法線方向に位相差を有する。
【0042】
これにより、液晶層30が有する法線方向での位相差をキャンセルさせて、液晶層30と第3位相差層43とを複合してリタデーション量が実効的にゼロになる状態を形成し、画面を斜め方向から観察した時でも十分なコントラストを得ることが可能となる。つまり、コントラストの視野角特性を改善することが可能となる。
【0043】
このような位相差を有する第3位相差層43は、液晶ポリマーによって形成可能である。この液晶ポリマーは、例えばカイラルネマティック液晶ポリマー若しくはコレステリック液晶ポリマーからなる。この第3位相差層43は、液晶ポリマーの螺旋軸が第3位相差層43の主面の法線方向(層厚方向)に対して略平行であり、液晶ポリマーの捩れピッチをPとし、且つ波長400nmにおける液晶ポリマーの平均屈折率をn(=((ne+no)/2)1/2;但し、neを異常光線に対する主屈折率とし、noを常光線に対する主屈折率とする)としたとき、値(n×P)が400nm未満となるように形成される。また、第3位相差層43は、ディスコティック液晶ポリマーによって形成しても良い。この場合、第3位相差層43は、液晶ポリマーの分子光軸が第3位相差層43の主面の法線方向に対して略平行となるように液晶ポリマー分子を配列させることによって形成される。
【0044】
このような液晶分子を用いて形成した第3位相差層43の波長分散性は、少なくとも可視域の波長範囲内において、同様に液晶分子からなる液晶層30の波長分散性と略合致する。つまり、第3位相差層43における位相差の波長分散値がベンド状の分子配列をなした液晶層30における屈折率異方性Δn1cの波長分散値と略等しい。より望ましくは、第3位相差層43の位相差R3の波長分散値は、第1偏光層51と第2偏光層52との間に配置された第3位相差層43以外の構成部材における法線方向の位相差の和R(total)の波長分散値と略等しい。このため、画面を斜め方向から観察した時に、良好な色再現性を実現できる。つまり、色再現性の視野角特性を改善することが可能となる。したがって、広視野角化が可能となる。
【0045】
上述したように、ベンド液晶層30における2つの光学的補償対象、すなわち(1)暗表示時での面内方位における残留位相差を第2位相差層42により波長分散性も含めて補償するとともに、(2)法線方向における正の位相差を第3位相差層43により波長分散性も含めて補償することが可能となる。残る1つの光学的補償対象、すなわち(3)第1偏光層51及び第2偏光層52における正の2色性は、第1位相差層41により波長分散性も含めて補償可能である。
【0046】
すなわち、一般に適用される偏光板は、正の2色性を有している。つまり、偏光板は、1方向に吸収軸を持つのみである。このような偏光板を2つ組み合わせ、それぞれの吸収軸が基板面内で互いに直交するように配置した場合の2つの偏光板を透過する光の透過率について検討する。基板面に対する法線方向(正面方向)から観察した場合、互いの吸収軸が直交しているため、図7のAで示すように、可視域の略全域において透過率を約0%とすることができる。
【0047】
これに対して、基板面に対して斜め方向から観察した場合、互いの吸収軸の交差角は90°ではない(90°より小さいもしくは見方によっては90°より大きい)。このため、一部の光が2つの偏光板を透過する。略真横(基板面の法線に対して約89°傾いた方向)から観察した場合、互いの吸収軸の交差角はほぼゼロとなる。このため、図7のBに示すように、2つの偏光板を透過する光の透過率は、平行偏光板の場合とほぼ等しい。つまり、直線偏光が2つの偏光板を透過する。また、基板面の法線に対して45°傾いた方向から観察した場合(45°視角)は、図7のCに示すように、A及びBで示した透過率の中間の透過率となる。つまり、2つの偏光板を透過した光は円偏光となる。
【0048】
これを補償するには、図8に示すように、偏光板の透過軸方位に遅相軸を有する(異方性を持つ)位相差板を付与すればよい。ここでは、偏光板は、x軸方向に吸収軸を有するとともにy軸方向に透過軸を有するものとする(nx>ny=nz)。このような偏光板の透過軸に異方性を付与するためには、y軸方向に遅相軸を有する(ny>nx=nz)位相差板を組み合わせる。これらの組み合わせにより、負の2色性を有する偏光板として機能させることが可能となる。
【0049】
この原理は、図9に示す通りである。すなわち、基板面に対する法線方向(正面方向)から観察した場合、偏光板の透過軸と位相差板の遅相軸とが互いに直交している(軸の交差角が90°)。このため、一方の偏光板を透過した直線偏光の位相はずれず、直線偏光が出射される。
【0050】
これに対して、基板面に対して斜め方向から観察した場合、例えば基板面の法線に対して60°傾いた方向から観察した場合(60°視角)、偏光板の透過軸と位相差板の遅相軸との交差角は30°となる。このとき、偏光板の出射光の楕円性を位相差に置き換えると、(n×λ/4×視角分)となる。但し、n=1、2、3…である。つまり、ここに示した例では、偏光板及び位相差板を透過した光は、(n×λ/4×60°)に相当する楕円性が付与された楕円偏光となる。このような楕円偏光を直線偏光として出射するためには、楕円偏光に((90°−視角)×n/m×λ)の位相差を与えれば良い。但し、n=1、2、3…であり、m=2、4、6…である。ここに示した例では、上述した楕円偏光は、(30°×n/m×λ)の位相差を付与することにより直線偏光となる。つまり、偏光板の2色性を補償するための位相差板の位相差は、逆波長分散性を有することが望ましい。しかしながら、逆波長分散性を有する位相差板は材料の精製が難しく、製造コストが高い。
【0051】
そこで、この実施の形態では、第1偏光層51と液晶層30との間に、面内方位に位相差を生ずる第1位相差層41をその遅相軸が第1偏光層51の吸収軸と直交するように配置している。すなわち、この第1位相差層41は、第1偏光層51及び第2偏光層52における正の2色性を補償するような位相差を生ずる。
【0052】
この第1位相差層41は、図5に示すように、1軸の屈折率異方性(nx>ny=nz)を有している。ここでは、第1偏光層51の吸収軸が基板面内において135°方位に対応し、第2偏光層52の吸収軸が基板面内において45°方位に対応するものとしたとき、第1位相差層41は、x軸が45°方位に対応し、y軸が135°方位に対応し、z軸が基板面の法線方位に対応するように配置される。つまり、このような第1位相差層41の遅相軸の方位(45°方位)は、第1偏光層51の吸収軸方位(135°方位)に直交する。換言すると、第1位相差層41の遅相軸の方位(45°方位)は、第1偏光層51の透過軸方位(45°方位)と平行である。
【0053】
このような位相差を有する第1位相差層41は、波長分散性が大きい特徴を活かし、液晶ポリマーによって形成可能である。この液晶ポリマーは、例えばネマティック液晶ポリマーからなる。この第1液晶層41は、液晶ポリマーの分子長軸が第1位相差層41の遅相軸方位すなわち45°方位と略平行となるように液晶ポリマー分子を配列させることによって形成される。
【0054】
このような液晶分子を用いて形成した第1位相差層41の波長分散性は、少なくとも可視域の波長範囲内において、第1偏光層51及び第2偏光層52の2色性を補償するために必要な波長分散性と略合致する。このような第1位相差層41の位相差値R1は、位相差層を形成する液晶ポリマーの屈折率異方性Δn1と位相差層の層厚t1とを制御することにより調整可能である。すなわち、第1位相差層41の位相差値R1は、屈折率異方性と層厚とを乗じた値、すなわち(Δn1×t1)で与えられる。
【0055】
つまり、第1位相差層41は、液晶ポリマー層における液層分子の波長440nm及び620nmにおける屈折率異方性Δn1(440)及びΔn1(620)をそれぞれ乗じた値(Δn1(440)×t1)及び(Δn1(620)×t1)が、入射光の波長λに対して、略mλ/8(m=1、2、3、4、…)となるように設定された層厚t1及び屈折率異方性を有する液晶ポリマーによって形成される。
【0056】
ここでは、第1位相差層41は、青の波長に対してλ/2、赤の波長に対してはλ/4の位相差を与えるような波長分散性を有するように形成される。これにより、図10に示すように、基板面に対して斜め方向例えば基板面の法線に対して45°傾いた方向から観察した場合(45°視角)であっても、第1偏光層51及び第2偏光層52における2色性の影響を補償することができ、可視域の略全域において透過率を約0%とすることができる。このような液晶ポリマーを用いて形成した第1位相差層41は、延伸位相差板(例えばアートン)よりも優れた補償性能を有し、しかも製造コストも低く抑えることができる。さらに、液晶ポリマーを数μmの膜厚で塗布することで第1位相差層41を形成することが可能であり、延伸位相差板よりも厚みを低減することが可能となり、薄型化に有利である。
【実施例】
【0057】
図11に示すように、OCB型液晶表示装置は、液晶パネルに含まれるベンド液晶層30を第1偏光層51と第2偏光層52との間に配置することによって構成されている。ベンド液晶層30に含まれる液晶分子は、90°方位に配向されている。この液晶層30は、先に図4を参照して説明したように、画像を表示可能な状態において、x軸方向の主屈折率をnx、yy軸方向の主屈折率をny、z軸方向の主屈折率をnzとしたとき、nz>nx>nyの関係を有している。なお、x軸は0°方位に対応し、y軸は90°方位に対応し、z軸は基板面の法線方向に対応するものとする。この実施例では、液晶層30は、ネマティック液晶層によって構成され、黒表示時に550nmの波長に対して法線方向に440nmの位相差を有するとともに、面内方位に42nmの位相差を有している。
【0058】
なお、第1偏光層51は、その吸収軸が135°方位に対応するように配置されている。また、第2偏光層52は、その吸収軸が45°方位に対応するように配置されている。第1偏光層51及び第2偏光層52は、例えばヨウ素を含むポリビニルアルコール(PVA)によって形成されている。これら第1偏光層51及び第2偏光層52は、一対のベースフィルムの間に配置されている。これらのベースフィルムは、例えばTAC(トリアセチルセルロース)によって形成されている。また、このベースフィルムは、例えば1つ当たり40μmの厚さを有しており、法線方向に−40nmの位相差を有している。実質的には、第1偏光層51と液晶層30との間に配置された1つのベースフィルムB51、及び、第2偏光層52と液晶層30との間に配置された1つのベースフィルムB52のそれぞれの位相差を考慮すれば良いため、法線方向に−80nmの位相差を有することになる。
【0059】
いま、液晶層30が法線方向に440nmの位相差を有しており、ベースフィルムB51及びB52がそれぞれ−40nmの位相差を有しているため、残りの−360nmの位相差を第3位相差層43によって補償すればよい。
【0060】
この実施例では、第3位相差層43は、ベースフィルムB52の液晶層30側主面(表面)に形成される。すなわち、ベースフィルムB52の表面を所定方向にラビング処理した後、カイラルネマティック液晶材料を18μmの厚みで塗布する。このカイラルネマティック液晶材料は、例えばナトリウム線の波長に対して0.116の屈折率異方性Δnを有するようなネマティック液晶ポリマー(独、BASF社製)に、カイラル材S811(英、メルク社製)を添加することによって得られる。さらに、このようなカイラルネマティック液晶材料に紫外線を照射する。これにより、塗布された液晶材料を硬化させる。
【0061】
このようにして得られた第3位相差層43は、先に図6を参照して説明したように、nx=ny>nzの関係を有している。なお、x軸は0°方位に対応し、y軸は90°方位に対応し、z軸は基板面の法線方向に対応するものとする。また、平均屈折率nが1.55であり、捩れピッチPが約206nmであり、(n×P)値は約320nmとなり、400nm未満であった。
【0062】
第2位相差層42は、第3位相差層43の液晶層30側主面(表面)に形成される。すなわち、第3位相差層43の表面を0°方位(第2偏光板52の吸収軸と45°の角度をなす方位)にラビング処理した後、ネマティック液晶材料を0.4μmの厚みで塗布する。このネマティック液晶材料は、例えばナトリウム線の波長に対して0.116の屈折率異方性Δnを有するようなネマティック液晶ポリマー(独、BASF社製)である。さらに、このようなネマティック液晶材料に紫外線を照射する。これにより、塗布された液晶材料を硬化させる。
【0063】
このようにして得られた第2位相差層42は、先に図5を参照して説明したように、nx>ny=nzの関係を有している。なお、x軸は0°方位に対応し、y軸は90°方位に対応し、z軸は基板面の法線方向に対応するものとする。
【0064】
このように、ベースフィルムB52の一方の主面に第2偏光層52を有するとともに、ベースフィルムB52の他方の主面に第3位相差層43及び第2位相差層42を有した積層体は、液晶パネル1の対向基板20側に設けられる。すなわち、例えばアクリル系の接着剤を第2位相差層42の表面に約20μmの厚さでコーティングする。上述した積層体は、接着剤を介して対向基板20を構成する絶縁基板21に直接貼り付けられる。
【0065】
一方、第1位相差層41は、ベースフィルムB51の液晶層30側主面(表面)に形成される。すなわち、ベースフィルムB51の表面を45°方位(第1偏光板51の吸収軸と90°の角度をなす方位)にラビング処理した後、ネマティック液晶材料を所定の厚みで塗布する。このネマティック液晶材料は、例えばナトリウム線の波長に対して0.116の屈折率異方性Δnを有するようなネマティック液晶ポリマー(独、BASF社製)である。このとき、ネマティック液晶材料を塗布する厚みは、青の波長に対してλ/2、赤の波長に対してはλ/4の位相差を与えるように設定され、この実施例では、約1.6μmの厚みに設定される。さらに、このようなネマティック液晶材料に紫外線を照射する。これにより、塗布された液晶材料を硬化させる。
【0066】
このようにして得られた第1位相差層41は、先に図5を参照して説明したように、nx>ny=nzの関係を有している。なお、x軸は45°方位に対応し、y軸は135°方位に対応し、z軸は基板面の法線方向に対応するものとする。
【0067】
このように、ベースフィルムB51の一方の主面に第1偏光層51を有するとともに、ベースフィルムB51の他方の主面に第1位相差層41を有した積層体は、液晶パネル1のアレイ基板10側に設けられる。すなわち、例えばアクリル系の接着剤を第1位相差層41の表面に約20μmの厚さでコーティングする。上述した積層体は、接着剤を介してアレイ基板10を構成する絶縁基板11に直接貼り付けられる。
【0068】
この実施例におけるOCB型液晶表示装置によれば、第1位相差層41及び第2位相差層42の最適化により、図12に示したような黒表示時の色度の視野角依存性を得ることができた。すなわち、図中のP1は基板面の法線方向から観察した場合の色度座標を示し、P2は法線方向に対して画面の右側(0°方位)に80°傾いた方向から観察した場合の色度座標を示し、P3は法線方向に対して画面の左側(180°方位)に80°傾いた方向から観察した場合の色度座標を示している。P1乃至P3の3点ともに略等しい座標値(視野角に関わらず色味の変化が少ない)となり、色再現性の視野角特性を改善できたことが確認できた。
【0069】
また、第3位相差層43の最適化により、図13に示したように、コントラストの視野角依存性を得ることができた。例えば、コントラスト比C(R、G、B)=500:1及び100:1の視野角を上下左右方向全体にわたって拡大することができ、コントラストの視野角特性を改善できたことが確認できた。
【0070】
さらに、この実施例におけるOCB型液晶表示装置によれば、8段階の階調について、法線に対して画面の左右方向に傾いた角度(視角)についてそれぞれの輝度を測定したところ、図14に示したような結果が得られた。すなわち、いずれの角度についても低階調の輝度が高階調の輝度を上回るようないわゆる反転現象は確認されなかった。同様に、8段階の階調について、法線に対して画面の上下方向に傾いた角度(視角)についてそれぞれの輝度を測定したところ、図15に示したような結果が得られた。すなわち、いずれの角度についても低階調の輝度が高階調の輝度を上回る反転現象は確認されなかった。
【0071】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0072】
例えば、第1位相差層41は、2枚以上の位相差フィルムによって形成しても良い。この第1位相差層41は、主に第1位相差層51及び第2位相差層における正の2色性を補償するものであり、第1位相差層51と液晶層30と間の第1位相差層51に近接する位置、及び、第2位相差層52と液晶層30と間の第2位相差層52に近接する位置の少なくとも一方に設けられていれば良い。
【0073】
また、第2位相差層42は、2枚以上の位相差フィルムによって形成しても良い。この第2位相差層42は、主に液晶層30における面内方位の位相差を補償するものであり、第1位相差層41と第1偏光層51または第2偏光層52との間に設けられていれば良い。
【0074】
同様に、第3位相差層43は、2枚以上の位相差フィルムによって形成しても良い。この第3位相差層43は、主に液晶層30における法線方向の位相差を補償するものであり、第1位相差層41と第1偏光層51または第2偏光層52との間に設けられていれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
この発明によれば、視野角特性及び表示品位に優れ、しかも、コスト低減が可能な液晶表示素子を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に液晶層を保持した液晶パネルと、
前記液晶パネルの光入射側に配置された第1偏光層と、
前記液晶パネルの光出射側に配置された第2偏光層と、を有した液晶表示素子であって、
前記液晶表示素子の暗表示時に前記液晶層が面内方向に残留位相差を有し、且つ前記液晶層が厚み方向に正の位相差を有する複屈折モードの液晶表示素子において、
前記第1偏光層と前記液晶層との間に、前記第1偏光層を経た光に対して視野角特性を補償する正の1軸位相差層である第1位相差層を配置し、
前記第2偏光層と前記第1位相差層との間に、前記液晶層の残留位相差を補償する第2位相差機能と、前記液晶層の厚み方向の正の位相差を補償する第3位相差機能とを有することを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記第3位相差機能を有する第3位相差層は、液晶ポリマーによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記液晶ポリマーは、カイラルネマティック液晶ポリマー若しくはコレステリック液晶ポリマーからなり、その螺旋軸が前記第3位相差層の主面の法線方向に対して略平行であり、捩れピッチをPとし、波長400nmにおける前記液晶ポリマーの平均屈折率をnとしたとき、値(n×P)が400nm未満であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記液晶ポリマーは、ディスコティック液晶ポリマーからなり、その分子光軸が前記第3位相差層の主面の法線方向に対して略平行であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
波長440nmでの値を波長620nmでの値で割った比を波長分散値としたとき、前記第3位相差層における位相差の波長分散値が前記ベンド状の分子配列をなした前記液晶層における屈折率異方性Δn1cの波長分散値と略等しいことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記第1位相差層は、液晶ポリマーによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記液晶ポリマーは、ネマティック液晶ポリマーからなり、その分子長軸が前記第1位相差層の遅相軸方位と略平行であることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示素子。
【請求項8】
前記第1位相差層を構成する前記液晶ポリマーの層厚t1に前記液晶ポリマー層の液晶分子の波長440nm及び620nmにおける屈折率異方性Δn1(440)及びΔn1(620)、をそれぞれ乗じた値(Δn1(440)×t1)及び(Δn1(620)×t1)が、波長λに対して、略mλ/8(m=1、2、3、4、…)であることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示素子。
【請求項9】
前記第2位相差機能を有する第2位相差層は、液晶ポリマーによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項10】
前記液晶ポリマーは、ネマティック液晶ポリマーからなり、その分子長軸が前記第2位相差層の遅相軸方位と略平行であることを特徴とする請求項9に記載の液晶表示素子。
【請求項11】
波長440nmでの値を波長620nmでの値で割った比を波長分散値としたとき、前記第2位相差層における位相差の波長分散値が前記ベンド状の分子配列をなした前記液晶層における屈折率異方性Δn1cの波長分散値と略等しいことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示素子。
【請求項12】
前記第2位相差層の位相差値R2が前記ベンド状の分子配列をなした前記液晶層に特定の電圧を印加したときの面内方位における位相差値R1cと略等しいことを特徴とした請求項11に記載の液晶表示素子。
【請求項13】
前記第2位相差機能を有する第2位相差層の位相差値R2は、波長550nmにおいて、100nm以下であることを特徴とした請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項14】
前記第3位相差機能を有する第3位相差層における法線方向の位相差R3と、前記第1偏光層と前記第2偏光層との間に配置された前記第3位相差層以外の構成部材における法線方向の位相差の和R(total)が波長550nmにおいて略ゼロとなることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項15】
波長440nmでの値を波長620nmでの値で割った比を波長分散値としたとき、前記位相差R3の波長分散値が前記位相差の和R(total)の波長分散値と略等しいことを特徴とする請求項14に記載の液晶表示素子。
【請求項16】
前記第1位相差層が2枚以上の位相差フィルムによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項17】
前記第2位相差機能を有する第2位相差層が2枚以上の位相差フィルムによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項18】
前記第3位相差機能を有する第3位相差層が2枚以上の位相差フィルムによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項19】
一対の基板間にネマティック液晶層を挟持したドットマトリクス型の液晶パネルを第1偏光層と第2偏光層との間に配置した液晶表示素子であり、画素に電圧を印加していない状態において、前記液晶層の界面近傍の液晶分子は基板の法線方向に対して傾きを持っており、且つそれぞれの基板近傍の液晶分子は基板面内で傾く面内方位が略同じ方位であるスプレイ状若しくはベンド状の分子配列をなし、前記画素に電圧を印加し前記液晶分子の傾き角をベンド状の分子配列にて制御することによって液晶層の位相差を変調させて表示の明暗を制御するベンドモードの液晶表示素子であって、
前記第1偏光層と前記液晶層との間に、面内方位に位相差を生ずる第1位相差層をその遅相軸が前記第1偏光層の吸収軸と直交するよう配置し、
前記第2偏光層と前記第1位相差層との間に、面内方位に位相差を生ずる第2位相差層をその遅相軸が前記液晶分子の傾く面内方位と直交する方位となるよう配置し、
なおかつ、前記第2偏光層と前記第1位相差層との間に、前記液晶表示素子の法線方向に光軸を有するとともに層全体で負の一軸性の機能を有する第3位相差層を配置したことを特徴とする液晶表示素子。

【国際公開番号】WO2005/078516
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517932(P2005−517932)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001758
【国際出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】