説明

液晶表示装置のγ値調整方法

【課題】 液晶表示装置のγ調整において、最小限のメモリ容量で、短時間に一定範囲のγ値が調整できる方法を提供する。
【解決手段】 液晶表示装置のγ調整において、あらかじめ、複数のγカーブに対応するレジスタ群をそれぞれ求め、これらのレジスタ群をパラメータとして用意しておく。さらに液晶表示装置の白、黒、灰色の輝度を測定し、その輝度からγ値を計算する。このγ値に対応するγカーブのパラメータを求め、パラメータに対応したγ調整用のレジスタ群の値を設定し、液晶表示装置のγ値を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のγ値を短時間に補正する調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のγ値は、液晶、バックライト、カラーフィルタ等のバラツキに起因して、個々の液晶表示装置間でバラツキが生じる。そのため、液晶表示装置を個々に調整し、一定のγ値にする必要がある。
【0003】
近年、液晶表示装置のγ値の調整方法として、ドライバーICにカラーパレットなどのレジスタ群を設け、この値を調整することによりγ値を補正することが一般に知られている。この調整方法として、以下の二つの方法を例示する。サンプルとなる複数の液晶表示装置に対して画面の全階調に対応した輝度を測定してγカーブを取得し、これらγカーブの平均値を標準サンプルに設定し、この標準サンプルが目的のγカーブになるようにレジスタ群の値を求めることによりγ値を調整する方法(方法A)、全ての液晶表示装置を対象に、それぞれの画面の全階調に対応した輝度を測定してγ値を算出し、目的のγカーブになるようにレジスタ群の値を求めてγ値を調整する方法(方法B)がある。
【0004】
また、画面の階調を間引いてγ値を測定し、間引かれた階調のγ値は補間を行って推定する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−338451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法では次のような課題がある。前述の方法Aによると、液晶、バックライト、カラーフィルタ等のバラツキが標準的なサンプルではγカーブを得られるが、標準からはずれたサンプルでは適正なγカーブが得られない。
【0007】
また、前述の方法Bや特許文献1に開示された方法によると、個々の液晶表示装置でレジスタ群の値を不揮発性メモリに格納するため、必要なメモリ容量が大きくなる。さらに、個々の液晶表示装置でγ調整を行うと、アルゴリズム等が複雑になり、調整に時間がかかる。
【0008】
そこで、本発明は、最小限のメモリ容量で、短時間に一定範囲のγ値が調整できる液晶表示装置のγ調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のγ調整方法は、予め、必要数量のγカーブに対してγ調整用のレジスタ群をそれぞれ設定し、これらのレジスタ群をパラメータとして割り付ける。さらに、調整対象の液晶表示装置に黒、白、灰色を表示させ、この3点の輝度を測定してγ値を算出する。このγ値からγカーブのパラメータを求める。そして、このパラメータに応じたγ調整用のレジスタ群の値を用いて、液晶表示装置のγ値を簡易的に調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全階調に対応した輝度を測定する必要がないため、個々の液晶表示装置のγ値を最小限のメモリで短時間に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の構成を模式的に示す構成図である。
【図2】液晶表示装置の階調値と輝度との関係図である。
【図3】本発明に用いられるパラメータテーブルである。
【図4】本発明に用いられるγレジスタテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶表示装置のγ値調整方法を図1に基づいて説明する。図1は、本発明のγ値の調整方法に用いられる調整機の構成例を示す模式図である。図示するように、本発明の調整方法には、液晶表示装置1の輝度を測定する輝度測定装置2と、輝度測定装置2で測定された輝度からγ値を計算し、このγ値に対応するパラメータを液晶表示装置1に出力する制御装置3と、γレジスタテーブルを持つCPU4が用いられる。液晶表示装置1は、制御装置3から出力されたパラメータを格納する不揮発性メモリを備えている。ここで、制御装置3内には、予め、所定範囲のγ値に対応してパラメータが割り付けられたパラメータテーブルが設定される。また、複数のγカーブに対して予め算出されたγ調整用のレジスタ群をパラメータテーブルのパラメータに対応させてγレジスタテーブルに設定する。CPU4は、液晶表示装置1の不揮発性メモリからパラメータを読込み、このパラメータに対応するγ調整用のレジスタ群を用いて液晶表示装置を制御する。すなわち、輝度測定により算出したγ値をγ調整用のレジスタ群で補正することにより、最適なγ値で液晶表示装置を表示させることが可能になる。
【0013】
以下、γ値の調整法について順を追って説明する。まず、調整対象となる個々の液晶表示装置に黒、白、灰色の3色を順次表示させて輝度を測定し、これら3点の輝度からγ値を算出する。ここで、白色表示の階調レベルでの輝度をBwhite、黒色表示の階調レベルでの輝度をBblack、灰色表示の階調レベルでの輝度をBmid、灰色表示の階調レベルをLmid、白色表示の階調レベルをLwhiteとすると、灰色のγ値は、以下の数式のように表すことができる。
【0014】
【数1】

制御装置3は、この数式1を用いて輝度測定装置2の測定結果からγ値を算出し、算出したガンマ値に対応するパラメータ値をパラメータテーブルから求める。このパラメータ値は液晶表示装置1の不揮発性メモリに格納される。CPU4は不揮発性メモリからこのパラメータ値を読み取り、これに対応するレジスタ群の値を用いて、液晶表示装置を制御する。このようにして、液晶表示装置のγ値が最適に調整される。
【実施例】
【0015】
本実施例のγ値の調整方法について詳細に説明する。本実施例のγ値調整方法でも、図1に示したように、パラメータを格納できる不揮発性のメモリを備えた液晶表示装置1と、液晶表示装置1の輝度を測定する輝度測定装置2と、輝度測定装置2で測定された輝度からγ値を計算し、パラメータを液晶表示装置1に出力する制御装置3と、γ調整用のレジスタ群を内在し、液晶表示装置1のパラメータを読込み、γ値を補正するCPU4が用いられる。本実施例では、液晶表示装置1を携帯機器に用いる場合を前提に説明する。携帯機器は液晶表示装置1とCPU4を含む構成である。CPU4は液晶表示装置を制御するだけでなく、携帯機器全体を制御する機能を備えている。
【0016】
以下にγ値の調整の方法について説明する。なお、本実施例では、階調レベルを0〜255としているが、例えば、階調レベルが0〜63の場合でも同じ方法で実施することができる。また、ここでは、目的とする液晶表示装置の最適なγカーブのγ値を2.2として説明する。
【0017】
まず、補正対象の液晶表示装置1に階調レベル0(黒)を表示させる。そして輝度測定装置2でこの階調レベルの輝度を測定し、制御装置3に送信する。輝度測定装置2は、カメラユニットでもよいし、輝度計を用いてもよい。同様に、液晶表示装置1に階調レベル127(灰色)、階調レベル255(白)を表示させ、輝度測定装置2で各々の輝度を測定する。表示させる順番は問わない。液晶表示装置1に階調レベル0(黒)、階調レベル127(灰色)、階調レベル255(白)の3つの階調レベルが表示され、各輝度値が測定されればよい。
【0018】
制御装置3は、輝度測定結果により階調レベル127のγ値を計算する。階調0(黒)の輝度をB0、階調127(灰)の輝度をB127、階調255(白)の輝度をB255として、前述の数式1にあてはめると、階調レベル127のγ値は、以下の式から算出することができる。
【0019】
【数2】

制御装置3に用意されるパラメータテーブルを図3に示す。数式2により求められたγ値から、制御装置3は、パラメータの値を液晶表示装置1の不揮発性メモリに書き込む。例えば、算出したγ値が1.7であると、制御装置3はパラメータテーブルに基づいて、これに対応するパラメータ値1を設定する。本実施例では、図3に示すように、算出したγ値を、γ値が1.6〜2.8のγカーブに近似させてパラメータを設定している。すなわち、γ値の範囲を決め、その範囲に対しパラメータの値が割り付けられている。このように割り付けることにより、γ値に対応するγカーブの近似値を求めることができる。ここではγ値の範囲を幅0.2で設定しているが、この幅は液晶装置が必要とする精度に応じて決めることができる。また、液晶表示装置のバラツキが大きい場合には、さらに広い範囲をとってもよい。このように、個々の液晶表示装置にはγカーブに応じたパラメータがメモリに格納されることとなる。
【0020】
次に、CPU4で液晶表示装置1に書き込まれたパラメータを読み込み、CPU4で適正なγ値になるように調整をおこなう。まず、予めCPU4に上述のパラメータに対応させたレジスタ群を用意しておく。図4はCPU4に組み込まれたγレジスタテーブルである。図3のパラメータと図4のパラメータはそれぞれ対応している。図4に示すように、パラメータ値に対するレジスタ群の値は、γ=2.2を中心として図3のγ値と対称に設定されている。
【0021】
例えば、測定輝度から算出されたγ値が1.7の場合はレジスタ群のテーブルにはγカーブが2.8になるような値が設定される。同様にγ値が2.0の場合はレジスタ群のテーブルにはγカーブが2.4になるような値が設定される。このように設定することで、CPU4は、γカーブが2.1〜2.3の範囲になるように液晶表示装置1を表示させることができる。
【0022】
このように、CPU4は、各γ値に対応するレジスタ群のテーブルを備え、電源ON時に液晶表示装置1の不揮発性メモリから上述のパラメータ値を読み込む。そして、このパラメータ値に対応するレジスタ群の値が、γ調整用のレジスタテーブルから求められ、イニシャルシーケンスとして設定される。これにより液晶表示装置の個々のバラツキに関係なく、携帯機器ではある一定範囲でのγ調整された表示が可能となる。
【0023】
また、本実施例の調整方法に関し、予め、複数の液晶表示装置について画面の全階調に対応した輝度を測定して実製品に即したγカーブをとることもできる。そして、この平均値を標準サンプルとし、この標準サンプルを用いて目的のγカーブに調整するようにレジスタ群の値を求める。次に同じ標準サンプルで、この目的のγカーブから所定量はずれた値のγカーブになるように調整したレジスタ群を求める。さらに目的のγカーブから所定量の任意倍はずれたγカーブになるように調整したレジスタ群をもとめる。このように、液晶表示装置すべてのバラツキを包含した範囲で任意倍はずれたγカーブのレジスタ群を求め、これらのレジスタ群が個々のパラメータとして割り付けられる。このようにして、図2に示すように、γカーブが1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8になるようにレジスタ群の値が求められている。このγカーブの値に対し、図3のようにγ値の範囲を決め、その範囲に対しパラメータの値を割り付ける。このように割り付けることにより、γ値に対応するγカーブの近似値を求めることができる。ここで、図2は液晶表示装置の階調値と輝度との関係を表しており、横軸に階調レベルを、縦軸に輝度をとっている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
液晶表示装置のγ調整方法において、最小限のメモリ容量で、短時間に一定範囲のγ値が調整できるため、液晶表示装置を搭載した携帯機器に適応できる。
【符号の説明】
【0025】
1 液晶表示装置
2 輝度測定装置
3 制御装置
4 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の範囲でγ値が割り付けられた個々のγカーブに対してγ調整用のレジスタ群をそれぞれ求め、前記レジスタ群をパラメータとして設定する過程と、
液晶表示装置に黒、白、灰色を順次表示させ、これら3点の輝度を測定する過程と、
前記3点の輝度から前記液晶表示装置のγ値を算出する過程と、
前記液晶表示装置のγ値に対応する前記パラメータを求め、前記レジスタ群を設定してγ値を調整する過程を備えることを特徴とする液晶表示装置のγ値調整方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−75717(P2011−75717A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225472(P2009−225472)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】