説明

液晶表示装置用カラーフィルタおよび液晶表示装置

【課題】ラビング処理や輸送中の振動などに起因して保護膜が摩擦力または押圧力を受けた場合であっても品質が劣化しないカラーフィルタおよび液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置用カラーフィルタ10は、基材11と、基材11上に設けられたブラックマトリクス層12と、基材11上のブラックマトリクス層12間に設けられた赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15と、ブラックマトリクス層12上に設けられた複数の柱状のスペーサー16とを備えている。また、ブラックマトリックス層12、赤色画素層13、青色画素層14、緑色画素層15およびスペーサー16は、オーバーコート層17により上方から覆われている。このオーバーコート層17は、そのビッカース硬度が60以上である。また、オーバーコート層17のうちスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtは0.2μm以上となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置用カラーフィルタおよびそれを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置用のカラーフィルタは、透明基材と、透明基材上に設けられたブラックマトリクス層と、透明基材上のブラックマトリクス層間に設けられた赤色画素層、青色画素層および緑色画素層とを備えている。また、液晶表示装置、例えば横電界駆動(IPS:In Plane Switching)方式の液晶表示装置は、上述のカラーフィルタと、カラーフィルタと対向して設けられ、複数の突出部を有する液晶駆動用基板と、液晶駆動用基板とカラーフィルタとの間に挟持された液晶とからなっている。
【0003】
横電界駆動方式の液晶表示装置においては、液晶の厚み(セルギャップ)を一定の範囲内に厳密に保つ必要があり、このため一般に、カラーフィルタと液晶駆動用基板との間に複数のスペーサーが介在されている。例えば特許文献1において、カラーフィルタのブラックマトリクス層上に少なくとも1層以上の画素層からなるスペーサーが建てられた液晶表示装置が提案されている。また特許文献1においては、各画素層およびスペーサを保護するため、各画素層およびスペーサを覆う保護膜(オーバーコート層)が設けられている。
【0004】
また特許文献2において、カラーフィルタ上に形成されたスペーサと、液晶駆動用基板のアクティブ素子上に形成された突起部とを互いに突き合わせ、これによってカラーフィルタと液晶駆動用基板の間の距離が一定に保たれる液晶表示装置が提案されている。特許文献2においては、このようにアクティブ素子上に突起部を形成することにより、外光によりアクティブ素子の動作不良が発生するのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−338504号公報
【特許文献2】特開平7−281195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各画素層およびスペーサを覆う保護膜の上には、一般に、液晶駆動用基板とカラーフィルタとの間に挟持される液晶を配向させるための配向膜が形成されている。配向膜は、例えば、保護膜上にポリイミドを塗布し、ラビング処理することにより形成される。このラビング処理において、スペーサー上に設けられた保護膜は、ラビング処理において用いられるラビング布やラビングローラーなどから配向膜を介して摩擦力または押圧力を受ける。
【0007】
また、液晶表示装置を輸送手段、例えばトラックなどに積載して搬送するとき、トラックの振動によって液晶表示装置が振動することがある。液晶表示装置が振動すると、これに伴い液晶駆動用基板がカラーフィルタに対して微小に振動する恐れがある。このとき、カラーフィルタ上に形成されたスペーサーと、液晶駆動用基板に形成された突起部とが互いに突き合わされていると、スペーサー上に設けられた保護膜が突起部から摩擦力または押圧力を受ける。
【0008】
保護膜が摩擦力または押圧力を受けるとき、保護膜の厚さおよび硬さが不十分であると、摩擦力または押圧力によりスペーサ上の保護膜が削られ、破壊されてしまう。スペーサ上の保護膜が破壊されると、液晶の厚み(セルギャップ)を一定の範囲内に厳密に保つことができなくなるとともに、削られ、破壊された保護膜により液晶表示装置の外観が損なわれるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ラビング処理や輸送中の振動などに起因して保護膜が摩擦力または押圧力を受けた場合であっても品質が劣化しないカラーフィルタおよび液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による液晶表示装置用カラーフィルタは、基材と、基材上に設けられたブラックマトリクス層と、基材上のブラックマトリクス層間に設けられた赤色画素層、青色画素層および緑色画素層と、ブラックマトリクス層上に設けられた複数の柱状のスペーサーと、ブラックマトリックス層、赤色画素層、青色画素層、緑色画素層およびスペーサーを上方から覆うオーバーコート層とを備え、オーバーコート層のビッカース硬度が60以上であり、各スペーサー上のオーバーコート層の厚みが0.2μm以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明によるカラーフィルタにおいて、好ましくは、前記ブラックマトリクス層上に設けられる前記スペーサーの数は、前記基材上に設けられる前記赤色画素層、青色画素層および緑色画素層の合計数の半分よりも多くなっている。
【0012】
本発明によるカラーフィルタにおいて、好ましくは、前記スペーサーは、赤色画素層、青色画素層および緑色画素層を積層して形成されている。
【0013】
本発明による液晶表示装置は、液晶駆動用基板と、液晶駆動用基板に対向して設けられた液晶表示装置用カラーフィルタと、液晶駆動用基板とカラーフィルタとの間に配置された液晶とを備え、カラーフィルタは、基材と、基材のうち液晶駆動用基板に対向する側に設けられたブラックマトリクス層と、基材上のブラックマトリクス層間に設けられた赤色画素層、青色画素層および緑色画素層と、ブラックマトリクス層上に設けられた複数の柱状のスペーサーと、ブラックマトリックス層、赤色画素層、青色画素層、緑色画素層およびスペーサーを液晶駆動用基板側から覆うオーバーコート層とを有し、液晶駆動用基板は、カラーフィルタ側に突出した複数の突出部を有し、カラーフィルタの各スペーサーは、液晶駆動用基板の突出部とオーバーコート層を介して当接し、各スペーサー上のオーバーコート層は突出部から押圧され、オーバーコート層のビッカース硬度が60以上であり、各スペーサー上のオーバーコート層は、突出部から押圧される前の厚みが0.2μm以上となることを特徴とする。
【0014】
本発明による液晶表示装置において、好ましくは、前記液晶駆動用基板の各突出部のうち前記スペーサーと前記オーバーコート層を介して当接している突出部は、各々複数の分割突出部に分割され、各スペーサー上のオーバーコート層は、当該複数の分割突出部から押圧される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶表示装置用カラーフィルタは、基材上のブラックマトリックス層、赤色画素層、青色画素層、緑色画素層およびスペーサーを上方から覆うオーバーコート層を備えており、オーバーコート層のビッカース硬度は60以上であり、各スペーサー上のオーバーコート層の厚みは0.2μm以上となっている。このため、スペーサー上のオーバーコート層が外方から摩擦力または押圧力を受けたとしても、スペーサー上のオーバーコート層が容易に破損することはない。このことにより、ラビング処理や輸送中の振動などに起因してオーバーコート層が摩擦力または押圧力を受けた場合であっても、カラーフィルタの品質が劣化するのを防ぐことができる。
【0016】
また本発明によれば、液晶表示装置は、液晶駆動用基板と、液晶駆動用基板と対向して設けられた液晶表示装置用カラーフィルタと、液晶駆動用基板とカラーフィルタとの間に配置された液晶とを備えている。カラーフィルタには、カラーフィルタの基材上のブラックマトリックス層、赤色画素層、青色画素層、緑色画素層およびスペーサーを上方から覆うオーバーコート層が設けられ、液晶駆動用基板には、カラーフィルタ側に突出した複数の突出部が設けられており、カラーフィルタの各スペーサーは、液晶駆動用基板の突出部とオーバーコート層を介して向かい合っている。また、オーバーコート層のビッカース硬度は60以上であり、各スペーサー上のオーバーコート層は、極部から押圧される前の厚みが0.2μm以上となっている。このため、スペーサー上のオーバーコート層が、液晶駆動用基板の突出部から摩擦力または押圧力を受けたとしても、スペーサー上のオーバーコート層が容易に破損することはない。このことにより、ラビング処理や輸送中の振動などに起因してオーバーコート層が摩擦力または押圧力を受けた場合であっても、液晶表示装置の品質が劣化するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態におけるカラーフィルターを示す部分平面図。
【図2】図2は、図1のカラーフィルターをA−A方向から見た縦断面図。
【図3】図3は、本発明の実施の形態において、オーバーコート層のビッカース硬度測定方法を示す図。
【図4】図4は、本発明の実施の形態において、オーバーコート層のビッカース硬度測定結果を示す図。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における液晶表示装置を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
液晶表示装置
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の実施の形態について説明する。まず図5により、本実施の形態における液晶表示装置30全体について説明する。
【0019】
図5に示すように、IPS方式の液晶表示装置30は、液晶駆動用基板20と、液晶駆動用基板20に対向して設けられた液晶表示装置用カラーフィルタ10と、液晶駆動用基板20とカラーフィルタ10との間に配置された液晶26とを備えている。このうち液晶駆動用基板20は、図5に示すように、基材21と、基材21に設けられ、カラーフィルタ10側に突出した複数の突出部、例えば液晶26に印加される電圧を制御する電極部22とを有している。
【0020】
後に詳述するが、カラーフィルタ10は、図5に示すように、液晶駆動用基板20の電極部22と向かい合うスペーサー16を有しており、このスペーサー16により、液晶表示装置30のセルギャップを一定の範囲内に厳密に保つことが可能となる。電極部22とスペーサー16との間には後述するオーバーコート層17が介在されており、またスペーサー16上のオーバーコート層17は電極部22から押圧されている。
【0021】
カラーフィルタ
次に、図1および図2により、本実施の形態における液晶表示装置用カラーフィルタ10全体について説明する。
【0022】
図1に示すように、カラーフィルタ10は、基材11と、基材11上に設けられたブラックマトリクス層12と、基材11上のブラックマトリクス層12間に設けられた赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15と、ブラックマトリクス層12上に設けられた複数の柱状のスペーサー16と、ブラックマトリックス層12、赤色画素層13、青色画素層14、緑色画素層15およびスペーサー16を上方から覆うオーバーコート層17とを備えている。
【0023】
このうちオーバーコート層17は、そのビッカース硬度が60以上となっている。また図2に示すように、オーバーコート層17のうちスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtは0.2μm以上となっている。またオーバーコート層17上には、液晶26を配向させるための配向膜18が形成されている。
【0024】
次に、基材11、ブラックマトリクス層12、赤色画素層13、青色画素層14、緑色画素層15、スペーサー16、オーバーコート層17および配向膜18について各々詳述する。
【0025】
基材
本実施の形態における基材11としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、IPS液晶モード、STN(Super Twisted Nematic)液晶モードおよび強誘電性液晶モード等の液晶表示装置用のカラーフィルタ10に適している。基材11の厚さは、例えば0.7mmとなっている。
【0026】
ブラックマトリクス層
カラーフィルタ10を区画するブラックマトリックス層12としては、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングして形成したもの、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有させたポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂層を形成し、この樹脂層をパターニングして形成したもの、および、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層をパターニングして形成したもの等、遮光性を有するものを用いることができる。ブラックマトリックス層12の厚さは適宜調整することができるが、上記の金属薄膜をパターニングしてブラックマトリックス層12を形成した場合の好ましい厚さは0.2〜0.4μmであり、上記の樹脂層をパターニングしてブラックマトリックス層12を形成した場合の好ましい厚さは0.5〜2μmである。
【0027】
赤色画素層、青色画素層および緑色画素層
赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15は、各色の顔料や染料等の着色剤を感光性樹脂中に分散または溶解させて形成された層である。このうち赤色画素層13に用いられる着色剤としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色画素層14に用いられる着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色画素層15に用いられる着色剤としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15の厚さは、通常は1〜5μmの範囲で設定される。
【0028】
また、感光性樹脂としては、ネガ型感光性樹脂およびポジ型感光性樹脂のいずれも用いることができるが、通常はネガ型感光性樹脂が用いられる。このネガ型感光性樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有するものが挙げられる。
【0029】
スペーサー
本実施の形態において、スペーサー16は、図2に示すように、ブラックマトリクス層12上に赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15を積層して形成されている。このため、スペーサー16用の樹脂等を別途ブラックマトリクス層12上に積層させる場合に比べて、スペーサー16の形成工程を簡略化することができる。スペーサー16の高さは、所望のセルギャップに応じて適宜調整されるが、通常は2.5〜5.0μmの範囲で設定され、好ましくは2.5〜4.5μmの範囲で設定され、さらに好ましくは3.0〜4.0μmの範囲で設定される。なお本実施の形態において、スペーサー16の高さとは、基材11上に設けられた赤色画素層13、青色画素層14または緑色画素層15を覆うオーバーコート層17の表面を基準とした場合の、スペーサー16を覆うオーバーコート層17の表面の高さのことをいう。
【0030】
またスペーサー16は、その数が基材11上に設けられる赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15の合計数の半分よりも多くなるよう設けられている。例えば図1に示すように、3つの赤色画素層13、青色画素層14または緑色画素層15ごとに2つのスペーサー16が設けられている。このことにより、液晶表示装置30全体にわたって、セルギャップを一定の範囲内に均一に保つことができる。
【0031】
オーバーコート層
次に本実施の形態におけるオーバーコート層17について説明する。オーバーコート層17には、赤色画素層13、青色画素層14または緑色画素層15に含まれる不純物が液晶26に流出するのを防止するためのバリア性に加えて、透明性、表面平滑性、上下隣接層との密着性、耐光性等の幅広い特性が要求される。また上述のとおり、オーバーコート層17のビッカース硬度は60以上となっている。なお本実施の形態において、オーバーコート17のビッカース硬度は以下のように測定および規定されている。
【0032】
はじめに図3に示すように、前述の基材11上に厚さXμmのオーバーコート層17を形成する。次に、オーバーコート層17に上方からビッカース硬度測定用圧子(図示せず)を荷重5mNで押し込み、その後、オーバーコート層17に形成された凹みの面積を計測する。次に、計測された凹みの面積に基づき、厚さXμmのオーバーコート層17の場合のビッカース硬度を算出する。
【0033】
次に、基材11上に厚さXμmのオーバーコート層17を形成し、その後、前述の方法により厚さXμmのオーバーコート層17の場合のビッカース硬度を測定する。次に、基材11上に厚さXμmのオーバーコート層17を形成し、その後、前述の方法により厚さXμmのオーバーコート層17の場合のビッカース硬度を測定する。このように、基材11上のオーバーコート層17の厚さを変えて各々の厚さにおけるオーバーコート層17のビッカース硬度を測定する。なお測定されたビッカース硬度は、オーバーコート層17の厚さが薄くなるほど高くなる傾向を有している。これは、オーバーコート層17の厚さが薄くなるほど、計測されるビッカース硬度に基材11の硬さの影響が現れるからである。
【0034】
次に図4に示すように、横軸をオーバーコート層17の厚さ、縦軸をビッカース硬度としてグラフ上にビッカース硬度の測定結果をプロットする。次に、グラフ上のビッカース硬度の測定結果のプロットに基づき、オーバーコート層17の厚さとビッカース硬度の間に成立する関係式を近似により算出する。その後、算出された関係式に基づき、オーバーコート層17の厚さが1.5μmの場合のビッカース硬度を算出する。なお近似については、Excel(米国マイクロソフト社の登録商標)などの表計算ソフトを用いて、累乗近似曲線による近似を行う。
【0035】
本実施の形態において、このようにして算出された、厚さが1.5μmの場合のオーバーコート層17のビッカース硬度が60以上となるようオーバーコート層17が形成されている。オーバーコート層17の材料としては、例えばアクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化性樹脂(感光性樹脂)や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などを挙げることができる。オーバーコート層17の形成方法は、特に限定されることはなく、例えば、オーバーコート層形成用感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0036】
またカラーフィルタ10において、オーバーコート層17のうちスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtは前述のとおり0.2μm以上、例えば0.2μm以上かつ10μm以下の範囲で設定され、好ましくは0.2μm以上かつ5μm以下の範囲で設定される。
【0037】
配向膜
次に本実施の形態における配向膜18について説明する。配向膜18は前述のとおり、液晶26を配向させるためにカラーフィルタ10のオーバーコート層17上に形成された膜である。配向膜18に用いられる材料としては、ラビング処理により異方性が付与されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタンなどを挙げることができる。この中でも、ポリイミドを用いることが特に好ましい。これらの材料は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。配向膜18の厚さは適宜設定することができるが、基材11上に設けられた赤色画素層13、青色画素層14または緑色画素層15を覆うオーバーコート層17上に形成される配向膜18の好ましい厚さは0.1〜0.15μmであり、スペーサー16を覆うオーバーコート層17上に形成される配向膜18の好ましい厚さは0.05〜0.10μmである。
【0038】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、カラーフィルタ10および液晶表示装置30の形成方法について説明する。
【0039】
カラーフィルタ形成方法
まず基材11を準備し、次に、基材11上にブラックマトリクス層12を形成する。基材11にブラックマトリックス層12を形成する場合、まず基材11上にスパッタリング法、真空蒸着法等により形成したクロム等の金属薄膜、カーボン微粒子や金属酸化物等の遮光性粒子を含有した樹脂層等からなる遮光層(図示せず)を形成し、この遮光層上に公知のポジ型あるいはネガ型の感光性レジストを用いて感光性レジスト層(図示せず)を形成する。次いで、感光性レジスト層をブラックマトリックス用のフォトマスクを介して露光、現像し、露出した遮光層をエッチングした後、残存する感光性レジスト層を除去することによって、ブラックマトリックス層12を形成する。
【0040】
次に、基材11上のブラックマトリクス層12間に、図1に示すように、赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15を順に形成する。赤色画素層13の形成では、はじめに赤色画素層13用の着色剤を塗布し、次に、所定のフォトマスク(図示せず)を介して塗布された着色剤を露光して現像を行うことにより、基材11上の所定位置に赤色画素層13を形成する。以下、同様に、基材11上の所定位置に青色画素層14および緑色画素層15を形成する。これによって、図1に示すように、赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15が基材11上のブラックマトリクス層12間に順に形成される。
【0041】
この間、ブラックマトリクス層12間に赤色画素層13を形成する際、同時にブラックマトリクス層12上の所定位置に赤色画素層13を形成し、同様にブラックマトリクス層12間に青色画素層14および緑色画素層15を形成する際、同時にブラックマトリクス層12上の赤色画素層13に青色画素層14および緑色画素層15を積層する。このようにして、ブラックマトリクス層12間に赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15を形成する際、同時に図2に示すスペーサー16を形成する。
【0042】
その後、ブラックマトリックス層12、赤色画素層13、青色画素層14、緑色画素層15およびスペーサー16を上方から覆うよう、オーバーコート層17を形成する。このようにして、カラーフィルタ10が形成される。
その後、カラーフィルタ10のオーバーコート層17上にポリイミドを塗布し、ラビング布またはラビングローラーによりラビング処理することにより、オーバーコート層17上に配向膜18を形成する。
【0043】
液晶表示装置形成方法
次に、基材21と電極部22とを有する液晶駆動用基板20を準備する。その後、カラーフィルタ10と液晶駆動用基板20とを、液晶駆動用基板20の電極部22とカラーフィルタ10のスペーサー16とが向かい合うよう配置する。次に、カラーフィルタ10と液晶駆動用基板20との間を液晶駆動用基板20の周縁に沿って封止し、その後、液晶駆動用基板20とカラーフィルタ10との間に液晶26を注入する。これによって、液晶表示装置30が形成される。
【0044】
ところで、カラーフィルタ10において、オーバーコート層17のビッカース硬度は60以上であり、オーバーコート層17のうちスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtは0.2μm以上となっている。このため、スペーサー16上のオーバーコート層17が外方から摩擦力または押圧力を受けたとしても、スペーサー16上のオーバーコート層17が容易に破損することはない。このことにより、ラビング処理や輸送中の振動などに起因してオーバーコート層17が摩擦力または押圧力を受けた場合であっても、カラーフィルタ10の品質が劣化するのを防ぐことができる。
【0045】
このように本実施の形態によれば、液晶表示装置用カラーフィルタ10は、基材11上のブラックマトリックス層12、赤色画素層13、青色画素層14、緑色画素層15およびスペーサー16を上方から覆うオーバーコート層17を備えており、オーバーコート層17のビッカース硬度は60以上であり、各スペーサー16上のオーバーコート層の厚みは0.2μm以上となっている。このため、スペーサー16上のオーバーコート層17が外方から摩擦力または押圧力を受けたとしても、スペーサー16上のオーバーコート層17が容易に破損することはない。このことにより、ラビング処理や輸送中の振動などに起因してオーバーコート層17が摩擦力または押圧力を受けた場合であっても、カラーフィルタ10の品質が劣化するのを防ぐことができる。
【0046】
また本実施の形態によれば、スペーサー16は、その数が基材11上に設けられた赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15の合計数の半分よりも多くなるよう設けられている。このことにより、液晶表示装置30全体にわたって、セルギャップを一定の範囲内に均一に保つことができる。
【0047】
さらに本実施の形態によれば、スペーサー16は、ブラックマトリクス層12上に赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15を積層して形成されている。このため、スペーサー16用の樹脂等を別途ブラックマトリクス層12上に積層させる場合に比べて、スペーサー16の形成工程を簡略化することができる。
【0048】
また本実施の形態によれば、液晶表示装置30は、液晶駆動用基板20と、液晶駆動用基板20に対向して設けられた液晶表示装置用カラーフィルタ10と、液晶駆動用基板20とカラーフィルタ10との間に配置された液晶26とを備えている。カラーフィルタ10には、カラーフィルタ10の基材11上のブラックマトリックス層12、赤色画素層13、青色画素層14、緑色画素層15およびスペーサー16を上方から覆うオーバーコート層17が設けられ、液晶駆動用基板20には、カラーフィルタ10側に突出した複数の電極部22が設けられており、カラーフィルタ10の各スペーサー16は、液晶駆動用基板20の電極部22とオーバーコート層17を介して当接している。また、オーバーコート層17のビッカース硬度は60以上であり、各スペーサー16上のオーバーコート層17は、電極部22から押圧される前の厚みが0.2μm以上となっている。このため、スペーサー16上のオーバーコート層17が、液晶駆動用基板20の電極部22から摩擦力または押圧力を受けたとしても、スペーサー16上のオーバーコート層17が容易に破損することはない。このことにより、ラビング処理や輸送中の振動などに起因してオーバーコート層17が摩擦力または押圧力を受けた場合であっても、液晶表示装置30の品質が劣化するのを防ぐことができる。
【0049】
なお本実施の形態において、カラーフィルタ10を備えた液晶表示装置30がIPS液晶モードの液晶表示装置からなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、本実施の形態におけるカラーフィルタ10を、STN液晶モード、強誘電性液晶モード、または反強誘電性液晶モードの液晶表示装置等、セルギャップを精密に制御する必要のある液晶表示装置において用いることができる。
【0050】
また本実施の形態において、ブラックマトリクス層12上に赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15を順に積層させることによりスペーサー16が形成される例を示した。しかしながら、赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15を積層させる順がこれに限られることはなく、任意の順番で赤色画素層13、青色画素層14および緑色画素層15をブラックマトリクス層12上に積層させることにより、スペーサー16を形成することができる。
【0051】
また本実施の形態において、カラーフィルタ10の各スペーサー16に、液晶駆動用基板20の電極部22がオーバーコート層17を介して当接され、各スペーサー16上のオーバーコート層17が電極部22から押圧されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図5において二点鎖線で示すように、各電極部22は、複数、例えば2つの分割電極部22a(分割突出部)に分割され、各スペーサー16上のオーバーコート層17は、当該2つの分割突出部22aから押圧されていてもよい。これによって、1つの電極部22がオーバーコート層17を介してスペーサー16に当接している場合に比べて、オーバーコート層17に対して及ぼされる摩擦力または押圧力を分散させることができる。
【0052】
また本実施の形態において、基材21に設けられ、カラーフィルタ10側に突出した複数の突出部が、電極部22からなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、突出部は、基材21に設けられたスペーサー(図示せず)を含んでいてもよい。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
厚さ1.5μmに換算した場合のビッカース硬度が62のオーバーコート層17が使用されたカラーフィルタ10を準備し、ラビング工程によりオーバーコート層17上にポリイミドからなる配向膜18を形成した。この場合、ラビング工程前におけるスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtを0.35μmとした。
【0055】
ラビング工程においては、18mmの毛足を有するレーヨンからなるラビング布を用いて、ステージ(図示せず)上に載置したカラーフィルタ10に対してラビング処理を行った。その際のラビング圧(ラビング処理時の押圧深さ)を1.0mm、ラビング回転数を500rpm、ステージ速度を20mm/sとした。
【0056】
ラビング工程によりカラーフィルタ10のオーバーコート層17上にポリイミドからなる配向膜18を形成した後、液晶駆動用基板20を準備し、カラーフィルタ10と液晶駆動用基板20とが向かい合うよう配置した。次に、カラーフィルタ10と液晶駆動用基板20との間を液晶駆動用基板20の周縁に沿ってエポキシ系の接着剤により封止した。その後、液晶駆動用基板20とカラーフィルタ10との間に、正の誘電率異方性を有するネマチック液晶26を液晶注入口(図示せず)を介して注入し、次に、液晶注入口をエポキシ製の接着剤で封止し、これによって液晶表示装置30を形成した。
【0057】
その後、液晶表示装置30内に浮遊異物(図示せず)が存在するかどうかを、目視により確認した。結果、液晶表示装置30内に浮遊異物が存在しないことを確認した。なお、目視による確認の対象とした浮遊異物は、ラビング工程の際にオーバーコート層17が削られることにより生じる浮遊異物である。オーバーコート層17が削られることにより生じる浮遊異物の大きさは、一般に数μm程度であり、目視により確認した場合、このような浮遊異物は浮遊輝点として視認される。
【0058】
(実施例2)
厚さ1.5μmに換算した場合のオーバーコート層17のビッカース硬度を51、ラビング工程前におけるスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtを0.05μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ラビング工程によりオーバーコート層17上にポリイミドからなる配向膜18を形成し、その後、当該ラビング工程後のカラーフィルタ10を用いて液晶表示装置30を形成した。その後の目視検査において、液晶表示装置30内に浮遊異物が存在することを確認した。
【0059】
(実施例3)
厚さ1.5μmに換算した場合のオーバーコート層17のビッカース硬度を56、ラビング工程前におけるスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtを0.08μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ラビング工程によりオーバーコート層17上にポリイミドからなる配向膜18を形成し、その後、当該ラビング工程後のカラーフィルタ10を用いて液晶表示装置30を形成した。その後の目視検査において、液晶表示装置30内に浮遊異物が存在することを確認した。
【0060】
(実施例4)
厚さ1.5μmに換算した場合のオーバーコート層17のビッカース硬度を62、ラビング工程前におけるスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtを0.54μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ラビング工程によりオーバーコート層17上にポリイミドからなる配向膜18を形成し、その後、当該ラビング工程後のカラーフィルタ10を用いて液晶表示装置30を形成した。その後の目視検査において、液晶表示装置30内に浮遊異物が存在しないことを確認した。
【0061】
(実施例5)
厚さ1.5μmに換算した場合のオーバーコート層17のビッカース硬度を68、ラビング工程前におけるスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtを0.19μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ラビング工程によりオーバーコート層17上にポリイミドからなる配向膜18を形成し、その後、当該ラビング工程後のカラーフィルタ10を用いて液晶表示装置30を形成した。その後の目視検査において、液晶表示装置30内に浮遊異物が存在することを確認した。
【0062】
(実施例6)
厚さ1.5μmに換算した場合のオーバーコート層17のビッカース硬度を70、ラビング工程前におけるスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtを0.44μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、ラビング工程によりオーバーコート層17上にポリイミドからなる配向膜18を形成し、その後、当該ラビング工程後のカラーフィルタ10を用いて液晶表示装置30を形成した。その後の目視検査において、液晶表示装置30内に浮遊異物が存在しないことを確認した。
【0063】
表1は、実施例1〜6において、液晶表示装置30内に浮遊異物が存在するかどうかを目視により確認した結果をまとめて示す表である。浮遊異物が存在しなかった場合の判定を○、存在した場合の判定を×としている。
【表1】

【0064】
実施例1〜6から分かるように、厚さ1.5μmに換算した場合のオーバーコート層17のビッカース硬度を60以上、ラビング工程前におけるスペーサー16上のオーバーコート層17の厚みtを0.2μm以上とすることにより、ラビング工程によってオーバーコート層17が削られるのを防ぐことができた。
【符号の説明】
【0065】
10 カラーフィルタ
11 カラーフィルタの基材
12 ブラックマトリクス層
13 赤色画素層
13a ブラックマトリクス層上の赤色画素層
14 青色画素層
14a ブラックマトリクス層上の青色画素層
15 緑色画素層
15a ブラックマトリクス層上の緑色画素層
16 スペーサー
17 オーバーコート層
18 配向膜
20 液晶駆動用基板
21 液晶駆動用基板の基材
22 電極部
22a 分割電極部
26 液晶
30 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置用カラーフィルタにおいて、
基材と、
基材上に設けられたブラックマトリクス層と、
基材上のブラックマトリクス層間に設けられた赤色画素層、青色画素層および緑色画素層と、
ブラックマトリクス層上に設けられた複数の柱状のスペーサーと、
ブラックマトリックス層、赤色画素層、青色画素層、緑色画素層およびスペーサーを上方から覆うオーバーコート層と、を備え、
オーバーコート層のビッカース硬度が60以上であり、
各スペーサー上のオーバーコート層の厚みが0.2μm以上であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
前記ブラックマトリクス層上に設けられる前記スペーサーの数は、前記基材上に設けられる前記赤色画素層、青色画素層および緑色画素層の合計数の半分よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記スペーサーは、赤色画素層、青色画素層および緑色画素層を積層して形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
液晶表示装置において、
液晶駆動用基板と、
液晶駆動用基板に対向して設けられた液晶表示装置用カラーフィルタと、
液晶駆動用基板とカラーフィルタとの間に配置された液晶と、を備え、
カラーフィルタは、基材と、基材のうち液晶駆動用基板に対向する側に設けられたブラックマトリクス層と、基材上のブラックマトリクス層間に設けられた赤色画素層、青色画素層および緑色画素層と、ブラックマトリクス層上に設けられた複数の柱状のスペーサーと、ブラックマトリックス層、赤色画素層、青色画素層、緑色画素層およびスペーサーを液晶駆動用基板側から覆うオーバーコート層とを有し、
液晶駆動用基板は、カラーフィルタ側に突出した複数の突出部を有し、
カラーフィルタの各スペーサーは、液晶駆動用基板の突出部とオーバーコート層を介して当接し、各スペーサー上のオーバーコート層は突出部から押圧され、
オーバーコート層のビッカース硬度が60以上であり、
各スペーサー上のオーバーコート層は、突出部から押圧される前の厚みが0.2μm以上となることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶駆動用基板の各突出部のうち前記スペーサーと前記オーバーコート層を介して当接している突出部は、各々複数の分割突出部に分割され、
各スペーサー上のオーバーコート層は、当該複数の分割突出部から押圧されることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−286639(P2010−286639A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140026(P2009−140026)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】