説明

液晶表示装置用カラーフィルタ

【課題】十分なセルギャップを得られるスペーサを有してなる、横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタの提供。
【解決手段】本発明の横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタは、基材と、該基材上に、遮光部と、着色層と、スペーサとを有してなり、スペーサは、2色以上の着色層が積層されてなる積層柱と、該積層柱上に形成された透明保護層とを有してなるものである。透明保護層を特定の熱硬化性樹脂組成物により形成することで、十分なセルギャップを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、該基材上に、着色層と、遮光部と、スペーサとを有してなる、横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フラットディスプレイとして、カラー液晶表示装置が用いられている。このような液晶表示装置においては、カラーフィルタと、薄膜トランジスタ(TFT)基材とを所定の間隙をもたせて向かい合わせ、この間隙部に液晶材料を注入して液晶層としている。この互いに向かい合うTFT基材とカラーフィルタとの間隔を維持するために、これらの間にスペーサを設け、これにより両者間の液晶層の厚みを面内均一に保持している。
【0003】
特に、横電界駆動(IPS)方式の液晶表示装置に用いられるカラーフィルタおいては、カラーフィルタの基材上に遮光部を設け、遮光部上にスペーサをさらに設けることにより、カラーフィルタを製造することが行われてきた(例えば、特許文献1参照)。このスペーサにより、薄膜トランジスタ(TFT)基材とカラーフィルタ100との間隔を保持するようになっている。しかし、遮光部上の限られた領域にスペーサを設けることは、十分なスペーサの高さ(セルギャップ)を確保し難いという問題点があった。
【0004】
そこで、十分なセルギャップを得るために、カラーフィルタの遮光部上に着色層を積層させ、その上にさらに透明保護層を設けることでスペーサを形成することが検討されてきた。透明保護層を形成する手段としては、UV硬化性樹脂を用いてフォトリソグラフィー法により形成することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、スパッタリング、真空蒸着、およびプラズマCVD等の乾式製膜法により、無機材料からなる透明保護層を形成することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、いずれの方法も透明保護層を設けるために、追加の工程が必要となることから、製造工程の短縮化・コスト削減が切望されている。
【0005】
したがって、追加の工程を必要とせずに、十分なセルギャップを得られるスペーサを有してなる、横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタの開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−211005号公報
【特許文献2】特開2008−90191号公報
【特許文献3】特開2009−169064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分なセルギャップを得られるスペーサを有してなる、横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、透明保護層を形成するために、特定の熱硬化性樹脂組成物を用いることにより上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一態様によれば、
横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタであって、
基材と、該基材上に、遮光部と、着色層と、スペーサとを有してなり、
該スペーサが、2色以上の着色層が積層されてなる積層柱と、該積層柱上に形成された透明保護層とを有してなり、
該透明保護層が、バインダー樹脂と重合開始剤とを含む熱硬化性樹脂組成物から形成され、
該熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度が、80℃以上135℃以下である、カラーフィルタが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタにおいては、透明保護層が特定の熱硬化性樹脂組成物により形成されることで、スペーサが十分なセルギャップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタの一例を示す模式断面図である。
【図2】熱硬化性樹脂組成物1〜7のDSC曲線を示す図である。
【図3】基材温度上昇の測定における観測点を示す図である。
【図4】基材温度上昇の測定により得られた基材の昇温曲線を示す図である。
【図5】スペーサの高さのバラツキと熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
カラーフィルタ
本発明において、カラーフィルタは、基材と、基材上に、遮光部と、着色層と、スペーサとを有してなるものである。具体的に、本発明によるカラーフィルタの一例の模式断面図を図1に示す。図1に示されるカラーフィルタ10は、基材20上に、開口部を有する遮光部30と、開口部に各色の着色層40(赤色着色層41、緑色着色層42、および青色着色層43)と、遮光部30上にスペーサ70とを有してなる。スペーサ70は、遮光部30上に着色層40が積層されてなる積層柱50と、積層柱50上に透明保護層60とを有してなるものである。また、透明保護層60は、積層柱50上以外の周辺部にも、各色の着色層40および遮光部30を覆うように形成されている。以下、各構成について説明する。
【0013】
基材
本発明の好ましい態様によれば、基材は光出射側にあるため、光透過性の高い透明基材が用いられる。例えば、ガラス、石英、または各種の樹脂等の光透過性の高い材料からなる透明基材が挙げられる。また、通常、基材の厚さは、0.1〜10.0mmである。
【0014】
遮光部
本発明の好ましい態様によれば、遮光部は、基材上に形成され、開口部を備えるものである。遮光部としては、同一の形状を有する開口部が等間隔でパターン状に形成されたものが用いられる。遮光部のパターン形状は特に限定されず、例えば、ストライプ状やマトリクス形状等が挙げられる。遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、黒色の着色材料を含む黒色分散液と感光性樹脂組成物とを用いたフォトリソグラフィー法により形成するのがよい。
【0015】
着色層
本発明の好ましい態様によれば、着色層は、基材上の遮光部の開口部に形成されるものであり、例えば、赤、緑、および青の3色の着色パターンを含むものであるのがよい。着色パターンは、赤、緑、青、および黄の4色や、赤、緑、青、黄、シアンの5色等にしてもよい。また、各色の着色層は、各色の着色材料を含有する着色層用樹脂組成物を用いて形成することができる。着色層は、通常、1μm〜5μmの厚さで形成される。着色層の形成方法としては、着色層をパターニングすることができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法であれば、着色層が積層された積層柱を、精度良く所望の位置に形成できることから好ましい。
【0016】
着色層用樹脂組成物
本発明の好ましい態様によれば、カラーフィルタの着色層を形成するための着色層用樹脂組成物は、各色の着色材料を溶剤に分散させた分散体である。着色材料の分散方法は、特に限定されず、公知の分散機を用いて分散させることができる。例えば、赤色の着色材料としては、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクドリン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、およびイソインドリン系顔料等が挙げられる。緑色の着色材料としては、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、イソインドリン系顔料、およびイソインドリノン系顔料等が挙げられる。青色の着色材料としては、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、およびジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの着色材料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、各色の着色層用樹脂組成物は、上記の着色材料以外にも、必要に応じて、溶剤、分散剤、モノマー、ポリマー、および重合開始剤等を含むものである。
【0017】
スペーサ
本発明の好ましい態様によれば、スペーサは、基材上の遮光部の開口部以外の上に形成されてなるものである。スペーサは、2色以上の着色層が積層されてなる積層柱と、積層柱上に形成された透明保護層とを有してなるものである。なお、本発明において、「スペーサの高さ」とは、スペーサの周辺部(各色の着色層および/または遮光部上に形成された透明保護層の表面)から垂直方向に、積層柱上に形成された透明保護層の表面までの距離(厚み)である。例えば、図1のように、スペーサの周辺部の透明保護層60から垂直方向に、スペーサの頂上部までの距離80である。本発明においては、スペーサの高さは、1〜10μmが好ましく、1.5〜5μmがより好ましい。スペーサの高さが上記範囲程度であれば、十分なセルギャップを得ることができるからである。
【0018】
積層柱
本発明において、積層柱は、2色以上、好ましくは2色〜5色の着色層が積層されてなるものである。基材上に形成する着色パターンが、赤、緑、および青の3色の場合、積層柱は、赤、緑、および青の3色の着色層が積層されてなることが好ましい。これは、積層柱を形成するために、別途追加の積層工程を設ける必要がないためである。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、積層柱の着色層の積層数は、2層以上、より好ましくは2層〜5層である。また、2色以上の着色層が積層されていれば、積層柱中に同一色の着色層が2層以上存在してもよい。本発明においては、上記の着色層の着色パターン数に応じて、積層柱の積層数を設定するのがよい。上記範囲程度の積層数であれば、十分な高さを得ることができる。なお、遮光部上に設ける積層柱の積層数は全て同一であっても、異なる積層数であってもよい。
【0020】
本発明において、積層柱を構成する着色層の平面形状は、積層柱を安定して形成できる形状であれば特に限定されず、例えば、円形、楕円形、および多角形等が挙げられる。また、積層柱を構成する着色層の平面の面積は、最下層の着色層が最も広く、最上層までに順に狭くなるように形成することが好ましい。積層柱を安定して形成することができるからである。
【0021】
透明保護層
本発明において、透明保護層は、バインダー樹脂と重合開始剤とを含む熱硬化性樹脂組成物から形成されるものである。本発明では、透明保護層を、熱硬化性樹脂組成物を用いて形成することで、製造工程における信頼性を向上(欠陥の減少)させることができる。また、UV硬化性樹脂組成物を用いるよりも、工程数を削減することができ、また製造設備の簡略化によりコストを抑制することができる。好ましい態様によれば、積層柱上に形成された透明保護層は、0.35μm以上、好ましくは0.45μm以上5μm以下、より好ましくは0.55μm以上2μm以下の膜厚を有するのがよい。透明保護層が上記範囲程度の膜厚を有することで、十分なセルギャップを得ることができる。なお、スペーサの周辺部である遮光部および着色層上にも、透明保護層が形成されてもよい。なお、積層柱上に形成された透明保護層の膜厚は、膜厚測定装置(KLA−Tencor製、P−15)を用いて、熱硬化性樹脂組成物塗布前の積層柱の膜厚と熱硬化性樹脂組成物塗布後の積層柱の膜厚の差分から算出することができる。
【0022】
熱硬化性樹脂組成物
本発明において、熱硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂と重合開始剤とが重合反応を起こす際に生じる熱量変位(発熱)に特徴があり、示差走査熱量測定装置を用いて測定した場合に特徴的な転移熱曲線(DSC曲線)を有するものである。このため、熱硬化性樹脂組成物は、特定の温度で硬化を開始し、この温度を熱硬化温度という。熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度は、80℃以上135℃以下、好ましくは100℃以上130℃以下であるのがよい。熱硬化温度は135℃以下であれば、硬化までの時間が短くなることでセルギャップが略均一に近づき、また、80℃以上であれば、保存安定性が良好となる。したがって、熱硬化温度が上記範囲程度であれば、熱硬化性樹脂組成物の硬化開始までの時間を短縮し、かつ、粘度の低下を抑制するため、熱硬化性樹脂組成物の流動・拡散を防止することができる。それによって、積層柱上に、十分なセルギャップを得られる上記範囲程度の膜厚の透明保護層を形成することができる。
【0023】
ここで、本発明において、「熱硬化温度」とは、30℃で5分間保持した後10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱した時に測定されるDSC曲線における、発熱量のピークトップ時点での温度のことである。なお、DSCとは、Differential scanning calorimetry(示差走査熱量測定)のことである。
【0024】
また、製造工程において、従来の熱硬化温度(例えば、約150℃)よりも低温(135℃以下)で熱硬化性樹脂組成物が硬化するため、透明保護層を形成する際の、カラーフィルタ基材上での温度のバラツキを狭い範囲に調節することができる。それによって、スペーサの高さのバラツキを抑制することができる。本発明の好ましい態様によれば、スペーサの高さのバラツキ3σは、0.09以下が好ましく、0.08以下がより好ましい。バラツキ3σが、0.09以下であれば、セルギャップが略均一に近づくことにより、ムラ等の不具合の発生を抑えることができ、鮮明な画質表示が可能となる。本発明において、スペーサの高さのバラツキ3σは下記式(1)で求めることができる。
式1
3σ=3×σ
σ={Σ(x−x/(n−1)}1/2
式中、3σ:スペーサの高さのバラツキ
σ:標準偏差(不偏分散の正の平方根)
n:測定数(例えば、20〜100)
:各測定値(スペーサの高さ)、(i:1〜n)
:各測定の平均値
【0025】
バインダー樹脂
本発明の好ましい態様によれば、バインダー樹脂は、不飽和二重結合を有する熱硬化性化合物、具体例としてエポキシ化合物とアクリル酸を反応させて得られる化合物であり、この反応に供せられるエポキシ化合物の具体例としては、芳香族エポキシとしてエポキシのビスフェノール成分に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテルや、また、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレンや、さらに4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等を含むエポキシ樹脂がある。さらには、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族もしくは脂環式エポキシ樹脂、およびアミンエポキシ樹脂等も挙げられる。このようなエポキシ樹脂とアクリル酸の化合物を用いることで、耐湿性、透明性、表面硬化性、および耐薬品性に優れた硬化物が形成できる。
【0026】
重合開始剤
本発明の好ましい態様によれば、重合開始剤は、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソノナノイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジスクシニックアシッドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートや、さらには1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン等が挙げられる。特に好ましい重合開始剤は、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジスクシニックアシッドパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものである。このような重合開始剤を用いることで、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度を所望の範囲内に調節することができる。本発明においては、市販の重合開始剤を用いることもでき、例えば、パーブチルPV、パーロイル355、パーロイルSA、およびナイパーBW(以上、日本油脂(株)製)等が挙げられる。好ましい態様では、重合開始剤の含有量は、バインダー樹脂に対して、0.1〜10質量%である。
【0027】
カラーフィルタの製造方法
本発明のカラーフィルタの製造方法は特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィー法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法、バーコート法、スプレー法、およびダイコート法等が挙げられる。本発明においては、感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法により、遮光部、着色層、および積層柱を形成した後に、熱硬化により透明保護層を形成することが好ましい。従来のように、フォトリソグラフィー法により積層柱上に透明保護層を形成する場合には、さらに追加の工程が必要となるが、本発明においては、透明保護層を熱硬化させることから、追加の工程を省き、また低温で熱硬化性樹脂組成物が硬化することから、製造工程の短縮化を図ることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0029】
実施例1
感光性樹脂組成物の調製
まず、重合槽中にメタクリル酸メチル(MMA)を63重量部、アクリル酸(AA)を12重量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)を6重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88重量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を7重量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、さらにメタクリル酸グリシジル(GMA)を7重量部、トリエチルアミンを0.4重量部、およびハイドロキノンを0.2重量部添加し、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。次に下記の材料を室温で攪拌、混合して感光性樹脂組成物とした。
感光性樹脂組成物の組成
・上記共重合樹脂溶液(固形分50%): 16重量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー(株)製、SR399):
24重量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート180S70): 4重量部
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン: 4重量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル: 52重量部
【0030】
遮光部の形成
まず、下記分量の成分を混合し、サンドミルにて十分に分散して、黒色顔料分散液を調整した。
黒色顔料分散液の組成
・黒色顔料: 23重量部
・高分子分散材(ビックケミー・ジャパン(株)製、Disperbyk111):
2重量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル): 75重量部
【0031】
次に、下記分量の成分を十分混合して、遮光部用樹脂組成物を得た。
遮光部用樹脂組成物の組成
・上記黒色顔料分散液: 60重量部
・感光性樹脂組成物: 20重量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル: 30重量部
【0032】
そして、厚み1.1mmのガラス基材(旭硝子(株)製、AN材)上に上記の遮光部用樹脂組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、膜厚約1μmの遮光部を形成した。次いで、該遮光部を超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05質量%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基材を180℃の雰囲気下に30分間放置することにより加熱処理を施すことで、開口部を有する遮光部を形成した。
【0033】
上記のようにして遮光部を形成した基材上に、下記組成の赤色着色層用樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布(塗布厚み2.5μm)し、その後、70℃のオーブン中で3分間乾燥した。次いで、赤色着色樹脂組成物の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて赤色着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05質量%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、赤色着色樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基材を180℃の雰囲気下に30分間放置することにより、赤色着色層を形成した。続いて、赤色着色層の形成と同様の工程で、下記の緑色着色層用樹脂組成物を用いて、緑色着色層を形成した。さらに、赤色着色層の形成と同様の工程で、下記の青色着色層用樹脂組成物を用いて、青色着色層を形成した。また、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層がこの順に積層された積層柱を形成した。
赤色着色層用樹脂組成物の組成
・C.I.ピグメントレッド177(Chromofine Red 6605、大日精化(株)製): 10重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤: 3重量部
・感光性樹脂組成物: 5重量部
・酢酸−3−メトキシブチル: 82重量部
緑色着色層用樹脂組成物の組成
・C.I.ピグメントグリーン36(DIC(株)製): 10重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤: 3重量部
・感光性樹脂組成物: 5重量部
・酢酸−3−メトキシブチル: 82重量部
青色着色層用樹脂組成物の組成
・C.I.ピグメントブルー15:6(EP−CF、DIC(株)製): 10重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤: 3重量部
・感光性樹脂組成物: 5重量部
・酢酸−3−メトキシブチル: 82重量部
【0034】
次に、熱硬化性樹脂組成物の調製に用いるバインダー樹脂を、以下の方法で調製した。500mlの四口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂231g(エポキシ当量231)、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド450mg、2,6−ジ−イソブチルフェノール100mg、およびアクリル酸72.0gを仕込んで混合し、空気を吹き込みながら(25ml/分)90〜100℃で加熱溶解した。続いて、溶液が白濁したままで徐々に昇温させ、120℃に加熱して完全に溶解させた。溶液は次第に透明粘稠になり、そのまま攪拌を継続した。この溶液の酸価を測定し、酸価が2.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。この酸価が目標に達するまで8時間を要した(酸価0.8)。その後、室温まで冷却し、無色透明な固体を得た。次に、上記で得られたビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂303gにセロソルブアセテート2kgを加えて溶液とした後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38g、ベンゾフェノンテトラカルボン二酸無水物80.5g、および臭化テトラエチルアンモニウム1gを添加して混合し、徐々に昇温させて110〜115℃で2時間反応させ、化合物A(m/n=50/50)を得た。この酸無水物の反応はIRスペクトルの1780cm-1ピークの消失により確認した。また、得られた化合物Aのインヘレント粘度は0.3dl/gであった(ηinh=0.3)。得られた化合物Aをバインダー樹脂Aとした。そして、バインダー樹脂A、重合開始剤、および溶剤を下記の組成で混合して、熱硬化性樹脂組成物1を調製した。
熱硬化性樹脂組成物1の組成
・バインダー樹脂A 20重量部
・パーブチルPV(重合開始剤、主成分:t−ブチルパーオキシピバレート、日本油脂(株)製) 0.7重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.3重量部
【0035】
上記のようにして遮光部、着色層、および積層柱を形成した基材上に、上記組成の熱硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布(塗布厚み2.5μm)し、その後、230℃のオーブン中で3分間乾燥し、積層柱上に透明保護層を形成させた。これにより、積層柱と透明保護層とを有するスペーサを有する、カラーフィルタを製造した。
【0036】
実施例2
熱硬化性樹脂組成物の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを製造した。
熱硬化性樹脂組成物2の組成
・バインダー樹脂A 20重量部
・パーロイル355(重合開始剤、主成分:ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、日本油脂(株)製) 0.7重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.3重量部
【0037】
実施例3
熱硬化性樹脂組成物の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを製造した。
熱硬化性樹脂組成物3の組成
・バインダー樹脂A 20重量部
・パーロイルSA(重合開始剤、主成分:ジスクシニックアシッドパーオキサイド、日本油脂(株)製) 0.7重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.3重量部
【0038】
実施例4
熱硬化性樹脂組成物の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを製造した。
熱硬化性樹脂組成物4の組成
・樹脂成分A(バインダー樹脂) 20重量部
・ナイパーBW(重合開始剤、主成分:ジベンゾイルパーオキサイド、日本油脂(株)製) 0.7重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.3重量部
【0039】
比較例1
熱硬化性樹脂組成物の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを製造した。
熱硬化性樹脂組成物5の組成
・バインダー樹脂A 20重量部
・パーヘキサHC(重合開始剤、主成分:1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、日本油脂(株)製) 0.7重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.3重量部
【0040】
比較例2
熱硬化性樹脂組成物の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを製造した。
熱硬化性樹脂組成物6の組成
・バインダー樹脂A 20重量部
・パーヘキシルZ(重合開始剤、主成分:t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、日本油脂(株)製) 0.7重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.3重量部
【0041】
比較例3
熱硬化性樹脂組成物の組成を下記のとおりとした以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを製造した。
熱硬化性樹脂組成物7の組成
・バインダー樹脂A 20重量部
・パークミルD(重合開始剤、主成分:ジクミルパーオキサイド、日本油脂(株)製)
0.7重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.3重量部
【0042】
熱硬化温度の測定
熱硬化性樹脂組成物1〜7をそれぞれ、30℃で5分保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱し、相転移の際に生じる熱量変位を示差走査熱量測定(DSC)装置(DSC−50、島津製作所製)により測定し、DSC曲線を得た。
【0043】
上記で得られた熱硬化性樹脂組成物1〜7のDSC曲線を図2に示す。また、DSC曲線から算出した各熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度を以下の表1に示す。実施例1〜4に用いた熱硬化性樹脂組成物1〜4の熱硬化温度は、80℃以上135℃以下であることがわかった。
【表1】

【0044】
基材温度上昇の測定
カラーフィルタの製造工程において、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度に到達するまでの基材の温度上昇の時間は、基材の箇所によってバラツキが発生することがある。そこで、図3に示されるように、ガラス基材上に8面のパターニング層(図3の斜線部)を設ける、カラーフィルタの製造工程において、基材の裏面に複数の計測点(1〜12:パターニング層の直下、13〜15:素ガラス層の直下)を設定して、基材の温度上昇を温度計測装置(ウインテクス(株)製 WHTF−K−0.32−3−V、熱電対種類K)を用いて測定した。測定の結果、基材の昇温曲線を得た。
【0045】
上記で得られた基材の昇温曲線を図4に示す。基材温度が135℃では、昇温のバラツキ(図4のA)は、約30秒であったのに対し、基材温度が150℃では、昇温のバラツキ(図4のB)は約50秒であった。したがって、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度を135℃に低下させることで、昇温のバラツキを大幅に低下させ、面内全体の硬化をより均一にできることがわかった。また、硬化までの時間を短縮できることから、熱硬化性樹脂組成物の流動化を防止し、また製造工程の短縮化を実現できることがわかった。
【0046】
透明保護層の膜厚の測定
上記で製造したカラーフィルタについて、膜厚測定装置(KLA−Tencor製、P−15)を用いて、積層柱上に形成された透明保護層の膜厚を、熱硬化性樹脂組成物塗布前の積層柱の膜厚と熱硬化性樹脂組成物塗布後の積層柱の膜厚の差分から算出した。結果を表2に示す。
【表2】

【0047】
スペーサの高さのバラツキの測定
上記で製造したカラーフィルタについて、測定装置(Super PSIS−6008、SNU Precision製)を用いて、任意に定めた同一着色単膜からスペーサの高さを計測し、上記式(1)よりスペーサの高さのバラツキ3σを算出した。測定数は、n=40である。
【0048】
スペーサの高さのバラツキと熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度との関係を図5に示す。実施例1〜4で製造したカラーフィルタは、スペーサの高さのバラツキ3σが0.09以下であることがわかった。
【符号の説明】
【0049】
10 カラーフィルタ
20 基材
30 遮光部
40 着色層
41 赤色着色層
42 緑色着色層
43 青色着色層
50 積層柱
60 透明保護層
70 スペーサ
80 スペーサの高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横電界駆動方式の液晶表示装置用カラーフィルタであって、
基材と、前記基材上に、遮光部と、着色層と、スペーサとを有してなり、
前記スペーサが、2色以上の着色層が積層されてなる積層柱と、前記積層柱上に形成された透明保護層とを有してなり、
前記透明保護層が、バインダー樹脂と重合開始剤とを含む熱硬化性樹脂組成物から形成され、
前記熱硬化性樹脂組成物の熱硬化温度が、80℃以上135℃以下である、カラーフィルタ。
【請求項2】
前記積層柱上に形成された透明保護層が、0.35μm以上の膜厚を有する、請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
前記スペーサの高さのバラツキ3σが、下記式(1):
式1
3σ=3×σ
σ={Σ(x−x/(n−1)}1/2
式中、3σ:スペーサの高さのバラツキ
σ:標準偏差(不偏分散の正の平方根)
n:測定数
:各測定値(スペーサの高さ)、(i:1〜n)
:各測定の平均値
により決定される時に、0.09以下である、請求項1または2に記載のカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−53169(P2012−53169A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194187(P2010−194187)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】